特許第6121714号(P6121714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121714
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20170417BHJP
   A47C 1/035 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B60N2/22
   A47C1/035
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-287268(P2012-287268)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129018(P2014-129018A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−087631(JP,U)
【文献】 特開2008−074238(JP,A)
【文献】 実開平03−110929(JP,U)
【文献】 特開2000−264102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 1/00−1/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、当該シートクッションに対して傾動可能なシートバックとを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションの左右のフレームを構成する左右のサイドフレームと、
前記左右のサイドフレームのそれぞれに対応して設けられ、前後方向に延びるように形成される左右の可動部材と、
前記可動部材が前記サイドフレームに対して移動可能となるように、前記可動部材と前記サイドフレームに連結されるフロントリンクおよびリアリンクと、
前記サイドフレームを左右方向に移動可能に支持する左右スライド機構と、を備え、
前記シートクッションのシートクッションパッドを支持するパンフレームが、前記可動部材に取り付けられ、
前記可動部材には、前記左右スライド機構を前記サイドフレームに取り付けるための締結部材を上方に露出させる逃げ部が形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記逃げ部は、前記可動部材のうち前記フロントリンクが取り付けられる第1部位と前記リアリンクが取り付けられる第2部位との間で、かつ、前記第1部位および前記第2部位から離れて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドフレームにリンクを介して移動可能に支持される可動部材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションパッドを支持する可動部材(シートクッションフレーム50)と、当該可動部材を移動可能に支持するサイドフレーム(ベースフレーム12)と、シートバックの傾動動作を可動部材に伝達するために、可動部材とシートバックとに連結される伝達機構(第1のリンク54)とを備えた乗物用シートが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、この技術では、前端部が先細形状となる楔状のカム部材70を可動部材の前側に設け、当該カム部材70をサイドフレームに回転可能に設けたローラ71で支持している。また、可動部材の後側は、サイドフレームに回動可能に設けられた第2のリンク55によって下から支持されている。
【0004】
この技術では、シートバックを後に倒す動作に連動して伝達機構が第2のリンク55を前方に倒すことで、可動部材が、その前端が上方を向くように傾動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−257242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構造では、カム部材70、ローラ71および第2のリンク55によって可動部材を傾動させているので、構造が複雑であるといった問題があった。また、このような従来の構造において、シートクッションパッドを支持するためのパンフレームを可動部材上に設ける場合には、構造がさらに複雑になるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構造で、シートクッションパッドを移動させることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、可動部材の剛性を向上させることや、パンフレームを安定して支持することを目的とする。また、本発明は、サイドフレームと左右スライド機構の取付作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決する本発明は、シートクッションと、当該シートクッションに対して傾動可能なシートバックとを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションの左右のフレームを構成する左右のサイドフレームと、前記左右のサイドフレームのそれぞれに対応して設けられ、前後方向に延びるように形成される左右の可動部材と、前記可動部材が前記サイドフレームに対して移動可能となるように、前記可動部材と前記サイドフレームに連結されるフロントリンクおよびリアリンクと、を備え、前記シートクッションのシートクッションパッドを支持するパンフレームが、前記可動部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、2本のリンクで可動部材を支持するだけなので、パンフレームを設けても、従来のような構造に比べて、簡易な構造で、シートクッションパッドを移動させることができる。
