(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転するシャフトと前記シャフトに設けられた扇形状を有する複数列のパドルとからなる攪拌搬送機構によって、汚泥を攪拌及び搬送しながら乾燥させる汚泥乾燥装置であって、
前記複数列のパドルの少なくとも一部が、前記少なくとも一部のパドルの中央位置を通る中心軸周りに傾いており、
前記複数列のパドルには、前記パドルの中心軸を中心とする一の回転方向に傾いた送りパドルと、前記パドルの中心軸を中心とする前記一の回転方向とは逆の方向に傾いた戻しパドルとが含まれ、
前記複数列には、同一列に前記送りパドルと前記戻しパドルとを含む攪拌列が含まれることを特徴とする汚泥乾燥装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の汚泥乾燥装置(間接式水蒸気加熱式汚泥乾燥装置)の攪拌搬送機構では、特に、乾燥すべき汚泥が粘性の高い有機性の汚泥である場合には、シャフトやパドルに汚泥が付着するという問題が生じていた。シャフトやパドルに汚泥が付着すると、汚泥全体への伝熱速度が低下して、乾燥効率が低下してしまう。甚だしい場合には、複数列のパドルの間に汚泥が堆積して、攪拌搬送機構が全体として一本の丸棒状になり、操作不能となることもあった。
【0008】
本発明は、汚泥を攪拌しながら搬送する汚泥乾燥装置において、乾燥効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の汚泥乾燥装置は、回転するシャフトと前記シャフトに設けられた扇形状を有する複数列のパドルとからなる攪拌搬送機構によって、汚泥を攪拌及び搬送しながら乾燥させる汚泥乾燥装置であって、前記複数列のパドルの少なくとも一部が、前記少なくとも一部のパドルの中心を通って前記シャフトの中心軸と交わる仮想軸周りに傾いており、かつ、前記複数列のパドルには、法線方向が互いに平行でない複数のパドルが含まれる。
【0010】
この構成によれば、複数列のパドルが設けられたシャフトが回転することで、隣り合うパドルどうしの間の空間体積が増減するので、汚泥がパドル間の空間から押し出されたり該空間に入ったりする動作が促進され、それによってパドルやシャフトへの汚泥の付着を防止して、乾燥効率を向上できる。なお、パドルが平面形状でない場合には、それを平面形状に近似することで、その法線方向を確定できる。
【0011】
上記の汚泥乾燥装置において、前記仮想軸は、前記シャフトの中心軸と垂直であってよい。この構成によれば、シャフトの回転によってパドルが送り作用又は戻り作用を有効に発揮できる。
【0012】
上記の汚泥乾燥装置において、前記仮想軸は、前記少なくとも一部のパドルと平行であってよい。この構成によれば、パドルの面がシャフトの中心軸に垂直になり、シャフトの回転によってパドルが送り作用又は戻り作用を有効に発揮できる。
【0013】
また、上記の汚泥乾燥装置において、複数の前記パドルのうちの一部は、前記仮想軸を中心とする一の回転方向に傾いているとともに、複数の前記パドルのうちの他の一部は、前記仮想軸を中心とする前記一の回転方向とは逆の方向に傾いていてよい。
【0014】
この構成によれば、シャフトの回転によって汚泥を搬送方向に送るパドルと、シャフトの回転によって汚泥を搬送方向とは逆の方向に戻すパドルとが存在するので、汚泥の攪拌効果を向上できる。
【0015】
また、上記の汚泥乾燥装置において、前記汚泥搬送機構は、同一列に複数の前記パドルを有し、同一列の前記複数のパドルがすべて前記仮想軸を中心として同一の回転方向に傾いている列と、同一列の前記複数のパドルが前記仮想軸を中心として互いに異なる回転方向に傾いている列とを有していてよい。
【0016】
この構成により、同一列に、シャフトの回転によって汚泥を搬送方向に送る送りパドルとシャフトの回転によって汚泥を搬送方向とは逆の方向に戻す戻しパドルとを有する攪拌列と、同一列に送りパドルのみを有する送り列又は同一列に戻しパドルのみを有する戻し列とが存在するので、汚泥の攪拌効果を向上できる。
【0017】
また、上記の汚泥乾燥装置において、前記シャフトは、その延伸方向の一端から他端まで連通し、熱媒体を流通させるためのシャフト内部空間を有していてよく、前記パドルは、前記シャフト内部空間と連通するパドル内部空間を有していてよく、前記シャフト内部空間と前記パドル内部空間とは、前記パドルの中央位置で連通していてよい。
【0018】
この構成によれば、パドル内部空間がパドルの中央位置でシャフト内部空間と連通するので、パドルは、パドル内部空間とシャフト内部空間との連通を保ちながら、シャフトに対して任意の角度で傾いたパドルを、シャフトに対して取り付けることができる。
【0019】
また、上記の汚泥乾燥装置において、前記パドル内部空間と前記シャフト内部空間とは、内側が前記シャフト内部空間から前記パドル内部空間に前記熱媒体を流通させ、外側が前記パドル内部空間から前記シャフト内部空間に前記熱媒体を流通させる二重管によって連通していてよい。
【0020】
この構成によれば、シャフト内部空間からパドル内部空間に熱媒体を流通させる供給経路と、パドル内部空間からシャフト内部空間に熱媒体を流通させる排出経路とを分けることができるので、パドル内部空間に効率よく熱媒体を供給できる。また、外側を排出経路とするので、パドル内部空間に供給される熱媒体が水蒸気である場合に、パドル内部空間でその水蒸気の温度が低下して液体となった場合にも、その液体を供給経路に逆流させることなく、供給経路の外側にて回収できる。
