【実施例4】
【0058】
図19〜
図26は、本発明の第4実施例におけるシート型ヒートパイプ4を示している。これらの各図において、本実施例のシート型ヒートパイプ4は、前述した第1シート体11や第2シート体12の他に、シート体11,12の間に積層される別の第3シート体13を拡散接合した3枚の銅箔シートからなる容器15により構成される。シート体11,12,13は2枚以上であればその数を限定しないが、容器の一側面と他側面を形成する最外層の第1シート体11と第
2シート体1
2は、片側面のみのハーフエッチング加工を施し、それ以外の中間層となる第
3シート体1
3は、両側面のフルエッチング加工を施す。
【0059】
図19に示すように、本実施例のシート型ヒートパイプ4は、第2実施例のシート型ヒートパイプ
2と概ね同一の外形形状を有する。すなわち、第1実施例のシート型ヒートパイプ1よりも細長い平板棒状にスリム化されており、また携帯情報端末51の筐体内部構造を考慮して、必要に応じて2箇所の曲げ部18が形成される。容器15の一端には筒状の封止部17が形成され、容器15の内部に真空状態で純水などの作動液を封入できる構成になっている。封止部17により密閉された容器15ひいてはシート型ヒートパイプ4の厚さt1は、0.5mmである。
【0060】
図20と
図21は、第1シート体11と第2シート体12をそれぞれ示している。シート体11,12の厚さt2は何れも0.2mmであり、何れもハーフエッチング加工により、シート体11,12の片側面にのみ蒸気通路20とウィック22がと側壁23がそれぞれ形成される。本実施例では、シート型ヒートパイプ4の外形形状に沿って一方向に延びる蒸気通路20の両側にウィック22が設けられ、そのウィック22の外側に側壁23が配置される。
【0061】
図22は、第3シート体13を示している。第3シート体13の厚さt3は0.1mmであり、フルエッチング加工により、何れも第3シート体13の表裏を貫通する貫通部28と貫通溝29が形成される。貫通部28は、第3シート体13の一端から他端にかけて連続して設けられ、他のシート体11,12と重ね合わせたときに、蒸気通路20の一部を形成するものである。また、スリット状の貫通溝29は、第3シート体13の一端から他端にかけて、貫通部28の両側にそれぞれ形成され、他のシート体11,12と重ね合わせたときに、ウィック22の一部を形成するものである。貫通溝28の外側には、エッチング加工でエッチングされない側壁23が形成される。各シート体11,12,13の側壁23は、第3シート体13を挟んだ状態で他のシート体11,13の片側面を向い合せたときに重なる位置にあり、最終的に拡散接合により容器15の外周部を形成する。なお、
図20〜
図22ではウィック22の部位を斜線で示している。
【0062】
フォトエッチング加工でシート体11,12,13に蒸気通路20やウィック22を形成する場合には、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の表面にハーフエッチング加工を施すと共に、0.05mm〜0.3mmの厚さt3を有する第3シート体13の表面にフルエッチング加工を施し、完成したシート型ヒートパイプ1の厚さt1を0.5mm以下とすることで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成でき、且つ携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ4を無理なく設置できる。
【0063】
第4実施例における蒸気通路20は、密閉された容器15の内部において、シート型ヒートパイプ2の長手方向に沿って、シート体11,12にそれぞれ形成された凹状の通路部21と、第3シート体13に形成された貫通部28とにより構成される。そして、シート体11,12
,13を積み重ねたときに、貫通部28の両側でシート体11,12の通路部21どうしが向かい合うことで、一つの中空筒状の蒸気通路20が形成される。またウィック22は、容器15の内部において、蒸気通路20や側壁23を除く部位に形成される。
【0064】
図23は、
図20における第1シート体11のA部と、
図21における第2シート体12のB部をそれぞれ拡大したものである。ここでもウィック22は、エッチング加工でエッチングされた凹状の溝26と、エッチング加工でエッチングされない壁27とにより構成され、ウィック22の領域内には作動液の通路となる多数の溝26が、壁27により所望の形状に形成される。
【0065】
溝26は、蒸気通路20の両側部や端部に沿って位置しており、第1実施例と同様に、第1溝26Aと、第2溝26Bと、第3溝26Cとを有して構成される。溝26の深さは0.1mm〜0.13mmで、溝26の幅d1は、第1溝26A,第2溝26B,第3溝26Cの何れも0.12mmである。第1溝26Aの数は第2溝26Bの数よりも多く、第2溝26Bよりも微細な第1溝26Aが、蒸気通路20の両側部に位置して、この蒸気通路20と直接連通している。
【0066】
側壁23の幅d4は、シート体11,12,13の全周にわたり0.4mmに形成される。そのため、シート体11,12
,13を側壁23の部分で良好に拡散接合することができ、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ4が得られる。
【0067】
図24は、
図20,21におけるシート体11,12のC部を拡大したものである。同図において、シート型ヒートパイプ4の曲げ部18には、上述したウィック22の構造が、蒸気通路20と側壁23との間に同様に設けられている。ここでも溝26の幅d1は、0.12mmに形成される。
