(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置を備える封書作製システムの構成を示すブロック図、
図2は、印刷装置の概略構成図である。以下の説明において、ユーザが位置する
図2の紙面表方向を前方とする。また、
図2に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る封書作製システム1は、印刷装置2と、封入封緘装置3とを備える。
【0018】
印刷装置2は、用紙Pに印刷を行う。
図1、
図2に示すように、印刷装置2は、給紙部11と、搬送印刷部12と、第1排紙部13と、上面搬送部14と、第2排紙部15と、反転部16と、制御部17と、各部を収納または保持する筐体18とを備える。
【0019】
図2において太線で示す経路が、用紙Pが搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、短破線で示す経路が第1排紙経路RD1、長破線で示す経路が第2排紙経路RD2、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。通常経路RCと反転経路RRとが、請求項の循環経路を構成する。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0020】
給紙部11は、通常経路RCに用紙Pを給紙する。給紙部11は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部11は、外部給紙台21と、外部給紙ローラ22と、複数の内部給紙台23と、複数の内部給紙ローラ24と、複数対の縦搬送ローラ25と、レジストローラ26とを備える。
【0021】
外部給紙台21は、印刷媒体である用紙Pが積載されるものである。外部給紙台21は、一部が筐体18の外部に露出して設置されている。
【0022】
外部給紙ローラ22は、外部給紙台21から用紙Pを1枚ずつ取り出し、給紙経路RSに沿って後述のレジストローラ26へ向けて搬送する。外部給紙ローラ22は、外部給紙台21の上側に配置されている。外部給紙ローラ22は、図示しないモータにより駆動される。
【0023】
内部給紙台23は、印刷媒体である用紙Pが積載されるものである。内部給紙台23は、筐体18の内部に配置されている。
【0024】
内部給紙ローラ24は、内部給紙台23から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSへ送り出す。内部給紙ローラ24は、内部給紙台23の上側に設けられている。内部給紙ローラ24は、図示しないモータにより駆動される。
【0025】
縦搬送ローラ25は、内部給紙台23から取り出された用紙Pをレジストローラ26へ向けて搬送する。縦搬送ローラ25は、給紙経路RSに沿って配置されている。縦搬送ローラ25は、図示しないモータにより駆動される。
【0026】
レジストローラ26は、外部給紙ローラ22、縦搬送ローラ25、後述の再給紙ローラ48により搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、後述のベルト搬送部31に向けて搬送する。レジストローラ26は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。レジストローラ26は、図示しないモータにより駆動される。レジストローラ26は、請求項の搬送部の一部としても機能する。
【0027】
搬送印刷部12は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。搬送印刷部12は、給紙部11の下流側に配置されている。搬送印刷部12は、ベルト搬送部31と、インクジェットヘッド部32とを備える。
【0028】
ベルト搬送部31は、レジストローラ26から搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルト搬送部31は、レジストローラ26の下流側に配置されている。ベルト搬送部31は、図示しないモータにより駆動される。ベルト搬送部31は、請求項の搬送部の一部を構成する。
【0029】
