特許第6121640号(P6121640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6121640
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】紐のお香
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20170417BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20170417BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20170417BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/97
   A61K8/19
   A61Q13/00 200
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-8569(P2017-8569)
(22)【出願日】2017年1月20日
【審査請求日】2017年1月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594168517
【氏名又は名称】株式会社薫寿堂
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100173635
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 樹里
(72)【発明者】
【氏名】福永 寿一
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3154481(JP,U)
【文献】 実開昭58−090227(JP,U)
【文献】 実開昭54−150548(JP,U)
【文献】 特開平02−251646(JP,A)
【文献】 特開2015−113333(JP,A)
【文献】 特開2007−022967(JP,A)
【文献】 特開2006−097222(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3083422(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C11B 9/00− 9/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材の組紐からなる鞘部と、当該鞘部に囲包されている天然素材の糸からなる芯部と、を含む芯−鞘構造の担体に、香料、及び0.5〜5.0重量%の助燃剤を含させてなり、
前記担体の鞘部の内部の芯部にまで香料及び助燃剤が含まれる
ことを特徴とするお香。
【請求項2】
前記助燃剤が、金属硝酸塩である、請求項1に記載のお香。
【請求項3】
前記金属硝酸塩が、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウムである、請求項2に記載のお香。
【請求項4】
前記鞘部及び芯部は、綿糸、麻糸、絹糸、及び羊毛からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のお香。
【請求項5】
前記担体の直径が2mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のお香。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のお香;
お香を巻回保持するリール部;及び
お香の燃焼部分を画定する留め具;
を備え、お香を巻き出し式とすることを特徴とする、お香製品。
【請求項7】
(A1):香料及び0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する配合液を調製する工程;及び
(A2):前記配合液に、天然素材の組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている天然素材の糸からなる芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料及び助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
【請求項8】
(B1):香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液と、を調製する工程;
(B2):前記第1の配合液に、天然素材の組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている天然素材の糸からなる芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び
(B3):前記第2の配合液に、香料を含浸させた前記担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
【請求項9】
(C1):香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液とを調製する工程;
(C2):前記第2の配合液に、天然素材の組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている天然素材の糸からなる芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び
