特許第6121718号(P6121718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121718樹脂粒子及びその製造方法、並びに、防眩フィルム、光拡散性樹脂組成物、及び外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121718
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】樹脂粒子及びその製造方法、並びに、防眩フィルム、光拡散性樹脂組成物、及び外用剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/26 20060101AFI20170417BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170417BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170417BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170417BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C08F2/26 Z
   C08F2/44 C
   G02F1/1335
   A61K8/81
   A61Q1/00
【請求項の数】21
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2012-536527(P2012-536527)
(86)(22)【出願日】2011年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2011072292
(87)【国際公開番号】WO2012043681
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-217620(P2010-217620)
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-217613(P2010-217613)
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 真章
(72)【発明者】
【氏名】原田 良祐
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光一朗
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/104142(WO,A1)
【文献】 特開2005−281484(JP,A)
【文献】 特開2006−111879(JP,A)
【文献】 特表2010−535891(JP,A)
【文献】 特開2009−242632(JP,A)
【文献】 特表2009−541565(JP,A)
【文献】 特開2006−022196(JP,A)
【文献】 特開2000−290330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 12/00− 34/04
C08L 1/00−101/14
A61K 8/81
A61Q 1/00
G02F 1/1335
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内である樹脂粒子の製造方法であって、
水性媒体中、分散剤を用いることなく、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の不存在下、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の存在下、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性混合物を種粒子に吸収させる工程と、
水性媒体中、分散剤を用いることなく、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の存在下、前記重合性単量体を重合させて樹脂粒子を得る工程とを含み、
前記重合性単量体が、多官能スチレン系単量体及び多官能(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方をさらに含み、
前記重合開始剤が、有機過酸化物又はアゾ系化合物であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルスルホ酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸塩であり、
前記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩及びポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩の少なくとも一方である請求項1又は2に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、前記重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用され、
前記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、前記重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用される請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤は、そのアニオン性界面活性剤の1分子を構成する全アルキル基の合計炭素数が10〜40であり、前記アニオン性界面活性剤の1分子を構成する全アルキル基の数が1〜5である、構成を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記重合性単量体が、単官能スチレン系単量体を含み、
前記単官能スチレン系単量体が、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1〜5のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記重合性単量体が、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを含み、
前記単官能(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸アルキルであり、前記アルキルの炭素数が2〜12である請求項1〜6のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
前記重合性単量体が、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを含み、
前記重合性混合物が、種粒子1重量部に対して、30〜500重量部吸収される請求項1〜7のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
単官能スチレン系単量体及び単官能の(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方を含む重合性単量体を重合開始剤との混合物の状態で重合させることで得られる樹脂を含む樹脂粒子であって、
前記重合性単量体が、多官能スチレン系単量体及び多官能(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方をさらに含み、
前記重合開始剤が、有機過酸化物又はアゾ系化合物であり、
体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であり、
150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項10】
前記重合性単量体が、多官能(メタ)アクリル系単量体を含むことを特徴とする、請求項9に記載の樹脂粒子。
【請求項11】
前記多官能(メタ)アクリル系単量体が、前記重合性単量体の5〜30重量%の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂粒子。
【請求項12】
前記重合性単量体が、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを含み、
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸アルキルであり、前記アルキルの炭素数が2〜12であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【請求項13】
マグネシウム含有量が10ppm以下である請求項9〜12のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【請求項14】
前記樹脂粒子が、塗料用艶消し剤であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【請求項15】
前記樹脂粒子が、光拡散フィルム用光拡散剤であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【請求項16】
前記樹脂粒子が、防眩フィルム用光拡散剤であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項18】
スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体を重合開始剤との混合物の状態で重合させることで得られる樹脂を含む樹脂粒子を含むコーティング用組成物を透明基材フィルム上にコーティングして得られる防眩フィルムであって、
前記重合開始剤が、有機過酸化物又はアゾ系化合物であり、
体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であり、
150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項19】
スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体を重合開始剤との混合物の状態で重合させることで得られる樹脂を含む樹脂粒子を含む光拡散性樹脂組成物であって、
前記重合開始剤が、有機過酸化物又はアゾ系化合物であり、
体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であり、
150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内であることを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の光拡散性樹脂組成物を成形することにより得られることを特徴とする光拡散性樹脂成形体。
【請求項21】
請求項9〜13のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子及びその製造方法、並びに、防眩フィルム、光拡散性樹脂組成物、及び外用剤に関する。更に詳しくは、本発明は、単分散性の高い樹脂粒子及びそれを用いた防眩フィルム、光拡散性樹脂組成物、外用剤、並びにシード重合法による単分散性の高い樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶TV(テレビ)等のような表示装置を構成する光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルム等の光拡散剤、各種マット材用の添加剤、塗料用添加剤、スペーサー、アンチブロッキング剤、クロマトグラフ用充填材、診断試薬用担体等として、粒子径が大きく、かつ単分散性の高い樹脂粒子が求められている。
【0003】
このような樹脂粒子の製造方法としてシード重合法が知られている。シード重合法は、水性媒体中であらかじめ作製した粒子径の揃った重合体からなる種粒子を調製し、次いでこの種粒子に単量体を吸収させ、重合させる方法である(例えば、特開平8−169907号公報:特許文献1)。単量体の吸収と重合は、所望の粒子径の樹脂粒子が得られるまで、通常繰り返される。シード重合法では、分散性に優れたポリビニルアルコール等の水溶性高分子分散剤を分散剤として使用することが多い。
【0004】
しかしながら、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子分散剤は、樹脂粒子中に残りやすい。樹脂粒子中に水溶性高分子分散剤が残った場合、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子分散剤の熱や経時による劣化により、樹脂粒子が変色(黄変)するという課題があった。樹脂粒子の熱等による変色を防止するために、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子分散剤を重合後に除去するための洗浄を行うことも考えられる。しかしながら、水溶性高分子分散剤を洗浄によって完全に除去することは困難であるので、水溶性高分子分散剤を用いて得られる樹脂粒子は、残存する水溶性高分子分散剤を含み、加熱時に黄変することが避けられない。また、水溶性高分子分散剤を除去するための洗浄を行う場合、樹脂粒子の洗浄に時間を要するため生産性が低下するという課題があった。
【0005】
そこで、特定の界面活性剤を使用することで、ポリビニルアルコールを使用しない樹脂粒子の製造方法が、特開平10−298250号公報(特許文献2)で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−169907号公報
【特許文献2】特開平10−298250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の製造方法では、単量体の吸収と重合を1段階行って得られる樹脂粒子の大きさには限界があるため、大きな粒子径の樹脂粒子を得るには、単量体の吸収と重合を繰り返す必要があった。
【0008】
また、本願発明者等の検討によれば、上記特許文献2に記載の製造方法のようにポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性(又は非イオン性)の界面活性剤のみを使用した場合、微小粒子及び粗大粒子が多く、粒子径が揃った(単分散性の高い)樹脂粒子を得ることができないことが分かった。
