(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明者は、ルチン含有飲料について検討を行ったところ、液性が中性領域ではルチンを微量に含有する飲料を飲用したときに味に違和感を生じないが、酸性領域においては、ルチンの含有量が僅かであったとしても、喉にヒリヒリするような刺激感が残り、酸味のキレが悪く、酸性飲料の風味に影響を与えることを見出した。
本発明は、ルチンを含有するにも拘わらず、喉に残る刺激感が抑制され、かつ酸味のキレの良好な酸性飲料に関する。
【0007】
本発明者は検討した結果、特定量のルチンを含有する酸性飲料において、塩化物イオン及び甘味料を含有させ、ルチンと塩化物イオンとの質量比、pHを特定範囲内に制御することにより、喉に残る刺激感が抑制され、かつ酸味のキレの良好な酸性飲料が得られることを見出した。
【0008】
本発明によれば、ルチンを含有するにも拘わらず、喉に残る刺激感が抑制され、かつ酸味のキレの良好な酸性飲料を提供することができる。
【0009】
本発明の酸性飲料は、成分(A)としてルチンを含有する。
本発明の酸性飲料中の成分(A)の含有量は0.00001〜0.002質量%であるが、生理効果発現の観点から、0.00005質量%以上が好ましく、0.00007質量%以上がより好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましく、0.0003質量%以上が殊更に好ましく、また酸味のキレ改善の観点から、0.0018質量%以下が好ましく、0.0015質量%以下がより好ましく、0.0012質量%以下が更に好ましく、0.0008質量%以下が殊更に好ましい。成分(A)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.00005〜0.0018質量%であり、より好ましくは0.00007〜0.0015質量%であり、更に好ましくは0.0001〜0.0012質量%であり、殊更に好ましくは0.0003〜0.0008質量%である。なお、成分(A)の含有量は、通常知られているルチンの分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の液体クロマトグラフィーで分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0010】
また、本発明の酸性飲料は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善するために、成分(B)として塩化物イオンを含有する。なお、成分(B)は、本発明の酸性飲料中に塩化物の形態で配合することができる。塩化物としては、本発明の酸性飲料中にて塩化物イオンに解離するものであればよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の一価の金属との塩化物や、塩化マグネシウム等の二価の金属との塩化物が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を含有することができる。中でも、より一層の酸味のキレ改善の観点から、一価の金属との塩化物が好ましい。
【0011】
本発明の酸性飲料中の成分(B)の含有量は、酸味のキレ改善の観点から、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上がより更に好ましく、0.08質量%以上が殊更に好ましく、そして0.4質量%以下が好ましく、0.35質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.25質量%以下が殊更に好ましく、0.24質量%以下が殊更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.0005〜0.4質量%であり、より好ましくは0.001〜0.35質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.3質量%であり、殊更に好ましくは0.03〜0.25質量%であり、殊更に好ましくは0.08〜0.24質量%である。なお、成分(B)の含有量は、添加された塩化物由来の塩化物イオンの量のみならず、その他配合成分に由来する量も含む。また、成分(B)の含有量は、通常知られている塩化物イオンの分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の硝酸銀滴定法のみならず、イオンクロマトグラフ法やイオン電極法でも分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0012】
また、本発明の酸性飲料中の成分(A)と、成分(B)との質量比 [(B)/(A)]は1〜1000であるが、より一層の酸味のキレ改善の観点から、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、8以上が殊更に好ましく、20以上が殊更に好ましく、60以上が殊更に好ましく、90以上が殊更に好ましく、そして500以下が好ましく、400以下がより好ましく、350以下が更に好ましく、300以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは2〜500であり、より好ましくは4〜400であり、更に好ましくは6〜350であり、殊更に好ましくは8〜300であり、殊更に好ましくは20〜300であり、殊更に好ましくは60〜300であり、殊更に好ましくは90〜300である。
【0013】
本発明の酸性飲料は、成分(C)として甘味料を含有する。成分(C)を含有することにより、成分(B)と相まって、酸性飲料における成分(A)由来の喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善することができる。
(C)甘味料としては、例えば、糖質系甘味料、高甘味度甘味料等が挙げられる。ここで本明細書において「高甘味度甘味料」とは、ショ糖と比べて十倍から千倍の甘味を有し、微量の添加で飲食品に甘味を付与することができる人工又は天然の甘味料を意味する。