(C3):前記第1の配合液に、助燃剤を含浸させた前記担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のお香の長さを調節し、お香の燻煙の蒸散時間を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お香に関する。より詳細には、組紐鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体に、香料、及び助燃剤を含させてなるお香に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内で香りを楽しんだり、気持ちなどを和らげたりする目的で、古くから仏事に用いられるお香のほか、各種室内用フレグランスが使用されている。
【0003】
お香としては、スティック(棒状)、コーン(三角錐)、渦巻状のインセンスや線香、粉末状の焼香や抹香、さらには身体に塗る塗香など、その種類は多種にのぼる。しかし、上記のような古くから用いられるお香は、草木粉末その他の天然基材を主成分として使用しているため、木質基材由来のタール分が煙と共に運ばれて壁に付着し、壁を汚し、特有の刺激臭がするという問題があった。このような問題に対処するために、本出願人は、基材として木炭の粉末を使用した線香や(特許文献1)、基材の一部を炭素粉末(炭粉末)に置き換えた線香(特許文献2〜5)、基材として活性アルミナを用いた線香(特許文献6)を提供している。
【0004】
一方で、従来のお香は、着火しにくいという問題や、木材臭いものや漢方薬臭いものが多く香りが洗練されていないという問題、曲がりやすい或いは折れやすいことから保管に適さないという問題など、現代の暮らしにマッチしない面も多々あった。そこで現代では、室内用フレグランスが幅広く使用されており、固形状、ゲル状、スプレー式、芳香器を使用するものなどあらゆる種類のものが存在する。しかし、室内用フレグランスは、拡散が遅いこと、拡散が部分的であること、価格が高いこと、香りが不満であることなどと消費者を満足させるのに充分とはいえなかった。
【0005】
また、本発明者は、植物性繊維及び無機粉末からなる紙組織に、芳香成分の分子を閉じ込めた包接化合物を担持させた紙様お香(特許文献7)や、植物性撚糸や植物性紐に調合香料を含有させたお香を提案している(特許文献8)。しかし、紙、撚糸、紐の表面に香料が付加されるだけで、全体に均一に十分な量の香料を含浸させることができず、安定した薫煙持続効果と十分な量の香料成分の拡散効果を両立させることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−58245号公報
【特許文献2】特開平9−136820号公報
【特許文献3】特開2004−75581号公報
【特許文献4】特開2005−8544号公報
【特許文献5】特開2007−22967号公報
【特許文献6】特開2015−113333号公報
【特許文献7】特開2008−214285号公報
【特許文献8】実用新案登録第3154481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、タール分の問題を解決しつつ、安定した薫煙持続効果と香りの拡散効果を備えるお香を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体にお香成分を含浸させることにより、組紐の鞘部にお香成分配合液の流路が形成され、鞘部に囲包されている芯部の中心部にまで十分な量のお香成分配合液を含浸させることができ、且つ乾燥後に芯−鞘構造にお香成分を保持できることを知見した。
【0009】
本発明は、これらに限定されるものではないが、以下の態様の発明を包含する。
[1]組紐からなる鞘部と、当該鞘部に囲包されている芯部と、を含む芯−鞘構造の担体に、香料、及び0.5〜5.0重量%の助燃剤を含させてなり、
前記担体の鞘部の内部の芯部にまで香料及び助燃剤が含まれる
ことを特徴とするお香。
[2]前記助燃剤が、金属硝酸塩である、[1]に記載のお香。
[3]前記金属硝酸塩が、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウムである、[2]に記載のお香。
[4]前記鞘部及び芯部は、綿糸、麻糸、絹糸、及び羊毛からなる群から選択される1つ以上を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のお香。
[5]前記担体の直径が2mm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のお香。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のお香;
お香を巻回保持するリール部;及び
お香の燃焼部分を画定する留め具;
を備え、お香を巻き出し式とすることを特徴とする、お香製品。
[7](A1):香料及び0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する配合液を調製する工程;及び
(A2):前記配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料及び助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
[8](B1):香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液と、を調製する工程;
