【実施例1】
【0022】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における電源装置の概略を示す構成図である。
【0023】
AC電源31には、電源装置40が接続されている。電源装置40は、AC電源31から供給されるAC電力と、蓄電池70から供給されるDC電力と、を入力し、負荷71の消費電力である負荷電力をその負荷71へ供給するDCの無停電電源装置である。
【0024】
AC電源31は、例えば、商用のAC単相200V又はAC3相200Vであり、これに対応して、電源装置40も、AC単相用又はAC3相用のDC電源装置である。なお、説明を簡単にするために、以下、AC電源31はAC単相200Vであり、電源装置40も、AC単相用の電源装置であるとして説明する。
【0025】
電源装置40は、AC電源31に接続された入力端子41を有し、この入力端子41に、複数台の電源ユニット50(=50−1〜50−n)が並列に接続されている。各電源ユニット50は、AC電力をDC電力に変換してDCの出力電圧Vo及び出力電流Io/nをそれぞれ接続点63へ出力するAC/DCコンバータである。各電源ユニット50は、出力電流Io/nを所定の値に制限する定電流垂下特性と、設定される垂下電力Psetに基づき、その所定の値以上の出力電流Io/nを出力する必要がある場合には出力電圧Voを垂下させて出力電流Io/nを増加させる定電力垂下特性と、を有し、更に、運転状態を表す運転状態信号S50を出力する機能を有している。この複数台の電源ユニット50は、電源ユニット故障時の負荷電力供給維持のために並列冗長構成になっている。
【0026】
接続点63からは、出力電圧Voと合流された出力電流Ioとが出力される。接続点63には、出力端子67と入出力端子68とが分岐接続され、その出力端子67に、負荷71が接続され、更に、その入出力端子68に、蓄電池70が接続される。出力端子67からは、負荷電圧Vl及び負荷電流Ilが出力される。入出力端子68は、蓄電池70への充電電圧Vb及び充電電流Ibの出力、又は蓄電池70の放電電流を入力する端子である。
【0027】
接続点63と出力端子67との間には、電流検出器64及び電圧検出器65が設けられている。電流検出器64は、負荷電流Ilを検出してこの負荷電流Ilに対応した電圧の電流検出信号S64を出力するものであり、ホール効果素子等により構成されている。電圧検出器65は、負荷電圧Vlを検出してこの負荷電圧Ilに対応した電圧の電圧検出信号S65を出力するものであり、抵抗分圧回路等により構成されている。
【0028】
電流検出器64及び電圧検出器65の出力側には、制御部としての監視制御部66が接続されている。監視制御部66は、電流検出器64の電流検出信号S64、電圧検出器65の電圧検出信号S65、及び各電源ユニット50の運転状態信号S50を入力し、複数台の電源ユニット50の運転状態を監視すると共に、各電源ユニット50に対して所定の垂下電力Psetを設定してその各電源ユニット50の定電力垂下特性を制御する機能等を有している。
【0029】
監視制御部66は、電流検出手段としての出力電流監視部66a、電圧検出手段としての出力電圧監視部66b、運転状態監視手段としての運転状態監視部66c、条件設定手段としての条件設定部66d、演算手段としての演算部66e、及び、垂下電力設定手段としての垂下電力設定部66fを有し、例えば、中央処理装置(CPU)等で構成されている。
【0030】
出力電流監視部66aは、所定のサンプリング時間t(sec)毎に、電流検出器64の電流検出信号S64を入力して負荷電流Ilを検出し、その負荷電流Ilを監視する機能を有している。出力電圧監視部66bは、所定のサンプリング時間t(sec)毎に、電圧検出器65の電圧検出信号S65を入力して負荷電圧Vlを検出し、その負荷電圧Vlを監視する機能を有している。運転状態監視部66cは、各電源ユニット50から出力される運転状態信号S50を入力して複数台の電源ユニット50(=50−1〜50−n)の並列運転台数nを監視し、運転台数信号S66cを出力すると共に、電源ユニット50が故障して運転台数が減少した時には、警報信号を出力する機能等を有している。条件設定部66dは、運転状態監視部66cから出力される運転台数信号S66cを入力して運転台数nを設定すると共に、蓄電池70への最大充電電流Ib_maxと、蓄電池70の放電終止電圧Vb_minと、を設定する機能を有している。
【0031】
演算部66eは、検出された負荷電流Il及び負荷電圧Vlと、設定された最大充電電流Ib_max及び放電終止電圧Vb_minとに基づき、負荷電圧Vlと負荷電流Ilとを乗算して負荷71の消費電力である負荷電力Pl(=Vl×Il)を算出し、最大充電電流Ib_max及び放電終止電圧Vb_minを乗算し、この乗算結果(Ib_max×Vb_min)と負荷電力Plとを加算して最大出力電力Po_max
