特許第6121871号(P6121871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121871
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】自動搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B61G 1/22 20060101AFI20170417BHJP
   B60D 1/155 20060101ALI20170417BHJP
   B60D 1/54 20060101ALI20170417BHJP
   B65G 35/06 20060101ALI20170417BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20170417BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B61G1/22
   B60D1/14 A
   B65G35/06 B
   G05D1/02 H
   B61B13/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-220024(P2013-220024)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81017(P2015-81017A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−224803(JP,A)
【文献】 特開昭56−053906(JP,A)
【文献】 特開2011−189769(JP,A)
【文献】 特開2008−168696(JP,A)
【文献】 特開2012−245862(JP,A)
【文献】 特開2010−195070(JP,A)
【文献】 特開2007−119145(JP,A)
【文献】 特開2002−046597(JP,A)
【文献】 実開昭59−018607(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0200064(US,A1)
【文献】 米国特許第04169611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 1/00− 1/42
B61B 13/00
B60D 1/155
B65G 35/06
G05D 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引台車と連結手段を介して連結され、前記被牽引台車を牽引搬送する自動搬送車を備えた自動搬送装置であって、
前記連結手段は、前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき長さが変更可能であり、
前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき前記連結手段の長さを変更するための制御用コンピュータを少なくとも備えた制御装置が搭載され、
前記制御装置には、管理システムから前記連結手段の長さを変更するための情報が送信されることを特徴とする自動搬送装置。
【請求項2】
複数の被牽引台車のうちの先頭の被牽引台車と連結手段を介して連結されている自動搬送車を備えていると共に、前記複数の被牽引台車の各々が連結手段を介して連結され、かつ、前記自動搬送車で前記先頭の被牽引台車を牽引搬送することで前記複数の被牽引台車を牽引搬送する自動搬送装置であって、
前記各々の連結手段は、前記複数の被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき長さが変更可能であり、
前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき前記連結手段の長さを変更するための制御用コンピュータを少なくとも備えた制御装置が搭載され、
前記制御装置には、管理システムから前記連結手段の長さを変更するための情報が送信されることを特徴とする自動搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動搬送装置において、
前記連結手段は、前記自動搬送車に回転可能に取付けられ、かつ、先端部に空間が形成され、この空間を前記被牽引台車に設けられている連結支柱に嵌め込むことで前記自動搬送車と前記被牽引台車が連結されることを特徴とする自動搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動搬送装置において、
前記連結手段は、長手方向に伸縮可能なテレスコピック構造若しくは円柱の外側にベアリングが搭載された管が移動するもの又はレールにベアリングが搭載された移動体が組み込まれたものから成り、これらの長手方向に伸縮を行う駆動機構としてラック・アンド・ピニオン機構を用いたことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動搬送装置において、