【0068】
図25は、
図22における第3シート体13のD部を拡大したものである。また
図26は、
図23における第3シート体13のE部を拡大したものである。第3シート体13には、蒸気通路20の一部をなす貫通部28と、貫通部28の両側で一列に並んだ貫通溝29がそれぞれ貫通形成される。
【0069】
次に、上記実施例におけるシート型ヒートパイプの動作原理を、
図27に基づき説明する。
図27では、第2実施例のシート型ヒートパイプ2を代表で示しているが、他の実施例のシート型ヒートパイプ1,3,4も基本的な動作原理は共通である。
【0070】
シート型ヒートパイプ2は、熱源と熱接続する部位が受熱部31となり、受熱部31で受けた熱を外部に放出する部位が放熱部32となる。第3実施例のシート型ヒートパイプ3は、受熱部19の部位がシート型ヒートパイプ3の他端に規定され、シート型ヒートパイプ3の一端に放熱部32が自ずと配置されるが、それ以外のシート型ヒートパイプ1,2,4は、どの部位で熱源と熱接続されるのかによって、受熱部31と放熱部32の各位置が変わってくる。ここでは説明のために、シート型ヒートパイプ2の他端に受熱部31が位置し、シート型ヒートパイプ2の一端に受熱部31が位置するものとする。
【0071】
シート型ヒートパイプ2の動作原理は、次の通りである。受熱部31では、熱源からの熱を受けて容器15の内部で作動液が蒸発し、蒸気に蒸発潜熱が蓄えられて圧力が上昇する。この蒸気は、容器15の内部の蒸気通路20を通して受熱部31から放熱部32に流れ、熱を受熱部31から離れた放熱部32に運ぶ。放熱部32では、容器15の内部で蒸気が凝縮し、凝縮潜熱をシート型ヒートパイプ2の外部に放出する。放熱部32に溜まる作動液は、ウィック22を通して受熱部31に戻される。
【0072】
図27には、空間すなわち蒸気通路20を通過する受熱部31から放熱部32への蒸気流路と、ウィック22を通過する放熱部32から受熱部31への作動液の還流を、それぞれ矢印で示している。本実施例のシート型ヒートパイプ2は、その動作方式からウィック型(毛細管型)と呼ばれ、放熱部32に溜まる作動液を、ウィック22の毛細管力により受熱部31に戻す内部構造を有している。
【0073】
図28は、熱輸送時における放熱部32の状態を模式的に示している。シート型ヒートパイプ2ひいては容器15の厚さを0.5mm以下、特に0.4mm以下の極薄状にすると、蒸気通路20が狭くなって、受熱部31で蒸発した蒸気流が、蒸気通路20を通過する際の流動抵抗(圧損)と温度低下により凝縮し、水滴が蒸気流路20を閉塞して、シート型ヒートパイプ2としての性能が著しく低下する。つまり、シート型ヒートパイプ2を薄型化するには、蒸気通路20内の水滴を素早く吸収できるウィック22の構造が重要であり、ウィック22の構造を工夫して、蒸気通路20の閉塞を防止する必要がある。
【0074】
そこで上記各実施例では、シート体11,12にウィック22として形成される溝26を、蒸気通路20の両側部に隣接して配置される第1溝26Aと、第1溝26Aよりも蒸気通路20から離れて配置される第2溝26Bとにより構成し、第1溝26Aの配置間隔を第2溝26Bの配置間隔よりも狭くして、第1溝26Aの数が第2の溝26Bの数よりも多くなるように、ウィック22の構造を工夫している。このように、ウィック22を蒸気通路20の両側に配置したり、蒸気通路20に隣接する部分で、ウィック22の微細化を図ったりすることで、蒸気通路20内の水滴を素早くウィック22に吸収させている。
図28では、放熱部32側において、蒸気通路20からその両側に配置したウィック22への水滴Wの流れを、矢印で示している。
【0075】
次に、ウィック22のより詳細な構造を説明すると、
図29は、前述の
図11において、蒸気通路20の方向に沿った
A方向で、シート体11,12を重ね合わせたシート型ヒートパイプ2の断面図を示し、また
図30は、同じく
図11において、蒸気通路20の方向に直交する
B方向で、シート体11,12を重ね合わせたシート型ヒートパイプ2の断面図を示している。
【0076】
図29において、蒸気通路20の方向に沿った
A方向では、シート体11,12を重ね合わせた状態で、第1シート体11に形成した第1溝26Aと、第2シート体12に形成した第1溝26Aが互い違いに配置されており、第1シート体11における第1溝26Aの開口部を、第2シート体12における第1壁27Aで塞いだ液通路35Aと、第2シート体12における第1溝26Aの開口部を、第1シート体11における第1壁27Aで塞いだ液通路35Bが、シート体11,12のそれぞれの側で互い違いに配設される。これにより、蒸気通路20に隣接するウィック22の部位では、厚さt2が0.2mmのシート体11,12に、エッチング加工の限界まで微細化した第1溝26Aをそれぞれ形成し、さらには裏表のシート体11,12でその第1溝26Aの位置を互い違いに反転させ、シート体11,12に形成した第1溝26Aの開口部を対向するシート体12、11で塞いで、それぞれに液通路35A、35Bを配設することで、極薄状のシート型ヒートパイプ2でありながら、ウィック22の構造に関して最大限の微細化を実現することが可能になる。
【0077】
一方、
図30において、蒸気通路20の方向に直交する
B方向では、シート体11,12を重ね合わせた状態で、第1シート体11に形成した第3溝26Cと、第2シート体12に形成した第3溝26Cが対向しており、第1シート体11における第3溝26Cの開口部を、第2シート体12における第3溝26Cで塞ぐことで、シート体11,12に跨る液通路35が配設される。この液通路35の断面積は、シート体11,12のそれぞれの側で互い違いに配置された液通路35A、35Bの断面積よりも大きく、液通路35A,35Bを通してウィック22に取り込まれた水滴を、液通路35によって受熱部31に円滑に還流させることが可能になる。