(B2):前記第1の配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び
(B3):前記第2の配合液に、香料を含浸させた前記担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
[9](C1):香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液とを調製する工程;
(C2):前記第2の配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び
(C3):前記第1の配合液に、助燃剤を含浸させた前記担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;
を含む、お香の製造方法。
[10][1]〜[5]のいずれかに記載のお香の長さを調節し、お香の燻煙の蒸散時間を調整する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のお香は、特許文献7に開示されているような紙を撚って作られるこより紙や、特許文献8に開示されている撚糸、布帛・織物テープ等の紐とは異なり、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体にお香成分配合液を含浸させるため、鞘部となる組紐ばかりでなく、芯部の内部にまで十分な量のお香成分が均一に含浸されており、燻煙を安定した状態で持続できる。また、タール分の発生を低減し、煙による香りの素早い拡散を維持することができる。さらに、特許文献7及び8に開示されているお香とは異なり、助燃剤を含むため、火が立ち消えすることもない。天然素材からなる担体を使用すれば、薫煙させてもオゾン層を破壊するような有毒ガスを発生せず、環境にやさしく、香りもやわらかく、目や鼻も刺激しない。
【0011】
本発明の製造方法は、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体をお香成分配合液に浸漬させて乾燥させるという簡易な方法であり、粉末基材を用いる必要がなく、熟練の技術や特別な装備を要せずに、燃焼、香り、色などの様々な機能を後加工で容易に且つ自在に付与できる。
【0012】
さらに、本発明のお香は、担体の素材が綿、麻、絹、羊毛などであるため着火しやすく、壊れにくく持ち運びも容易である。また、助燃剤を均一に含有するため持続的に薫煙し、部屋の広さや所望の匂いの強さにあわせてお香の長さを調節できるなど、従来のお香や室内フレグランスよりも使用場面が広がる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体の構造を示す模式図である。
図2図2は、実施例1のお香(線香)を示す写真である。
図3図3は、実施例1のお香の内部の写真(左:側面、右:正面)である。
図4図4は、実施例1のお香(A)、タコ糸(木綿)を担体とするお香((B):対照1)、こより紙を担体とするお香((C):対照2)の燻煙状態の比較を時系列で示す写真である。
図5図5は、組紐(a)、こより紙(b)、麻製撚糸(c)、タコ糸(d)の液体の含浸状態を比較して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明のお香は、従来の草木粉末(樹皮粉末など)や炭粉末を基材とするお香とは異なり、特定の構造を有する担体とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様は、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体に、香料、及び0.5〜5.0重量%の助燃剤を含させてなり、前記担体の鞘部の内部の芯部にまで香料及び助燃剤が含まれる、ことを特徴とするお香である。
【0017】
本発明において用いることができる芯−鞘構造の担体は、組紐からなる鞘部と、当該鞘部に囲包されている芯部と、を含む。芯部及び鞘部は、綿糸、麻糸、絹糸、及び羊毛からなる群から選択される1種以上から製造され、芯部及び鞘部は同一又は異なる糸を用いてもよい。芯部及び鞘部を構成する糸の原料は、用途に応じて、木材パルプ、古紙、楮、ミツマタ、大麻、亜麻、ジュート、苧麻、マニラ麻、木綿、竹、ケナフなどの1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。木綿糸は、一般的には、木綿の種からとれる綿を紡いだものである。麻糸は、大麻、亜麻、マニラ麻、苧麻、ジュートなどの1種以上の原料を組み合わせ、湯につけ揉み、叩解した後、繊維状にほぐし、その繊維を撚った糸をいう。
【0018】
鞘部を構成する組紐は、市販の組紐を用いることもできるし、前記糸を公知の製紐機を用いて通常の方法で製造することができる任意の組み方で形成した紐でもよい。芯部は前記糸を任意の数で撚り、又は単にまとめて形成することができる。芯部を構成する糸の本数は特に限定されないが、1又は複数本の糸で構成されていてよく、好ましくは3本以上、さらに好ましくは5本の糸で構成される。
【0019】