【0021】
また、蒸気の汚泥乾燥装置において、前記パドル内部空間と前記シャフト内部空間とは、前記シャフト内部空間から前記パドル内部空間への供給経路となる供給管と、前記供給管と平行に設けられた、前記パドル内部空間から前記シャフト内部空間への排出経路となる排出管とによって連通していてよい。
【0022】
この構成によっても、シャフト内部空間からパドル内部空間に熱媒体を流通させる供給経路と、パドル内部空間からシャフト内部空間に熱媒体を流通させる排出経路とを分けることができるので、パドル内部空間に効率よく熱媒体を供給できる。
【0023】
また、上記の汚泥乾燥装置は、複数の前記攪拌搬送機構を有していてよく、前記複数の攪拌搬送機構は、前記シャフトの延伸方向に隣接するパドルの間に、隣接する他の前記攪拌搬送機構のパドルが位置するように、配置されてよい。
【0024】
この構成によれば、攪拌搬送機構のパドルの間に位置する汚泥が、隣接する他の攪拌搬送機構のパドルによって攪拌されるので、攪拌効率が向上する。
【0025】
前記複数の攪拌搬送機構の前記シャフトの回転速度が互いに異なっていてよい。この構成によれば、一方の攪拌搬送機構のパドルと他方の攪拌搬送機構のパドルとの間の距離が変化し、汚泥に対して不均一な力を働かせることができるので、パドルからの汚泥の剥離性がよくなる。
【0026】
前記攪拌搬送機構の下に汚泥受けが設けられてよく、前記攪拌搬送機構の排出側に、前記汚泥受けから立ち上がる高さ調節可能な汚泥堰が設けられてよい。この構成によれば、排出する乾燥汚泥の含水率を調整できる。
【0027】
本発明の別の態様は、汚泥乾燥システムであり、この汚泥乾燥システムは、上記の汚泥乾燥装置と、前記汚泥乾燥装置に汚泥を供給する汚泥供給機構と、前記汚泥乾燥装置から乾燥された汚泥を排出する汚泥排出機構とを備えている。汚泥乾燥システムは、さらに、前記汚泥乾燥装置から排出された循環気を加熱した後に、前記汚泥乾燥装置に戻すための排気循環機構を備えていてよい。汚泥乾燥システムは、さらに、循環気を前記汚泥乾燥装置に戻す前に減湿するスクラバ方式若しくは間接式の減湿装置を備えていてもよい。
【0028】
この汚泥乾燥システムによっても、複数列のパドルが設けられたシャフトが回転することで、隣り合うパドルどうしの間の空間体積が増減するので、それによってパドルやシャフトへの汚泥の付着を防止して、乾燥効率を向上できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数列のパドルが設けられたシャフトが回転することで、隣り合うパドルどうしの間の空間体積が増減するので、それによって汚泥の付着を防止して、乾燥効率を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、それぞれの実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置を含む汚泥乾燥システムの全体構成を示す概略図である。汚泥乾燥システム100は、汚泥乾燥装置10を備えている。本実施の形態の汚泥乾燥装置10で乾燥される汚泥は、脱水処理を経た後に、含水率約80%になった脱水汚泥である。脱水汚泥は、汚泥乾燥装置10で乾燥されることにより、含水率が30%程度まで低下した乾燥汚泥となる。なお、本発明の汚泥乾燥システムは、下水混合生汚泥、下水消化汚泥、有機汚泥、無機汚泥、その他の汚泥等の各種の汚泥を乾燥でき、下水処理場や各種の汚泥処理場に適用可能である。また、本発明の汚泥乾燥装置は、含水率を30%程度にまで低下させなければならないものではなく、各用途に応じて、処理対象となる汚泥の含水率を低下させるものであればよい。さらに、本発明の汚泥乾燥装置にて処理される汚泥も含水率80%の汚泥に限られず、含水率がそれより高い汚泥、及び含水率がそれより低い汚泥も、本発明の汚泥乾燥装置の処理対象となる。
【0033】
汚泥乾燥システム100は、汚泥乾燥装置10と、サイクロン81と、減湿塔82と、減湿塔循環ポンプ83と、循環ファン84と、ミストセパレータ85と、予熱器86とを備えている。汚泥乾燥装置10には、ケーシング11によって乾燥室が形成されている。汚泥乾燥装置10のケーシング11には、乾燥室に汚泥を供給するための汚泥供給口111と、乾燥室から乾燥された汚泥を排出するための乾燥汚泥排出口114とが形成される。また、汚泥乾燥装置10のケーシング11には、乾燥室に循環気を供給するための循環気供給口113と、加湿された循環気を乾燥室から排出するための循環気排出口112とが形成されている。
【0034】
汚泥乾燥装置10にて処理する汚泥は、汚泥乾燥装置に汚泥を供給する汚泥供給機構によって汚泥供給口111から乾燥室内に供給されて、乾燥室で水分を除去された後に、汚泥排出口114から排出されて、汚泥排出機構によって系外に排出される。汚泥供給機構は、汚泥を搬送する汚泥コンベアや汚泥を汲み上げる汚泥ポンプであってよく、汚泥排出機構は乾燥した汚泥を搬送する乾燥汚泥コンベアであってよい。また、循環気は、循環気供給口113から乾燥室内に供給され、乾燥室で汚泥から蒸発した水蒸気を含んで、循環気排出口112から排出される。
【0035】
