(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装置であって、空気ベアリング面(ABS)の近位において水平配向から垂直配向に電流を移行させるように構成される電流集中特性を有する磁気シールドに接触する磁気スタックを備え、
前記磁気シールドは、移行領域によって規定される前記ABSから遠位の縮小した厚さを含み、前記電流集中特性は、前記ABSに対して平行に配向された側壁によって分離される複数の金属強磁層を含む、装置。
磁気素子であって、空気ベアリング面(ABS)の近位において水平配向から垂直配向に電流を移行させるように構成される電流集中特性を有する積層磁気シールドに接触する磁気スタックを備え、
前記電流集中特性は、前記ABSに対して平行に配向された側壁によって分離される複数の金属強磁層を含む、磁気素子。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
データ記憶部の産業においては、データ容量を大きくし、データへのアクセス時間を速くし、フォームファクタを縮小する努力が続けられていることから、より小さなデータ記憶部の構成部品、およびより密な寸法交差がより広まっている。このような精密な構造的構成は、不安定性を偏らせる静止状態、ならびにデータ信号の振幅および効率的なデータアクセスを妨げる雑音につながり得る。データ記憶部の構成部品において、磁束の強化と物理的な近接とを組み合わせると、正確かつ速いデータ感知に導くことのない異常な磁気挙動につながり得る。これ故に、フォームファクタが縮小され、データビット密度の高い記憶装置において磁気不安定性を軽減することが産業において要求され続けている。
【0005】
このため、磁気素子は、空気ベアリング面(ABS)の近位において水平配向から垂直配向に電流を移行させるように構成される電流集中特性を有する磁気シールドに接触する磁気スタックを有して構成されてもよい。垂直配向された電流をABSの近位において磁気スタックの所定領域に提供する電流集中特性を調整する能力により、磁気雑音、異常な磁気挙動、および媒体束に対する反応の欠乏などをもたらし得る磁気スタックの一部への電流の流れが制限される。電流集中特性は、ABSから遠位に追加の空間を提供するようにさらに調整されてもよく、これによってデータ記憶部の構成部品の強固な磁気的および電気的隔離が可能となる。
【0006】
電流集中特性の調整は、様々な非限定的な環境で実施されてもよく、
図1は、調整された磁気素子を利用することができる、様々な実施形態に基づく例示的なデータ記憶装置100をブロックで概して示す上面図である。データ記憶装置100は、記憶されたデータビット108が所定のデータトラック110上に位置する磁気記憶媒体106上の様々な位置に作動アセンブリ102が変換ヘッド104を位置決めすることが可能な非限定的な構成で示される。記憶媒体106は、使用時に回転して空気ベアリング面(ABS)をもたらす1つ以上のスピンドルモータ112に取り付けることができる。空気ベアリング面(ABS)の上では作動アセンブリ102のスライダ部114が移動し、変換ヘッド104を含むヘッドジンバルアセンブリ(HGA)116を媒体106の所定部分の上に位置決めする。
【0007】
変換ヘッド104は、それぞれが記憶媒体106の選択されたデータトラック110に対するプログラミングおよびデータの読み取りを行うように動作する磁気書き込み部、磁気応答性読み取り部、および磁気シールドなど、1つ以上の変換素子を有して構成することができる。この方法により、作動アセンブリ102の制御された動作がトランスデューサと記憶媒体の表面上に規定されたデータトラック110との位置合わせに対応し、データの書き込み、読み取り、および再書き込みが行われる。
【0008】
データビット108がデータトラック110においてより密に位置決めされるにつれ、ヘッド104は不安定となり、ヘッド104の変換領域の望ましくない部分を通って電流が不意に導かれることによって異常なデータ信号を提供し得る。すなわち、ヘッド104の磁気感知面の物理的なサイズにより、磁気素子の磁気的に不安定または無反応な非最適化部分を通る複数の電流経路が提供され得る。このような不意な挙動を考慮に入れ、効率的かつ正確なデータアクセスのために磁気的に最適化された所定の領域に電流を向かわせる特性を磁気素子に構築することができる。
【0009】
本開示の全体を通して、「スタック」の用語は、磁気的な遮蔽、読み取り、および書き込みを行うことのできる1つ以上の接触する磁気層および非磁気層となり得る非限定的な用語を意味する。これ故に、「スタック」の用語は、磁気抵抗効果を提供する、隣接するデータ記憶媒体に磁気極性を誘導する、および磁気素子のデータ感知領域から離れる方向に磁束を向けるなどの所定の特徴に基づいて磁束および電流を導くためにABS上に位置決めされる構成部品に対応すると理解される。
【0010】
図2は、