【0011】
また、前記した構成において、前記左右の可動部材を連結する連結部を設けることができる。
【0012】
これによれば、可動部材の剛性を向上させることができる。
【0013】
また、前記した構成において、前記連結部は、前記左右の可動部材の前部と後部に設けることができる。
【0014】
これによれば、可動部材の剛性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記パンフレームは、前記連結部に取り付けることができる。
【0016】
これによれば、可動部材および連結部によって、パンフレームを安定して支持することができる。
【0017】
また、前記した構成において、前記左右の可動部材の前部に、前記パンフレームを取り付けるための取付孔が形成される場合には、前記連結部は、前記可動部材のうち前記取付孔が形成された部位に連結することができる。
【0018】
これによれば、取付孔付近の部位の剛性を向上させることができるので、パンフレームを可動部材で安定して支持することができる。
【0019】
また、前記した構成において、前記サイドフレームを左右方向に移動可能に支持する左右スライド機構を備える場合には、前記可動部材には、前記左右スライド機構を前記サイドフレームに取り付けるための締結部材を上方に露出させる逃げ部を形成することができる。
【0020】
これによれば、逃げ部を通して工具を上から締結部材に係合させることができるので、サイドフレームと左右スライド機構の取付作業を容易にすることができる。
【0021】
また、前記した構成において、前記逃げ部は、前記可動部材のうち前記フロントリンクが取り付けられる第1部位と前記リアリンクが取り付けられる第2部位との間で、かつ、前記第1部位および前記第2部位から離れて形成することができる。
【0022】
これによれば、可動部材におけるフロントリンクおよびリアリンクの取付部分の剛性が逃げ部で低下するのを抑制することができるので、可動部材の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2本のリンクで可動部材を支持するので、パンフレームを設けても、従来のような構造に比べて、簡易な構造で、シートクッションパッドを移動させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、左右の可動部材を連結する連結部を設けることで、可動部材の剛性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明によれば、連結部を左右の可動部材の前部と後部に設けることで、可動部材の剛性をさらに向上させることができる。
【0026】
また、本発明によれば、パンフレームを連結部に取り付けることで、可動部材および連結部によって、パンフレームを安定して支持することができる。
【0027】
また、本発明によれば、可動部材のうちパンフレームの取付孔が形成された部位に連結部を連結することで、取付孔付近の部位の剛性を向上させることができるので、パンフレームを可動部材で安定して支持することができる。
【0028】
また、本発明によれば、可動部材に、左右スライド機構をサイドフレームに取り付けるための締結部材を上方に露出させる逃げ部を形成することで、逃げ部を通して工具を上から締結部材に係合させることができるので、サイドフレームと左右スライド機構の取付作業を容易にすることができる。
【0029】
また、本発明によれば、逃げ部を、可動部材のうちフロントリンクが取り付けられる第1部位とリアリンクが取り付けられる第2部位との間で、かつ、第1部位および第2部位から離れて形成することで、可動部材におけるフロントリンクおよびリアリンクの取付部分の剛性が逃げ部で低下するのを抑制することができるので、可動部材の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係る乗物用シートとしての車両用シートの斜視図である。
図2】シートバックを倒した状態のシートフレームを示す斜視図である。
図3】シートクッションフレームの右側部分を示す平面図である。
図4】切欠部やスライドレール機構を説明するための平面図である。
図5図3のI−I断面図(a)と、II−II断面図(b)である。
図6】伝達機構を示す側面図である。
図7】基準姿勢のときの伝達機構、各リンクおよび可動部材の状態を簡略的に示す図である。
図8】鉛直面に対してシートバックを後方に81°傾けたときの伝達機構、各リンクおよび可動部材の状態を簡略的に示す図である。
図9】基準姿勢に対してシートバックを前方に33°(鉛直面に対して−10°)傾けたときの伝達機構、各リンクおよび可動部材の状態を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、乗物用シートの一例としての車両用シートの全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0032】