本発明で用いる担体は、例えば、複数本の糸で構成される芯部を中心にして、芯部の周囲に複数本の糸を製紐機にかけて組み上げた組紐を鞘部に組み上げることができ、通常3本以上、好ましくは8本以上、さらに好ましくは16本の糸を、丸打ち、角打ち、又は平打ちにより組み上げる方法により製造することができる。芯部及び鞘部を構成する糸の断面の直径は、各糸について同じであっても異なっていてもよく、例えば0.7mm以下、好ましくは0.05mm〜0.5mm、より好ましくは0.1mm〜0.5mmとすることができる。図1に、本発明に用いる担体の構造を例示する。図1に示される担体は、芯部を構成する複数本の糸が担体の中心部に密集した状態で配置され、組紐からなる鞘部により芯部の周囲が覆われている。組紐からなる鞘部は伸縮性を有する柔軟な構造を備えるため、鞘部の繊維密度は芯部より低く、その結果、お香成分が繊維密度の低い鞘部を容易に通過して芯部の内部まで浸透することができ、芯部にお香成分を十分に吸着させることができる。紙を撚って作られるこより紙や、糸を撚り合わせて作られる撚糸、縦糸と横糸との直角交差で織られる織紐は、組紐よりも全体の繊維密度が高く伸縮性が低い構造を有するため、鞘部として用いると芯部の糸の内部にまで成分を含させることができない。また、紐に芯部が存在しない場合、すなわち鞘部の内部が空洞の場合には、芯部にお香成分を十分に吸着させることができないことから、安定した薫煙持続効果や香りの拡散効果を発揮させることができない。
【0020】
お香の断面の形状は特に限定されず、一般的には円形であるが、角形や星形など他の形状であってもよい。断面形状は、担体の芯部を構成する糸の配置によって変えることができる。お香の太さや長さは特に限定されない。担体の断面の直径は、着火容易な程度の太さであればよく、例えば2.0mm以下、好ましくは1.0mm〜2.0mm、より好ましくは1.3mm〜1.8mmとすることができる。お香の長さは、1回使用時の薫煙時間や、使用回数に応じて適宜調節することができるが、例えば1.0cm〜5.0m、好ましくは0.1m〜2.0m、より好ましくは0.5m〜1.5mとすることができる。またお香は、長さを調節して薫煙時間を調整することができ、例えば、直径1.6mmの担体を使用した場合、5.0cmの長さのお香の薫煙時間は約4分である。
【0021】
担体の量は、特に限定されないが、お香全体量に対して、例えば、70〜95重量%、好ましくは80〜90重量%、より好ましくは80〜85重量%とすることができる。この範囲とすることにより、香料成分を十分に含させることができ、また香りを十分に拡散させるために十分な燃料速度を達成し、安定した薫煙持続効果を得ることができる。
【0022】
お香は、香料及び助燃剤を含させてなる。また、その他の成分として、無機化合物、結着剤、着色剤などが含されていてもよく、芳香効果のほか、消臭・殺菌効果や、駆虫効果などを付与する場合は、さらなる機能性成分を含させることもできる。お香は、例えば、有機溶剤及び水から選択される1種又は2種以上の溶剤に、香料、助燃剤、その他成分を溶解又は懸濁させた配合液を調製し、担体を配合液に浸漬させることで各種成分を含浸させることにより製造することができる。
【0023】
香料の種類は特に限定されないが、漢薬抽出エキス、液体香料、エッセンシャルオイルなどの香料を1種類又は2種類以上組み合わせて含有させることができる。漢薬抽出エキスの材料としては、木香、甘松香、白檀、カッ香、香附子香、冷陵香、安息香、乳香、桂皮、丁子、ウイキョウ、没薬、竜脳、貝香、唐木香、沈香、伽羅など公知のものを抽出したエキスを使用することができる。液体香料としては、天然香料及び合成香料があり、これらは市販のものを使用すればよい。また、植物などから抽出されるエッセンシャルオイルを使用しても良い。前記エッセンシャルオイルとしては、例えば、アニスシード、アーモンドビター、アミリス、アンジェリカルート、ウインターグリーン、エレミ、オールスパイスベリー、オレンジ、オニオン、オレンジマンダリン、オレンジスウィート、カジェプット、カラマスルート、カンファーホワイト、カルダモンシード、カモマイルジャーマン、カモマイルローマン、カモマイルワイルド、ガルバナム、ガーリック、キャロットシード、クローブバッズ、コリアンダーシード、クミンシード、バジルスウィート、ベンゾインアブソルート、ベルガモット、バーチスウィート、サイプレス、サンダルウッド、シナモンバーク、シダーリーフ、シダーアトラス、シダーウッドレッド、セロリーシード、シナモンバーク、シナモンリーフ、シトロネラ、スペアミント、スプルース、セイジクラリー、セイジダルマティアン、セイバリーサマー、バニラ、バーボン、ユーカリ、ユーカリレモン、フェンネルビター、フェンネルスウィート、ファーニードル、フランキンセンス、ジェラニューム、ジンジャー、グレープフルーツ、タイムレッド、タイムホワイト、トルーバルサム、ヘリクリサム、ホップフラワー、ヒソップ、ジャスミンアブソルート、ジュニパーベリー、ライム、ラバディン、ラベンダー、ラベンダーフラワー、ラベンダースパイク、レモン、レモングラス、ローレルリーフ、ロベジルート、マージョラムスウィート、マージョラムワイルド、マートル、ミラーガム、メリッサ、ネロリ、ナツメグ、パルマロサ、パチョリ、ペッパーブラック、ペパーミント、ペルーバルサム、ペティグレイン、パイン、ローズアブソルート、ローズオットー、ローズマリー、ローズウッド、マリーゴールド、タンジェリン、ティートゥリーなどが挙げられる。香料成分の含浸量(付香率)は、特に限定されないが、お香全体量に対して、例えば、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%とすることができる。香料を配合液に懸濁又は溶解させて用いる場合は、配合液全体量に対して、例えば、2〜30重量%の濃度、好ましくは3〜25重量%の濃度、より好ましくは5〜20重量%の濃度に調整することができる。配合液を2種以上用いる場合には、各配合液を100重量%とした場合の含有量を示す。この範囲とすることにより、お香から香料成分がにじみ出ることもなく、お香の意匠を損なうことがない。
