(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121694
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】ロールオンタイプの塗布装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/14 20060101AFI20170417BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20170417BHJP
B05C 17/03 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
B65D83/14 200
B65D83/00 J
B05C17/03
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-244906(P2012-244906)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-91570(P2014-91570A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知之
(72)【発明者】
【氏名】目加多 聡
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭49−040794(JP,Y1)
【文献】
特開2001−240163(JP,A)
【文献】
実開昭49−096359(JP,U)
【文献】
特開平06−154025(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3029449(JP,U)
【文献】
特開2003−312761(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00155616(EP,A2)
【文献】
実開昭61−035618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14
B05C 17/03
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを含有する内容物を充填し、上端にステムを備えたエアゾール容器とそのエアゾール容器の上部に設けられる塗布部材とからなり、
その塗布部材が、転動体保持部を備えた筒状の本体と、
前記転動体保持部によって一部が突出する状態で回転自在に保持される転動体と、
前記ステムに取り付けられ、ステムと共に上下動するカップ状の基材と、
前記転動体の下面と基材との間に配置され、基材の内部に収容されると共に、転動体の下面と接触して転動体を上方に付勢する通気・通液性を有する液保持性の弾性体とを備えており、
前記転動体が基材側に押し込まれたとき、弾性体は、基材に形成されたガス排出孔を除いて転動体と基材とで囲まれる
ロールオンタイプの塗布装置。
【請求項2】
前記転動体保持部の上端近辺に転動体の抜け出しを防止する環状突起が設けられている請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布部材が、エアゾール容器の肩部に取り付けられる肩カバーをさらに備えており、その肩カバーが本体の上下動をガイドしている請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記本体と基材が一体に構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記本体がエアゾール容器に固定されており、前記基材が本体内を上下に移動する請求項1記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布部材が、前記基材を下向きに加圧操作する操作部材を備えている請求項5記載の塗布装置。
【請求項7】
前記本体がエアゾール容器を収容している請求項1記載の塗布装置。
【請求項8】
前記基材が液保持性の弾性体との間に噴霧空間を備えている請求項1記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール製品から吐出した内容物をボールなどの転動体を介して身体などに塗布するロールオンタイプの塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアゾール装置から吐出した薬液を一旦ボールに付着させ、そのボールを身体などに押し当てて転動させることにより、間接的に身体に薬液を塗布することができるロールオンタイプの塗布装置が用いられている(特許文献1、2参照)。このような塗布装置では、塗布するときにボールによるマッサージ効果が得られる。さらに噴射剤として液化ガスを用いると、液化ガスの気化熱による冷却効果が得られる。