インクジェットヘッド部32は、用紙Pの搬送方向と略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたライン型の複数のインクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッド部32は、ベルト搬送部31の上方に配置されている。インクジェットヘッド部32は、ベルト搬送部31により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインク滴を吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド部32は、請求項の印刷部に相当する。
【0030】
第1排紙部13は、封書作製用の印刷時において、印刷済みの用紙Pを封入封緘装置3へ排紙(送出)する。第1排紙部13は、切替部36と、第1排紙ローラ37とを備える。
【0031】
切替部36は、用紙Pの搬送経路を通常経路RCと第1排紙経路RD1との間で切り替える。切替部36は、通常経路RCと第1排紙経路RD1との分岐地点に配置されている。切替部36は、図示しないソレノイドにより駆動される。第1排紙経路RD1は、搬送印刷部12と上面搬送部14との境界から封入封緘装置3に向けて右側に延びる経路である。第1排紙経路RD1の下流端は、封入封緘装置3における導入経路の上流端に接続されている。
【0032】
第1排紙ローラ37は、ベルト搬送部31から搬送されてきた用紙Pを搬送して封入封緘装置3へ送出する。第1排紙ローラ37は、第1排紙経路RD1に沿って切替部36の下流側に配置されている。第1排紙ローラ37は、図示しないモータにより駆動される。
【0033】
上面搬送部14は、ベルト搬送部31から搬送されてきた用紙Pを右方向から左方向へとUターンするように搬送する。上面搬送部14は、請求項の搬送部の一部を構成する。上面搬送部14は、複数対の上昇搬送ローラ38と、複数対の水平搬送ローラ39とを備える。
【0034】
上昇搬送ローラ38は、用紙Pをニップしつつ上方の水平搬送ローラ39へ搬送する。上昇搬送ローラ38は、通常経路RCに沿って配置されている。上昇搬送ローラ38が配置される領域の通常経路RCは、左側が開口された半円状に構成されている。上昇搬送ローラ38は、図示しないモータにより駆動される。
【0035】
水平搬送ローラ39は、用紙Pをニップしつつ第2排紙部15または反転部16へ搬送する。最下流の水平搬送ローラ39は、反転経路RRの上流部に配置されている。他の水平搬送ローラ39は、通常経路RCの下流域の水平部分に配置されている。水平搬送ローラ39は、図示しないモータにより駆動される。
【0036】
第2排紙部15は、印刷済みの用紙Pを排紙する。第2排紙部15は、切替部41と、第2排紙ローラ42と、排紙台43とを備える。
【0037】
切替部41は、用紙Pの搬送経路を第2排紙経路RD2と反転経路RRとの間で切り替える。切替部41は、第2排紙経路RD2と反転経路RRとの分岐地点に配置されている。切替部41は、図示しないソレノイドにより駆動される。
【0038】
第2排紙ローラ42は、切替部41により第2排紙経路RD2に導かれた用紙Pを搬送して排紙台43へ排紙する。第2排紙ローラ42は、第2排紙経路RD2に沿って、切替部41と排紙台43との間に配置されている。第2排紙ローラ42は、図示しないモータにより駆動される。
【0039】
排紙台43は、排紙された用紙Pが積載されるものである。排紙台43は、第2排紙経路RD2の下流端に配置されている。
【0040】
反転部16は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ26へ搬送する。反転部16は、請求項の搬送部の一部を構成する。反転部16は、反転ローラ46と、スイッチバック部47と、再給紙ローラ48と、切替ゲート49とを備える。
【0041】
反転ローラ46は、上面搬送部14により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部47に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ48へ搬送する。反転ローラ46は、最下流の1対の水平搬送ローラ39とスイッチバック部47の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。反転ローラ46は、図示しないモータにより駆動される。
