(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さが0.1〜1mmのアリルエステル樹脂シートからなる基材(A)の一方の主面にシリコーン粘着剤層(B)、他方の主面にフッ素含有化合物を含む防汚性ハードコート層(C)を具備する透明粘着シートであって、前記粘着剤層(B)とガラス板との23℃での密着力が0.01〜1.0N/25mmであることを特徴とする透明粘着シート。
前記基材(A)の厚さが0.1〜0.5mmであり、前記粘着層(B)の厚さが10〜75μmであり、前記防汚性ハードコート層(C)の厚さが0.5〜20μmである請求項1に記載の透明粘着シート。
前記アリルエステル樹脂シートが、(メタ)アリルエステル化合物を50質量%以上含有するアリルエステル樹脂組成物を硬化して得られるものである請求項1または2に記載の透明粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の透明粘着シートは、厚さが0.1〜1mmのアリルエステル樹脂シートからなる基材(A)の一方の主面にシリコーン粘着剤層(B)、他方の主面にフッ素含有化合物を含む防汚性ハードコート層(C)を具備する透明粘着シートであって、前記粘着剤層(B)とガラス板との23℃での密着力が0.01〜1.0N/25mmであることを特徴とする。
【0014】
[基材(A)]
本発明の透明粘着シートを構成する基材(A)は、アリルエステル樹脂組成物を硬化して得られるアリルエステル樹脂シートからなる。アリルエステル樹脂組成物は、アリル基またはメタリル基(以降、あわせて(メタ)アリル基と言う場合がある。(メタ)アリルエステル、(メタ)アリルアルコールも同様である。)とエステル構造を有する(メタ)アリルエステル化合物を含む樹脂組成物であり、樹脂組成物中に(メタ)アリルエステル化合物を50質量%以上含有することが好ましい。樹脂組成物中の(メタ)アリルエステル化合物の含有量が50質量%以上であると耐熱性、透明性など優れたアリルエステル樹脂シートの特徴を有することができ、好適である。
【0015】
(メタ)アリル基とエステル構造を有する(メタ)アリルエステル化合物は、(1)(メタ)アリル基及び水酸基を含む化合物(表現を簡略化するため、以下では「(メタ)アリルアルコール」と総称する。)とカルボキシル基を含む化合物とのエステル化反応、(2)(メタ)アリル基及びカルボキシル基を含む化合物と水酸基を含む化合物とのエステル化反応、または(3)(メタ)アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物と多価アルコールとのエステル交換反応により得ることができる。カルボキシル基を含む化合物がジカルボン酸とジオールとのポリエステルオリゴマーである場合には、末端のみ(メタ)アリルアルコールとのエステルとすることもできる。
【0016】
(メタ)アリルアルコールとジカルボン酸からなる(メタ)アリルエステル化合物の具体例としては、一般式(1)
【化3】
(R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基のいずれかの基を表し、A
1はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基を表す。)
で示される化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。この化合物は後述のアリルエステル化合物の原料となる他、反応性希釈剤(反応性モノマー)として本発明のアリルエステル樹脂組成物に含まれていてもよい。一般式(1)中のA
1は後述の一般式(2)、一般式(3)におけるA
2、A
3と同様のものが好ましい。
【0017】
アリルエステル樹脂組成物の主な硬化成分である(メタ)アリル基とエステル構造を有する(メタ)アリルエステル化合物としては、アリル基及び/またはメタリル基を末端基とし、多価アルコールとジカルボン酸とから形成されたエステル構造を有する(メタ)アリルエステル化合物であることが好ましい。アリルエステル樹脂組成物には上記化合物以外の成分として、後述する硬化剤、反応性希釈剤、他のモノマー、添加剤、その他ラジカル反応性の樹脂成分等を含有してもよい。
【0018】
[アリルエステル化合物]
本発明において用いられるアリルエステル樹脂組成物の主成分は、一般式(2)
【化4】
(式中、R
3は水素原子またはメチル基を表し、A
2はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基を表す。)
で示される基を末端基として有し、かつ一般式(3)
【化5】
(式中、A
3はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基を表し、Xは多価アルコールから誘導された1種以上の有機残基を表す。ただし、Xはエステル結合によって上記一般式(2)で示される基を末端基とし、上記一般式(3)で示される構造を構成単位とする分岐構造を形成することができる。)
で示される構造を構成単位として有するアリルエステル化合物であることが好ましい。
【0019】
上記アリルエステル化合物において、前記一般式(2)で示される末端基の数は少なくとも2個以上であるが、前記一般式(3)のXが分岐構造を有する場合には3個以上となる。この場合、各末端基のR
3も複数個存在することになるが、これらの各R
3は必ずしも同じ種類でなくてもよく、ある末端はアリル基、他の末端はメタリル基という構造であっても構わない。また、全ての末端がアリル基またはメタリル基である必要はなく、硬化性を損なわない範囲で、その一部はメチル基またはエチル基等の非重合性基であってもよい。A
2で示される構造についても同様に、各末端基で異なっていてもよい。例えば、ある末端のA
2はベンゼン環、他方はシクロヘキサン環という構造であってもよい。
【0020】
一般式(2)におけるA
2はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基である。ジカルボン酸に由来する部分はA
2に隣接するカルボニル構造で示されている。したがって、A
2の部分はベンゼン骨格やシクロヘキサン骨格を示す。
【0021】
A
2構造を誘導するジカルボン酸としては特に制限はないが、原料の入手しやすさの点からは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−m,m’−ジカルボン酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、p−カルボキシフェニル酢酸、メチルテレフタル酸、テトラクロルフタル酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が特に好ましい。中でも分子内に芳香環を有さない1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いることが耐光性の点で好ましく、高い透明性が求められる用途には1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0022】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、A
