(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0009】
本実施形態に係る自動分析装置は、測定動作時の試薬ボトルの交換に起因するスループットの低下を防止するための工夫を有している。まず、本実施形態に係る自動分析装置の構成について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。
図1に示すように、自動分析装置1は、分析機構10、分析機構制御部51、通信部53、記憶部55、搬出ボトル決定部57、組み換え有無判定部59、組み換え部61、解析部63、表示部65、操作部67、及びシステム制御部69を備える。
【0011】
図2は、分析機構10の平面図である。分析機構10は、分析機構制御部51による制御に従って作動する。分析機構10は、自動分析装置1の筐体100に設けられている。
図2に示すように、分析機構10は、例えば、反応ディスク11、サンプラ13、試薬庫15、サンプルアーム17、第1試薬アーム19−1、第2試薬アーム19−2、撹拌機構21、測光機構23、洗浄機構25、自動ローディング機構27、及びキャリア29を搭載する。
【0012】
反応ディスク11は、円周上に配列された複数の反応容器31を保持する。反応ディスク11は、既定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。反応ディスク11の回動周期は、サイクルと呼ばれている。反応ディスク11の近傍には、サンプラ13が設けられている。サンプラ13は、検体が収容されたサンプル容器33を保持する。サンプラ13は、分注対象の検体が収容されたサンプル容器33が検体吸入位置Ps1に配置されるように回動する。反応ディスク11の他の近傍には、試薬庫15が配置されている。試薬庫15は、検体の測定項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の試薬ボトル35と、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の試薬ボトル35とを保持する。試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された試薬ボトルが第1試薬吸入位置に配置されるように回転し、分注対象の第2試薬が収容された試薬ボトルが第2試薬吸入位置に配置されるように回転する。後述するように、実際には、試薬庫15には、試薬の汚染の防止等のために試薬吸引孔と試薬ボトル搬送用の開閉扉とを有するカバーが設けられている。
【0013】
反応ディスク11とサンプラ13との間にはサンプルアーム17が配置される。サンプルアーム17の先端には、サンプルプローブが取り付けられている。サンプルアーム17は、サンプルプローブを上下動可能に支持している。また、サンプルアーム17は、円周状の回動軌跡に沿って回動可能にサンプルプローブ21−1を支持している。サンプルプローブ21−1の回動軌跡は、サンプラ13上のサンプル吸入位置や反応ディスク11上のサンプル吐出位置を通過する。サンプルプローブ21−1は、サンプラ13上のサンプル吸入位置に配置されているサンプル容器33から検体を吸入し、反応ディスク11上の検体吐出位置Ps2に配置されている反応容器31に検体を吐出する。
【0014】
反応ディスク11と試薬庫との間には第1試薬アーム19−1と第2試薬アーム19−2とが配置される。第1試薬アーム19−1の先端には第1試薬プローブが取り付けられている。第1試薬アーム19−1は、第1試薬プローブを上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19−1は、2本の回転軸R1−1及びR1−2を有し、第1試薬プローブを試薬庫15内の複数の試薬ボトル35にアクセス可能に支持している。第1試薬アーム19−1は、反応ディスク11上の第1試薬吐出位置Pr1に配置されている反応容器31に第1試薬プローブを介して第1試薬を吐出する。同様に、第2試薬アーム19−2の先端には第2試薬プローブが取り付けられている。第2試薬アーム19−2は、第2試薬プローブを上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19−2は、2本の回転軸R2−1及びR2−2を有し、第2試薬プローブを試薬庫15内の複数の試薬ボトル35にアクセス可能に支持している。第2試薬アーム19−2は、反応ディスク11上の第2試薬吐出位置Pr2に配置されている反応容器31に第2試薬プローブを介して第2試薬を吐出する。
【0015】