Po_max=Pl+(Ib_max×Vb_min)
を算出し、電源ユニット1台当たりの垂下電力Pset(=Po_max/n)を算出する機能を有している。更に、垂下電力設定部66fは、算出された垂下電力Psetを各電源ユニット50に対して設定する機能を有している。
【0032】
図4(a)〜(d)は、
図1中の各電源ユニット50の概略を示す構成図であり、同図(a)は、電源ユニット50の全体の構成、同図(b)は、同図(a)中の出力電圧安定化回路58の構成例、同図(c)は、同図(a)中の垂下制御回路59の構成例、及び、同図(d)は、同図(a)中のPWM制御回路62の構成例をそれぞれ示す図である。
【0033】
電源ユニット50は、AC電源31から供給されるAC電力を入力する2つの入力端子51a,51bを有し、この入力端子51a,51bに、整流回路52が接続されている。整流回路52は、入力されるAC電力を整流してDC電力を出力する回路であり、ダイオードブリッジ回路等により構成されている。整流回路52の+側出力端子は、DC/DCコンバータ53を介して、整流回路52の−側出力端子に接続されている。
【0034】
DC/DCコンバータ53は、変圧器(以下「トランス」という。)53aと、このトランス53aの1次巻線53a1に直列に接続されたパワーMOSFET等のスイッチング素子53b等と、を有している。トランス53aは、巻数Npの1次巻線53a1と、巻数Nsの2次巻線53a2と、により構成されている。スイッチング素子53bと整流回路52の−側出力端子との間には、電流検出器54が設けられている。電流検出器54は、1次側のDC電流Idを検出してこのDC電流Idに対応した電圧の電流検出信号S54を出力するものであり、ホール効果素子等により構成されている。
【0035】
トランス53aにおける2次巻線53a2の2つの電極には、整流・平滑回路55が接続されている。整流・平滑回路55は、2次巻線53a2の出力電力を整流する2つの整流ダイオード55a,55bと、その整流された出力電力を平滑するチョークコイル55c及び平滑コンデンサ55dと、を有している。整流・平滑回路55の+側出力端子及び−側出力端子には、DCの出力電圧Vo及び出力電流Io/nを出力する+側出力端子56a及び−側出力端子56bが接続されている。−側出力端子56bは、グランドGNDに接続されている。整流・平滑回路55の+側出力端子と+側出力端子56aとの間には、電圧検出器57が設けられている。電圧検出器57は、出力電圧Voを検出してこの出力電圧Voに対応した電圧の電圧検出信号S57を出力するものであり、抵抗分圧回路等により構成されている。
【0036】
電圧検出器57の出力側には、出力電圧安定化回路58及び垂下制御回路59が接続されている。出力電圧安定化回路58は、例えば、誤差増幅器58a等で構成され、電圧検出信号S57及び基準電圧Vrefを入力し、これらの電圧検出信号S57と基準電圧Vrefとを誤差増幅器58aで比較して、この比較結果が零になるような安定化信号S58を出力する回路である。
【0037】
垂下制御回路59は、垂下電力Psetが入力されると、定電圧垂下モードになり、電流検出信号S54及び電圧検出信号S57に基づき、その垂下電力Psetを維持するような出力電圧Vo及び出力電流Io/nを出力端子56a,56bから出力させるような垂下制御信号S59を出力する回路である。垂下制御回路59は、例えば、乗算器59a及び誤差増幅器59b等により構成されている。乗算器59aは、電圧検出信号S57と、出力電流Io/nに対応する電圧信号(=電流検出信号S54×Np/Ns、但し、Np/Nsはトランス53aの1次巻線Npと2次巻線Nsとの巻数比)と、を乗算し、この乗算結果である乗算信号S59aを出力する回路である。誤差増幅器59bは、乗算信号S59aと垂下電力Psetとを比較し、この比較結果が零になるような垂下制御信号S59を出力する回路である。
【0038】
出力電圧安定化回路58及び垂下制御回路59の出力側には、それぞれ逆電流阻止用のダイオード60,61を介して、パルス幅変調(以下「PWM」という。)制御回路62が接続されている。PWM制御回路62は、例えば、コンパレータ62a等により構成され、コンパレータ62aにより、ダイオード60又は61を介して入力される安定化信号S58又は垂下制御信号S59を、基準となる三角波信号CPsと比較し、オンデューティが可変されたPWM信号S62を出力して、スイッチング素子53bをオン/オフ動作させる回路である。
【0039】
