【実施例1】
【0015】
図1及び
図2に、本発明の自動搬送装置の実施例1を示す。該図に示す本実施例は、自動搬送車1と連結手段4で連結された被牽引台車12が、自動搬送車1で牽引される例であり、以下に符号を用いて詳細を説明する。
【0016】
該図に示す如く、自動搬送車1は、後述する制御装置11が搭載され、自動搬送車1の下部には車軸が固定された2つの駆動輪2と、鉛直方向を軸として自由に回転(
図2の紙面と直角方向を軸として回転)する2つの自由輪3が備えられ、駆動輪2の左右の回転差により方向変更を行うものである。ただし、本発明は、本実施例の駆動輪2と自由輪3の駆動手段に限定するものではなく、駆動輪2と自由輪3の配置が前後逆であっても良いし、駆動輪2の左右の回転差により方向変更を行わず、自由輪3の方向をモータ等で制御し、ステアリング機能を持たせても良い。
【0017】
自動搬送車1の後部には、回転部6を介して回転可能な連結手段4が備えられ、この連結手段4の先端部には略円形の空間5が形成されており、被牽引台車12に設けられている連結支柱(ピン)13に上記空間5をはめ込みことで、自動搬送車1に被牽引台車12が連結される。自動搬送車1と被牽引台車12の切り離しは、回転部6を介して連結手段4を上方に移動させて、連結支柱(ピン)13と空間5のはめ込みを解くことで行われる。
【0018】
このような本実施例の構成では、被牽引台車12には、固定部材16を2本の台車構造物(支柱)17に取り付けるだけで良いので、従来の被牽引台車を用いて簡単に自動搬送が行え、様々な被牽引台車にも簡単に自動搬送に対応できる。
【0019】
一方、被牽引台車12には、車軸が固定された固定輪14と自由輪15(キャスター)が備えられており、本実施例では、自動搬送車1が旋回走行を行った場合、被牽引台車12は、自動搬送車1とは相対的に連結支柱(ピン)13を中心(連結点)として回転することができる。
【0020】
なお、本実施例では、被牽引台車12は、一般的な4輪のものを例として説明したが、被牽引台車12には様々なものが存在し、大きさ以外に車輪の数やその位置も様々であり、例えば、自由輪15が4隅にあり、中央左右に固定輪14が備えられているものがある。ただし、被牽引台車12には、その軌道を安定させるために固定輪14が1つ以上、望ましくは左右に1つずつ(計2つ)必要である。
【0021】
図3、
図4及び
図5は、本実施例に採用される連結手段4の構成例を示す図である。
【0022】
本実施例に採用される連結手段4は、被牽引台車12の寸法や旋回状況に基づき長さの変更が可能であることを特徴としている。
【0023】
図3は、連結手段の一例を示しており、直動機構の伸縮行う駆動部8としてラック・アンド・ピニオン機構8Aを用いたものである。このラック・アンド・ピニオン機構8Aが、後述する制御
用コンピュータ37で制御されるモータ8Bにより駆動される。また、連結手段4は、重量のある被牽引台車12を牽引する必要があり、伸縮時にも強度を保つ必要がある。そこで、被牽引台車12からの左右方向の外力に抗するため、動作方向を直線に制限する直動ガイド機構7を備えている。
【0024】
図3に示す例では、直動ガイド機構7としてテレスコピック構造(重なり合った筒が伸び縮みする構造)を用いた機構を示しているが、外力に抗するものであれば良く、リニアシャフトとリニアベアリングを用いたもの(円柱の外側にベアリングが搭載された管が移動するもの)でも、リニアガイド(レールにベアリングが搭載された移動体が組み込まれたもの)を用いたものでも良い。
【0025】
図4は、直動機構の伸縮を行う駆動部8の他の例として、ボールねじ機構9を用いたものである。このボールねじ機構9が、後述する制御
用コンピュータ37で制御されるモータ8Cにより駆動される。直動ガイド機構7は、
図3と同じテレスコピック構造を用いている。駆動部8としてボールねじ機構9を用いる特徴は、大きな駆動力が得られることである。
【0026】
なお、本実施例では、連結手段4の長さの変更が可能であればよく、駆動部8は、ベルトやワイヤーを用いたものやラチス構造(マジックハンドの構造)を用いたもの、或いは液圧シリンダを用いたものでも良い。液圧シリンダを用いた場合は、シリンダ自体がテレスコピック構造をしているので、直動ガイド機構7と駆動部8は、同一のもので良い。
【0027】
また、
図5に示すように、連結手段4の長さは手動で変更しても良い。その場合、駆動部8は必要無いが、走行中の外力で伸縮しないようにロック機構10が必要である。
【0028】
更に、連結手段4の長さは、厳密に調整しなくても効果があり、その伸縮は、連続的でなく段階的に変更するものでも良い。また、使用する被牽引台車12の種類が少なければ、被牽引台車12に合わせて連結手段4を取り替える方法を採用しても、本発明の効果は、十分得られる。
【0029】