【0003】
特許文献1の装置では、ボールを上向きにした状態で覆筒を押下げると、エアゾール装置のステムが押しさげられ、まず一定量の内容液が液室に充満する。つぎに装置を倒立させてボールを身体などの対象物に押し付けると、弁体が弁座から離れ、液室の内容液がボールに付着し、ボールの転動と共に対象物に塗布されていく。この装置は、定量吐出の機能を備えていることもあって構造が複雑である。また、ボールに対して内容液が直接噴射されるため、ボールの表面に付着する内容液が多い部位と少ない部位のまだらになりやすい。また、多量の液をボールに付着させると液垂れや漏れが生じ易く、少量付着させると、何度も噴射を繰り返す必要があり、煩雑である。
【0004】
特許文献2の装置は、湾曲した薄肉の弾性隔壁の変形作用により、ボールの回転を許しながら、上下動をステムに伝えることができる。さらに弾力的な支持により、ボールの上下動に追従するため、弁体が不要で構成が簡単である。しかしこのものもボールに対して内容液が直接噴出されるため、ボールへの付着がまだらになりやすい。また、吐出された内容液が多い場合はボールとホルダーの隙間から液が漏れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−18626号公報
【特許文献2】特開2001−240163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は冷却された液体を持続して塗布することができ、ボールなどの転動体への液体の付着が薄くかつ均一で、構成が比較的簡単なロールオンタイプの塗布装置を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロールオンタイプの塗布装置(請求項1)は、液化ガスを含有する内容物を充填し、上端にステムを備えたエアゾール容器とそのエアゾール容器の上部に設けられる塗布部材とからなり、その塗布部材が、転動体保持部を備えた筒状の本体と、前記転動体保持部によって一部が突出する状態で回転自在に保持される転動体と、前記ステムに取り付けられ、ステムと共に上下動する
カップ状の基材と、前記転動体の下面と基材との間に配置され
、基材の内部に収容されると共に、転動体の下面と接触して転動体を上方に付勢する通気・通液性を有する液保持性の弾性体とを備えて
おり、
前記転動体が基材側に押し込まれたとき、弾性体は、基材に形成されたガス排出孔を除いて転動体と基材とで囲まれることを特徴としている。
【0008】
このような塗布装置においては、前記転動体保持部の上端近辺に転動体の抜け出しを防止する環状突起が設けられているものが好ましい(請求項2)。また、前記塗布部材が、
エアゾール容器の肩部に取り付けられる肩カバーをさらに備えており、その肩カバーが本体の上下動をガイドしているものが好ましい(請求項3)。いずれの場合も、前記本体と基材を一体に構成することができる(請求項4)。また、前記本体がエアゾール容器に固定されており、前記基材が本体内を上下に移動するものとすることができる(請求項5)。さらに前記塗布部材が、前記基材を下向きに加圧操作する操作部材を備えているものであってもよい(請求項6)また、前記本体がエアゾール容器を収容しているものとすることができる(請求項7)。前記基材が液保持性の弾性体との間に噴霧空間を備えているものが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗布装置(請求項1)では、ステムから噴出される内容物が転動体に直接かからず、始めに通気性および通液性を有する液保持性の弾性体に噴出される。そしてその内容物は液保持性の弾性体に保持されてその内部で液化ガスがゆっくりと気化するため、内容物は液化ガスの気化熱により効率よく冷却されて冷却液体となり、冷却液体は低温状態が持続する。この冷却液体は液保持性の弾性体と転動体の弾力的な摺接に伴って、薄く拡げられた状態で転動体に順に移される。そして冷却液体は使用されるにしたがって液保持性の弾性体から供給される。そのため、常時転動体に付着している液は少量でよく、液垂れが生じにくく、洩れが生じにくい。また、弁体が不要であるので、構成が簡易である。
【0010】