【0009】
従って、単量体の吸収と重合の繰り返し数を減らしても、大きく、単分散性が高く、かつ加熱時の変色が抑制された樹脂粒子を生産性よく与え得る製造方法、並びに、単分散性が高く、かつ加熱時の変色が抑制された樹脂粒子及びそれを用いた防眩フィルム、光拡散性樹脂組成物、外用剤の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして本発明によれば、水性媒体中、分散剤を用いることなく、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の存在下、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性混合物を種粒子に吸収させる工程と、水性媒体中、分散剤を用いることなく、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の存在下、前記重合性単量体を重合させて樹脂粒子を得る工程とを含むことを特徴とする樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0011】
なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
更に、本発明によれば、上記方法により得られ、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体に由来する樹脂を含み、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内である樹脂粒子が提供される。
【0013】
ここで、b*値は、JIS Z 8722に準拠してL***表色系にて色度測定を行うことにより得られた値であるものとする。なお、b*値は、数値が+側に大きくなるほど、黄色変度が増す。
【0014】
更に、本発明によれば、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体に由来する樹脂を含む樹脂粒子であって、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であり、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内である樹脂粒子が提供される。
【0015】
更に、本発明によれば、本発明の樹脂粒子を含むコーティング用組成物を透明基材フィルム上にコーティングして得られる防眩フィルム、本発明の樹脂粒子を含む光拡散性樹脂組成物、及び本発明の樹脂粒子を含む外用剤が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の存在下で、重合性混合物を種粒子に吸収させ、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の存在下、重合性単量体を重合させるので、微小粒子及び粗大粒子の発生を抑制して、生産性よく粒子径が揃った(単分散性の高い)樹脂粒子を得ることができる。また、本発明の製造方法は、水溶性高分子分散剤(ポリビニルアルコール等)を使用していないため、水溶性高分子分散剤を使用して得られた樹脂粒子と比較して、樹脂粒子の加熱時の黄変を抑制できる。例えば、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値を−1.0〜+2.0の範囲に抑制できる。また、本発明の製造方法は、無機分散剤を使用していないため、樹脂粒子表面に、10ppmを超える金属分(マグネシウム等)が残存することを回避できる。そのため、樹脂粒子と他の物質と混合して製品を製造するときに、金属分に起因するイオン結合により樹脂粒子が凝集を起こして製品の特性(例えば防眩フィルムの防眩性)を悪化させることを回避できる。また、本発明の製造方法は、分散剤としてマクロモノマーを使用していないため、マクロモノマー中の一部が結晶化して、樹脂粒子中に白濁を発生させることを回避できる。
【0017】
また、本発明の樹脂粒子は、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であるので、体積平均粒子径の80%より小さい粒子径を持つ微小粒子の個数割合、及び体積平均粒子径の120%より大きい粒子径を持つ粗大粒子の個数割合が低減された樹脂粒子である。したがって、本発明の樹脂粒子を他の物質と混合したときの防眩性、光拡散性、艶消し性等の特性を向上できる。また、本発明の樹脂粒子は、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内であるので、加熱時の樹脂粒子の黄変を抑制できる。したがって、本発明の樹脂粒子は、特に、樹脂粒子を他の物質と組み合わせて製品を製造する際に加熱を伴う用途、例えば、樹脂粒子を基材樹脂と混合して組成物を製造した後で組成物を塗布して加熱乾燥させる用途(特に組成物を基材とする透明プラスチックフィルムの表面に塗布して加熱乾燥させることによって防眩フィルムを製造する用途)、樹脂粒子を基材樹脂と混合して組成物を製造した後で組成物を加熱成形する用途等において、製品の黄変を抑制できる。製品の黄変を抑制することは、樹脂粒子を使用した製品が光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルム等の光学部品である場合に特に重要である。
【0018】
以上のように、本発明によれば、単分散性が高く、かつ加熱時の変色が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0019】
更に、本発明の防眩フィルムは、本発明の樹脂粒子を含むコーティング用組成物を透明基材フィルム上にコーティングして得られるものであるため、防眩性に優れ、かつ変色が抑制されている。
【0020】
更に、本発明の光拡散性樹脂組成物は、本発明の樹脂粒子を含むものであるため、光拡散性に優れ、かつ変色が抑制されている。
【0021】
更に、本発明の外用剤は、本発明の樹脂粒子を含むものであるため、滑らかさが良好である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1で得られた重合体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】実施例5で得られた重合体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】比較例1で得られた重合体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】比較例5で得られた重合体粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の製造方法は、水性媒体中、アニオン性界面活性剤の存在下で種粒子に重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性混合物を吸収させる工程(以下、「吸収工程」と呼ぶ)と、水性媒体中、アニオン性界面活性剤の存在下、重合性単量体を重合させることで樹脂粒子を得る工程(以下、「重合工程」と呼ぶ)とを含む、シード重合法による樹脂粒子の製造方法に関する。特に、本発明の樹脂粒子の製造方法は、吸収工程及び重合工程の何れにおいても分散剤を用いることなく、吸収工程と重合工程とに異なるアニオン性界面活性剤を使用し、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体を使用している。本発明の樹脂粒子の製造方法は、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤を吸収工程に使用し、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤を重合工程に使用している。
【0024】
上記分散剤とは、分散安定剤とも呼ばれるものである。本明細書では、「分散剤」を、水性媒体中に重合性混合物が分散した状態を安定化させる難水溶性の無機化合物または重量平均分子量8000以上の高分子物質と定義している。上記分散剤は、水溶性高分子分散剤、無機分散剤、マクロモノマー(重合可能な官能基を持つ高分子化合物)等である。上記水溶性高分子分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等である。上記無機分散剤は、複分解ピロリン酸マグネシウム(複分解生成法により生成させたピロリン酸マグネシウム)、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩;リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物である。上記マクロモノマーとしては、例えば、カルボキシル基等の親水基を有する単官能単量体と親水基を有しない単官能単量体との共重合体が挙げられ、そのような共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体が挙げられる。ここで、「単官能」とは、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に1つ有することを意味する。
【0025】
また、本発明の製造方法では、上記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルスルホ酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、上記ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0026】
更に、本発明の製造方法では、上記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸塩であり、上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩及びポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩の少なくとも一方であることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0027】
また、本発明の製造方法では、上記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用され、上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、上記重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用されることが好ましい。本発明の製造方法では、上記重合性単量体が(メタ)アクリル系単量体を含む場合(特に上記重合性単量体が1.5重量%以下の水(20℃)への溶解度を有する(メタ)アクリル系単量体を含む場合)、上記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が、上記(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用され、上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が、上記(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部使用されることが好ましい。これらの場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0028】
更に、本発明の製造方法では、上記ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤は、そのアニオン性界面活性剤の1分子を構成する全アルキル基の合計炭素数が10〜40であり、上記アニオン性界面活性剤の1分子を構成する全アルキル基の数が1〜5である構成を有することが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0029】
また、本発明の製造方法では、上記重合性単量体がスチレン系単量体を含む場合、上記スチレン系単量体が、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0030】
また、本発明の製造方法では、上記重合性単量体が(メタ)アクリル系単量体を含む場合、上記(メタ)アクリル系単量体が、(メタ)アクリル酸アルキルであり、上記アルキルの炭素数が2〜12であることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子を提供できる。
【0031】
更に、本発明の製造方法では、上記重合性単量体がスチレン系単量体を含む場合、上記重合性混合物が、種粒子1重量部に対して、30〜300重量部吸収されることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子をより少ない吸収工程数で提供できる。
【0032】
更に、本発明の製造方法では、上記重合性単量体が(メタ)アクリル系単量体を含む場合(特に上記重合性単量体が1.5重量%以下の水(20℃)への溶解度を有する(メタ)アクリル系単量体を含む場合)、上記重合性混合物が、種粒子1重量部に対して、30〜500重量部吸収されることが好ましい。この場合、より単分散性が高くかつ加熱時の黄変が抑制された樹脂粒子をより少ない吸収工程数で提供できる。
【0033】
(1)アニオン性界面活性剤
(a)吸収工程に使用されるアニオン性界面活性剤
吸収工程で使用されるアニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤である。このアニオン性界面活性剤は、水性媒体中で、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性混合物の液滴が、微小なまま安定して分散した状態を維持する役割を主として有する。安定した分散状態の維持は、上記アニオン性界面活性剤中のアルキル基から得られると発明者等は考えている。即ち、上記アニオン性界面活性剤のアルキル基が、上記重合性混合物の液滴側を向き、上記アニオン性界面活性剤におけるアルキル基以外の部分が水性媒体側を向くことで、液滴の分散状態を安定に維持できる、と発明者等は考えている。更に、分散状態を安定に維持することで、種粒子への上記重合性混合物の吸収を増やす(重合性混合物の吸収による種粒子の膨潤倍率を高める)効果もある、と発明者等は考えている。