図1のデータ記憶装置100において使用することができ、調整された電流集中特性を取り込むことのできる例示的な磁気素子をブロックで示す断面図である。磁気素子120は、シード層124とキャップ層126との間に配置される磁気スタック122および磁気シールド128を空気ベアリング面(ABS)上に有する一部の実施形態に基づいて構成されるものとして示される。
【0011】
磁気スタック122は、磁気抵抗、トンネル磁気抵抗、およびスピンバルブなどの様々な異なるデータビット感知層として構成することができるが、
図2に示される実施形態においては、非磁気スペーサ層132によって分離された二重強磁性自由層130を有する「三層」センサとして構成される。三層磁気スタック122は、固定の磁化基準構造との接触とは対照的に、隣接しながらも物理的に分離されている後部バイアス磁石134によってデフォルト磁化に偏る一対の磁気感知強磁性層によって特徴付けることができる。すなわち、磁気スタック122は固定磁化を欠いており、シールド間隔136が縮小されるとともに、垂直シールド128および側部シールドに加わる磁気応力が縮小される。
【0012】
自由層130の磁気配向は、層の磁化が静止状態と活性状態との間で移行するシザリング機構を介して自由層130の一方または両方の所定のデフォルト磁化が変更されることに伴って外部データビットが対面された場合に、ある程度の磁気抵抗効果を提供するように作用してもよい。後部バイアス磁石134のサイズ、配置、および磁気保磁力は、強磁性自由層130の異方性と連動して作用する所定のバイアス磁化を提供し、自由層130において類似または非類似の静止磁化を強固に設定するように調整および構成されてもよい。
【0013】
後部バイアス磁石134の使用は、ABSからZ軸に沿って測定された場合の磁気スタック122のストライプ高さ138、および自由層130の異方性に対して調整することができ、これによって自由層130の磁化の精密な磁化動作でデータビットを感知することができる。しかしながら、より大きなバイアス磁石の強度は、より強い磁気バイアスに対応し得て、密にパック化されたデータビットが区別される。より大きなバイアス磁石の構成は、高いデータビット分解能を提供し得るが、磁気スタック122の代わりに隣接する磁気シールド128を磁束が不意に通過することによって、磁束の損失および磁気の不安定性がもたらされ得る。
【0014】
このようなバイアス磁化がどのように軽減され得るかを示すために、
図3は、様々な実施形態に基づく磁気シールド144および磁気スタック146の構成に関連し、どのように後部バイアス磁石142を調整することができるかについて概して示す、例示的な磁気素子140の一部をブロックで示す断面図である。後部バイアス磁石142は、自由層150の異方性に合わせて作用してそれぞれの自由層150にデフォルト磁化を設定するバイアス磁界を生じさせる残留磁化(M
PM)をもたらす磁気保磁力を有して構成することができる。矩形の磁気シールド144の形状がABSとは反対側の磁気スタック146の自由層150の後部表面と向かい合う磁石厚さ148を制限することができる一方で、様々な実施形態は、磁気シールド144の上昇した厚さ部分156に沿った小さなシールド間隔とは対照的に、縮小された厚さ154部分に沿って増大したシールド間隔を提供するように磁気シールド144内に移行領域152を位置決めする。
【0015】
縮小されたシールド厚さ154によって提供されるシールド間隔の増大は、ABSに対して平行なY軸に沿った磁石スタック146の境界を超えて大きなバイアス磁石厚さ148を延在させることができ、自由層150のために追加のバイアス磁化を生じさせることができる。移行領域152の形状やサイズを変更することによって縮小したシールド厚さ152を調整することにより、電気的および磁気的な絶縁材料で満たすことのできるシールド144とバイアス磁石142との間の物理的空間をさらに提供することができ、後部バイアス磁石142の隔離が増大し、底部シールド144を通るバイアス磁化の損失が縮小される。
【0016】
移行領域152および後部バイアス磁石142を調整することによってシールド144へ漏洩する代わりに磁気スタック146に効率的に到達するバイアス磁化を促す事ができる一方、絶縁、バイアス磁石の厚さ148、およびシールド間隔を増大させて磁気素子140を構成することは、後部バイアス磁石142に近いことが原因でデータビットに反応しなくなり得る自由層150の非最適化部分とは対照的に、シザリングなどの所定の方法で隣接するデータビットに反応するように構成される自由層150の一部のみに限定して流れる電流に対応させることができる。
【0017】
ABSにおける所定の厚さ158およびABSからのストライプ高さ160によって調整される集中特性156を有して底部シールド144を構成することにより、ABSに近い磁気スタック146の領域への電流の制御を高めることができるが、このような調整された構成は、電流が磁気スタック146の意図しない部分を通って異常かつ弱いデータリードバック信号を生成することから、高いデータビット密度のデータ記憶部の環境を伴う増大した静止磁気バイアスおよびデータ読み取り信号に変換され得ない。