なお、各電源ユニット50では、図示しない監視部により、出力端子56a,56bから出力される出力電力Voを監視して、正常に運転しているか、あるいは故障しているかの運転状態を表す運転状態信号S50を、
図1中の監視制御部66へ出力する機能を有している。
【0040】
(電源ユニットの垂下特性と負荷特性)
図5は、
図1中の複数台の電源ユニット50の垂下特性と負荷71の負荷特性を示す図である。
図5において、横軸は電流I及び縦軸は電圧Vである。
【0041】
負荷71の消費電力である負荷電力Plは、
図5中の破線で示すように、電源ユニット50の出力電圧Vo(=負荷電圧Vl)の低下に伴って一定の定電力特性(Pl=負荷電圧Vl×負荷電流Il)を示す。これに対して、
図5中の実線で示すように、複数台の電源ユニット50の出力電力Poを、Po≧Plになるように垂下特性を調整(即ち、出力電力Po=出力電圧Vo×出力電流Io=一定となるように定電力特性を調整)することにより、蓄電池70の電圧Vbが低下した状態においても、負荷71への供給電力が不足することは無い。この時、複数台の電源ユニット50の最大出力電力を、Po=(Pl/Vb+Ib)×Vbに設定することにより、負荷71への供給電力を維持しつつ、蓄電池充電電流Ibを任意の値以下に制限することが可能となる。
【0042】
(電源ユニットと負荷及び蓄電池充電電流の関係)
図6は、
図1中の複数台の電源ユニット50と負荷71及び蓄電池充電電流Ibの関係を示す図である。
図6において、横軸は電流I及び縦軸は電圧Vである。
【0043】
蓄電池70の電圧がVbで与えられた時、充電電流Ibは、
Ib=Io−Il=(Po−Pl)/Vb
となる。充電電流Ibは、蓄電池70の電圧Vbが最小の時に最大となるため、蓄電池Vbに蓄電池放電終止電圧Vb_minを代入して出力電力Poを決定すれば、最大充電電流Ib_maxの値を制限することができる。
【0044】
(電源ユニットの動作)
図4の電源ユニット50は、通常運転時において、次のように動作する。
【0045】
複数台の電源ユニット50は、例えば、
図3に示すように、出力電圧がVo=48V、最大出力電流がIo_max=100Aの時、最大出力電力がPo_max=4.8kWであると仮定する。
【0046】
各電源ユニット50において、AC電源31から供給されるAC電力が、入力端子51a,51bに入力されると、そのAC電力が、整流回路52によってDC電力に整流される。整流されたDC電力は、PWM信号S62によってオン/オフ動作するスイッチング素子53bにより、AC電力に変換される。変換されたAC電力のAC電圧は、トランス53aによって所定電圧に変換される。変換された所定電圧のAC電力は、ダイオード55a,55bによってDC電力に整流された後、チョークコイル55c及び平滑コンデンサ55dによって平滑され、平滑されたDCの出力電流Io/n及び出力電圧Vo(=48V)からなる出力電力Poが、出力端子56a,56bから出力される。
【0047】
各電源ユニット50から出力された出力電流Io/nは、合流されて出力電流Ioとなり、
図1中の接続点63から出力される。
【0048】
図1中の負荷71の変動等により、各電源装置50の出力端子56a,56bから出力される出力電圧Voが基準電圧Vref(=48V)から変動したとする。
【0049】
出力電圧安定化回路58は、電圧検出器57の電圧検出信号S57と基準電圧Vref(=48V)とを比較し、この比較結果である安定化信号S58が零になるように、ダイオード60及びPWM制御回路62を通して、PWM信号S62のオンデューティを変化させる。変化したオンデューティのPWM信号S62により、スイッチング素子53bがオン/オフ動作し、
図5及び
図6に示すように、出力電圧Voが一定の48Vに維持され、
図1中の接続点63から出力される。
【0050】
図1中の接続点63から定電圧の出力電圧Vo(=48V)が出力されている時、蓄電池70は、充電電流Ibにより、
図6中の蓄電池70の電圧Vbに示すように、定電圧充電される。
【0051】
図1中の負荷71が定電力特性を有し、複数台の電源ユニット50の出力電圧Voが
図5中の一定電圧48Vより低下した場合の動作を説明する。
【0052】
各電源ユニット50内の垂下制御回路59は、
図1中の垂下電力設定部66fによって垂下電力Psetが設定されると、定電力垂下モードへ移行し、垂下電力Psetを維持するような出力電圧Vo及び出力電流Io/nを出力させるように、ダイオード61及びPWM制御回路62を通して、PWM信号S62のオンデューティを可変し、スイッチング素子53bをオン/オフ動作させて定電力動作を行わせる。これにより、
図1中の蓄電池70は、
