特許第6121887号(P6121887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121887
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】噴霧型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20170417BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20170417BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170417BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/02
   A61Q19/00
   A61K8/81
   B65D83/00 K
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-242489(P2013-242489)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-101558(P2015-101558A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 美穂
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−281133(JP,A)
【文献】 特開2005−289971(JP,A)
【文献】 特開2005−104966(JP,A)
【文献】 特開2006−143695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0150812(US,A1)
【文献】 特表2010−521554(JP,A)
【文献】 南 昌義 Masayoshi Minami,"増粘・ゲル化剤の物性" "The physical properties of the gelling agents and the thickeners",FRAGRANCE JOURNAL,2012年 3月,Vol.40, No.3,pp.57-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
DB等 JSTPlus/JST7580
DWPI(Thomson Innovation)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子から形成されるゲル化物を微細化させたミクロゲル粒子を含有する組成物を、ミスト状に噴霧する機構を有する容器に充填してなることを特徴とする噴霧型化粧料。
【請求項2】
ミクロゲル粒子を含有する組成物の25℃における粘度が1000〜15000mPa・sである請求項1記載の噴霧型化粧料。
【請求項3】
架橋剤が、水溶液中で多価金属イオンを生成する化合物である請求項1又は請求項2記載の噴霧型化粧料。
【請求項4】
親水性凝集性高分子の乾燥粉末状態での平均粒径が、150μm以下である請求項1ないし請求項3の何れかの項記載の噴霧型化粧料。
【請求項5】
親水性凝集性高分子が、球状カルボマーNaまたはヒドロキシプロピルデンプンリン酸である請求項1ないし請求項4の何れかの項記載の噴霧型化粧料。
【請求項6】
ミクロゲル粒子を含有する組成物中におけるミクロゲル粒子の平均粒径が0.05〜1000μmである請求項1ないし請求項5の何れかの項記載の噴霧型化粧料。
【請求項7】
ミスト状で皮膚に噴霧されるものである請求項1ないし請求項6の何れかの項記載の噴霧型化粧料。
【請求項8】
少なくとも脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子を混合してゲル化させ、このゲル化物を微細化し、ミクロゲル粒子とする工程を含む噴霧型化粧料用ミクロゲル粒子を含有する組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧型化粧料に関し、更に詳細には、化粧料の物性としては粘性がありながら、充填された組成物を均一にミスト状(霧状)に噴霧することのできる噴霧型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状化粧料は、使用時の簡便性やみずみずしい清涼感が得られるとして、噴霧可能な容器に充填させた噴霧型化粧料(いわゆるミスト型化粧料)の形態でよく用いられている。この噴霧型化粧料は、化粧水、美容液、日焼け止め料、抑汗剤、ヘアローション、ヘアトリートメントなどさまざまな目的にあわせて調製されており、また、その噴霧の方法としては、ポンプ式アトマイザー、トリガー式噴霧器、エアゾールタイプ噴霧器等の噴霧器を使用する方法が知られている。
【0003】