糖質系甘味料としては、例えば、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース、D−プシコース、D−アロース等の単糖;乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖、セロビオース等の二糖;エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、還元デンプン糖化物等の糖アルコールが挙げられる。また、高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア(レバウディオサイド、ステビオサイド)、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、甘草、羅漢果、ネオテーム、マビンリン、ブラゼイン、モネリン、グリチルリチン、アリテーム、チクロ、ズルチン、ネオヘスペリジン等が挙げられる。成分(C)は、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、成分(C)としては、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、(C1)高甘味度甘味料を含有することが好ましい。高甘味度甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア及びソーマチンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、更にスクラロース、アセスルファムカリウム及びステビアから選ばれる1種又は2種以上が喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から好ましく、殊更に好ましくはスクラロース及びアセスルファムカリウムから選択される少なくとも1種である。
【0014】
本発明の酸性飲料中の成分(C1)の含有量は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましく、0.001質量%以上が更に好ましく、0.005質量%以上が殊更に好ましく、そして5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が殊更に好ましい。かかる成分(C1)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.0005〜1質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.1質量%であり、殊更に好ましくは0.005〜0.05質量%である。なお、成分(C1)の含有量は、通常知られている高甘味度甘味料の分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。例えば、下記の方法で分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
(1)スクラロース
試料を水又はエタノールで中和後、超音波抽出を行い、抽出液を固相抽出カラム(例えば、Bond Elut C18(アジレント・テクノロジー株式会社))に通液後、メタノールで洗浄する。得られた洗浄液を濃縮、乾固し、水を加えて定容する。得られた試料をサンプリングしてHPLCにて測定する。この際、検出器はRIにて行うのが好ましい。
(2)アセスルファムカリウム
試料を0.01mol/Lリン酸二水素アンモニウム及びメタノールの混液(容量比1:1)で溶解抽出後、遠心分離する。その後、メンブランフィルターで濾過後、定容する。得られた試料をサンプリングしてHPLCにて測定する。この際、検出器はRIにて行うのが好ましい。
(3)ソーマチン
試料中の共存タンパク質を除去する前処理をした後、高速液体クロマトグラフィー分析、MSスペクトルで分析することができる。また、モノクロナール抗体法やポリクロナール抗体法により分析することもできる。
(4)ステビア
レバウシドAは、アセトニトリル−水混合液によって抽出した後、NH
2カラムを用いたHPLCにより分析することができる。
(5)アスパルテーム
メタノール溶媒を用い、高速液体クロマトグラフィーで分析することができる。検出器はUV(210nm)を用いるのが望ましい。
【0015】
また、本発明の酸性飲料中の成分(A)と成分(C1)との質量比[(C1)/(A)]は、より一層の喉に残る刺激感の抑制、及び酸味のキレ改善の観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、20以上が殊更に好ましく、そして100以下が好ましく、70以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、40以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(C1)/(A)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜100であり、より好ましくは5〜70であり、更に好ましくは10〜50であり、殊更に好ましくは20〜40である。
【0016】
本発明の酸性飲料中の成分(B)と成分(C1)との質量比[(C1)/(B)]は、より一層の喉に残る刺激感の抑制、及び酸味のキレ改善の観点から、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、0.05以上が殊更に好ましく、そして5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、1以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(C1)/(B)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.001〜5であり、より好ましくは0.005〜4であり、更に好ましくは0.01〜3であり、殊更に好ましくは0.05〜1である。