循環気排出口112から排出された循環気は、循環気管911を通ってサイクロン81に供給される。サイクロン81で不純物を取り除かれた循環気はさらに、循環気管912を通って減湿塔82に供給される。循環気は減湿塔82で減湿される。また、減湿塔82に溜まった水は、一部は上述のように循環水路921に排出され、一部は減湿塔排水管925を通って系外に排出される。循環水路921に排出された循環水は、循環水路921、減湿塔循環ポンプ83、及び循環水路922によって循環して減湿塔82に供給され、循環気から水分を除去する。減湿塔82には、さらに減湿塔給水管926を通して水が供給される。減湿塔82で減湿された循環気は、循環気管913を通って循環ファン84に送られる。循環ファン84は、循環気管914を通して循環気を循環方向に流す。
【0036】
循環ファン84の循環方向の先には、ミストセパレータ85が設けられている。ミストセパレータ85は、循環気中の塵埃や水滴を捕集し除去する。ミストセパレータ85によって浄化された循環気の一部は、循環気管915を通って、ケーシング11に設けられた循環気供給口113を介してケーシング11の内部の乾燥室に戻される。
【0037】
循環気管915には、予熱器86が設けられており、循環してきた循環気は予熱器86によって加熱された上で乾燥室に戻される。循環気の一部は、排気管916を通って汚泥乾燥システム100の外部に排出される。これらのサイクロン81、減湿塔82、循環ファン84、ミストセパレータ85、予熱器86、及びそれらをつなぐ循環気管911〜915からなる構成は、排気循環機構に相当する。このように、汚泥を乾燥する過程で発生する水蒸気を循環気によって効率的に乾燥室から排出して、高温低湿の空気を乾燥室に戻すことで、汚泥の乾燥を促進できる。
【0038】
汚泥乾燥装置10のケーシング11の内部(乾燥室)には、シャフト21とそのシャフト21に取り付けられた複数列のパドル22からなる攪拌搬送機構20(
図3参照)が設けられている。この攪拌搬送機構20によって、汚泥は攪拌されながら供給側から排出側に搬送される。攪拌搬送機構20には、熱媒体としての蒸気が供給され、その熱によって、攪拌されながら搬送される汚泥は加熱されて、乾燥する。
【0039】
攪拌搬送機構20には、蒸気が供給される蒸気供給口211及び蒸気ないし凝縮水を排出する蒸気排出口212が形成されている。攪拌搬送機構20には蒸気管923を通って蒸気が供給され、蒸気排出口212から蒸気ドレイン管924を通って蒸気ないし凝縮水が系外に排出される。なお、蒸気供給口211に蒸気を供給する蒸気管923は予熱器86にも延びており、予熱器86に蒸気を供給する。予熱器86から排出される蒸気ないし凝縮水は、蒸気ドレイン管927を通って系外に排出される。
【0040】
以上の構成によって、汚泥乾燥システム100では、汚泥供給機構によって汚泥供給口111からケーシング11内に汚泥が供給される。ケーシング111内に供給された汚泥は、攪拌搬送機構20によって、攪拌、搬送されながら加熱され、汚泥に含まれる水分が蒸発する。汚泥は、乾燥して乾燥汚泥となって乾燥汚泥排出口114からケーシング11外に排出され、汚泥排出機構によって系外に排出される。汚泥から蒸発した水蒸気を含む循環気は、ケーシング11外に排出され、減湿、浄化、予熱の作用を受けて再びケーシング11内に戻される。
【0041】
図2、
図3、
図4は、それぞれ本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置の平面図、正面図、側面図である。
図3では、ケーシング11の正面側を除いて、その内部の構造を示している。さらに、
図5、
図6(a)は、それぞれ
図3のA−A断面図、B−B断面図である。以下、
図2〜6を参照して、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置10を詳細に説明する。
【0042】
汚泥乾燥装置10は、ケーシング11と、その内部に備えられた2つの攪拌搬送機構20とを有する。ケーシング11は、概ね直方体形状を有している。ケーシング11によってその内部に乾燥室が形成される。攪拌搬送機構20は、ケーシング11の内部の下方に設けられる。攪拌搬送機構20は、シャフト21とその周りに設けられた複数列のパドル22を備えている。
【0043】
攪拌搬送機構20は、シャフト21の延伸方向がケーシング11の長手方向と平行になるように設けられている。シャフト21が回転することによってケーシング11内の汚泥はパドル21によって攪拌されながら搬送される。
図2及び
図3の例では、汚泥は、右側から供給されてから左向きに搬送されてケーシング11の左側から排出される。
【0044】
シャフト21は、供給側及び排出側の両側で、ケーシング11を貫通している。ケーシング11から突き出たシャフト21の一端(
図2及び
図3の例では排出側)には、シャフト21を回転可能に保持する軸受け12が設けられ、他端(
図2及び
図3の例では供給側)には、シャフト21を支持するとともに回転駆動する駆動機構13が設けられる。
【0045】
シャフト21は中空であり、かつ、各列のパドル22も中空に形成される。シャフト21の内部空間であるシャフト内部空間210とパドル22の内部空間であるパドル内部空間220(