図4は、電流の流れを制御し、磁気の不安定性を軽減するために様々な実施形態に基づいて構成される例示的な磁気素子170の一部をブロックで示す断面図である。
【0018】
ABSの近位に電流集中特性174を提供するために底部磁気シールド172を調整することにより、多くの磁気シールド層176、178、180、182、および184は、磁気スタック186を通って流れる電流を制御するように全体的にまたは個別に成形することができる。集中特性174の調整された構成は、一部の実施形態において、ABSに対して所定の配向θ
1およびθ
2で傾斜した側壁188の形態を含むことができ、磁気スタック186の所定の部分に電流を徐々に集中させる。
図4に示される例示的な実施形態において、集中特性174のシールド側壁188は、角度配向が漸進的に小さくなり、シールド172と磁気スタック186との間の界面において各シールド層176、178、180、および182の幅が小さくなる。
【0019】
ABSから遠位のシールド172の一部とは対照的に集中特性174とは異なる所定の厚さを有する磁気シールド層176〜184の調整は、磁気スタック186に入る電流と自由層190の磁気構成および動作とを合致させるように機能することができるが、形状異方性および電流集中特性174のサイズによって、磁気スタック186をより効率的に通過させ、データリードバック信号の振幅を高めるように電流の配向を回転させることができることから、第2の厚さ192に沿った水平配向から電流集中特性174における垂直配向に電流の向きを変え、より素早く正確にデータビットを感知できる電流を提供してもよい。
【0020】
側壁188の角度配向、長さ、および磁気層厚さを調整し、集中特性174を流れる電流を制御できる一方、このように調整された構成により、様々な磁気層176〜184の材料構成を調整することによって電流および電流密度をさらに制御してもよい。
図5は、ABSに近位の所定の幅212を提供する電流集中特性210を提供するためにそれぞれ成形された積層204、206、208として底部磁気シールド202を構成することで電流密度を制御するために一部の実施形態に基づいて調整された例示的な磁気素子200の一部を概して示す。
【0021】
磁気シールド202は、少なくとも後部バイアス磁石222の近くにあること、およびそれぞれの自由層220の異方性によるデータリードバック信号の効率的な生成に導かれない磁化にバイアスが加えられる磁気スタック218の一部への電流の流れを防ぐために、材料、層の数、およびそれぞれの層厚さ214および216が様々な実施形態において調整される。
【0022】
複数の金属強磁性層204、206、および208で磁気シールド202を調整することにより、電気抵抗などのシールド層の材料構成によって電流密度を操作することができる。非限定的な例として、第1の金属シールド層204は、第2の金属シールド層206の異なる第2の厚さ216および材料よりも低い電気抵抗を有する第1の厚さ214および材料を有して構成することができる。このようなシールド202の構成は、低い電気抵抗を有する第1の金属層204に電流を集中させ、ABSに向けて電流をさらに集中させる。
【0023】
電流の伝達を制御するために金属層204、206、および208の材料およびサイズを調整する非限定的な能力は、ABSに対して平行に配向された層側壁228によって分離された、様々な縦方向の厚さ224および226を有する電流集中特性210の成形をさらに伴う。厚さ224および226と厚さ214および216との違いにより、所定の幅212で垂直配向に電流を変換することができる。所定の幅212および電流集中特性210は、より効率的に所定の幅212でZ軸に沿った水平配向から垂直配向に方向を変えるために、
図5に示される連続的な曲線移行、
図4の様々な移行、および傾斜した移行など、各金属シールド層204、206、208の移行領域230を成形することによって調整してもよい。
【0024】
磁気シールド202および電流集中特性210の幅広い調整可能な特徴により、電流密度を所定の幅212で均一もしくは不均一に制御し、ABSの近位において磁気スタック218に所定の電流密度を提供することができる。ABSから遠位において電流集中特性210および縮小されたシールド間隔を有する磁気シールド202の調整された構成は、上部シールドと磁気スタック218との間の界面に所定の電流幅を提供する
図2の上部シールドなどの類似もしくは非類似に構成される上部シールドによって補完されてもよい。たとえば、底部シールドが
図4のシールド172のような複数の金属層を有する一方で、上部シールドは、
図3のシールド144のような移行領域を有する電流集中特性を規定する単一の連続的な層であってもよい。
【0025】
