(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121747
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】掛止め具
(51)【国際特許分類】
F16B 47/00 20060101AFI20170417BHJP
A47G 29/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
F16B47/00 U
A47G29/00 K
A47G29/00 L
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-33118(P2013-33118)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163417(P2014-163417A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年度版ライオン総合カタログ(2013年1月1日発行)第902ページに掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】000138875
【氏名又は名称】株式会社ライオン事務器
(74)【代理人】
【識別番号】100063819
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 理一
(72)【発明者】
【氏名】茂野 雅之
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3163069(JP,U)
【文献】
特開2004−316271(JP,A)
【文献】
実公昭48−028617(JP,Y1)
【文献】
特開2010−127400(JP,A)
【文献】
特開2013−217475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 47/00
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側部に掛止め部を設けた取付け体の上側部背後に凹部を形成し、この上側凹部に吸着盤を配設し、前記取付け体の上側前面部にカップ体を嵌置し、このカップ体の上端中央部に指入れ凹部を設け、前記カップ体の内部に、背面部を前記吸着盤に,前面部をカップ体の前側面部に介装した伸張弾機を設け、前記カップ体の中央部に,基端を前記吸着盤に固着し前記伸張弾機内を挿通した支軸の先端に操作レバーを枢支し、この操作レバーは前記支軸と同一方向に倒伏した状態においては前記吸着盤の周端面部と取付け体の内側周面部とを摺接し、前記操作レバーは支軸に対し直角に起立した状態においては前記吸着盤と取付け体とを離間するように構成したことを特徴とする掛止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常使用する壁面など各種物体への取付け用の掛止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁面などへの取付け用の掛止め具としては、従来から存する次に示すもののように、吸着盤を介装して取付けるものが比較的多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−59580号公報
【特許文献2】登録実用新案第3163069号公報
【0004】
このうち、特許文献1の吸盤式掛止具にあっては、てこ部を上下作動して吸盤面を被着体に着脱する際に、掛部によりその操作を阻害される欠点があり、特許文献2の吸盤の構造にあっては、カップ体である固定座から延設するフック部を真に垂直方向に被着体に固定することは困難で、フック部に物品を吊り下げると左右方向に回転力が発生するから、吸盤フックの吸着持久性を阻害する原因となっていたし、いずれの公知の吸着盤とも固定するだけを目的としており、固定後にさらに正位置に調整することができる構造にはなっていなかったのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明はこのような欠点を除去することを目的に、まず吸着盤を被着体に固定した後に掛止め用フック部を自由に回動調整して位置決めし、掛止めを自由かつ容易に行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下側部に掛止め部を設けた取付け体の上側部背後に凹部を形成し、この上側凹部に吸着盤を配設し、前記取付け体の上側前面部にカップ体を嵌置し、このカップ体の上端中央部に指入れ凹部を設け、前記カップ体の内部に、背面部を前記吸着盤に,前面部をカップ体の前側面部に介装した伸張弾機を設け、前記カップ体の中央部に基端を前記吸着盤に固着し前記伸張弾機内を挿通した支軸の先端に操作レバーを枢支して成るものである。
【0007】
また本発明は、取付け体の上側凹部の上端中央部に切欠部を設けて成るものである。
【0008】
また本発明は、操作レバーは
前記支軸と同一方向に倒伏した状態においては
前記吸着盤の周端面部と取付け体の内側周面部と
を摺接し、
前記操作レバーは支軸に対し直角に起立した状態においては前記吸着盤と取付け体と
を離間するように構成して成るものである。
【0009】
さらに本発明は、支軸の先端部に枢支する操作レバーはその外形を内側先端部から後端部にかけて弯形状に形成して成るものである。
【0010】
また本発明は、支軸の先端部に枢支する操作レバーは支軸と同一の水平方向にある状態では、やや内側方向に傾斜して形成して成るものである。
【発明の効果】
【0011】