【0034】
上記アルキル基の位置は、上記アニオン性界面活性剤の分子中、末端であることが好ましい。上記アルキル基の位置が末端であることにより、上記液滴の分散状態をより安定に維持できる。アルキル基を構成する炭素数は、上記アニオン性界面活性剤の1分子中の全アルキル基の合計炭素数で表現して、10〜40の範囲であることが好ましい。上記アニオン性界面活性剤の1分子中の全アルキル基の合計炭素数がこの範囲であることで、上記液滴の分散状態をより安定に維持できる。より好ましい上記アニオン性界面活性剤の1分子中の全アルキル基の合計炭素数は、10〜30の範囲である。上記アニオン性界面活性剤の1分子中のアルキル基の数は、1〜5の範囲であることが好ましい。この範囲であることで、上記液滴の分散状態をより安定に維持できる。1つのアルキル基を構成する炭素数は、アルキル基の数が少なければ多く、アルキル基の数が多ければ少なくすることができる。従って、アルキル基の数×炭素数の値は、10〜150の範囲であることが好ましい。
【0035】
ここで、具体的なアルキル基としては、炭素数6〜20のアルキル基(ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、又はイコシル基)等が挙げられる。これらアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0036】
更に、具体的には、上記アニオン性界面活性剤は、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、及びアシルスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルスルホ酢酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。これらアニオン性界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩や、アンモニウム塩等を使用できる。
【0037】
上記群より選択される少なくとも1種の化合物は、アルキルスルホコハク酸塩であることが好ましく、ジアルキルスルホコハク酸塩であることがより好ましい。特に、上記ジアルキルスルホコハク酸塩としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
上記アニオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩であってもよい。上記アニオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記アニオン性界面活性剤の使用量は、上記重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。上記アニオン性界面活性剤の使用量がこの範囲であれば、より微小粒子及び粗大粒子の発生が抑制された樹脂粒子を得ることができる。より好ましいアニオン性界面活性剤の使用量は、上記重合性単量体100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲である。
【0040】
(b)重合工程に使用されるアニオン性界面活性剤
重合工程で使用されるアニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤である。このアニオン性界面活性剤は、水性媒体中で、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体と重合開始剤とを含む重合性混合物を吸収した種粒子が、互いに合着せず、そのまま安定して分散した状態を維持する役割を主として有する。安定した分散状態の維持は、上記アニオン性界面活性剤中のポリオキシエチレン鎖から得られると発明者等は考えている。即ち、上記アニオン性界面活性剤のポリオキシエチレン鎖が、上記重合性混合物の液滴(モノマー液滴)に幅広く吸着することで、上記重合性混合物の液滴が安定となることで、重合性混合物を吸収した種粒子の分散状態を安定に維持できる、と発明者等は考えている。
【0041】
上記ポリオキシエチレン鎖は、1〜30の繰り返し数を有していることが好ましい。繰り返し数がこの範囲であることで、重合性混合物を吸収した種粒子の分散状態を安定に維持できる。より好ましい繰り返し数は、1〜20の範囲である。
【0042】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、脂肪族系のアニオン性界面活性剤でもよく、芳香族系のアニオン性界面活性剤でもよい。
【0043】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、リン酸塩、硫酸塩、スルホコハク酸塩等を分子構造中に含む剤が使用できる。これらアニオン性界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩や、アンモニウム塩等を使用できる。
【0044】
更に、具体的は、上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩及びポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩に含まれるアリール基としては、フェニル基、スチレン化フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩に含まれるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。
【0045】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、多数種が上市されている。上記ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩としては、例えば、第一工業製薬株式会社からプライサーフ(登録商標)シリーズのAL、AL12Hとして上市されているアニオン性界面活性剤(何れも、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル)が使用できる。
【0046】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩としては、例えば、第一工業製薬株式会社からプライサーフ(登録商標)シリーズのA212C(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸塩)、A215C(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸塩)、A208F(ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)、M208F(ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩)、A208N(ポリオキシエチレンアルキル(C12,13)エーテルリン酸エステル)、A208B(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル)、A210B、A219B、DB−01、A210Dとして上市されているアニオン性界面活性剤、及び東邦化学工業株式会社からフォスファノール(登録商標)シリーズのLO−529(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸塩)、RB−410、RL210、RS610、ML−220、RD−510Y、RD−720N、RL−310、RS−410、RS−710、ED−200、LB−400、LS−500、ML−240、RD−720、RP−710、GB−520、LP−700、RA−600として上市されているアニオン性界面活性剤が、それぞれ使用できる。
【0047】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、第一工業製薬株式会社からハイテノール(登録商標)シリーズのXJ−630S、XJ−16、PS−06、PS−15、330T、TM−07、227L、325L、LA−10、LA−12、LA−16、325SM、08E、18E、W−2320として上市されているアニオン性界面活性剤が使用できる。
【0048】
上記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩としては、例えば、第一工業製薬株式会社からハイテノール(登録商標)シリーズのNF−08、NF−0825、NF−13、NF−17として上市されているアニオン性界面活性剤(何れも、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム)が使用できる。
【0049】
上記ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩としては、例えば、第一工業製薬株式会社からネオハイテノール(登録商標)シリーズのECL−30S、ECL−45、LS、L30、S−70として上市されているアニオン性界面活性剤が使用できる。
【0050】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、上記具体的な例中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩(例えば、「フォスファノール(登録商標)LO−529」)及びポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩(例えば、「ハイテノール(登録商標)NF−17」)の少なくとも一方であることが好ましく、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸塩及びポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩の少なくとも一方であることがより好ましい。
【0051】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の使用量は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。上記ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の使用量がこの範囲であれば、より微小粒子及び粗大粒子の発生が抑制された樹脂粒子を得ることができる。より好ましいポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤の使用量は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲である。
【0053】
(2)重合性単量体
(a)スチレン系単量体
上記スチレン系単量体は、スチレン、又は、スチレン骨格を含有する単官能の単量体である。上記スチレン系単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン等の単官能スチレン系単量体が挙げられる。なお、これらスチレン系単量体は、いずれも水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%以下である。
【0054】
(b)(メタ)アクリル系単量体
上記(メタ)アクリル系単量体は、単官能の(メタ)アクリル酸エステルである。上記(メタ)アクリル系単量体は、水(20℃)に対する溶解度が(水および(メタ)アクリル系単量体の合計量を100重量%として)1.5重量%以下の(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。(メタ)アクリル系単量体の水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%より大きい場合、樹脂粒子が凝集することがある。この理由を発明者等は次のように推測している。即ち、(メタ)アクリル系単量体の水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%より大きい場合、種粒子への(メタ)アクリル系単量体の吸収時や(メタ)アクリル系単量体の重合時に、水性媒体への(メタ)アクリル系単量体の溶解が生じることがある。溶解した(メタ)アクリル系単量体は、それが重合する際に、樹脂粒子を凝集させる役割を果たすと、発明者等は推測している。
【0055】
水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%以下の(メタ)アクリル系単量体としては、脂肪族系の(メタ)アクリル系単量体(芳香族炭化水素基も脂環式炭化水素基も有していない(メタ)アクリル系単量体)及び芳香族系の(メタ)アクリル系単量体(芳香族炭化水素基を有している(メタ)アクリル系単量体)のいずれも使用できる。ここで、種粒子への重合性混合物の吸収がよいという観点から脂肪族系の(メタ)アクリル系単量体が(メタ)アクリル系単量体として好ましい。更に、上記水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%以下の(メタ)アクリル系単量体は、炭素数2〜12のアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであることが好ましい。
【0056】
具体的な上記水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%以下の(メタ)アクリル系単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0057】
上記(メタ)アクリル系単量体は、水(20℃)に対する溶解度が1.5重量%より大きい(メタ)アクリル系単量体であってもよい。そのような(メタ)アクリル系単量体としては、脂肪族系の(メタ)アクリル系単量体及び芳香族系の(メタ)アクリル系単量体のいずれも使用でき、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ジエチルアミノエチルメタクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
