特許第6121888号(P6121888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121888
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】懸架装置および懸架システム
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/06 20060101AFI20170417BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20170417BHJP
   F16F 9/43 20060101ALI20170417BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F16F9/06
   F16F9/32 H
   F16F9/43
   B62K25/08 C
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-246560(P2013-246560)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-87008(P2015-87008A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-202655(P2013-202655)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】池田 大輔
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092945(JP,A)
【文献】 特開2013−181544(JP,A)
【文献】 特開平11−030263(JP,A)
【文献】 特開2006−275266(JP,A)
【文献】 米国特許第06592108(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
B62K 25/00−27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に形成され車体側に位置する車体側部材と、
管状に形成されて車輪側に位置すると共に前記車体側部材に接続し、当該車体側部材の軸方向において当該車体側部材に対して相対的に移動する車輪側部材と、
前記車体側部材及び前記車輪側部材の内側に設けられる筒状のシリンダと、
前記車体側部材及び前記車輪側部材の内側に位置し、当該車体側部材と当該車輪側部材との移動に伴って前記シリンダの軸方向に相対的に移動するロッド部材と、
前記ロッド部材の車輪側の端部に固定されると共に前記シリンダの軸方向に移動可能に当該シリンダに接触して設けられ、当該シリンダ内の空間を区画する第1の区画部材と、
前記シリンダの車体側の端部に固定されると共に前記車輪側部材内の空間を区画する第2の区画部材と
を備え、
前記第1の区画部材および前記第2の区画部材により、当該第1の区画部材の前記ロッド部材側および当該第2の区画部材の前記シリンダ側に位置して流体を収容する第1室と、当該第1の区画部材の当該ロッド部材側とは逆に位置して流体を収容する第2室と、当該第2の区画部材の当該シリンダ側とは逆に位置して流体を収容する第3室とを形成すること
を特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記シリンダは、車輪側の端部において前記車輪側部材と共に移動するように固定され、前記ロッド部材は、車体側の端部において前記車体側部材と共に移動するように固定されること
を特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記第1室は、前記シリンダ内の前記第1の区画部材により区画された空間のうち前記ロッド部材側の空間と、前記車輪側部材と当該シリンダとの間の空間であって前記第2の区画部材により区画された空間のうち当該シリンダ側の空間とを含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記第1室の容積及び前記第2室の容積を調整する容積調整材を注入する注入口をさらに備えること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記ロッド部材は、内部に軸方向に形成された空間部を有し、当該空間部は、前記第1室に接続すること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記第2室中の封入ガスの圧力を調整するためのガス圧調整部をさらに備え、
前記第2室と前記ガス圧調整部とは、チューブを介して連通すること
を特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の懸架装置。
【請求項7】
前記第1の区画部材は、当該第1の区画部材と前記シリンダとの間に生ずる側圧を低減するための側圧低減部材を備えること
を特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の懸架装置。
【請求項8】
空気ばねからなる懸架ばねを内蔵する第1の懸架手段と、
減衰機構を内蔵する第2の懸架手段と
を備え、
前記第1の懸架手段は、
管状に形成され車体側に位置する車体側部材と、