図6を用いて、本実施例の自動搬送装置の作用、効果を説明する。
図6は、自動搬送車1が、連結手段4及び36で連結された第1の台車18と第2の台車19を牽引する場合を示している。
【0030】
該図に示す如く、自動搬送車1は、旋回中心20を中心に旋回走行を行っており、この時の駆動輪2の中心21と旋回中心20との距離である旋回半径をRr(22)とする。このとき、先頭の被牽引台車である第1の台車18も旋回中心20を中心とした旋回走行を行い、第1の台車18と連結手段4との第1の連結点23と駆動輪2の中心21までの距離をLr(24)、第1の連結点23から第1の台車18の固定輪14の中心25までの距離をLa(26)とすると、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、数1で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
数1から分かるように、Lr=Laのとき、自動搬送車1と第1の台車18は同じ旋回半径となり、Lr>Laのとき、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、自動搬送車1の旋回半径Rr(22)よりも大きく、Lr<Laのときは、第1の台車18の旋回半径Ra(27)は、自動搬送車1の旋回半径Rr(22)よりも小さくなる。
【0033】
従って、連結手段4の長さを調整することで、第1の台車18の旋回半径Ra(27)を調整することが可能である。
【0034】
図6では、Lr<Laの場合を示しており、第1の台車18は、自動搬送車1よりも内側の軌跡28を走行する内輪差がある状態となる。このとき、逆に自動搬送車1は、第1の台車18よりも外側の軌跡29を通る外輪差がある状態となる。この状態では、旋回に広い領域が必要となり、周囲の物との衝突する状況や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況に陥る可能性が高くなる。
【0035】
また、次の被牽引台車である第2の台車19の場合も同様であり、第1の台車18の固定輪14の中心25と第2の台車19及び次の連結手段である連結手段36の第2の連結点30との距離をLc(31)、第2の連結点30と第2の台車19の固定輪14の中心32との距離をLb(33)とすると、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、数2で表される。
【0036】
【数2】
【0037】
前述と同様、数2より、Lc=Lbのとき、第1の台車18と第2の台車19は同じ旋回半径となり、Lc>Lbのとき、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、第1の台車18の旋回半径Ra(27)よりも大きく、Lc<Lbのときは、第2の台車19の旋回半径Rb(34)は、第1の台車18の旋回半径Ra(27)よりも小さくなる。
【0038】
図6では、Lc<Lbの場合を示しており、第2の台車19は、第1の台車18よりも内側の軌跡28を走行する内輪差がある状態となる。上述した周囲の物との衝突する状況や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況に陥らないためには、上記内輪差及び外輪差を小さくする必要があり、そのためには、連結手段4及び36の長さを調整して、第1の台車18の寸法であるLa(26)、第2の台車19の寸法であるLb(33)に対して、概略Lr=La、Lc=Lbとなるようにすれば良い。このとき、第1の台車18の寸法La(26)と第2の台車19の寸法Lb(33)は、異なっていても構わない。
【0039】
また、第1の台車18と第2の台車19の長さが長い場合、例えば、第1の台車18と第2の台車19の4角に自由輪15を配置し、中央に固定輪14を配置するなど、固定輪14の中心25、32を調整して、第1の台車18の寸法であるLa(26)、第2の台車19の寸法であるLb(33)を変更することも有効である。このとき、第1の台車18の寸法であるLa(26)及び第2の台車19の寸法であるLb(33)が短くなるので、連結手段4、36の長さは短くなる。
【0040】
どのような場合でも、第1の台車18と第2の台車19の寸法に応じ、連結手段4及び36の長さを調整することで、第1の台車18及び第2の台車19の旋回半径が制御できる。
【0041】
図7は、本実施例の自動搬送装置において、自動搬送車1に連結手段4で連結された被牽引台車12の旋回状況を説明するための図である。
【0042】
図7(A)は、内輪差のある場合を示しており、
図6のLr<Laの場合である。
図7(A)の場合、Lr<Laの関係なので、この状態のまま自動搬送車1で被牽引台車12を牽引すると、建物44の内側の角に被牽引台車12が衝突してしまう。