なお、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、及びメタクリル酸ラウリルの、水への溶解度(20℃)を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
上記重合性単量体が、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の両方を含む場合、上記スチレン系単量体の使用量は、上記重合性単量体の50重量%以上であってもよく、上記重合性単量体の50重量%未満であってもよい。
【0061】
(c)他の単量体
上記重合性単量体には、スチレン系単量体及び上記(メタ)アクリル系単量体以外の他の単量体を樹脂粒子に要求される性質に応じて使用してもよい。
【0062】
他の単量体としては、(メタ)アクリル酸;ジビニルベンゼンのような多官能スチレン系単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等の多官能(メタ)アクリル系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル系単量体;等が挙げられる。なお、上記多官能スチレン系単量体は、スチレン、又は、スチレン骨格を含有する多官能の単量体である。ここで、「多官能」とは、重合可能なアルケニル基を1分子中に2つ以上有することを意味する。上記多官能(メタ)アクリル系単量体は、多官能の(メタ)アクリル酸エステルである。
【0063】
樹脂粒子に耐溶剤性を付与する観点から、上記重合性単量体は、上記多官能(メタ)アクリル系単量体を含むことが好ましい。上記多官能(メタ)アクリル系単量体の使用量は、上記重合性単量体の50重量%未満とできる。樹脂粒子に耐溶剤性を付与する観点から、上記多官能(メタ)アクリル系単量体の使用量は、重合性単量体の5〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0064】
(3)重合開始剤
上記重合開始剤としては、特に限定されず、公知の重合開始剤をいずれも使用できる。上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。上記重合開始剤は、上記重合性単量体100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
(4)水性媒体
上記水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合媒体が挙げられる。
【0066】
(5)種粒子
上記種粒子としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子等のビニル系樹脂粒子が挙げられる。
【0067】
上記アクリル系樹脂粒子としては、(メタ)アクリル系単量体由来の粒子が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、ジエチルアミノエチルメタクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0068】
上記(メタ)アクリル系単量体に、他の単量体を加えてもよい。他の単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能単量体;スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0069】
スチレン系粒子としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体由来の粒子が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0070】
上記スチレン系単量体に、他の単量体を加えてもよい。他の単量体としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能性単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸のグリコールエステル類以外の(メタ)アクリル系単量体)等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0071】
上記種粒子は、アクリル系樹脂粒子又はスチレン系樹脂粒子であることが好ましい。上記種粒子は、非架橋の樹脂粒子であることが好ましく、非架橋の(メタ)アクリル系樹脂粒子又はスチレン系樹脂粒子であることがより好ましい。
【0072】
上記種粒子の体積平均粒子径は、種粒子に吸収させる重合性混合物の量、所望する樹脂粒子の粒子径等の条件により適宜調整できるが、0.1〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0073】
なお、上記種粒子は、例えば乳化重合法、ソープフリー乳化重合法(界面活性剤を使用しない乳化重合法)、分散重合法、シード重合法等の公知の重合方法により、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体等のビニル系単量体(重合可能なアルケニル基を1分子中に少なくとも1つ有する化合物)を重合することで、入手可能である。
【0074】
上記種粒子は、重合系から単離してもよく、単離せずにそのまま樹脂粒子の製造に使用してもよい。
【0075】
シード重合は、複数段階繰り返して行ってもよい。すなわち、シード重合は、例えば、シード重合でない重合により得られた第1の種粒子に単量体混合物を吸収させて重合することにより第2の種粒子を得る第1段のシード重合と、第2の種粒子に単量体混合物を吸収させて重合することにより本発明の架橋された樹脂粒子を得る最終段のシード重合とを含んでいてもよい。また、シード重合は、前記の第1段のシード重合と、第2の種粒子に単量体混合物を吸収させて重合することにより第3の種粒子を得る第2段のシード重合と、・・・、本発明の架橋された樹脂粒子を得る最終段のシード重合とを含んでいてもよい。シード重合を複数段階繰り返して行う方法は、樹脂粒子の粒子径を大きくする場合に適している。
【0076】
第1段のシード重合に用いる種粒子を得るためのビニル系単量体の重合は、本発明の樹脂粒子を得る上記重合性単量体の重合と同様にして行うことができるが、界面活性剤は使用しないことが好ましい。すなわち、第1段のシード重合に用いる種粒子を得るためのビニル系単量体の重合方法としては、ソープフリー重合法が最も好ましい。一方、第2段以降のシード重合に用いる種粒子(第2以降の種粒子)を得るためのビニル系単量体の重合は、本発明の樹脂粒子を得る最終段のシード重合と同様のシード重合であり、界面活性剤を使用することが好ましい。
【0077】
種粒子を得るためのビニル系単量体の重合では、分子量調整剤を添加することができる。上記分子量調整剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン(1−オクタンチオール)、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;γ−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0078】
(6)シード重合法
本発明の方法は、公知のシード重合法を参考にすればよい。以下にシード重合法の一般的な方法を述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0079】
まず、重合性混合物と水性媒体とから構成される乳化液に種粒子を添加する。乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、重合性混合物を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー(登録商標))等の微細乳化機により分散させることで、乳化液を得ることができる。重合開始剤は、重合性単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた乳化液中の重合性混合物の液滴の粒子径は、種粒子よりも小さい方が、重合性混合物が種粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0080】
種粒子は、乳化液に直接添加してもよく、種粒子を水性媒体に分散させた形態で添加してもよい。
【0081】
種粒子の乳化液への添加後、種粒子へ重合性混合物を吸収させる。この吸収は、通常、種粒子添加後の乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0082】
種粒子は、重合性混合物の吸収により膨潤する。本発明の方法は、上記従来技術より、1回の吸収工程における種粒子に吸収させる重合性混合物の量を多くすることができる。例えば、重合性混合物の使用量を、種粒子1重量部に対して、30重量部以上とすることができる。上記重合性単量体がスチレン系単量体を含む場合、上記重合性混合物の使用量は、種粒子1重量部に対して、30〜300重量部の範囲であることが好ましく、30〜200重量部の範囲であることがより好ましい。上記重合性単量体が(メタ)アクリル系単量体を含む場合、上記重合性混合物の使用量は、種粒子1重量部に対して、30〜500重量部の範囲であることが好ましく、40〜300重量部の範囲であることがより好ましい。上記重合性混合物の使用量が上記数値範囲の下限値より小さくなると、重合による粒子径の増加が小さくなることにより、生産性が低下する。上記重合性混合物の使用量が上記数値範囲の上限値より大きくなると、上記重合性混合物が、完全に種粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することがある。なお、種粒子への上記重合性混合物の吸収の終了は光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
【0083】
次に、種粒子に吸収させた重合性単量体を重合させることで、樹脂粒子が得られる。
【0084】
重合温度は、重合性単量体及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃の範囲内であることが好ましく、50〜100℃の範囲内であることがより好ましい。重合反応は、種粒子に重合性混合物が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、樹脂粒子を含む懸濁液を、加圧ろ過または吸引ろ過等によって水性媒体を除去し、水あるいは溶剤で洗浄することによって粒子表面の界面活性剤を除去した後、乾燥して、樹脂粒子を単離することが好ましい。
【0085】
また、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を重合反応系に用いてもよい。
【0086】
(7)樹脂粒子
本発明の方法によれば、単量体由来の小粒子及び粗大粒子、並びに粒子凝集体の生成が抑制され、生産性よく単分散性が良好な樹脂粒子が得られる。
【0087】
本発明の方法によれば、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上である樹脂粒子、例えば、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が、全粒子の85%以上である樹脂粒子を得ることができる。樹脂粒子における、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合は、90%以上であることが好ましい。ここで、樹脂粒子の凝集体は、超音波照射でも解砕困難であり、凝集体を含む樹脂粒子は、体積平均粒子径の120%より大きい粒子径を持つ粒子の個数割合が増加する。また、重合性混合物の種粒子への吸収が不足している場合、小粒子の割合が増加するため、樹脂粒子における、体積平均粒子径の80%未満の粒子径を持つ粒子の個数割合が増加する。
【0088】
更に、本発明では、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体に由来する樹脂を含み、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内である樹脂粒子を提供できる。このb*値の範囲は、従来のポリビニルアルコール等の水溶性高分子分散剤を使用した製造方法では実現困難な範囲である。
【0089】
本発明の樹脂粒子は、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一方を含む重合性単量体に由来する樹脂を含む樹脂粒子であって、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が83%以上であり、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が−1.0〜+2.0の範囲内である。
【0090】
本発明の樹脂粒子は、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が85%以上であることがより好ましく、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が90%以上であることがさらに好ましい。これにより、体積平均粒子径の80%より小さい粒子径を持つ微小粒子の個数割合、及び体積平均粒子径の120%より大きい粒子径を持つ粗大粒子の個数割合をさらに低減できるので、本発明の樹脂粒子を他の物質と混合したときの防眩性、光拡散性、艶消し性等の特性をさらに向上できる。
【0091】
本発明の樹脂粒子は、150℃の恒温槽中で2時間加熱した後に色彩色差計により測定されるb*値が、−1.0〜+1.0の範囲内であることがより好ましい。これにより、加熱時の樹脂粒子の黄変をさらに抑制できる。
【0092】
本発明の樹脂粒子は、無機成分(無機元素;例えばマグネシウム)の含有率が、10ppm(重量百万分率)以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることがさらに好ましい。無機成分の含有率が10ppmを超えると、樹脂粒子をバインダー等の他の物質と混合したときに、無機成分に起因するイオン結合により樹脂粒子が凝集を起こしたり、樹脂粒子を樹脂に練り込んだ際に樹脂粒子が加熱されることにより他の添加物(例えば帯電防止剤、難燃剤等)と反応したりするので、樹脂粒子の特性、例えば、防眩フィルム中での光拡散性(すなわち防眩性)、光拡散フィルムの光拡散性が悪化したり、光拡散板中で黄変が発生したりする。
【0093】