【0078】
また前述のように、シート型ヒートパイプ1,2,4は、どの部位で熱源と熱接続されるのかによって、受熱部31と放熱部32の各位置が変わってくるが、第1実施例のシート型ヒートパイプ1のように、容器15の内部に複数形成された第1蒸気通路20Aが、一つに形成された第2蒸気通路20Bと連通していることで、シート型ヒートパイプ1のどの部位に受熱部31と放熱部32が位置したとしても、それぞれの蒸気通路20A,20Bが互いに連通することで、シート型ヒートパイプ1の全面を均熱化できる。
【0079】
次に、上記実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4を、薄型の携帯情報端末51に実装する場合の構成や作用効果を説明する。
【0080】
図31は、シート型ヒートパイプ1,2,3,4が搭載される携帯情報端末51の外観を示し、また
図32は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1を内部に搭載した携帯情報端末51の内部構成を示している。
図31や
図32に示す携帯情報端末51は、タブレット端末よりも小型で、手で持てる程度の外形寸法を有するスマートフォンであり、縦長略矩形状の背面カバー52を、平板状のタッチパネル53の背面側に配設することで、携帯情報端末51としての扁平状をなす外郭(筐体)が形成される。携帯情報端末51の筐体内部には、携帯情報端末51の制御部となるCPU(中央処理装置)54や、その他の図示しない各種電子部品が、基板であるプリント回路基板56に実装した状態で収容されると共に、これらのCPU54や電子部品に必要な電力を供給するための充電可能な扁平略矩形状の充電手段たる電池パック57が、携帯情報端末51に対し着脱可能に収容される。また、タッチパネル53の正面側には、入力装置と表示装置を一体化した操作表示部58が配設される一方で、背面カバー52の正面側開口に対向するタッチパネル53の背面は、凹凸のない平坦なアルミニウムなどの金属板59で構成される。操作表示部58は、ユーザの指で触れることが可能なように、携帯情報端末51の正面に露出して配置される。
【0081】
図32に示すように、第1実施例のシート型ヒートパイプ1は、携帯情報端末51の筐体内部形状に合せた外形を有しており、そのまま単体で携帯情報端末51の筐体内部に設置される。ここでは、タッチパネル53の背面の50%以上を占める領域に、シート型ヒートパイプ1を設置するのが好ましい。シート型ヒートパイプ1の一側面は、その一部が受熱部として熱源となるCPU54と接触して熱接続され、また別な一部が放熱部として電池パック57と接触して熱接続されると共に、シート型ヒートパイプ1の他側面は、その全面がタッチパネル53の背面となる金属板59と接触して熱接続され、特にCPU54から離れた部位で放熱部が形成される。
【0082】
図33は、携帯情報端末51に搭載される直前のシート型ヒートパイプ1を示している。
図1に示す完成状態のシート型ヒートパイプ1は、容器15の密閉状態を維持しつつ、容器15の下方から突出する封止部17が切断される。
図33は、封止部17の先端を切断した状態のシート型ヒートパイプ1を示しており、封止部17が邪魔になることなく、携帯情報端末51の筐体内部にシート型ヒートパイプ1を設置できる。
【0083】
上記
図32に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱がシート型ヒートパイプ1の一側面の受熱部に伝わり、受熱部では作動液が蒸発して、蒸気通路20を通して受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、シート型ヒートパイプ1の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱はシート型ヒートパイプ1の広い平面状の領域に熱拡散され、シート型ヒートパイプ1の裏表すなわち一側と他側の両面から、タッチパネル53の背面をなす金属板59と、電池パック57にそれぞれ放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、タッチパネル53などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
【0084】
一方、シート型ヒートパイプ1の放熱部では、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、シート型ヒートパイプ1の内部で、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22の強い毛細管力により、作動液が蒸気通路20に直交する液
通路35A,35Bから、蒸気通路20に沿った液
通路35を伝わって放熱部から受熱部へと戻される。したがって、受熱部で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液がグルーブ22を伝わり毛細管力で放熱部に導かれることで蒸発が継続し、シート型ヒートパイプ1としての本来の性能が発揮される。
【0085】
また、シート型ヒートパイプ1そのものの厚さt1は0.5mm以下であり、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好なシート型ヒートパイプ1の特徴を活かしつつ、CPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