2構造を誘導するジカルボン酸に加え、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水エンディック酸、無水クロレンド酸等の(反応時において)非環状のジカルボン酸を使用してもよい。
【0023】
一般式(3)で示される構造単位は、アリルエステル化合物中に少なくとも1つは必要であるが、この構造が繰り返されることによりアリルエステル化合物全体の分子量がある程度大きくなった方が適切な粘度が得られるので作業性が向上し、硬化物の靭性も向上するので好ましい。しかし、分子量が大きくなりすぎると硬化物の架橋点間分子量が大きくなりすぎるため、ガラス転移温度(Tg)が低下し、耐熱性が低下するおそれもある。用途に応じて適切な分子量に調整することが大切である。アリルエステル化合物の重量平均分子量は500〜200,000が好ましく、1,000〜100,000がさらに好ましい。
【0024】
また、一般式(3)におけるA
3はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基であり、その定義及び好ましい化合物の例は一般式(2)におけるA
2と同様である。
【0025】
一般式(3)中のXは、多価アルコールから誘導された1種以上の有機残基を表す。多価アルコールとは2個以上の水酸基を有する化合物であり、X自体は、多価アルコールの水酸基以外の骨格部分を示す。多価アルコール中の水酸基は少なくとも2個が存在していればよいため、原料となる多価アルコールが3価以上、すなわち、水酸基が3個以上のときは、未反応の水酸基が存在していてもよい。多価アルコールの炭素数は2〜20が好ましい。
【0026】
炭素数2〜20の多価アルコールの具体例のうち、2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール−Aのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノール−Aのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールA、2,2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン等が挙げることができる。
また、3価以上の多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタリスリトール等が挙げられる。これらの多価アルコールの2種以上の混合物であってもよい。また、上述の具体例に限定されるものではない。
【0027】
アリルエステル化合物中の一般式(3)で示される構造単位としては、同一の構造単位が繰り返されていても、異なる構造単位が含まれていてもよい。つまり、アリルエステル化合物は共重合タイプであってもよい。この場合、一つのアリルエステル化合物には数種類のXが存在することになる。例えば、Xの一つがプロピレングリコール由来の残基、もう一つのXがトリメチロールプロパン由来の残基であるという構造でもよい。この場合、アリルエステル化合物はトリメチロールプロパン残基の部分で枝分かれすることになる。A
3も同様にいくつかの種類が存在してもよい。以下にR
3がアリル基、A
2及びA
3がイソフタル酸由来の残基、Xがプロピレングリコールとトリメチロールプロパンの場合の構造式を示す。
【化6】
【0028】
[アリルエステル化合物の製造方法]
本発明に用いられるアリルエステル化合物は、多価カルボン酸のアリルエステルモノマーと2〜6個の水酸基を有する多価アルコールとのエステル交換反応により製造することができる。多価カルボン酸のアリルエステルモノマーは多価カルボン酸と(メタ)アリルアルコールのエステルであり、特にジカルボン酸のアリルエステルモノマーが好ましい。具体的には、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸ジアリル、メチルテトラヒドロフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、コハク酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。これらアリルエステルモノマーは、必要に応じて2種以上使用することもできる。また、上述の具体例に限定されるものではない。
【0029】
多価アルコールとしては前述のX構造を誘導する多価アルコールを使用する。末端に(メタ)アリルエステル基を有するアリルエステル化合物を得るためには、これらの使用比率として、2価のカルボン酸のカルボキシル基よりも、多価アルコールのヒドロキシル基を少なく用いる必要がある。
【0030】
本発明で使用するエステル交換反応触媒としては、従来知られているエステル交換触媒が使用できるが、特に好ましいのはアルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの酸化物、及び弱酸塩、Mn,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,Co及びSnの酸化物、水酸化物、無機酸塩、アルコラート、有機酸塩、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物等を挙げることができる。中でも、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドが好ましい。
【0031】
使用量としては、触媒の活性によって異なるが、適度な速度でアリルアルコールを留出させ得るような量を使用すべきである。一般的には、多価カルボン酸のアリルエステルモノマーに対して0.0001〜1質量%、特に好ましくは0.001〜0.5質量%程度を使用することが好ましい。
【0032】
この製造工程における反応温度は、特に制限はないが、好ましくは120〜230℃の範囲、より好ましくは140〜200℃の範囲である。
【0033】
反応の実施の形態としては、反応の進行を促進させるため、減圧下で行うか、適当な溶媒を使用して副生するアリルアルコールを反応系外に除去しながら行う必要がある。
【0034】
アリルエステル化合物の具体的な製造方法は例えば特公平6−74239号公報に記載されている。
【0035】
[硬化剤]
本発明において用いられるアリルエステル樹脂組成物には硬化剤を使用してもよい。使用できる硬化剤としては特に制限はなく、一般に重合性樹脂の硬化剤として用いられているものを用いることができる。中でも、アリル基の重合開始の点からラジカル重合開始剤を添加することが望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。
【0036】