前記塗布装置において、前記転動体保持部の上端近辺に転動体の抜け出しを防止する環状突起が設けられている場合(請求項2)は、転動体が液保持性の弾性体の弾性によって環状突起に当接した状態で回転するので、転動体の表面に付着した冷却液体が環状突起によって一層薄く拡げられる。また、前記塗布部材が、エアゾール容器の肩部に取り付けられる肩カバーをさらに備えており、その肩カバーが本体の上下動をガイドしている場合(請求項3)は、塗布部材を横向きに動かす力が強い場合でも、肩カバーがガイドするので、ステムへの負荷が軽減されてステム折れを防止し、安定して塗布することができる。
【0011】
前記本体と基材を一体に構成する場合(請求項4)は、部品点数が少なくなり、組み立て作業が簡易になる。前記本体がエアゾール容器に固定され、前記基材が本体内を上下に移動する場合(請求項5)は、細いエアゾール容器を用いた簡易な塗布装置を得ることができる。さらに前記塗布部材が、前記基材を下向きに加圧操作する操作部材を備えている場合(請求項6)は、細いエアゾール容器を用いてもバルブ操作が容易である。また、前記本体がエアゾール容器を収容している場合(請求項7)は、全体をまとめた形態とすることができ、しかもエアゾール容器の交換が容易になる。前記基材が液保持性の弾性体との間に噴霧空間を備えている場合(請求項8)は、内容物を噴霧空間内で霧状にして広範囲に液保持性の弾性体に付与することができ、液保持性の弾性体を速く冷却して液化ガスを液保持性の弾性体内に長く保持させることができ、冷却効果が持続する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の塗布装置の一実施形態を示す一部断面側面図である。
【
図2】
図1の塗布装置の組み立て前の状態を示す一部断面側面図である。
【
図3】
図3aおよび
図3bは
図1の塗布装置の使用方法を示す一部断面側面部である。
【
図4】本発明の塗布装置の他の実施形態を示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5aおよび
図5bは
図4の塗布装置の使用方法を示す一部断面側面部である。
【
図6】本発明の
範囲外の塗布装置の
例を示す一部断面側面図である。
【
図7】本発明の
範囲外の塗布装置のさらに他の
例を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す塗布装置10は、エアゾール容器11と、そのエアゾール容器の上端に装着される塗布部材12とからなる。エアゾール容器11は従来のものを使用することができ、たとえば有底筒状の容器本体13と、その容器本体の上部開口に取り付けられるエアゾールバルブ14とからなる。
図1ではアルミニウムや鋼などの金属製の容器本体13を示している。この容器本体13は胴部13aの上端に肩部13bが設けられ、その上端に形成されたビード部13cにバルブのマウンティングカップのフランジ14aが被せられて固定されている。合成樹脂製の容器本体を採用してもよい。
【0014】
エアゾールバルブ14は、ハウジングと、そのハウジング内に収容したステム17、そのステムを上向きに付勢するバネ、マウンティングカップおよびシール材などからなる従来公知のものである。バネの付勢力に抗してステム17を押下げるとステムのステム孔が開いてステム上端から内容物が吐出され、ステム17を押下げる力をなくすとバネによりステム17が元の位置に戻り、ステム孔が閉じる。
【0015】
図2に詳細に示すように、塗布部材12は、ステム17に装着されるカップ状の基材21と、その基材の上端と連続するように一体にされた筒状の本体22と、本体内に回転自在に収容される転動体としてのボール23と、基材21の内部に収容され、転動体23を上向きに付勢する軟質発泡体24とからなる。軟質発泡体24は液保持性を備えた弾性体であり、連通気泡の発泡体で通気性および通液性を有する。この実施形態ではさらに肩カバー25を備えている。基材21と本体22は別部品として構成することもでき、本体22と肩カバー25を一体にすることもできる。基材21の底壁26の下面には、ステム17に装着される筒状のステム装着部27が設けられている。ステム装着部27は底壁26を貫通する通路28によって基材21の内部空間と連通している。基材21の周壁29の上部には、ガス排出孔30が形成されている。
【0016】
本体22の上部には、ボール23を回転自在に収容する球面状の内面を有するボール保持部31が設けられ、外周下部には筒状のガイド片32が設けられている。ガイド片32の上端近辺にもガス排出孔33が形成されている。ボール保持部31の内面の径はボール23よりいくらか大きくしており、ボール23とボール保持部31の内面の間には隙間(
図1の符号34)があいている。この実施形態ではボール保持部31の上部35は内向きに湾曲しており、上端にはボール23が脱落しないように、ボールより小さい径の開口36が形成されている。組み立てたときは