磁気素子の上部および底部シールドの調整された構成が合致している、もしくは非類似であるかどうかに関わらず、1つ以上の電流集中特性があることにより、高められたデータ信号および対面するデータビットの反応を利用することができる磁気スタック218の所定の最適化された部分を通って電流が確実に通過することができる。
図6は、所定の電流密度を有する電流集中特性を提供するために調整された例示的な磁気素子から動作データをグラフ化したものである。線240は、ストライプ高さに沿った電流の拡散を制限しながら、どのようにして電流集中特性の形状、材料、および様々な抵抗によって電流密度をABSの近位において上昇させることができるかを示す。
【0026】
ABSから遠位の磁気スタックの一部において電流を軽減することにより、磁気スタックの最も磁気を感知する部分に電流を加えることができ、上昇した振幅および最適化された安定性を伴うデータ信号が生成される。様々な調整可能な特徴により、反応する磁気素子が所定の電流、磁気バイアス、および磁気シールドを提供することができる。
図7は、様々な実施形態に基づいて磁気スタックを調整するために行われる例示的な磁気素子製造手順250を示す。まず、判断252において、底部磁気シールドの積層構成もしくは単層構成を判定することにより、手順250が開始される。
【0027】
ステップ252で積層底部シールドが選択されると、手順250はステップ254に進む。ステップ254では、電流集中特性を提供するために、第1のシールド層が堆積され、その後に処理される。ステップ252は、斜め入射スパッタリングなどの特定の堆積法、またはエッチングなどの堆積後処理手段に限定されず、電流集中特性の水平方向および垂直方向における厚さおよび部分を規定する移行領域を有する第1のシールド層が成形される。その後、ステップ256において、第2のシールド層が堆積および処理され、電流集中特性が完成し、磁気シールドのABS部分の近位において所定の幅が提供される。
【0028】
判断252で連続的な単層底部シールドが選択されると、ステップ258では、成形された移行領域によって規定されるABSから遠位の縮小した厚さを有する空洞と電流集中特性とを伴い、単一の磁気材料が堆積および処理される。底部シールドにおける層の数に関わらず、ステップ260は、磁気スタック層を続けて形成することによって底部の電流集中特性の構成に従う。ステップ260は、磁気スタックもしくは積層堆積手段の特定のタイプに限定されず、一部の実施形態においては、二重の強磁性層を有して固定の磁化基準構造を有さない三層スタックである。
【0029】
電流集中特性の所定の幅のみにおいて磁気スタックに接触するように形成される磁気スタックを用いて、判断262は、上部磁気シールドをどのように構成するかを判定する。底部シールドの構成に合わせる必要はないが、判断252と同様に、判断262は、ステップ264および266で堆積および処理される複数の金属層の積層として、またはステップ268において堆積および処理される単一の連続層として構成されてもよい。様々なシールド層の構築により、厚さ、材料、移行領域の形状、および所定の幅サイズなどの複数の調整された特徴は、所定の電流の流れおよび密度を提供するように調整することができ、その一方で後部バイアス磁石がより大きなシールド間隔を有し、絶縁材料によってシールドから隔離することができる。
【0030】
手順250の様々な調整可能な特徴は、磁気反応性および安定性を高めることができる様々な異なる電流集中特性をもたらし得る。しかしながら、手順250は、様々なステップおよび判断を省略、変更、および追加できることから、限定されてはいない。たとえば、磁気スタックに隣接する、および磁気スタックから物理的に分離された後部バイアス磁石を構築するためにステップを追加することができる。他の非限定的な例として、3つ以上のシールドを上部および底部磁気シールドのいずれかまたは両方に追加するためのステップを手順250に追加してもよい。
【0031】
電流集中特性を提供するために1つ以上の磁気シールドを調整することにより、磁気抵抗感知振幅および安定性を高めるために磁気スタックのABS部分を所定の電流密度を有する電流の大半が確実に通過することができる。電流集中特性の調整された構成は、ABSから遠位の増大したシールド間隔をさらに提供することができ、絶縁材料が磁気シールドからの漏洩なく後部バイアス磁石から磁気スタックへの磁束のバイアスを集中させることができる。このような調整された磁気挙動に伴い、磁気素子は、特に小さいフォームファクタを有する高いデータビット密度のデータ記憶装置においてより効率的かつ正確とすることができる。
【0032】
本開示の様々な実施形態の多くの特性および利点が様々な実施形態の構造および機能についての詳細と併せて上記で説明されたが、この詳細な説明は例示的なものであって、特に添付の請求項に示される用語の広い意味によって示される本開示の本質の最大限の範囲内で部品の構造および配置を変更してもよいことが理解される。たとえば、特定の素子は、本技術の精神および範囲から逸脱することなく特定の用途に応じて変更してもよい。