管状に形成されて車輪側に位置すると共に前記車体側部材に接続し、当該車体側部材の軸方向において当該車体側部材に対して相対的に移動する車輪側部材と、
前記車体側部材及び前記車輪側部材の内側に設けられる筒状のシリンダと、
前記車体側部材及び前記車輪側部材の内側に位置し、当該車体側部材と当該車輪側部材との移動に伴って前記シリンダの軸方向に相対的に移動するロッド部材と、
前記ロッド部材の車輪側の端部に固定されると共に前記シリンダの軸方向に移動可能に当該シリンダに接触して設けられ、当該シリンダ内の空間を区画する第1の区画部材と、
前記シリンダの車体側の端部に固定されると共に前記車輪側部材内の空間を区画する第2の区画部材と
を備え、
前記第1の区画部材および前記第2の区画部材により、当該第1の区画部材の前記ロッド部材側および当該第2の区画部材の前記シリンダ側に位置して流体を収容する第1室と、当該第1の区画部材の当該ロッド部材側とは逆に位置して流体を収容する第2室と、当該第2の区画部材の当該シリンダ側とは逆に位置して流体を収容する第3室とを形成すること
を特徴とする懸架システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置、懸架システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ダンパ脚とスプリング脚を平行配置したフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドのガイドをガイドシリンダに挿入してなり、ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室と、ガイドシリンダに設けられてガイドロッドを挿入かつ支持するロッドガイドとガイドロッドのガイドとで区画されるリバウンド空気ばね室とを有してなるフロントフォークが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−92945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載のフロントフォークにあっては、リバウンド空気ばね室が、ロッドガイドと、ガイドシリンダに挿入されたガイドロッドのガイドとに挟まれて区画される限られた区画から構成されている。このため、リバウンド空気ばね室に十分な容積を確保することが困難である。その結果、リバウンド空気ばね室の圧縮比が過度に高くなりやすくなり、伸側行程の伸切付近で反力の安定化が難しく、操縦安定性に困難が生じることがあった。
【0005】
そこで本発明は、例えばリバウンド空気ばね室である第1室の容積をより広く確保することができ、第1室の圧縮比が過度に高くなりにくい懸架装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、第1発明に係る懸架装置の発明は、管状に形成され車体側に位置する車体側部材と、管状に形成されて車輪側に位置すると共に車体側部材に接続し、車体側部材の軸方向において車体側部材に対して相対的に移動する車輪側部材と、車体側部材及び車輪側部材の内側に設けられる筒状のシリンダと、車体側部材及び車輪側部材の内側に位置し、車体側部材と車輪側部材との移動に伴ってシリンダの軸方向に相対的に移動するロッド部材と、ロッド部材の車輪側の端部に固定されると共にシリンダの軸方向に移動可能にシリンダに接触して設けられ、シリンダ内の空間を区画する第1の区画部材と、シリンダの車体側の端部に固定されると共に車輪側部材内の空間を区画する第2の区画部材とを備え、第1の区画部材および第2の区画部材により、第1の区画部材のロッド部材側および第2の区画部材のシリンダ側に位置して流体を収容する第1室と、第1の区画部材のロッド部材側とは逆に位置して流体を収容する第2室と、第2の区画部材のシリンダ側とは逆に位置して流体を収容する第3室とを形成することを特徴とする。
【0007】
第2発明に係る懸架装置の発明は、シリンダは、車輪側の端部において車輪側部材と共に移動するように固定され、ロッド部材は、車体側の端部において車体側部材と共に移動するように固定されることを特徴とする。
【0008】
第3発明に係る懸架装置の発明は、第1室は、シリンダ内の第1の区画部材により区画された空間のうちロッド部材側の空間と、車輪側部材とシリンダとの間の空間であって第2の区画部材により区画された空間のうちシリンダ側の空間とを含むことを特徴とする。
【0009】
第4発明に係る懸架装置の発明は、第1室の容積及び第2室の容積を調整する容積調整材を注入する注入口をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
第5発明に係る懸架装置の発明は、ロッド部材は、内部に軸方向に形成された空間部を有し、空間部は、第1室に接続することを特徴とする。
【0011】
第6発明に係る懸架装置の発明は、第2室中の封入ガスの圧力を調整するためのガス圧調整部をさらに備え、第2室とガス圧調整部とは、チューブを介して連通することを特徴とする。
【0012】
第7発明に係る懸架装置の発明は、第1の区画部材は、第1の区画部材とシリンダとの間に生ずる側圧を低減するための側圧低減部材を備えることを特徴とする。
【0013】