前記連結手段は、長手方向に伸縮可能なテレスコピック構造若しくは円柱の外側にベアリングが搭載された管が移動するもの又はレールにベアリングが搭載された移動体が組み込まれたものから成り、これらの長手方向に伸縮を行う駆動機構としてボールねじ機構を用いたことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動搬送装置において、
前記被牽引台車の寸法は、前記被牽引台車と前記連結手段との連結点から前記被牽引台車の固定輪の中心までの距離であることを特徴とする自動搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動搬送装置において、
前記被牽引台車の旋回状況は、前記被牽引台車と前記連結手段との連結点と前記自動搬送車の駆動輪の中心までの距離をLr、前記被牽引台車と前記連結手段との連結点から前記被牽引台車の固定輪の中心までの距離をLaとした時に、Lr>La或いはLr<La若しくはLr=Laの関係で前記被牽引台車が旋回するか、及び/又は複数の被牽引台車を備えるものである場合は、前記先頭の被牽引台車の固定輪の中心と次の被牽引台車及び次の連結手段の連結点との距離をLC、前記次の連結手段の連結点と前記次の被牽引台車の固定輪の中心の距離をLbとした時に、Lc>Lb或いはLc<Lb若しくはLc=Lbの関係で前記次の被牽引台車が旋回する状況であることを特徴とする自動搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動搬送装置において、
前記自動搬送車の駆動輪の中心と前記自動搬送車の旋回中心との距離を旋回半径(Rr)とし、前記被牽引台車の旋回半径(Ra)が下記の数1で表される際に、
前記RaをRa=Rrとする時は前記LrとLaが同じで、前記RaをRa>Rrとする時は前記LrがLaよりも大きく、前記RaをRa<Rrとする時は前記LrがLaよりも小さくなるように前記連結手段の長さが調整されるか、
及び/又は複数の被牽引台車を備えるものである場合は、前記次の被牽引台車の旋回半径(Rb)が下記の数2で表される際に、
前記RbをRb=Raとする時は前記LcとLbが同じで、前記RbをRb>Raとする時は前記LcがLbよりも大きく、前記RbをRb<Raとする時は前記LcがLbよりも小さくなるように前記次の連結手段の長さが調整されることを特徴とする自動搬送装置。
【数1】
【数2】
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動搬送装置において、
前記連結手段の長さを変更するための情報は、前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況であることを特徴とする自動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動搬送装置に係り、例えば生産工場や物流センタにおいて、自動搬送車が搬送物を搭載した被牽引台車を連結手段を介して連結し牽引搬送するものに好適な自動搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工場の生産ラインや物流ライン或いは物流倉庫等の多くの場所では、物品の運搬には被牽引台車が用いられる。本来、被牽引台車は人が運ぶものであるが、ライン効率化のために自動搬送車を用いて、被牽引台車を自動搬送するシステム(装置)が必要とされている。搬送物品には、大きさや重量の異なる様々ものが存在し、使用する被牽引台車も多種類のものが存在する。
【0003】
このように、既に多数存在する被牽引台車の改造をほとんど行う必要がなく、かつ、多種類の被牽引台車(搬送物)に対応できる自動搬送装置としては、台車牽引方式の自動搬送装置がある。
【0004】
上述した台車牽引方式の自動搬送装置として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1には、一定の長さの連結部材を上下に回転させることで、まず被牽引台車に固定された連結ピンに連結部材を引掛け、その後、自動搬送車が前進することで連結ピンと連結部材が密着し、さらに連結ピンと連結ピンに対向設置された凸部材の間に連結部材が嵌ることにより緩みのない連結状態に移行する連結機構を備えた自動搬送装置が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、自動搬送車と連結している被牽引台車との接触を防ぐために、被牽引台車が連結されている場合の走行経路を、被牽引台車が連結されていない場合とは別の走行経路にするようにした自動搬送車システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011―189769号公報
