(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の液体噴射ヘッドにあっては、壁部の長手方向の一方側の部分と長手方向の他方側の部分とでは、駆動電極の形成範囲の違いに起因して壁部の変形可能な範囲が異なる。このため、液体噴射ヘッドの駆動電極に電圧を印加して壁部を変形させたとき、壁部の長手方向の一方側の部分と長手方向の他方側の部分とでは、変形量がそれぞれ異なり、溝に充填された液体の内部を伝播する圧力波も長手方向の両側でバランスが異なることとなる。したがって、溝に充填された液体の内部において、長手方向の両側にそれぞれバランスよく圧力波を伝播させ、液体の吐出特性を向上させるという点で改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、液体の吐出特性を向上できる液体噴射ヘッド、およびこの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液体噴射ヘッドは、圧電体により形成される壁部により仕切られ、第一主面と第二主面とを貫通する溝が複数配列するアクチュエータ基板と、前記溝の前記第一主面側の開口を覆うように前記アクチュエータ基板に設置され、前記溝の長手方向の中間部において前記溝と連通するノズル孔を有するノズルプレートと、を備え、前記壁部の側面には、前記長手方向の一方側の端部から他方側の端部に亘って、前記長手方向に沿って延在する駆動電極と、前記壁部の側面の一部を覆う絶縁膜と、が設置され、前記駆動電極は、前記ノズル孔の周辺において前記壁部の表面に設置されるとともに、少なくとも前記長手方向の前記一方側の端部において、前記壁部との間に前記絶縁膜を挟んで設置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、駆動電極は、壁部における前記長手方向の一方側の端部から他方側の端部に亘って設置されているので、長手方向の他方側の端部において溝内で対向する駆動電極同士が短絡するのを防止できるとともに、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の長手方向の他方側の端部が変形するのを抑制できる。また、駆動電極は、少なくとも長手方向の一方側の端部において、壁部との間に絶縁膜を挟んで設置されていることから、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の長手方向の一方側の端部が変形するのを抑制できる。これにより、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部のノズル孔の周辺部分が変形できるとともに、壁部の長手方向の両端部が変形するのを抑制できる。また、壁部のノズル孔の周辺部分のみを変形できるので、溝に充填された液体の内部において、ノズル孔の中心軸を挟んで長手方向の両側に向かって、壁部の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。したがって、液体の吐出特性を向上できる。
【0010】
また、前記駆動電極は、前記ノズルプレートから離間していることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、駆動電極がノズルプレートから離間しているので、壁部のうち、駆動電極が設置された領域のみを駆動させて屈曲変形させることができる。
【0012】
また、前記駆動電極は、前記長手方向の両側において前記壁部との間に前記絶縁膜を挟んで設置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の長手方向の両側が変形するのを確実に抑制できる。これにより、壁部のノズル孔の周辺部分のみを変形できるとともに、溝に充填された液体の内部において、ノズル孔の中心軸を挟んで長手方向の両側に向かって圧力波を伝播できるので、液体の吐出特性をさらに向上できる。
【0014】
また、前記駆動電極は、前記ノズル孔と対応する位置において、前記壁部との間に前記絶縁膜をさらに挟んで設置されていることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部のノズル孔と対応する部分が変形するのを抑制できるとともに、壁部のノズル孔と対応する部分以外の周辺部分を変形できる。これにより、溝に充填された液体の内部において、ノズル孔の中心軸を挟んで長手方向の両側に向かって、壁部の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。しかも、ノズル孔と対応する位置において、壁部との間に絶縁膜をさらに挟んで駆動電極を設置することで、駆動電極に電圧を印加したときに、ノズル孔と対応する位置において電界が発生するのを防止できる。したがって、良好な吐出特性を維持したまま、消費電力を下げることができる。
【0016】
また、前記駆動電極のうち、前記壁部との間に前記絶縁膜を挟まない有効駆動電極領域は、前記長手方向と直交するとともに前記ノズル孔の中心軸を含む仮想面に対して、面対称となるように設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、壁部との間に絶縁膜を挟まない有効駆動電極領域は、仮想面に対して面対称となるように設けられているので、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部を仮想面に対して面対称となるように変形させることができる。これにより、溝に充填された液体の内部において、壁部の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく仮想面に対して面対称に伝播できる。したがって、液体の吐出特性を格段に向上できる。さらに、壁部のうち有効駆動電極領域以外に対応する部分は、不要に駆動されることがないので、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の共振ポイントを減少させることができる。したがって、液体噴射ヘッドを駆動したときの壁部の共振を抑制できるので、液体の吐出特性を向上できる。
【0018】