第8発明に係る懸架システムの発明は、空気ばねからなる懸架ばねを内蔵する第1の懸架手段と、減衰機構を内蔵する第2の懸架手段とを備え、第1の懸架手段は、管状に形成され車体側に位置する車体側部材と、管状に形成されて車輪側に位置すると共に車体側部材に接続し、車体側部材の軸方向において車体側部材に対して相対的に移動する車輪側部材と、車体側部材及び車輪側部材の内側に設けられる筒状のシリンダと、車体側部材及び車輪側部材の内側に位置し、車体側部材と車輪側部材との移動に伴ってシリンダの軸方向に相対的に移動するロッド部材と、ロッド部材の車輪側の端部に固定されると共にシリンダの軸方向に移動可能にシリンダに接触して設けられ、シリンダ内の空間を区画する第1の区画部材と、シリンダの車体側の端部に固定されると共に車輪側部材内の空間を区画する第2の区画部材とを備え、第1の区画部材および第2の区画部材により、第1の区画部材のロッド部材側および第2の区画部材のシリンダ側に位置して流体を収容する第1室と、第1の区画部材のロッド部材側とは逆に位置して流体を収容する第2室と、第2の区画部材のシリンダ側とは逆に位置して流体を収容する第3室とを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、第2の区画部材を設けることで、第1室の容積をより広く確保することができ、第1室の圧縮比が過度に高くなりにくくなる。
第2発明によれば、シリンダを正立式とすることで、シリンダの長さを変更するだけで第1室や第2室の容積の調整を容易に行うことができる。
第3発明によれば、第2の区画部材により空間を区画することで、車輪側部材とシリンダとの間の空間を第1室の容積として加えることができる。
第4発明によれば、容積調整剤を注入する注入口を備えることで、第1室や第2室の容積をより容易に調整することができる。
第5発明によれば、ロッド部材の内部に空間部を有することで、第1室に空間部の容積をさらに加えることができる。
第6発明によれば、第2室とガス圧調整部とがチューブを介して連通することで、第2室内の容積調整剤等の吹き出しを抑制することができる。
第7発明によれば、第1の区画部材とシリンダとの間のシール性が向上する。
第8発明によれば、第1の懸架手段に第2の区画部材を設けることで、第1室の容積をより広く確保することができ、第1室の圧縮比が過度に高くなりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本実施形態のフロントフォークが適用される自動二輪車について説明した図である。(b)は、本実施形態のフロントフォークについて説明した図である。
図2】第1フロントフォーク部を説明するための図である。
図3図2に示す第1フロントフォークのIII部の拡大図である。
図4図2に示す第1フロントフォークのIV部の拡大図である。
図5】(a)は、図2に示す第1フロントフォーク11AをVa方向から見た図である。(b)は、図2に示す第1フロントフォーク11AのVb−Vb断面図である。
図6】リバウンド空気ばね室およびロッド内室の領域について説明した図である。
図7】車軸ブラケット部の他の例について説明した図である。
図8】ロッド部の他の例を説明した図である。
図9】ロッド部のさらに他の例を説明した図である。
図10】第1フロントフォークの圧側行程および伸側行程における動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、本実施形態のフロントフォークが適用される自動二輪車について説明した図である。また図1(b)は、本実施形態のフロントフォークについて説明した図である。
【0018】
図1(a)に示す自動二輪車1は、車体2と、車体2の前方に配される車輪である前輪14Aと、車体2の後方に配される車輪である後輪14Bと、車体2と後輪14Bとを接続するリヤサスペンション3と、車体2と前輪14Aとを接続するフロントフォーク4と、自動二輪車1を操舵するためのハンドル5とを備える。
【0019】
本実施形態のフロントフォーク4(懸架システム)は、図1(b)に示すように、倒立型フロントフォークである。フロントフォーク4は、第1の懸架手段(懸架装置)の一例である第1フロントフォーク11Aと、第2の懸架手段の一例である第2フロントフォーク11Bと、第1ブラケット12Aと、第2ブラケット12Bと、ステアリングシャフト13とを有している。フロントフォーク4は、例えば二輪車や三輪車等のハンドル5と前輪14Aとの間を接続するように設けられ、衝撃を緩衝するとともにハンドル5の操舵を前輪14Aに伝達する。
【0020】
第1フロントフォーク11Aと第2フロントフォーク11Bとは、前輪14Aの左右にそれぞれ配置され、車軸14Sを介して前輪14Aと接続する。そして、第1フロントフォーク11Aおよび第2フロントフォーク11Bは、軸方向に伸縮可能に構成される。なお、本実施形態において、以下の説明では、第1フロントフォーク11Aの長手方向を「軸方向」と呼ぶ。
【0021】
第1フロントフォーク11Aは、例えば減衰機構を内蔵しない。さらに第1フロントフォーク11Aは、金属ばねではなく空気ばねからなる懸架ばねを内蔵する。また、本実施形態では、第2フロントフォーク11Bは、オイルダンパなどの減衰機構を内蔵し、金属ばねを内蔵しない構成からなる。ただし、第2フロントフォーク11Bは、第1フロントフォーク11Aと同様の構成であってもよい。
【0022】
第1ブラケット12Aおよび第2ブラケット12Bは、第1フロントフォーク11Aおよび第2フロントフォーク11Bを接続する。ステアリングシャフト13は、両端が第1ブラケット12Aおよび第2ブラケット12Bにそれぞれ固定される。そしてステアリングシャフト13が車体2に連結されることで、フロントフォーク4が車体2に操舵(回転)可能に接続される。