図6に示すように、最大充電電流Ib_max以下の充電電流Ib(=Io−Il)で充電される。そのため、蓄電池70の劣化や破損を防止できる。
【0053】
(電源装置の全体の動作)
図7は、
図1の電源装置40における電源ユニット垂下電力設定の動作を示すフローチャートである。
【0054】
この
図7を参照しつつ、
図1の電源装置40の全体の動作を説明する。
電源装置40の動作が開始され、ステップSP1において、監視制御部66内の運転状態監視部66cは、各電源ユニット50から与えられる運転状態信号S50に基づき、複数台の電源ユニット50の運転台数を表す運転台数信号S66cを条件設定部66dへ出力する。これにより、条件設定部66dには、電源ユニット並列運転台数nが設定され、ステップSP2へ進む。ステップSP2において、条件設定部66dに、蓄電池70の最大充電電流Ib_maxの値が設定され、ステップSP3へ進む。ステップSP3において、条件設定部66dに、蓄電池70の放電終止電圧Vb_minの値が設定され、ステップSP4へ進む。
【0055】
ステップSP4において、出力電圧監視部66bは、所定のサンプリング時間t(sec)毎に、電圧検出器65の電圧検出信号S65を入力し、現在の負荷電圧Vl(i)を計測する。更に、出力電流監視部66aも、所定のサンプリング時間t(sec)毎に、電流検出器64の電流検出信号S64を入力し、現在の負荷電流Il(i)を計測し、ステップSP5へ進む。
【0056】
ステップSP5において、演算部66eは、計測された現在の負荷電圧Vl(i)と負荷電流Il(i)とから、現在の負荷電力Pl(i)(=Vl(i)×Il(i))を算出し、ステップSP6へ進む。ステップSP6において、演算部66eは、算出された負荷電力Pl(i)と、設定された最大充電電流Ib_max及び放電終止電圧Vb_minと、から次式に従って複数台の電源ユニット50の垂下電力Po_maxを算出し、ステップSP7へ進む。
Po_max=Pl(i)+(Vb_min×Ib_max)
【0057】
ステップSP7において、演算部66eは、電源ユニット1台当たりの垂下電力Pset(=Po_max/n)を算出し、ステップSP8へ進む。ステップSP8において、垂下電力設定部66fは、各電源ユニット50の垂下電力を垂下電力Psetの値に設定する。すると、各電源ユニット50は、定電力垂下モードへ移行し、垂下電力Psetを維持するような出力電圧Vo及び出力電流Io/nを出力するように、定電力動作を行う。これにより、蓄電池70は、
図6に示すように、最大充電電流Ib_max以下の充電電流Ib(=Io−Il)で充電される。そのため、蓄電池70の劣化や破損を防止できる。
【0058】
次に、ステップSP9において、条件設定部66dは、電源ユニット並列運転台数n、最大充電電流Ib_max、及び放電終止電圧Vb_minの値に変更があるか否かを判定し、変更があれば(Yes)、ステップSP10へ進み、変更が無ければ(No)、それらの設定値(n,Ib_max,Vb_min)を変更せずに、ステップSP4における負荷電圧Vl(i)及び負荷電流Il(i)のサンプリング処理へ戻る。ステップSP10において、条件設定部66dは、設定値(n,Ib_max,Vb_min)を変更値に再設定してから、ステップSP4のサンプリング処理に戻り、以後、同様の処理を行う。
【0059】
本実施例1における具体例として、電源ユニット故障時の負荷電力供給維持のために並列冗長構成を有する電源装置40において、垂下電力Po_maxの値が、
Po_max≧{(n+1)Pl+(Ib_max×Vb_min)}/n
となるように、
図6中の最大充電電流Ib_maxの値を設定すれば、運用中に並列接続された複数台の電源ユニット50の内、例えば1台が故障しても、負荷71への電力供給を維持しつつ、最大充電電流Ib_maxを制限することが可能となる。
【0060】
(実施例1の変形例)
出力電圧安定化回路58及び垂下制御回路59は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)等により構成しても良い。
【0061】
(実施例1の効果)
本実施例1の電源装置40によれば、負荷電圧Vl及び負荷電流Ilの計測値から算出される負荷電力Plと、最大充電電流Ib_max及び放電終止電圧Vb_minの設定値と、から決まる最大出力電力Po_maxに、電源ユニット出力電力Poを設定するだけで、負荷71への供給電力を維持しつつ、蓄電池70への充電電流制限が可能となる。又、複数台の電源ユニット50からの余剰な出力電力Poを抑制することにより、出力電力Poとほぼ比例関係にある電源ユニット50の入力電力も抑制することが可能となり、省エネルギー化に貢献することが可能である。