【0024】
助燃剤としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウムなどの硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウムなどの過塩素酸塩などが挙げられる。香りが少ないこと、安全性が比較的高いこと、水溶性であることなどを考慮すると、硝酸塩を用いることが好ましく、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムを用いることがより好ましい。助燃剤の量は、所望の燃焼速度に応じて適宜設定すればよいが、お香全体量に対して、0.5〜5.0重量%、好ましくは1.0〜4.5重量%、より好ましくは2.0〜4.0重量%とすることができる。助燃剤は、担体に均一に分散させるために、通常液体に溶かしたものを用いることが好ましいが、粉末のままお香成分配合液に添加してもよい。助燃剤を配合液に懸濁又は溶解させて用いる場合、配合液中の助燃剤の量は適宜設定すればよいが、配合液全体量に対して、例えば、0.2〜6.0重量%であり、好ましくは1.0〜5.0重量%、より好ましくは2.0〜3.0重量%とすることができる。薫煙速度及び薫煙状態を最適な状態とするためには、配合液中の助燃剤の含有量を約2〜3重量%、お香中の含有量を約2〜4重量%とすることが特に好ましい。お香中の助燃剤の含有量が多すぎると線香花火のように火花がはじけることがある。
【0025】
お香が含み得る無機化合物としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びタルクからなる群から選択される1種又は2種以上の無機化合物を用いることができる。これらの無機化合物は、燃焼を和らげて燃焼速度を調整したり、お香に白色を与えて染色しやすくしたり、灰を白くするために用いられる。担体の灰には色が付きやすいことから、灰を白くするため、好ましくは酸化チタンを用いる。これらの無機化合物の量は、所望の特性に応じて適宜変更することができるが、お香全体量に対して、通常、0.2〜5.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%とすることができ、配合液全体量に対して、通常、0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜3.0重量%とすることができる。これらの範囲とすることにより、燃焼が速くなり過ぎたり、燃焼が抑制されすぎて立ち消えしたりなどの不安定な燃焼状態を回避することができ、また灰が固まり、まとまって落下して周囲を汚すことも防止できる。
【0026】
結着剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプングリコール酸ナトリウムやデンプンリン酸エステルナトリウムなどのデンプン誘導体;アルギン酸ナトリウムやアルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸誘導体;ならびにポリビニルアルコール、グアーガム、及びその誘導体などの有機系結着剤;からなる群から選択される1種又は2種以上の結着剤を含んでよい。結着剤の量は、特に限定されないが、お香全体量に対して、通常、1〜3重量%、好ましくは2〜3重量%とすることができ、配合液全体量に対して、通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%とすることができる。これらの範囲とすることにより、お香を燃焼させたときの結着剤の臭いの発生を防止することができる。
【0027】
自然色以外の色をお香に付与するために、着色剤を添加してもよい。着色剤は、燃焼や香りに影響が出ない程度の量で用いることが好ましい。着色剤としては、例えば、食用色素(例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用緑色3号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号)、無機顔料(酸化鉄、酸化チタン)、天然系色素(例えば、β−カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム)、天然系色素誘導体(銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム、ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム)、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、ウラニン、セダーウッドなどが挙げられる。着色剤の量は、お香全体量に対して、通常、0.05〜2重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%とすることができ、配合液全体量に対して、通常、1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%とすることができる。
【0028】