【0023】
図2は、第1フロントフォーク11Aを説明するための図である。
図3は、図2に示す第1フロントフォーク11AのIII部の拡大図である。
図4は、図2に示す第1フロントフォーク11AのIV部の拡大図である。
図5(a)は、図2に示す第1フロントフォーク11AをVa方向から見た図である。また図5(b)は、図2に示す第1フロントフォーク11AのVb−Vb断面図である。
【0024】
第1フロントフォーク11Aは、図2に示すように、外筒部20と、内筒部30と、車軸ブラケット部40と、を備えている。
【0025】
外筒部20は、図2に示すように、車体側部材の一例としてのアウターチューブ部210と、車輪側部材の一例としてのインナーチューブ部220とを備えている。
(アウターチューブ部210)
アウターチューブ部210は、管状の部材であるアウターチューブ211と、アウターチューブ211の車輪側の端部に配されるブッシュ212Aおよびシール部材213と、最伸長時においてインナーチューブ221の車体側の端部付近に配される様にアウターチューブ211に圧入されたブッシュ212Bと、アウターチューブ211の車体側の端部に配されるフォークボルト部214とを有する。
【0026】
アウターチューブ211は、本実施形態では車体側に位置する。アウターチューブ211は、車輪側の端部にブッシュ212Aおよびシール部材213を保持するための拡管部211Dが形成される。
【0027】
ブッシュ212Aは、図3に示すように、環状の部材であって上述の拡管部211Dの内周部に設けられる。またブッシュ212Bは、ブッシュ212Aと同様の環状の部材であって、アウターチューブ211とインナーチューブ221との間に設けられる。ブッシュ212A、212Bは、インナーチューブ221の外周面に対向してインナーチューブ221との間における摩擦抵抗を低減する。そして、アウターチューブ211とインナーチューブ221とは、ブッシュ212A、212Bを介して、軸方向にスライド可能に接続する。
【0028】
シール部材213は、リング状の部材であって、拡管部211Dの内周部に取り付けられる。そして、シール部材213は、アウターチューブ211とインナーチューブ221とによって形成される後述の外側空気ばね室R3(第3室)を気密する。
【0029】
フォークボルト部214は、図2に示すように、ボルト214Bと、第1シール部材214Sと、第2シール部材214Gと、ガス圧調整部214Aと、ロッド保持部214Hとを有する。
【0030】
ボルト214Bは、アウターチューブ211の車体側の端部において、アウターチューブ211の内側に螺合され気密に固定される。そして、ボルト214Bは、アウターチューブ211の車体側の開口を塞ぐ。
【0031】
第1シール部材214Sおよび第2シール部材214Gは、アウターチューブ211とボルト214Bとの間に位置し、ボルト214Bとアウターチューブ211との隙間を封止する。そして、第1シール部材214Sおよび第2シール部材214Gは、後述のロッド内室321Rと外側空気ばね室R3をそれぞれ密封する。
【0032】
ガス圧調整部214Aは、ボルト214Bの外部に臨む位置に取着される。ガス圧調整部214Aは、図5(a)に示すように、第1ガス圧調整部214ALと第2ガス圧調整部214ARとからなる。第1ガス圧調整部214ALと第2ガス圧調整部214ARとは、図中左右に配列する。第1ガス圧調整部214ALは、ロッド内室321Rに連通し、第2ガス圧調整部214ARは、外側空気ばね室R3に連通する。これにより、内側から外側へのガスの流出を阻止するとともに、調整時においてはロッド内室321Rや外側空気ばね室R3の封入ガス圧を調整可能にする。なお後述するようにロッド内室321Rは、リバウンド空気ばね室R1と連通しているため、ロッド内室321Rの封入ガス圧を調整することは、リバウンド空気ばね室R1の封入ガス圧を調整することと同じとなる。ガス圧調整部214Aには、例えばガス圧注入器の注入針が刺通できるゴム膜などを用いることができる。
【0033】
ロッド保持部214Hは、後述するロッド部材321を接続し、保持するための部材である。ロッド部材321は、ロッド保持部214Hに接続することでロッド保持部214H、第1シール部材214S、および第2シール部材214Gを介してアウターチューブ211に気密に固定される。
(インナーチューブ部220)
インナーチューブ部220は、図2に示すように、管状の部材であるインナーチューブ221を有する。
【0034】
インナーチューブ221は、本実施形態では車輪側に位置する。インナーチューブ221の外径は、アウターチューブ211の内径よりも小さく形成される。そして、インナーチューブ221は、アウターチューブ211の内側に挿入される。そして、インナーチューブ221は、アウターチューブ211に接続し、アウターチューブ211の軸方向に対してアウターチューブ211に対して相対的に移動する。インナーチューブ221は、車輪側の端部が車輪14に固定され、車体側の端部がアウターチューブ211内に挿入されている。
【0035】
インナーチューブ221は、車輪側に車軸ブラケット部40との接続部位を形成する雌ネジ部221Jが形成される。また、インナーチューブ221は、車体側が開口している。
【0036】
内筒部30は、図2に示すように、シリンダ部310と、ロッド部320とを備えている。
【0037】
(シリンダ部310)