反応ディスク11の外周近傍には撹拌機構21が配置される。撹拌機構21の先端には撹拌子21sが取り付けられている。撹拌機構21は、反応ディスク11上の撹拌位置Pstに配置された反応容器31内の検体と第1試薬との混合液、または、検体と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌子21sで攪拌する。以下、これら混合液を検査液と呼ぶことにする。
【0016】
反応ディスク11の近傍の筐体内部には、測光機構23が設けられている。測光機構23は、反応ディスク11内の測光位置Ppにある反応容器31内の検査液に向けて光を照射し、検査液を通過した光を検出する。検出された光の強度に応じた計測値を有するデータ(以下、測光データと呼ぶことにする。)は、解析部63に供給される。
【0017】
反応ディスク11の外周には、洗浄機構25が設けられている。洗浄機構25は、洗浄ノズル25wや乾燥ノズル25dが取り付けられている。洗浄機構2
5は、反応ディスク11の洗浄位置Pwにある反応容器31を洗浄ノズル25wで洗浄し、乾燥ノズル25dで乾燥する。
【0018】
試薬庫15の近傍には、自動ローディング機構27とキャリア29とが設けられている。自動ローディング機構27は、試薬ボトル35の搬入出のための機構である。自動ローディング機構27は、試薬ボトル35を把持するための把持部27−1と、把持部27−1をスライド可能に支持する支持部27−2とを備えている。キャリア29は、試薬ボトル35を間欠的にスライド可能に支持する機構である。キャリア29の所定位置は、自動ローディング機構27による試薬ボトルの把持または解放のための待機位置Pcに設定されている。自動ローディング機構27は、試薬庫15内の搬入出位置Paに配置された試薬ボトル35を把持し、キャリア29上の待機位置Pcまで移動し、待機位置Pcで試薬ボトル35を解放する。これにより試薬ボトル35が試薬庫15から搬出される。また、自動ローディング機構27は、待機位置Pcに配置された試薬ボトル35を把持部27−1で把持し、試薬庫15内の搬入出位置Paまで移動し、搬入出位置Paに配置された空きスペースで試薬ボトル35を解放する。これにより試薬ボトル35が試薬庫15に搬入される。なお、空きスペースとは、試薬庫15内の試薬ボトル設置可能位置のうちの試薬ボトルが設置されていないスペースである。なお、試薬庫15内の試薬ボトル35の搬入位置と搬出位置とは、前述のように同一位置に設けられても良いし、別々の位置に設けられていても良い。
【0019】
再び、
図1に戻り、自動分析装置1の構成について説明する。
【0020】
通信部53は、ネットワークを介して外部装置との間で情報を送受信する。例えば、通信部53は、依頼検査に関する検査オーダを受信する。検査オーダは、依頼検査の検査対象である複数の測定項目と複数の測定項目の初期的な測定順序とに関する情報を含んでいる。依頼検査は、一人の患者に関する検査であっても良いし、複数の患者に関する検査であっても良い。初期的な測定順序は、例えば、外部装置等による患者及び測定項目の登録順に対応する。測定項目は、この測定項目に対応する第1試薬と第2試薬とに紐付けて管理されている。
【0021】
記憶部55は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部55は、通信部53により受信された検査オーダや解析部63による解析結果、検査の設定パラメータ等を記憶する。また、記憶部55は、後述する試薬庫15内の各試薬ボトル35の試薬残量パラメータを試薬ボトル35の識別子とその試薬ボトル35の試薬庫15内での配置位置とに関連付けて記憶している。試薬残量パラメータは、試薬残量値だけでなく、試薬残量の算出のために必要なパラメータ、例えば、液面高さや試薬ボトルの形状、試薬ボトルの底面積等であっても良い。また、記憶部55は、システム制御部69により実行される動作プログラムを記憶している。
【0022】
搬出ボトル決定部57は、試薬庫15内の複数の試薬ボトル35の中から、依頼検査の測定動作時に搬出する予定の試薬ボトル35を決定する。決定された試薬ボトルは、後述のように自動ローディング機構27により試薬庫15から搬出される。以下、決定された試薬ボトルを搬出ボトルと呼ぶことにする。搬出ボトルの決定処理は、ユーザによる操作部67を介した指示に従って決定しても良いし、依頼検査の実行前において予測計算により決定されても良い。
【0023】
組み替え有無判定部59は、依頼検査における測定項目の測定順序の組み換えを行うか否かを判定する。具体的には、組み替え有無決定部59は、搬出ボトルを試薬庫15から搬出するために必要な試薬庫15の継続停止期間が依頼検査における初期的な測定順序において確保されているか否かを判定する。試薬庫15の継続停止期間が初期的な測定順序で確保されていると判定された場合、この初期的な測定順序が組み替え有無判定部59により設定測定順序に設定される。試薬庫15の継続停止期間が初期的な測定順序で確保されていないと判定された場合、測定順序の組み換えが行われる。以下、記載の簡潔のため、継続停止期間といえば試薬庫15の継続停止期間を意味するものとする。