図7(c)参照)は連通している。シャフト内部空間210の一端の蒸気供給口211から熱媒体としての水蒸気が供給され、他端の蒸気排出口212から水蒸気ないし凝縮水が排出される。シャフト内部空間210に供給された水蒸気は、シャフト内部空間210から各列のパドル22のパドル内部空間220にも流通して排出される。
【0046】
このような水蒸気の流通によって、シャフト21及びパドル22の表面が熱せられる。汚泥は、攪拌されながらシャフト21やパドル22に接触することで熱せられ、これによって、汚泥に含まれる水分が蒸発する。このようにして、汚泥は、攪拌搬送機構20によって搬送される過程で徐々に水分を失って乾燥する。
【0047】
図2及び
図3に示すように汚泥乾燥装置10のケーシング11の上面右側には、汚泥供給口111が形成されている。汚泥供給口111の左側には循環気排出口112が形成される。循環気排出口112の左側には、2つの攪拌搬送機構20に対応して、ケーシング11によって形成される乾燥室を開放するための4列のケーシングカバー115が設けられる。各列は、2つのケーシングカバー115を有する。ケーシングカバー115を開けることにより、攪拌搬送機構20の洗浄、修理や、後述するパドル22の取替えを行うことができる。
【0048】
ケーシング11の左側(排出側)側面には、循環気吸気口113が形成されている。また、ケーシング11の排出側下方には、乾燥汚泥を排出するための乾燥汚泥排出口114が形成されている。ケーシング11の攪拌搬送機構20に対応する部分の底面116は、搬送される汚泥を受ける汚泥受けとして機能する。底面116は、パドル22の形状に合わせて、断面が円弧形状になるように形成されている。本実施の形態の汚泥乾燥装置10は、2つの攪拌搬送機構20を有するので、底面116は、これらの2つの攪拌搬送機構20のパドル22の形状に合わせて、断面がω形状に形成されている(
図4参照)。
【0049】
各攪拌搬送機構20では、円筒状のシャフト21の表面に、複数列のパドル21が取り付けられている。各パドル22は、扇形状を有している。本実施の形態では、各パドル22の中心角は180度より小さい150度(同一列に設けられた2枚のパドル22の左右それぞれの間の角度は30度)であり(
図7(b)参照)、シャフト21の各列には2枚のパドル22が取り付けられている。なお、パドル22の中心角は、汚泥の粘度等の諸条件に応じて120〜160度(同一列に設けられた2枚のパドル22の左右それぞれの間の角度は20〜60度)で適切な角度が選択される。
【0050】
2本のシャフト21の端部は、それぞれ、ケーシング11の側面を貫通し、ケーシング11の側面の外側で、回転可能に支持されている。シャフト21の供給側端(
図2及び
図3の右側)には、駆動機構13が設けられている。駆動機構13は、モータ131と、モータ131の出力を減速させる減速機132と、減速機132の出力軸に設けられたスプロケット133と、排出側から見て左側(
図2及び
図3の上側)のシャフト21の端部に設けられたスプロケット134と、モータ側のスプロケット133とシャフト側のスプロケット134とに架けられたドライブチェーン135とを有する。
【0051】
駆動機構13は、さらにギアケース136内に設けられたギア1361を含む。ギアケース136内には、2本のシャフト21にそれぞれギア1361が固定されており、ギア1361は回転を伝達可能に連結している。左側のシャフト21の回転はそのギア1361を介して、右側のシャフト21のギア1361に伝達され、これによって2本のシャフトはそれぞれ異なる回転方向に回転する。
【0052】
この駆動機構13の構成によって、モータ131の回転が、減速機132、スプロケット133、ドライブチェーン135、スプロケット134と順に伝達されて、左側のシャフト21が回転する。また、この左側のシャフト21の回転は、ギアケース36内のギア1361を介して、右側のシャフト21に伝達される。ここで、左右のシャフト21のギア1361のギア比は1:1ではなく、例えば、4:5とされる。よって、2本のシャフト21は、それぞれ異なった回転速度で回転する。
【0053】
汚泥供給口111からケーシング11内の乾燥室に供給された汚泥は、攪拌搬送機構20の回転によって、供給側から排出側に搬送されて、乾燥汚泥排出口114から排出される。乾燥汚泥排出口114の手前には高さ調節可能な汚泥堰31を含む排出調整機構30が設けられる。この汚泥堰31を乗り越えた乾燥汚泥が乾燥汚泥排出口114から排出される。
【0054】
図5に示すように、各シャフト21の各列には、2枚の扇形状のパドル22が取り付けられる。また、上述のように、本実施の形態の各パドル22の中心角は150度であり、同一列に設けられた2枚のパドル22の左右それぞれの間の角度は30度である。また、
図6に示すように、各シャフト21の各列のパドル22のシャフト21の延伸方向の位置は互いにずれており、一方の攪拌搬送機構20のシャフト21の延伸方向に隣り合うパドル22の間に、他方の攪拌搬送機構20のパドル22が位置する。
【0055】
また、
図5に示すように、シャフト21の外周の半径をr
1、パドル22の外側の弧の半径をr
2、2本のシャフト21の中心間距離をLとすると、r
2+r
1<L<2r
2が成立する。この構成によって、側面方向で見たときに、一方の攪拌搬送機構20のパドル22と他方の攪拌搬送機構20のパドル22とは一部が重なっているが、一方の攪拌搬送機構20のパドル22が他方の攪拌搬送機構20のシャフト21に干渉することはない。
