特許第6121572号(P6121572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ システム テルミクの特許一覧

<>
  • 特許6121572-車両用暖房回路の電気ヒーター 図000002
  • 特許6121572-車両用暖房回路の電気ヒーター 図000003
  • 特許6121572-車両用暖房回路の電気ヒーター 図000004
  • 特許6121572-車両用暖房回路の電気ヒーター 図000005
  • 特許6121572-車両用暖房回路の電気ヒーター 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121572
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】車両用暖房回路の電気ヒーター
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20170417BHJP
   F24D 3/00 20060101ALI20170417BHJP
   F24H 1/10 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B60H1/22 611A
   B60H1/22 611C
   F24D3/00 K
   F24D3/00 B
   F24H1/10 D
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-559515(P2015-559515)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-513041(P2016-513041A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014054001
(87)【国際公開番号】WO2014131902
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】1351773
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、ピエロン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、テリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ、ルボルニュ
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−025907(JP,A)
【文献】 特開平09−020124(JP,A)
【文献】 特開2012−096779(JP,A)
【文献】 特開平10−035263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
F24D 3/00
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換液体を含む自動車暖房回路(1)用の電気ヒーター(9)であって、
流体入口(11)と、
第一の流体出口(12)および第二の流体出口(13)と、
熱交換液体を電気的に加熱し、かつこの熱を前記第一の流体出口(12)に導かれる熱交換液体と前記第二の流体出口(13)に導かれる熱交換液体との間で制御された態様で分配するための手段(16)(17)とを備え、
前記第一の流体出口(12)と前記第二の流体出口(13)は、前記自動車暖房回路(1)の第一のラジエーター(3)と第二のラジエーター(4)とにそれぞれ接続され、前記第一のラジエーター(3)および前記第二のラジエーター(4)を異なる温度に加熱することを特徴とする電気ヒーター。
【請求項2】
分離され、かつ、それぞれが前記流体入口(11)を介して導かれた熱交換流体の一部を取り込むように配置された第一の加熱部材(16)および第二の加熱部材(17)と、
前記第一の加熱部材(16)および前記第二の加熱部材(17)のそれぞれに電気的出力を制御された態様で分配することによって、前記電気的出力を前記第一の加熱部材(16)および前記第二の加熱部材(17)に供給するための電源カード(19)とを備え、
前記第一の加熱部材(16)と第二の加熱部材(17)は、前記電気ヒーター(9)の前記第一の流体出口(12)と第二の流体出口(13)にそれぞれ接続された出口を有することを特徴とする請求項1に記載の電気ヒーター。
【請求項3】
動車の乗員空間の二つの分離された領域に対して熱を拡散するための、第一のラジエーター(3)と第二のラジエーター(4)とを有する、熱交換液体を含む自動車暖房回路(1)と、
請求項1または2に記載の電気ヒーター(9)とを備え、
前記電気ヒーター(9)の第一の流体出口(12)と第二の流体出口(13)とは、前記第一のラジエーター(3)と第二のラジエーター(4)とにそれぞれ接続され、前記第一のラジエーター(3)と第二のラジエーター(4)との出口は、前記電気ヒーター(9)の入口(11)に結合するように接続されることを特徴とする自動車暖房システム。
【請求項4】
前記第一のラジエーター(3)と前記第二のラジエーター(4)とは、一体化されたラジエーターを形成することを特徴とする請求項3に記載の自動車暖房システム。
【請求項5】
前記第一のラジエーター(3)と前記第二のラジエーター(4)とは、壁(33)によって互いに分離されていることを特徴とする請求項3または4に記載の自動車暖房システム。
【請求項6】
前記第一のラジエーター(3)および前記第二のラジエーター(4)は、同一の熱拡散部材(2、31、32)に一体化されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の自動車暖房システム。
【請求項7】
前記熱拡散部材(2、32)は、前記第一のラジエーター(3)と前記第二のラジエーター(4)との出口に接続された少なくとも一つの出口(8)を有することを特徴とする請求項6に記載の自動車暖房システム。