【0024】
組み換え部61は、組み換え有無判定部59により初期的な測定順序において継続停止期間が確保されていないと判定された場合、継続停止期間が設けられるように依頼検査の測定項目の測定順序を組み換える。組み換え後の測定順序は、組み換え部61により設定測定順序に設定される。
【0025】
分析機構制御部51は、設定測定順序に従って依頼検査の測定項目が測定されるように分析機構10を制御する。分析機構10は、分析機構制御部51による制御に従って作動する。
【0026】
解析部63は、分析機構10の測光機構23からの測定項目毎の測光データを解析して測定項目の測定値を算出する。
【0027】
表示部65は、種々の情報を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が挙げられる。
【0028】
操作部67は、オペレータからの入力機器を介した各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等が挙げられる。
【0029】
システム制御部69は、自動分析装置1の中枢として機能する。システム制御部69は、記憶部55から動作プログラムを読み出し、動作プログラムに従って各部を制御する。
【0030】
次に、自動分析装置1の動作について説明する。
【0031】
なお、以下に展開される自動分析装置1の動作説明において試薬庫15は、内周外周独立駆動タイプであり、第1試薬のための試薬ボトル35と第2試薬のための試薬ボトル35との混在配置タイプであるとする。
図3は、このタイプの試薬庫15の平面図を示す図である。
図3に示すように、試薬庫15は、互いに独立して駆動可能な外周側テーブル151と内周側テーブル152とを搭載している。外周側テーブル151と内周側テーブル152とには、第1試薬のための試薬ボトル35と第2試薬のための試薬ボトル35とが混在している。
【0032】
図3に示すように、試薬庫15は、分析機構制御部51による制御に従って、分注対象の第1試薬が収容された試薬ボトル35が第1試薬吸入位置に配置されるように外周側テーブル151または内周側テーブル152を回転し、分注対象の第2試薬が収容された試薬ボトル35が第2試薬吸入位置に配置されるように外周側テーブル151または内周側テーブル152を回転する。試薬庫15には、試薬の汚染等を防止するためにカバー153が設けられている。カバー153には、第1試薬アーム19−1の第1試薬プローブと第2試薬アーム19−2の第2試薬プローブとが試薬庫15内に侵入可能なように、円周状に沿って配列された複数の試薬吸引孔154が設けられている。各試薬吸引孔154は、試薬庫15内の試薬ボトル35のボトル口35iの真上に位置する。
【0033】
図3に示すように、第1試薬アーム19−1は、試薬庫15内の複数の試薬ボトル35に第1試薬プローブをアクセス可能な構造を有しており、第2試薬アーム19−
2は、試薬庫15内の複数の試薬ボトル35に第2試薬プローブをアクセス可能な構造を有している。ここで、第1試薬プローブ及び第2試薬プローブが試薬庫15内の試薬ボトル35にアクセス可能な範囲をアクセス範囲Priと呼ぶことにする。アクセス範囲Priは、試薬ローディング機構27の把持部27−1と第1試薬プローブ及び第2試薬プローブとの衝突を防止するため、把持部27−1の移動範囲(搬入出位置)Paにオーバラップしないように設定される。アクセス範囲Pri内の各試薬吸引孔154の位置が試薬吸入位置に対応する。第1試薬プローブや第2試薬プローブは、各試薬吸引孔154とボトル口35iとを通って試薬ボトル35内に入り試薬を吸入する。
【0034】
図3に示すように、カバー153の搬入出位置Paには、スライド方向に開閉可能な扉155が設けられている。扉155は、試薬ローディング機構27により試薬ボトル35の搬入または搬出が行われる時に、試薬庫15により自動的に開かれる。搬入または搬出が完了した場合、扉155は、試薬庫15により自動的に閉じられる。
【0035】
次に、1サイクル内における試薬庫、第1試薬アーム、及び第2試薬アームの動作タイミングについて説明する。
図4は、1サイクル内における試薬庫15、第1試薬アーム19−1、及び第2試薬アーム19−2の動作タイミングを示す図である。