図1のようにボール23の上部が開口36より突出する。開口の内縁36aはボール23と摺接する環状突起である。ボール保持部31の内面の下部は内向きに湾曲しており、その下端が基材21の上端と連続している。
【0017】
本体22の下部38は、基材21との間に隙間をあけて円筒状に形成されており、前記ガイド片32はその下部38の下端から下向きに延びている。本体22および基材21は、通常はポリアセタール、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂の成形品が用いられる。しかしこれらに限られるものではなく、金属やゴムなども使用できる。
【0018】
肩カバー25は通常は塗装などができないマウンティングカップを覆うため、また、オーバーキャップの取り付けるため、マウンティングカップのフランジ14aに取り付けるリング状の部材である。この実施形態では肩カバー25に本体22のガイド片32と摺接するガイド壁37を設けている。ガイド壁37は内側の段部39を介して上向きに延びている。ガイド壁37の外側の根元には、オーバーキャップを取り付けるための段部39aが設けられている。ガイド壁37の高さはガイド片32の高さはより低くしている。そのため、本体22が下端まで下降するとき、ガイド片32が内側の段部39に当接して止まるので、ガイド壁37の上端とガイド片32の外側の段部との間に隙間が残る(
図3a参照)。この隙間はガス排出に寄与する。
【0019】
軟質発泡体24はこの実施形態では円柱状を呈し、基材21の内部に収容される。軟質発泡体24としては、たとえば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂を発泡させて所定の形状に成形した連続気泡の発泡体(いわゆるスポンジ)が用いられる。軟質発泡体24はステム17から噴出する内容物(液化ガスおよび原液)を通す通気性、通液性を有し、ボール23を上向きに付勢するため、所定の弾力性を有するものが用いられる。前記ボール23は、ステンレスなどの金属、合成樹脂やゴムなどからなる球体である。熱伝導率が高く冷却液体により速く冷却されて低温状態を維持しやすい点から、金属製または合成樹脂やゴム製の球体の表面にアルミニウムなどの金属で被覆したものを用いることが好ましい。また、表面に液体を保持するため、植毛加工が施されていてもよい。さらに人体や動物の皮膚に直接接する場合は、使用感に大きい影響を与えるため、ゴルフボールのように表面に小さな凹凸を設けてもよく、小さな突起を設けても良い。
【0020】
エアゾール容器11に充填する内容物(エアゾール組成物)としては、薬効成分を含む原液と、その原液を噴射する噴射剤(液化ガス)とからなる。原液としては、消炎鎮痛剤、鎮痒剤、制汗剤、害虫忌避剤、殺菌・消毒剤、清涼剤、消臭剤、香料などの有効成分を水や低級アルコール、多価アルコール、シリコーンオイル、炭化水素、エステル油などの溶媒に溶解させたものが用いられる。なお、溶媒としては、皮膚に塗布したときに揮発しやすく、冷感が得られ、液垂れを防止しやすい点から、エタノールなどの低級アルコール、ノルマルペンタンやイソペンタンなどの炭化水素などの揮発性成分を用いることが好ましい。
【0021】
前記噴射剤には液化ガスが用いられる。液化ガスとしては、プロパン、ブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンなどのハイドロフルオロオレフィン、およびこれらの混合物が用いられる。液化ガスは軟質発泡体内で気化して原液を冷却し冷却液体にするとともに、その圧力で軟質発泡体内に短時間で浸透する。なお、加圧剤として、窒素、空気、二酸化炭素、亜酸化窒素などの圧縮ガスを用いてもよい。
【0022】
つぎに
図3a、
図3bを参照して塗布装置10の使用方法を説明する。塗布装置10は、上下逆(倒立)にしてボール23を対象物Tに押し付ける。あるいは上下逆にせず(正立)、手などでボール23を下向きに押し込む。それによりボール23が軟質発泡体24を凹ませ、その弾性付勢力に抗しながら、ボール保持部31内に深く入る。そしてボール23が本体22のボール保持部31の内面の下端に当接したとき、下降が停止し、以後はステム17を押し込みながら本体22が下降していく。倒立の場合は、
図3aのようにエアゾール容器11が下降する。そのためステム17が基材21で押し上げられた状態となる。いずれの場合もエアゾールバルブ14が開き、ステム17から内容物が噴出する。そして前述のように、ガイド片37の下端が肩カバー25の内側の段部39に当接したときに、本体22あるいはエアゾール容器11の下降が停止する。なお、エアゾール容器11を正立および倒立いずれの向きでも使用できるように、エアゾール容器の向きに応じて流せる方向が切り替わるボール弁などの逆止弁や、フレキシブルなチューブの先端に錘を設けた正・倒立用バルブを用いることが好ましい。