【0086】
図34は、第2実施例のシート型ヒートパイプ2を内部に搭載した携帯情報端末51の内部構成を示している。ここでのシート型ヒートパイプ2は、
図35に示すように、コンテナ15の途中で曲げ部18を1箇所だけ設けた略L字形状に形成される。また
図36に示すように、第2実施例のようなスリム化されたシート型ヒートパイプ2は、これを放熱プレート60に熱接続した冷却ユニットが携帯情報端末51の筐体内部に組み込まれる。放熱プレート60は熱伝導率が15W/m・k以上で、厚さが0.3mm以下のアルミニウム合金などの金属からなる。そして、この放熱プレート60は、ニッケルや錫などのメッキ層(図示せず)を表面に施してから、接合部材として融点が160℃以下の低温半田63により、シート型ヒートパイプ2と接合される。この低温半田63を用いた半田付けにより、シート型ヒートパイプ2と放熱プレート60が良好な熱接続となり、且つ半田付けの際に、シート型ヒートパイプ2が熱による変形で膨れる虞も一掃できる。なお、シート型ヒートパイプ2に代わり、他のスリム化されたシート型ヒートパイプ3,4を放熱プレート60に熱接続してもよく、これも同様の作用効果が得られる。
【0087】
再度
図34に戻り、携帯情報端末51の構成は上述した通りであり、ここではL字状のシート型ヒートパイプ2を熱接続した矩形板状の放熱プレート60が設置される。シート型ヒートパイプ2は放熱プレート60の背面側にあって、矩形箱状をなす電池パック57の側面に沿って配置される。また、CPU54はプリント回路基板56の正面側にあって、CPU54の近傍にシート型ヒートパイプ2の一部が位置するように配設される。放熱プレート60は、携帯情報端末51の筐体内部形状に合せた外形を有している。
【0088】
上記
図34に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱は放熱プレート60を経由してシート型ヒートパイプ2の受熱部に伝わり、受熱部では作動液が蒸発して、蒸気通路20を通して受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、シート型ヒートパイプ2の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱は放熱プレート60の広い平面状の領域に熱拡散され、放熱プレート60の裏表両面から、タッチパネル53の背面をなす金属板59と、電池パック57にそれぞれ放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、タッチパネル53などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
【0089】
一方、シート型ヒートパイプ2の放熱部では、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、シート型ヒートパイプ2の内部で、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22の強い毛細管力により、作動液が蒸気通路20に直交する液
通路35A,35Bから、蒸気通路20に沿った液
通路35を伝わって放熱部から受熱部へと戻される。したがって、受熱部で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液がグルーブ22を伝わり毛細管力で放熱部に導かれることで蒸発が継続し、シート型ヒートパイプ2としての本来の性能が発揮される。
【0090】
また、シート型ヒートパイプ2そのものの厚さt1は0.5mm以下であり、また放熱プレート60を利用することで、シート型ヒートパイプ2をCPU54や電池パック57に重ねて配置する必要がなく、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好なシート型ヒートパイプ2の特徴を活かしつつ、CPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
【0091】
図37は、冷却構成の違いによる情報携帯端末51の温度上昇を比較した試験結果を示したものである。同図において、試験では、第1実施例のシート型ヒートパイプ1を、携帯情報端末51の筐体内部に搭載した「全面型SHP(BC1)」と、第3実施例のシート型ヒートパイプ3を放熱プレート60に熱接続した冷却ユニットを、携帯情報端末51の筐体内部に搭載した「局部型SHP(BC3)」+銅プレート」と、グラファイトシート73を携帯情報端末51の筐体内部に搭載した「グラファイトシート」の各冷却構成について、携帯情報端末51のタッチパネル53前面の温度や背面カバー52背面の温度と、熱源である熱源ヒータ71の温度を測定し、それぞれ「外郭の温度と「熱源の温度」として示した。特に「外郭の温度」では、「タッチパネル」と「筐体背面表面温度」は、面全体の温度分布を画像として示している。また、各冷却構成の「設置方法」や、「限界厚さ」や、「メリット」や、「熱性能」も併せて記載した。
【0092】
図37の「設置方法」で示したように、試験では熱源ヒータ71や熱電対72を、情報携帯端末51であるスマートフォンに装着して行なった。試験条件として、周囲温度は25℃であり、熱源ヒータ71の発熱量は5Wであり、20分経過した後の温度を測定した。また、「全面型SHP(BC1)」で使用したシート型ヒートパイプ1の厚さは0.5mmであり、「局部型SHP(BC3)」+銅プレート」で使用したシート型ヒートパイプ3と放熱プレート60の厚さは、それぞれ0.5mmと0.2mmであり、「グラファイトシート」で使用したグラファイトシート73の厚さは0.017mmであった。「限界厚さ」に示す「t」は、前述の厚さt1に相当する。さらに、「熱性能」では、「グラファイトシート」の冷却構成を基準として、「全面型SHP(BC1)」の冷却構成と、「局部型SHP(BC3)」+銅プレート」の冷却構成で、「パネル」すなわちタッチパネル53の前面温度と、「熱源」すなわち熱源ヒータ71の温度が、どの程度低下したのかを数字で示している。