一方、粘性のある化粧料は、とろみ感のある外観や使用時の濃厚感、保湿感等が優れているために、商品性を向上させるために利用されることも多い。このような、粘性を有する化粧料を得るには、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤を使用して増粘剤の分子間相互作用によって粘性を付与する技術や、ゲル化剤としてジェランガム、寒天、カラギーナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等を使用して微細なミクロゲル粒子を作成することで粘性を付与する技術等が知られている(特許文献1〜3)。しかしながら、粘度の高い化粧料をポンプ式アトマイザー等に入れて噴霧すると、容器のノズルに目詰まりを起こしたり、噴霧できたとしてもミストが広く均一に拡散せず、さらに液滴が大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
ところで、粘性のある組成物をミスト状に噴霧し得る技術として、口腔用組成物に関するものが特許文献4に開示されている。しかしながら、口腔用組成物である洗口剤や液体歯磨では、その噴霧対象が口腔内に限定されており、肌や毛髪に使用する化粧料とでは、その使用対象および目的が全く異なっているため、均一な噴霧ができないことや、液滴が大きくなること自体はそれほど問題とならない。また、特許文献4の技術では、ミストを細かくし、これを広く均一に噴霧することは困難であり、肌や毛髪で必要とされる機能や感触は具現化できないものであった。
【0005】
また、特許文献5には、粘性のある化粧直し用化粧料をミスト状に塗布することが記載されているが、これは化粧直し部分の化粧効果の持続性やファンデーションの肌への付着性を目的とするものであり、相対的に広い範囲へのミストの拡散や、大きな液滴が直接問題となるものではなかった。
【0006】
このように、外観的にとろみ感があり、使用時の濃厚感に優れ、粘性のある組成物でありながら、噴霧器に充填し、噴霧した際に、当該組成物を均一に、広範囲に渡ってミスト(霧)として拡散させることが可能である噴霧型化粧料は、事実上提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−82527
【特許文献2】特開2001−342451
【特許文献3】特開2000−119166
【特許文献4】特開2005−104966
【特許文献5】特開2012−201659
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、粘性を有し、外観にとろみ感があり、使用時にヨレがなく、濃厚感に優れた粘性のある組成物でありながら、噴霧時に均一な液滴を生成させることができ、広範囲に渡って均一にミスト状で拡散可能である噴霧型化粧料の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、脱アシル型ジェランガムに架橋剤を加えて水性溶媒をゲル化させる際に、親水性凝集性高分子を加えると、架橋される脱アシル型ジェランガムの網目構造中に親水性凝集性高分子が取り込まれた状態でゲル化されること、およびこのゲル化物を更に崩壊させて微細化させたミクロゲル粒子を含有する組成物を噴霧型化粧料において使用すると、噴霧時に細かく均一なミストを生成することが可能であり、またミストの拡散性も優れていることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子から形成されるゲル化物を微細化させたミクロゲル粒子を含有する組成物を、ミスト状に噴霧する機構を有する容器に充填してなることを特徴とする噴霧型化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、少なくとも脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子を混合してゲル化させ、このゲル化物を微細化し、ミクロゲル粒子とする工程を含む噴霧型化粧料用ミクロゲル粒子組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の噴霧型化粧料に使用する組成物自体は粘性があり、外観にとろみ感を有し、使用時の濃厚感や高分子のヨレが無い商品性の高いものでありながら、噴霧時に均一な液滴を生成させることができ、広範囲に渡って均一に噴霧できるものである。従って、本発明の噴霧型化粧料は、皮膚や毛髪等に噴霧し、使用する新しいタイプの化粧料として利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の噴霧型化粧料は、少なくとも脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子から形成されるゲル化物を微細化させたミクロゲル粒子を含有する組成物(以下、「ミクロゲル粒子組成物」という)を、ミスト状に噴霧する機構を有する容器に充填したものである。
【0014】
本発明の噴霧型化粧料において使用される脱アシル型ジェランガムは、スフィンゴモナス・エロデア(Sphingomonas elodea)が産生する多糖類である、ネイティブ型ジェランガムから、1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基を除去したものである。このものは、既にケルコゲル(CPケルコ社製)としても市販されており、硬くて脆い性質のゲルを形成し、耐熱性および耐酸性を示す特徴を有しているものである。