【0042】
スイッチバック部47は、反転ローラ46が用紙Pを一時的に搬入するための空間である。スイッチバック部47は、排紙台43の下部に形成されている。スイッチバック部47は、反転ローラ46の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
【0043】
再給紙ローラ48は、反転ローラ46により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ26へ搬送する。再給紙ローラ48は、反転ローラ46とレジストローラ26との間の反転経路RR上に配置されている。再給紙ローラ48は、図示しないモータにより駆動される。
【0044】
切替ゲート49は、水平搬送ローラ39によって搬送されてきた用紙Pを反転ローラ46へとガイドする。また、切替ゲート49は、反転ローラ46によってスイッチバック部47から搬出される用紙Pを再給紙ローラ48へとガイドする。切替ゲート49は、最下流の1対の水平搬送ローラ39、反転ローラ46、および再給紙ローラ48の3個所の重心近傍に配置されている。
【0045】
制御部17は、印刷装置2全体の動作を制御する。また、制御部17は、封入封緘装置3全体の動作を制御する。制御部17は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0046】
具体的には、制御部17は、片面印刷の用紙Pに対しては、通常経路RCを搬送しつつインクジェットヘッド部32により印刷した後、反転経路RRを経由せずに排紙するよう制御する。両面印刷する用紙Pに対しては、制御部17は、通常経路RCを搬送しつつインクジェットヘッド部32により一方の面に印刷した後に反転経路RRで反転させ、インクジェットヘッド部32によりで他方の面に印刷した後に排紙するよう制御する。ここで、封書作成用の印刷の場合、制御部17は、片面印刷または両面印刷した用紙Pを第1排紙部13により封入封緘装置3へ排紙(送出)させ、封書作成用の印刷以外の場合、第2排紙部15により排紙台43へ排紙させる。
【0047】
封書作成用の印刷時には、制御部17は、印刷パターンに応じた搬送制御パターンで、給紙部11による各用紙Pの給紙タイミングおよび循環経路(通常経路RCおよび反転経路RR)における搬送を制御する。
【0048】
印刷パターンは、内容物用紙および封筒用紙における片面/両面印刷の組み合わせのパターンである。印刷パターンには、内容物用紙および封筒用紙がともに片面印刷(片面−片面パターン)、内容物用紙が片面印刷で封筒用紙が両面印刷(片面−両面パターン)、内容物用紙が両面印刷で封筒用紙が片面印刷(両面−片面パターン)、内容物用紙および封筒用紙がともに両面印刷(両面−両面パターン)の4つがある。各印刷パターンに応じた搬送制御パターンについては後述する。封書作成用の印刷において、複数の通の印刷を連続して行う場合、制御部17は、印刷パターンが同じである通を連続して印刷するよう印刷順序を決定する。
【0049】
ここで、封筒用紙は、封入封緘装置3での封書作製に専用の用紙である。封筒用紙には、水が付着することで接着可能となる再湿糊、および加圧接触により接着する感圧接着剤が予め所定位置に塗布されている。内容物用紙としては、普通紙等が用いられる。封筒用紙と内容物用紙とは、互いにサイズが異なる。
【0050】
封入封緘装置3は、印刷装置2で印刷された封筒用紙から封筒を形成するとともに、印刷装置2で印刷された内容物用紙を封筒に収納して封書を作製する。
図1に示すように、封入封緘装置3は、整合部61と、内容物折り畳み部62と、封筒形成部63と、封緘部64とを備える。
【0051】
整合部61は、印刷装置2から送られてきた印刷済みの内容物用紙を、1通分の枚数ごとに集積して整合する。
【0052】
内容物折り畳み部62は、整合部61で整合された内容物用紙を2つ折り、3つ折り等で折り畳む処理を行う。
【0053】
封筒形成部63は、印刷装置2から送られてきた印刷済みの封筒用紙から封筒を形成しつつ、内容物用紙を封筒に収納する。封筒形成部63は、封筒用紙の所定位置に設けられた再湿糊に水を塗布し、封筒用紙を折り曲げつつ所定位置の対向面を接着させることで封筒を形成する。