図1に示すように、車両用シートSは、自動車の運転席に使用されるシートであり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを主に備えている。
【0033】
シートクッションS1およびシートバックS2には、図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とから主に構成されている。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、ウレタンフォームなどのクッション材からなるシートクッションパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成され、シートバックS2は、シートバックフレームF2に、クッション材からなるシートバックパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成されている。
【0034】
シートバックフレームF2は、その下部がシートクッションフレームF1の後部にリクライニング機構RLを介して回動自在に連結されている。これにより、シートバックS2は、シートクッションS1に対し前後に傾動可能となっている。
【0035】
ここで、図2においては、シートクッションフレームF1に対してシートバックフレームF2を最も後側に傾動した状態(後述の後傾姿勢)を図示している。なお、本明細書において、前後、左右および上下は、リクライニング機構RLによってシートバックS2が倒されていない状態(後述の基準状態)の車両用シートSに着座した乗員を基準とする。
【0036】
次に、シートクッションフレームF1について詳細に説明する。
図2図4に示すように、シートクッションフレームF1は、左右のサイドフレーム10と、左右のサイドフレーム10に対して前後動および傾動可能な可動部材20と、シートバックフレームF2の傾動動作を可動部材20に伝達するために、可動部材20とシートバックフレームF2とに連結される伝達機構30と、各サイドフレーム10を左右方向に移動可能に支持する左右スライド機構の一例としてのスライドレール機構140とを備えている。
【0037】
左右のサイドフレーム10は、前後方向に延びる金属製のフレームであり、左右に離間して配置されている。サイドフレーム10は、当該サイドフレーム10の側面を形成する第1側壁部11と、当該第1側壁部11の周縁から左右方向内側に延出した第1フランジ部12とを有している。また、サイドフレーム10のうち前端側の部分である前端部13は、前後方向に沿って延びるように形成され、当該前端部13よりも後側の部分である後部14は、前端部13の後端から左右方向外側に屈曲した後、後方に向けて延びるように形成されている。
【0038】
また、図4に示すように、サイドフレーム10の後部14の一部(後述するインナーフレーム40の後部47およびその前側の屈曲部44に左右方向で対向する部分)には、第1側壁部11の下縁から左右方向内側に向けて屈曲して左右方向内側に延びる延出部15が形成されている。このように、第1側壁部11の下縁から屈曲する延出部15を設けることで、サイドフレーム10の後部14の剛性を向上させることが可能となっている。
【0039】
具体的に、延出部15は、インナーフレーム40よりも左右方向内側に突出するように形成され、当該インナーフレーム40に溶接により固定されている。そして、この延出部15には、後述するスライドレール機構140が取り付けられている。このように屈曲形成により剛性が高くなった延出部15にスライドレール機構140を取り付けることで、サイドフレーム10をスライドレール機構140で安定して支持することが可能となっている。
【0040】
左右のサイドフレーム10のそれぞれの左右方向内側には、前後方向に延びてサイドフレーム10に連結されるインナーフレーム40(1つのみ図示)が1つずつ設けられている。
【0041】
インナーフレーム40は、当該インナーフレーム40の側面を形成する第2側壁部41と、当該第2側壁部41の周縁から左右方向外側に延出した第2フランジ部42とを有している。そして、インナーフレーム40のうち前端側の部分である前端部43は、前後方向に沿って延びるように形成されて、サイドフレーム10の前端部13に溶接により直接接合されている。
【0042】
また、インナーフレーム40は、前述した前端部13の他、3つの屈曲部44と、前端部13よりも左右方向内側に配置される第1中間部45、第2中間部46および後部47とを有している。第1中間部45は、前端部13の後端に屈曲部44を介して接続されることで、前端部13よりも左右方向内側に配置され、第2中間部46は、第1中間部45の後端に屈曲部44を介して接続されることで、第1中間部45よりも左右方向内側に配置されている。
【0043】
また、後部47は、第2中間部46の後端に屈曲部44を介して接続されることで、第2中間部46よりも左右方向内側に配置されている。これにより、インナーフレーム40の後部47とサイドフレーム10の後部14が、左右方向に離れて配置されている。そして、インナーフレーム40の後部47は、連結ビーム51により連結されている。ここで、連結ビーム51は、左右方向に延びる断面視略矩形の筒状部材であり、その両端が左右のサイドフレーム10の後部14に接合されている。