【0015】
この脱アシル型ジェランガムを架橋させてゲルを形成する架橋剤としては、水溶液中で金属イオンを生成する化合物を使用することができる。多価金属イオンを生成する化合物としては、二価の陽イオンを持つ塩類で可溶性のカルシウム塩およびマグネシウム塩等の溶媒中でカチオンとして存在するものが好ましく、例えば、塩化カルシウム、グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムが挙げられる。この中でも、塩化カルシウムはゲル強度という観点から使用するのに好ましい。また、一価金属イオンを生成する化合物を添加することも可能であり、例えば塩化ナトリウムや塩化カリウムを使用することができる。架橋剤としてはこれらを、単独または2種以上組み合わせて使用することも可能である。
【0016】
本発明においては、上記脱アシル型ジェランガムに架橋剤を作用させてゲルを形成せしめ、更に微細化してミクロゲル粒子とするのであるが、このゲル化の際に架橋された脱アシル型ジェランガムの網目構造中に親水性凝集性高分子を含有する。この親水性凝集性高分子とは、水溶液中で膨潤した際に線状となって広がる高分子とは異なり、水溶液中で膨潤した際に高分子自身が凝集したままである高分子であり、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した際の乾燥粉末状態での平均粒径は0.1〜150μmのものが好ましい。また、親水性凝集性高分子の形状は、球状や略球状が好ましい。この親水性凝集性高分子の具体例としては、球状カルボマーNa(商品名:アクペック−MG N40、住友精化社製)、ミクロゲル型の体積排除効果による増粘機構を持つエマルションポリマー(商品名:AculynTM33、38、ダウ・コーニング社製)、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸等のデンプン誘導体(商品名:STRUCTURE XL、アクゾノーベル社製)、結晶セルロース、セルロース誘導体等が挙げられる。
【0017】
上記ミクロゲル粒子を製造する際の脱アシル型ジェランガムの使用量は、特に限定されず、噴霧した時のミストの細かさや拡散性の観点から、噴霧型化粧料のミクロゲル粒子組成物中での濃度で、0.05〜5質量%(以下、単に、「%」とする)程度であることが好ましく、0.1〜2%であることがより好ましい。また、架橋剤の使用量は、脱アシル型ジェランガムの濃度によっても異なるが、ミクロゲル粒子組成物中での濃度で、0.005〜0.5%程度含有することが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.1%である。更に、親水性凝集性高分子の使用量は、ミクロゲル粒子組成物中での濃度で、0.001〜0.1%程度であることが好ましく、0.005〜0.05%であればより好ましい。
【0018】
なお、脱アシル型ジェランガムに対する架橋剤の含有質量割合(架橋剤/脱アシル型ジェランガム)は0.005〜1であることが好ましく、0.05〜0.5であればより好ましい。
【0019】
また、脱アシル型ジェランガムに対する親水性凝集性高分子の含有質量割合(親水性凝集性高分子/脱アシル型ジェランガム)は、脱アシル型ジェランガムが製剤の粘度因子の主体となる0.001〜1であることが好ましく、0.001〜0.5であればより好ましく、この範囲であると霧の細かさ(液滴の均一性)がより優れるものとなる。
【0020】
本発明の噴霧型化粧料で用いられるミクロゲル粒子の調製は、前記のように脱アシル型ジェランガム、架橋剤および親水性凝集性高分子を混合してゲル化を行い、このゲル化物を崩壊させて微細化することにより得られるが、このゲル化は、例えば、脱アシル型ジェランガムを水性溶媒、例えば、水、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類及びこれらの混液等に溶解した後、この溶解液中に架橋剤および親水性凝集性高分子を添加し、ゲル化させることにより行われる。
【0021】
また、上記して得られたゲル化物の微細化方法は、特に制限されず、ゲルを崩壊させて微細化する剪断力を与えることができる装置を用いればよい。具体的には、ゲル化物を公知のホモジナイザー、ディスパー、ミキサー等を使用し微細化すればよい。この際の、ミクロゲル粒子の平均粒径は、ゲルを崩壊させる強度を適宜変更することにより調整することができる。具体的には、細かい粒径のミクロゲル粒子を得るには高速攪拌によりゲルを十分に崩壊させればよく、一方、大きな粒径を得るには崩壊強度を弱めればよい。微細化は、ゲル形成が完了した後に剪断力を与えるか、もしくは、ゲル化を促す冷却中に剪断力を与えて実施する。ゲル化が完了した後に微細化することがミクロゲルの粒径の均一性の観点から好ましい。一方で、ゲル化を促す冷却中に剪断力を与えることで、製造に要する時間を短縮することができる。
【0022】
微細化により得られるミクロゲル粒子の平均粒径は0.05〜1000μmであることが好ましく、外観のとろみ感と良好なミストの拡散性の両立という観点で、1〜500μmであることがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所製)によりミクロゲル粒子の原液で測定した値である。