【0054】
封緘部64は、封筒形成部63で形成された、内容物用紙を収納した封筒を封緘して封書を完成させる。封緘部64は、封筒の感圧接着剤同士を圧着することで封緘する
次に、封書作製システム1の動作について説明する。
【0055】
まず、印刷装置2における片面印刷および両面印刷について説明する。
【0056】
片面印刷が開始されると、給紙部11から用紙Pが搬送印刷部12へと搬送される。搬送印刷部12では、用紙Pは、ベルト搬送部31により搬送されつつ、インクジェットヘッド部32から吐出されるインクにより印刷される。
【0057】
封書作製用の片面印刷の場合は、片面印刷された用紙Pは、切替部36により通常経路RCから第1排紙経路RD1へ導かれる。そして、用紙Pは、第1排紙ローラ37により封入封緘装置3へ送られる。
【0058】
封書作成用以外の片面印刷の場合は、片面印刷された用紙Pは、切替部36により上面搬送部14へと導かれる。上面搬送部14では、用紙Pは、上昇搬送ローラ38および水平搬送ローラ39により切替部41まで搬送され、切替部41により通常経路RCから第2排紙経路RD2へ導かれる。そして、用紙Pは、第2排紙ローラ42により排紙台43へ排紙される。
【0059】
両面印刷の場合、給紙されて搬送印刷部12で表面(先に印刷される面)が印刷された用紙Pは、切替部36により上面搬送部14へ導かれる。上面搬送部14では、用紙Pは、上昇搬送ローラ38および水平搬送ローラ39により切替部41まで搬送され、切替部41により通常経路RCから反転経路RRへ導かれる。反転経路RRへ導かれた用紙Pは、反転部16において、切替ゲート49により反転ローラ46へ導かれ、反転ローラ46によりスイッチバック部47へ搬入される。その後、用紙Pは、反転ローラ46によりスイッチバック部47から搬出されるとともに、切替ゲート49により再給紙ローラ48へ導かれ、再給紙ローラ48によりレジストローラ26へ搬送される。そして、用紙Pは、レジストローラ26によりベルト搬送部31へ搬送される。ここで、用紙Pは、反転部16により反転されているので、裏面(後で印刷される面)が上に向けられており、ベルト搬送部31により搬送されつつ、インクジェットヘッド部32から吐出されるインクにより裏面に印刷される。
【0060】
封書作製用の両面印刷の場合は、両面印刷済みの用紙Pは、上述した封書作製用の片面印刷の場合と同様に、切替部36により通常経路RCから第1排紙経路RD1へ導かれ、第1排紙ローラ37により封入封緘装置3へ送られる。
【0061】
封書作成用以外の両面印刷の場合は、両面印刷済みの用紙Pは、上述した封書作成用以外の片面印刷の場合と同様に、上昇搬送ローラ38および水平搬送ローラ39により搬送された後、第2排紙ローラ42により排紙台43へ排紙される。
【0062】
印刷装置2で複数枚数の印刷を行う場合、順次、用紙Pが給紙部11から給紙され、複数枚の用紙Pが同時に搬送経路上を搬送される。この複数枚数の印刷における給紙および搬送の制御について説明する。
【0063】
まず、封書作成用以外の複数枚数の印刷における給紙および搬送の制御について説明する。ここで、印刷される用紙Pのサイズはすべて同じであるとする。
【0064】
複数枚数の片面印刷の場合、
図3に示すように、複数枚の用紙Pが、所定の紙間で搬送されるようなタイミングで給紙部11から給紙され、搬送される。ここで、紙間は、先行の用紙の後端と後続の用紙の先端との間隔である。
【0065】
複数枚数の両面印刷の場合、給紙部11からの給紙は、片面印刷時の1枚飛ばしのタイミングで行われる。このため、
図4に示すように、1枚目の用紙P1が給紙された後、用紙1枚の長さ以上の紙間で2枚目の用紙P2が給紙される。
【0066】
水平搬送ローラ39による搬送速度は、ベルト搬送部31および上昇搬送ローラ38による搬送速度よりも速い速度に設定される。これにより、
図5に示すように、水平搬送ローラ39で搬送される1枚目の用紙P1とベルト搬送部31で搬送される2枚目の用紙P2との紙間が広がる。ここで、ベルト搬送部31は所定の印字搬送速度で用紙Pを搬送する。ベルト搬送部31を用紙Pが抜けるまで搬送速度を変えることはできないため、上昇搬送ローラ38もベルト搬送部31と同じ搬送速度で用紙Pを搬送する。