有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等の公知のものが使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。
【0037】
また、上記の光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0038】
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0039】
これらのラジカル重合開始剤は1種でもよく、2種以上を混合ないし組み合わせて用いてもよい。アリルエステル樹脂組成物のフィルムまたはシートの半硬化はUVなどの活性エネルギー線の照射によると、半硬化で止める反応制御が容易となる。また、その後の二次硬化、さらにその後の後硬化には有機過酸化物などの熱硬化型のラジカル重合開始剤が適している。したがって、二種類以上の硬化剤を組み合わせることがより好ましく、特に光重合開始剤と熱重合開始剤を組み合わせることが好ましい。
【0040】
これら硬化剤の配合量には特に制限はないが、アリルエステル樹脂組成物中のラジカル重合成分100質量部に対し、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.5〜5質量部配合することがより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部より少ないと充分な硬化速度が得ることが困難であり、また配合量が10質量部を超えると、最終的な硬化物がもろくなり、機械強度が低下する場合がある。
【0041】
[反応性モノマー]
本発明において用いられるアリルエステル樹脂組成物には、硬化反応速度のコントロール、粘度調整(作業性の改善)、架橋密度の向上、機能付加等を目的として、反応性モノマー(反応性希釈剤)を加えることもできる。反応性モノマーとしては特に制限はなく、種々のものが使用できるが、アリルエステル化合物と反応させるためにはビニル基、アリル基等のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。例えば、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、架橋性多官能モノマー等が挙げられる。中でも、架橋性多官能性モノマーを使用すれば、硬化物の架橋密度を制御することもできる。これら反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示す。
【0042】
不飽和脂肪酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸芳香族エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0043】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン及びビニルトルエン等を挙げることができる。
【0044】
飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等を挙げることができる。
【0045】
架橋性多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステルジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−ω−(メタ)アクリロイロキシピリエトキシ)フェニル)プロパン等のジ(メタ)アクリレート;
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸アリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の2官能の架橋性モノマー;
トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストーリルトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の3官能の架橋性モノマー;
さらに、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の架橋性モノマー等が挙げられる。
【0046】
また、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジメチレンジアクリレート及び/または5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジンクジアクリレート、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキシド変性ジアクリレート、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルジアクリレート、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテルジアクリレート、ビスフェノールF−エチレンオキシド変性ジアクリレート、水添ビスフェノールF−ジグリシジルエーテルジアクリレート、水添ビスフェノールF−エチレンオキシド変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート等のエポキシアクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することにより得られるポリエステルジアクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることにより得られるウレタンジアクリレート等の2官能(メタ)アクリル化合物を、反応性希釈剤を兼ねて併用することができる。
【0047】
上記の反応性モノマーは、1種単独で、または2種以上混合または組み合わせて用いることができる。これらの反応性モノマーの樹脂成分の使用量には特に制限はないが、アリルエステル化合物100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5質量部〜100質量部であることが特に好ましい。反応性モノマーの使用量が1質量部未満であると、粘度低下効果が小さくいために作業性が悪化したり、反応性モノマーとして多官能性モノマーを使用した場合には架橋密度が低くなり耐熱性が不十分になったりすることがある。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の優れた透明性が発現されなかったり、アリルエステル樹脂由来の機械強度が低下したりする場合がある。
【0048】
[ラジカル反応性の樹脂成分]
本発明において用いられるアリルエステル樹脂組成物は、諸物性を改良する目的でラジカル反応性の樹脂成分を含んでいてもよい。これら樹脂成分としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0049】