【0093】
上記試験結果から、従来の「グラファイトシート」の冷却構成と比べて、本実施例で採用する「全面型SHP(BC1)」の冷却構成や、「局部型SHP(BC3)」+銅プレート」の冷却構成では、熱源ヒータ71の発熱が放熱プレート60の全体に広く拡散され、特にタッチパネル53の前面や、タッチパネル53の前面や背面カバー52の背面のヒートスポットが大きく緩和されることがわかる。また、タッチパネル53の前面の最大温度や、背面カバー52の背面の最大温度や、熱源ヒータ71の温度は30℃以上も、熱拡散によりそれぞれ大幅に低減している。
【0094】
具体的には、「グラファイトシート」の冷却構成と比べて、本実施例で採用する「全面型SHP(BC1)」の冷却構成では、タッチパネル53前面の最大温度が19K低下し、背面カバー52背面の最大温度も3.2K低下している。また、熱源ヒータ71の温度は36.8k低減しており、上記第1実施例〜第4実施例の中でも、特に優れた熱拡散性能を実現している。同様に、「グラファイトシート」の冷却構成と比べて、本実施例で採用する「局部型SHP(BC3)」+銅プレート」の冷却構成では、タッチパネル53前面の最大温度が17.3K低下し、背面カバー52背面の最大温度も5.3K低下している。また、熱源ヒータ71の温度は35.4K低減しており、これも優れた熱拡散性能を実現している。
【0095】
次に、上述した各実施例1〜4について、細部の構成や関連する変形例を説明する。
【0096】
図38は、前記
図11で示した第1シート体11のA部におけるD−D線断面図と、第2シート体12のB部におけるE−E線断面図である。同図において、シート体11,12にハーフエッチング加工を施す際に、蒸気通路20を形成する通路部21の掘り込み深さL1は、シート体11,12の厚さt2の50%以上とする。このような深さL1の掘り込み部を、エッチング加工により蒸気通路20の通路部21として形成すれば、薄いシート型ヒートパイプ2であっても、容器15の内部で十分な蒸気通路を確保できる。また、エッチング加工の場合は、製造時にウィック22を形成する溝26の掘り込み深さL2が、通路部21の掘り込み深さL1よりも自ずと浅くなる(L1>L2)が、溝26の掘り込み深さL2が浅い分、ウィック22で強い毛細管力が得られ、製造上の困難さを伴うことなくシート型ヒートパイプ2の性能を向上させることができる。
【0097】
図39は、シート型ヒートパイプ2の変形例を示している。この図に示すウィック22は、第1シート体11に溝26や壁27を形成する一方で、第2シート体12には壁27を設けず、溝26だけを形成して構成される。そして、ハーフエッチング加工を施したシート体11,12の片側面を向い合せて、側壁23を拡散接合することにより、蒸気通路20の両側に所望のウィック22を形成したシート型ヒートパイプ2を得る。このように、溝26や壁27を工夫することで、様々な構成のウィック22を得ることができる。
【0098】
図40は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1の変形例を示している。ここでは、容器15の四隅に面取部16に代わる取付け部75が配設される。取付け部75は貫通孔として形成され、携帯情報端末51の筐体への取付けを可能にするもので、例えばタッチパネル53の背面部に形成したねじ孔(図示せず)に取付け部75を一致させ、図示しない止着部材としてのねじを取付け部75に貫通させて、ねじ孔に螺着することで、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体に対して所望の位置に容易に取付け固定することができる。
【0099】
図41は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3の変形例を示している。ここでは、受熱部18の四隅に
図40で示したものと同様の取付け部75が配設される。この場合、特に取付け部75を利用して、シート型ヒートパイプ3の受熱部18を熱源であるCPU54に密着させることが可能になる。
【0100】
取付け部75は
図40や
図41に示す貫通孔に限らず、携帯情報端末51の筐体への取付け固定を容易に可能にするものならば、どのような構成でどの位置に設けても構わない。
【0101】
図42は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1の変形例を示している。ここでのシート型ヒートパイプ1は、携帯情報端末51の筐体と干渉する部位として、電池パック57を逃げた干渉防止用の逃げ部76を設けている。これにより、電池パック57に
シート型ヒートパイプ1が接触しないように、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体に配設することができ、シート型ヒートパイプ1から電池パック57への熱影響も緩和できる。こうした逃げ部76は、電池パック57に限らず、携帯情報端末51の筐体内部に組み込まれる各種機能部品と干渉する部位に設けてもよい。
【0102】
図43は、逃げ部76が切欠きまたは薄肉部である場合の、
図42のF−F線断面図を示している。また