【0023】
以上のように製造されたミクロゲル粒子は、製造された状態そのままでミクロゲル粒子組成物として使用しても良いが、一般にはミクロゲル粒子の製造段階あるいは製造後に適当な成分を加え、ミクロゲル粒子組成物として使用される。このような成分の一例としては、親水性凝集性高分子を除く増粘性高分子を挙げることができる。例えば、上記脱アシル型ジェランガムを水性溶媒に溶解する際に、増粘性高分子を含有せしめ、その後、架橋剤でゲル化してもよい。増粘性高分子を加えることで外観の均一性および経時安定性が向上する。脱アシル型ジェランガムに対する増粘性高分子の含有質量割合(増粘性高分子/脱アシル型ジェランガム)は0.001〜1であることが好ましく、0.005〜0.5であればより好ましい。増粘性高分子は特に限定されるものではないが、具体例として、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、グアーガム、ローストビーンガム等の非崩壊性多糖類やカルボキシビニルポリマーおよびその中和塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
【0024】
また、上記ミクロゲル粒子組成物には、エモリエントに優れる分子量400以上の油剤と浸透感や肌なじみに優れる分子量400未満の油剤を含有せしめてもよい。分子量400以上の油剤としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、オレイン酸オレイル、スクワラン等が挙げられる。また、分子量400未満の油剤としては、2−オクチルドデカノール、ジカプリン酸プロピレングリコール、オレイン酸エチル等が挙げられる。これらの油剤をミクロゲル粒子組成物に含有することにより、本発明の噴霧型化粧料として、肌に塗布した際のうるおい感がより優れたものとなる。
【0025】
更に、上記ミクロゲル粒子組成物には、必要に応じて上記成分の他、更に任意成分を含有することができる。この任意成分としては、pH調整剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、油剤、ビタミン類、美容成分、保湿剤、香料、殺菌剤、酸化防止剤等を挙げることができ、これらを適宜含有することができる。
【0026】
斯くして得られるミクロゲル粒子組成物は、25℃における粘度が500〜20000mPa・sであり、外観のとろみ感と良好なミストの拡散性の両立という観点で好ましくは1000〜15000mPa・s、さらに好ましくは2000〜10000mPa・sである。なお、粘度は、25℃の恒温槽に24時間放置したものを単一円筒回転式粘度計(芝浦システム社製)を用いて、ローターを1分間に60回転の速さで1分間回転させた際の測定値を読み取り、それぞれの乗数を乗じた値を意味する。
【0027】
上記したミクロゲル粒子組成物を充填する、ミスト状に噴霧する機構を有する容器としては、上記ミクロゲル粒子組成物をミスト状(霧状)に噴霧することができるものであれば限定されず、例えば、ポンプ式アトマイザー、トリガー式噴霧器、エアゾール式噴霧器等の噴霧器を利用することができる。本発明では、特に粘度の高い化粧料を充填すると均一な噴霧が難しいポンプ式アトマイザーにおいても均一な噴霧が可能であるという点において優れている。
【0028】
以上のようにして製造される本発明の噴霧型化粧料は、顔や身体の皮膚、毛髪等に適用される種々の化粧料、例えば、化粧水、美容液、制汗剤、日焼け止め料、ファンデーション、整髪剤等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
噴霧型化粧料:
脱アシル型ジェランガムをゲル化させる架橋剤として塩化カルシウムを、親水性凝集性高分子として球状カルボマーNaまたはヒドロキシプロピルデンプンリン酸を用い、下記の表1に示す組成および下記製造法により発明品1〜7の噴霧型化粧料を製造した。得られた噴霧型化粧料について、「安定性」、「高分子のヨレのなさ」、「使用時の濃厚感」、「霧の細かさ(液滴の均一性)」、「霧の拡散性」および「霧分布の均一性」について後記評価方法で評価した。なお、比較品として表2に示す組成の噴霧型化粧料を使用した。
【0031】
(製造方法)
A:成分3〜6を75℃で加熱し、混合溶解させる。
B:Aに75℃加熱をした成分7および8を添加混合する。
C:Bに成分9〜13を添加混合する。
D:Cに成分1〜2を添加混合した後、20℃まで冷却する。
E:Dを25℃で保管し、ゲル化させる。
F:Eにディスパーで剪断力を与え、微細化する。
G:Fを取り出し、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したアトマイザーに充填し、噴霧型化粧料を得た。なお、今回使用したアトマイザーはポンプ式アトマイザー(Z−155−29−1−(PCV513−8−0)、三谷バルブ社製)である。また、成分4、5および9〜11は、予めBG(1,3−ブチレングリコール)と各高分子を混合した後、75℃に加温した精製水を加えたものを用いた。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