お香には、消臭・殺菌成分の1種又は2種以上を組合せて含有させることができる。これら成分としては、例えば、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどのカテキン類、ケルセチン、アントシアニジン、イソフラボン、サンフラボンなどの植物抽出物などが挙げられる。消臭・殺菌成分の量は、お香全体量に対して、通常、1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%とすることができ、配合液全体量に対して、通常、5〜15重量%、好ましくは7〜10重量%とすることができる。
【0029】
お香には、駆虫成分の1種又は2種以上を組合せて含有させることもできる。これらの成分としては、除虫菊エキス、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物;アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物;ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物;メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物;クロルフェナピル等のピロール系化合物;ベンジルアルコール、ハッカ油等の殺虫性精油類;ディート、ジ−n−ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、エチル−ブチルアセチルアミノプロピオネート、p−メンタン−3,8−ジオール、シトロネラ油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ゲラニウム油、月桃油、蚊連草等の忌避剤などが挙げられる。これら成分の量は、お香全体量に対して、通常、0.5〜5.0重量%、好ましくは1〜3重量%とすることができ、配合液全体量に対して、通常、5〜15重量%、好ましくは7〜10重量%とすることができる。
【0030】
また、担体にこれら成分を含浸させるため、有機溶剤、水に溶解又は懸濁させて用いることができ、必要に応じて、乳化剤、防腐剤などをさらに用いてもよい。有機溶剤としては、エタノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。配合液中の溶剤の量は、配合液全体量に対して、通常、50〜80重量%、好ましくは60〜70重量%である。乳化剤としては、デンプン、アラビアガム、シクロデキストリンなどが挙げられる。配合液中の乳化剤の量は、配合液全体量に対して、通常、2〜15重量%、好ましくは3〜10重量%とすることができる。防腐剤としては、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩、パラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。配合液中の防腐剤の量は、配合液全体量に対して、通常、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%とすることができる。
【0031】
お香は、燃焼させて使用する場合、部屋の広さや使用時間に合わせて長さを調節することができ、途中で消したい時は適当な長さで折るか、クリップなどの留め具であらかじめ消したい部分を挟んでおくことで調整することができる。例えば、お香、お香を巻回保持するリール部、及びお香の燃焼部分を確定する留め具を備え、お香を巻き出し式とすることを特徴とする、お香製品が本発明の一態様として挙げられる。お香をリール部を有する器具などに巻きつけることができ、コンパクトに収納した製品とすることができる。リール部から引き出すお香の長さを調節することで、お香の燻煙の蒸散時間を調整することも可能になる。一方、担体に香料成分を含浸させたお香は、直接火を点けて燃焼させて燻煙により香りを拡散させることができるが、火をつけない場合にも香料成分が蒸散するため、香りを楽しむことができる。
【0032】
本発明のお香は、紐の形状を有するため適当な長さに切断して線香のように使用すること、リールなどに巻いて適当な長さに引き出して使用すること、うずまき状に配置して使用することなど、所望の形状で使用することができる。
【0033】
お香は、(A1):適量の香料及び0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する配合液を調製する工程;及び(A2):前記配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料及び助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;を含む製造方法により製造することができる。あるいは、(B1):適量の香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液と、を調製する工程;(B2):前記第1の配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び(B3):前記第2の配合液に、香料を含浸させた前記担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;を含む製造方法により製造することができる。あるいは、(C1):適量の香料を含有する第1の配合液と、0.2〜6.0重量%の助燃剤を含有する第2の配合液とを調製する工程;(C2):前記第2の配合液に、組紐からなる鞘部と当該鞘部に囲包されている芯部とを含む芯−鞘構造の担体を浸漬させて、助燃剤を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;及び(C3):前記第1の配合液に、助燃剤を含浸させた前記担体を浸漬させて、香料を前記担体に含浸させ、乾燥する工程;を含む製造方法により製造することができる。これらの方法で製造されたお香は、担体の鞘部の内部の芯部にまで香料及び助燃剤が含浸されている。
