(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121630
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電池用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/52 20100101AFI20170417BHJP
C01G 49/08 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
H01M4/52
C01G49/08 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-535343(P2016-535343)
(86)(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公表番号】特表2016-534512(P2016-534512A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】CN2015081123
(87)【国際公開番号】WO2015188744
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】201410259436.2
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316014696
【氏名又は名称】ロンヂョウ ワンファー トレーディング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120019
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 敏安
(72)【発明者】
【氏名】イェン ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】ユー ハイシォン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイミン
【審査官】
小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103035907(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103173189(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102765761(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102332583(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/113196(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/136180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/52
C01G 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
300〜400メッシュで粉砕・篩分けされた四酸化三鉄、及び、粒径0.1〜3ミクロンで高純度の導電性カーボンブラックを、0.5〜1時間乾燥混合させるステップ1と、
濃度0.05M〜3Mの水酸化ナトリウム溶液を純水で配合するステップ2と、
前記ステップ1で乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、前記ステップ2で配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加し、その後0.5〜1.5時間かき混ぜ続けるステップ3と、
前記ステップ3で得られた反応溶液の中に、純水で配合された濃度0.05M〜3Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を徐々に添加し、その後、容器内全体の混合溶液の成分重量比を、四酸化三鉄:導電性カーボンブラック:水酸化ナトリウム:水素化ホウ素ナトリウム:純水=6.45〜8.86:0.645〜0.886:2.15〜2.95:1.07〜1.48:85.8〜89.68として、引き続き2〜3時間通電してかき混ぜるステップ4と、
前記ステップ4で反応完了後、前記反応溶液のエージングを行うステップ5と、
前記ステップ5でエージングされた反応溶液を純水洗浄するステップ6と、
前記ステップ6で洗浄された反応溶液を超音波分散させるステップ7と、
前記ステップ7で超音波分散された反応溶液をろ過するステップ8と、
前記ステップ8でろ過された反応溶液を乾燥させるステップ9と、
前記ステップ9で得られたものを300〜400メッシュで篩分けするステップ10と、
前記ステップ10で得られたものを密封包装してスタンバイ状態にするステップ11とを含むことを特徴とする電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、前記四酸化三鉄及び前記カーボンブラックを、70〜90:30〜10の比率で、回転速度が1分間当たり500〜1000回転という条件の下で、乾燥混合させることを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、前記水酸化ナトリウム溶液を、摂氏5〜15度の環境に置き、0.5〜1時間一定温度に維持することを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ3において、前記ステップ1で乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、摂氏5〜15度の条件の下で一定速度でかき混ぜながら、前記ステップ2で配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加することを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ4において、直流定電流源を用いて反応容器に対して1〜3Vの直流電圧及び10〜30mAの直流電流を流し、摂氏5〜15度の条件の下で一定速度でかき混ぜながら、1分間当たり3〜6ミリリットルの流速で、前記水素化ホウ素ナトリウム溶液を前記反応溶液内に添加することを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ5において、前記エージング工程を、摂氏−1〜0度の条件の下で、10〜24時間行うことを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ6において、前記洗浄工程を、前記反応溶液のPH値が6〜9になるまで