(評価方法)
以下の(1)安定性、(2)高分子のヨレのなさ、(3)使用時の濃厚感、(4)霧の細かさ(液滴の均一性)、(5)霧の拡散性および(6)霧分布の均一性の評価項目について、下記の評価基準に従って評価を行った。
【0035】
(1)安定性:
50℃の恒温槽に1ヶ月間保管し、目視によって排液について評価した。
<評価基準>
◎:状態の変化がなかった
○:ごくわずかな排液が確認された
△:著しい排液が確認された
×:著しい排液が確認され、容器を振っても再分散しない沈殿物が生じた
【0036】
(2)高分子のヨレのなさ:
20名の化粧品評価専門パネルを用い、洗顔後の顔面に発明品、比較品の噴霧型化
粧料を噴霧し、馴染ませた後に生じる高分子のヨレの程度を評価した。
<評価基準>
5点:全くヨレがなかった
4点:目にはみえないが、指で触るとわずかにザラつきを感じた
3点:わずかに目に見えるヨレが生じるが、さらに馴染ませるとすぐに消えて気
にならなかった
2点:ヨレが生じ、顔面に高分子の凝集物が残った
1点:非常に多くのヨレが生じ、高分子の凝集物が多量に顔面に残った
【0037】
(3)使用時の濃厚感:
20名の化粧品評価専門パネルを用い、洗顔後の顔面に発明品、比較品の
噴霧型化粧料を噴霧し、使用時の濃厚感を評価した。
<評価基準>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不足
1点:不足
【0038】
上記高分子のヨレのなさ、使用時の濃厚感の判定は、前記評価得点から平均点を算出し、以下の基準で実施した。
<判定>
◎:4.5点以上
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:2.5点未満
【0039】
(4)霧の細かさ(液滴の均一性):
発明品、比較品の噴霧型化粧料を机においた黒色の色画用紙に向かって20cmの
高さから噴霧し、紙に残った液滴の大きさと数で評価した。なお、評価は3回の噴霧
の平均値をもとに実施した。
<評価基準>
◎:直径3mm以上の液滴の数が3個以下、細かな液滴が均一に存在した
○:直径3mm以上の液滴が4個以上20個未満存在するものの、それ以外は細か
な液滴が均一に存在した
△:直径3mm以上の液滴が20個以上存在するものの、それ以外は細かな液滴が
均一に存在した
×:ほとんどの液滴が直径3mm以上であり、また、液滴の大きさが不均一であっ
【0040】
(5)霧の拡散性:
発明品、比較品の噴霧型化粧料を机においた黒色の色画用紙に向かって20cmの
高さから噴霧し、噴霧された領域の直径によって評価した。なお、評価は3回の噴霧
の平均値をもとに実施した。
<評価基準>
◎:20cm以上
○:10cm以上20cm未満
△:5cm以上10cm未満
×:5cm未満
【0041】
(6)霧分布の均一性:
発明品、比較品の噴霧型化粧料を机においた黒色の色画用紙に向かって20cmの
高さから噴霧し、噴霧された領域の形で評価した。
<評価基準>
◎:円形状
○:中心部への噴霧量がやや少ない円形状
△:ドーナツ状(中心部は、わずかに噴霧される)
×:ドーナツ状(中心部に噴霧されない)
【0042】
この結果より、発明品1〜7の噴霧型化粧料はいずれも安定性、高分子のヨレのなさ、使用時の濃厚感、霧の細かさ(液滴の均一性)、霧の拡散性および霧分布の均一性において良好なものであった。一方、脱アシル型ジェランガムの代わりにネイティブ型ジェランガムを含有する比較品1は霧の細かさ(液滴の均一性)および霧の拡散性が劣り、脱アシル型ジェランガムの代わりにカラギーナン及びスクロースを含有する比較品2は安定性が悪く、高分子のヨレが生じ、霧の細かさ(液滴の均一性)および霧の拡散性が非常に悪いものであった。架橋剤を含有しない比較品3は脱アシル型ジェランガムが架橋しないため、特に使用時の濃厚感及び安定性が劣るものであり、比較品3から脱アシル型ジェランガムの含有量を増量させた比較品4は粘度の増加は見られるものの、高分子のヨレが生じ、霧の細かさ(液滴の均一性)、霧の拡散性および霧分布の均一性において効果が乏しいものであった。また、脱アシル型ジェランガムを含有しない比較品5は、使用時の濃厚感及び安定性が悪いものであった。
【0043】
実施例2
噴霧型化粧水:
下記の処方および製法により噴霧型化粧水を製造した。
(処方) (%)
(1)ポリオキシエチレン(20モル)ポリオキシプロピレン
(6モル)デシルテトラデシルエーテル 0.2
(2)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(3)エタノール 12.0
(4)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.05
(5)オレイン酸エチル 0.01
(6)香料 0.04
(7)脱アシル型ジェランガム2%(BG20%水溶液) 12.0
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)精製水 40.0
(10)塩化カルシウム 0.04
(11)精製水 1.0
(12)キサンタンガム1%(BG20%水溶液) 1.0
