特許第6121936号(P6121936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121936
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】リール脚固定装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/06 20060101AFI20170417BHJP
   A01K 87/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A01K87/06 B
   A01K87/00 630E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70774(P2014-70774)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-188443(P2015-188443A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−11975(JP,A)
【文献】 特開2005−185214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプリプレグシートを積層して成形されるとともに魚釣用リールのリール脚を収容できる開口を形成するように膨出する膨出部を有する筒状のフード部を操作ナットによって軸方向に移動させるリール脚固定装置において、
前記フード部は、そのほぼ全長にわたって少なくとも軸方向に指向する強化繊維が途切れることなく連続して延びるとともに、前記軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く領域を前記膨出部に有することを特徴とするリール脚固定装置。
【請求項2】
前記軸方向に指向する強化繊維は、前記フード部の左右両側で対称的にその軸方向に対して傾くことを特徴とする請求項1に記載のリール脚固定装置。
【請求項3】
前記領域が前記フード部の前記開口付近に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリール脚固定装置。
【請求項4】
前記軸方向に指向する強化繊維を伴う軸方向繊維層が前記フード部の外層側に配設されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリール脚固定装置。
【請求項5】
前記領域での前記強化繊維の軸方向に対する傾き角度が5°以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のリール脚固定装置。
【請求項6】
複数のプリプレグシートを積層して成形されるとともに魚釣用リールのリール脚が挿入される開口を有する筒状のフード部を操作ナットによって軸方向に移動させるリール脚固定装置の前記フード部を製造するための製造方法であって、
軸方向に指向する強化繊維が左右対称に配設されたプリプレグシートを設けるステップと、
円柱部と、前記円柱部の端部の周方向の一部を前方に向けて次第に上昇するように傾斜させた膨出部とを、前記フード部の形状に対応して有するマンドレルを設けるステップと、
前記プリプレグシートの左右対称軸線上に前記マンドレルを位置させて前記プリプレグシートを左右両側から前記マンドレルの外周に巻き付けることにより、前記マンドレルの前記膨出部で、前記軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く領域を左右対称に形成するステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着され、各種の魚釣用リールを取り付け可能とするリール脚固定装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、軸長方向に離間する移動フードと固定フードを備え、リール脚の一端を固定フードに差し込み、リール脚の他端を軸方向に移動する移動フードで押え付けることで、魚釣用リールを固定するタイプのリール脚固定装置が知られている。前記固定フード、及び移動フードは、元竿杆の外周に被着されるパイプ状のリールシートに配設されており、移動フードに隣接配置された操作ナットを回転することで移動フードを固定フードに対して接近/離反させ、これにより魚釣用リールの着脱がなされる。通常、上記したリール脚固定装置の移動フード及び固定フード(以下、フード部とも称する)は金属材料で形成されることが多く、差し込まれるリール脚が当接する部分(フード部の内面)に合成樹脂によるパッド部を配設するようにしている。
【0003】
ところで、最近では、釣竿の軽量化を図ることが求められており、上記したようにフード部を金属材料で形成することは、軽量化の妨げとなってしまう。このため、例えば、特許文献2には、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを複数層重ね合わせ、これを筒状に成形することでフード部を形成することが開示されている。また、この特許文献2には、フード部を複数のプリプレグシートを積層して成形するにあたり、強度低下が生じないように、各層におけるプリプレグシートの重ね合わせ部をリール脚の脚保持部以外の領域に位置させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−187064号
【特許文献2】特開2014−11975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したフード部は、繊維強化樹脂材で形成することにより軽量化を図ることができるが、釣竿を軽量化するためには、可能な限り薄肉厚化して軽量化を図ることが望ましい。すなわち、フード部を薄肉厚化することで、その分、リール脚固定装置を軽量化することができるとともに、固定されるリール脚やリールシート本体との間での段差が少なくなって握り心地の向上を図ることも可能となる。
【0006】