また、前記溝の前記第二主面側の開口を覆うように前記アクチュエータ基板に設置され、前記溝に液体を供給する液体供給室を有するカバープレートを備え、前記溝のうち、前記ノズル孔の周辺の領域であって、前記液体供給室に対応する領域以外の所定領域がポンプ領域とされ、前記有効駆動電極領域の前記長手方向の両側縁部は、前記ポンプ領域内に配置されていることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、有効駆動電極領域の長手方向の両側縁部をポンプ領域内に配置することで、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、ポンプ領域内の壁部のみを駆動できる。したがって、ポンプ領域外の壁部が不要に駆動されることがないので、壁部の共振ポイントを減少させて壁部の共振を抑制できる。
【0020】
また、前記溝の前記第二主面側の開口を覆うように前記アクチュエータ基板に設置され、前記溝に液体を供給する液体供給室を有するカバープレートを備え、前記溝のうち、前記ノズル孔の周辺の領域であって、前記液体供給室に対応する領域以外の所定領域がポンプ領域とされ、前記有効駆動電極領域の前記長手方向の両側縁部は、前記ポンプ領域と非ポンプ領域との境界に沿うように配置されていることを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、有効駆動電極領域の両側縁部をポンプ領域と非ポンプ領域との境界に沿うように配置することで、ポンプ領域に対応した壁部のみを駆動できるとともに、ポンプ領域外の壁部が不要に駆動されることがないので、壁部の共振を抑制できる。
【0022】
また、前記カバープレートは前記溝から液体を排出する液体排出室を備え、前記液体供給室が前記溝における前記長手方向の前記一方側に連通し、前記液体排出室が前記溝における前記長手方向の前記他方側に連通するとともに、前記溝のうち、前記液体供給室と前記液体排出室との間に対応する領域が前記ポンプ領域とされることを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、液体の吐出特性を向上できる上記構成を、いわゆるスルーフロータイプの液体噴射ヘッドに好適に適用できる。
【0024】
また、複数の前記溝は、吐出溝と非吐出溝とが交互に配列することにより形成され、前記液体供給室および前記液体排出室は、前記吐出溝と連通していることを特徴としている。
【0025】
本発明によれば、液体の吐出特性を向上できる上記構成を、吐出溝と非吐出溝とを備えたスルーフロータイプの液体噴射ヘッドに好適に適用できる。
【0026】
また、前記絶縁膜を形成する材料の比誘電率は、前記壁部を形成する前記圧電体の比誘電率よりも小さいことを特徴としている。
【0027】
本発明によれば、絶縁膜を形成する材料の比誘電率は、壁部を形成する圧電体の比誘電率よりも小さいので、壁部との間に絶縁膜を挟んで駆動電極を設置したときに、壁部を挟んで対向する絶縁膜間の静電容量を小さくできる。これにより、液体噴射ヘッドを駆動したとき、壁部のうち絶縁膜に対応する部分が駆動するのを確実に防止できる。
【0028】
また、絶縁膜を形成する材料は、SiO
2を主成分とすることを特徴としている。
【0029】
本発明によれば、SiO
2を主成分とする材料により絶縁膜を形成することで、絶縁膜と駆動電極との密着性に優れた、信頼性の高い液体噴射ヘッドを形成できる。
【0030】
また、本発明の液体噴射装置の製造方法は、上述の液体噴射ヘッドの製造方法であって、圧電体基板に絶縁膜用マスクを設置する絶縁膜用マスク設置工程と、前記圧電体基板に絶縁材料を成膜する絶縁材料成膜工程と、前記駆動電極の成膜領域に対応した部分が開口した駆動電極用マスクを設置する駆動電極用マスク設置工程と、前記駆動電極の電極材料を成膜する駆動電極製膜工程と、を備えたことを特徴としている。
【0031】
本発明によれば、液体の吐出特性を向上できる液体噴射ヘッドを製造することができる。
【0032】
また、本発明の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えたことを特徴としている。
【0033】
本発明によれば、液体の吐出特性を向上できる液体噴射ヘッドを備えているので、高性能な液体噴射装置を形成できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、駆動電極は、壁部における前記長手方向の一方側の端部から他方側の端部に亘って設置されているので、長手方向の他方側の端部において溝内で対向する駆動電極同士が短絡するのを防止できるとともに、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の長手方向の他方側の端部が変形するのを抑制できる。また、駆動電極は、少なくとも長手方向の一方側の端部において、壁部との間に絶縁膜を挟んで設置されていることから、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部の長手方向の一方側の端部が変形するのを抑制できる。これにより、駆動電極に電圧を印加して液体噴射ヘッドを駆動したときに、壁部のノズル孔の周辺部分が変形できるとともに、壁部の長手方向の両端部が変形するのを抑制できる。また、壁部のノズル孔の周辺部分のみを変形できるので、溝に充填された液体の内部において、ノズル孔の中心軸を挟んで長手方向の両側に向かって、壁部の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。したがって、液体の吐出特性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、この発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る液体噴射ヘッド1の分解斜視図である。
図2は、実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図であり、
図2(a)は、吐出溝6aの長手方向に沿った側面断面図であり、
図2(b)は、非吐出溝6bの長手方向に沿った側面断面図である。なお、
図1および
図2では、分かりやすくするために、駆動電極12にクロスハッチングを施し、絶縁膜20にドットハッチングを施して図示している。
【0037】