【0017】
本発明の酸性飲料中の成分(C)の含有量は、ショ糖甘味換算濃度により規定される。本明細書において「ショ糖甘味換算濃度」とは、本発明の酸性飲料における成分(C)濃度と同じ濃度の成分(C)水溶液の甘味をショ糖濃度に換算した値をいう。具体的には、下記の表1に示す数式のxに、本発明の酸性飲料中の成分(C)濃度(質量%)を当て嵌めることにより、成分(C)のショ糖甘味換算濃度yを算出することができる。なお、表1に示す数式は、所定濃度のショ糖水溶液の甘味と同等の甘さを有する成分(C)の濃度を決定し、その操作を繰り返して、得られたショ糖濃度と成分(C)の濃度との測定値から最小二乗法により求めたものである。なお、表1に記載のない甘味料についても同様の操作により最小二乗法により数式を求め、被験甘味料のショ糖甘味換算濃度を算出することができる。
【0019】
成分(C)を2種以上含有する場合、成分(C)のショ糖甘味換算濃度は、使用する各甘味料のショ糖甘味換算濃度の総和として求めることができる。
本発明の酸性飲料中の成分(C)のショ糖甘味換算濃度による含有量は1〜9質量%であるが、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、そして、8.5質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。かかるショ糖甘味換算濃度の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは2〜8.5質量%であり、より好ましくは3〜8質量%である。
【0020】
更に、本発明の酸性飲料は、喉に残る刺激感をより一層抑制し、かつ酸味のキレを増強するために、成分(D)として多価アルコールを含有してもよい。成分(D)としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等を挙げることができる。中でも、グリセリンが好ましい。
【0021】
本発明の酸性飲料中の成分(D)の含有量は、嗜好性に応じて適宜選択することが可能であるが、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上が更に好ましく、0.004質量%以上が殊更に好ましく、0.006質量%以上が殊更に好ましく、0.009質量%以上が殊更に好ましく、0.08質量%以上が殊更に好ましく、そして1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましく、0.4質量%以下が殊更に好ましく、0.2質量%以下が殊更に好ましい。成分(D)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.0001〜1質量%であり、より好ましくは0.0005〜0.8質量%であり、更に好ましくは0.002〜0.6質量%であり、殊更に好ましくは0.004〜0.4質量%であり、殊更に好ましくは0.006〜0.2質量%であり、殊更に好ましくは0.009〜0.2質量%であり、殊更に好ましくは0.08〜0.2質量%である。なお、成分(D)の含有量は、通常知られている多価アルコールの分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載のガスクロマトグラフで分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0022】
本発明の酸性飲料中の成分(A)と成分(D)との質量比[(D)/(A)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、6以上が殊更に好ましく、10以上が殊更に好ましく、60以上が殊更に好ましく、そして150以下が好ましく、140以下がより好ましく、130以下が更に好ましく、120以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(D)/(A)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜150であり、より好ましくは2〜140であり、更に好ましくは4〜130であり、殊更に好ましくは6〜120であり、殊更に好ましくは10〜120であり、殊更に好ましくは60〜120である。
【0023】
また、本発明の酸性飲料中の成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、0.8以上が殊更に好ましく、1.2以上が殊更に好ましく、1.5以上が殊更に好ましく、12以上が殊更に好ましく、そして50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が更に好ましく、35以下が殊更に好ましく、30以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(D)/(B)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.01〜50であり、より好ましくは0.1〜45であり、更に好ましくは0.4〜40であり、殊更に好ましくは0.8〜35であり、殊更に好ましくは1.2〜30であり、殊更に好ましくは1.5〜30であり、殊更に好ましくは12〜30である。
【0024】
更に、本発明の酸性飲料は、喉に残る刺激感をより一層抑制し、かつ酸味のキレを増強するために、成分(E)としてオリゴ糖を含有することができる。ここで本明細書において「オリゴ糖」とは、3個以上の単糖がグリコシド結合によって結合した糖類、すなわち糖鎖数が3以上の糖類である。オリゴ糖としては、鎖状オリゴ糖が好ましい。ここで本明細書において「鎖状オリゴ糖」とは、単位構成糖が直鎖状及び/又は分岐鎖状に結合したオリゴ糖をいい、単位構成糖が環状に結合した環状オリゴ糖を包含しない概念である。鎖状オリゴ糖としては、本発明の効果を享受しやすい点で、直鎖オリゴ糖が好ましい。単位構成糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、マンノースが挙げられ、中でも、グルコースが好ましい。単位構成糖の結合方式としては、α−1,4結合及びα−1,6結合から選択される1種又は2種が好ましい。このような鎖状オリゴ糖として、例えば、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、アラビノオリゴ糖等が挙げられ、中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、マルトオリゴ糖が好ましい。