第1に、本発明に係る掛止め具の構造にあっては、操作レバーを取付け体の上部位置に設置しているものであるから、操作レバーと取付け体とが相互に干渉し合うことはなく、使用上全く安全である。
【0012】
したがって、吸着体面から掛止め具を取り外すときは、掛止め部は操作レバーから最も遠い位置にあるから、操作レバーの先端内側部に指先を掛けて起立しようと作動する時には何の妨害を受けることもないから、吸着盤の弛緩現象によって簡単かつ確実に離脱することができる。
【0013】
第2に、カップ体の上端中央部には指入れ凹部を設けているから、操作レバーを引き起す時に指入れ凹部に手指の第一関節を操作レバーの先端部に入れて、取付け体の引き起し作業を容易に行うことができるようになる。また、この操作レバーを引き起して吸着盤の真空状態を解除しても、被着体と吸着盤の材質によっては、取付け体の取外しに強力を要するにもかかわらず、指先がカップ体の指入れ凹部にフィットするようになるから、カップ体全体を手掌で包み込むように把握して取外し作業を行うことができ、吸着盤を有する取付け体を被着体から容易に取外すことができるようになる。
【0014】
第3に、取付け体の上側凹部の上端中央部に切欠部を設けているから、手指での取外しが困難なほど被着体と吸着盤が固定されている場合においても、この切欠部を通じて被着体と吸着盤の間に指爪やドライバー等を挿入することにより、取付け体を被着体から容易に取外すことができるようになる。
【0015】
第4に、操作レバーをその後端部上部から後端部下部にかけて弯形状に形成するとともに、操作レバーは支軸と同一の水平状態にある時でも、その全体はやや内側方向に傾斜した状態にあるから、操作レバーの外側部を手掌で被ったまま加圧して倒伏することができる。
【0016】
第5に、各種の物品を掛け止めるための取付け体を、壁面やキャビネットなどの被着体面の適当位置に吸着盤を介して固定した後においても、位置づれや誤差を吸着盤の固定位置を変更せずにそのままの状態において、掛止め部を有する取付け体だけを自由に回動することができるものであるから、掛止め部を常に正位置に固定することができるようになり、きわめて利便性が高い掛止め具となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)全体の一使用状態時の斜視図、(B)全体の他使用状態時の斜視図
【
図2】(A)全体の一使用状態時の中央部側断面図、(B)全体の他使用状態時の中央部側断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2(A)に示した本具の状態図は、吸着体への非吸着状態を示したもので、操作レバーは支軸と同一方向に倒伏した状態にあり、取付け体の上側部背後の凹部内に配置された吸着盤は、伸張弾機による押圧から解放されて100%伸張状態になるから、取付け体の上側凹部の吸着盤の全周面部は取付け体の上側凹部と摺接状態になっている。
【0019】
これとは逆に、
図2(B)に示した本具の状態図は、取付け体の吸着体への吸着状態を示したもので、操作レバーを支軸に対し直角に起立した状態にした時、取付け体の上側凹部内の吸着盤の中央部分は、一体に成る支軸の引張りによって伸張弾機に抗して引き出されるから、吸着盤の中央部分は吸着体面から離間するとともに離間した吸着盤内部は真空状態となるが、その周縁部分は強力な吸着状態を維持するようになる。したがって、カップ体は吸着盤とともに吸着固定状態を維持するが、その外部の取付け体は吸着盤を含むカップ体との一体関係がなく解放されているから、取付け体を自由に回動してその正位置を決定することができるようになる。
【0020】
また、吸着盤を吸着体から取り外すときは、カップ体の操作レバーの先端部内側に指先を当てて操作レバーを引き起こすとともに、カップ体の指入れ凹部に人差し指先ないし中指先を当てて、カップ体全体を手掌で包み込むように把握して起動すれば、カップ体内部の吸着盤の周面部は被着体面から離脱して離間状態になるから、
図2(A)に示した状態になる。
【0021】
取付け体の上側凹部における吸着盤の着脱関係の詳細については、
図2(A)(B)において特に示した部分図を参照されたい。
【実施例】
【0022】
1は下側部に掛止め部2を設けて成る適当形状の取付け体で、この取付け体の上側部背後には適当広さの凹部3を形成する。
【0023】
4は前記取付け体1の上側凹部3の上端中央部に設けた切欠部で、この切欠部が臨む前記上側凹部3には吸着盤5を摺接して収容設置する。この吸着盤5の周縁部とこれを設置する取付け体1の上側凹部3の周縁部の形状と円周長さは略同一に成る。
【0024】
6は前記取付け体1の上側前面部に嵌置したカップ体で、このカップ体の上端中央部には指入れ凹部7を設け、前記カップ体6の内部には、背面部を前記吸着盤5の中央部に,前面部をカップ体の前側面部に介装した伸張弾機8を設置する。
【0025】
9は前記カップ体6の指入れ凹部7に連続形成した中央凹部に設ける操作レバーで、この操作レバーの外形は弯形状に成り、その内部は内側先端部から後端部にかけて指先が係止し易い円弧形部9’に成る。
【0026】
前記操作レバー9の枢軸10を先端に設けた支軸11の基部は前記吸着盤5の中央部に固着するが、前記伸張弾機8は前記支軸11の周囲位置に介装されている。
【0027】
前記支軸11の先端部に枢支する操作レバーは、その支軸と同一方向に倒伏した状態において支軸の水平位置に対し約13°内側方向に傾斜した状態θにある。(
図2(A)参照)
【符号の説明】
【0028】
1 取付け体
2 掛止め部
3 上側凹部
4 切欠部
5 吸着盤
6 カップ体
7 指入れ凹部
8 伸張弾機
9 操作レバー
10 枢軸
11 支軸