【0034】
上述の香料、助燃剤、必要に応じてその他原料を一緒に含有する1種の配合液を調製するか、上記原料の1種又は2種以上を別々に含有する2種以上の配合液を調製し、担体を各配合液に浸漬させて、配合液に含まれる原料を担体に含浸させ、乾燥させることによりお香を製造することができる。ここで、調製する配合液が複数ある場合は、含浸・乾燥工程をそれぞれ繰り返し行うが、その順序は問わない。配合液には、有機溶剤、及び水から選択される1種又は2種以上の溶媒と、必要に応じて、乳化剤、防腐剤などを用いる。配合液の調製工程は特に限定されないが、溶媒に各原料を添加し、必要に応じてホモジナイザーなどを用いて、通常、5〜30分間、好ましくは10〜20分間、均一に撹拌することにより行う。担体に配合液を含浸させる時間は特に限定されないが、浸漬により行う場合、通常、0.5〜2分間、好ましくは1〜1.5分間行う。乾燥工程も特に限定されず、通常、70〜80℃で1〜2分間、好ましくは50〜60℃で3〜4分間行い、配合液を含浸させた後、必要に応じて、テンションをかけながら乾燥すると、反りの少ないお香を製造することができる。
【0035】
1種の配合液を用いる場合には、例えば、香料、助燃剤、その他の原料、必要に応じて乳化剤を、溶媒(例えば、水)に懸濁あるいは溶解させ、必要に応じてホモジナイザーで撹拌して配合液を調製する。次いで、配合液に担体を浸漬させて、配合液に含まれる成分を担体に含浸させ、乾燥することにより担体を製造する。1種の配合液を用いる方法は、1つのラインで含浸・乾燥工程を行うことができるため、工程数が少ない点で有利である。また、配合液への担体の浸漬・乾燥工程において、配合液を含浸した担体を伸ばす作業など、設備や技術が必要となる工程も最小限に抑えられる点でも有利である。
【0036】
2種の配合液を用いる場合には、例えば、香料と、その他の原料(例えば、結着剤など)を、溶媒(例えば、エタノール)に懸濁あるいは溶解させて第1の配合液を調製し、助燃剤と、その他の原料(例えば、無機化合物、結着剤、着色剤、防腐剤など)、必要に応じて乳化剤を、溶媒(例えば、水)に懸濁あるいは溶解させて第2の配合液を調製する。次いで、助燃剤を含有する第2の配合液に担体を浸漬させて、配合液に含まれる成分を担体に含浸させ、乾燥する。さらに、香料を含有する第1の配合液に担体を浸漬させて、配合液に含まれる成分を担体に含浸させ、乾燥することにより担体を製造する。2種以上の配合液を用いる方法は、各原料が溶解しやすい溶媒をそれぞれ選択できるため、原料を担体に含浸させやすいことや、原料の性質に応じて浸漬時間や乾燥時間をそれぞれ調整できる点で有利である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1:お香の製造
[お香の製造]
以下の表1に記載の配合に従って、原料を混合し、ホモジナイザーで10分間撹拌し、1種の配合液200mlを調製した。木綿糸5本を撚り合わせて芯部を形成し、芯部の周囲に木綿糸16本を丸打で組み上げて組紐とした1.6mm径の担体(2m、1.8g)を配合液(10ml)に1分浸漬した後、取り出して、60〜70℃で2分乾燥させた。ここで、配合液の残量は、7.5mlであった。乾燥させたお香を8cmにカットした(図2)。
【0039】
本発明のお香は、図2に示されるように着色も鮮やかであり、着色剤の色合いがそのまま反映されることが確認できた。また、着色剤を食用赤色104号とした以外は上記方法で製造したお香は、内部まで着色されており、お香成分が芯部の中心部にまで含されていることが確認できた(図3)。さらに、お香に用いた担体は伸縮性に優れ、水濡れにも強いことから、お香成分を含した後も表面のほつれや毛羽立ちがほとんど見られず、製品の美観も優れていた。
【0040】
【表1】
【0041】
[燃焼評価・結果]
着色剤を食用赤色104号とした以外は上記方法で製造した本発明のお香(図4の(A))、担体をタコ糸に変更したこと以外は上記方法で製造したお香(対照1:図4の(B))、担体をこより紙に変更して緑に着色したこと以外は上記方法で製造したお香(対照2:図4の(C))の燻煙状態を比較した。
【0042】
5cmにカットした本発明のお香と対照2種をそれぞれ不燃マットの上に置き(図4の写真(1))、一方の端から火をつけた。いずれも着火は容易であった。本発明のお香は途中で立ち消えせずに約4分間燃焼が持続し、途中で灰が落下することなく、お香の形状を維持した灰が残った(図4の写真(2)〜(5))。本発明のお香の灰の表面の形状は、従来の粉末担体を用いる線香を燻煙させた後に残る灰のように平滑であり、本発明のお香が従来の線香の代替品として使用可能であることが分かった。また、本発明のお香の灰は崩れることなくまとまっており、落下して周囲を汚すことを防止できる点で従来の線香より優れていることも判明した。一方、対照1のタコ糸のお香は、燃焼が持続しまとまった灰は残ったものの、撚糸の形状がさらに際立った凹凸のある表面を有しており、従来の線香の代替品として使用することは難しいことが分かった(図4の写真(2)〜(5))。また、対照1の灰の表面は崩れやすく、灰が落ちて周囲を汚す恐れがあることが分かった(図4の写真(5))。さらに、対照2のこより紙のお香の燃焼速度は非常に速く、灰は小さく収縮し、お香の形状を維持した灰も残らなかった(図4の写真(2)〜(5))。本発明のお香は、伸縮性のある組紐で形成された鞘部を備えることにより、お香の内部への空気の流路が形成され、また適量の助燃剤を芯部の中心部にまで含させたことにより、お香を燃焼させた時に、お香の担体内に空気の流れが形成され、燻煙が安定的に持続したものと推察する。さらに、撚糸と比較して、組紐で形成された鞘部の表面は凹凸が少なく伸縮性があることから、残った灰の表面が従来の線香のように平滑で、灰の形が崩れにくくなったと推察する。