図4に示すように、1サイクルは、例えば、9秒等の既定の時間間隔に設定されている。各サイクルの一番目の動作期間は、分注対象の第1試薬が収容された試薬ボトルを試薬吸入位置に配置するための試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルの回転に割り当てられる。なお、既に試薬吸入位置に分注対象の第1試薬が収容された試薬ボトルが配置されている場合、試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルは回転されない。二番目の動作期間は、第1試薬アーム19−1による分注動作に割り当てられる。三番目の動作期間は、分注対象の第2試薬が収容された試薬ボトルを試薬吸入位置に配置するための試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルの回転に割り当てられる。なお、既に試薬吸入位置に分注対象の第2試薬が収容された試薬ボトルが配置されている場合、試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルは回転されない。最後の動作期間は、第2試薬アーム19−2による分注動作に割り当てられる。自動ローディング機構27は、サイクルとは独立したタイミングで動作する。なお、サイクルの定義は、上記のみに限定されない。例えば、一番目の動作期間の開始時点と三番目の動作期間の開始時点との時間間隔を1サイクルと定義しても良い。
【0036】
本実施形態のような2試薬系の場合、一つの測定項目に対して第1試薬と第2試薬とが用意されている。前述のように、本実施形態の場合、内周側テーブルと外周側テーブルとに第1試薬のための試薬ボトルと第2試薬のための試薬ボトルとが混在している。しかし、
図4の動作タイミングに示すように、第1試薬のための内周側テーブルまたは外周側テーブルの回転と第2試薬のための内周側テーブルまたは外周側テーブルの回転とは、時間的に重複無く独立に行われる。従って、以下の動作例の説明において、第1試薬と第2試薬とを区別せずに単に試薬と呼ぶ。
【0037】
本実施形態に係る自動分析装置1は、測定動作時の試薬ボトルの交換に起因するスループットの低下を防止するための工夫を有している。自動分析装置1の動作は、測定項目の測定順序の組み換えと測定動作とに大別される。以下、測定項目の測定順序の組み換えと測定動作とを説明する。
【0038】
まず、測定順序の組み換えについて説明する。測定順序の組み換えは、試薬ボトルの搬出のための継続停止期間を確保するための組み換え、試薬ボトルの搬入のための継続停止期間を確保するための組み換え、及び試薬ボトルの搬出と搬入との両方のための継続停止期間を確保するための組み換えに大別される。搬出のための継続停止期間は、自動ローディング機構による搬出動作に必要なサイクル数だけ試薬庫が停止している期間である。搬入のための継続停止期間は、自動ローディング機構による搬入動作に必要なサイクル数だけ試薬庫が停止している期間である。搬出のための継続停止期間と搬入のための継続停止期間とは、同一であっても異なっていても良い。以下、一例として、搬出のための継続停止期間を確保するための組み換えについて説明する。
【0039】
測定順序の組み換えは、検査オーダの受信時等の測定動作の前段階に行われる。
図5は、システム制御部69の制御に従って行われる測定順序の組み換え動作の典型的な流れを示す図である。
【0040】
図5に示すように、依頼検査に関する検査オーダが外部装置により発行されると、外部装置からネットワークを介して自動分析装置1に送信される。検査オーダは、通信部53により受信される(ステップSA1)。検査オーダは、依頼検査において検査される患者の識別子と患者毎の測定項目と初期的な測定順序とを含んでいる。患者の識別子としては、患者名や患者ID等が挙げられる。測定項目としては、TPやALB、Hb−A1c等の検体検査で測定可能なあらゆる項目が挙げられる。各測定項目には、その測定に用いられる第1試薬と第2試薬とが経験的に定められ、記憶部55において対応付けられている。なお本実施形態において、測定とは、検体の分注→第1試薬の分注→攪拌→第2試薬の分注→攪拌→測光→洗浄の一連の処理を含むものとする。測定順序は、複数の患者に亘る複数の測定項目を測定する順番を規定する。受信された検査オーダは、記憶部55に記憶される。
【0041】
ステップSA1が行われるとシステム制御部69は、搬出ボトル決定部57に決定処理を行わせる(ステップSA2)。ステップSA2において搬出ボトル決定部57は、ユーザにより操作部67を介して、または、ステップSA1において受信された検査オーダに従う試薬残量の予測計算に基づいて、試薬庫15に保持されている複数の試薬ボトルの中から搬出ボトルを決定する。以下、予測計算による搬出ボトルの決定処理について詳細に説明する。
【0042】