【0067】
水平搬送ローラ39による搬送速度は、反転後の用紙Pを所定のタイミングで再給紙できるような速度に設定される。具体的には、
図6のように反転経路RRで反転された1枚目の用紙P1が、
図7、
図8のように、給紙される3枚目の用紙P3と4枚目の用紙P4との間に再給紙できるように、水平搬送ローラ39による搬送速度が設定される。
【0068】
また、表面が印刷される用紙P3と裏面が印刷される用紙P1との紙間、および裏面が印刷される用紙P1と表面が印刷される用紙P4との紙間が、前述した片面印刷時の紙間と同じになるように、各用紙の給紙および搬送が制御される。
【0069】
その後、
図9に示すように、表面が印刷される4枚目の用紙P4と5枚目の用紙P5との間に、裏面が印刷される2枚目の用紙P2が再給紙される。ここで、反転後の用紙Pを太線の破線で示している。
【0070】
以上の
図4〜
図9に示したような給紙および搬送が繰り返される。これにより、
図10に示すような順序およびタイミングで印刷が行われる。ここで、ドットハッチングされた用紙は、反転後に裏面印刷される用紙であることを示す。また、用紙内の数字は、何枚目の用紙であるかを示している。
【0071】
図10に示すように、複数枚数の両面印刷では、1枚目の用紙P1の表面が印刷された後、1枚分の印刷時間Tを空けて2枚目の用紙P2の表面が印刷され、さらに1枚分の印刷時間Tを空けて3枚目の用紙P3の表面が印刷される。次に、循環搬送されて反転された1枚目の用紙P1の裏面の印刷が行われる。そして、4枚目の用紙P4の表面が印刷され、次いで、循環搬送されて反転された2枚目の用紙P2の裏面が印刷される。その後は同様にして、新たに給紙された用紙Pの表面の印刷と、循環搬送されて反転された用紙Pの裏面の印刷とが交互に行われる。ただし、印刷の終わりにおいて新たな用紙Pの給紙が終了すると、循環搬送されて反転された用紙Pの裏面の印刷が印刷時間Tを介して3回続けて行われて印刷が終了する。
【0072】
ここで、印刷時間Tは、用紙Pの搬送方向における長さに紙間を加えた距離をベルト搬送部31における印字搬送速度で割った値である。上述した両面印刷では、片面印刷時と印刷時間Tが同じになる。これにより、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性で両面印刷が行われる。
【0073】
次に、封書作成用の印刷における給紙および搬送の制御について説明する。
【0074】
封書作成用の印刷は、作製される封書の通単位で行われる。1通あたりの封書作成用の用紙は、1枚以上の内容物用紙と1枚の封筒用紙との複数枚からなる。内容物用紙の印刷後に封筒用紙が印刷される。内容物用紙と封筒用紙とではサイズが異なる。通常、封筒用紙が内容物用紙より大きい。また、内容物用紙および封筒用紙のそれぞれに片面/両面印刷が設定される。
【0075】
前述した封書作成用以外の複数枚数の印刷における給紙および搬送の制御は、同じサイズの複数枚の用紙Pを片面印刷する場合、および同じサイズの複数枚の用紙Pを両面印刷する場合のものである。封書作製用の印刷のように複数枚の用紙のなかに片面印刷される用紙と両面印刷される用紙とが混在している場合では、片面/両面印刷が切り替わるときに、一旦、搬送経路上の用紙Pをすべて排紙してから次の給紙を行うことになる。また、封書作製用の印刷のように複数枚の両面印刷において複数の用紙サイズが混在している場合では、用紙サイズが切り替わるときに、一旦、搬送経路上の用紙Pをすべて排紙してから次の給紙を行うことになる。このため、生産性が低くなる。
【0076】
そこで、封書作製用の印刷において高い生産性を実現するため、本実施の形態では、封書作成用印刷の印刷パターンに応じた搬送制御パターンで給紙搬送制御を行う。印刷パターンは、前述のように、片面−片面パターン、片面−両面パターン、両面−片面パターン、両面−両面パターンの4つである。
【0077】
印刷パターンごとの搬送制御パターンについて説明する。なお、本実施の形態では、各通で同じ内容物用紙および封筒用紙が使用されるものとする。すなわち、内容物用紙のサイズはすべて同じであり、封筒用紙のサイズもすべて同じであるとする。また、封筒用紙が内容物用紙より大きいとする。内容物用紙の紙種はすべて同じであり、封筒用紙の紙種もすべて同じであるとする。また、内容物用紙と封筒用紙とは紙種が同じであるとする。