行うことを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ7において、前記超音波分散工程を、1〜3時間行うことを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ9において、前記乾燥工程を、摂氏90〜100度の条件の下で行うことを特徴とする請求項1に記載の電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池製造材料技術分野に関し、特に電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル鉄電池は、多くの充電式電池の中の1種類であり、陰極が酸化ニッケル、陽極が鉄であり、電解質(電解液)は水酸化カリウムである。ニッケル鉄電池の電圧は、通常1.2Vである。このような電池は、耐久性を有し、一定程度の使用過程での事故(例えば過充電、過放電、短絡及び過熱)に耐えることができ、しかも、上述した損傷を耐えたあとにでも長い寿命を維持することができる。
【0003】
鉄の負極とニッケルの正極とに関する研究及び応用は、既に100年以上の歴史を有する。1887年にDesmazures等により、酸化ニッケルが正極の活性物質としてアルカリ電池における応用の可能性について討論され、1899年にスウェーデンのユングナー(Jungner)により、ニッケルカドミウム電池が発明され、1900年にアメリカのエジソン(Edison)により、ニッケル鉄電池が発明された。ユングナー及びエジソンは、1901年から連携し、ニッケルカドミウム電池及びニッケル鉄電池に関する複数の特許を有する。
【0004】
ニッケル鉄電池は、運輸の動力としての応用に関して良好な将来性を有し、アメリカ、ソ連、スウェーデン、西ドイツ及び日本において、様々な応用分野で商業上における十分の発展を果たした。1980年代から1990年代初め、インドのカライクディ(Karaikudi)電気化学中央研究所及びインド科学院固体構造科学部によって、ニッケル鉄電池の体系について大量の研究が行われた。1990年代後半から現在に亘って、国内外のさらに多くの学者が様々な分野の研究を行っており、ニッケル鉄電池は再び実用化の道を歩むようになった。
【0005】
現在製造されている鉄電極用の一般四酸化三鉄は、グラム当たりの容量が僅か50〜100ミリアンペアである。この場合、製造されたニッケル鉄電池の充放電効率が低く、高率放電が実現されず、自己放電が多く、密封が不可能であり、生産工程の複雑さによって使用及び発展が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電池の鉄電極用一般四酸化三鉄のグラム当たりの容量が低く、充放電の効率が低く、高率放電が実現されず、自己放電が多く、密封が不可能及び生産工程が複雑等の欠点を解決すべく、グラム当たりの容量が高く、充放電の効率が高く、高率放電が可能であり、自己放電が少なく、密封可能で且つ工程が簡単であり、コストが低く、強度が高く且つ寿命が長い電池の鉄電極用の四酸化三鉄及びその製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法を提供する。
図1は、本発明に係る工程のフロー概略図である。本発明に係る製造方法は、以下のステップを含む。
【0008】
ステップ1:300〜400メッシュで粉砕・篩分けされた四酸化三鉄、及び、粒径0.1〜3ミクロンで高純度の導電性カーボンブラックを、70〜90:30〜10という
比率で、回転速度が1分間当たり500〜1000回転という条件の下で、0.5〜1時間乾燥混合させる。
【0009】
ステップ2:純水で配合された濃度0.05M〜3Mの水酸化ナトリウム溶液を、摂氏5〜15度の環境に置き、0.5〜1時間一定温度に維持する。
【0010】
ステップ3:乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、摂氏5〜15度の条件の下で一定速度でゆっくりかき混ぜながら、配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加し、その後、0.5〜1.5時間かき混ぜ続ける。
【0011】
ステップ4:直流定電流源を用いて反応容器に対して1〜3Vの直流電圧及び10〜30mAの直流電流を流し、摂氏5〜15度の条件の下で一定速度でゆっくりかき混ぜながら、1分間当たり3〜6ミリリットルの流速で、純水で配合された濃度が0.05M〜3Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を反応溶液内に徐々に添加し、その後、容器内全体の混合溶液の成分重量比を、四酸化三鉄:導電性カーボンブラック:水酸化ナトリウム:水素化ホウ素ナトリウム:純水=6.45〜8.86:0.645〜0.886:2.15〜2.95:1.07〜1.48:85.8〜89.68として、引き続き2〜3時間通電してかき混ぜる。
【0012】
ステップ5:反応完了後、摂氏−1〜0度の条件の下で、10〜24時間、エージングを行う。
【0013】
ステップ6:PH値が6〜9になるまで、純水洗浄する。
【0014】
ステップ7:1〜3時間、超音波分散させる。
【0015】
ステップ8:ろ過する。
【0016】
ステップ9:摂氏90〜100度の条件の下で、乾燥させる。
【0017】
ステップ10:300〜400メッシュで篩分けする。
【0018】