図1に示すように、実施形態の液体噴射ヘッド1は、アクチュエータ基板2と、カバープレート3と、ノズルプレート4とを備えている。
アクチュエータ基板2は、圧電体により形成される壁部5により仕切られ、第一主面S1と第二主面S2とを貫通し、吐出溝6aおよび非吐出溝6bを含む溝6が複数配列する。カバープレート3は、溝6の第二主面S2側の第二開口7を覆うようにアクチュエータ基板2に設置され、溝6の長手方向の一方側に吐出溝6aに液体を供給する液体供給室9を有し、溝6の長手方向の他方側に吐出溝6aから液体を排出する液体排出室10を有する。ノズルプレート4は、吐出溝6aに連通するノズル孔11を備え、溝6の第一主面S1側の第一開口8を覆うようにアクチュエータ基板2に設置される。
なお、以下の説明では、溝6が延在する長手方向をX方向とし、液体供給室9が配置される一方側を−X側とし、液体排出室10が配置される他方側を+X側とする。また、長手方向と直交する溝6の幅方向をY方向とし、
図1における紙面左側を−Y側とし、
図1における紙面右側を+Y側とする。また、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とし、第一主面S1側を−Z側とし、第二主面S2側を+Z側とする。以下では、必要に応じてXYZの直交座標系を用いて説明する。
【0038】
(アクチュエータ基板)
以下に、液体噴射ヘッド1の各構成部品について、詳細に説明する。
アクチュエータ基板2は、Z方向に分極処理が施された圧電体材料、例えばPZTセラミックス等により、略矩形板状に形成されている。
アクチュエータ基板2の溝6は、吐出溝6aと非吐出溝6bとが、Y方向に交互に並列に配列することにより形成されている。
図2(a)に示すように、吐出溝6aは、−X側および+X側の端部がそれぞれアクチュエータ基板2の−Z側(第一主面S1側)から+Z側(第二主面S2側)に向かって切り上がるように傾斜し、アクチュエータ基板2の−X側端部2aおよびカバープレート3の−X側端部3aよりも+X側の位置から、アクチュエータ基板2の+X側端部2bよりも−X側の位置に亘って形成される。
【0039】
図2(b)に示すように、非吐出溝6bは、+X側の端部が吐出溝6aと同様にアクチュエータ基板2の−Z側から+Z側に向かって切り上がるように傾斜する。また、非吐出溝6bは、−X側の端部がアクチュエータ基板2の−X側端部2aまで延在しており、−X側端部2aの近傍では、底部にアクチュエータ基板2が残る上げ底部15が形成される。上げ底部15の+Z側面15aは、第一主面S1に対して略平行に形成されるとともに、第一主面S1よりも+Z側に配置される。上げ底部15は、−Z側から+Z側に向かって切り上がるように傾斜するとともに、上げ底部15の+Z側面15aにかけて連続的に形成されている。
図1に示すように、各壁部5の側面には、X方向に沿って駆動電極12が延在している。駆動電極12の詳細については後述する。
【0040】
(カバープレート)
カバープレート3は、例えばアクチュエータ基板2と同じ材料であるPZTセラミックス等により、略矩形板状に形成されている。なお、カバープレート3を形成する材料は、PZTセラミックスに限定されることはなく、例えば、マシナブルセラミックスや他のセラミックス、ガラス等の低誘電体材料を用いてもよい。ただし、カバープレート3とアクチュエータ基板2とを同じ材料により形成することにより、熱膨張を等しくすることができるので、温度変化に対する液体噴射ヘッド1の反りや変形を抑制することができる。
【0041】
図2(a)および(b)に示すように、カバープレート3は、アクチュエータ基板2の−X側に液体供給室9を、+X側に液体排出室10を、液体供給室9と液体排出室10との間に本体部3cを備えており、吐出溝6aおよび非吐出溝6bを覆うように配置されている。カバープレート3は、アクチュエータ基板2の第二主面S2に対して、例えば接着剤等により接着固定される。このとき、
図2(a)に示すように、吐出溝6aを形成する壁部5のうち、カバープレート3の本体部3cに対応する領域の+Z側端部は、カバープレート3の本体部3cと密着して強固に固定される。
図2(a)および(b)に示すように、カバープレート3のX方向の長さは、アクチュエータ基板2のX方向の長さよりも短くなるように形成されている。カバープレート3は、+X側端部3bがアクチュエータ基板2の+X側端部2bと略面一となるように、かつ−X側端部3aがアクチュエータ基板2の−X側端部2aよりも+X側に位置するように配置されている。これにより、アクチュエータ基板2の第二主面S2のうち、カバープレート3の−X側端部3aよりも−X側の領域は、外側に露出している。
【0042】
図1に示すように、液体供給室9には、その底部に複数の第一スリット14aが形成されている。第一スリット14aは、吐出溝6aに対応した位置において、液体供給室9の底部がZ方向に貫通して形成されており、X方向に沿って延在するとともに、Y方向に並んで設けられている。
図2(a)に示すように、液体供給室9は、第一スリット14aを介して、吐出溝6aの−X側の端部と連通している。なお、液体供給室9は、非吐出溝6bとは連通していない(
図2(b)参照)。
また、
図1に示すように、液体排出室10には、その底部に複数の第二スリット14bが形成されている。第二スリット14bは、吐出溝6aに対応した位置において、液体排出室10の底部がZ方向に貫通して形成されており、X方向に沿って延在するとともに、Y方向に並んで設けられている。
図2(a)に示すように、液体排出室10は、第二スリット14bを介して、吐出溝6aの+X側の端部と連通している。なお、液体排出室10は、非吐出溝6bとは連通していない(
図2(b)参照)。
液体供給室9に供給される液体は、第一スリット14aを介して吐出溝6aに流入し、第二スリット14bを介して吐出溝6aから液体排出室10に排出される。すなわち、本実施形態の液体噴射ヘッド1は、いわゆるスルーフロータイプの液体噴射ヘッド1となっている。なお、
図2(b)に示すように、非吐出溝6bは液体供給室9および液体排出室10とは連通していないため、非吐出溝6bに液体が流入することはない。
【0043】
カバープレート3の厚さは、例えば0.3mm〜1.0mmに設定されるのが好ましい。カバープレート3を0.3mmより薄くすると強度が低下し、1.0mmより厚くすると液体供給室9や液体排出室10、第一スリット14a、第二スリット14b等の加工に時間を要するとともに材料の使用量の増加に伴ってコスト高となるためである。