図44は、逃げ部76が貫通孔である場合の、
図42のF−F線断面図を示している。このように、逃げ部76は機能部品や電池パック57の形状に合せて、例えば凹状の切欠きまたは薄肉状に形成したり、貫通した孔に形成したりすることができる。また、逃げ部76は必要に応じてシート型ヒートパイプ
1の適所に形成される。
【0103】
図45は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3において、受熱部19とCPU54との位置関係を示したものである。CPU54の外形は矩形に形成され、その形状に合せて受熱部19が形成される。受熱部19は、CPU54の全面が接触するような形状とするのが好ましい。
【0104】
図46は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3における受熱部19の変形例を示している。ここでの受熱部19は、熱源であるCPU54に対して、その周囲の50%を占める領域を取り囲むように、CPU54の側部に配置される。このように、携帯情報端末51の筐体の厚さに制限があり、受熱部19とCPU54を上下に重ねて配置できない場合であっても、CPU54の周囲の少なくとも50%を占める領域にわたって、シート型ヒートパイプ3の受熱部19をCPU54の側部に配置すれば、シート型ヒートパイプ3を携帯情報端末51の薄い筐体内部に収容できるだけでなく、CPU54からの熱を効果的にシート型ヒートパイプ3で熱輸送させることができる。
【0105】
図47は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3において、受熱部19となる容器15の一部に、シート状の不織布81を装填した状態を示している。不織布81は容器15の内部にあって、シート体11,12の間に配設され、受熱部19に形成されたウィック22が、その内部に装填した不織布81によりさらに微細化される。
図48は、
図47に示す不織布81を拡大したもので、不織布81は金属繊維82の集合体からなり、受熱部19におけるウィック22の毛細管力を高めるために、30μm以下の隙間を有している。これにより、受熱部19では、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22に加えて、金属繊維83からなる不織布81の毛細管力が作用することで、受熱部31に素早く作動液を還流させて、CPU54からの熱を効率よく奪うことが可能になり、シート型ヒートパイプ3の性能を向上させることができる。
【0106】
以上のように、上記実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4では、エッチング加工された金属シートとしてのシート体11,12,13を2枚以上積み重ねて、少なくとも溶接のための封止部17を除く外周部の一部が、例えば拡散による接合により、厚さt1が0.5mm以下の密閉された容器15を形成している。
【0107】
この場合、シート体11,12,13の表面である片面または両面にエッチング加工を施し、少なくとも封止部17を除く外周部の一部を接合することで、密閉された容器15の厚さt1を例えば0.5mm以下に薄くしても、その容器15の内面に微細な凹凸を形成して、十分な熱輸送能力を有する薄いシート型ヒートパイプ1,2,3,4を得ることができる。また、容器15の厚さを薄型化することで、携帯情報端末51などの薄い筐体内にも、本実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4を無理なく設置することができる。
【0108】
また、前記シート体11,12は0.05mm〜0.3mmの範囲の厚さt2を有し、またシート体13も0.05mm〜0.3mmの範囲の厚さt3を有しており、エッチング加工により蒸気通路20と溝26などからなるウィック22が形成され、シート型ヒートパイプ1,2,3,4は、そうしたシート体11,12,13を積み重ねて拡散接合した構成を有している。
【0109】
この場合、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の片側面や、0.05mm〜0.3mmの厚さt3を有するシート体13の裏表両面にエッチング加工を施すことで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成できる。また、厚さが0.05mm〜0.3mm、好ましくは0.1mm〜0.2mmの厚さt2のシート体11,12と、さらには同様の厚さt3のシート体13を積み重ねて接合する場合、特に拡散接合を行なうことで、その製造性を高めることができる。
【0110】
また、本実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3では、シート体11,12が2枚だけで構成され、ハーフエッチング加工によりシート体11,12に蒸気通路20と溝26などからなるウィック22が形成され、これらのシート体11,12を積み重ねて接合した構成を有している。
【0111】
この場合、シート体11,12の片側面にハーフエッチング加工を施すことで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成できる。また、金属シートは2枚だけで構成されるので、接合した部位の信頼性が高く、しかも容器15の厚さを簡単に0.5mm以下に形成できる。