予測計算において搬出ボトル決定部57は、試薬庫に保持されている試薬ボトル各々について、試薬残量が予め設定された閾値を下回る試薬ボトルを搬出ボトルとして決定する。まず、搬出ボトル決定部57は、記憶部55に記憶されている試薬残量パラメータに従って試薬ボトル各々の測定動作前の試薬残量を決定する。例えば、試薬残量パラメータとして試薬残量値が記憶されている場合、搬出ボトル決定部57は、この試薬残量値を測定動作前の試薬残量として利用する。また、試薬残量パラメータとして液面高さと試薬ボトルの底面積とが記憶されている場合、搬出ボトル決定部57は、液面高さと試薬ボトルの底面積とに基づいて試薬残量値を算出する。液面高さは、例えば、依頼検査の直前の検査等において試薬プローブにより検出された、試薬ボトルの内底面から液面までの高さに規定される。
【0043】
試薬残量値が決定されると搬出ボトル決定部57は、試薬ボトル各々について、初期的な測定順序に従って測定項目の測定が行われた場合に試薬残量が閾値を下回るタイミングを、試薬残量値と一吸入毎の試薬吸入量とに基づいて推定する。タイミングは、例えば、測定動作開始からのサイクル数により規定される。以下、試薬残量が閾値を下回るサイクル数を搬出サイクルと呼ぶことにする。前述のように各測定項目の測定に必要な試薬が定められている。搬出サイクルの具体的処理として、まず、搬出ボトル決定部57は、初期的な測定順序に従って順番に依頼検査の測定項目を特定し、特定された測定項目に対応する試薬の試薬吸入量を、この試薬が収容された試薬ボトルの試薬残量値から減算する。また、サイクル数のカウント値を1加算する。そして搬出ボトル決定部57は、減算後の試薬残量値が閾値を下回るか否かを判定する。搬出ボトル決定部57は、試薬残量値が閾値を下回るまで、あるいは、依頼検査の全ての測定項目分の減算処理を実行し終えるまで、減算処理とカウント値の加算処理とを繰り返す。そして、試薬残量値が閾値を下回ると判定した場合、搬出ボトル決定部57は、その試薬ボトルを搬出ボトルに設定し、試薬残量値が閾値を下回るサイクルを搬出サイクルに設定する。
【0044】
ステップSA2が行われるとシステム制御部69は、搬出ボトルがあるか否かを判定する(ステップSA3)。ステップS2において一つの搬出ボトルも決定されなかった場合(ステップSA3:NO)、システム制御部69は、測定順序の組み換え動作を終了する。
【0045】
ステップSA2において少なくとも一つの搬出ボトルが決定された場合(ステップSA3:
YES)、システム制御部69は、組み換え有無判定部59に判定処理を行わせる(ステップSA4)。ステップSA4において組み換え有無判定部59は、初期的な測定順序において試薬庫15の継続停止期間が確保されているか否かを判定する。
【0046】
図6は、組み換え有無判定部59による判定処理を説明するための図である。
図6に示すように、大文字Xは患者識別子を表し、小文字xは測定項目を表すものとする。例えば、Aaは、患者Aの測定項目aを表している。測定項目aには、特定の試薬が関連付けられている。組み換え有無判定部59による判定処理を具体的に説明するために、患者A及び患者Bの検査についての検査オーダを考える。患者A及び患者Bの各々について測定項目a、b、c、dが依頼されたものとする。この依頼検査の検査オーダの初期的な順序は、例えば、患者及び測定項目の登録順であるAa→Ab→Ac→Ad→Ba→Bb→Bc→Bdとなる。ここで、搬出のための継続停止期間は、例えば、3サイクルであるものとする。搬出ボトルは、測定項目cに対応する試薬ボトルであり、患者Aの測定項目cのための試薬の吸入時に閾値を下回るとする。また、初期的な測定順序において、Bdに対応する試薬の吸引のために試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルが回動する必要があるとする。この場合、初期的な測定順序において、Ac以後において継続停止期間3サイクルが確保されおり、組み換え有無判定部59により継続停止期間が確保されていると判定される(ステップSA4:YES)。従って、組み換え部61による組み換え処理は実行されず、この初期的な測定順序に従って依頼検査が実行される。
【0047】
一方、
図7に示すように、Bd及びBbに対応する試薬の吸引のために試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルが回転する必要があるとする。この場合、初期的な測定順序において、Ac以後に継続停止期間が確保されておらず、組み換え有無判定部59により継続停止期間が確保されていないと判定される。
【0048】
組み換え有無判定部59により継続停止期間が確保されていないと判定された場合(ステップSA4:NO)、システム制御部69は、組み換え部61に組み換え処理を実行させる(ステップSA5)。ステップSA5において組み換え部61は、継続停止期間が設けられるように測定項目の測定順序を組み換える。以下、組み換え部61による組み換え処理について詳細に説明する。
【0049】