ステップ11:密封包装して、スタンバイ状態にする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電池電極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄を用いて生産されたニッケル鉄電池は、1C充放電、5C充放電、10C充放電、20C充放電及び30C充放電性能が優れ、高率放電性能を有し、グラム当たりの容量が400MAH以上に達し、サイクルの寿命が安定であり、1C充放電のサイクル寿命は300回以上に達する。本発明に係るカーボン被覆ナノ四酸化三鉄を用いて生産されたニッケル鉄電池は、良好な電気性能、環境保全性、安全性及び長寿性等の利点を有し、特に電気自動車分野に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施形態に係る技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施形態を説明するのに必要な図面について簡単に説明する。以下の図面についての説明は、本発明の実施形態の一部にすぎず、当業者が創造的な業務を行わない前提の下で、これらの図面に基づいてほかの図面を得ることができる。
【0021】
【
図2】処理されていない四酸化三鉄と実施形態2で得られたカーボン被覆ナノ四酸化三鉄とのXRDチャートである。
【
図3】処理されていない四酸化三鉄のSEM画像である。
【
図4】カーボン被覆ナノ四酸化三鉄のSEM画像である。
【
図5】処理されていない四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池のサイクル寿命を測定する曲線図である。
【
図6】カーボン被覆四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池のサイクル寿命を測定する曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面と併せて、本発明の実施形態における技術的解決手段について明確且つ完全に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態の一部にすぎず、本発明の実施形態のすべてでないことは明らかである。本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な業務を行わない前提の下で得られたすべてのほかの実施形態は、本発明の保護範囲内に属す。
【0023】
<実施形態1>
本発明の1つの好ましい実施形態として、具体的な電池負極用カーボン被覆ナノ四酸化三鉄の製造方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
【0024】
ステップ1:20グラムに正確に秤量された水酸化ナトリウムを、500ミリリットルの純水に溶解させ、溶解が完了した後に、室温まで冷却する。それから、水酸化ナトリウム溶液を摂氏10度の環境に置き、30分間一定温度に維持する。
【0025】
ステップ2:60グラムに正確に秤量され、400メッシュで粉砕・篩分けされた四酸化三鉄の粉末、及び、6グラムに正確に秤量された粒径0.1〜3ミクロンで高純度の導電性カーボンブラックを、回転速度が1分間当たり500〜1000回転という条件の下で、30分間乾燥混合させる。
【0026】
ステップ3:乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、環境温度10度、回転速度が1分間当たり500〜1000回転という条件の下で、配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加し、その後、30分間かき混ぜ続ける。
【0027】
ステップ4:10グラムに正確に秤量された水素化ホウ素ナトリウムを、250ミリリットルの純水に溶解させる。
【0028】
ステップ5:反応容器に対して1.1Vの直流電圧及び30ミリアンペアの直流電流を流し、摂氏5〜15度の条件の下で一定速度でゆっくりかき混ぜながら、1分間当たり5ミリリットルの流速で、配合された水素化ホウ素ナトリウム溶液を反応溶液内に徐々に添加し、その後、引き続き3時間通電してかき混ぜる。
【0029】
ステップ6:氷水の条件の下で、一晩10時間エージングを行う。
【0030】
ステップ7:PH値が7〜8になるまで、80度の純水で洗浄する。
【0031】
ステップ8:1時間、超音波分散させる。
【0033】
ステップ10:摂氏85度の条件の下で、乾燥させる。
【0034】
ステップ11:300メッシュで篩分けする。
【0035】
ステップ12:密封包装して、スタンバイ状態にする。
【0036】
<実施形態2>
ステップ1:2グラムに正確に秤量された水酸化ナトリウムを、500ミリリットルの純水に溶解させ、溶解が完了した後に、室温まで冷却する。それから、水酸化ナトリウム溶液を摂氏5度の環境に置き、30分間一定温度に維持する。
【0037】
ステップ2:48グラムに正確に秤量され、400メッシュで粉砕・篩分けされた四酸化三鉄の粉末、及び、12グラムに正確に秤量された粒径3ミクロンで高純度の導電性カーボンブラックを、回転速度が1分間当たり1000回転という条件の下で、60分間乾燥混合させる。
【0038】
ステップ3:乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、環境温度5度、回転速度が1分間当たり800回転という条件の下で、配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加し、その後、1.5時間かき混ぜ続ける。
【0039】
ステップ4:0.5グラムに正確に秤量された水素化ホウ素ナトリウムを、250ミリリットルの純水に溶解させる。
【0040】
ステップ5:反応容器に対して2Vの直流電圧及び10ミリアンペアの直流電流を流し、摂氏10度の条件の下で一定速度でゆっくりかき混ぜながら、1分間当たり6ミリリットルの流速で、配合された水素化ホウ素ナトリウム溶液を反応溶液内に徐々に添加し、その後、引き続き2.5時間通電してかき混ぜる。
【0041】
ステップ6:氷水の条件の下で、一晩12時間エージングを行う。
【0042】
ステップ7:PH値が9になるまで、80度の純水で洗浄する。