また、インナーフレーム40は、後部47のうち連結ビーム51から前方に離れた位置で、左右のインナーフレーム40同士を連結する円筒状の連結パイプ53により連結されている。
【0044】
このようにインナーフレーム40がサイドフレーム10に連結されることで、インナーフレーム40によってサイドフレーム10を補強することができるので、サイドフレーム10の剛性を向上させることが可能となっている。また、サイドフレーム10を補強するインナーフレーム40をサイドフレーム10の左右方向内側に配置することで、例えばサイドフレームの外側に補強部材を設ける構造に比べ、車両用シートSを左右方向に小型化することが可能となっている。
【0045】
また、インナーフレーム40は、屈曲部44を有していることで、立体的形状となり、高い剛性を有している。そして、左右のインナーフレーム40は、後部47同士が連結ビーム51と連結パイプ53により連結されているので、捩れが抑制されて、非常に高い剛性を持った構造となっている。
【0046】
また、サイドフレーム10の前端部13とインナーフレーム40の前端部43を直接接合することで、例えばサイドフレームとインナーフレームの後端部同士を直接接合させる構造に比べ、後述する伝達機構30の動きが、サイドフレーム10とインナーフレーム40の接合部Jで邪魔されるのを抑えることができるので、伝達機構30を良好に動作させることが可能となっている。
【0047】
また、サイドフレーム10と、インナーフレーム40と、連結ビーム51とは、平面視で三角形の構造を構成していることで、水平面内で変形しにくい高い剛性を有している。なお、これらの部材は、略鉛直方向に延びる板形状を有しているので、上下にも変形しにくく高い剛性を有している。
【0048】
また、サイドフレーム10の前端部13とインナーフレーム40の前端部43を直接接合することによって構成される接合部Jは、図5(a)に示すように、閉断面構造となっている。具体的に、接合部Jは、前述したサイドフレーム10の第1側壁部11および第1フランジ部12の前端側の部分と、インナーフレーム40の第2側壁部41および第2フランジ部42の前端側の部分とで構成されており、第1フランジ部12の前端側部分と第2フランジ部42の前端側部分とを溶接により接合することで閉断面構造となるように構成されている。
【0049】
このように接合部Jを閉断面構造とすることで、当該接合部Jの剛性を向上させることができ、ひいてはサイドフレーム10の剛性を向上させることが可能となっている。
【0050】
なお、このような閉断面構造は、図3に示すように、シートバックフレームF2にも適用されている。すなわち、シートバックフレームF2は、左右方向の外側に配置される外側バックフレームF3と、左右方向内側に配置される内側バックフレームF4とを有し、外側バックフレームF3は、当該外側バックフレームF3の側面を形成する第3側壁部F31と、第3側壁部F31の周縁から左右方向内側に延出した第3フランジ部F32とを有し、内側バックフレームF4は、当該内側バックフレームF4の側面を形成する第4側壁部F41と、第4側壁部F41の周縁から左右方向外側に延出した第4フランジ部F42とを有する。そして、各フランジ部F32,F42が溶接により接合されている。
【0051】
そして、このように閉断面構造となるシートバックフレームF2は、サイドフレーム10と後述する第1伝達リンク31との間に配置されている。
【0052】
また、左右のサイドフレーム10および左右のインナーフレーム40に対してそれぞれ設けられた左右の接合部Jは、左右方向に延びる円筒状の連結パイプ52によって連結されている。これにより、インナーフレーム40の捩れを抑制することができ、左右の接合部Jの剛性をさらに向上させ、サイドフレーム10の剛性をさらに向上させることが可能となっている。
【0053】
また、サイドフレーム10とインナーフレーム40の下側、詳しくは接合部Jの後端付近には、サイドフレーム10とインナーフレーム40とを左右方向で挟み込むように保持するブラケット60が溶接により接合されている。ブラケット60は、サイドフレーム10の左右方向外側からインナーフレーム40の左右方向内側まで延びる鉛直方向に直交した板状の基部61と、基部61の前端から上方に向けて延びて接合部Jを挟み込む第1挟持部62と、基部61の後端から上方に向けて延びて接合部J以外の部位を挟み込む第2挟持部63とを一体に有している。
【0054】
第1挟持部62は、図5(a)に示すように、接合部Jの左右方向の幅と略同じ幅の溝62Aを有しており、当該溝62A内で接合部Jを挟持し、溝62Aの左右両側の縁部と接合部Jとが溶接されている。また、第2挟持部63は、図5(b)に示すように、サイドフレーム10の後部14の左右方向外側の外面からインナーフレーム40の第1中間部45の左右方向内側の内面までの長さと略同じ幅の溝63Aを有しており、当該溝63A内でサイドフレーム10の後部14とインナーフレーム40の第1中間部45を挟持し、溝63Aの左右両側の縁部とサイドフレーム10またはインナーフレーム40とが溶接されている。
【0055】
このようなブラケット60を設けることで、サイドフレーム10の剛性をさらに向上させることが可能となっている。また、ブラケット60が第1挟持部62と第2挟持部63を一体に有しているので、例えば接合部を挟み込むブラケットと接合部以外の部位を挟み込むブラケットを別々に設ける構造に比べ、部品点数を削減できるとともに、ブラケット60の組付作業を容易にすることが可能となっている。
