特許第6121799号(P6121799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121799
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】伸縮ブームのスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/693 20060101AFI20170417BHJP
   B66F 9/08 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B66C23/693 N
   B66F9/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-112455(P2013-112455)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231412(P2014-231412A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100089222
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 康伸
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100175400
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 伸
(72)【発明者】
【氏名】関 将吾
(72)【発明者】
【氏名】高島 浩
(72)【発明者】
【氏名】戸川 珠美
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−051353(JP,A)
【文献】 特開2010−285224(JP,A)
【文献】 実開昭62−020085(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/065899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ブームと、該外側ブームに挿入された内側ブームとを備える伸縮ブームのスライド装置であって、
前記外側ブームの内側に配置され、前記内側ブームを摺動可能に支持するスライドプレートと、
前記スライドプレートの基端端面を支持するリテーナと、
前記リテーナを前記外側ブームに固定する少なくとも2つのリテーナ止具と、を備え、
前記2つのリテーナ止具は、前記外側ブームの内面に、周方向に間隔を開けて固定されており、対向する側部には係止部が形成されており、
前記リテーナは、前記スライドプレートの基端端面に当接する当接部と、前記2つのリテーナ止具の間に挿入される挿入部とからなり、該挿入部の側部には被係止部が形成されており、
前記係止部および前記被係止部は、前記挿入部を前記2つのリテーナ止具の間に挿入可能であり、挿入状態において前記リテーナが前記外側ブームの内面から離間不能に係止されるよう構成されている
ことを特徴とする伸縮ブームのスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームのスライド装置に関する。さらに詳しくは、移動式クレーンや高所作業車などに備えられる伸縮ブームにおいて、外側ブームに対して内側ブームを摺動可能に支持するためのスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略U字状の下部形状を有する伸縮ブームに用いられるスライド支持装置が記載されている。図8に示すように、このスライド支持装置101は、多数の直方体短冊状のスライドプレート単位体で構成されたスライド手段110と、スライド手段110の移動を規制する先端側移動規制具120、基端側移動規制具130、および横側移動規制具140から構成されている。基端側移動規制具130は、外側ブーム102の略U字状の下部形状に沿うよう屈曲形成された湾曲金具131と、外側ブーム102の下部内面に溶接固着されたリテーナ132とからなる。
【0003】
このスライド支持装置101の組み立ては、まず湾曲金具131を外側ブーム102内に挿入してリテーナ132に当接させ、ついでスライド手段110を外側ブーム102内に挿入して湾曲金具131に当接させ、最後に先端側移動規制具120をスライド手段110の先端端面に当接するようにして外側ブーム先端補強カラー103に取り付けることにより行われる。
【0004】