【0044】
(ノズルプレート)
図2(a)に示すように、ノズルプレート4は、例えばポリイミドやポリプロピレン等の合成樹脂材料や、金属材料等により形成された薄膜状の部材であり、Z方向から見たときに、アクチュエータ基板2の外形に対応した略矩形状に形成されている。
ノズルプレート4は、吐出溝6aおよび非吐出溝6bの第一主面S1側の第一開口8を覆うように、アクチュエータ基板2の第一主面S1に対して、例えば接着剤等により接着固定されている。また、ノズルプレート4は、吐出溝6aのX方向の中間部において、吐出溝6aと連通するノズル孔11を有している。ノズル孔11は、+Z側から−Z側に向かって直径が漸次小さくなるように形成されている。
ノズルプレート4の厚さは、例えば0.01mm〜0.1mmに設定されるのが好ましい。ノズルプレート4を0.01mmよりも薄くすると強度が低下し、0.1mmより厚くすると隣り合うノズル孔11に振動が伝わってクロストークが発生しやすくなるためである。
【0045】
ここで、PZTセラミックスは、ヤング率が58.48GPaであり、ポリイミドは、ヤング率が3.4GPaである。したがって、カバープレート3としてPZTセラミックスを使用し、ノズルプレート4としてポリイミド膜を使用することにより、アクチュエータ基板2の第二主面S2を覆うカバープレート3のほうが、第一主面S1を覆うノズルプレート4よりも剛性が高くなる。
また、カバープレート3の材質は、ヤング率が例えば40GPaを下回らないことが好ましく、ノズルプレート4の材質は、例えばヤング率が1.5GPa〜30GPaの範囲にあることが好ましい。ノズルプレート4は、ヤング率が1.5GPaを下回ると被記録媒体に接触したときに傷がつきやすく信頼性が低下し、30GPaを超えると隣り合うノズル孔11に振動が伝わってクロストークが発生しやすくなるためである。
【0046】
(駆動電極)
図1に示すように、液体噴射ヘッド1のアクチュエータ基板2の壁部5の側面には、駆動電極12が形成されている。
駆動電極12は、壁部5の側面のうち吐出溝6aに面する側面5aに設置されるコモン電極12aと、壁部5の側面のうち非吐出溝6bに面する側面5bに設置されるアクティブ電極12bとを含む。
コモン電極12aは、吐出溝6aに面する一対の壁部5,5の側面5a,5aにおける−X側の端部から、+X側の端部よりも−X側の位置に亘って、X方向に沿って延在して略帯状に設置されている。吐出溝6aの側面5a,5aに形成された一対のコモン電極12a,12aは、それぞれ互いに電気的に接続される(
図1参照)。
アクティブ電極12bは、非吐出溝6bに面する一対の壁部5,5の側面5b,5bにおける−X側の端部から、+X側の端部よりも−X側の位置に亘って、X方向に沿って延在して略帯状に設置されている。非吐出溝6bの側面5b,5bに形成された一対のアクティブ電極12b,12bは、それぞれ互いに電気的に分離される(
図1参照)。
図2(a)および
図2(b)に示すように、コモン電極12aおよびアクティブ電極12bは、それぞれ吐出溝6aおよび非吐出溝6bの底面を構成するノズルプレート4から離間するように設置されている。本実施形態において、コモン電極12aおよびアクティブ電極12bは、それぞれ例えば上げ底部15の+Z側面15aよりも+Z側に設置されている。
【0047】
図1に示すように、アクチュエータ基板2の第二主面S2のうち、カバープレート3の−X側端部3aよりも−X側の領域には、コモン電極12aに電気的に接続するコモン端子16aと、アクティブ電極12bに電気的に接続するアクティブ端子16bと、隣り合う非吐出溝6bに形成されるアクティブ電極12bを互いに電気的に接続する配線16cと、が設置される。
コモン端子16aおよびアクティブ端子16bは、図示しないフレキシブル基板の配線電極に接続されるランドである。アクティブ端子16bは、吐出溝6aを挟む一対の壁部5,5のうち、一方(本実施形態では−Y側)の壁部5の非吐出溝6bに面する側面5bに形成されるアクティブ電極12bに電気的に接続される。アクティブ端子16bは、更に、アクチュエータ基板2の−X側端部2aの縁部に沿って形成される配線16cを介して、他方(本実施形態では+Y側)の壁部5の非吐出溝6bに面する側面5bに形成されるアクティブ電極12bに電気的に接続される。
【0048】
図2(a)に示すように、吐出溝6aを形成する壁部5のうち、カバープレート3の本体部3cに対応する領域の+Z側端部および−Z側端部は、それぞれカバープレート3の本体部3cおよびノズルプレート4に密着して強固に固定されている。したがって、コモン端子16aとアクティブ端子16bとに駆動信号を与えることにより、カバープレート3の本体部3cに対応する領域において、壁部5のZ方向両端部を固定しつつZ方向中間部をY方向に屈曲変形させることができるので、吐出溝6a内の液体に圧力波を発生させてノズル孔11から液体を吐出できる。すなわち、吐出溝6aのうち、ノズル孔11の周辺の領域であってカバープレート3の本体部3cに対応する領域は、ポンプ部として機能することができる。以下、吐出溝6aのうち、カバープレート3の本体部3cに対応する領域(液体供給室9および液体排出室10の間に対応する領域)をポンプ領域Pと定義する。また、吐出溝6aのうち、液体供給室9の第一スリット14aに対応する領域、および液体排出室10の第二スリット14bに対応する領域(ポンプ領域P以外の領域)をそれぞれ非ポンプ領域と定義する。
【0049】
図2(a)および
図2(b)に示すように、駆動電極12(12a,12b)は、それぞれノズル孔11の周辺において壁部5の表面に設置されるとともに、X方向の両端部において、壁部5との間に絶縁膜20を挟んで設置されている。
絶縁膜20は、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とする材料により形成された膜である。なお、絶縁膜20を形成する材料は、SiO
2に限定されることはなく、アクチュエータ基板2を形成する圧電体の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する材料であればよい。具体的に、絶縁膜20を形成する材料としては、SiO