図7(B)は、外輪差のある場合を示しており、
図6のLr>Laの場合である。
図7(B)の場合、Lr>Laの関係なので、この状態のまま自動搬送車1で被牽引台車12を牽引すると、建物44の外側の角に被牽引台車12が衝突してしまう。
図7(C)は、内輪差及び外輪差が共に少なく、概ね
図6のLr=Laの場合である。
図7(C)の場合、Lr=Laの関係なので、狭い通路であっても建物44に衝突することなく被牽引台車12は旋回することができる。
【0043】
図8に、自動搬送車1に制御装置11が搭載された自動搬送装置を示す。該図に示す如く、自動搬送装置は大きく2種類から構成される。
【0044】
即ち、1つは、自動搬送車1の制御装置11であり、制御
用コンピュータ37、バッテリー38、走行機構39とその駆動装置40、外界センサとして自己位置認識と台車認識(位置・大きさなど)のための走査型レーザ距離センサ41、連結手段4として駆動部8などから構成される。もう1つは、自動搬送車1の外部に設置される管理システム42である。この管理システム42は、自動搬送車1の制御用コンピュータ37と無線通信43により接続されると共に、管理システム42のモニタには、自動搬送車1の位置、被牽引台車12の位置、走行予定の経路が表示される。
【0045】
図9を用いて、自動搬送車1による被牽引台車12(1台)の搬送動作の流れを説明する。
【0046】
まず、管理システム42から自動搬送車1へ、これから搬送する被牽引台車12の現在位置、搬送の経路、搬送の目的位置、被牽引台車12の種類(形状・寸法など)と重量が送信される。次に、自動搬送車1は、搬送の指示をされた被牽引台車12の前へ移動し、連結手段4を介して被牽引台車12を連結する。このとき、被牽引台車12の種類に応じて、連結手段4の長さを変更する。連結手段4の長さ変更は、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、被牽引台車12の種類に応じ連結手段4の長さを調整するように駆動部8を動作させる。連結手段4の長さの情報は、管理システム42から直接送信しても良いし、被牽引台車12の種類に対応した長さの情報を事前に記憶しておいても良い。また、自動搬送車1に駆動部8が備えられていない場合は、被牽引台車12の種類に応じて人が連結手段4の長さを調整するか、連結手段4の交換をしても良い。
【0047】
なお、被牽引台車12の種類の情報は、管理システム42から送信されたものを用いても良いし、走査型レーザ距離センサ41を用いて検出しても良い。
【0048】
次に、自動搬送車1は指示された経路を移動し、搬送物を搬送する目的位置へ到着する。
【0049】
上記には連結時に連結手段4の長さを調整する例を示したが、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、いつでも長さを調整できるので、直線走行時は短くしておいて、旋回走行前に変更しても良い。直線走行時は短い方が、占有スペースが少なくすみ、安全であり、走行も安定する。
【0050】
また、自動搬送車1は、走査型レーザ距離センサ41を用いて周囲の物体との距離や被牽引台車12の状態を検出できるので、その状況に合わせて被牽引台車12の旋回半径を制御するように逐次、連結手段4の長さを変更しても良い。
【0051】
次に、自動搬送車1は、被牽引台車12との連結解除を行ない、作業の成功を管理システム42へ報告する。管理システム42へ報告した後は、次の作業へと移行する。ここで、自動搬送車1に駆動部8が備えられている場合は、連結解除前に連結手段4の長さを短くする。また、搬送作業の途中で異常を検知し、搬送が正常に続行できない場合には、動作を停止し、作業の失敗を管理システム42へ報告して、次の指示を待つようにする。
【0052】
このような本実施例の構成とすることにより、被牽引台車の種類が異なっても、連結部材の長さを調整することにより、自動搬送車と被牽引台車の旋回半径が異なる原因での被牽引台車と周囲の物との衝突防止や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することが可能な自動搬送装置を得ることができる。
【0053】
即ち、連結手段を伸縮可能な構造にし、自動搬送車の後ろに連結する被牽引台車の寸法に基づき連結手段の長さを変更するだけで、自動搬送車が旋回走行中の自動搬送車の旋回半径と被牽引台車の旋回半径を同等にすることができ、周囲の物との衝突や狭い通路の曲がり角が曲がりきれない状況を防止することができる。また、この伸縮動作を自動で行うことで、複数種類の被牽引台車でも自動で連結手段の長さを変更でき、直進走行中は短くして占有スペースを小さく、安全・安定な走行が可能で、必要時のみ長くすることが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。