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸(及び必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物を、必要に応じてスチレン等の重合性不飽和化合物に溶解したもので、例えば「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第16頁〜第18頁及び第29頁〜第37頁などに記載されている樹脂を挙げることができる。この不飽和ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができる。
【0050】
ビニルエステル樹脂はエポキシ(メタ)アクリレートとも呼ばれ、一般にエポキシ樹脂に代表されるエポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和基を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂、またはカルボキシル基を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレート等の分子内にエポキシ基を持つ重合性不飽和化合物のエポキシ基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂を指す。詳しくは「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第336頁〜第357頁などに記載されており、その製造は、公知の方法により行うことができる。
【0051】
ビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ノボラック型ポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0052】
上記のラジカル反応性の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上混合または組み合わせて用いることができる。これらのラジカル反応性の樹脂成分の使用量には特に制限はないが、アリルエステル化合物100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。反応性モノマーの使用量が1質量部未満であると、ラジカル反応性の樹脂成分由来の機械強度向上などの効果が小さく、作業性や成形性が悪化することがある。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の耐熱性が現れない場合がある。
【0053】
[添加剤]
本発明において用いられるアリルエステル樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性を改良する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤、難燃剤、架橋助剤、無機充填材、有機充填材、重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の公知の各種添加剤を使用することができる。特に、光線透過率を阻害しないものが好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、4−tert−ブチルフェニルサリシラート等のサリシラート類が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、0.03〜1.7質量部がより好ましく、0.05〜1.4質量部が最も好ましい。紫外線吸収剤が0.01質量部未満では十分な効果が期待できず、2質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0056】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール系、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート等の硫黄系、トリスノニルフェニルホスファイト等のリン系の酸化防止剤、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜4質量部がより好ましく、1〜3質量部が最も好ましい。酸化防止剤が0.01質量部未満では十分な効果が期待できず、5質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0058】
離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、フッ素系化合物類、シリコーン化合物類等が挙げられる。離型剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.03〜1.7質量部がより好ましく、0.05〜1.4質量部が最も好ましい。離型剤が0.01質量部未満では十分な効果が期待できず、2質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0059】
滑剤としては、特に制限はなく、一般に使用されているものを用いることができる。中でも、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤等が好ましく、金属石鹸系滑剤が特に好ましい。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは複合体として用いてもよい。
【0060】
着色剤としては、アントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系等の有機顔料、アゾイック染料、硫化染料等の有機染料、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、チタンブラック、窒化ホウ素、パール顔料、フォトクロミック顔料、表面処理粉体等の無機顔料等が挙げられる。その配合量は特に限定されない。
【0061】
難燃剤の具体例としては、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する酸変性臭素化エポキシ化合物等のような臭素含有化合物、赤リン、酸化スズ、アンチモン系化合物、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤、リン酸アンモニウム化合物、ホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含窒素リン化合物、ホスファゼン化合物等のリン系化合物等が挙げられる。
【0062】
難燃剤の配合量としては、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して10〜50質量部が好ましい。難燃剤が10質量部未満では十分な難燃効果が期待できず、50質量部を超えると透明性が低下し好ましくない。