本発明の製造方法により得られた樹脂粒子、及び本発明の樹脂粒子は、光拡散剤として使用できる。また、本発明の製造方法により得られた樹脂粒子、及び本発明の樹脂粒子は、光拡散剤以外に、LCD(液晶ディスプレイ)スペーサー・銀塩フィルム用表面改質剤・磁気テープ用フィルム用改質剤・感熱紙走行安定剤等の電子工業分野、レオロジーコントロール剤・艶消し剤等の塗料・インク・接着剤・クロマトグラフ用充填材等の化学分野、診断試薬用担体(抗原抗体反応検査用粒子)等の医療分野、滑り剤、体質顔料等の化粧品分野、不飽和等ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤、紙、歯科材料、アンチブロッキング剤、マット化剤、樹脂改質剤等の一般工業分野等へ使用可能である。
【0094】
〔コーティング用組成物〕
本発明の樹脂粒子は、塗料用艶消し剤、光拡散フィルム用光拡散剤、防眩フィルム用光拡散剤等としてコーティング用組成物に含有させることが可能である。上記コーティング用組成物は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。
【0095】
上記コーティング用組成物は、必要に応じて、バインダー樹脂を含んでいる。上記バインダー樹脂としては、有機溶剤または水に可溶な樹脂もしくは水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。そのようなバインダー樹脂としては、紫外線硬化型アクリル樹脂(例えば、ペンタエリストールトリアクリレート及びペンタエリストールテトラアクリレートの混合物等の多官能アクリレート)等のアクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、コーティングされる基材への密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。バインダー樹脂及び樹脂粒子の添加量は、用途、形成されるコーティング膜の膜厚、樹脂粒子の平均粒子径、コーティング方法によって異なる。
【0096】
上記コーティング用組成物は、必要に応じて溶剤を含んでいる。コーティング用組成物を構成する溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、コーティング用組成物が油系塗料である場合等には、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤等を上記溶剤として使用できる。コーティング用組成物が水系塗料である場合等には、水、アルコール類等の水性溶剤(水性媒体)を上記溶剤として使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。コーティング用組成物中の溶剤含有量は、コーティング用組成物全量に対し、通常、20〜60重量%の範囲内である。
【0097】
コーティング用組成物は、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光重合開始剤等の硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等を含んでいてもよい。
【0098】
コーティング用組成物を使用したコーティング膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。コーティング膜の形成方法としては、例えば、スプレーコーティング法、ロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法、ダイコート法、ハケ塗り法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。コーティング用組成物は、必要に応じて、粘度を調整するために、希釈剤で希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0099】
〔光学フィルム〕
光学フィルムは、上記コーティング用組成物を透明基材フィルム上にコーティングして得られるものである。上記光学フィルムは、本発明の防眩フィルム、光拡散フィルム等として利用できる。
【0100】
上記透明基材フィルムの材質としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0101】
上記透明基材フィルムの厚さは、5〜300μmの範囲内であることが好ましい。上記透明基材フィルムの厚さが5μmより薄い場合、塗工、印刷、二次加工時の取り扱いが困難となり、作業性が低下することがある。一方、上記透明基材フィルムの厚さが300μmより厚い場合には、透明基材フィルムそのものの可視光透過率が低下してしまうことがある。
【0102】
本発明の防眩フィルム等の光学フィルムは、透明基材フィルムの少なくとも一方の面に、上記コーティング用組成物の層を塗布等の手段により形成することにより得られる。塗布方法としては、ロールコート法、スプレーコーティング法、バーコーティング法等が挙げられる。
【0103】
〔外用剤〕
更に、本発明の樹脂粒子は、外用剤の原料としても使用できる。上記外用剤は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。外用剤における樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80重量%の範囲内であることが好ましく、5〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する樹脂粒子の含有量が1重量%を下回ると、樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、樹脂粒子の含有量が80重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0104】
外用剤としては、例えば、化粧料、外用医薬品等が挙げられる。
【0105】
化粧料としては、上記樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;おしろい類;ファンデーション;口紅;リップクリーム;頬紅;眉目化粧品;マニキュア化粧品;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;サンタン製品;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用の化粧料;等が挙げられる。
【0106】
上記外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬用クリーム、軟膏、医薬用乳剤、医薬用ローション等が挙げられる。
【0107】
また、これらの外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加剤としては、例えば水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸(炭素数12以上の脂肪酸)、高級アルコール(炭素数6以上のアルコール)、ステロール、脂肪酸エステル(2−エチルヘキサン酸セチル等)、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤(ソルビタンセスキオレエート等)、高分子化合物、粘土鉱物類(体質顔料及び吸着剤等の数種の機能を兼ね備えた成分;タルク、マイカ等)、色材原料(酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等のその他の樹脂粒子、特殊配合添加物等が挙げられる。
【0108】
〔光拡散性樹脂組成物〕
本発明の樹脂粒子は、透明基材樹脂(透明性樹脂)に分散させることで、照明カバー、液晶表示装置の光拡散板等のような光学用部材の原料(光拡散性樹脂組成物)として使用できる。上記光拡散性樹脂組成物は、本発明の樹脂粒子と、透明基材樹脂とを含んでいる。
【0109】
上記透明基材樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が求められる場合には、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
透明基材樹脂への樹脂粒子の添加割合は、透明基材樹脂100重量部に対して樹脂粒子が0.01〜100重量部の範囲内であることが好ましい。これにより、光拡散性及び光透過性を良好にすることができる。上記樹脂粒子が透明基材樹脂100重量部に対して0.01重量部未満の場合、光拡散性を与えにくくなることがある。上記樹脂粒子が透明基材樹脂100重量部に対して100重量部より多い場合、光拡散性は得られるが、光透過性が低くなることがある。より好ましい樹脂粒子の添加割合は、透明基材樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内である。
【0111】
光拡散性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、本発明の樹脂粒子と透明基材樹脂とを、機械式粉砕混合方法等のような混合方法で混合することによって、光拡散性樹脂組成物を製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリタイザー、ロッキングミキサー等を用いて本発明の樹脂粒子と透明基材樹脂とを混合し攪拌することにより、光拡散性樹脂組成物を製造できる。
【0112】
光拡散性樹脂組成物を成形することにより、光拡散性樹脂成形シート(光学シート)等の光拡散性樹脂成形体を製造できる。例えば、本発明の樹脂粒子と透明基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで光拡散性樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形又は溶融後射出成形することにより、任意の形状の光拡散性樹脂成形体を得ることができる。
【0113】
光拡散性樹脂成形体は、例えば、発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等の照明カバー;液晶表示装置の光拡散板等として使用できる。液晶表示装置の構成は、光拡散板(光拡散性樹脂成形体)を含みさえすれば、特に限定されない。例えば、液晶表示装置は、表示面及び裏面を有する液晶表示パネルと、このパネルの裏面側に配置された導光板と、導光板の側面に光を入射させる光源とを少なくとも備えている。また、液晶表示装置は、導光板における、液晶表示パネルに対向する面上に光拡散板を備え、導光板における、液晶表示パネルに対向する面の反対面側に反射シートを備えている。また、導光板の液晶表示パネルの対向面と反対面側に反射シートを備えている。この光源の配置は、一般にエッジライト型バックライト配置と称される。液晶表示装置における光源の配置としては、上記エッジライト型バックライト配置以外に、直下型バックライト配置もある。この配置は、具体的には、液晶表示パネルの裏面側に光源を配置し、液晶表示パネルと光源と間に配置された光拡散板を少なくとも備えた配置である。
【実施例】
【0114】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の製造例、実施例、及び比較例において、種粒子(一次粒子、種粒子1、及び種粒子2)の体積平均粒子径、及び樹脂粒子の体積平均粒子径は、以下の測定法で測定した。
【0115】
〔種粒子の体積平均粒子径の測定法〕
種粒子の体積平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置「LS230」型で測定した。具体的には、試験管に、種粒子0.1gと0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10mlとを投入し、ヤマト科学株式会社製のタッチミキサー「TOUCHMIXER MT−31」で2秒間混合した。この後、試験管内の種粒子を市販の超音波洗浄器である株式会社ヴェルヴォクリーア製「ULTRASONIC CLEARNER VS−150」を用いて10分間分散させて、分散液を得た。分散液に超音波を照射しながら、分散させた種粒子の体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)を、ベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置「LS230」型にて測定した。その測定のときの光学モデルは作製した種粒子の屈折率にあわせた。
【0116】
〔樹脂粒子の体積平均粒子径の測定法〕
樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置「コールターマルチサイザーII」(ベックマン・コールター株式会社製)を使用し、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、アパチャーサイズ(アパチャー径)が50μmのアパチャーを用いて「コールターマルチサイザーII」のキャリブレーションを行い測定した。
【0117】
具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10ml中にヤマト科学株式会社製のタッチミキサー「TOUCHMIXER MT−31」及び市販の超音波洗浄機である株式会社ヴェルヴォクリーア製の「ULTRASONIC CLEANER VS−150」を用いて予備分散させ、分散液とした。次いで、「コールターマルチサイザーII」本体に備え付けの「ISOTON(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製、測定用電解液)を満たしたビーカー中に、上記分散液を緩く撹拌しながらスポイで滴下して、「コールターマルチサイザーII」本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、「コールターマルチサイザーII」本体に、アパチャーサイズ50μm、Current(アパチャー電流)を800μA、Gain(ゲイン)を4、Polarity(内側電極の極性)を+と入力して、マニュアルモード(manual)で体積基準の粒度分布図および個数基準の粒度分布図を測定した。測定中はビーカー内の分散液を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、樹脂粒子10万個の測定を行った時点で測定を終了した。
【0118】