スライド支持装置101の組み立ては、外側ブーム102に内側ブームを挿入した状態で行う必要がある。外側ブーム102と内側ブームとの間の隙間に湾曲金具131を挿入することから、湾曲金具131が正しい位置に配置されているか目視確認することが困難であった。仮に、湾曲金具131が正しい位置に配置されていないと、湾曲金具131が固定されず振動などで脱落する恐れがあるため、組み立て作業に注意を要し作業者の負担となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−255337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、組み立て時に構成部材の配置の確認が容易にできる伸縮ブームのスライド装置を提供することを目的とする。
また、組み立て後に構成部材の脱落を防止できる伸縮ブームのスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の伸縮ブームのスライド装置は、外側ブームと、該外側ブームに挿入された内側ブームとを備える伸縮ブームのスライド装置であって、前記外側ブームの内側に配置され、前記内側ブームを摺動可能に支持するスライドプレートと、前記スライドプレートの基端端面を支持するリテーナと、前記リテーナを前記外側ブームに固定する少なくとも2つのリテーナ止具と、を備え、前記2つのリテーナ止具は、前記外側ブームの内面に、周方向に間隔を開けて固定されており、対向する側部には係止部が形成されており、前記リテーナは、前記スライドプレートの基端端面に当接する当接部と、前記2つのリテーナ止具の間に挿入される挿入部とからなり、該挿入部の側部には被係止部が形成されており、前記係止部および前記被係止部は、前記挿入部を前記2つのリテーナ止具の間に挿入可能であり、挿入状態において前記リテーナが前記外側ブームの内面から離間不能に係止されるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、組み立て時にリテーナの挿入部を2つのリテーナ止具の間に挿入するので、リテーナが正しい位置に配置されないと奥まで挿入できない。そのため、リテーナの配置の確認が容易にできる。また、挿入状態においてリテーナが外側ブームの内面から離間不能に係止されるため、組み立て後にリテーナの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】伸縮ブームの縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスライド装置の斜視図である。
図3】同スライド装置の分解図である。
図4図2におけるIV-IV線矢視断面図である。
図5図2におけるV-V線矢視断面図である。
図6】(A)図は、その他の実施形態に係るスライド装置のリテーナとリテーナ止具の係止部分拡大断面図である。(B)図は、さらに他の実施形態に係るスライド装置のリテーナとリテーナ止具の係止部分拡大断面図である。
図7】伸縮ブームの全体図である。
図8】従来のスライド支持装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、一般的な伸縮ブームBの構成について説明する。
図7に示すように、移動式クレーンや高所作業車などの作業車に備えられる伸縮ブームBは、基端側の第1ブームb1と、この第1ブームb1にテレスコープ式に挿入された第2〜第6ブームb2〜b6とからなる。伸縮ブームBは、その内部に設けられた油圧シリンダの駆動により第2〜第6ブームb2〜b6が摺動し、伸縮動作する。なお、図示の例では伸縮ブームBは6段式であるが、5段以下でもよく7段以上でもよい。
【0011】
伸縮ブームBの先端に形成されたブームヘッドからは、図示しないフックを備えたワイヤロープが吊り下げられ、そのフックで荷重を支持するよう構成されている。伸縮ブームBの先端に作用する荷重は主に伸縮ブームBを倒伏させる方向に作用するため、先端の第6ブームb6を除く第1〜第5ブームb1〜b5には、その先端下部に内側のブームb2〜b6からの荷重がかかる。例えば、第1ブームb1の先端下部には第2ブームb2からの荷重がかかり、第2ブームb2の先端下部には第3ブームb3からの荷重がかかる。このような荷重を支持しつつ伸縮ブームBの伸縮動作を可能にするため、各ブームb1〜b6の間の隙間にはスライド装置が設けられる。
【0012】
以下では、説明を容易にするため、基端側に配置された外殻をなすブームを「外側ブームbo」と称し、外側ブームboに挿入された内側のブームを「内側ブームbi」と称する。例えば、第1ブームb1を外側ブームboとするならば第2ブームb2が内側ブームbiとなる。また、第2ブームb2を外側ブームboとするならば第3ブームb3が内側ブームbiとなる。
【0013】
つぎに、本発明の一実施形態に係るスライド装置1について説明する。