2の他に、例えばチッ化ケイ素(Si
3N
4)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)等であってもよい。
【0050】
絶縁膜20は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、壁部5の両側面5a,5bの−X側端部にそれぞれ設置された第一の絶縁膜21と、壁部5の両側面5a,5bの+X側端部にそれぞれ設置された第二の絶縁膜22とを含む。なお、壁部5の吐出溝6aに面する側面5aに設置された第一の絶縁膜21および第二の絶縁膜22と、壁部5の非吐出溝6bに面する側面5bに設置された第一の絶縁膜21および第二の絶縁膜22とは、同一の構成となっている。したがって、以下では、壁部5の吐出溝6aに面する側面5aに設置された第一の絶縁膜21および第二の絶縁膜22についてのみ説明をし、壁部5の非吐出溝6bに面する側面5bに設置された第一の絶縁膜21および第二の絶縁膜22については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図3は、
図2(a)のA−A線に沿った断面図である。
図3に示すように、第一の絶縁膜21は、コモン電極12aと壁部5の側面5aとの間に設けられている。
図2(a)に示すように、第一の絶縁膜21は、Z方向の幅がコモン電極12aのZ方向の幅と略同一か、コモン電極12aのZ方向の幅よりも若干広くなるように形成されており、X方向に沿って延在している。第一の絶縁膜21の−X側端部21aは、カバープレート3の−X側端部3aに対応した位置に配置されている。また、第一の絶縁膜21の+X側端部21bは、ポンプ領域Pと第一スリット14aに対応する非ポンプ領域との境界よりもわずかに+X側の位置であって、ポンプ領域P内に配置されている。
【0052】
また、第二の絶縁膜22は、−X側端部22aがコモン電極12aの+X側端部と壁部5の側面5aとの間に設けられているとともに、+X側端部22bが露出した状態で設けられている。第二の絶縁膜22は、Z方向の幅がコモン電極12aのZ方向の幅と略同一か、コモン電極12aのZ方向の幅よりも若干広くなるように形成されており、X方向に沿って延在している。
第二の絶縁膜22の−X側端部22aは、ポンプ領域Pと第二スリット14bに対応する非ポンプ領域との境界よりもわずかに−X側の位置であって、ポンプ領域P内に配置されている。また、第二の絶縁膜22の+X側端部22bは、吐出溝6aの+X側端部に配置されている。
【0053】
図2(a)および
図2(b)に示すように、駆動電極12(12a,12b)のうち、壁部5との間に絶縁膜21,22を挟まない領域は、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加したときに電界を発生可能な有効駆動電極領域Eとなっている。ここで、X方向と直交するとともにノズル孔11の中心軸を含む仮想面Fとしたとき、有効駆動電極領域Eは、仮想面Fに対して面対称となるように設けられる。したがって、駆動電極12に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5を仮想面Fに対して面対称となるように変形させることができる。
【0054】
図4は、絶縁膜20(
図2参照)の成膜工程の説明図であり、
図5は、駆動電極12(
図2参照)の成膜工程の説明図であり、
図6は、絶縁膜20および駆動電極12の成膜後の説明図である。なお、
図4から
図6は、
図2(a)のA−A線に相当する位置の断面図である。
絶縁膜20(21,22)および駆動電極12(12a,12b)は、例えば斜め蒸着法により成膜される。
具体的には、
図4に示すように、溝6が形成された圧電体基板50に、例えばフォトリソグラフィ技術により、有効駆動電極領域E(
図2参照)以外の領域に対応した部分が開口した絶縁膜用マスク51を設置する(絶縁膜用マスク設置工程)。そして、Z方向に対してY方向に所定角度+θおよび−θ傾斜する方向から、圧電体基板50の第二主面S2に向かって、蒸着法により絶縁材料55を蒸着する(絶縁材料成膜工程)。なお、このとき有効駆動電極領域E(
図2参照)は、絶縁膜用マスク51により覆われているため、絶縁材料55が成膜されない。
【0055】
次に、
図5に示すように、絶縁材料55が成膜された圧電体基板50に、例えばフォトリソグラフィ技術により、駆動電極12(
図1参照)の成膜領域に対応した部分が開口した駆動電極用マスク52を絶縁材料55に重ねて設置する(駆動電極用マスク設置工程)。そして、絶縁膜20の成膜時と同様に、Z方向に対してY方向に所定角度+θおよび−θ傾斜する方向から、圧電体基板50の第二主面S2に向かって、蒸着法により電極材料56を蒸着する(駆動電極製膜工程)。これにより、有効駆動電極領域E(
図2参照)においては、壁部5の両側面5a,5bに直接電極材料56が成膜され、有効駆動電極領域E以外の領域においては、壁部5の両側面5a,5bに絶縁材料55を介して電極材料56が成膜される。
【0056】
次に、
図6に示すように、絶縁膜用マスク51および駆動電極用マスク52を例えばリフトオフ法により除去し、同時に絶縁膜用マスク51上の絶縁材料55および駆動電極用マスク52上の電極材料56を除去する。これにより、壁部5の両側面5a,5bに堆積した電極材料56が分離してコモン電極12aおよびアクティブ電極12bが形成される。そして、コモン電極12aおよびアクティブ電極12bは、X方向の両端部において、壁部5との間に絶縁膜20を挟んで壁部5の両側面5a,5bに設置される。
【0057】
液体噴射ヘッド1は、次のように動作する。なお、以下の液体噴射ヘッド1の作用の説明において、各部品の符号については
図1から
図3を参照されたい。