【0043】
ステップ8:2時間、超音波分散させる。
【0045】
ステップ10:摂氏90度の条件の下で、乾燥させる。
【0046】
ステップ11:300メッシュで篩分けする。
【0047】
ステップ12:密封包装して、スタンバイ状態にする。
【0048】
<実施形態3>
ステップ1:60グラムに正確に秤量された水酸化ナトリウムを、500ミリリットルの純水に溶解させ、溶解が完了した後に、室温まで冷却する。それから、水酸化ナトリウム溶液を摂氏15度の環境に置き、1時間一定温度に維持する。
【0049】
ステップ2:70グラムに正確に秤量され、300メッシュで粉砕・篩分けされた四酸化三鉄の粉末、及び、6グラムに正確に秤量された粒径0.1ミクロンで高純度の導電性カーボンブラックを、回転速度が1分間当たり500回転という条件の下で、30分間乾燥混合させる。
【0050】
ステップ3:乾燥混合された四酸化三鉄の粉末及び導電性カーボンブラックを、環境温度15度、回転速度が1分間当たり1000回転という条件の下で、配合された水酸化ナトリウム溶液内に添加し、その後、1時間かき混ぜ続ける。
【0051】
ステップ4:27.5グラムに正確に秤量された水素化ホウ素ナトリウムを、250ミリリットルの純水に溶解させる。
【0052】
ステップ5:反応容器に対して3Vの直流電圧及び30ミリアンペアの直流電流を流し、摂氏15度の条件の下で一定速度でゆっくりかき混ぜながら、1分間当たり3ミリリットルの流速で、配合された水素化ホウ素ナトリウム溶液を反応溶液内に徐々に添加し、その後、引き続き2時間通電してかき混ぜる。
【0053】
ステップ6:氷水の条件の下で、24時間エージングを行う。
【0054】
ステップ7:PH値が6になるまで、80度の純水で洗浄する。
【0055】
ステップ8:3時間、超音波分散させる。
【0057】
ステップ10:摂氏100度の条件の下で、乾燥させる。
【0058】
ステップ11:400メッシュで篩分けする。
【0059】
ステップ12:密封包装して、スタンバイ状態にする。
【0060】
<実施形態4>
処理されていない四酸化三鉄、及び、実施形態2で得られたカーボン被覆ナノ四酸化三鉄に対して、XRD(X線回折)チャート及びSEM(走査型電子顕微鏡)画像の比較分析を行う。処理されていない四酸化三鉄は、0
#サンプルであり、本発明の実施形態2で得られたサンプルは、3
#サンプルである。
【0061】
図2は、0
#サンプル及び3
#サンプルのXRDチャートを示す。分析により、0
#及び3
#サンプルの主な成分は、両方ともFe
3O
4であり、しかも不純物相Fe
2O
3及びFeOが伴っている。0
#サンプルのXRDの各ピークが比較的鋭い一方、3
#サンプルの各ピークは比較的にそれほど鋭くない。このように、3
#サンプルがこのようなXRDチャートを示すのは、Fe
3O
4がカーボンで被覆されたためである。さらに、3
#サンプルでは、2θ=26°前後において、1つのあまり目立たないピークが現れる。
【0062】
図3は、0
#サンプルのSEM画像であり、
図4は、3
#サンプルのSEM画像である。これらSEM画像から、0
#サンプルの相粒子は、比較的単一であり、主に一部のミクロンレベルの塊状物である一方、3
#サンプルは、2種類の相粒子から組み合わされ、ミクロンレベルの塊状物は、サイズが50〜60nm前後の集合された小粒子によって被覆されている。
【0063】
<実施形態5>
カーボン被覆されていない四酸化三鉄、及び、本発明の工程を経てカーボン被覆された四酸化三鉄を用いて、それぞれAA600mAh密封ニッケル鉄電池を製作し、さらに、電池の関連性能を測定したデータを比較する。カーボン被覆されていない四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池は、「被覆前」項目であり、本発明の工程
を経てカーボン被覆された四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池は、「被覆後」項目である。
【0066】
上記の測定データからわかるように、被覆後の極片の純鉄粉量は、被覆前の極片の純鉄粉量より少ない。グラム当たりの容量は、被覆前が76.67mAh/gである一方、被覆後が233.33mAh/gである。被覆後の電池サンプルのグラム当たりの容量は、被覆前の電池サンプルの3.04倍である。被覆前の電池サンプルの定電流放電終止容量は、それぞれ145.327mAh及び230.660mAhである一方、被覆後の電池サンプルの定電流放電終止容量は、それぞれ624.033mAh及び631.367m
Ahである。本発明の工程を経てカーボン被覆された四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量は、カーボン被覆されていない四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量の2.7倍〜4.34倍である。80回サイクル充放電の後、被覆前の電池の容量は64%しか残らなかったが、被覆後の電池の容量は90%残った。
【0067】
次に、
図5及び
図6を参照する。
図5は、カーボン被覆されていない四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量がサイクル回数の増加に従って変化する曲線図である。
図6は、本発明の工程を経てカーボン被覆された四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量がサイクル回数の増加に従って変化する曲線図である。サイクル寿命の測定曲線からわかるように、カーボン被覆されていない四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量のサイクル回数の増加に従った変化は、非常に不穏である一方、本発明の工程を経てカーボン被覆された四酸化三鉄で製作されたAA600mAh密封ニッケル鉄電池の容量のサイクル回数の増加に従った変化は、非常に平穏である。
【0068】
上述した本発明の好ましい実施形態は、本発明の内容について具体的に説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。