【0056】
図6に示すように、パドル22は、シャフト21の延伸方向に対して傾斜して取り付けられている。すなわち、パドル22の法線方向は、シャフト21の延伸方向と一致しない。複数のパドル22は、シャフト21に対してすべて一様に傾斜しているわけではない。この点について説明する前に、
図7を参照して、パドル22の詳細を説明する。
図7(a)、(b)、(c)は、それぞれパドル22の平面図、正面図、C−C断面図である。
図7(a)〜(c)は、いずれもシャフト21に取り付けられた状態のパドル22を示している。
【0057】
上述のように、パドル22は、150度の中心角を有する扇形状を有する。パドル22は、取付台座221を介してシャフト21の表面に取り付けられる。パドル22は、取付台座221に対して固定されている。取付台座221は、内側面がシャフト21の表面に沿う形状を有し、外側面がパドル22の内側の円弧の形状に沿う形状を有し、若干湾曲した矩形の板状部材である。このパドル22とその取付台座221との組を以下、「パドルユニット」という。パドルユニットは、取付台座221の四隅がボルト222によってシャフト21に固定されることで、シャフト21に取り付けられる。
【0058】
パドルユニットがシャフト21に取り付けられた状態で、パドル22は、パドル22の中心を通ってシャフト21の中心軸と交わる仮想軸a周りに傾いている。本実施の形態では、この仮想軸aは、シャフト21の中心軸に垂直に交わっており、かつ、パドル22と平行である。すなわち、仮想軸aはパドル22の中心軸と一致し、パドル22は、その中心軸がシャフト21の中心軸と垂直であり、その中心軸周りに傾いている。
【0059】
また、パドルユニットがシャフト21に取り付けられた状態で、パドル22は、その中心軸aを回転中心として、パドル22の法線がシャフト21の中心軸(延伸方向)に対して3度傾いている。取付台座221とパドル22とは固定されており、取付台座221をシャフト21の所定の取付位置に取り付けることで、このようなシャフト21に対するパドル22の傾斜が実現される。
【0060】
なお、パドルユニットは、パドル22の傾き角度ごとに、複数種類用意されてよい。ある種類のパドルユニットは、パドルの傾き角度が2度、4度、又はそれ以外の角度であってもよい。パドル22の傾き角度は2〜10度程度であってよく、より好ましくは3〜8度程度である。パドル22の傾き角度は、汚泥の粘性、回転速度、乾燥汚泥の目標含水率等の諸条件に応じて、適切なものを選択することができる。
【0061】
ボルト222によって取付台座221をシャフト21に固定することでパドルユニットをシャフト21に取り付けることができるので、パドルユニットのシャフト21からの取り外しやシャフト21への取り付けが容易である。また、使用によってパドル22が磨耗した場合にもパドル22を取り替える必要があるが、この場合にも、例えば溶接でパドル22をシャフト21に固定する場合と比較して、格段に容易にパドル22を交換できる。
【0062】
上述のようにパドル22は中空形状であり、パドル内部空間220はシャフト内部空間210と連通している。パドル内部空間220とシャフト内部空間210とは、二重管223を介して連通している。二重管223は、シャフト内部空間210から、シャフト21の表面及び取付台座221の中央部分を貫通して、パドル22の中央位置でパドル内部空間220に通じている。すなわち、パドル22がシャフト21に取り付けられた状態で、二重管223の軸とパドル22の中心軸aは一致する。
【0063】
シャフト内部空間210内の水蒸気は、二重管223の内管を通ってパドル内部空間220に供給され、パドル内部空間220で冷却された水蒸気ないしは冷却されて生じた凝縮水は、二重管223の外管を通ってシャフト内部空間210に戻される。パドル内部空間220では、二重管223の内管の高さは外管の高さより高い。外管の高さは、パドル内部空間220の底面の高さと一致する。冷却されて生じた凝縮水が、パドル22が回転することで、パドル内部空間220の底面を伝ってパドル内部空間の中央に向けて流れると、内管はパドル内部空間220の底面よりも高く形成されているので、凝縮水は内管に逆流することなく、外管からシャフト内部空間210に戻される。
【0064】
上述のように、パドル22の傾き角度が異なる複数種類のパドルユニットが用意されてよいが、いずれのパドルユニットにおいても、その傾きの回転中心で、シャフト内部空間210とパドル内部空間220とが連通しているので、パドル22の傾き角度にかかわらず、シャフト内部空間210とパドル内部空間220との連通を確保できる。
【0065】
すなわち、仮に、パドル22の一端側に水蒸気の供給経路を設け、他端側に水蒸気(又は水)の排出経路を設けるとすれば、パドル22のシャフト21に対する傾き角度は、それらの供給経路及び排出経路の位置に拘束されてしまうので、パドル22のシャフト21に対する任意の傾き角度を実現することはできない。これに対して、本実施の形態では、シャフト内部空間210からパドル内部空間220への水蒸気の供給経路と、パドル内部空間220からシャフト内部空間210への水蒸気(又は水)の排出経路とをいずれもパドルの中央の1箇所に設けているので、この供給経路と排出経路を利用した様々な傾き角度のパドル22をシャフト21に取り付けることが可能である。