【0025】
マルトオリゴ糖は、グルコースがα−1,4−グルコシド結合により直鎖状に結合したオリゴ糖である。市販品としては、例えば、フジオリゴ♯450、フジオリゴ♯450P、フジオリゴG67(商品名、日本食品化工株式会社製)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の酸性飲料中の成分(E)の含有量は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、そして1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく0.1質量%以下が更に好ましい。成分(E)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.1質量%である。なお、成分(E)の含有量は、通常知られている多価アルコールの分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の高速液体クロマトグラフィー質量分析法で分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0027】
また、本発明の酸性飲料中の成分(A)と成分(E)との質量比[(E)/(A)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、1以上が好ましく、10以上がより好ましく、50以上が更に好ましく、そして200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。かかる質量比[(E)/(A)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜200であり、より好ましくは10〜150であり、更に好ましくは50〜100である。
【0028】
また、本発明の酸性飲料中の成分(B)と成分(E)との質量比[(E)/(B)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、そして100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。かかる質量比[(E)/(B)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜100であり、より好ましくは5〜50であり、更に好ましくは10〜20である。
【0029】
また、本発明の酸性飲料中の成分(A)と、成分(D)及び成分(E)の総和との質量比[[(D)+(E)]/(A)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、1以上が好ましく、10以上がより好ましく、50以上が更に好ましく、そして200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。かかる質量比[[(D)+(E)]/(A)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜200であり、より好ましくは10〜150であり、更に好ましくは50〜100である。
【0030】
また、本発明の酸性飲料中の成分(B)と、成分(D)及び成分(E)の総和との質量比[[(D)+(E)]/(B)]は、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、そして100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。かかる質量比[[(D)+(E)]/(B)]の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは1〜100であり、より好ましくは5〜50であり、更に好ましくは10〜20である。
【0031】
更に、本発明の酸性飲料は、pH調整、風味の観点から、成分(F)として酸味料を含有することができる。成分(F)としては飲食品の分野において通常酸味料として使用されているものであれば特に限定されないが、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、リン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アスコルビン酸、リン酸、クエン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0032】
本発明の酸性飲料中の成分(F)の含有量は、風味の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が殊更に好ましく、そして1質量%以下が好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.7質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が殊更に好ましい。かかる成分(F)の含有量の範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.9質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.7質量%であり、殊更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。なお、成分(F)が塩の形態である場合、成分(F)の含有量はその遊離酸量に換算した値とする。なお、成分(F)の含有量は、通常知られているカルボン酸の分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の高速液体クロマトグラフ分析法で分析することが可能である。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0033】