【特許文献2】特開2013―41527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された台車牽引方式の自動搬送装置によれば、どのような被牽引台車であっても容易に被牽引台車の連結及び切離しが可能となるが、固定長の連結部材での連結では、自動搬送車が被牽引台車を連結した状態で旋回走行をした場合、被牽引台車は自動搬送車とは異なる旋回半径で走行するため、連結部材の長さ及び被牽引台車の種類によっては、被牽引台車と周囲の物との衝突や被牽引台車と自動搬送車との衝突を招く恐れがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載された被牽引台車が連結されている場合の走行経路を、被牽引台車が連結されていない場合とは別の走行経路にする自動搬送車システムでは、被牽引台車は自動搬送車とは異なる旋回半径で走行することには変わりなく、被牽引台車の種類によっては、被牽引台車と周囲の物との衝突を招く恐れがあり、また、狭い通路の曲がり角が曲がりきれない場合も考えられる。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、被牽引台車の種類が異なっても、被牽引台車と周囲の物との衝突防止や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することができる自動搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自動搬送装置は、上記目的を達成するために、被牽引台車と連結手段を介して連結され、前記被牽引台車を牽引搬送する自動搬送車を備えた自動搬送装置であって、前記連結手段は、前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき長さが変更可能であり、前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき前記連結手段の長さを変更するための制御用コンピュータを少なくとも備えた制御装置が搭載され、前記制御装置には、管理システムから前記連結手段の長さを変更するための情報が送信されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動搬送装置は、上記目的を達成するために、複数の被牽引台車のうちの先頭の被牽引台車と連結手段を介して連結されている自動搬送車を備えていると共に、前記複数の被牽引台車の各々が連結手段を介して連結され、かつ、前記自動搬送車で前記先頭の被牽引台車を牽引搬送することで前記複数の被牽引台車を牽引搬送する自動搬送装置であって、前記各々の連結手段は、前記複数の被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき長さが変更可能であり、前記被牽引台車の寸法及び/又は前記被牽引台車の旋回状況に基づき前記連結手段の長さを変更するための制御用コンピュータを少なくとも備えた制御装置が搭載され、前記制御装置には、管理システムから前記連結手段の長さを変更するための情報が送信されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被牽引台車の種類が異なっても、被牽引台車と周囲の物との衝突防止や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することができるので、この種の自動搬送装置には有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の自動搬送装置の実施例1を示す側面図である。
図2】本発明の自動搬送装置の実施例1を示す平面図である。
図3】本発明の自動搬送装置の実施例1に採用される連結手段の一例を示す図である。
図4】本発明の自動搬送装置の実施例1に採用される連結手段の他の例を示す図である。
図5】本発明の自動搬送装置の実施例1に採用される連結手段の更に他の例を示す図である。
図6】本発明の自動搬送装置の実施例1において、自動搬送車が連結手段で連結された2台の被牽引台車を牽引する例を示す図である。
図7】本発明の自動搬送装置の実施例1において、自動搬送車に連結手段で連結された被牽引台車の旋回状況を説明するための図である。
図8】本発明の自動搬送装置の実施例1における自動搬送車に搭載される制御装置を説明するための図である。
図9】本発明の自動搬送装置の実施例1における自動搬送車による被牽引台車の搬送動作の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の自動搬送装置を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2に、本発明の自動搬送装置の実施例1を示す。該図に示す本実施例は、自動搬送車1と連結手段4で連結された被牽引台車12が、自動搬送車1で牽引される例であり、以下に符号を用いて詳細を説明する。
【0016】
該図に示す如く、自動搬送車1は、後述する制御装置11が搭載され、自動搬送車1の下部には車軸が固定された2つの駆動輪2と、鉛直方向を軸として自由に回転(図2の紙面と直角方向を軸として回転)する2つの自由輪3が備えられ、駆動輪2の左右の回転差により方向変更を行うものである。ただし、本発明は、本実施例の駆動輪2と自由輪3の駆動手段に限定するものではなく、駆動輪2と自由輪3の配置が前後逆であっても良いし、駆動輪2の左右の回転差により方向変更を行わず、自由輪3の方向をモータ等で制御し、ステアリング機能を持たせても良い。