【0112】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工により蒸気通路20とウィック22となる溝26が形成されており、この溝26は、蒸気通路20の両側部に蒸気通路20と直交して配置される第1溝26Aと、第1溝26Aよりも蒸気通路20から離れて、蒸気通路20と直交して配置される第2溝26Bとを有し、第1溝26Aの数が第2溝26Bの数よりも多く形成される。
【0113】
この場合、容器15の厚さt1を0.5mm以下の極薄状にすると蒸気通路20が狭くなるので、容器15の内部で凝縮した作動液である例えば水が蒸気通路20を塞がないように、微細な第1溝26Aを蒸気通路20の両側部に設置すると共に、第1溝26Aの数を第2溝26Bの数よりも多くして微細化することで、第1溝26Aによる作動液の吸収能力(毛細管力)を増やして、シート型ヒートパイプ1,2,3,4としての性能を向上させることができる。
【0114】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工によりウィック22となる溝26が形成されており、一方の第1シート体11に形成された溝26と、他方の第2シート体12に形成された溝26が、これらのシート体11,12を重ね合わせたときに、互い違いに配置される構成となっている。
【0115】
この場合、一方の第1シート体11に形成された溝26と、他方の第2シート体12に形成された溝26を、互い違いに配置することで、ウィック22が微細化されて毛細管力が高まり、シート型ヒートパイプ1,2,3,4としての性能を向上させることができる。
【0116】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工によりウィック22となる溝26が形成され、一方の第1シート体11に形成された溝26の開口部を、他方の第2シート体12の壁27で塞いで構成される。
【0117】
この場合、第1シート体11に形成された溝26の開口部を、他方の第2シート体12の壁27で塞ぐことで、ウィック22が微細化されて毛細管力が高まり、シート型ヒートパイプ1,2,3,4としての性能を向上させることができる。
【0118】
また、本実施例における容器15の外周部は、それぞれのシート体11,12,13の側壁23を拡散接合して形成され、側壁23の幅d4は0.3mm以上に形成される。
【0119】
この場合、容器15の外周部を形成するシート体11,12,13の側壁23の幅d4を、少なくとも0.3mm以上確保することで、良好な拡散接合が可能となり、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ1,2,3,4を提供できる。
【0120】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工によりウィック22となる溝26と壁27が形成され、壁27は、幅d2が0.25mm未満の複数の第1壁27Aと、幅d3が0.25mm以上の複数の第2壁27Bとからなり、これらのシート体11,12を積み重ねて拡散接合する構成となっている。
【0121】
この場合、ウィック22の一部に0.25mm以上の幅d3を有する第2壁27Bが形成されるので、その第2壁27Bを利用して、ウィック22の部分でシート体11,12どうしの拡散接合が可能となり、薄いシート型ヒートパイプ1,2,3であっても十分な強度を保つことができる。
【0122】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工によりウィック22となる溝26が形成され、その溝26の幅d1が、0.05mmから0.3mmの範囲に形成される。
【0123】
この場合、ウィック22を形成する溝26の幅d1を、0.05mmから0.3mmの範囲とすることで、ウィック22による毛細管力を高めて、シート型ヒートパイプ1,2,3,4としての性能を向上させることができる。
【0124】
また、本実施例のシート体11,12は、エッチング加工により蒸気通路20とウィック22が形成され、特に第1実施例のシート型ヒートパイプ1において、その蒸気通路20は、複数形成された第1蒸気通路20Aが、他に形成された一つあるいは複数の第2蒸気通路20Bと連通している。
【0125】
この場合、シート型ヒートパイプ1のどの部位に受熱部と放熱部が位置したとしても、第1蒸気通路20Aと第2蒸気通路20Bがそれぞれ連通しているので、シート型ヒートパイプ1の全面を均熱化できる。
【0126】
また本実施例では、スマートフォンなどの携帯情報端末51として、薄型のシート型ヒートパイプ1,2,3,4を、その筐体の内部に設置している。
【0127】
この場合、薄型のシート型ヒートパイプ1,2,3,4は、携帯情報端末51の薄い筐体内に設置が可能であり、筐体の広い領域に良好な熱拡散を行なえることから、CPU54などの熱部品の性能を十分発揮させることができる。
【0128】
また、本実施例における携帯情報端末51の筐体は、その一側に表示や接触操作が可能なタッチパネル53を備えており、少なくともタッチパネル53の背面をなす金属板59の50%以上を占める領域に、シート型ヒートパイプ1を設置して構成される。
【0129】
この場合、シート型ヒートパイプ1で輸送された熱が、携帯情報端末51の筐体の広い領域に速やかに拡散されるので、筐体のほぼ全域で良好な熱拡散を実現できる。そのため、CPU54などの熱部品の性能を十分発揮させつつ、タッチパネル53に生じるヒートスポットを緩和することができる。
【0130】
また、本実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4には、貫通孔などの筐体への取付け部75を形成するのが好ましい。
【0131】