図1に示すように、スライド装置1は、外側ブームboと内側ブームbiの間の隙間に設けられる。外側ブームboは、略U字状の下部形状を有する断面略矩形の筒材である。外側ブームboの先端外周には、外側ブームboの先端部を補強するための補強カラーbcが設けられている。内側ブームbiは、外側ブームboと同様の形状であり外側ブームboよりも一回り小さく形成されている。
【0014】
スライド装置1は、外側ブームboの先端下部の左右湾曲部分にそれぞれ1つずつ設けられている。これらスライド装置1、1は左右対称の形状であるので、以下では片方(図1における左側)のスライド装置1を例に説明する。
【0015】
図2および図3に示すように、スライド装置1は、スライドプレート10と、スライドプレート10の基端側への移動を規制する基端側移動規制具20と、横方向への移動を規制する横側移動規制具30と、先端側への移動を規制する先端側移動規制具40とから構成されている。ここで、「基端側」とは外側ブームboの基端側を意味し、「横方向」とは外側ブームboの周方向を意味し、「先端側」とは外側ブームboの先端側を意味する。
【0016】
スライドプレート10は、直方体短冊状のスライドプレート単位体11を多数並べて構成されている。各スライドプレート単位体11は、その先端端面を外側ブームboの先端端面に略一致させるとともに、その側縁を互いに接触させて、外側ブームboの先端下部内側に配置されている。ここで、「先端端面」とは外側ブームboの先端側に位置する端面を意味する。
【0017】
スライドプレート10により、外側ブームboに対して内側ブームbiが摺動可能に支持される(図1参照)。なお、スライドプレート10の材質は、内側ブームbiを構成する鋼板を摺動可能に支持するにあたり低摩擦係数の性質を有するナイロンなどの合成樹脂が用いられる。
【0018】
基端側移動規制具20は、凸条21と、リテーナ22と、2つのリテーナ止具23、23とからなる。リテーナ22は2つのリテーナ止具23、23の間に挿入されて外側ブームboの内面に固定される。リテーナ22と凸条21とがスライドプレート10の基端端面に当接し、基端側へ移動しないように規制する。ここで、「基端端面」とは外側ブームboの基端側に位置する端面を意味する。
【0019】
凸条21は、外側ブームboの内面において、先端端面からスライドプレート10の長さ寸法分だけ基端側の位置に、周方向に沿って設けられている。凸条21は溶接などで外側ブームboの内面に固定されている。凸条21は2つに分割されており、2つの凸条21、21の間にはリテーナ22が挿入される隙間が開けられている。
【0020】
2つのリテーナ止具23、23は略矩形の小片であり、外側ブームboの内面において、凸条21より基端側の位置に、周方向に間隔を開けて設けられている。リテーナ止具23、23の間隔は、凸条21、21の間隔よりも狭く設定されている。リテーナ止具23、23は溶接などで外側ブームboの内面に固定されている。
【0021】
リテーナ22は、幅広の当接部22aと幅狭の挿入部22bとからなる略T字形の板材である。当接部22aの幅寸法は凸条21、21の間隔と略同一であり、挿入部22bの幅寸法はリテーナ止具23、23の間隔と略同一である。また、リテーナ22は、外側ブームboの内面の湾曲に沿って幅方向に屈曲形成されている。
【0022】
リテーナ22は、挿入部22bを2つのリテーナ止具23、23の間に挿入することで外側ブームboに固定される(図3における一点鎖線)。リテーナ22を固定すると、当接部22aの先端端面は凸条21、21の先端端面と面一となる。そのため、スライドプレート10を外側ブームboに挿入すると、リテーナ22の当接部22aと凸条21、21とがスライドプレート10の基端端面に当接することとなる。
【0023】
図4に示すように、2つのリテーナ止具23、23は、隙間を隔てて対向する側部(挿入部22bと接する側部)がそれぞれ楔形に形成されており係止部23sを構成している。一方、リテーナ22の挿入部22bの側部(リテーナ止具23と接する側部)も楔形に形成されており被係止部22sを構成している。係止部23sおよび被係止部22sの楔形状は外側ブームboの軸方向に沿って同一断面形状となっており、リテーナ22を外側ブームboの軸方向に沿って挿入すれば、挿入部22bを2つのリテーナ止具23、23の間に挿入可能となっている。また、係止部23sおよび被係止部22sの楔形状は、被係止部22sが係止部23sと外側ブームboの内面との間に挿入される形状となっており、挿入状態においてリテーナ22が外側ブームboの内面から離間不能に係止されるよう構成されている。
【0024】