【0023】
ステム17から噴出した内容物は軟質発泡体24内に入り込む。このとき軟質発泡体24はガス排出孔30を除いて基材21とボール23により囲まれているため、軟質発泡体内の液化ガスがゆっくりと気化して残りの液化ガスを含む内容物を冷却する。また、吐出時の勢いおよび液化ガスの圧力が推進力となって冷却液体は軟質発泡体内に短時間で保持される。気化したガスは基材21のガス排出孔30を通り、基材21の周壁29と本体22の下部38との間の隙間を通り、ガイド片32のガス排出孔33を通って外部空間に放出されるため、ボール23が抜け飛ばない。軟質発泡体24に入り込んだ冷却液体は軟質発泡体24内に保持され、ボール23を冷却する。ボール23の押圧をやめると、ステム
17が元の位置に戻り、噴出が止まる。この時点で軟質発泡体24には相当の量の冷却液体が保存されている。
【0024】
ついで
図3bのようにボール23を人体の皮膚などの塗布対象物に当てて軽く押圧しながら横に滑らせると、ボール23が対象物Tに沿って転動し、ボール23の表面の冷却液体を対象物に塗布していく。そのとき、ボール23と軟質発泡体24の摺接に伴って軟質発泡体24からボール23に冷却液体が常時供給される。そのため、塗布している間はボールが冷却され続けるため冷却効果が持続し、ボール23の表面には少量の冷却液体を付着させるだけで足り、液垂れが生じにくい。なお、このときはボール23は軟質発泡体24をいくらか沈ませて反力を受けている。そのため、ボール23とボール保持部31の内面の間はほぼ均等に隙間があいている。
【0025】
図4は、細いエアゾール容器11を用いたペンタイプの塗布装置41を示している。エアゾール容器11の容器本体13の径は、たとえば15〜35mm程度と細い。エアゾールバルブは
図2aの場合と異なり、容器本体13の上部空洞に挿入されるハウジングと、そのハウジングを容器本体13にカシメて固定するカバーキャップ42とを備えている。
【0026】
この塗布装置41では、ボール23が小径で、押し込みにくいため、筆記具のように保持したときに指で操作しやすいように、横から押し込む操作部材43を採用している。ただしボール23でステム17を押下げることもできる併用タイプとしている。そして塗布部材12の上端にはボール23があるため、基材21の途中を操作部材43で操作するように構成している。すなわち、基材21は、下側のステム装着部27と上側の発泡体収容部44に分け、それらを細い筒状の連結軸45で連結している。そしてステム装着部27を比較的大きい円柱状とし、そのステム装着部27と有底筒状の発泡体収容部44の間の空間に操作部材43の作用部46が配置されている。作用部46の外側には、下に向かって延びる連結部が設けられ、全体が逆L字状に構成されると共に、連結部の外面に指押し部47が設けられ、連結部の下端はヒンジ48によって本体22の容器装着部に揺動自在に連結している。
【0027】
また、上下に長い基材21の上下動をスムーズにガイドするため、本体22を上下に長い筒状としているが、安定して支持するために上下動させないように肩カバーを本体に一体化させた容器装着部をエアゾール容器11に取り付けている。本体22の上部は
図1の塗布装置10の場合と同様である。ただし基材21と本体22を別部品としたため、ボール23の挿入が容易である。本体22の上部には、少なくとも操作したときに発泡体収容部44で覆われない位置にガス排出孔49が形成されている。操作部材43は逆L字状で、前記作用部46は基材21の連結軸45を左右から挟む二股構造としている。それにより
図5aのように操作部材43の指押し部47を押し込むと、ステム装着部27が下降してステム17が押下げられる。それにより内容物が軟質発泡体24に供給される。
【0028】
ついで
図5bのように操作部材43の押し込みをやめると、エアゾールバルブのステム17を上向きに付勢するバネの付勢力によって基材21が上昇し、操作部材43が元のように外向きに突出する。それによりボール23を転動させながら冷却液体を対象物Tに塗布することができる。操作部材43は、たとえば親指や人差し指で操作する。
【0029】
この場合も
図1の塗布装置10と同様に、バルブが閉じているにも関わらず、ボール23の表面の冷却液体は使用される都度、軟質発泡体24から供給される。そのため冷却効果が持続し、液漏れや液垂れが少ない。そしてエアゾール容器11の容器本体13が細いため、筆記具のように指で挟んで安定させ、塗布したい部位に沿って転動させることができる。そのため狭い範囲でも塗布しやすい。