サンプルプローブによる検体の汚染の防止の観点から、複数の患者の検体を互い違いに分注することは望ましくなく、複数の患者に跨って測定項目の測定順序を組み換えることは望ましくない。従って、組み換え部61は、まず、搬出ボトルに対応する測定項目について、その測定項目に対応する患者についての測定項目のみで継続停止期間を確保するように組み換えを行う。
【0050】
図8は、一患者のみの測定項目間の組み換えを説明するための図である。ここで、測定項目cに対応する試薬ボトルが搬出ボトルであり、継続停止期間は3サイクルであり、Ba及びBdに対応する試薬の吸引のために試薬庫15の内周側テーブルまたは外周側テーブルが回転する必要があるとする。組み換え処理において組み換え部61は、一患者に制限して測定項目の測定順序を並び替えながら、少なくとも試薬ボトルの設置位置と試薬プローブのアクセス可能範囲とに基づいて、継続停止期間が設けられる測定順序を見つけ出す。この際、測定項目cに対応する試薬が全て吸入される前に、測定項目cに対応する搬出ボトルが搬出されるように、測定順序が組み換えられる。これにより、測定順序は、例えば、Ac→Aa→Ab→Ad→Ba→Bb→Bc→Bdに組み換えられる。組み換え後の測定順序は、設定測定順序に設定される。
【0051】
単一の患者の測定項目の組み換えのみで継続停止期間を確保できない場合、組み換え部61は、複数の患者に亘って測定項目を組み換える。
図9は、複数の患者の測定項目間の組み換えを説明するための図である。ここで、測定項目cに対応する試薬ボトルが搬出ボトルであり、継続停止期間は3サイクルであり、Ad及びBdに対応する試薬の吸引のために試薬庫15の外周側テーブルまたは内周側テーブルが回転する必要があるとする。組み換え処理において組み換え部61は、複数の患者に亘って測定項目の測定順序を並び替えながら、少なくとも試薬ボトルの設置位置と試薬プローブのアクセス可能範囲とに基づいて、継続停止期間が設けられる測定順序を見つけ出す。この際、測定項目cに対応する試薬が全て吸入される前に、測定項目cに対応する搬出ボトルが搬出されるように、測定順序が組み換えられる。これにより、測定順序は、例えば、Ac→Aa→Ab→Ba→Bb→Ad→Bd→Bcに組み換えられる。組み換え後の測定順序は、設定測定順序に設定される。
【0052】
ステップSA5が行われるとシステム制御部69は、測定順序の組み換え動作を終了する。
【0053】
なお、前述の説明においては、測定順序の組み換えは組み換え部61により行われるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、測定順序の組み換えはユーザにより操作部67を介して行われても良い。例えば、ステップSA4において初期的な測定順序において継続停止期間が確保されていないと判定された場合、表示部65は、既定のメッセージを表示する。メッセージとしては、例えば、ステップSA4の判定結果であっても、搬出ボトルの交換を促すメッセージであっても良い。また、表示部65は、測定順序の組み換えのための画面を表示してもよい。画面には、依頼検査において測定される測定項目が一覧で表示される。ユーザは、操作部67を介して、継続停止期間が確保されるように画面上の測定項目を並び替える。例えば、ユーザにより画面上の確定ボタンが押されると、組み換え部61は、並び替え後の測定順序を設定測定順序に設定する。このように、ユーザにより任意に測定順序を組み換えることもできる。
【0054】
なお、前述の説明においては、搬出のための継続停止期間を確保するための組み換え動作について説明した。この動作と同様にして、搬出のための継続停止期間に加え搬入のための継続停止期間を確保するための組み換え動作も実行可能である。この搬出及び搬入のための継続停止期間の確保のための組み換え動作の場合、ステップSA3までは
図5と同様の流れで処理が行われる。ステップSA4において組み換え有無判定部59は、初期的な測定順序において搬出のための継続停止期間と搬入のための継続停止期間との両方が確保されているか否かを判定する。搬出のための継続停止期間と搬入のための継続停止期間とは、時間的に連続している必要はなく、離間していても良い。試薬庫15内に空きスペースがある場合、搬出のための継続停止期間と搬入のための継続停止期間との順番は、特に限定さない。試薬庫15内に空きスペースがない場合、搬出のための継続停止期間以後に搬入のための継続停止期間が設けられなければならない。ステップSA5において組み換え部61は、搬出及び搬入のための継続停止期間が確保されるように測定順序を組み換える。搬入のための継続停止期間を確保するための組み換え動作の処理内容は、搬出のための継続停止期間を確保するための組み換え動作と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
次に、測定順序の組み換え以後の測定動作中に分析機構制御部51により行われる搬出及び搬入動作について説明する。なお、測定動作の説明において第1試薬アーム19−1と第2試薬アーム19−2とを区別せずに単に試薬アーム