【請求項8】
前記熱拡散部材(31)は、前記第一のラジエーター(3)と前記第二のラジエーター(4)との出口にそれぞれ接続された二つの出口(28)(28’)を有することを特徴とする請求項7に記載の自動車暖房システム。
【請求項9】
前記第一のラジエーター(3)と前記第二のラジエーター(4)とは、互いに分離された熱拡散部材(102)(104)に一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換液体等の熱交換流体を含む自動車暖房回路等を備える電気ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
このような電気ヒーターは、電気車両またはハイブリッド車両の乗員空間を加熱するが、それは、この車両の暖房回路の熱交換液体をジュール効果を利用して加熱することによってなされる。この回路は、電気ヒーターがもたらす熱を乗員空間内において放散させるためラジエーターを備えている。
【0003】
この暖房回路のラジエーターは、乗員空間の左側部分と右側部分とをそれぞれ加熱する左側部分と右側部分とを有し、事実上、ラジエーターは左側部分と右側部分とを分離する壁の一方の側と他方の側とに延在していることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補完的な態様において、混合フラップが設けられるが、これは、外気とラジエーターの左側部分によって加熱された空気との割合を調整することによって、乗員空間の左側部分で噴射された空気に対して、乗員空間の左側部分の温度を調整するためである。同様にして、他の混合フラップは乗員空間の右側部分の温度を調整することができる。
【0005】
本発明の目的は、少なくとも二つの領域、例えば、乗員空間の左側部分と右側部分を異なる温度に暖房するための他の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明は、熱交換液体を含む自動車暖房回路用の電気ヒーターに関し、該電気ヒーターは、流体入口と、第一の流体出口および第二の流体出口と、熱交換液体を電気的に加熱し、かつこの熱を、前記第一の出口に導かれる熱交換液体と前記第二の出口に導かれる熱交換液体との間で、制御された態様で分配するための手段を有し、前記第一と前記第二の流体出口は、それぞれ前記暖房回路の第一と、第二のラジエーターとに接続され、例えば分離された前記二つのラジエーターを異なる温度に加熱する。
【0007】
この解決策によれば、それはまさに、各乗員空間に寄与するラジエーターによって乗員空間の異なる部分に拡散される熱を分配する電気ヒーターであり、もはや、乗員空間の二つの部分の温度を別々に調整するために混合フラップを備える必要はない。
【0008】
また、本発明は、上記にて明示したヒーターに関連するものであり、該ヒーターは、分離され、かつ、それぞれが前記流体入口を介して導かれた熱交換液体の一部を取り込むように配置された第一の加熱部材および第二の加熱部材と、各加熱部材に導かれた出力を制御された態様で分配することによって電気的出力を前記加熱部材に供給する電源カードとを有し、前記第一と第二の加熱部材は、前記電気ヒーターの前記第一と第二の出口にそれぞれ接続された出口を有する。
【0009】
また、本発明は、自動車暖房システムに関し、該自動車暖房システムは、熱交換液体を含む暖房回路と、上記のような電気ヒーターとを有し、この暖房回路は、前記自動車の乗員空間の二つの分離された領域に熱を拡散するため、第一と第二のラジエーターを備えており、前記電気ヒーターの前記第一と第二の流体出口は、前記第一と第二のラジエーターにそれぞれ接続され、前記第一と第二のラジエーターの出口は、前記電気ヒーターの前記入口に結合するように接続される。
【0010】
また、本発明は、二つの前記ラジエーターが一体の熱拡散部材に統合された、上記にて明示したシステムにも関する。
【0011】
一つの考えられる特徴によれば、暖房システムの第一と、第二のラジエーターとは、一体のラジエーターを形成する。
【0012】
他の考えられる特徴によれば、暖房システムの前記第一と第二のラジエーターとは、壁によって互いに分離される。
【0013】
第一と第二のラジエーターを分離する壁は、例えば、非熱伝導(または、断熱的)であって、第一と第二のラジエーター間の熱伝導を制限することができる(あるいは、第一と第二のラジエーターを少なくとも部分的に互いに熱的に絶縁することさえできる)。
【0014】
他の考えられる特徴によれば、熱拡散部材は、一方では、前記第一と第二のラジエーターの出口に接続され、他方では、前記電気ヒーターの入口に接続された少なくとも一つの出口を有する。
【0015】
他の考えられる特徴によれば、自動車暖房システムの前記熱拡散部材は、前記第一と第二のラジエーターの出口にそれぞれ接続された二つの出口を有する。
【0016】
他の考えられる特徴によれば、前記第一と第二のラジエーターは、互いに分離された熱拡散部材に一体化されてなる。
【0017】
このように、自動車の乗員空間において熱の拡散に寄与する熱拡散部材は、熱の拡散が望まれる領域の近くに取り付けてもよい。
【0018】
純粋に非制限の例による、本発明の特定の実施態様における下記の説明から、また、添付図を参照することによって、本発明はより良く理解されるであろうし、また、その特徴および利点がより明瞭に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明によるヒーターを含む暖房システムの部分概略図である。
図2図2は、図1のヒーターの分解斜視図である。
図3図3a〜3cは、本発明による暖房システムの構造的変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が基づく概念は、熱交換流体、特に熱交換液体の加熱と熱の分配を確実に行う、一体状になった全く同一の部材を暖房回路に備えるものである。熱交換液体は、暖房回路の二つの別々のラジエーターに導入され、それぞれの設定温度に応じて車両の二つの領域の温度、例えば、乗員空間の左側部分の温度と右側部分の温度とを調整する。