【0017】
自動搬送車1の後部には、回転部6を介して回転可能な連結手段4が備えられ、この連結手段4の先端部には略円形の空間5が形成されており、被牽引台車12に設けられている連結支柱(ピン)13に上記空間5をはめ込みことで、自動搬送車1に被牽引台車12が連結される。自動搬送車1と被牽引台車12の切り離しは、回転部6を介して連結手段4を上方に移動させて、連結支柱(ピン)13と空間5のはめ込みを解くことで行われる。
【0018】
このような本実施例の構成では、被牽引台車12には、固定部材16を2本の台車構造物(支柱)17に取り付けるだけで良いので、従来の被牽引台車を用いて簡単に自動搬送が行え、様々な被牽引台車にも簡単に自動搬送に対応できる。
【0019】
一方、被牽引台車12には、車軸が固定された固定輪14と自由輪15(キャスター)が備えられており、本実施例では、自動搬送車1が旋回走行を行った場合、被牽引台車12は、自動搬送車1とは相対的に連結支柱(ピン)13を中心(連結点)として回転することができる。
【0020】
なお、本実施例では、被牽引台車12は、一般的な4輪のものを例として説明したが、被牽引台車12には様々なものが存在し、大きさ以外に車輪の数やその位置も様々であり、例えば、自由輪15が4隅にあり、中央左右に固定輪14が備えられているものがある。ただし、被牽引台車12には、その軌道を安定させるために固定輪14が1つ以上、望ましくは左右に1つずつ(計2つ)必要である。
【0021】
図3図4及び図5は、本実施例に採用される連結手段4の構成例を示す図である。
【0022】
本実施例に採用される連結手段4は、被牽引台車12の寸法や旋回状況に基づき長さの変更が可能であることを特徴としている。
【0023】
図3は、連結手段の一例を示しており、直動機構の伸縮行う駆動部8としてラック・アンド・ピニオン機構8Aを用いたものである。このラック・アンド・ピニオン機構8Aが、後述する制御コンピュータ37で制御されるモータ8Bにより駆動される。また、連結手段4は、重量のある被牽引台車12を牽引する必要があり、伸縮時にも強度を保つ必要がある。そこで、被牽引台車12からの左右方向の外力に抗するため、動作方向を直線に制限する直動ガイド機構7を備えている。
【0024】
図3に示す例では、直動ガイド機構7としてテレスコピック構造(重なり合った筒が伸び縮みする構造)を用いた機構を示しているが、外力に抗するものであれば良く、リニアシャフトとリニアベアリングを用いたもの(円柱の外側にベアリングが搭載された管が移動するもの)でも、リニアガイド(レールにベアリングが搭載された移動体が組み込まれたもの)を用いたものでも良い。
【0025】
図4は、直動機構の伸縮を行う駆動部8の他の例として、ボールねじ機構9を用いたものである。このボールねじ機構9が、後述する制御コンピュータ37で制御されるモータ8Cにより駆動される。直動ガイド機構7は、図3と同じテレスコピック構造を用いている。駆動部8としてボールねじ機構9を用いる特徴は、大きな駆動力が得られることである。
【0026】
なお、本実施例では、連結手段4の長さの変更が可能であればよく、駆動部8は、ベルトやワイヤーを用いたものやラチス構造(マジックハンドの構造)を用いたもの、或いは液圧シリンダを用いたものでも良い。液圧シリンダを用いた場合は、シリンダ自体がテレスコピック構造をしているので、直動ガイド機構7と駆動部8は、同一のもので良い。
【0027】
また、図5に示すように、連結手段4の長さは手動で変更しても良い。その場合、駆動部8は必要無いが、走行中の外力で伸縮しないようにロック機構10が必要である。
【0028】
更に、連結手段4の長さは、厳密に調整しなくても効果があり、その伸縮は、連続的でなく段階的に変更するものでも良い。また、使用する被牽引台車12の種類が少なければ、被牽引台車12に合わせて連結手段4を取り替える方法を採用しても、本発明の効果は、十分得られる。
【0029】
図6を用いて、本実施例の自動搬送装置の作用、効果を説明する。図6は、自動搬送車1が、連結手段4及び36で連結された第1の台車18と第2の台車19を牽引する場合を示している。
【0030】
該図に示す如く、自動搬送車1は、旋回中心20を中心に旋回走行を行っており、この時の駆動輪2の中心21と旋回中心20との距離である旋回半径をRr(22)とする。このとき、先頭の被牽引台車である第1の台車18も旋回中心20を中心とした旋回走行を行い、第1の台車18と連結手段4との第1の連結点23と駆動輪2の中心21までの距離をLr(24)、第1の連結点23から第1の台車18の固定輪14の中心25までの距離をLa(26)とすると、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、数1で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