シリンダ部310は、筒状の部材であるシリンダ311と、第2の区画部材の一例としてのロッドガイド312と、ロッドガイド312の車体側の端部に配されるブッシュ313と、シリンダ311の車輪側の端部に配されるボトムピース314と、ロッドガイド312と後述するピストン322との間に配されるリバウンドスプリング315とを有する。
【0038】
シリンダ311は、アウターチューブ部210及びインナーチューブ部220の内側に設けられ、本実施形態では車輪側に位置する。つまりこの場合シリンダ311が車輪側であり、後述するロッド部材321が車体側となるいわゆる正立型となっている。
【0039】
ロッドガイド312は、シリンダ311の車体側の端部に固定される。つまりロッドガイド312は、図3に示すように、シリンダ311の車体側の端部に位置し、そしてシリンダ311の端部にネジ留め等によって固定される。またロッドガイド312は、インナーチューブ221に接触して設けられる。さらに、ロッドガイド312は、ロッド部材321(後述)の外径よりも大きい内径の貫通孔312Hを有する。そして、ロッドガイド312は、貫通孔312Hにロッド部材321(後述)が貫通して設けられ、軸方向にスライド可能に支持する。また、ロッドガイド312は、ロッドガイド312の外周に設けられる外側シール部材312Sと内周に設けられる内側シール部材312Gを有する。そして、ロッドガイド312とインナーチューブ221との間の隙間は、外側シール部材312Sによって封止される。またロッドガイド312とロッド部材321との間の隙間は、内側シール部材312Gによって封止される。
【0040】
ブッシュ313は、ロッド部材321に対向するように、貫通孔312Hに取り付けられる。そして、ブッシュ313は、ロッド部材321とロッドガイド312との間の摩擦抵抗を低減する。さらにブッシュ313は、ロッド部材321とロッドガイド312との間の摺動をガイドする。
【0041】
ボトムピース314は、図4に示すように、シリンダ311の車輪側の端部に配置される。このボトムピース314は、円筒形状をしている。そして、ボトムピース314は、シリンダ311の車輪側の端部と車軸ブラケット部40との間に配置される。これによりシリンダ311は、車輪側の端部においてインナーチューブ221と共に移動するように固定される。
【0042】
また、ボトムピース314は、外周部に第1シール部材314Sと第2シール部材314Gを有する。そして、ボトムピース314は、第1シール部材314Sおよび第2シール部材314Gを介して、シリンダ311と車軸ブラケット部40との間の隙間を封止する。
【0043】
リバウンドスプリング315は、例えば、金属コイルばねからなる。リバウンドスプリング315のばね力は、アウターチューブ211とインナーチューブ221を収縮させる方向に付勢する。
【0044】
本実施形態では、ロッドガイド312によって、インナーチューブ221内の空間を区画する。具体的には、ロッド部材321の車輪側であるシリンダ311側にリバウンド空気ばね室R1(第1室)の一部を形成し、シリンダ311側とは逆に位置する側であってロッド部材321の車体側に外側空気ばね室R3(第3室)を形成する。
【0045】
(ロッド部320)
ロッド部320は、図3に示すように、方向に沿って延びる棒状の部材であるロッド部材321と、ロッド部材321の車輪側の端部に配されるピストン322と、ピストン322に取り付けられるピストンリング323およびシール部材324と、バンプラバー325とを備える。本実施形態では、ピストン322、ピストンリング323、シール部材324により第1の区画部材が構成される。
【0046】
ロッド部材321は、アウターチューブ211及びインナーチューブ221の内側に位置し、アウターチューブ211とインナーチューブ221との移動に伴ってシリンダ311の軸方向に相対的に移動する。また、ロッド部材321は、内部に、軸方向の車輪側の端部から車体側の端部まで延びた貫通孔であるロッド内室321R(空間部)が形成される。すなわち、本実施形態のロッド部材321は、中空状に形成されている。
【0047】
ロッド部材321は、図2に示すように、車体側の端部にロッド保持部214Hと接続する車体側雄ネジ部321Pが形成されている。そして、ロッド部材321は、車体側雄ネジ部321Pにロッド保持部214Hが接続され、ロッド保持部214Hを介してアウターチューブ211に固定される。これによりロッド部材321は、車体側の端部においてアウターチューブ211と共に移動するように固定される。
【0048】
ロッド部材321は、図3に示すように、車輪側にピストン322と接続するための車輪側雄ネジ部321Jが形成されている。そして、ロッド部材321は、車輪側雄ネジ部321Jにてピストン322を保持する。さらに、ロッド部材321内側のロッド内室321Rは、車輪側で孔部316によりリバウンド空気ばね室R1(第1室)と連通し、接続する。
【0049】
ピストン322は、ロッド部材321の車輪側の端部に固定される。具体的には、ロッド部材321は、図3に示すように、ロッド部材321の車輪側雄ネジ部321Jによって保持される。そしてロッド部材321は、シリンダ311の軸方向に移動可能にシリンダ311に接触して設けられる。
【0050】
ピストンリング323は、環状の部材であって、ピストン322の外周部に取り付けられる。ピストンリング323の外径は、シリンダ311の内径と略等しく設定される。
【0051】