(13)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 0.015
(14)精製水 残量
【0044】
(製法)
A:成分7〜9を75℃で加熱し、混合溶解させる。
B:Aに75℃加熱をした成分10、11を添加混合する。
C:Bに成分12、13、14を添加混合する。
D:Cに成分1〜6を添加混合した後、20℃まで冷却する。
E:Dを25℃で保管し、ゲル化させる。
F:Eにディスパーで剪断力を与え、微細化する。
G:Fを取り出し、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したアトマイザーに充填し、噴霧型化粧水を得た。
【0045】
得られた噴霧型化粧水は、安定性が優れ、高分子のヨレもなく、使用時の濃厚感も有しており、さらにミストの均一な噴霧性および拡散性にも優れていた。さらに肌に塗布した際のうるおい感及び化粧直しに優れ、外観がとろみ感を有していた。
【0046】
実施例3
噴霧型化粧水:
下記の処方および製法により噴霧型化粧水を製造した。
(処方) (%)
(1)ポリオキシエチレン(20モル)ポリオキシプロピレン
(6モル)デシルテトラデシルエーテル 0.2
(2)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(3)エタノール 12.0
(4)オクチルドデカノール 0.05
(5)香料 0.04
(6)脱アシル型ジェランガム2%(BG20%水溶液) 12.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)精製水 40.0
(9)塩化カルシウム 0.04
(10)精製水 1.0
(11)キサンタンガム1%(BG20%水溶液) 1.0
(12)球状カルボマーNa1%(BG20%水溶液) 2.0
(13)精製水 残量
【0047】
(製法)
A:成分6〜8を75℃で加熱し、混合溶解させる。
B:Aに75℃加熱をした成分9、10を添加混合する。
C:Bに成分11、12、13を添加混合する。
D:Cに成分1〜5を添加混合した後、20℃まで冷却する。
E:Dを25℃で保管し、ゲル化させる。
F:Eにディスパーで剪断力を与え、微細化する。
G:Fを取り出し、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したアトマイザーに充填し、噴霧型化粧水を得た。
【0048】
得られた噴霧型化粧水は、安定性が優れ、高分子のヨレもなく、使用時の濃厚感も有しており、さらにミストの均一な噴霧性および拡散性にも優れていた。さらに肌に塗布した際のうるおい感及び化粧直しに優れ、外観がとろみ感を有していた。
【0049】
実施例4
噴霧型日焼け止め料:
下記の処方および製法により噴霧型日焼け止め料を製造した。
(処方) (%)
(1)p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 7.0
(2)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.0
(3)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 2.0
(4)ポリオキシエチレン(30モル)フィトステロール 0.2
(5)ポリオキシエチレン(5モル)フィトステロール 0.1
(6)脱アシル型ジェランガム2%(BG20%水溶液) 12.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)精製水 40.0
(9)塩化カルシウム 0.04
(10)精製水 1.0
(11)球状カルボマーNa1%(BG20%水溶液) 2.0
(12)フェニルイミダゾールスルホン酸 2.5
(13)トリエタノールアミン 1.4
(14)精製水 残量
(15)エタノール 12.0
(16)香料 0.04
【0050】
(製法)
A:成分6〜8を75℃で加熱し、混合溶解させる。
B:Aに75℃加熱をした成分1〜5を添加し乳化する。
C:Bに成分9、10を添加混合する。
D:Cに成分11〜16を添加混合した後、20℃まで冷却する。
E:Dを25℃で保管し、ゲル化させる。
F:Eにディスパーで剪断力を与え、微細化する。
G:Fを取り出し、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したアトマイザーに充填し、噴霧型日焼け止め料を得た。
【0051】
得られた噴霧型日焼け止め料は、既存の噴霧型日焼け止め料と比較してミストの均一な噴霧性および拡散性にも優れており、また肌上でも均一な化粧膜でありべたつきのない噴霧型日焼け止め料であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の噴霧型化粧料は、充填されたミクロゲル粒子組成物に粘性があり、とろみのある外観を有すると共に、保存時の安定性に優れているものであるが、噴霧の際は、上記組成物が細かい霧となり均一で拡散性の良いものである。従って本発明の噴霧型化粧料は、皮膚や毛髪に使用する化粧品分野に広く使用できるものである。

以 上