数1から分かるように、Lr=Laのとき、自動搬送車1と第1の台車18は同じ旋回半径となり、Lr>Laのとき、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、自動搬送車1の旋回半径Rr(22)よりも大きく、Lr<Laのときは、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、自動搬送車1の旋回半径Rr(22)よりも小さくなる。
【0033】
従って、連結手段4の長さを調整することで、第1の台車18の旋回半径Ra(27)を調整することが可能である。
【0034】
図6では、Lr<Laの場合を示しており、第1の台車18は、自動搬送車1よりも内側の軌跡28を走行する内輪差がある状態となる。このとき、逆に自動搬送車1は、第1の台車18よりも外側の軌跡29を通る外輪差がある状態となる。この状態では、旋回に広い領域が必要となり、周囲の物との衝突する状況や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況に陥る可能性が高くなる。
【0035】
また、次の被牽引台車である第2の台車19の場合も同様であり、第1の台車18の固定輪14の中心25と第2の台車19及び次の連結手段である連結手段36の第2の連結点30との距離をLc(31)、第2の連結点30と第2の台車19の固定輪14の中心32との距離をLb(33)とすると、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、数2で表される。
【0036】
【数2】
【0037】
前述と同様、数2より、Lc=Lbのとき、第1の台車18と第2の台車19は同じ旋回半径となり、Lc>Lbのとき、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、第1の台車18の旋回半径Ra(27)よりも大きく、Lc<Lbのときは、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、第1の台車18の旋回半径Ra(27)よりも小さくなる。
【0038】
図6では、Lc<Lbの場合を示しており、第2の台車19は、第1の台車18よりも内側の軌跡28を走行する内輪差がある状態となる。上述した周囲の物との衝突する状況や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況に陥らないためには、上記内輪差及び外輪差を小さくする必要があり、そのためには、連結手段4及び36の長さを調整して、第1の台車18の寸法であるLa(26)、第2の台車19の寸法であるLb(33)に対して、概略Lr=La、Lc=Lbとなるようにすれば良い。このとき、第1の台車18の寸法La(26)と第2の台車19の寸法Lb(33)は、異なっていても構わない。
【0039】
また、第1の台車18と第2の台車19の長さが長い場合、例えば、第1の台車18と第2の台車19の4角に自由輪15を配置し、中央に固定輪14を配置するなど、固定輪14の中心25、32を調整して、第1の台車18の寸法であるLa(26)、第2の台車19の寸法であるLb(33)を変更することも有効である。このとき、第1の台車18の寸法であるLa(26)及び第2の台車19の寸法であるLb(33)が短くなるので、連結手段4、36の長さは短くなる。
【0040】
どのような場合でも、第1の台車18と第2の台車19の寸法に応じ、連結手段4及び36の長さを調整することで、第1の台車18及び第2の台車19の旋回半径が制御できる。
【0041】
図7は、本実施例の自動搬送装置において、自動搬送車1に連結手段4で連結された被牽引台車12の旋回状況を説明するための図である。
【0042】
図7(A)は、内輪差のある場合を示しており、図6のLr<Laの場合である。図7(A)の場合、Lr<Laの関係なので、この状態のまま自動搬送車1で被牽引台車12を牽引すると、建物44の内側の角に被牽引台車12が衝突してしまう。図7(B)は、外輪差のある場合を示しており、図6のLr>Laの場合である。図7(B)の場合、Lr>Laの関係なので、この状態のまま自動搬送車1で被牽引台車12を牽引すると、建物44の外側の角に被牽引台車12が衝突してしまう。図7(C)は、内輪差及び外輪差が共に少なく、概ね図6のLr=Laの場合である。図7(C)の場合、Lr=Laの関係なので、狭い通路であっても建物44に衝突することなく被牽引台車12は旋回することができる。
【0043】
図8に、自動搬送車1に制御装置11が搭載された自動搬送装置を示す。該図に示す如く、自動搬送装置は大きく2種類から構成される。
【0044】
即ち、1つは、自動搬送車1の制御装置11であり、制御コンピュータ37、バッテリー38、走行機構39とその駆動装置40、外界センサとして自己位置認識と台車認識(位置・大きさなど)のための走査型レーザ距離センサ41、連結手段4として駆動部8などから構成される。もう1つは、自動搬送車1の外部に設置される管理システム42である。この管理システム42は、自動搬送車1の制御用コンピュータ37と無線通信43により接続されると共に、管理システム42のモニタには、自動搬送車1の位置、被牽引台車12の位置、走行予定の経路が表示される。