本発明の酸性飲料のpH(20℃)は2〜5.4であるが、酸味のキレ改善の観点から、2.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、3.2以上が更に好ましく、そして5以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。かかるpHの範囲としては、本発明の酸性飲料中に、好ましくは2.5〜5であり、より好ましくは3〜4.5であり、更に好ましくは3.2〜4である。なお、pHは、酸性飲料約100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をして測定するものとする。
【0034】
本発明の酸性飲料は、所望により香料、果汁、植物エキス、炭酸ガス、ビタミン、ミネラル、エステル、色素、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上含有することができる。なお、添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
本発明の酸性飲料は、非アルコール飲料でも、アルコール飲料でもよいが、喉に残る刺激感を抑制し、かつ酸味のキレを改善する観点から、非アルコール飲料が好ましい。非アルコール飲料とは、エタノールが1質量%未満の飲料を意味し、例えば、炭酸飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、ニアウォーター、コーヒー飲料、茶飲料、ビアテイスト飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等を挙げることができる。アルコール飲料としては、例えば、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等を挙げることができる。
【0036】
本発明の酸性飲料は適宜の方法により製造することができるが、例えば、特定量の成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、所望により他の成分を配合し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B) /(A) ]、甘味度及びpHを特定範囲内に調整することにより製造することができる。
【0037】
本発明の酸性飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、瓶等の通常の包装容器に充填し容器詰酸性飲料として提供することができる。
【0038】
本発明の酸性飲料は、加熱殺菌されていてもよく、加熱殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されるものではない。例えば、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)、充填後殺菌法(パストリゼーション)等を挙げることができる。
また、加熱殺菌法を適宜選択することも可能であり、例えば、金属缶、瓶のように、飲料を容器に充填後、容器ごと加熱殺菌(例えば60〜140℃、1〜60分)できる場合にあってはレトルト殺菌や充填後殺菌法(パストリゼーション)を採用することができる。充填後殺菌法(パストリゼーション)の場合、例えば65℃で1〜60分間、好ましくは65℃で5〜30分間、更に好ましくは65℃で10〜20分間で加熱殺菌することができる。
また、PETボトルのようにレトルト殺菌できないものについては、飲料をあらかじめ上記と同等の殺菌条件(例えば65〜140℃で0.1秒〜30分間、好ましくは70〜125℃で1秒〜25分間、更に好ましくは75〜120℃で10秒〜20分間)で加熱殺菌し、無菌環境下で殺菌処理した容器に充填するアセプティック充填や、ホットパック充填等を採用することができる。
【実施例】
【0039】
1.ルチンの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により行った。移動相A液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、B液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0040】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 95% 5%
20 80% 20%
40 30% 70%
41 0% 100%
46 0% 100%
47 95% 5%
60 95% 5%
【0041】
2.塩化物イオンの分析
試料5gに0.01mol/Lの塩酸1gを添加した後、イオン交換水で50gまでメスアップして測定試料とし、硝酸銀滴定法(上水試験法
-2001 VI-2 4.3)に準じた方法で分析を行った。試料中の塩化物イオンの定量値は、塩酸のみを添加したブランク測定との差分から算出した。
【0042】
3.酸味料の分析
(1)カルボン酸の分析
試料10gに5%過塩酸5mLを加え、水で50mLに定容する。これを必要に応じて各種カルボン酸の検量線の範囲内に入るように水で希釈したものを試験溶液とする。試験溶液を高速液体クロマトグラフに注入し、電気伝導度を測定し、各種カルボン酸を検量線より算出する。
・分離カラム:Shim-pack SCR-102H(島津製作所製)
・移動相 :5mmol/L p−トルエンスルホン酸
・検出試薬:5mmol/L p−トルエンスルホン酸、
100μmol/L EDTA、