シール部材324は、環状の部材であって、ピストン322の外周部に取り付けられる。シール部材324は、本実施形態では合計2つ設けている。
【0052】
バンプラバー325は、第1フロントフォーク11Aが加重を受けて収縮し、底付きしたときの衝撃を緩和するとともに、最圧縮位置を規定する。より詳しくは、アウターチューブ211とインナーチューブ221とが軸方向において相対的に近づく方向に移動していくと、バンプラバー325が、まずロッドガイド312と接触する。そしてバンプラバー325が4mm程たわんだ後にロッド保持部214Hとインナーチューブ221とが金属接触してストロークを規制し、この位置が最圧縮位置となる。
【0053】
本実施形態では、ピストン322、ピストンリング323およびシール部材324によって、シリンダ311内の空間を区画する。具体的には、ピストン322の車体側であるロッド部材321側がリバウンド空気ばね室R1(第1室)の一部を形成し、ロッド部材321側とは逆に位置する側であってピストン322の車輪側に内側空気ばね室R2(第2室)を形成する。
【0054】
以上のように構成される内筒部30では、図2に示すように、インナーチューブ221とシリンダ311とによって形成されるリバウンド空気ばね室R1に対して、ロッド内室321Rが孔部316を通して連通する。すなわち、内筒部30においては、リバウンド空気ばね室R1とロッド内室321Rはガスが相互に流通可能に接続している。
【0055】
また、リバウンド空気ばね室R1はピストン322のシール部材324やロッドガイド312の外側シール部材312Sおよび内側シール部材312Gなどによって密封される。従って、リバウンド空気ばね室R1およびロッド内室321Rによって形成される空間のガスは密封された状態が保たれる。
【0056】
図6は、リバウンド空気ばね室R1およびロッド内室321Rの領域について説明した図である。
図6では、斜線部をリバウンド空気ばね室R1およびロッド内室321Rの領域として図示している。図示するように、リバウンド空気ばね室R1は、シリンダ311内のピストン322により区画された空間のうちロッド部材321側の空間R1Aと、インナーチューブ部220とシリンダ311との間のロッドガイド312により区画された空間のうちシリンダ311側の空間R1Bを含む。この空間R1Aと空間R1Bとは、孔部317により連通し、接続している。
【0057】
付言すれば、ピストン322、ピストンリング323およびシール部材324によって、シリンダ311内の気室は区画され、ピストン322の車輪側に内側空気ばね室R2が形成される。内側空気ばね室R2内のガスは、ピストン322、シール部材324およびボトムピース314により密封された状態が保たれる。
一方、ロッドガイド312は、インナーチューブ221内の気室を区画し、車輪側はリバウンド空気ばね室R1の一部とし、車体側を外側空気ばね室R3とする。外側空気ばね室R3内のガスは、ロッドガイド312の外側シール部材312S、アウターチューブ211とインナーチューブ221の間のシール部材213、フォークボルト部214により密封された状態が保たれる。
【0058】
(車軸ブラケット部40)
車軸ブラケット部40は、図4に示すように、チューブ保持部41と、車軸連結部42とを有する。本実施形態において、これらチューブ保持部41および車軸連結部42は一体的に形成される。
また車軸ブラケット部40は、ガス圧調整部43と、ワンタッチカプラ44Aと、ワンタッチカプラ44Bとを有する。
【0059】
チューブ保持部41は、円筒形状をした部分であって、インナーチューブ221の内径よりも小さな外径を有している。そして、チューブ保持部41には、インナーチューブ221の車輪側の端部が挿入され、チューブ保持部41とインナーチューブ221とは、シール部材314Fを介して液密に螺合する。
【0060】
車軸連結部42は、前輪14Aの車軸14S(図1参照)が挿入される車軸孔42Hを有する。そして、車軸孔42Hの内径は、車軸ボルト45の締付けにより変更可能であって、前輪14Aの車軸14Sを締め付け可能に構成される。
【0061】
ガス圧調整部43は、サブタンク43Sを介し、内側空気ばね室R2と連通している。よってガス圧調整部43により、内側空気ばね室R2の内側から外側へのガスの流出を阻止するとともに、調整時においては内側空気ばね室R2中の封入ガスの圧力を調整することができる。
【0062】
ワンタッチカプラ44Aおよびワンタッチカプラ44Bは、注入口の一例である。またワンタッチカプラ44Aおよびワンタッチカプラ44Bは、それぞれリバウンド空気ばね室R1および内側空気ばね室R2と連通している。よってワンタッチカプラ44Aによりリバウンド空気ばね室R1内にオイルを注入することができるとともに、ワンタッチカプラ44Bにより内側空気ばね室R2内にオイルを注入することができる。これによりリバウンド空気ばね室R1や内側空気ばね室R2の容積を調整することができ、圧縮比を調整することが容易となる。ここでこのオイルは、リバウンド空気ばね室の容積及び内側空気ばね室の容積を調整する容積調整材として機能する。
【0063】
またオイルは、実際の使用状況では、内側空気ばね室R2中でボトムピース314側に溜まることになる。そのため内側空気ばね室R2内の封入ガスの圧力を調整時(減圧時)に、このオイルがガス圧調整部43から吹き出す可能性がある。
【0064】
図7は、車軸ブラケット部40の他の例について説明した図である。