【0078】
片面−片面パターンに応じた搬送制御パターンでは、内容物用紙および封筒用紙が本来の順番通りに、所定の紙間となるように給紙され、印刷される。すなわち、1通分の内容物用紙が順次給紙された後、封筒用紙が給紙され、順次印刷される。
【0079】
片面−両面パターンに応じた搬送制御パターンでは、
図11に示すような順番で印刷が行われる。この搬送制御パターンでは、まず、封筒用紙PEが給紙される。次いで、1通分の枚数(
図11の例では4枚)の内容物用紙PMが所定の紙間となるように順次給紙される。給紙された封筒用紙PEおよび内容物用紙PMは順次印刷される。封筒用紙PEは、表面が印刷される。ここで、内容物用紙PM内に記載した数字は、通の中で何枚目の内容物用紙であるかを示す。
【0080】
給紙された内容物用紙PMが印刷される間、表面印刷された封筒用紙PEは、反転部16まで搬送され、スイッチバック部47で待機する。1通分の内容物用紙PMの給紙が終了するまでに封筒用紙PEがスイッチバック部47に到達するように、水平搬送ローラ39では最高速度で封筒用紙PEが搬送される。スイッチバック部47に待機した封筒用紙PEは、1通分の最後の内容物用紙PMの後に所定の紙間となるよう再給紙され、裏面が印刷される。
【0081】
片面−両面パターンにおいて、本来の印刷順では、内容物用紙PMの印刷後に封筒用紙PEの表面に印刷した後、封筒用紙PEを循環搬送させて裏面印刷することになる。これに対し、上述の
図11で説明した搬送制御パターンでは、封筒用紙PEの循環搬送の間に内容物用紙PMの印刷を行うので、本来の印刷順で印刷する場合に比べて生産性を向上できる。
【0082】
両面−片面パターンに応じた搬送制御パターンでは、
図12に示すような順序およびタイミングで印刷が行われる。ここで、
図12において、かっこ内の数字は、何通目であるかを示す。また、内容物用紙PM内のハイフンに続く数字は、通の中で何枚目の内容物用紙であるかを示す。
図12の例では、1通分の内容物用紙PMの枚数は3枚である。
【0083】
この搬送制御パターンでは、1通目の1枚目の内容物用紙PMが給紙されて表面が印刷された後、内容物用紙3枚分の印刷時間3Tを空けて1通目の2枚目の内容物用紙PMの表面が印刷されるように給紙される。次いで、循環搬送された1通目の1枚目の内容物用紙PMが再給紙されて裏面が印刷され、続いて1通目の3枚目の内容物用紙PMが給紙されて表面が印刷される。その後、2枚分の印刷時間2Tを空けて裏面が印刷されるように、循環搬送された1通目の2枚目の内容物用紙PMが再給紙される。次いで、2通目の1枚目の内容物用紙PMが給紙されて表面が印刷され、さらに、循環搬送された1通目の3枚目の内容物用紙PMが再給紙されて裏面が印刷される。次に、1通目の封筒用紙が給紙されて印刷され、その後、2通目の2枚目の内容物用紙PMが給紙されて表面が印刷される。これが繰り返される。ここで、再給紙される1通目の3枚目の内容物用紙PMと、2通目の2枚目の内容物用紙PMとの印刷時間の間隔が内容物用紙2枚分の印刷時間2Tとされ、その間に1通目の封筒用紙PEが挿入される。
【0084】
この搬送制御パターンでは、先の通の封筒用紙PEの印刷の前に、次の通の内容物用紙PMの印刷を割り込ませるようにしている。具体的には、例えば、1通目の封筒用紙PEの印刷の前に、2通目の1枚目の内容物用紙PMの表面の印刷を行っている。これにより、通ごとに内容物用紙PMの両面印刷、封筒用紙PEの片面印刷の順で印刷する場合に比べて、印刷時間の空き時間を低減でき、生産性を向上できる。
【0085】
両面−両面パターンに応じた搬送制御パターンでは、
図13に示すような順序およびタイミングで印刷が行われる。
図13は、封筒用紙PEのサイズを基準にして、