【0063】
架橋助剤の具体例としては、熱重合開始剤による部分架橋処理に際し架橋助剤として働く化合物であり、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマーが例示される。架橋助剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して、1〜30質量部が好ましい。架橋助剤が1質量部未満では十分な効果が期待できず、30質量部を超えるとフィルムの柔軟性が低下し好ましくない。
【0064】
無機充填材の具体例としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、結晶性シリカ、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉、ガラス球、ガラス繊維、炭素繊維等の公知慣用の無機充填材が使用できるが例示できるが、これらに限定されるものではない。また、有機充填材の具体例としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、弗素樹脂等の公知慣用の有機充填材が使用できるが例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの無機充填材や有機充填材は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、本発明の主旨を損ねない範囲、すなわち組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して1〜50質量部で添加することができる。
【0065】
さらに、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、シリカ、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、アクリル系、高分子系等の消泡剤及び/または、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を、本発明の主旨を損ねない範囲で添加することができる。これらの添加剤は上述した具体例に制限されるものではなく、本発明の目的、または効果を阻害しない範囲であらゆるものを添加することができる。
【0066】
本発明におけるアリルエステル樹脂組成物を硬化して得られるアリルエステル樹脂シートを製造するにあたっては、一定の表面硬度が得られれば、どのような硬化方法を選択してもよい。一定以上の表面硬度を得るには、アリルエステル樹脂組成物をフィルム形状に塗工した後、光硬化及び熱硬化手法、もしくは熱硬化手法のみをとるのが好ましい。
【0067】
アリルエステル樹脂組成物を硬化させる際の条件等には特に制限はないが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムなどの透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板上に塗工し流延させた後、光硬化及び熱硬化、もしくは熱硬化を実施するのが好適である。
【0068】
光硬化の場合、紫外線照射法が一般的であり、例えば紫外線ランプを使用して紫外線を発生させて照射することができる。紫外線ランプには、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、パルス型キセノンランプ、キセノン/水銀混合ランプ、低圧殺菌ランプ、無電極ランプ、LEDランプ等があり、いずれも使用することができる。これらの紫外線ランプの中でも、メタルハライドランプもしくは高圧水銀ランプが好ましい。照射条件はそれぞれのランプ条件によって異なるが、照射露光量が20〜5000mJ/cm
2程度が好ましい。また、紫外線ランプには楕円型、放物線型、拡散型等の反射板を取り付け、冷却対策として熱カットフィルター等を装着するのが好ましい。また、硬化促進のために、予め30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0069】
熱硬化の場合、加熱方法は特に限定されないが、熱風オーブン、遠赤外線オーブン等の均一性に優れた加熱方法がよい。硬化温度は約100〜200℃、好ましくは120〜180℃である。硬化時間は、硬化方法により異なるが、熱風オーブンであれば0.5〜5時間、遠赤外線オーブンであれば0.5〜60分間が好ましい。
【0070】
また、光重合開始剤を用いた紫外線硬化や、有機過酸化物やアゾ化合物を用いた熱硬化は、ラジカル反応であるため酸素による反応阻害を受けやすい。硬化反応時の酸素阻害を防止するため、アリルエステル樹脂組成物は、透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板上へ塗工、流延後、光硬化及び/または熱硬化を実施する際に、硬化性ワニス上へ透明カバーフィルムを施し、流延されたアリルエステル樹脂組成物表面の酸素濃度を1%以下にすることが好ましい。透明カバーフィルムは、表面に空孔がなく、酸素透過率の小さいもので、かつ紫外線硬化や熱硬化時に発生する熱に耐えられるものを使用する必要がある。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、アセテート樹脂、アクリル樹脂、フッ化ビニル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ノルボルネン樹脂系、等のフィルムであり、これらを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。ただし、硬化後の硬化物との剥離が可能でなければならないため、これらの透明カバーフィルムの表面にシリコーン樹脂塗布、フッ素樹脂塗布等の易剥離処理が施されていてもよい。
【0071】
本発明で用いるアリルエステル樹脂組成物は液状であることから、公知の塗布装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布、塗工等を行うことができる。塗布方式としては、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピナーコート、注型成形法、光造形法等の公知の方法を用いることができる。なお、このときの好ましい粘度範囲としては常温で100〜100,000mPa・sの範囲である。
【0072】
アリルエステル樹脂シートの厚さは、0.1〜1mmであり、0.1〜0.8mmの範囲が好ましく、0.1〜0.5mmの範囲がより好ましい。0.1mm以上であると落球特性などのガラス板の保護性能が良好であり、1mm以下であると製品コストをおさえることができる。
【0073】
[粘着剤層(B)]