液体供給室9に液体を供給し、液体排出室10から液体を排出して、液体を循環させる。そして、コモン端子16aとアクティブ端子16bとに駆動信号を与えることにより、吐出溝6aを構成する一対の壁部5,5をそれぞれ厚みすべり変形させる。このとき、一対の壁部5,5のうち、有効駆動電極領域Eに対応する壁部5のZ方向中間部は、例えば吐出溝6aの内側に向かって屈曲変形する。これにより、吐出溝6a内の液体に圧力波が生成されて、吐出溝6aに連通するノズル孔11から液体が吐出される。本実施形態では、有効駆動電極領域Eが仮想面Fに対して面対称となるように設けられる。したがって、コモン端子16aとアクティブ端子16bとに電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5を仮想面Fに対して面対称となるように変形するので、吐出溝6aに充填された液体の内部において、ノズル孔11の中心軸を挟んでY方向両側に向かって、壁部5の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。
【0058】
図7は、横軸を周波数(Hz)とし、縦軸をインピーダンス(Ω)としたときの、絶縁膜の有無による共振特性のグラフである。なお、インピーダンスが急激に立ち上がっているポイントは共振ポイントを示している。
図7中の一点鎖線のグラフは、
図1に示す絶縁膜20(21,22)を設けることなく、壁部5の両側面5a,5bに直接駆動電極12(12a,12b)を設置したときの、液体噴射ヘッドの駆動時における周波数−インピーダンス特性を示している。また、
図7中の実線のグラフは、上述の実施形態のとおり、X方向の両端部において、壁部5との間に絶縁膜20を挟んで壁部5の両側面5a,5bに駆動電極12(12a,12b)を設置したときの、液体噴射ヘッド1の駆動時における周波数−インピーダンス特性を示している。
【0059】
図7から明らかなように、絶縁膜20(21,22)を設けることなく、壁部5の両側面5a,5bに直接駆動電極12(12a,12b)を設置した場合(一点鎖線のグラフ)にあっては、インピーダンスが急激に高くなる共振ポイントが複数存在する。これに対して、実施形態の液体噴射ヘッド1のように、壁部5との間に絶縁膜20を挟んで壁部5の両側面5a,5bに駆動電極12(12a,12b)を設置した場合(実線のグラフ)にあっては、固有周波数以外の周波数帯に共振ポイントが存在しない。
このように、実施形態の液体噴射ヘッド1にあっては、駆動電極12(12a,12b)は、X方向の両端部において壁部5との間に絶縁膜20を挟んで壁部5の両側面5a,5bに設置され、壁部5との間に絶縁膜21,22を挟まない有効駆動電極領域Eが、ノズル孔11の中心軸を含む仮想面Fに対して面対称となるように設けられる。したがって、壁部5は、液体噴射ヘッド1の駆動時に、仮想面Fに対して面対称となるように変形する。さらに、本実施形態においては、有効駆動電極領域EのX方向の両側縁部をポンプ領域P内に配置しているので、ポンプ領域P内の壁部5のみを駆動できる。したがって、ポンプ領域P外の壁部5が不要に駆動されることがないので、壁部5の共振ポイントを減少させて壁部5の共振を抑制できる。
【0060】
なお、本実施形態では、非吐出溝6bを構成する両壁部5の各側面5b,5bに設置されるアクティブ電極12bがそれぞれ電気的に分離されるので、各吐出溝6aを独立して駆動することができる。このように、各吐出溝6aを独立して駆動することにより、高周波駆動が可能となる利点がある。なお、液体排出室10と液体供給室9の機能を逆にして、液体排出室10から液体を供給し、液体供給室9から液体を排出してもよい。さらには、液体が接する内壁に保護膜を形成することも可能である。
【0061】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、駆動電極12(12a,12b)は、壁部5における−X側端部から+X側端部よりも一方側の位置に亘って設置されているので、+X側端部において溝6(6a,6b)内で対向する駆動電極12(12a,12b)同士が短絡するのを防止できるとともに、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5の+X側端部が変形するのを抑制できる。また、駆動電極12(12a,12b)は、X方向の両側において、それぞれ壁部5との間に第一の絶縁膜21および第二の絶縁膜22を挟んで設置されていることから、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5の−X側端部および+X側端部が変形するのを抑制できる。これにより、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5のノズル孔11の周辺部分が変形するとともに、壁部の長手方向の両端部が変形するのを抑制できる。また、壁部5のノズル孔11の周辺部分のみを変形できるので、吐出溝6aに充填された液体の内部において、ノズル孔11の中心軸を挟んでX方向の両側に向かって、壁部5の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。したがって、液体の吐出特性を向上できる。
【0062】
また、壁部5との間に絶縁膜21,22を挟まない有効駆動電極領域Eは、仮想面Fに対して面対称となるように設けられているので、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5を仮想面Fに対して面対称となるように変形させることができる。これにより、吐出溝6aに充填された液体の内部において、壁部5の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく仮想面Fに対して面対称に伝播できる。したがって、液体の吐出特性を格段に向上できる。さらに、壁部5のうち有効駆動電極領域E以外に対応する部分は、不要に駆動されることがないので、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5の共振ポイントを減少させることができる。したがって、液体噴射ヘッド1を駆動したときの壁部5の共振を抑制できるので、液体の吐出特性を向上できる。
【0063】
また、有効駆動電極領域EのX方向の両側縁部をポンプ領域P内に配置することで、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、ポンプ領域P内の壁部5のみを駆動できる。したがって、ポンプ領域P外の壁部5が不要に駆動されることがないので、壁部5の共振ポイントを減少させて壁部5の共振を抑制できる。
【0064】