この場合、シート型ヒートパイプ1,2,3,4に筐体への取付け部75を形成することで、その取付け部75を利用して、シート型ヒートパイプ1,2,3,4を筐体に容易に取り付けることができる。
【0132】
また、本実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4に、電池パック57または機能部品の逃げ部76となる貫通孔や、切欠きまたは薄肉部を形成してもよい。
【0133】
この場合、筐体の内部で、シート型ヒートパイプ1,2,3,4と電池パック57や機能部品とを干渉させることなく容易に設置でき、携帯情報端末51の薄型化を容易に実現できる。
【0134】
また、本実施例の携帯情報端末51は、シート型ヒートパイプ2,3,4が熱接続された放熱プレート60を、筐体の内部に設置して構成される。
【0135】
この場合、シート型ヒートパイプ2,3,4の形状に依存することなく、放熱プレート60によって筐体内部での熱拡散が良好になり、CPU54などの熱部品の性能向上に繋げることができる。
【0136】
また、特に第3実施例のシート型ヒートパイプ3では、その受熱部19をCPU54などの熱源の周囲の50%以上を占める領域にあって、CPU54の側部に配置している。
【0137】
この場合、CPU54の周囲の少なくとも50%を占める領域にわたって、シート型ヒートパイプ3の受熱部19をCPU54の側部に配置すれば、CPU54からの熱を効果的にシート型ヒートパイプ3で熱輸送させて、筐体内部での熱拡散が良好になり、CPU54などの熱部品の性能向上に繋げることができる。
【0138】
また、こうした情報携帯端末51に組み込まれるシート型ヒートパイプ1,2,3,4の厚さt1は、0.5mm以下とするのが好ましい。
【0139】
この場合、厚さt1が0.5mm以下に形成されたシート型ヒートパイプで1,2,3,4であれば、より薄い携帯情報端末51の筐体内にもシート形ヒートパイプ1,2,3,4を設置でき、携帯情報端末51の薄型化を容易に実現できる。
【0140】
また、例えば第3実施例のシート型ヒートパイプ3では、エッチング加工されたシート体11,12を2枚以上積み重ねて、接合により密閉された容器15を形成し、受熱部19となる容器15内の一部に、金属繊維82からなる不織布81を装填して構成される。
【0141】
この場合、シート体11,12の表面にエッチング加工を施すことで、密閉された容器の厚さを例えば0.5mm以下に薄くしても、その容器15の内面に微細な凹凸を形成して、十分な熱輸送能力を有する薄いシート型ヒートパイプ3を得ることができ、携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ3を設置できる。また、容器15の一部をなす受熱部19のウィック22が、その内部に装填した不織布81により微細化され、シート型ヒートパイプ3の性能向上に繋げることができる。
【0142】
また、上記シート体11,12は、ハーフエッチング加工により蒸気通路20とウィック22となる溝26が形成されており、シート体11,12を積み重ねて接合することにより、厚さt1が0.5mm以下の密閉された容器15を形成している。
【0143】
この場合、シート体11,12の表面にハーフエッチング加工を施すことで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成できる。また、容器15の厚さt1を0.5mm以下とすることで、携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ3を無理なく設置することができる。
【0144】
また、各実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4に共通して、シート体11,12は、エッチング加工によりその厚さt2の50%以上の深さL1に、蒸気通路20としての掘込み部である通路部21を形成している。
【0145】
この場合、エッチング加工によりシート体11,12の厚さt2の50%以上の深さL1の掘込み部となる通路部21を、蒸気通路20として形成することで、薄いシート型ヒートパイプ1,2,3,4であっても、容器15の内部で十分な蒸気通路を確保でき、シート型ヒートパイプ1,2,3,4の性能向上に繋げることができる。
【0146】
また、各実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4に共通して、シート体11,12は、エッチング加工によりウィック22となる溝26の掘り込み深さL2よりも、蒸気通路20の掘り込み深さL1が深く形成される。
【0147】
この場合、エッチング加工によりシート体11,12のウィック22となる溝26の掘り込み深さL2よりも、蒸気通路20となる通路部21の掘り込み深さL1を深く形成することで、薄いシート形ヒートパイプ1,2,3,4であっても、容器15の内部で十分な蒸気通路を確保し、且つ微細なウィック22を形成することができ、シート型ヒートパイプ1,2,3,4の性能向上に繋げることができる。
【0148】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、各実施例ではシート体11,12若しくはシート体11,12,13を拡散接合しているが、例えば超音波接合などの別な接合方式を採用してもよい。また、
図29〜
図48に示すそれぞれの特徴を、第1実施例〜第4実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3、4に一乃至複数取込んでもよい。さらにシート型ヒートパイプは、所望の性能が得られるものならばどのような形状であっても構わない。