本発明の透明粘着シートを構成する粘着剤層(B)は、本発明の透明粘着シートを粘着剤層(B)を介してガラス板と貼り合わせたときに粘着剤層(B)とガラス板との23℃での密着力が0.01〜1.0N/25mmを満たすものであれば特に制限はないが、以下に詳述する付加反応型シリコーン粘着剤を使用すると比較的低温で層状形成(加工)が可能となるためエネルギー経済性に優れており、再剥離性が良好である。ここでいう「ガラス基板」とはコーニング社製GORILLA(登録商標)ガラス(0.7mm厚)をエタノールで洗浄し、ボックスオーブンにて80℃、5分間乾燥したものを指す。好ましい密着力は0.03〜0.5N/25mmであり、より好ましくは0.05〜0.5N/25mmである。
【0074】
粘着剤層(B)に適用される付加反応型シリコーン粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムやシリコーンレジンを含有してなり、これをヒドロシリル基(SiH基)含有の架橋剤、ならびに、必要に応じて使用される硬化触媒などを添加したもの等の、従来公知の付加反応型シリコーン粘着剤の中から適宜選択することができる。付加反応型シリコーン粘着剤は硬化処理することにより液状からゲル状になり、基材に対する着脱に好適な微粘着性を示す。
【0075】
付加反応型シリコーン粘着剤として、より具体的には、信越化学工業社製のKR−3700、KR−3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306、X−40−3501、X−70−201S等、東レ・ダウコーニング社製のSD4580PSA、SD4584PSA、SD4585PAS、SD4587LPSA、SD4560PSA、SD4570PSA、SD4600FCPSA、SD4593PSA、DC7651ADHESIVE、DC7652ADHESIVE等、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSR1512、TSR1516、XR37−B9204等を使用することができる。このような付加反応型シリコーンの具体例は、例えば、特開平10-219229号公報に記載されている。 なお、これらの粘着剤は、粘着剤層とガラス板との23℃での密着力が0.01〜1.0N/25mmを満たすために、数種類を混合して使用することが可能である。密着力が0.01N/25mm以上であると使用時にフィルム端部から容易に剥がれることがなく、1.0N/25mm以下であるとシートの着脱を容易に行うことができる。
【0076】
硬化触媒としては、白金系の触媒、すなわち、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコール溶液との反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサン化合物との反応物、白金−オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体、白金−リン錯体等が挙げられる。上記のような硬化触媒として、より具体的には、信越化学工業製のPL-50T、東レ・ダウコーニング社製のSRX-212等が挙げられる。
【0077】
硬化触媒の配合量は白金元素量として、シリコーン樹脂成分とシリコーンゴム成分の合計量に対して、通常5〜2000ppm、好ましくは、10〜500ppmである。5ppm未満では、硬化性が低下して粘着剤層の凝集力(保持力)が低下し、2000ppm以上では、白金含有量が多くコストアップになり、かつ粘着剤層の安定性が低下する。
【0078】
粘着剤層(B)を構成する付加反応型シリコーン粘着剤は、上記の成分に加えて、目的とする特性を阻害しない範囲内で、任意成分として各種の添加剤を含むことができる。添加剤としては、ジメチルシロキサンやジメチルジフェニルシロキサンのような非反応性のポリオルガノシロキサン、フェノール系およびその他の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、カチオン界面活性剤のような帯電防止剤、粘着剤を塗布する際に粘度を下げるために用いるトルエンやキシレンのような不活性な溶剤、着色剤やフィラー等が挙げられる。
【0079】
粘着剤層(B)は、アリルエステル樹脂シート上に、上記粘着剤を公知の塗布装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布等した後、加熱することで形成することができる。粘剤層(B)の厚さは、10〜75μmの範囲が好適である。10μm以上であると段差追従性が良好であり、75μm以下であるとコストをおさえることができる。
【0080】
塗布方式としては、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、ドクターコート法、エクストルージョンコート法、スライドコート法、カーテンコート法、押出コート法、スピナーコート法、注型成形法等の公知の方法を用いることができる。
【0081】
加熱方法は特に限定されないが、熱風オーブン、遠赤外線オーブン等の均一性に優れた加熱方法がよい。硬化温度は、60〜150℃、好ましくは、80〜140℃である。60℃未満では、架橋不足により粘着剤層の凝集力(保持力)が低下し、150℃以上で加熱すると機能性層が劣化や変色したりするため好ましくない。また、硬化時間は、硬化方法により異なるが、熱風オーブンであれば0.5〜60分間、遠赤外線オーブンであれば0.5〜20分間が好ましい。
【0082】
[フッ素含有化合物を含む防汚性ハードコート層(C)]
本発明の透明粘着シートを構成する防汚性ハードコート層(C)は、アリルエステル樹脂シートに耐傷性及び防汚性を付与するために設けられ、フッ素含有化合物を含む。防汚性ハードコート層は、フッ素含有化合物およびハードコートを付与する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物から形成される。
【0083】
ハードコートを付与する紫外線硬化性樹脂としては、公知の紫外線硬化型アクリル系樹脂、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等から適宜好適なものを選択して用いることができる。
【0084】
不飽和また、上記紫外線硬化性樹脂にシリカ系粒子、ジルコニア系粒子、チタニア系粒子等無機化合物を添加した有機無機ハイブリッドタイプ樹脂を用いることもできる。これらの無機粒子は、0.001〜0.5μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることで、透明性等の光学特性とハードコート性とを兼ね備えたハードコート層を得ることが可能となる。ここでいう「平均粒子径」とはレーザ回折・散乱法を用い、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて算出した有効径を用いた体積平均粒子径を意味する。
【0085】
フッ素含有化合物としては、特に制限はないが、例えば炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物が挙げられる。