19と呼ぶことにする。
【0056】
図10は、搬出及び搬入動作時における分析機構制御部51による処理の典型的な流れを示す図である。測定動作において分析機構制御部51は、記憶部55に記憶された設定測定順序を読み出し、読み出した設定測定順序に従って分析機構10の各機構を連動制御する。これにより、依頼検査についての測定項目の光学測定が行われる。
【0057】
検査オーダに搬出動作指示が組み込まれている場合、分析機構制御部51は、試薬庫15、試薬アーム19、及び自動ローディング機構27を連動制御し、搬出ボトルの搬出と試薬の分注とを並行して実行する。具体的には、まず、搬出動作の予備動作の実行タイミングにおいて分析機構制御部51は、搬入出位置Paに搬出ボトルを配置し、且つ、分注対象の試薬が収容された試薬ボトルがアクセス範囲Pri内の所定の試薬吸入位置に配置するように試薬庫15を作動する(ステップSB1)。搬出動作の予備動作は、典型的には、搬出のための継続停止期間の開始サイクルの直前のサイクルにおいて実行される。予備動作が行われると、搬出のための継続停止期間において搬出動作が行われる。搬出のための継続停止期間において、分析機構制御部51は、試薬吸入位置に配置された試薬ボトルから分注対象の試薬を吸入するように試薬アーム19を作動し、かつ、搬入出位置Paに配置された搬出ボトルを試薬庫15外に搬出するように自動ローディング機構27を作動する(ステップSB2)。搬入出位置Paに配置された搬出ボトルは、自動ローディング機構27の把持部27−1により把持され、支持部27−2によりキャリア29の待機位置Pcまでスライド方向に沿ってスライドされ、把持部27−1により待機位置Pcに配置される。なお、搬出のための継続停止期間において試薬庫15は停止している。
【0058】
搬出動作が行われると、分析機構制御部51は、搬入ボトルの搬入と試薬の分注とを並行して実行するように試薬庫15、試薬アーム19、及び自動ローディング機構27を連動制御する。具体的には、搬入動作の予備動作の実行タイミングにおいて分析機構制御部51は、搬入出位置Paに試薬庫15内の空きスペースを配置し、且つ、分注対象の試薬が収容された試薬ボトルをアクセス範囲Pri内の所定の試薬吸入位置に配置するように試薬庫15を作動する(ステップSB3)。搬入動作の予備動作は、典型的には、搬入のための継続停止期間の開始タイミングの直前のサイクルにおいて実行される。なお、搬入動作の開始タイミング(すなわち、ステップSB4の開始時点)までに、キャリア29により待機位置Pcに搬入ボトルが配置される。なお、搬入ボトルは、オペレータにより手動で待機位置Pcに配置されても良い。搬入のための継続停止期間において、分析機構制御部51は、試薬吸入位置に配置された試薬ボトルから分注対象の試薬を吸入するように試薬アーム19を作動し、かつ、待機位置Pcに配置された搬入ボトルを試薬庫15に搬入するように自動ローディング機構27を作動する(ステップSB4)。ステップSB4において、待機位置Pcに配置された搬入ボトルは、把持部27−1により把持され、支持部27−2により試薬庫15の搬入出位置Paまでスライド方向に沿ってスライドされ、把持部27−2により搬入出位置Paに配置された空きスペースに収容される。なお、搬入のための継続停止期間において試薬庫15は停止している。
【0059】
このようにして、測定動作中に分析機構制御部51により搬出及び搬入動作が行われる。従って本実施形態によれば、測定動作時において、測定順序の組み換え動作時において設定された設定測定順序に従って、空きサイクルを設けることなく試薬ボトルを交換することができる。
【0060】
(変形例1)
前述の測定順序の組み換え動作において、搬出ボトルが存在する場合、搬出のための継続停止期間を確保するために測定順序が組み換えられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、試薬庫15内に空きスペースが存在すれば、搬出ボトルを搬出することなく、搬出ボトル内の試薬と同種の試薬が収容された搬入ボトルが試薬庫15に搬入されても良い。この場合、ステップSA3までは
図5と同様の流れで処理が行われる。変形例1に係るステップSA4において組み換え有無判定部59は、初期的な測定順序において搬入のための継続停止期間が確保されているか否かを判定する。そしてステップSA5において組み換え部61は、継続停止期間が確保されるように測定順序を組み換える。搬入のための継続停止期間の確保のための組み換え動作の処理内容は、搬出のための継続停止期間の確保のための組み換え動作と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
測定動作時においては、