また、図5に示すように、スライドプレート10の基端端面には底面側に切り欠き10aが形成されている。スライドプレート10を外側ブームboに挿入すると、この切り欠き10aにリテーナ22(当接部22a)の先端が嵌るように構成されている。そのため、切り欠き10aによってもリテーナ22が外側ブームboの内面から離間不能となっている。
【0025】
図2および図3に戻り、横側移動規制具30は、凸条部材であり、スライドプレート10の側面に当接するように、外側ブームboの軸方向に沿って設けられている。横側移動規制具30は溶接などで外側ブームboの内面に固定されている。この横側移動規制具30がスライドプレート10の側面に当接し、横方向へ移動しないように規制する。
【0026】
先端側移動規制具40は、円弧状の板材であり、外側ブームboの補強カラーbcにボルトで固定される。先端側移動規制具40を補強カラーbcに固定すると、先端側移動規制具40の内周側縁部がスライドプレート10の先端端面に当接し、先端側へ移動しないように規制する。
【0027】
つぎに、スライド装置1の組み立て方法を説明する。
スライド装置1の組み立ては、外側ブームboに内側ブームbiを挿入した状態で行われる。ブーム伸縮時に外側ブームboと内側ブームbiが磨耗しないよう、内側ブームbiには、その基端下部に別のスライド装置が設けられる。このスライド装置が内側ブームbiの外面から突出しているために、スライド装置1を組み立てた後では内側ブームbiを挿入できなくなる。そこで、スライド装置1を組み立てる前に、外側ブームboに内側ブームbiが挿入される。
【0028】
まず、リテーナ22を外側ブームboと内側ブームbiとの間の隙間に挿入し、挿入部22bを2つのリテーナ止具23、23の間に挿入する。ここで、リテーナ22が正しい位置に配置されないと、挿入部22bがリテーナ止具23や凸条21に引っ掛かるため、リテーナ22を奥まで挿入できない。また、リテーナ22がリテーナ止具23や凸条21に乗り上げるとリテーナ22が外側ブームboの内面から浮くので目視で異常が確認できる。このように、リテーナ22の配置の確認が容易にでき、リテーナ22を正しい位置に配置することができる。
【0029】
つぎに、スライドプレート10を外側ブームbo内に挿入する。スライドプレート10は基端端面がリテーナ22および凸条21に当接し、基端側へ移動しないように規制される。また、リテーナ22は、その先端がスライドプレート10は基端端面に形成された切り欠き10aに嵌る(図5参照)。
【0030】
最後に、先端側移動規制具40を補強カラーbcにボルト止めする。これにより、スライドプレート10の先端端面が先端側移動規制具40に当接し、先端側へ移動しないように規制される。
【0031】
以上の工程で組み立てられたスライド装置1は、リテーナ止具23、23およびスライドプレート10の切り欠き10aにより、リテーナ22が外側ブームboの内面から離間不能に係止されるため、振動が加わったとしてもリテーナ22が脱落することがない。
【0032】
(その他の実施形態)
リテーナ止具23の係止部23s、およびリテーナ22の被係止部22sは、楔形以外の形状であってもよい。例えば、図6(A)に示すように、リテーナ止具23の側部底面側に切り欠きを形成して係止部23sとし、リテーナ22の側部上面側に切り欠きを形成して被係止部22sとし、互いに係止するように構成してもよい。図6(B)に示すように、係止部23sを凸条、被係止部22sを凹条とし、凹凸嵌合するように構成してもよい。逆に、係止部23sを凹条、被係止部22sを凸条とし、凹凸嵌合するように構成してもよい。これ以外の形状であっても、係止部23sおよび被係止部22sは、リテーナ22の挿入部22bを2つのリテーナ止具23、23の間に挿入可能であり、かつ挿入状態においてリテーナ22が外側ブームboの内面から離間不能に係止されるように構成されていればいかなる形状でもよい。
【0033】
上記実施形態ではリテーナ止具23は2つであったが、3つ以上でもよい。この場合、リテーナ止具23の間の数に合わせてリテーナ22の挿入部22bは2つ以上形成される。
【0034】
スライドプレート10は、スライドプレート単位体11を並べた構成以外にも、一体物として構成されたものでもよい。また、本発明のスライド装置1は、略U字状の下部形状を有する伸縮ブーム以外にも種々の伸縮ブームに採用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 スライド装置
10 スライドプレート
20 基端側移動規制具
21 凸条
22 リテーナ
22a 当接部
22b 挿入部
22s 被係止部
23 リテーナ止具
23s 係止部
30 横側移動規制具
40 先端側移動規制具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8