このフッ素含有化合物により、ハードコート層の表面は、防汚性、特に優れた指紋付着防止性を備えたものとなり、さらに撥水撥油性を有する低摩擦表面とすることが出来る。 硬化性組成物中のフッ素系含有化合物の含有量は、溶剤を除いた全成分の合計質量に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%未満では、ハードコート塗膜の靭性が得られず、含有量が5.0質量%を超えると、十分な高硬度な塗膜表面が得られない。
【0086】
市販品の例として、DIC社製のディフェンサ(登録商標)FH−700、荒川工業社製ビームセット(登録商標)1400シリーズ、ニデック社製アシェル、横浜ゴム社製HRシリーズ(HR3406、HR3506)、東洋インキ製造社製リオデュラスEFC200シリーズ等が挙げられる。
【0087】
ハードコート層は、上記フッ素含有化合物および紫外線硬化性樹脂を含む組成物をアリルエステル樹脂シート上に、公知の塗布装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布した後、加熱により乾燥し光重合することで形成することができる。ハードコート層の厚さは、0.5μm〜20μmの範囲が好ましい。0.5μm以上であると、硬度や防汚特性など物性の観点から好ましく、20μm以下であると、透明性が良好である。
【0088】
塗布方式としては、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、ドクターコート法、エクストルージョンコート法、スライドコート法、カーテンコート法、押出コート法、スピナーコート法、注型成形法等の公知の方法を用いることができる。
【0089】
加熱による乾燥方法は特に限定されないが、熱風オーブン、遠赤外線オーブン等の均一性に優れた加熱方法がよい。また、紫外線硬化性樹脂を光重合させる紫外線の光源に特に制限はなく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等適宜好適なものを使用することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの記載により限定されるものではない。実施例1〜3及び比較例1〜6で得られた硬化フィルムの諸物性は以下の方法により評価した。
【0091】
[鉛筆硬度]
ハードコート層(実施例1〜3、比較例2〜6)の表面を、JIS K5600−5−4に基づいて、円柱状に削った鉛筆芯を45度の角度に傾け、上から750gの荷重をかけ、被測定物の表面を10mm程度引っかいて傷の有無を確認し、鉛筆硬度を表面硬度の指標として求めた。比較例1ではアリルエステル樹脂シートの表面に実施した。
【0092】
[耐擦傷性]
スチールウール#0000(日本スチールウール社製)により、ハードコート層(実施例1〜3、比較例2〜6)の表面を、250g/cm
2の荷重をかけながら100回摩擦し、傷の発生の有無および傷の程度を目視により観察した。評価基準は下記の通りであり、◎と○を良好とした。比較例1ではアリルエステル樹脂シートの表面に実施した。
◎:傷の発生なし ○:3本以下の傷が発生 △:傷が3〜10本発生 ×:傷が無数に発生
【0093】
[全光線透過率]
透明粘着シートを、JIS K7361−1に従い日本電色工業(株)製のNDH−2000を使用して、全光線透過率(単位:%)を光学特性の指標として求めた。本明細書において「高透明」とは全光線透過率が90%以上であることを意味する。
【0094】
[粘着剤密着性]
粘着剤層(B)の表面を、カッターナイフを用いて、粘着剤層(B)に2mm間隔で100マスの切り込みを入れた。その部分を、指の腹で粘着層を強く10往復擦り、粘着層が塗工基材(実施例1〜3、比較例1〜5ではアリルエステル樹脂シート、比較例5ではPETシート)から脱落しているかどうかを目視で観察し、下記の3段階で評価をおこなった。
○:基材に全て残っている。
△:50%以上の粘着層が残存している。
×:50%未満の粘着層が残存している。
【0095】
[密着力]
25mm幅で切り出した試験片の粘着剤層(B)側を、被着体(コーニング社製GORILLAガラス(70mm×70mm×0.7mm
t))に貼り合せ、23℃、50%RH雰囲気下で12時間調温調湿した後JIS Z0237に準じて、剥離強度(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、単位:N/25mm)を測定し、密着力とした。
【0096】
[防汚性]
ハードコート層(実施例1〜3、比較例2〜6)表面に油性ペン(ゼブラ社製ハイマッキー(登録商標)黒)で線(6mm幅で長さ20mm)を書き、5分間放置した。ハードコート膜面に付着した油性ペンの線を不織布(旭化成せんい社製ベンコット(登録商標)M−3II)で一方向に往復して拭取った。拭取り後の状態を三波長発光形蛍光灯下で目視観察し、油性ペンの線が目視できなくなるまでの往復回数を以下の2段階で評価した。比較例1ではアリルエステル樹脂シートの表面に実施した。
○:3往復未満で拭取ることができた。
×:3往復以上拭いても拭取ることができなかった。
【0097】
[再剥離性]
25mm幅で切り出した試験片の粘着剤層(B)側を、被着体(コーニング社製GORILLAガラス)に貼り合せた。10回剥離、再付着を繰り返し、JIS Z0237に準じて、密着力(剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、23℃×50%RH、貼付時間:12時間、測定値単位:N/25mm)を測定した。1回目と10回目の密着力を比較し、以下の2段階で評価した。
○:1回目と20回目の粘着力の差が30%未満
×:1回目と20回目の粘着力の差が30%以上
【0098】
[保護性能(落球特性)]
60x60mm角で切り出した試験片の粘着剤層(B)側を、被着体(コーニング社製GORILLAガラス)に貼り合せた。このシートをSUS304板(2mm厚)の上に低発泡ポリプロピレンシート(1mm厚、住化プラスチックス製スミセラー(登録商標)呼称グレード:1310 070)を敷き、その上に置いた。130gの鋼球をシート上に落下させ、被着体が割れたかどうかを目視で確認し、以下の2段階で評価した。
○:落下高さが50cm以上で被着体が割れた
×:落下高さが50cm未満で被着体が割れた。
【0099】
[ゲル分率]
後述の実施例に記載の半硬化または硬化したアリルエステル樹脂シート1gをアセトン100ml中で4時間還流下加熱処理し、可溶成分を抽出後、固形物をろ別した。得られた固形物を100℃で2時間乾燥させ、以下の計算式でゲル分率を計算した。
【数1】
式中、W
1は抽出前のシートの質量、W
0は抽出前のシートの質量
【0100】
「アリルエステル化合物(AEO)の合成」