図10のステップSB1及びSB2が実行されず、ステップSB3及びSB4のみが実行される。これにより、変形例1に係る自動分析装置は、搬出ボトルを搬出することなく、搬出ボトル内の試薬と同種の試薬が収容された搬入ボトルを試薬庫に搬入することができる。
【0062】
(変形例2)
前述の実施形態に係る自動分析装置1は、複数の試薬ボトルにアクセスするための試薬分析機構として、2本の回転軸を有する試薬アーム19を装備しているとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、複数の試薬ボトルにアクセス可能であれば、如何なる試薬分析機構を装備していても良い。例えば、1本の回転軸と1本のスライド軸とを有する試薬分析機構であっても、互いに直交する2本のスライド軸を有するXYテーブルであっても良い。
【0063】
(変形例3)
前述の実施形態に係る自動分析装置1は、内周外周独立駆動タイプ、かつ、第1試薬ボトル及び第2試薬ボトルの混在配置タイプの単一の試薬庫15を装備しているとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、試薬庫15は、混在配置タイプでなく、外周側テーブル151と内周側テーブル152とにそれぞれ一種類の試薬ボトルのみが選択的に配置されていても良い。また、自動分析装置1は、第1試薬のための試薬ボトルのための第1試薬庫と第2試薬のための試薬ボトルのための第2試薬庫とを装備しても良い。この場合、第1試薬庫と第2試薬庫とは、ステージにおいて互いに離間して設置される。例えば、第1試薬庫は本実施形態の試薬庫15に対応し、第2試薬庫は反応ディスク11の内周側に設けられると良い。もちろん、第2試薬庫が本実施形態の試薬庫15に対応し、第1試薬庫が反応ディスク11の内周側に設けられても良い。
【0064】
(変形例4)
前述の実施形態に係る自動分析装置1は、測定順序の組み換え動作を、測定動作の前段階に実行するとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、測定順序の組み換え動作は、測定動作中に実行されても良い。この場合、例えば、
図5のステップSA2〜SA5が測定動作中に実行される。以下、変形例4に係る測定順序の組み換え動作について簡単に説明する。変形例4に係るステップSA2において搬出ボトル決定部57は、測定動作中、試薬庫15に保持されている試薬ボトル35各々について、試薬ボトル35内の試薬残量値が閾値を下回るか否かをリアルタイムで判定している。例えば、試薬プローブは、試薬の吸入時において、試薬ボトル35内の試薬の液面高さを検出する。検出された液面高さのデータは、リアルタイムで搬出ボトル決定部57に供給される。搬出ボトル決定部57は、供給された液面高さが閾値を下回るか否かを判定する。供給された液面高さが閾値を下回ったことを契機として、変形例4に係るステップSA4において組み換え有無判定部59により組み換え有無の判定処理が実行される。そしてステップSA4において組み換えが必要と判定された場合、変形例4に係るステップSA5において組み換え部61により組み換え処理が実行される。
【0065】
このようにして、変形例4によれば、測定動作中に測定順序の組み換え処理を実行することができる。
【0066】
[効果]
前述のように、自動分析装置1は、少なくとも試薬庫15、搬出ボトル決定部57、及び組み換え有無判定部59を有している。試薬庫15は、複数の試薬ボトル35を回転可能に支持している。搬出ボトル決定部57は、複数の試薬ボトル35の中から、依頼検査の実施時において搬出する予定の試薬ボトル35や搬入する予定の試薬ボトル35を決定する。組み換え有無判定部59は、決定された試薬ボトル35を試薬庫15から搬出するために必要な試薬庫15の継続停止期間や、決定された試薬ボトル35と同種の試薬が収容された試薬ボトル35を試薬庫15に搬入するために必要な試薬庫15の継続停止期間が依頼検査における初期的な測定順序で確保されているか否かを判定する。
【0067】
この構成により、自動分析装置1は、オペレータに対して継続停止期間が設けられるように測定順序の組み換えを促したり、また、組み換え部59により継続停止期間が設けられるように自動的に測定順序を組み換えさせたりすることができる。測定順序が組み換えられることにより、測定動作中に空きサイクルを設けることなく試薬ボトル35を交換することができる。また、自動分析装置1は、複数の試薬ボトルにアクセス可能な試薬分注機構19を装備している。この試薬分注機構19により容易に継続停止期間を確保することができる。
【0068】
かくして本実施形態によれば、試薬ボトルの交換に起因するスループットの低下を防止可能な自動分析装置を提供することが実現する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。