図10と同様の制御を行うものである。したがって、この搬送制御パターンでは、1通目の1枚目の内容物用紙PMの表面が印刷された後、封筒用紙PEのサイズに応じた1枚分の印刷時間Taを空けて1通目の2枚目の内容物用紙PMの表面が印刷され、さらに1枚分の印刷時間Taを空けて1通目の3枚目の内容物用紙PMの表面が印刷される。次に、循環搬送されて反転された1通目の1枚目の内容物用紙PMの裏面の印刷が行われる。そして、1通目の封筒用紙PEの表面が印刷され、次いで、循環搬送されて反転された1通目の2枚目の内容物用紙PMの裏面が印刷される。その後は同様にして、新たに給紙された内容物用紙PMまたは封筒用紙PEの表面の印刷と、循環搬送されて反転された内容物用紙PMまたは封筒用紙PEの裏面の印刷とが交互に行われる。
【0086】
封書作成用の印刷時には、制御部17は、上述した印刷パターンに応じた搬送制御パターンで、給紙部11による各用紙の給紙タイミング、上面搬送部14の水平搬送ローラ39による搬送速度等を制御する。
【0087】
ところで、複数通の封書作成用の印刷を連続して行う場合において、通と通との間で印刷パターンが変わることがある。この場合、通と通との間で搬送制御パターンを切り替えることになる。先の搬送制御パターンによる通の用紙Pが搬送経路上に残っている状態で、次の搬送制御パターンに切り替えようとすると、用紙Pの衝突や用紙ジャム等が発生するおそれがある。そこで、通と通との間で搬送制御パターンを切り替える場合、制御部17は、先の搬送制御パターンによる通の用紙Pがすべて封入封緘装置3へ送出されるのを待って、次の搬送制御パターンによる通の用紙Pの給紙を開始する。このため、搬送制御パターン切り替え時にはある程度の処理時間が発生する。
【0088】
これに対し、通と通との間で印刷パターンが変わらない場合は、搬送制御パターンの切り替えが必要ない。このため、搬送制御パターンの切り替えの処理時間は発生しない。ここで、通と通との間で内容物用紙の枚数が変わっても、印刷パターンが変わらなければ、同様の給紙搬送制御のもとで印刷を継続できるため、搬送制御パターンの切り替えは必要ない。
【0089】
そこで、本実施の形態では、制御部17は、封書作成用の印刷において、複数の通の印刷を連続して行う場合、印刷パターンが同じである通を連続して印刷するよう印刷順序を決定する。
【0090】
封書作成用の印刷における通ごとの印刷順序を決定する処理について、
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0091】
図14のフローチャートの処理は、印刷装置2が封書作成用の印刷ジョブを図示しないPC(パーソナルコンピュータ)から受信したことにより開始となる。封書作成用の印刷ジョブには、通ごとの原稿データが配列されている。また、封書作成用の印刷ジョブは、各通の印刷パターン情報を含むヘッダ情報を含んでいる。
【0092】
封書作成用の印刷ジョブを受信すると、制御部17は、まず、印刷ジョブにおける配列順の最初の通の原稿データに基づく給紙、印刷を開始する。そして、ステップS1において、制御部17は、印刷中の通の最後の用紙を給紙したか否かを判断する。まだ最後の用紙を給紙していないと判断した場合(ステップS1:NO)、制御部17は、ステップS1を繰り返す。
【0093】
最後の用紙を給紙したと判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部17は、受信した印刷ジョブに含まれる通のなかに未印刷の通があるか否かを判断する。
【0094】
未印刷の通があると判断した場合(ステップS2:YES)、ステップS3において、制御部17は、未印刷の通の中に、印刷中の通と同じ印刷パターンの通があるか否かを判断する。
【0095】
印刷中の通と同じ印刷パターンの通があると判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部17は、その通を次に印刷する通として決定する。ここで、印刷中の通と同じ印刷パターンの通が複数ある場合、制御部17は、それらの通のうち印刷ジョブにおける配列順で最上位の通を、次に印刷する通として決定する。そして、制御部17は、次の通の給紙を開始する。この際、印刷パターンの変更はないため、搬送制御パターンの切り替えは不要である。ステップS4の後、制御部17は、ステップS1へ戻る。
【0096】
ステップS3において、印刷中の通と同じ印刷パターンの通がないと判断した場合(ステップS3:NO)、ステップS5において、制御部17は、未印刷の通のうち印刷ジョブにおける配列順で最上位の通を、次に印刷する通として決定する。そして、制御部17は、次の通の給紙を開始する。この際、印刷パターンが変わるため、搬送制御パターンの切り替え処理が発生する。ステップS5の後、制御部17は、ステップS1へ戻る。