【0066】
なお、上記の例のパドルユニットでは、パドル22が取付台座22に固定されており、回転不能であり、パドル22の傾き角度が異なる複数種類のパドルユニットが準備されてよいことを説明したが、パドル22が取付台座221に対してパドル22の中心軸周りに回転可能であり、任意の傾き角度で取付台座221に対して固定されてもよい。これによれば、1つのパドルユニットで傾き角度を変更でき、傾き角度の異なる複数種類のパドルユニットを設ける必要がなくなる。
【0067】
また、上記の例では、シャフト内部空間210とパドル内部空間220とを連通させるのに二重管223を用いたが、シャフト内部空間210からパドル内部空間220への供給経路となる供給管とパドル内部空間220からシャフト内部空間210への排出経路となる排出管とを並行に設けてもよい。この場合にも、パドルの中央位置にて供給管と排出管を設けることで、様々な傾き角度のパドル22をシャフト21に取り付けることが可能である。
【0068】
次に複数のパドル22の傾きの方向について説明する。
図6(a)に示すように、複数のパドル22の傾きの方向は一様ではない。
図6(b)は、排出側から見て左側(
図4の左側あるいは
図6(a)の上側)のシャフト21が
図6(a)の状態から90度回転した状態を示している。なお、本実施の形態では、傾き角度はいずれも3度としているが、この傾き角度も複数のパドル22のすべてにおいて一様でなくてもよい。
【0069】
まず、排出側から見て左側(
図4の左側あるいは
図6(a)の上側)の攪拌搬送機構20について説明する。パドル22は、各列に2枚ずつ取り付けられる。それぞれ2枚のパドル22を有する複数の列は、
図6にてパドル22の符号に「a」を含む第1のグループと、パドル22の符号に「b」を含む第2のグループとに分けられる。第1のグループと第2のグループとは、パネル22の取付角度がシャフト21の回転方向に90度ずれている。すなわち、各列は、シャフト21の回転方向の取付角度によって2つのグループに分けられる。
図6の例では、左から奇数番目の列が第1グループの列であり、左から偶数番目の列が第2グループの列である。すなわち、第1グループに属する列と第2グループに属する列とが交互に配置されている。
【0070】
また、複数のパドル22は、符号に「l」を含む第3のグループと、符号に「r」を含む第4のグループとに分けられる。第3のグループは、パドル22の中心軸周りに反時計回りに傾いており、第4のグループは、パドル22の中心軸周りに時計回りに傾いている。すなわち、複数のパネル22は、パドル22の中心軸周りの回転方向によって2つのグループに分けられる。
【0071】
また、複数列のパドル22は、パドル22の中心軸周りの回転方向が、同一列の他のパドル22と同じである列と、互いに異なる列とがある。本実施の形態では、第1のグループは、パドル22の中心軸周りの回転方向が、同一列の他のパドル22と同じである列であり、第2のグループは、パドル22の中心軸周りの回転方向が、同一列の他のパドル22と異なる列である。
【0072】
本実施の形態では、左側のシャフト21は、排出側からみて時計回りに回転するので、符号に「l」を含む第3のグループのパドル22は汚泥を送り方向(
図6の左向き)に押すよう作用し、符号に「r」を含む第4のグループのパドル22は汚泥を戻し方向(
図6の右向き)に戻すよう作用する。以下、送り作用のあるパドル22を「送りパドル」、戻し作用のあるパドル22を「戻しパドル」ともいう。符号に「a」を含む列の2枚のパドル22は、いずれも送りパドルであるか、又はいずれもが戻しパドルであり、符号に「b」を含む列の2枚のパドル22は、一方が送りパドルであり、他方が戻しパドルである。パドル22al、パドル22ar、パドル22bl、パドル22brは、いずれも法線方向がシャフト21の延伸方向と非平行である。
【0073】
以下、供給側から排出側に向けて、第1列、第2列、・・・と呼ぶ。左側の攪拌搬送機構20では、第1列は送りパドルと送りパドルの組を有し(以下、「送り列」という。)、第2列は送りパドルと戻しパドルの組を有し(以下、「攪拌列」という。)、第3列は戻しパドルと戻しパドルの組を有する(以下、「戻し列」という。)。第4列は送りパドルと戻しパドルの組からなる攪拌列であり、第5列は送りパドルと送りパドルの組からなる送り列であり、第6列は戻しパドルと送りパドルの組からなる攪拌列であり、以降の列はこれの繰り返しである。すなわち、複数のパドル22の向きの組み合わせパターンは、シャフト21の延伸方向に所定の周期(本実施の形態では6列周期)で繰り返されている。なお、このパドル22の傾きパターンは、上記の例に限られず、汚泥の粘度等の諸条件に応じて設計されてよい。
【0074】
排出側から見て右側(
図4の右側あるいは
図6(a)の下側)の攪拌搬送機構20においても、左側の攪拌搬送機構20と同様の構成を有する。すなわち、右側の攪拌搬送機構20でも、奇数列と偶数列とでは、パネル22の取付角度がシャフト21の回転方向に90度ずれている。また、奇数列は、同一列の2枚のパドル22の傾斜方向が同一である送り列又は戻し列であり、偶数列は、同一列の2枚のパドルの傾斜方向が互いに異なる攪拌列である。右側の攪拌搬送機構20の複数の列は、左端の第1列から順に、戻し列、攪拌列、送り列、攪拌列、戻し列、攪拌列となっており、以降はこれを繰り返し単位として、この繰り返し単位が繰り返される。