図7において、内側空気ばね室R2とガス圧調整部43とは、チューブ43Tを介して連通している。チューブ43Tは、チューブ保持部43Aにおいて支持され、チューブ43Tを介してガス圧調整部43から封入ガスを内側空気ばね室R2に注入することが可能となっている。またチューブ43Tの内側空気ばね室R2側の端部は、オイルOの液面よりも車体側に突き出るように配される。そのため内側空気ばね室R2内の封入ガスの圧力を調整時(減圧時)においても、オイルがガス圧調整部43から吹き出すことを抑制することができる。
【0065】
図8は、ロッド部320の他の例を説明した図である。
図示したロッド部320は、図3に示したロッド部320に対し、ピストン322とロッド部材321との間に、スフェリカルベアリング326をさらに備える点で異なる。
【0066】
自動二輪車1(図1参照)の制動時においては、フロントフォーク4(図1参照)を自動二輪車1の前後方向に撓ませる力(側圧;サイドフォース)が作用する。また自動二輪車1の旋回時においては、フロントフォーク4を自動二輪車1の横方向に撓ませる力(側圧;サイドフォース)が作用する。このときこの方向へアウターチューブ211とインナーチューブ221がたわむことになる。
【0067】
この場合、アウターチューブ211側のロッド部材321とインナーチューブ221側のシリンダ311との間に折れが生ずることになる。そして折れが生ずると、ピストン322に直列に配置されたピストンリング323やシール部材324とシリンダ311との間のシール性が損なわれやすくなる。またピストンリング323やシール部材324とシリンダ311との間の摩擦力(フリクション)が増加し、ピストン322がシリンダ311の軸方向に移動しにくくなる。さらにピストン322が偏芯した状態で移動しやすくなるため、シール部材324の締め代をこの偏芯量を考慮して大きくする必要が生じる。そのためこれによってもシール部材324とシリンダ311との間の摩擦力が増加し、ピストン322がシリンダ311の軸方向に移動しにくくなる。さらにピストン322が移動するときに、オイルが、シール部材324により掻き出され、他の室に移動する現象が発生しやすい。
【0068】
スフェリカルベアリング326を設けることで、ピストン322は、スフェリカルベアリング326を中心に揺動することができる。そのため側圧によりロッド部材321とシリンダ311との間に折れが生じても、ピストン322がこの折れに対し追従して揺動する。その結果、ピストンリング323やシール部材324とシリンダ311との間のシール性が損なわれにくくなり、シール性が向上する。
またスフェリカルベアリング326は、自己調芯型軸受であり、これを設けることでピストン322の偏芯が補正される。そのためピストン322が偏芯した状態で移動しにくくなる。よってピストン322に作用する側圧を低減(安定)させることが可能となり、上記問題が生じにくくなる。即ち、ピストンリング323やシール部材324とシリンダ311との間の摩擦力が増加しにくくなり、またシール部材324の締め代を大きくする必要も生じにくい。さらにピストン322が移動するときに、オイルがシール部材324により掻き出され、他の室に移動する現象が発生しにくくなる。
【0069】
なおスフェリカルベアリング326は、曲率半径との関連で、その直径が小さいほどシリンダ311の微少な撓みにも追従することが可能となる。ただしスフェリカルベアリング326の直径を小さくするとロッドエンド部328の強度が弱くなるため、追従性と強度との兼ね合いでその直径を決定することが望ましい。
【0070】
図9は、ロッド部320のさらに他の例を説明した図である。
図示したロッド部320は、図8に示したロッド部320に対し、ピストン322とロッド部材321との間に、ラバー327を備える点で異なる。即ち、図8のスフェリカルベアリング326の替わりにラバー327が設けられている。
ラバー327は、例えば、樹脂等からなる円筒形状の部材であり、弾性体である。そのためシリンダ311に側圧が作用しても、ラバー327が圧縮することでこの側圧を低減させることができる。よって図8で説明したのと同様の効果が生じる。なおラバー327の硬度や厚みを変更することで、シリンダ311の撓み量に対する対応が可能である。
【0071】
なお図8図9の場合、ピストン322、ピストンリング323、シール部材324、およびスフェリカルベアリング326(またはラバー327)により第1の区画部材が構成される。そしてスフェリカルベアリング326やラバー327は、第1の区画部材とシリンダ311との間に生ずる側圧を低減するための側圧低減部材として機能する。
【0072】
図10は、第1フロントフォーク11Aの圧側行程および伸側行程における動作を説明するための図である。
【0073】
(圧側行程)
第1フロントフォーク11Aの圧側行程においては、図10(a)に示すように、アウターチューブ211とインナーチューブ221とが軸方向において相対的に近づく方向に移動する。一方、ピストン322とロッドガイド312とは、相対的に遠ざかる方向に移動する。これによりロッドガイド312は、アウターチューブ211のフォークボルト部214に向けて相対的に移動し、ピストン322は、シリンダ311の車輪側に向けて挿入される方向に移動する。
【0074】
ロッドガイド312がアウターチューブ211のフォークボルト部214に向けて相対的に移動することで、外側空気ばね室R3の容積が狭まって外側空気ばね室R3における空気が圧縮される。このとき、外側空気ばね室R3は、密封されているため空気ばねとして作用する。そして、外側空気ばね室R3において、アウターチューブ211とインナーチューブ221とを伸張させる方向の反力が発生する。