測定結果から、体積基準の粒度分布図と個数基準の粒度分布図とを得る。得られた体積基準の粒度分布図から、粒子径の体積加重の平均値(体積%モードの算術平均粒子径)を樹脂粒子の体積平均粒子径として算出する。
【0119】
得られた個数基準の粒度分布図と、算出された体積平均粒子径とから、体積平均粒子径の80%より小さい粒子径を持つ微小粒子と体積平均粒子径の120%より大きい粒子径を持つ粗大粒子とを除いた粒子の(全粒子に対する)個数割合、すなわち、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合(個数%)を算出する。
【0120】
〔種粒子の製造例1〕
容器中の純水(水性媒体)630gに、アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル(MMA)108gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン11gとを投入した。容器内部をN2(窒素ガス)パージ(容器内の空気をN2に置換)した後、55℃まで昇温した。
【0121】
その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.54gを純水100gに溶解した水溶液を容器に投入した。容器を再びN2パージした後、55℃で12時間重合を行い、体積平均粒子径が0.75μmの種粒子1(アクリル系樹脂粒子)をスラリーの状態で得た。
【0122】
〔種粒子の製造例2〕
容器中の純水(水性媒体)630gに、アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル(MMA)108gと、分子量調整剤としてのオクチルメルカプタン11gとを投入した。容器内部をN2パージした後、70℃まで昇温した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.54gを純水100gに溶解した水溶液を、容器に投入した。容器を再びN2パージした後、55℃で12時間重合を行い、体積平均粒子径が0.45μmの一次粒子(種粒子)をスラリーの状態で得た。
【0123】
容器に、イオン交換水650gと、アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル160gに分子量調整剤としてのオクチルメルカプタン3gを溶解させた溶液とを投入した。更に、一次粒子を含むスラリー(分散液)80gを加え、得られた分散液を攪拌しながら窒素気流中で70℃に昇温した。重合開始剤としての過硫酸アンモニウム0.8gをイオン交換水100gに溶解させた水溶液を続けて投入して、70℃で12時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、体積平均粒子径が1.1μmのポリメチルメタクリレート粒子からなる種粒子2をスラリーの状態で得た。
【0124】
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸n−ブチル28gと、スチレン系単量体としてのスチレン28gと、多官能(メタ)アクリル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解することで、重合性混合物を得た。
【0125】
上記重合性混合物とは別に、水性媒体としての純水80gに、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを溶解して、水溶液を得た。
【0126】
上記重合性混合物を上記水溶液に加えた後、得られた分散液を「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)を用いて攪拌回転数8000rpmで10分間処理して、乳化液を得た。上記乳化液を攪拌機及び温度計を備えた内容量1リットルの反応容器に入れた。この後、上記乳化液に、製造例1で得た種粒子1を含有するスラリー(種粒子1を14重量%含有)8.9gを添加して、混合物を得た。次いで、得られた混合物を攪拌機により攪拌回転数120rpmで4時間攪拌しつつ、種粒子1に重合性混合物を吸収させた。これにより、重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を得た。
【0127】
純水240gに、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤としての「フォスファノール(登録商標)LO−529」(東邦化学工業株式会社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム70重量%とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル20重量%と水10重量%との混合物)0.8gを添加して、界面活性剤水溶液を得た。得られた界面活性剤水溶液に、上記重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を添加した。添加後、上記重合性単量体を70℃で12時間重合させることで、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子表面に付着した界面活性剤を除去した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0128】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が90%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0129】
〔実施例2〕
(メタ)アクリル系単量体としてメタクリル酸n−ブチル28gに代えてアクリル酸n−ブチル28gを用いること以外は、実施例1と同様にして体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0130】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が85%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0131】
〔実施例3〕
メタクリル酸n−ブチル28gとスチレン28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体を、スチレン56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に代えること以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0132】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が86%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0133】
〔実施例4〕
重合時に、「フォスファノール(登録商標)LO529」に代えて、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬株式会社製の「ハイテノール(登録商標)NF−17」)を添加すること以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0134】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が88%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0135】
〔実施例5〕
(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸n−ブチル56gと、多官能(メタ)アクリル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に、重合開始剤としての2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解することで、重合性混合物を得た。
【0136】
上記重合性混合物とは別に、水性媒体としての純水80gに、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを溶解して、水溶液を得た。
【0137】
上記重合性混合物を上記水溶液に加えた後、得られた分散液を「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)を用いて攪拌回転数8000rpmで10分間処理して、乳化液を得た。上記乳化液を攪拌機及び温度計を備えた内容量1リットルの反応容器に入れた。この後、上記乳化液に、製造例1で得た種粒子1を含有するスラリー(種粒子1を14重量%含有)8.9gを添加して、混合物を得た。次いで、得られた混合物を攪拌機により攪拌回転数120rpmで4時間攪拌しつつ、種粒子に重合性混合物を吸収させた。これにより、重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を得た。
【0138】
純水240gに、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製の「フォスファノール(登録商標)LO529」)0.8gを添加して、界面活性剤水溶液を得た。得られた界面活性剤水溶液に、上記重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を添加した。添加後、上記重合性単量体を70℃で12時間重合させることで、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子表面に付着した界面活性剤を除去した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0139】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が91%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0140】
〔実施例6〕
メタクリル酸n−ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体を、メタクリル酸n−ブチル28gとアクリル酸n−ブチル28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に代えること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0141】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が88%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0142】
〔実施例7〕
重合時に、「フォスファノール(登録商標)LO529」に代えて、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬株式会社製の「ハイテノール(登録商標)NF−17」)を添加すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0143】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が90%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0144】
〔実施例8〕
重合時に、「フォスファノール(登録商標)LO529」に代えて、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製の「プライサーフ(登録商標)AL」)を添加すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0145】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が92%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0146】
〔実施例9〕
重合時に、「フォスファノール(登録商標)LO529」に代えて、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製の「プライサーフ(登録商標)A208F」)を添加すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0147】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が90%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0148】
〔実施例10〕
メタクリル酸n−ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体を、メタクリル酸n−ブチル32gとスチレン24gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に代え、種粒子1を含有するスラリーの使用量を3gとすること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が4μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0149】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が87%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0150】
〔実施例11〕
メタクリル酸n−ブチル56gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体を、メタクリル酸n−ブチル28gとアクリル酸n−ブチル28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に代え、種粒子1を含有するスラリー8.9gに代えて製造例2で得た種粒子2を含有するスラリー6gを使用すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が5.3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。