【0056】
また、ブラケット60と可動部材20との間には、可動部材20を常時下方に付勢するためのスプリングSPが設けられている。
【0057】
図2に示すように、可動部材20は、左右に1つずつ設けられ、前後方向に延びるように形成されており、その上に、シートクッションパッドを支持するパンフレーム70が取り付けられている。各可動部材20は、略上下方向に直交した板状の基部20Cと、基部20Cの左右方向外側から下方に延びる側壁部20Dとを有している。基部20Cの左右方向内側の端部は下方に向けて折り曲げられており、これにより基部20Cの剛性が高められている。
【0058】
基部20Cの前部と後部には、前部同士を連結するための連結部の一例としての連結棒21と、後部同士を連結するための連結部の一例としての連結フレーム22が設けられている。このように、左右の可動部材20を、連結棒21と連結フレーム22とで連結することにより、可動部材20の剛性を向上させることが可能となっている。
【0059】
連結棒21は、金属製の棒状部材を複数回屈曲することで剛性が高くなるように形成され、連結フレーム22は、前方に開口する略U字形状に形成され、断面視略U字状に形成されることで剛性が高くなるように形成されている。そして、左右の可動部材20および連結フレーム22には、それぞれパンフレーム70を取り付けるための取付孔20A,20B,22Aが形成されている。具体的に、各可動部材20の前部には、円状の取付孔20Aが形成され、後部には前後方向に延びる長孔状の取付孔20Bが形成されている。また、連結フレーム22には、2つの円状の取付孔22Aが左右方向に間隔を空けて形成されている。このように、左右の可動部材20と連結フレーム22とに取付孔20A,20B,22Aを形成する、すなわち、左右の可動部材20と連結フレーム22とにパンフレーム70が取り付けられるように構成することで、各可動部材20と連結フレーム22とによって、パンフレーム70を安定して支持することが可能となっている。
【0060】
また、左右の可動部材20のうち前側の取付孔20Aが形成された部位には、前述した連結棒21が連結されている。これにより、取付孔20A付近の部位の剛性を向上させることができるので、パンフレーム70を可動部材20で安定して支持することが可能となっている。
【0061】
また、可動部材20の基部20Cと側壁部20Dには、切欠部20Eが形成されている。切欠部20Eは、図4に示すように、後述するスライドレール機構140をブラケット60を介してサイドフレーム10に取り付けるためのナットN1を上方に露出させるための逃げ部として形成されている。これにより、切欠部20Eを通して工具を上からナットN1に係合させることができるので、ブラケット60とスライドレール機構140の取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0062】
また、切欠部20Eは、可動部材20のうち後述するフロントリンク71が取り付けられる第1部位20Fとリアリンク72が取り付けられる第2部位20Gとの間で、かつ、第1部位20Fおよび第2部位20Gから離れて形成されている。ここで、第1部位20Fは、可動部材20のうちフロントリンク71が接触する部位であり、第2部位20Gは、可動部材20のうちリアリンク72が接触する部位である。このように切欠部20Eを第1部位20Fおよび第2部位20Gから離れて形成することで、可動部材20におけるフロントリンク71およびリアリンク72の取付部分(第1部位20Fおよび第2部位20G)の剛性が切欠部20Eで低下するのを抑制することができるので、可動部材20の剛性を向上させることが可能となっている。
【0063】
そして、可動部材20は、それぞれ、図6に示すように、左右のサイドフレーム10に回動可能に設けられた左右のフロントリンク71およびリアリンク72に支持されることによって、サイドフレーム10に対して前後動および傾動可能となっている。フロントリンク71は、サイドフレーム10の前端部13の左右方向における外側から内側に延びるように形成され、一端部がサイドフレーム10の前端部13の左右方向外側に回動可能に連結されるとともに、他端部が可動部材20(詳しくは側壁部20D)の前側部分に回動可能に連結されている(図3も参照)。
【0064】
詳しくは、フロントリンク71は、サイドフレーム10との連結軸であるフロント側固定軸71Aからサイドフレーム10の左右方向外側の外面に沿って略後方に延びた後、左右方向内側に屈曲してサイドフレーム10よりも左右方向内側まで延び、その後略後方に向けて延び、その後端部がフロント側可動軸71Bを介して可動部材20に回動可能に連結されている。このようにフロントリンク71の一端部をサイドフレーム10の左右方向外側に連結することで、例えばフロントリンクの一端部がインナーフレームの内側に連結される構造に比べ、フロントリンク71が連結パイプ52に干渉するのを抑えることができるので、可動部材20を良好に動作させることが可能となっている。
【0065】