【0075】
さらに、
図6の上下の攪拌搬送機構20、すなわち、使用状態で
図5に示すように左右に並ぶ2つの攪拌搬送機構20を同時に見ると、一方の攪拌搬送機構20のパドル22の間に他方の攪拌搬送機構20のパドル22が入り込むようにして、左右両側のパドル22が互い違いとなるので、供給側(
図6の左側)から、送り列、戻し列、攪拌列、攪拌列、戻し列、送り列、攪拌列、攪拌列、送り列、戻し列、攪拌列、攪拌列となり、以降はこれの繰り返しである。すなわち、左側の送り列のパドルと右側の戻し列のパドルとが隣り合い、左側の戻し列のパドルと右側の送り列のパドルとが隣り合うことになる。
【0076】
すなわち、隣り合うパドルの間にできる空間を攪拌搬送空間と呼ぶと、この攪拌搬送空間を形成する隣り合うパドルの法線方向は非平行である。一方の攪拌搬送機構20の隣り合うパドル22によって形成される攪拌搬送空間が、シャフト21の回転によって徐々に狭くなる箇所では、その攪拌搬送空間から汚泥が押し出される。ここに他方側の攪拌搬送機構20のパドル22が存在するので、攪拌搬送空間から押し出された汚泥は、この反対側の攪拌搬送機構20のパドル22によって効率的に攪拌される。また、2本のシャフト21のそれぞれのパドル22は、入れ子になって隣り合うので、パドル22から汚泥が掻き取られて、パドル22からの汚泥の剥離性がよくなる。
【0077】
さらに、本実施の形態の汚泥乾燥装置10では、上述のように、左右の攪拌搬送機構20におけるシャフト21の回転速度が互いに異なるので、左右の攪拌搬送機構20のパドル22どうしの近接距離がランダムに変化し、汚泥に不均一な力を常時作用させることができる。これによっても、パドル22から汚泥が掻き取られて、パドル22からの汚泥の剥離性がよくなる。
【0078】
また、本実施の形態では、パドル22は、その中心軸a(
図7(a)参照)がシャフト21の中心軸(延伸方向)と垂直であり、かつ、この中心軸を回転中心として回転した状態でシャフト21に取り付けられているので、他の軸(例えばパドルの中心軸に垂直な軸)を回転中心として傾斜させる場合と比較して、効率よく送り作用及び戻り作用を発揮できる。
【0079】
なお、上記の実施の形態では、パドル22は、その中心軸がシャフト21の中心軸と垂直であり、かつ、この中心軸を回転中心として傾いていたが、パドル22がそのような傾き成分以外の傾き成分を有していてもよい。すなわち、パドル22は、パドル22の中心を通りシャフト21の中心軸に垂直に交わる仮想軸がパドル22の中心軸と一致していなくても、当該仮想軸周りに傾いていればよい。また、パドル22が、パドル22の中心を通ってシャフト21に非垂直に交わる仮想軸周りに傾いていてもよい。これらの場合にも、パドル22は、パドル22の中心とシャフト21の中心軸を通る仮想軸周りの傾き成分を有することになり、送り作用又は戻し作用を有効に発揮できる。
【0080】
また、複数のパドル22のシャフト21の周方向の取付位置は、上記の例に限られない。例えば、上記の第1及び第2のグループの別はなくてもよいし、複数のパドル22の中に、その法線がシャフト21の延伸方向と平行であるパドル22が存在していてもよい。また、上記の実施の形態では、各列のパドル22を2枚ずつとしたが、パドルが1枚の列があってもよく、各列のパドルを3枚以上にしてもよい。
【0081】
また、上記の実施の形態の汚泥乾燥装置10では、パドル22の向きについて、6列を繰り返し単位として、その繰り返し単位を繰り返すよう設計したが、これに限られない。本実施の形態の汚泥乾燥装置10では、シャフト21に取り付けるパドルユニットを選択することで、各パドル22の傾斜方向を任意に設定できるので、例えば、送りパドルを多くすることで、その部分の送り作用を強くでき、隣り合う送りパドルと戻りパドルとの組みを多くしたり、攪拌列を多くしたりすることで、その部分の攪拌作用を強くできる。
【0082】
次に、排出調整機構30について説明する。
図8は、
図2の排出調整機構30を拡大して示す図である。
図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ汚泥堰31の全開、半開(半閉)、全閉の状態を示す図である。
図8及び
図9に示すように、排出調整機構30は、汚泥堰31と昇降機構32とを備えている。汚泥堰31は、汚泥受けとして機能するケーシング11の底面116の排出側の縁(乾燥汚泥排出口114の手前)にて、底面116から立ち上がっている。
【0083】
汚泥堰31は、固定堰311と可動堰312とからなる。固定堰311は、2本のシャフト21に対応して2つ設けられている。各固定堰311には、シャフト21を通す孔313が形成されている。固定堰311は、孔313の幅(シャフト21の幅)より若干広い幅で上下に延びており、孔313の周りでは孔313の形状に沿って若干幅広になっている。
【0084】
可動堰312は、昇降機構32によって昇降駆動される。可動堰312は、上昇した状態で、2つの固定堰311の間及び2つの固定堰311のそれぞれの外側を覆う形状に形成される。可動堰312には、上昇したときにシャフト21と干渉しないように、シャフト21に対応する位置に溝314が形成されている。可動堰312が上昇すると、この溝314が固定堰311によって覆われて、隙間のない汚泥堰31となる。
【0085】