【0097】
ステップS2において、未印刷の通がないと判断した場合(ステップS2:NO)、制御部17は、処理を終了する。
【0098】
印刷装置2における封書作成用の印刷で印刷された内容物用紙および封筒用紙は、封入封緘装置3へ送られる。封入封緘装置3では、印刷装置2から送られてきた封書1通分の枚数の内容物用紙が整合部61で整合され、整合された内容物用紙が内容物折り畳み部62で折り畳まれる。封筒用紙が印刷装置2から送られてくると、封筒形成部63において、封筒用紙から封筒を形成しつつ、折り畳まれた内容物用紙が封筒に収納される。その後、封緘部64で封筒が封緘され、封書が完成する。
【0099】
以上説明したように、印刷装置2では、制御部17は、封書作成用の印刷において複数の通を連続して印刷する場合、印刷パターンが同じである通を連続して印刷するよう印刷順序を決定する。これにより、搬送制御パターンの切り替えの回数を低減できる。この結果、搬送制御パターンの切り替えの処理時間を減少させることができるので、印刷物の生産性を向上できる。
【0100】
なお、上述した実施の形態では、各通で同じ内容物用紙および封筒用紙の紙種が同じであるとしたが、内容物用紙および封筒用紙の少なくともいずれか一方の紙種が他の通と異なる通があってもよい。この場合、内容物用紙および封筒用紙における片面/両面印刷の組み合わせに加えて、内容物用紙および封筒用紙の紙種を印刷パターンに含まれる組み合わせの要素とする。すなわち、制御部17は、通と通との間で内容物用紙および封筒用紙における片面/両面印刷の組み合わせが同じであっても、内容物用紙および封筒用紙の少なくともいずれか一方の紙種が異なる場合、それらの通を異なる印刷パターンの通として扱う。
【0101】
インクジェット方式の印刷装置2では、用紙Pの紙種に応じて、インクジェットヘッドから吐出する1画素あたりの最大インク滴数を制御するとともに、ベルト搬送部31による印刷時の搬送速度(印字搬送速度)を制御する。具体的には、インクが裏抜けしにくい紙種ほど1画素あたりの最大インク滴数を大きくし、最大インク滴数が大きい紙種ほど印字搬送速度を遅くする。用紙Pの紙種によりベルト搬送部31による印字搬送速度が異なるので、紙種が異なると、例えば、水平搬送ローラ39による搬送速度を変える必要があり、このため搬送制御パターンが変わる。このため、制御部17は、通と通との間で内容物用紙および封筒用紙の少なくともいずれか一方の紙種が異なる場合、それらを異なる印刷パターンの通として扱い、当該印刷パターンに応じた搬送制御パターンで給紙搬送制御を行う。これにより、インクジェット方式の印刷装置2において、紙種の違いに対応して印字品質を維持しつつ、生産性の低下の軽減を図ることができる。
【0102】
また、上述した実施の形態では、各通で同じ内容物用紙のサイズおよび封筒用紙のサイズが同じであるとしたが、内容物用紙および封筒用紙の少なくともいずれか一方のサイズが他の通と異なる通があってもよい。この場合、内容物用紙および封筒用紙のサイズを印刷パターンの組み合わせの要素に含める。そして、制御部17は、内容物用紙および封筒用紙のサイズを考慮した印刷パターンに応じた搬送制御パターンで給紙搬送制御を行う。
【0103】
また、上述した実施の形態では、制御部17は、封書作成用の印刷ジョブを受信すると、各通の印刷パターンに基づき印刷順序を決定したが、印刷ジョブに含まれる通数が基準値以下の場合、印刷ジョブにおける配列順で上位の方から順に印刷してもよい。これにより、搬送制御パターンの切り替えの処理時間が生産性に与える影響が比較的小さい、少ない通数の印刷では、印刷ジョブにおける配列順で封書作製を行うことができる。
【0104】
また、上述した実施の形態では、内容物用紙および封筒用紙の2種の用紙の組み合わせからなる通単位の印刷を行う封書作製用印刷の場合で説明したが、印刷単位は封書作成用印刷の通単位に限らず、用紙の組み合わせも2種に限らない。
【0105】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。