リアリンク72は、フロントリンク71よりも後側で、かつ、サイドフレーム10の左右方向内側に配置され、一端部がリア側固定軸72Aを介してサイドフレーム10に回動可能に連結され、他端部がリア側可動軸72Bを介して可動部材20(詳しくは側壁部20D)の後側部分に回動可能に連結されている。詳しくは、リアリンク72は、リア側固定軸72Aから略下方に向けて延びた後、左右方向内側に屈曲して可動部材20の側面まで延び、その後当該側面に沿って略下方に延びるように形成されている。
【0066】
より詳しくは、前述したフロントリンク71およびリアリンク72は、図7に示すように、シートバックS2が所定角度で起立した基準姿勢において、フロント側可動軸71Bがフロント側固定軸71Aよりも上方に配置され、リア側可動軸72Bがリア側固定軸72Aよりも下方に配置されるように構成されている。ここで、所定角度とは、鉛直面に対するシートバックS2の角度であって、本実施形態では23°とする。また、図7図9においては、便宜上、シートバックS2の傾動動作に応じて、サイドフレーム10に対する位置が変わらない固定軸を白抜きの丸で示し、サイドフレーム10に対して移動する可動軸をドットで示すこととする。
【0067】
このようにフロントリンク71およびリアリンク72を配置することで、シートバックS2が基準姿勢から最も後側に傾動した後傾姿勢(図8の姿勢)に傾動するまでの間の初期段階において、可動部材20の傾動傾向が、前端部が後端部に対して相対的に上昇する第1傾向となるように構成されている。つまり、この初期段階においては、可動部材20の水平面に対する角度が、徐々に大きくなるようになっている。
【0068】
これにより、シートバックS2とシートクッションS1との角度を、乗員の脱力時の自然な姿勢を保持するための好適な角度とすることができるので、乗員が車両用シートS上で快適な休息を得ることが可能となっている。
【0069】
このように可動部材20を傾動させる構成をフロントリンク71およびリアリンク72のみで構成したので、例えばカム部材、ローラおよびリンクなど3つ以上の部材を用いて可動部材を傾動させる構造に比べ、簡易な構造で、可動部材20(シートクッションパッド)を傾動させることが可能となっている。
【0070】
また、本実施形態では、シートバックS2が基準姿勢(図7)から後傾姿勢(図8)に傾動するまでの間に、可動部材20の傾動傾向が、前述した第1傾向から、前端部が後端部に対して相対的に下降する第2傾向に切り替わるように、フロントリンク71およびリアリンク72が配置されている。つまり、シートバックS2が基準姿勢から後傾姿勢に傾動するまでの間の後期段階では、可動部材20の水平面に対する角度が、徐々に小さくなるようになっている。
【0071】
これにより、シートバックS2を後傾姿勢にしたときに、可動部材20とシートバックS2とを共に略フラットな状態に近づけることができるので、乗員が略フラットな車両用シートS上で身体を伸ばして快適な休息を得ることが可能となっている。
【0072】
また、フロント側可動軸71Bは、基準姿勢(図7)において、フロント側固定軸71Aよりも後方で、かつ、フロント側固定軸71Aを通る第1鉛直面PF1よりもフロント側固定軸71Aを通る第1水平面FF1に近い位置に配置されている。
【0073】
これにより、フロント側固定軸71Aを中心にしてフロント側可動軸71Bを前斜め上方に回動させていく際に、最初の段階においてフロント側可動軸71Bの上昇量(単位回転角度に対する上昇量)を大きくすることができる。また、フロント側可動軸71Bが第1水平面FF1よりも第1鉛直面PF1に近くなった後の段階において、フロント側可動軸71Bの上昇量を小さく抑えることができる。そのため、可動部材20の傾動傾向を第1傾向から第2傾向に良好に切り替えることが可能となっている。
【0074】
また、リア側可動軸72Bは、基準姿勢(図7)において、リア側固定軸72Aを通る第2水平面FF2よりもリア側固定軸72Aを通る第2鉛直面PF2に近い位置であって、第2鉛直面PF2よりも前方の位置に配置されている。これにより、リア側固定軸72Aを中心にしてリア側可動軸72Bを前斜め上方に回動させていく際に、最初の段階においてリア側可動軸72Bの上昇量(単位回転角度に対する上昇量)を小さく抑えることができる。また、リア側可動軸72Bが第2鉛直面PF2よりも第2水平面FF2に近くなった後の段階において、リア側可動軸72Bの上昇量を大きくすることができる。そのため、可動部材20の傾動傾向を第1傾向から第2傾向に良好に切り替えることが可能となっている。
【0075】
図2図3および図6に示すように、伝達機構30は、第1伝達リンク31と、第2伝達リンク32と、第3伝達リンク33とを備えて構成されており、左右のサイドフレーム10の左右方向内側に1つずつ設けられている。このようにサイドフレーム10の左右方向内側に伝達機構30を配置することで、例えばサイドフレームの左右方向外側に伝達機構を配置する構造と比べ、車両用シートSを左右方向に小型化することが可能となっている。
【0076】
また、伝達機構30の一部(第3伝達リンク33の前端側の部分以外の部分)は、左右方向においてサイドフレーム10の後部14とインナーフレーム40の後部(接合部Jより後の部分)との間に配置されている。これにより、サイドフレーム10とインナーフレーム40の間に配置した伝達機構30の一部に対して左右方向内側から物が侵入するのを抑えることができるので、伝達機構30を良好に動作させることが可能となっている。
【0077】