蒸留装置の付いた2リットルの三つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル1625g、トリメチロールプロパン167g、ジブチル錫オキサイド0.813gを仕込み、窒素気流下、180℃で生成してくるアルコールを留去しながら加熱した。留去したアルコールが約170gになったところで反応系内を徐々に、約4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アルコールの留出速度を速めた。留出液がほとんどでなくなったところで、反応系を0.5kPaに減圧し、さらに1時間反応させた後、反応物を冷却し、アリルエステル化合物を得た。以下、これにより得られた反応物を「アリルエステル化合物(AEO)」とする。
【化7】
【0101】
「アリルエステル樹脂シート1」
アリルエステル化合物(AEO)80質量部とトリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、パーヘキシル(登録商標)I(日油株式会社製)1質量部、LUCIRIN(登録商標) TPO(BASF社製)0.5質量部を均一となるまで混合し、アリルエステル樹脂組成物1を調製した。次いで当該樹脂組成物を硬化後の厚さが300μmとなるように厚さが100μmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した。さらに塗布面に厚さが100μmのPETフィルムを被せた後、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製アイグランデージ、メタルハライドランプ)を用いて300mW/cm
2、800mJ/cm
2の条件で紫外線を照射して、樹脂組成物をゲル化(半硬化)させて半硬化フィルムを得た。半硬化フィルムのゲル分率は79%であった。
得られた半硬化フィルムを両面のPETフィルムを付けたままガラス板に挟み、160℃に保った強制対流式オーブンに入れ1時間かけて硬化させた。ついて両面のPETフィルムを剥がした後、180℃で10分間アニールすることで、厚さが0.3mmの透明な「アリルエステル樹脂シート1」を得た。この硬化物のゲル分率は99%であった。
【0102】
「アリルエステル樹脂シート2」
アリルエステル樹脂組成物1を、アリルエステル化合物(AEO)60質量部、トリアリルイソシアヌレート(エボニック ジャパン社製TAICROS(登録商標))20質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、パーヘキシルI(日油株式会社製)1質量部、LUCIRIN TPO(BASF社製)0.5質量部に変更した以外、アリルエステル樹脂シート1と同様な方法で半硬化フィルムを得た。半硬化フィルムのゲル分率は77%であった。
得られた半硬化フィルムをアリルエステル樹脂シート1と同様な方法で熱処理を行い、厚さが0.3mmの透明な「アリルエステル樹脂シート2」を得た。この硬化物のゲル分率は99%であった。
【0103】
「アリルエステル樹脂シート3」
アリルエステル樹脂組成物1の塗工厚を0.05mmに変更した以外、アリルエステル樹脂シート1と同様な方法で半硬化フィルムを得た。半硬化フィルムのゲル分率は79%であった。
得られた半硬化フィルムをアリルエステル樹脂シート1と同様な方法で熱処理を行い、厚さが50μmの透明な「アリルエステル樹脂シート3」を得た。この硬化物のゲル分率は98%であった。
【0104】
「PETシート」
188μm厚の東洋紡製コスモシャン(登録商標)A4100を用いた。
【0105】
「シリコーン粘着剤1」
付加反応型シリコーン粘着剤として、信越化学工業社製のX−40−3306を93質量部、KR−3700を7質量部、硬化触媒に信越化学工業社製のPL-50Tを0.5質量部、を含む混合物を用いた。
【0106】
「シリコーン粘着剤2」
付加反応型シリコーン粘着剤として、東レ・ダウコーニング社製のDC7651ADHESIVEを100質量部、硬化触媒に東レ・ダウコーニング社製のSRX-212を0.5質量部、を含む混合物を用いた。
【0107】
「シリコーン粘着剤3」
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤として、信越化学工業社製のSH4280PSAを100質量部、東京化成社製過酸化ベンゾイルを1.2質量部、を含む混合物を用いた。
【0108】
「アクリル粘着剤」
綜研化学社製アクリル粘着剤SK−1499Mを用いた。
【0109】
「フッ素含有の防汚性ハードコート剤」
ニデック社製ハードコート剤Acier−B50MIを用いた。
【0110】
「フッ素非含有の防汚性ハードコート剤」
横浜ゴム社製ハードコート剤HR3226を用いた。
【0111】
実施例1〜3、比較例1〜6
表1(各実施例、比較例におけるアリルエステル樹脂シート、シリコーン粘着剤の番号は、使用した材料の番号に対応する。また、PETシート、ハードコート材の○は、その材料を使用したことを意味する。)に示すように、アリルエステル樹脂シート、もしくはPETシートからなる基材の一方の主面に、硬化後膜厚が7μmになるようにフッ素含有防汚ハードコート層またはフッ素非含有防汚ハードコート層を形成した。これらのハードコート層は、ハードコート液をマイクログラビア法にて所定膜厚になるようにコーティングし、80℃で1〜5分間乾燥後、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製アイグランデージ、メタルハライドランプ)を用いて300mW/cm
2、800mJ/cm
2の条件で紫外線を照射し形成した。但し、比較例1ではハードコート層を形成しなかった。その後、アリルエステル樹脂シート、もしくはPETシートからなる基材の他方の主面に硬化後膜厚が50μmになるようにシリコーン粘着剤層、もしくはアクリル粘着剤層を形成し、透明粘着シートを得た。これら粘着層は、粘着剤液をマイクログラビア法にて所定膜厚になるようにコーティングし、80℃で1〜5分間乾燥後、シリコーン粘着剤は120℃で5分間熱処理、アクリル粘着剤は紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製アイグランデージ、メタルハライドランプ)を用いて300mW/cm
2、800mJ/cm
2の条件で紫外線を照射し形成した。
得られた透明粘着シートの層構成と、評価結果を表1にまとめて示す。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1〜3と比較例1〜2の比較から、フッ素含有ハードコート材を用いることで、全光線透過率、鉛筆硬度が高く、防汚特性が改善されたことがわかる。また、実施例1〜3と比較例3〜4の比較から、付加反応型シリコーン粘着剤を用いると、全光線透過率などの特性を保持しながら、粘着剤密着性、再剥離性に優れることがわかる。更に、実施例1〜3と比較例5、6の比較から、適正なシート厚みのアリルエステルシートを用いると、全光線透過率、鉛筆硬度、耐傷付性などの特性を保持しながら、保護性能に優れることがわかる。