可動堰312は、その左右上端で昇降機構32に接続することで、引き上げられ、又は降ろされる。
図9(a)又は(b)のように、可動堰312が最下位置又は中間位置にある場合には、攪拌搬送機構20によって搬送されてきた汚泥は、固定堰311の間で、可動堰312の上縁を乗り越えて、乾燥汚泥排出口114に落ちる。可動堰312に最上位置まで上昇すると、固定堰311の上縁と可動堰312の上縁とが同じ高さになり、汚泥は、これらの上縁を乗り越えて、乾燥汚泥排出口114に落ちる。
【0086】
図9(a)〜(c)から明らかなように、可動堰312が下に位置するほど、乾燥汚泥は容易に乾燥汚泥排出口114に導かれる。よって、短時間当たりの乾燥汚泥の排出量を大きくしたい場合には、可動堰312を下げて、単位時間当たりの乾燥汚泥の排出量を小さくしたい場合には、可動堰312を上昇させる。
【0087】
この可動堰312の昇降によって、汚泥が乾燥室で攪拌及び乾燥の処理を受ける時間を調整することができる。攪拌及び乾燥の処理を受ける時間が長いほど、汚泥の乾燥が進み、汚泥乾燥装置10から排出される乾燥汚泥の含水率が低くなるので、乾燥汚泥の目標含水率に応じて、可動堰312を昇降させることができる。また、運転を停止して可動堰312を降ろすことで、ケーシング11内部の汚泥を払い出すことも可能となる。
【0088】
次に、ケーシング11を覆う熱交換プレートについて説明する。
図10(a)は、熱交換プレートが取り付けられた汚泥乾燥装置の側面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のD−D断面図である(乾燥室内部の構成は省略してある)。汚泥乾燥装置10のケーシング11の外面に熱交換プレート41が貼り付けられる。熱交換プレート41は、ケーシング11の側面から下面にかけて、ケーシング11を覆っている。本実施の形態では、ケーシング11に4枚の熱交換プレート41が貼り付けられる。
【0089】
2本のシャフト21にそれぞれ対応して、
図10(a)に示すように、大小2つの熱交換プレート41が、シャフト21の軸方向に並んで設けられる。また、上述のように、ケーシング11の底部の断面はω形状になるが、
図10(b)に示すように、2枚の熱交換プレート41は、左右各側面から湾曲した底面にかけて延びて、左右中央の若干手前まで至っている。
【0090】
熱交換プレート41は、台形パターンにプレス成形した2枚の鋼板からなり、この2枚の鋼板の間に熱媒体である蒸気のパス(通り道)がコイル状に形成されている。熱交換プレート41の1つの角部には、パスに蒸気を供給するための蒸気供給口411が形成されており、この角部の対角の角部にはパスを通ってきた蒸気ないしは凝縮水を排出するための蒸気排出口が形成されている。熱交換プレート41の内部では、蒸気供給口411と蒸気排出口との間で複数とおりのパスが形成されており、パスは熱交換プレート41の全体に張り巡らされている。各熱交換プレート41には、蒸気管923(
図1参照)から蒸気が供給される。また、各熱交換プレート41の蒸気排出口は、蒸気ドレイン管924に接続されている。
【0091】
熱交換プレート41は、伝熱セメントによってケーシング11の外面に貼り付けられる。熱交換プレート41内のパスを流れる蒸気の熱は、伝熱セメントを介して又は熱交換プレート41の表面から直接に、ケーシング11に伝わり、さらにその熱がケーシング11内の汚泥に伝わる。よって、この熱交換プレート41に蒸気を流通させることで、汚泥の乾燥をより促進できる。なお、ケーシング11には、熱交換プレート41のさらに外側を覆う図示しない保温材が設けられる。この保温材によって、熱交換プレート41及び熱交換プレート41が取り付けられたケーシング11の全体が保温される。
【0092】
なお、上記の実施の形態では、シャフト内部空間及びパドル内部空間に流通させる熱媒体が水蒸気である例を説明したが、熱媒体は、水蒸気でなくても、他の物質であってもよい。また、熱媒体は上記に限らず、流体であればよく、例えば高温の液体であってもよい。
【0093】
また、上記の実施の形態では、2列の攪拌搬送機構20を有する汚泥乾燥装置10を説明したが、攪拌搬送機構20は、3列以上であってもよい。また、上記の実施の形態では、2列の攪拌搬送機構20を逆方向に回転させたが、2本のシャフト21のギア1261同士の間にさらにギアを追加することで、2列の攪拌搬送機構20を互いに同一方向に回転させてもよい。
【0094】
また、上記の実施の形態では、汚泥の搬送方向とシャフト21及びパドル22を加熱するための熱媒体のシャフト内部空間210における流通方向とを同一の方向としたが、これを互いに逆方向としてもよい。さらに、上記の実施の形態では、シャフト内部空間210及びパドル内部空間220に供給する熱媒体をシャフト21の一端側から供給し、他端側から排出する構成としたが、供給側と同じ側から排出するようにしてもよい。
【0095】
また、上記の実施の形態では、駆動機構13は、シャフト21を駆動するのに、減速機132の出力軸にスプロケット133を設けて、このスプロケット133とシャフト21の端部に設けられたスプロケット134との間にドライブチェーン135を架けてシャフト21を回転駆動したが、駆動機構の構成はこれに限られない。例えば、減速機をシャフト21の延長上に設けて、減速機の出力をドライブチェーンを介さずにそのままシャフト21に伝達してもよい。