第1伝達リンク31は、シートバックフレームF2の基端部(傾動軸F21付近)から前斜め下方に向けて延びるように形成されており、その後端部がシートバックフレームF2に第1連結軸A1を介して連結され、その前端部が第2伝達リンク32に第2連結軸A2を介して連結されている。言い換えると、第1伝達リンク31の前端部は、第2連結軸A2や、後述する第2伝達リンク32および第3伝達リンク33を介して可動部材20に間接的に連結されている。これにより、シートバックフレームF2の傾動動作が、第1伝達リンク31、第2伝達リンク32および第3伝達リンク33を介して可動部材20に伝達されるようになっている。
【0078】
より具体的には、第1連結軸A1は、基準姿勢(図7)において、傾動軸F21(傾動中心)よりも前側、詳しくは傾動軸F21と第2連結軸A2を結んだ直線よりも僅かに上方にずれた位置に配置されている。そして、第1連結軸A1、第2連結軸A2および傾動軸F21は、シートバックS2が基準姿勢から最も前側に傾動した前傾姿勢(図9)に到達するまでの途中の姿勢で一直線上に並ぶように構成されている。
【0079】
これにより、シートバックS2が基準姿勢から前傾姿勢に到達するまでの途中で、傾動軸F21と第1連結軸A1と第2連結軸A2が一直線上に並ぶ、すなわち傾動軸F21と第2連結軸A2とを結ぶ直線を第1連結軸A1が乗り越えるので、可動部材20の移動方向を逆方向に切り替えることが可能となっている。
【0080】
第2伝達リンク32は、側面視V字状のリンクであり、回動軸32Aを介してサイドフレーム10に回動可能に連結される基部32Bと、基部32Bから後斜め下方に延びる第1アーム部32Cと、基部32Bから後斜め上方に延びる第2アーム部32Dとを有している。そして、第1アーム部32Cの先端部には、第2連結軸A2を介して第1伝達リンク31が回動可能に連結され、第2アーム部32Dの先端部には、第3連結軸A3を介して第3伝達リンク33が回動可能に連結されている。つまり、第2伝達リンク32の回動中心から離れた位置に位置する第1アーム部32Cの先端部は、第1伝達リンク31からの駆動量が入力される入力部となっており、第2伝達リンク32の回動中心から離れ、かつ、前記入力部とは異なる位置に位置する第2アーム部32Dの先端部は、第3伝達リンク33へ駆動量を伝達するための出力部となっている。
【0081】
第3伝達リンク33は、前後方向に延びるリンクであり、その後端部が第3連結軸A3を介して第2伝達リンク32に回動可能に連結されるとともに、その前端部が前述したフロント側可動軸71Bを介して可動部材20の前側部分に回動可能に連結されている。つまり、第3伝達リンク33の可動部材20との連結軸と、フロントリンク71の可動部材20との連結軸は、同軸、すなわち同一のフロント側可動軸71Bで構成されている。これにより、例えば第3伝達リンクとフロントリンクを可動部材の別の箇所にそれぞれ連結させる構造に比べ、構造を簡易化することが可能となっている。
【0082】
以上のように、伝達機構30が構成されることで、図7図8に示すように、シートバックフレームF2を基準姿勢から後に倒していくと、シートバックフレームF2によって第1伝達リンク31が後斜め上方に引っ張られて、第2伝達リンク32が図示反時計回りに回動し、第3伝達リンク33が前方に移動する。これにより、シートバックフレームF2を後に倒す場合には、伝達機構30から可動部材20の前側部分に対して前方に向かう力(フロントリンク71を起こすような力)が働くので、前述したフロントリンク71およびリアリンク72で支持された可動部材20が、前方に移動しつつ、その傾動傾向が各リンク71,72の作用によって第1傾向から第2傾向に切り替わるようになっている。
【0083】
また、図7図9に示すように、シートバックフレームF2を基準姿勢から前に倒していくと、初期段階においては、シートバックフレームF2によって第1伝達リンク31が前斜め下方に押されて、第2伝達リンク32が図示時計回りに回動し、第3伝達リンク33が後方に移動する。これにより、シートバックフレームF2を基準姿勢から前に倒していく動作の初期段階では、伝達機構30から可動部材20に後方に向かう力が働くので、可動部材20は、後方に移動しつつ、フロントリンク71およびリアリンク72の作用によって、水平面に対する角度が徐々に小さくなっていく。
【0084】
そして、シートバックフレームF2を基準姿勢から前方に23°(鉛直面に対して0°)傾けた状態のときに(図示省略)、第1連結軸A1、第2連結軸A2および傾動軸F21が一直線上に並ぶ。第1連結軸A1、第2連結軸A2および傾動軸F21が一直線上に並んだ後(シートバックフレームF2を基準姿勢から前に倒していく動作の後期段階)においては、図9に示すように、シートバックフレームF2によって第1伝達リンク31が後斜め上方に引っ張られて、第2伝達リンク32が図示反時計回りに回動し、第3伝達リンク33が前方に移動する。
【0085】
これにより、シートバックフレームF2を基準姿勢から前に倒していく動作の後期段階では、伝達機構30から可動部材20に前方に向かう力が働くので、可動部材20は、前方に移動しつつ、フロントリンク71およびリアリンク72の作用によって、水平面に対する角度が徐々に大きくなっていく。
【0086】