また、絶縁膜21,22を形成する材料の比誘電率は、アクチュエータ基板2の壁部5を形成する圧電体の比誘電率よりも小さいので、壁部5との間に絶縁膜21,22を挟んで駆動電極12(12a,12b)を設置したときに、壁部5を挟んで対向する第一の絶縁膜21,21間および第二の絶縁膜22,22間の静電容量を小さくできる。これにより、液体噴射ヘッド1を駆動したとき、壁部5のうち絶縁膜21,22に対応する部分が駆動するのを確実に防止できる。とりわけ、SiO
2を主成分とする材料により絶縁膜21,22を形成することで、絶縁膜21,22と駆動電極12(12a,12b)との密着性に優れた、信頼性の高い液体噴射ヘッド1を形成できる。
【0065】
(実施形態の第一変形例)
図8は、実施形態の第一変形例に係る液体噴射ヘッド1の説明図であり、吐出溝6aのX方向に沿った側面断面図である。なお、
図8では、分かりやすくするために、駆動電極12にクロスハッチングを施し、絶縁膜20にドットハッチングを施している。
続いて、実施形態の第一変形例に係る液体噴射ヘッド1について説明する。
実施形態に係る液体噴射ヘッド1は、駆動電極12(12a,12b)がそれぞれ−X側端部において壁部5との間に第一の絶縁膜21を挟み、+X側端部において壁部5との間に第二の絶縁膜22を挟んで設置されていた(
図2(a)参照)。
これに対して、実施形態の第一変形例に係る液体噴射ヘッド1は、
図8に示すように、駆動電極12(12a,12b)がそれぞれ−X側端部において壁部5との間に第一の絶縁膜21を挟み、+X側端部において壁部5との間に第二の絶縁膜22を挟んで設置され、かつノズル孔11と対応する位置において、壁部5との間に第三の絶縁膜23をさらに挟んで設置されている点で、実施形態とは異なっている。なお、実施形態と同様の構成部分については詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図8に示すように、コモン電極12aと壁部5の側面5aとの間であって、ノズル孔11と対応する位置には、第三の絶縁膜23が設けられている。第三の絶縁膜23は、Z方向の幅がコモン電極12aのZ方向の幅と略同一か若干広くなるように形成されている。また、第三の絶縁膜23は、X方向に所定の長さを有しており、仮想面Fに対して面対称となるように形成されている。なお、図示は省略するが、アクティブ電極12b(
図1参照)と壁部5の側面5aとの間であって、ノズル孔11と対応する位置には、コモン電極12aと同様に、第三の絶縁膜23が設けられている。
【0067】
駆動電極12(12a,12b)のうち、壁部5との間に絶縁膜21,22,23を挟まない領域は、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加したときに電界を発生可能な有効駆動電極領域Eとなっている。第一変形例の有効駆動電極領域Eは、第三の絶縁膜23よりも−X側に配置される第一有効駆動電極領域E1と、第三の絶縁膜23よりも+X側に配置される第二有効駆動電極領域E2とに二分割されている。第一有効駆動電極領域E1と第二有効駆動電極領域E2とは、仮想面Fに対して面対称となるように設けられている。したがって、駆動電極12に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、実施形態と同様に、壁部5を仮想面Fに対して面対称となるように変形させることができる。
【0068】
(実施形態の第一変形例の効果)
実施形態の第一変形例によれば、駆動電極12(12a,12b)と壁部5の側面5aとの間であって、ノズル孔11と対応する位置に第三の絶縁膜23を設けることで、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、壁部5のノズル孔11と対応する位置が変形するのを抑制するとともに、壁部5のノズル孔11と対応する位置以外の周辺部分を変形できる。これにより、吐出溝6aに充填された液体の内部において、ノズル孔11の中心軸を挟んでX方向の両側に向かって、壁部5の変形時に発生する圧力波をそれぞれバランスよく伝播できる。しかも、ノズル孔11と対応する位置において、壁部5との間に第三の絶縁膜23をさらに挟んで駆動電極を設置することで、駆動電極12(12a,12b)のうち、壁部5との間に絶縁膜21,22,23を挟まない有効駆動電極領域Eを第三の絶縁膜23の分だけ狭くすることができる。したがって、良好な吐出特性を維持したまま、消費電力を下げることができる。
【0069】
(実施形態の第二変形例)
図9は、実施形態の第二変形例に係る液体噴射ヘッド1の説明図であり、吐出溝6aのX方向に沿った側面断面図である。なお、
図9では、分かりやすくするために、駆動電極12にクロスハッチングを施し、絶縁膜20にドットハッチングを施している。
続いて、実施形態の第二変形例に係る液体噴射ヘッド1について説明する。
実施形態に係る液体噴射ヘッド1は、駆動電極12(12a,12b)がそれぞれ−X側端部において壁部5との間に第一の絶縁膜21を挟み、+X側端部において壁部5との間に第二の絶縁膜22を挟んで設置されていた(
図2(a)参照)。
これに対して、実施形態の第二変形例に係る液体噴射ヘッド1は、
図9に示すように、駆動電極12(12a,12b)がそれぞれ−X側端部において壁部5との間に第一の絶縁膜21のみを挟んで設置されている点で、実施形態とは異なっている。なお、実施形態と同様の構成部分については詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
図9に示すように、コモン電極12aの+X側端部は、壁部5におけるX方向の+X側端部よりも−X側の位置であって、ポンプ領域Pの+X側縁部に沿うように配置されている。
コモン電極12aは、−X側端部において、壁部5との間に第一の絶縁膜21を挟んで設置されている。
第一の絶縁膜21の+X側端部21bは、ポンプ領域Pと第一スリット14aに対応する非ポンプ領域との境界に沿うように配置されている。なお、図示は省略するが、アクティブ電極12b(
図1参照)の+X側端部は、コモン電極12aと同様に、ポンプ領域Pの+X側縁部に沿うように配置されている。また、コモン電極12aと壁部5との間に介在する第一の絶縁膜21の+X側端部21bは、コモン電極12a側の第一の絶縁膜21と同様に、ポンプ領域Pと第一スリット14aに対応する非ポンプ領域との境界に沿うように配置されている。
【0071】