【0151】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が88%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0152】
〔実施例12〕
(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル32gと、スチレン系単量体としてのスチレン24gと、多官能(メタ)アクリル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる混合液(重合性単量体)に、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.4gを溶解して、重合性混合物を得た。
【0153】
上記重合性混合物とは別に、水性媒体としての純水80gに、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを溶解して、水溶液を得た。上記水溶液に上記の重合性混合物を混合し、「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)を用いて攪拌回転数8000rpmで10分間攪拌して、乳化液を得た。この乳化液を攪拌機及び温度計を備えた内容量1リットルの反応容器に入れ、製造例1で得た種粒子1を含有するスラリー8.9gを上記乳化液に添加して、混合物を得た。得られた混合物を攪拌機により4時間にわたって攪拌回転数120rpmで攪拌し、スラリー中で種粒子1を膨潤させた(種粒子1に重合性混合物を吸収させた)。
【0154】
膨潤終了後に、水性媒体としての純水240gと、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤としての「フォスファノール(登録商標)LO529」0.8gとを、膨潤させた種粒子を含むスラリーに添加して、上記重合性単量体を70℃で12時間重合させることで、体積平均粒子径3μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子表面に付着した界面活性剤を除去した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。
【0155】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が84%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0156】
〔比較例1〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えて「フォスファノール(登録商標)LO529」1.6gを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO529」を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
【0157】
しかしながら、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分であった。そのため、得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が80%であり、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分(吸収不足)であり、凝集粒子を含む樹脂粒子であることが認められた。得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0158】
〔比較例2〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gと「フォスファノール(登録商標)LO529」0.8gとを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO529」を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が2.8μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集が発生した。
【0159】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が81%であり、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分であり、凝集粒子を含む樹脂粒子であることが認められた。
【0160】
〔比較例3〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノール(登録商標)NF−17)0.8gを添加すること以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
【0161】
しかしながら、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分であるため、得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が76%であり、体積平均粒子径の80%より小さい粒子径を持つ小粒子の個数割合が多い樹脂粒子であった。
【0162】
〔比較例4〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えて「フォスファノール(登録商標)LO−529」0.8gを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO−529」0.8gに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを添加すること以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
【0163】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が78%であり、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分であり、さらに凝集粒子を含む樹脂粒子であることが認められた。
【0164】
〔比較例5〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えて「フォスファノール(登録商標)LO529」1.6gを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO529」を添加しないこと以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0165】
しかしながら、種粒子1への重合性混合物の吸収が不十分であった。そのため、得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が78%であり、体積平均粒子径の80%より小さい粒子径を持つ小粒子の個数割合が多い粒子であった。
【0166】
〔比較例6〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gと「フォスファノール(登録商標)LO529」0.8gとを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO529」を添加しないこと以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が2.8μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集が発生した。
【0167】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が74%であり、樹脂粒子の凝集体が発生していた。
【0168】
〔比較例7〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(ハイテノール(登録商標)NF−17)0.8gを添加すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が2.8μmの樹脂粒子を得た。
【0169】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が76%であり、小粒子が発生していた。
【0170】
〔比較例8〕
吸収時にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gに代えて「フォスファノール(登録商標)LO−529」0.8gを添加し、重合時に「フォスファノール(登録商標)LO−529」0.8gに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを添加すること以外は、実施例5と同様にして、体積平均粒子径が3.2μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集が発生した。
【0171】
得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が72%であり、小粒子が発生していると共に、更に粒子の凝集体も発生していた。
【0172】
〔比較例9〕
メタクリル酸n−ブチル28gとスチレン28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に、重合開始剤である2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解することで、重合性混合物を得た。
【0173】
上記重合性混合物とは別に、純水80gに、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを溶解して、水溶液を得た。
【0174】
上記重合性混合物を上記水溶液に加えた後、得られた分散液を「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)を用いて攪拌回転数8000rpmで10分間処理して、乳化液を得た。上記乳化液を攪拌機及び温度計を備えた内容量1リットルの反応容器に入れた。この後、上記乳化液に、製造例1で得た種粒子1を含有するスラリー3gを添加して、混合物を得た。次いで、得られた混合物を攪拌機により攪拌回転数120rpmで4時間攪拌しつつ、種粒子1に重合性混合物を吸収させた。これにより、重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を得た。
【0175】
純水240gに、水溶性高分子分散剤(水溶性有機分散剤)としてポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製GH−17)3.2gを添加して、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液に、上記重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を添加した。添加後、上記重合性単量体を70℃で12時間重合させることで、体積平均粒子径が4μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子を洗浄した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。樹脂粒子の乾燥体は、ポリビニルアルコールが残留しているため、強固に合着していた。
【0176】
解砕後に得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が89%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0177】
〔比較例10〕
メタクリル酸n−ブチル28gとアクリル酸n−ブチル28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとからなる重合性単量体に、重合開始剤である2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを溶解することで、重合性混合物を得た。
【0178】
上記重合性混合物とは別に、純水80gに、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.8gを溶解して、水溶液を得た。
【0179】
上記重合性混合物を上記水溶液に加えた後、得られた分散液を「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)を用いて攪拌回転数8000rpmで10分間処理して、乳化液を得た。上記乳化液を攪拌機及び温度計を備えた内容量1リットルの反応容器に入れた。この後、上記乳化液に、製造例1で得た種粒子1を含有するスラリー3gを添加して、混合物を得た。次いで、得られた混合物を攪拌機により攪拌回転数120rpmで4時間攪拌しつつ、種粒子1に重合性混合物を吸収させた。
【0180】
純水240gに、水溶性高分子分散剤(水溶性有機分散剤)としてポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製GH−17)3.2gを添加して、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液に、上記重合性混合物を吸収した種粒子1を含む溶液を添加した。添加後、上記重合性単量体を70℃で12時間重合させることで、体積平均粒子径が4μmの樹脂粒子を得た。重合後に凝集は発生しなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子を洗浄した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。樹脂粒子の乾燥体は、ポリビニルアルコールが残留しているため、強固に合着していた。
【0181】
解砕後に得られた樹脂粒子は、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が89%であり、粒子径が非常によく揃っていた。
【0182】
〔比較例11〕(無機分散剤を使用した樹脂粒子の製造例)