【0021】
図1に示された暖房システムは、暖房回路1と主要部材2とを備え、この主要部材2は、本例では、二つの分離ラジエーター3と4を含んでいる。ラジエーター3、4は、熱を車両の乗員空間の二つのそれぞれの領域、例えば、この暖房システムを備えた乗員空間の右側部分と左側部分とに向けて拡散させることに寄与する。
【0022】
これらのラジエーター3と4は、本例において、車両の前部に取り付けられ、かつ乗員空間における熱の拡散に寄与する主要部材2の一部であり、よって単に一つのラジエーターの外観を有している。各ラジエーター3、4はそれ自身の入口を備えており、この入口はそれぞれ6と7で示されており、これらの二つのラジエーターの出口は、例えば、8で示された全く同一の出口に組み合わされている。
【0023】
不図示の構造的変形例において、第一のラジエーター3と第二のラジエーター4とは一体(あるいは一体構造)のラジエーターを形成してもよい。
【0024】
この組立体には電気ヒーター9を介して熱交換液体が供給される。電気ヒーター9は、流体入口11(例えば、一つ)と、二つの別々の出口12と13を備えており、これら出口12と13は、暖房システムの管を介して入口6と出口7とにそれぞれ接続されている。第一と第二の別々のラジエーター3と4は、さらに、壁33、例えば、非熱伝導性の壁によって互いに分離されてもよい(この構造的変形例は図3aにより詳しく図示されている)。
【0025】
ラジエーター3と4の出口を組み合わせた、主要部材2の出口8はそれ自体が電気ヒーター9の入口11に接続されている。不図示の、暖房回路1の他の部品、例えば、冷却素子は、適用可能な場合、ラジエーターの出口8と電気ヒーター9の入口11との間に介装してもよい。
【0026】
電気ヒーター9は、一方では車両の電源に接続され、他方では不図示のコントロールユニットに接続されたケーブル14を介して制御され、かつ電気的に提供される。この電気ヒーター9は、その入口11で取り込む流体を加熱し、その第一の出口12に導かれる流体と第二の出口13に導かれる流体との間で、暖房用の熱出力を制御された態様で分配するための手段を内蔵している。
【0027】
換言すると、この電気ヒーター9は、第二の出口13の領域に供給する流体と異なる温度で、その流体を第一の出口12で供給することができる。
【0028】
図1および図2に示された実施態様において、この電気ヒーター9は、そのハウジングの内側に、ジュール効果を利用する加熱素子16と17、および電源回路19を備えている。電源回路19は、ケーブル14によって受け取った電力と制御指示とから、これらの二つの加熱素子16と17に電力を供給する。
【0029】
図2から理解できるように、ハウジングはハウジングベース21を備えており、ハウジングベース21は、入口11とケーブル14の導入部とを含み、かつケーシングを構成している。ケーシングには、実質的に密封されるように、電源カード19が収容されており、その下部は下部キャップ22によって閉鎖されている。
【0030】
入口11を介して導入される流体は、流体の分離された流れを形成するため、図では見ることができないが、ハウジング21のベースの上部領域に作製された二つの溝に導かれる。これらの流体の二つの流れは、それぞれ加熱素子16と17を平行に通過し、別々に加熱される。これは、電源カード19が不図示のコントロールユニットから受けた制御指示に応じて、実質的に同一の二つの加熱素子16と17に異なる出力を供給するからである。
【0031】
加熱素子16によって加熱された流体は、第一の出口12に向けて排出されて第一のラジエーター3に供給される。それに対して、加熱素子17によって加熱された流体は、第二の出口13に向けて排出されて第二のラジエーター4に供給される。
【0032】
ハウジング21のベースは、上部ハウジング24によって閉鎖されている。上部ハウジング24は、加熱素子16と17を収容し、第一の出口12と第二の出口13とを備えている。この上部ハウジング24は、ハウジング21のベースの上部を閉鎖するキャップを構成している。
【0033】
特に、図1において理解できるように、本発明は電気車両またはハイブリッド車両の暖房システムの回路の構造を簡素化することができ、車両の二つの部分を二つの異なる設定温度で確実に暖房することができる。
【0034】
さらに、図3bに非常に概略的に図示した構成の変形例において、熱拡散部材31がラジエーター3と4の出口の少なくとも一つに接続された複数の出口を有している。
【0035】
熱拡散部材31の複数の出口は、例えば、電気ヒーター9の入口11に接続された単一の導管(不図示)にまとめることができる。
【0036】
より具体的には、熱拡散部材31は、ラジエーター3と4の出口にそれぞれ接続された二つの出口28と28’を備えている。熱拡散部材31の二つの出口は、例えば、熱拡散部材31の対向する側に配置される。
【0037】
図3cに非常に概略的に図示した他の構成の変形例において、暖房システム100は、上記にて明示したような電気ヒーター9を備えている。電気ヒーター9の第一と第二の流体出口12と13は、ラジエーター3と4の入口にそれぞれ接続されている。ラジエーター3と4は、それ自体が、第一の熱拡散部材102と第二の熱拡散部材104とそれぞれ一体化されている。
【0038】
第一の熱拡散部材102と第二の熱拡散部材104とは互いに分離され、車両の異なる場所に取り付けられてもよい。
【0039】
従って、車両の構成および/または組立時、本発明による暖房システム100をより簡単に車両に備えることができる。
【0040】
さらに、第一、第二の熱拡散部材102と104は、それぞれ、128と128’で示され、かつ、ラジエーター3と4の出口にそれぞれ接続された少なくとも一つの出口を備えている。
図1
図2
図3a
図3b
図3c