20mmol/L Bis−Tris緩衝液
・注入量:10μL
・流量 :0.8mL/分
・電気伝導度検出器:CDD−10AVP(島津製作所製)
・温度 :40℃
【0043】
4.多価アルコールの分析
(1)プロピレングリコールの分析
プロピレングリコールの分析は、次に示すガスクロマトグラフ法にしたがって行う。分析機器は、GC−17A(島津製作所社製)を使用する。分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :FID
・カラム :DB−WAX、φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm(J&W Scientific社製)
【0044】
分析条件は次の通りである。
・温度 :試料注入口及び検出機250℃
・ガス圧力:ヘリウム(キャリアガス)150kPa
・注入量 :1μL
・注入方法:スプリットレス
【0045】
以下の手順にて分析用試料を調製する。
検体5gを量りとり、これにテトラヒドロフランを加えて25mLに定容する。その溶液をディスクろ過し、試料溶液とする。調製した試料溶液をガスクロマトグラフ分析に供する。
【0046】
(2)グリセリンの分析
グリセリンの分析は、次に示すガスクロマトグラフ法にしたがって行う。分析機器は、GC−14A(島津製作所社製)を使用する。分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :FID
・カラム :Chromosorb 101、ガラス管φ3mm×1m
【0047】
分析条件は次の通りである。
・温度 :試料注入口及び検出機250℃、カラム190℃
・ガス流量:窒素50mL/min
・ガス圧力:水素 0.6kg/cm
2、空気 0.5kg/cm
2
・注入量 :2μL
【0048】
以下の手順にて分析用試料を調製する。
検体5gを量りとり、これに内標準(トリメチレングリコール)20mgとメタノールを加えて10mLに定容する。それを試料溶液として、ガスクロマトグラフ分析に供する。
【0049】
5.オリゴ糖の分析
試料、及び各濃度の標準溶液1.5mLに1N−NaOH水溶液を250μLと0.5Mの1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)メタノール溶液を500μL加え、70℃で30分加熱する。得られた溶液に対し、1N−HCl水溶液を250μLにて中和し、5mLのクロロホルムを加え分配し、水層を測定試料とした。上記操作により得られた測定試料について、高速液体クロマトグラフィー質量分析を用い、下記条件にて測定する。
【0050】
分析条件
・HPLC装置:型式ACQUITY UPLC、Waters製
・MS装置 :型式SYNAPT G2-S HDMS型、Waters製
・イオン化:ESI
・質量範囲:m/z 100-2500
・カラム :型式Unison UK-C18 UP(2.0×100mm,3μm)、インタクト社製
・移動相 :C液:ギ酸0.05%水溶液、D液:アセトニトリル(%D=15→90)
・流量 :0.6mL/min
・注入量 :1μL
【0051】
6.甘味度の測定方法
ショ糖の甘味度を基準として、官能評価によって甘味度を測定した。具体的には、1%のショ糖溶液の甘さを1として、1〜10%まで1%ずつ等間隔に濃度を変えたショ糖溶液で尺度をつくり、これらを標準溶液とした。この標準溶液の甘味と比較することでサンプルの甘味度を測定した。
【0052】
7.pHの測定
pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、20℃に温度調整をして測定した。
【0053】
8.官能評価
各容器詰酸性飲料の「喉に残る刺激感」、「酸味のキレ」について、専門パネル4名が下記の基準に基づいて評価し、その後評点の平均値を求めた。
【0054】
1)喉に残る刺激感
実施例4の容器詰酸性飲料の「喉に残る刺激感」を評点1とし、比較例1の容器詰酸性飲料の「喉に残る刺激感」を評点5として、下記の5段階で評価を行った。
評点1:喉に刺激感がなく問題ない
2:喉に刺激感が僅かにあるが問題ない
3:喉に刺激感がややあるが問題ない
4:喉に刺激感がある
5:喉に刺激感が強い
【0055】
2)酸味のキレ
実施例4の容器詰酸性飲料の「酸味のキレ」を評点1とし、比較例1の容器詰酸性飲料の「酸味のキレ」を評点5として、下記の5段階で評価を行った。
評点1:酸味のキレがよい
2:酸味のキレがややよい
3:酸味のキレが僅かに良い
4:酸味のキレがやや悪い
5:酸味のキレが悪い
【0056】
実施例1〜7及び比較例1〜2
表2に示す各成分を配合して飲料を調製した後、容量200mLのPETボトルに充填し加熱殺菌した(ポストミックス方式)。殺菌条件は、65℃、20分で行った。得られた容器詰酸性飲料の分析結果及び評価結果を表2に併せて示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例8〜16
表3に示す各成分を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰酸性飲料を調製した。得られた容器詰酸性飲料の分析結果及び評価結果を、実施例1の結果とともに表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例17〜21及び比較例3
表4に示す各成分を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰酸性飲料を調製した。得られた容器詰酸性飲料の分析結果及び評価結果を、比較例1の結果とともに表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表2〜4の実施例及び比較例の結果から、特定量のルチンを含有する酸性飲料において、塩化物イオン及び甘味料を含有させ、ルチンと塩化物イオンとの質量比、甘味度及びpHを特定範囲内に制御することにより、喉に残る刺激感が抑制され、かつ酸味のキレの良好な酸性飲料が得られることが分かる。