【0030】
図6に示す塗布装置50は、基材21の底面に噴霧空間51を設け、ステム17から吐出される内容物が噴霧空間51内で微細化して軟質発泡体24に広範囲に届くようにしている。そのため、内容物は軟質発泡体24の下面に広く分散して供給され、軟質発泡体が短時間で冷却され、軟質発泡体内に液化ガスを含む冷却液体を保持しやすくなる。それにより冷却効果が持続し、液垂れや洩れが一層少なくなる。この塗布装置50では肩カバーを設けていない。しかし
図1の装置のような肩カバー25を設けてもよく、その場合、本体22をガイドする機能をもたせてもよい。また、
図4の装置のように本体22と肩カバーを一体にしたり、別個に製造した後、結合することもできる。
【0031】
図6の塗布装置50では、基材21は側壁を備えていないので、ボール23を押下げる力を基材21に伝えるとき、軟質発泡体24を介して伝えることになる。軟質発泡体24が柔らかい場合は、本体22と基材21を結合しておくか、一体にするか、あるいは段部などで両者を係合させて力を伝えられるようにする。その場合はボール23が本体22内に引っ込んだ後、本体22の上端を押下げて基材21を押下げることができる。
【0032】
本体22の内面にボール23と係合する突起を設け、ボール23の押し下げを介して本体22を押下げるようにしてもよい。ステム17から吐出した内容物を軟質発泡体24で一旦保持しておき、ボール23の転動と共に軟質発泡体24からボール23に少量ずつ供給する点は
図1、
図4の塗布装置と同様である。
【0033】
図7に示す塗布装置54は、本体22を上下に長くすると共に、底部を底キャップ55で閉じており、本体22の内部にエアゾール容器13を収容している。そして基材21をカップ状の基材本体56と、その上面開口を塞いで軟質発泡体24を支える圧搾部材57とから構成している。圧搾部材57は多数の通気・通液孔57aを有する板材である。これにより基材本体56の内部に噴霧空間51が形成される。基材本体56の底面は上に向かって円錐状に拡がっている。この塗布装置54では、ボール23や軟質発泡体24は本体22内を上下に移動自在であり、ボール23を押下げることにより、軟質発泡体24および基材21を介してステム17を押下げることができる。そのとき、基材本体56内に噴霧空間51があるので、ステム17から吐出された内容物が微細化されて広く分散して軟質発泡体24の下面に供給される。
【0034】
図7の塗布装置54は、とくに小型のエアゾール容器に対して好適に用いることができる。また、底キャップ55をネジ止めなどで本体22に着脱自在に構成するのが好ましい。その場合は底キャップ55を取り外し、使い終わったエアゾール容器13を容易に交換することができる。また、肩カバーを使用しないため、肩カバーを設けにくいカバーキャップタイプのエアゾール容器にも容易に採用することができる。
【0035】
前記実施形態で冷却液体を対象物に塗布する転動体としてボールを採用しているが、ローラなど、他の転動体を採用することもできる。前記実施形態ではいずれもオーバーキャップを記載していないが、ホコリやゴミなどがボールに付着しないようにオーバーキャップを設けるのが好ましい。
図1の実施形態では、ガス排出孔を設けているが、軟質発泡体と本体や基材との間からガスが排出されやすい場合や、液化ガスの含有量が少なかったり圧力が低い場合は、ガス排出孔は不要である。前記実施形態では液保持性の弾性体として軟質発泡体を採用しているが、軟質発泡体に代えて繊維質の弾性体を採用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10 塗布装置
11 エアゾール容器
12 塗布部材
13 容器本体
13a 胴部
13b 肩部
13c ビード部
14 エアゾールバルブ
14a フランジ
17 ステム
21 基材
22 本体
23 ボール(転動体)
24 軟質発泡体(液保持性の弾性体)
25 肩カバー
26 底壁
27 ステム装着部
28 通路
29 周壁
30 ガス排出孔
31 ボール保持部(転動体保持部)
31a 隙間
32 ガイド片
33 ガス排出孔
34 隙間
35 上部
36 開口
36a 環状突起
37 ガイド壁
38 下部
39 段部
39a 段部
41 塗布装置
42 カバーキャップ
43 操作部材
44 発泡体収容部
45 連結軸
46 作用部
47 指押し部
48 ヒンジ
49 ガス排出孔
50 塗布装置
51 空間
54 塗布装置
55 底キャップ
56 基材本体
57 圧搾部材
57a 通気・通液孔