このようにシートバックS2が基準姿勢(図7)から前傾姿勢(図9)に傾動するまでの途中で可動部材20の移動方向が後方から前方に切り替わることで、例えばシートバックが基準姿勢から前傾姿勢に傾動するまでの間中可動部材が後方に移動し続けるような構造に比べ、可動部材20または可動部材20上に設けられるシートクッションパッドの後端部がシートバックS2に干渉するのを抑えることができる。
【0087】
図4に示すように、スライドレール機構140は、サイドフレーム10の前後に1つずつ設けられ、主に、左右方向に延びる横レール141と、左右方向に延びるように形成されるとともに、横レール141によって左右方向にスライド移動可能に支持される横スライダ142とを備えている。前後の横スライダ142はそれぞれ左右のサイドフレーム10に直接または間接的に取り付けられ、前後の横レール141は、図示しない前後スライドレール機構のスライダに取り付けられている。
【0088】
具体的に、前側の横スライダ142は、サイドフレーム10に固定されたブラケット60に締結部材の一例としてのボルトB1およびナットN1によって固定されることで、サイドフレーム10に間接的に取り付けられている。後側の横スライダ142は、2対のボルトB2およびナットN2によってサイドフレーム10の前述した延出部15に直接取り付けられている。一対のボルトB2およびナットN2ともう一対のボルトB2およびナットN2は、左右方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。このように各ボルトB2および各ナットN2を左右方向に並ぶように設けることで、各ボルトB2および各ナットN2を左右に長い横スライダ142の前後幅内に容易に配置することができるので、サイドフレーム10を横スライダ142を介して横レール141で安定して支持することが可能となっている。
【0089】
また、各ボルトB2および各ナットN2は、サイドフレーム10の後部14とインナーフレーム40の後部47との間であって、かつ、各後部14,47から離れた位置に配置されている。つまり、インナーフレーム40は、上下方向から見て各ボルトB2および各ナットN2に重ならないように、各ボルトB2および各ナットN2の左右方向内側を通って連結ビーム51に連結されている。これにより、インナーフレーム40が各ボルトB2および各ナットN2の締結作業の邪魔になるのを抑制することができるので、サイドフレーム10とスライドレール機構140の取付作業を容易にすることが可能となっている。また、サイドフレーム10の後部14とインナーフレーム40の後部47の間のスペースを活用して各ボルトB2および各ナットN2を設けるので、スペースの有効活用になり、車両用シートSの大型化を抑制することが可能となっている。
【0090】
また、インナーフレーム40の後部47を、前述したように、その前側の第2中間部46よりも左右方向内側になるように配置することで、サイドフレーム10の後部14とインナーフレーム40の後部47との間のスペースを広くすることができるので、各ボルトB2および各ナットN2を締結する作業を容易にすることが可能となっている。また、スペースが広がることにより、ボルトB2およびナットN2として大型の部品を使うことができるので、サイドフレーム10のボルトB2およびナットN2周りの剛性を向上させることが可能となっている。
【0091】
また、前述した第1伝達リンク31は、上下方向から見て各ボルトB2および各ナットN2に重ならないように配置されている。詳しくは、第1伝達リンク31は、右側のボルトB2およびナットN2と左側のボルトB2およびナットN2との間であって、かつ、各ボルトB2および各ナットN2から離れた位置に配置されている。これにより、第1伝達リンク31が各ボルトB2および各ナットN2の締結作業の邪魔になるのを抑制することができるので、サイドフレーム10とスライドレール機構140の取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0092】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0093】
前記実施形態では、逃げ部として切欠部20Eを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば孔などであってもよい。
【0094】
前記実施形態では、前側の連結部として棒状の連結棒21を例示し、後側の連結部として板状の連結フレーム22を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば前後の連結部をともに棒状または板状に形成してもよい。
【0095】
前記実施形態では、締結部材としてボルトB1およびナットN1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばネジなどであってもよい。また、締結部材の数は、前記実施形態のように1つに限らず、2つ以上であってもよい。
【0096】
前記実施形態では、可動部材を板状部材で形成したが、本発明はこれに限定されず、例えば棒状部材などで形成してもよい。
【0097】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0098】
10 サイドフレーム
20 可動部材
70 パンフレーム
71 フロントリンク
72 リアリンク
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9