【0075】
同様に、ピストン322がシリンダ311の車輪側に向けて移動することで、内側空気ばね室R2の容積が狭まって内側空気ばね室R2における空気が圧縮される。このとき、内側空気ばね室R2は、密封されているため空気ばねとして作用する。そして、内側空気ばね室R2においてもアウターチューブ211とインナーチューブ221とを伸張させる方向の反力が発生する。
【0076】
(伸側行程)
第1フロントフォーク11Aの伸側行程においては、図10(b)に示すように、アウターチューブ211とインナーチューブ221とが軸方向において相対的に遠ざかる方向に移動する。一方、ピストン322とロッドガイド312とは、相対的に近づく方向に移動する。これによりロッドガイド312は、アウターチューブ211の車輪側に向けて相対的に移動し、ピストン322は、シリンダ311の車体側に向けて近づく方向に移動する。
【0077】
ピストン322がシリンダ311の車体側に向けて移動することにより、リバウンド空気ばね室R1の容積が狭まってリバウンド空気ばね室R1における空気が圧縮される。また、リバウンド空気ばね室R1は、ロッド内室321Rと接続している。そのため、これらリバウンド空気ばね室R1およびロッド内室321Rが空気ばねとして作用する。そして、リバウンド空気ばね室R1およびロッド内室321Rにおいて、アウターチューブ211とインナーチューブ221とを収縮させる方向の反力が発生する。
【0078】
以上のように、本実施形態が適用されるフロントフォーク4においては、第1フロントフォーク11Aの伸縮ストロークに対し、アウターチューブ211とインナーチューブ221とを伸長させる方向に付勢する外側空気ばね室R3および内側空気ばね室R2により形成される空気ばねのばね力と、アウターチューブ211とインナーチューブ221とを収縮させる方向に付勢するリバウンド空気ばね室R1等により形成される空気ばねのばね力が発生する。
【0079】
本実施形態では、ロッドガイド312によりインナーチューブ221内の気室を区画し、車輪側はリバウンド空気ばね室R1の一部とし、車体側を外側空気ばね室R3としている。これにより従来は、外側空気ばね室R3であった空間R1Bをリバウンド空気ばね室R1の一部とすることができ、リバウンド空気ばね室R1を従来に比較して大きくすることができる。その結果、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができる。従って、伸側行程の伸切付近で、反力を安定化し、操縦安定性が向上する。
【0080】
リバウンド空気ばね室R1を大きくするためにリバウンド空気ばね室R1に接続するサブタンクを、設ける方法もあるが、サブタンクを設ける構成では、サブタンクが内側空気ばね室R2に張り出すことになる。そのため内側空気ばね室R2の容積が小さくなり、弊害が生じる場合がある。対して本実施形態では、空間R1Bをリバウンド空気ばね室R1の一部とすることで、サブタンクが不要となる。そのためサブタンクを設けることによる内側空気ばね室R2の容積の減少が生じることがない。さらにサブタンクを設ける必要がないことにより第1フロントフォーク11Aの製造費用の低減を図りやすい。
【0081】
また本実施形態では、好ましい形態としてシリンダ311を車輪側に配する正立式としている。この場合、シリンダ311の長さの変更を行うだけで、リバウンド空気ばね室R1や内側空気ばね室R2の容積の調整を容易に行うことができる。これにより第1フロントフォーク11Aの重量の低減や製造費用の低減を図ることができる。
【0082】
さらにシリンダ311を車輪側に配する正立式にする形態によれば、上述した圧縮比を調整するためにリバウンド空気ばね室R1や内側空気ばね室R2に注入されるオイルが、第1フロントフォーク11Aの下部に集約することが可能となる。具体的には、図4において、R1T、R2Tで示す箇所にオイルが集約され、この部分に貯留する。対してシリンダ311を車体側に配する倒立式の場合は、オイルは、例えば、第1フロントフォーク11Aの中間部に位置することになる。そのためピストン322が移動するときに、オイルが、シール部材により掻き出され、他の室に移動する現象が発生しやすい。本実施形態では、オイルが、第1フロントフォーク11Aの下部に集約するため、シール部材により掻き出される現象は生じにくい。
【0083】
またオイルが、第1フロントフォーク11Aの下部に集約することができると、上述したワンタッチカプラ44Aやワンタッチカプラ44Bを設け、ここからオイルを注入することができる。そのためオイル量の調整が、より容易となる。その結果、第1フロントフォーク11Aを車体に取り付けたままでオイル量の調整が可能となり、圧縮比の調整を行う際の作業性がより向上する。
【符号の説明】
【0084】
11A…第1フロントフォーク、20…外筒部、30…内筒部、211…アウターチューブ、221…インナーチューブ、311…シリンダ、312…ロッドガイド、321…ロッド部材、321R…ロッド内室、322…ピストン、326…スフェリカルベアリング、327…ラバー、R1…リバウンド空気ばね室、R2…内側空気ばね室、R3…外側空気ばね室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10