【0045】
図9を用いて、自動搬送車1による被牽引台車12(1台)の搬送動作の流れを説明する。
【0046】
まず、管理システム42から自動搬送車1へ、これから搬送する被牽引台車12の現在位置、搬送の経路、搬送の目的位置、被牽引台車12の種類(形状・寸法など)と重量が送信される。次に、自動搬送車1は、搬送の指示をされた被牽引台車12の前へ移動し、連結手段4を介して被牽引台車12を連結する。このとき、被牽引台車12の種類に応じて、連結手段4の長さを変更する。連結手段4の長さ変更は、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、被牽引台車12の種類に応じ連結手段4の長さを調整するように駆動部8を動作させる。連結手段4の長さの情報は、管理システム42から直接送信しても良いし、被牽引台車12の種類に対応した長さの情報を事前に記憶しておいても良い。また、自動搬送車1に駆動部8が備えられていない場合は、被牽引台車12の種類に応じて人が連結手段4の長さを調整するか、連結手段4の交換をしても良い。
【0047】
なお、被牽引台車12の種類の情報は、管理システム42から送信されたものを用いても良いし、走査型レーザ距離センサ41を用いて検出しても良い。
【0048】
次に、自動搬送車1は指示された経路を移動し、搬送物を搬送する目的位置へ到着する。
【0049】
上記には連結時に連結手段4の長さを調整する例を示したが、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、いつでも長さを調整できるので、直線走行時は短くしておいて、旋回走行前に変更しても良い。直線走行時は短い方が、占有スペースが少なくすみ、安全であり、走行も安定する。
【0050】
また、自動搬送車1は、走査型レーザ距離センサ41を用いて周囲の物体との距離や被牽引台車12の状態を検出できるので、その状況に合わせて被牽引台車12の旋回半径を制御するように逐次、連結手段4の長さを変更しても良い。
【0051】
次に、自動搬送車1は、被牽引台車12との連結解除を行ない、作業の成功を管理システム42へ報告する。管理システム42へ報告した後は、次の作業へと移行する。ここで、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、連結解除前に連結手段4の長さを短くする。また、搬送作業の途中で異常を検知し、搬送が正常に続行できない場合には、動作を停止し、作業の失敗を管理システム42へ報告して、次の指示を待つようにする。
【0052】
このような本実施例の構成とすることにより、被牽引台車の種類が異なっても、連結部材の長さを調整することにより、自動搬送車と被牽引台車の旋回半径が異なる原因での被牽引台車と周囲の物との衝突防止や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することが可能な自動搬送装置を得ることができる。
【0053】
即ち、連結手段を伸縮可能な構造にし、自動搬送車の後ろに連結する被牽引台車の寸法に基づき連結手段の長さを変更するだけで、自動搬送車が旋回走行中の自動搬送車の旋回半径と被牽引台車の旋回半径を同等にすることができ、周囲の物との衝突や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することができる。また、この伸縮動作を自動で行うことで、複数種類の被牽引台車でも自動で連結手段の長さを変更でき、直進走行中は短くして占有スペースを小さく、安全・安定な走行が可能で、必要時のみ長くすることが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…自動搬送車、2…駆動輪、3…自由輪、4、36…連結手段、5…空間、6…回転部、7…直動ガイド機構、8…駆動部、8A…ラック・アンド・ピニオン機構、8B、8C…モータ、9…ボールねじ機構、10…ロック機構、11…制御装置、12…被牽引台車、13…連結支柱、14…固定輪、15…自由輪、16…固定部材、17…台車構造物、18…第1の台車、19…第2の台車、20…旋回中心、21…駆動輪の中心、22…自動搬送車の旋回半径(Rr)、23…第1の連結点、24…第1の台車と連結手段との第1の連結点と駆動輪の中心までの距離(Lr)、25、32…固定輪の中心、26…第1の連結点から第1の台車の固定輪の中心までの距離(La)、27…第1の台車の旋回半径(Ra)、28…第1の台車の軌跡、29…自動搬送車の軌跡、30…第2の連結点、31… 第1の台車の固定輪の中心と第2の台車及び連結手段の第2の連結点との距離(Lc)、33…第2の連結点と第2の台車の固定輪の中心との距離(Lb)、34…第2の台車の旋回半径(Rb)、37…制御コンピュータ、38…バッテリー、39…走行機構、40…駆動装置、41…走査型レーザ距離センサ、42…管理システム、43…無線通信、44…建物。
図1
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図9