【0043】
本発明のお香を燻らすと、煙の効果により短時間(2〜3分)で香りがストレートに拡がり、部屋全体で充分な量の香りが確認できた。担体の吸香率は極めて高いことから、香料の含有量を増減させて香りの強弱を調節することにより、香料の種類や製品の特徴に合わせて多様な展開を行うことができる。なお、本発明のお香は従来の粉末担体を用いるお香のように原料臭を発することはなく、タール分も少ないことから壁を汚すなどの問題も発生しない。
【0044】
実施例2:各種担体に対する吸着量の比較
[お香の調製]
実施例1において用いた担体と、対照として、実施例1において用いたタコ糸及びこより紙、さらには麻製の撚糸を準備し、5%着色剤含有エタノール溶液に30秒間浸漬した後、取り出した。
【0045】
[結果]
実施例1で用いた担体、タコ糸(対照3)、こより紙(対照4)、及び麻製の撚糸(対照5)の配合液に浸漬させる前後の重量を測定し、各種試料の重量に対するアルコールの重量を吸着率として計算した結果を、下記表2に示した。表2に示されるように、いずれも撚糸である対照3〜5の試料へのアルコールの吸着率が40〜80%であるのに対して、実施例1で用いた担体へのアルコールの吸着率は140%と非常に高かった。また、対照3〜5の比較により、アルコールの吸着率は、紙、麻、木綿の順に高くなることも判明した。
【0046】
アルコールの吸着率に加えて、着色剤配合アルコール溶液を含させた各種試料をカットし、内部まで着色剤が含されているか否かを目視により確認した。図5に示されるように、こより紙(b)、麻糸(c)、タコ糸(d)は表面のみに着色剤が吸着しているのに対し、実施例1で用いた担体(a)には、芯部の内部にまで均一に着色剤が浸透していることが判明した。
【0047】
以上の結果から、組紐からなる鞘部と、当該鞘部に囲包されている芯部と、を含む芯−鞘構造を有する担体を用いて製造されたお香は、十分な量の配合液成分を含させることができることが判明した。この吸着試験の結果から、本発明のお香は香料及び助燃剤の吸着量が撚糸やこより紙と比較して増加することが理解できる。また、この吸着量の増加が、本発明のお香の安定した薫煙持続効果と、香りの高い拡散効果に寄与していることが理解できる。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例3:助燃剤(硝酸カリウム)含有量の評価
[試料の調製]
硝酸カリウムを水に溶解させて、約0.5重量%及び約5.0重量%の硝酸カリウム配合液を調製した。担体として実施例1において用いた担体(2m)を用意し、調製した各配合液に、各5本の担体を1分間浸漬させた。その後取り出して、室温で3日間乾燥させ、助燃剤を含有する組紐の試料を合計10本製造した。
【0050】
[結果]
0.5重量%硝酸カリウム配合液を用いて製造された組紐の試料に含まれる硝酸カリウム含有量は、2.5〜3.4重量%であり、平均3.31重量%であった。また、5.0重量%硝酸カリウム配合液を用いて製造された組紐の試料に含まれる硝酸カリウム含有量は、3.3〜3.4重量%であり、平均3.38重量%であった。0.5重量%硝酸カリウム配合液を用いた場合に各サンプル中の硝酸カリウム含有量に少しバラツキが確認されたものの、0.5重量%及び5.0重量%のサンプルの平均含有量は同程度あることが確認された。
【0051】
以上の結果から、組紐の試料に含まれる助燃剤の量は、配合液中の助燃剤の含有量に大きく左右されないが、配合液中の助燃剤の含有量が少ない場合、助燃剤が担体に均一に含浸せず、薫煙箇所にバラツキが出ることが判明した。その結果、お香が立ち消え寸前の状態を繰り返しながら薫煙し、平均して薫煙しにくくなるなど薫煙状態に影響することも確認された。一方で、配合液中の助燃剤の含有量が多くなりすぎると、含有量が少ない場合と同様に助燃剤が担体に均一に含浸せず、助燃剤の濃度の高い箇所で線香花火のように火花がはじけやすくなることも判明した。
【0052】
これらの結果から、薫煙速度及び薫煙状態を最適な状態とするためには、配合液中の助燃剤の含有量を2〜3重量%程度とすることが特に好ましいことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のお香は助燃剤を含有するため長期の薫煙持続が可能となり、壊れにくく持ち運びも容易な紐形状のため、取扱いが容易であり、部屋の広さや所望の匂いの強さにあわせてお香の長さを調節できるなど、従来のお香や室内フレグランスよりも使用場面が広がる。
【符号の説明】
【0054】
1 担体
2 鞘部
3 芯部
【要約】
【課題】本発明の課題は、タール分の問題を解決しつつ、香りを素早く拡散させ、長期の薫煙持続を可能とすることができるお香を提供することにある。
【解決手段】組紐からなる鞘部と、当該鞘部に囲包されている芯部と、を含む芯−鞘構造の担体に、香料、及び0.5〜5.0重量%の助燃剤を含侵させてなり、前記担体の鞘部の内部の芯部にまで香料及び助燃剤が含まれる、ことを特徴とするお香。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5