重合開始剤である2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを、メタクリル酸n−ブチル28gとスチレン28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合液(重合性単量体)に溶解し、溶液(重合性混合物)を得た。ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有するアニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム0.15gと、無機分散剤である複分解ピロリン酸マグネシウム15gとを含む水溶液520gに上記溶液を加え、「T.KホモミクサーMarkII2.5型」(プライミクス(登録商標)株式会社製の高速乳化・分散機)にて、液滴の体積平均粒子径が8μm程度となるよう1次懸濁液を調製した。次いで、高圧ホモジナイザー(「ナノマイザー(登録商標)LA−33」、ナノマイザー(登録商標)株式会社製)にノズル型プロセッサー(LNP−20/300)を接続して、1次懸濁液を300kg/cm2の圧力下、高圧ホモジナイザーに1回通して2次懸濁液を作った。この2次懸濁液を70℃で12時間懸濁重合させて、樹脂粒子を得た。樹脂粒子を含む懸濁液に塩酸を加えて、無機分散剤を水溶性塩に分解し、遠心脱水法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて樹脂粒子を洗浄した。さらに遠心脱水法で脱水した後、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。
【0183】
得られた樹脂粒子は、体積平均粒子径は3.3μmであり、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が68%であった。
【0184】
〔比較例12〕(マクロモノマー分散剤を使用した樹脂粒子の製造例)
内容量2Lの反応器に、メタノール635g及びイオン交換水225gと、マクロモノマー分散剤としてのメタクリル酸とメタクリル酸メチルとの共重合体(メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの組成比(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)=8/2、固有粘度〔η〕=0.493)の20重量%メタノール溶液50gと、メタクリル酸n−ブチル28gとスチレン28gとエチレングリコールジメタクリレート24gとの混合液(重合性単量体)とを加えて攪拌し、反応器内の空気を窒素置換した。次いで、反応器の内温を60℃に昇温して、重合開始剤である2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを加えて、重合反応を開始した。重合反応開始後数分で、反応液が濁り始め、樹脂粒子が生成したことを確認した。重合反応開始から30分後に、分子量調整剤であるn−ドデシルメルカプタンを0.5g加えた。更に、重合反応を継続し、重合反応開始から8時間後に反応系を冷却して、樹脂粒子を取り出した。取り出した樹脂粒子に凝集粒子やスケール(樹脂粒子の一部が分散不良となり壁面に付着したもの)はみられなかった。さらに、重合後の樹脂粒子を含む懸濁液を加圧ろ過法にて脱液した後、懸濁液中の固形分の12倍量のイオン交換水を加えて加圧ろ過することにより、樹脂粒子を洗浄した。その後、再度加圧して脱水し、60℃の恒温槽中で樹脂粒子を充分に乾燥して、樹脂粒子の乾燥体を得た。
得られた樹脂粒子は、体積平均粒子径は3.5μmであり、その体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合が92%であった。
【0185】
〔残存金属分の測定〕
実施例1、4、8、及び9の樹脂粒子と比較例11の樹脂粒子とについて、以下のICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析を用いた方法により残存金属(Mg)分を測定した。
【0186】
樹脂粒子を1.5g精秤し、450℃で3時間かけて灰化した。その後、灰化された樹脂粒子に濃塩酸2mlを加え、ろ過せずに蒸留水で25mlとなるように希釈し、測定試料とした。この測定試料について、ICP発光分光分析装置(セイコーインスツル株式会社製、「SPS−4000」)を用いて、測光高さ10.0mm、高周波出力1.30kw、キャリア流量1.0リットル/分、プラズマ流量16.0リットル/分、補助流量0.5リットル/分の条件で、残存金属(Mg)分の測定を行った。得られた結果を表2に示す。実施例1,4,8,9の樹脂粒子では、残存マグネシウムが1〜2ppmであったのに対し、分散剤としての複分解ピロリン酸マグネシウムを使用した比較例11の樹脂粒子では、複分解ピロリン酸マグネシウムに由来する残存マグネシウムが10ppmを超えていた。
【0187】
【表2】
【0188】
〔b*値の測定〕
実施例1〜12及び比較例9〜12の樹脂粒子について、以下の方法で色彩色差計によるb*値を測定した。樹脂粒子をアルミニウム製の容器にとり、150℃の恒温槽中で2時間加熱した。次いで、加熱後の樹脂粒子を乳鉢中で解砕し、解砕物を得た。得られた解砕物について、JIS Z 8729(「色の表示方法─L***表色系及びL***表色系」)に準拠してL***表色系にて色度測定を行うことにより、b*値を測定した。具体的には、上記解砕物2.5gを測定容器(コニカミノルタセンシング株式会社製粉体セル「CR−A50」)内に充填した。充填された解砕物のb*値を、色彩色度計(コニカミノルタセンシング株式会社製「CR−300」)により測定した。
【0189】
なお、比較例1〜8については、十分な単分散性を有する樹脂粒子が得られなかったため、b*値を測定しなかった。
【0190】
〔防眩フィルム用樹脂組成物の調製、及び防眩フィルムの作製〕
紫外線硬化型樹脂としてのペンタエリストールトリアクリレート及びペンタエリストールテトラアクリレートの混合物(商品名「アロニックス(登録商標)M−305」、東亞合成株式会社製)80重量部と、有機溶剤としてのトルエンとシクロペンタノンとの混合液(トルエンとシクロペンタノンとの体積比=7:3)120重量部と、実施例1〜11及び比較例9〜12にて製造した樹脂粒子5重量部と、光重合開始剤(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、商品名「イルガキュア(登録商標)907」、BASF(登録商標)ジャパン株式会社製)5重量部とを混合し、コーティング用組成物としての防眩フィルム用樹脂組成物を調製した。
【0191】
基材フィルムとして、透明プラスチックフィルムである厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。上記防眩フィルム用樹脂組成物を上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、バーコーターを用いて塗布することで、塗膜を形成した。次に、上記塗膜を80℃で1分間加熱することにより上記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて紫外線を積算光量300mJ/cm2で上記塗膜に照射することにより、上記塗膜を硬化させて防眩性ハードコート層を形成した。これにより、防眩フィルム(成形品)として、実施例1〜11及び比較例9〜12にて製造した樹脂粒子を含有した防眩性ハードコートフィルムを作製した。
【0192】
〔防眩フィルムの防眩性の評価〕
防眩フィルムを蛍光灯の真下に配置し、防眩性を目視にて評価した。評価基準は、蛍光灯の輪郭線がぼやけて見える場合を「◎」(非常に良い)、蛍光灯の輪郭線がややぼやけて見える場合を「○」(良い)、蛍光灯の輪郭線が見え、少し気になる場合を「△」(やや不良)、明瞭に蛍光灯の輪郭線が見える場合を「×」(不良)と評価した。
【0193】
〔防眩フィルムの全光線透過率及びヘイズの測定〕
防眩フィルムの全光線透過率は、JIS K 7361−1に従って測定し、防眩フィルムのヘイズ(ヘーズ)は、JIS K 7136に従って測定した。具体的には、防眩フィルムの全光線透過率及びヘイズは、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター(「NDH2000」)を使用して測定した。
【0194】
実施例1〜12及び比較例1〜12で使用した、重合性単量体の種類及び量、アニオン性界面活性剤又は分散剤の種類及び量、重合後の状態、並びに体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合と、実施例1〜12及び比較例9〜12の樹脂粒子のb*値と、実施例1〜11及び比較例9〜12の樹脂粒子を使用した防眩フィルムの防眩性の評価結果、ヘイズ、及び全光線透過率とを、下記表3に示す。
【0195】
表3中、(*1)及び(*2)はアニオン性界面活性剤又は分散剤を添加する時点を意味する。具体的には、(*1)は吸収時、(*2)は重合時、にそれぞれアニオン性界面活性剤又は分散剤を添加することを意味する。また、表3中、MMAはメタクリル酸メチルを意味し、BMAはメタクリル酸n−ブチルを意味し、BAはアクリル酸n−ブチルを意味し、Stはスチレンを意味し、EGはエチレングリコールジメタクリレートを意味する。また、表3中の「平均粒子径の80−120%の割合」は、体積平均粒子径の80%以上120%以下の粒子径を持つ粒子の個数割合を意味する。
【0196】
〔光拡散樹脂組成物及び光拡散板の作成〕
透明基材樹脂としてのメタクリル樹脂(住友化学株式会社製、商品名「スミペックス(登録商標)EX−A」)100重量部と、実施例1の樹脂粒子10重量部と、紫外線吸収剤(共同薬品株式会社製、商品名「バイオソーブ520」)1重量部と、加工安定剤(住友化学株式会社製、商品名「スミライザー(登録商標)GP」)1重量部と、ステアリルスルホン酸ナトリウム5重量部とをドライブレンドした後、ラボプラストミルで240℃で10分混練した後、冷却粉砕し、光拡散性樹脂組成物を得た。この光拡散性樹脂組成物には黄変はみられなかった。
【0197】
次に、この光拡散性樹脂組成物を射出成形機に供給して260℃で射出成形し、長さ100mm、幅50mm、厚さ2mmの光拡散板を得た。得られた光拡散板は、光拡散性を有し、黄変は見られなかった。
【0198】
一方で、実施例1の樹脂粒子に代えて比較例9で得られた樹脂粒子を用いる以外は、実施例1の樹脂粒子を用いた場合と同じ条件で、光拡散性樹脂組成物及び光拡散板を作成したところ、光拡散性樹脂組成物及び光拡散板に明らかな黄変が見られた。
【0199】
〔外用剤の作成〕
実施例1の樹脂粒子10重量部と、疎水性コロイダルシリカ3重量部と、タルク6重量部と、二酸化チタン3重量部と、顔料適量とをニーダーで混合し、粉末部を作成した。精製水60.2重量部に、ポリエチレングリコール5重量部、トリエタノールアミン1重量部、プロピレングリコール5重量部及びピーガム0.5重量部を混合し、加熱溶解し、溶液を得た。この溶液に上記粉末部を加え、ホモミクサーで粉末部を均一に分散させ、70℃に保温し、水相とした。ステアリン酸2重量部、セチルアルコール0.3重量部、流動パラフィン20重量部、ポリエチレングリコール(10モル付加)モノオレイン酸エステル1重量部、及びソルビタントリオレイン酸エステル1重量部に、香料及び防腐剤を適量加え、加熱溶解して70℃に保温し、油相とした。上記水相を上記油相に加え、ホモミクサーで均一に乳化及び分散した後、かきまぜながら冷却させてファンデーションを得た。得られたファンデーションは、官能評価において「滑らかさ」が良好であった。

【0200】
【表3】
【0201】
実施例1〜12では、ポリオキシエチレン鎖を有さずかつアルキル基を有する第1のアニオン性界面活性剤とポリオキシエチレン鎖を有する第2のアニオン性界面活性剤との2種のアニオン性界面活性剤を使用し、第1のアニオン性界面活性剤を吸収時に添加し、第2のアニオン性界面活性剤を重合時に添加することで、単分散性に優れ、加熱時の黄変のない樹脂粒子が得られた。
【0202】
比較例1、3、5及び7では、上記2種のアニオン性界面活性剤のうちの1種のアニオン性界面活性剤のみを使用したため、種粒子への重合性混合物の吸収が不十分であり、単分散性に優れた樹脂粒子が得られなかった。
【0203】
比較例2、4、6及び8では、アニオン性界面活性剤の使用時期を変更すると、吸収不十分であるために単分散性に優れた樹脂粒子が得られない(比較例4及び8)か、凝集粒子が発生した(比較例2及び6)。
【0204】
比較例9及び10では、水溶性高分子分散剤(ポリビニルアルコール)を使用していることから、樹脂粒子を150℃で2時間加熱したときに水溶性高分子分散剤(ポリビニルアルコール)に由来する黄変が樹脂粒子に生じていた。
【0205】
分散剤としての複分解ピロリン酸マグネシウムを使用した比較例11では、実施例と比較して防眩フィルムの防眩性が悪化した。これは、以下の理由による。すなわち、比較例11では、分散剤としての複分解ピロリン酸マグネシウムを使用したために、懸濁重合の懸濁液には複分解ピロリン酸マグネシウムが含まれる。上記懸濁液を塩酸等の酸を用いて酸洗浄することにより、複分解ピロリン酸マグネシウムを分解し、ある程度まで除去することが可能である。しかしながら、金属分(マグネシウム)を完全に除去することは困難であり、樹脂粒子表面に、10ppmを超える(微量な)金属分(マグネシウム)が残存する。そのため、2価のマグネシウムに起因するイオン結合により樹脂粒子がバインダー中で微凝集を起こし、防眩フィルムの防眩性が悪化する。なお、他の無機分散剤を用いた場合にも、同様の理由により、10ppmを超える金属分が樹脂粒子表面に残存するため、防眩フィルムの防眩性が悪化すると考えられる。
【0206】
分散剤としてのマクロモノマーを使用した比較例12では、実施例と比較して防眩フィルムの全光線透過率及びヘイズが悪化した。これは、比較例12では、分散剤としてのマクロモノマーを使用したために、マクロモノマー中に含まれるメタクリル酸の共重合部位が一部結晶化して、樹脂粒子中に白濁を発生させたからである。
【0207】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0208】
また、この出願は、2010年9月28日に日本で出願された特願2010−217613、及び2010年9月28日に日本で出願された特願2010−217620に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
図1
図2
図3
図4