駆動電極12(12a,12b)のうち、壁部5との間に第一の絶縁膜21を挟まない領域は、駆動電極12(12a,12b)に電圧を印加したときに電界を発生可能な有効駆動電極領域Eとなっている。第二変形例においては、駆動電極12(12a,12b)のうちポンプ領域Pに対応した領域が有効駆動電極領域Eとなっている。有効駆動電極領域Eは、仮想面Fに対して面対称となるように設けられている。したがって、駆動電極12に電圧を印加して液体噴射ヘッド1を駆動したときに、実施形態と同様に、壁部5を仮想面Fに対して面対称となるように変形させることができる。
【0073】
実施形態の第二変形例によれば、駆動電極12(12a,12b)の+X側端部がポンプ領域Pの+X側縁部に沿うように配置されるとともに、第一の絶縁膜21の+X側端部21bがポンプ領域Pと非ポンプ領域との境界に沿うように配置されているので、第一の絶縁膜21を設けるだけで、有効駆動電極領域Eを仮想面Fに対して面対称となるように設けることができる。したがって、実施形態に比べて絶縁材料のコストを削減できるので、液体の吐出特性を向上できる液体噴射ヘッド1を低コストに形成できる。
【0074】
(液体噴射装置)
図10は、実施形態に係る液体噴射ヘッド1を備えた液体噴射装置30の説明図である。
図10に示すように、液体噴射装置30は、複数(本実施形態では4個)の液体噴射ヘッド1と、液体噴射ヘッド1に液体を供給し、液体噴射ヘッド1から液体を排出する流路部35(請求項の「液体供給管」に相当。)と、流路部35に液体を供給する液体ポンプ33および複数(本実施形態では4個)の液体タンク34とを備えている。各液体噴射ヘッド1は複数のヘッドチップを備え、ノズル孔11(
図1参照)から液体を吐出する。液体ポンプ33として、流路部35に液体を供給する供給ポンプおよび液体を排出する排出ポンプの少なくともいずれか一方を設置する。また、図示しない圧力センサーや流量センサーを設置し、液体の流量を制御することもある。液体噴射ヘッド1は、上述した実施形態および実施液体の各変形例に係るいずれかを使用する。
また、液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41,42と、液体噴射ヘッド1を載置するキャリッジユニット43と、液体噴射ヘッド1を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は、液体噴射ヘッド1、移動機構40および搬送手段41,42を制御して駆動する。
【0075】
一対の搬送手段41,42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36,37と、一対のガイドレール36,37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0076】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体を吐出する。液体タンク34は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33および流路部35を介して液体噴射ヘッド1に供給する。各液体噴射ヘッド1は、駆動信号に応じて各色の液体を吐出する。液体噴射ヘッド1から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転および被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0077】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッド1と被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。
【0078】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
実施形態では、いわゆるスルーフロータイプの液体噴射ヘッド1を例に説明をしたが、本発明の適用はスルーフロータイプの液体噴射ヘッド1に限定されない。
【0080】
実施形態では、駆動電極12は、アクチュエータ基板2の壁部5の側面においてノズルプレート4から離間するように設置されていたが、駆動電極12の設置範囲は実施形態に限定されない。例えば、駆動電極12は、ノズルプレート4に近接するように設置されていてもよい。
例えば、本発明に関し、溝6の深さ方向において分極方向が上下方向に互いに反対向きの圧電体材料を積層したシェブロンタイプを用いることが可能である。この場合、壁部5の側面5a,5b全面に亘って駆動電極12を形成することで、圧電滑り効果により壁部5の高さ方向中間位置を中心にして、V字状に壁部5の上下部分が屈曲変形することになる。これにより、低電圧で壁部5を変形させることができる。
【0081】
実施形態では、溝6は、吐出溝6aと非吐出溝6bとが交互に配列されていたが、溝6の形態はこれに限定されない。例えば、吐出溝6aと非吐出溝6bとが交互に配列されていなくてもよいし、非吐出溝6bを含まず、吐出チャネル6aのみでチャネル列6が形成されていてもよい。
【0082】
実施形態においては、第一の絶縁膜21の+X側端部21bおよび第二の絶縁膜22の−X側端部22aがポンプ領域P内に配置され、有効駆動電極領域EのX方向の両側縁部がポンプ領域P内に配置されることにより、有効駆動電極領域Eが仮想面Fに対して面対称に形成されていた。
これに対して、例えば、第一の絶縁膜21の+X側端部21bおよび第二の絶縁膜22の−X側端部22aがそれぞれポンプ領域Pと非ポンプ領域との境界に沿うように配置され、ポンプ領域Pと同一の領域に有効駆動電極領域Eが配置されることにより、有効駆動電極領域Eが仮想面Fに対して面対称に形成されていてもよい。また、例えば、第一の絶縁膜21の+X側端部21bおよび第二の絶縁膜22の−X側端部22aがわずかにポンプ領域Pの外側に配置され、有効駆動電極領域EのX方向の両側縁部がポンプ領域P外に配置されることにより、有効駆動電極領域Eが仮想面Fに対して面対称に形成されていてもよい。いずれの場合においても、有効駆動電極領域Eが仮想面Fに対して面対称に形成されることで、実施形態の作用効果が得られる。
【0083】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。