上記した特許文献2には、フード部の軽量化を図るにあたり、仕様が異なる複数枚のプリプレグシートを、重ね合せ部分の位置を脚保持部からずらすことが開示されているに過ぎず、フード部の強度の維持を図りつつ可能な限り薄肉厚化して軽量化を図ることについて考慮されていない。特に、リール脚の端部が差し込まれるフード部の開口付近では、ねじれに対する補強が必要であるが、薄肉厚化しつつそのような補強を効率良く行なうことについて特許文献2は何ら考慮していない。このため、無駄なプリプレグシートを配設する等、不必要な補強がされており、これによりフード部が厚肉化して十分な軽量化が達成されない、という問題がある。
【0007】
また、特許文献2には、プリプレグシートをマンドレルに巻回するに際し、所定の位置に切欠きを形成しておき、皺の発生を防止することも開示されているが、プリプレグシートに切り込みを入れておくと、その位置では強化繊維が切れた状態となり、強度低下や破損等が生じる原因となってしまう。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、必要な部位に必要な強度を効率的に確保しつつ、薄肉厚化および軽量化を図ることができるフード部を有するリール脚固定装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明は、複数のプリプレグシートを積層して成形されるとともに魚釣用リールのリール脚を収容できる開口を形成するように膨出する膨出部を有する筒状のフード部を操作ナットによって軸方向に移動させるリール脚固定装置において、前記フード部は、そのほぼ全長にわたって少なくとも軸方向に指向する強化繊維が途切れることなく連続して延びるとともに、前記軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く領域を前記膨出部に有することを特徴とする。
【0010】
上記した構成のリール脚固定装置によれば、複数のプリプレグシートを積層して筒状のフード部を成形するため、軽量化が図れるようになる。また、フード部は、そのほぼ全長にわたって少なくとも軸方向に指向する強化繊維が途切れることなく連続して延びるため、強度低下や破損等が生じることを回避できる。更に、フード部は、軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く領域を前記膨出部に有するため、この領域では、繊維の傾きに起因して捩じれ方向に対して高い強度を確保できる。
【0011】
なお、前記領域は、フード部の膨出部の任意の部位に連続的(例えば、フード部の開口まで連続的に)に或いは断続的に設けることもできるが、ねじれ方向の強度を効果的に且つ効率的に確保するために、前記領域は、特にフード部の外層側で、フード部の左右両側に対称的に設けられることが好ましい。特に、大きなねじれが発生しやすいフード部の開口付近に前記領域を設けると、この部分でねじれを確実且つ効果的に抑制できる。
【0012】
このように、連続する軸長方向繊維を必要な部位で傾けてねじれ強度を確保できれば、フード部全体として無駄なプリプレグシートを配設することなく効率的な補強を実現でき、結果として、フード部全体の薄肉厚化及び軽量化が可能となる。
なお、本発明は、以上のような特徴を有するフード部を製造するための方法も提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要な部位に必要な強度を効率的に確保しつつ、薄肉厚化および軽量化を図ることができるフード部を有するリール脚固定装置が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】リール脚固定装置が装着された釣竿の一例を示す図。
図2】本発明に係るリール脚固定装置の一実施形態を示す側面図。
図3図2に示すリール脚固定装置において、移動フード部の構成を示す部分断面図。
図4】(a)は図3の主要部の拡大図、(b)は図(a)に示す移動フード部を開口側から見た図。
図5】(a)は、移動フード成形するためにプリプレグシートが巻回されるマンドレルの側面図、(b)は、移動フード部を成形するための軸方向に指向する強化繊維を有するプリプレグシートの平面図。
図6】(a)は、筒状に巻回されてフード部を構成した図5(b)のプリプレグシートの側面図、(b)は、(a)のプリプレグシートの平面図。
図7】移動フード成形するための変形例に係るプリプレグシートをマンドレルに巻き付けてフード部を製造する製造方法の簡略化された一例を示す斜視図。
図8】(a)は、移動フード部を成形するための軸方向に指向する強化繊維を有する変形例に係る図7のプリプレグシートの平面図、(b)は軸方向に対して斜めに指向された強化繊維が引き揃えられた織布状の補強用プリプレグシートの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るリール脚固定装置が装着される釣竿の一例を示す図である。
釣竿1は、複数の竿杆を継合することで構成されており、本実施形態では、元竿杆3、中竿杆5、及び穂先竿杆7の3本の竿杆を並継式で継合している。中竿杆5については無い構成であっても良いし、2本以上継合する構成であっても良い。また、釣竿は、並継式以外にも、1本竿、振り出し竿、中通し式など、その構成については特に限定されることはない。
【0016】
元竿杆3には、魚釣用リール70が装着されるリール脚固定装置10が設けられ、各竿杆には、所定間隔をおいて、魚釣用リールから繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド8(穂先竿杆7の先端はトップガイド8a)が装着されている。釣糸ガイド8については、竿杆に対して固定される固定ガイドとして構成されていても良いし、竿杆に沿って摺動可能な遊動ガイドとして構成されていても良い。
【0017】
元竿杆3、中竿杆5及び穂先竿杆7は、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材で構成されており、管状体、或いは、中実体として構成されている。
【0018】
元竿杆3に設けられるリール脚固定装置10は、固定フードと軸方向に移動する移動フードとを備えており、魚釣用リールのリール脚を固定フードに差し込んだ状態で、移動フードを軸方向に移動させることにより魚釣用リールを着脱する構成となっている。この場合、固定フードは、穂先側にあっても良いし、基端側にあっても良い。
【0019】
以下、図2図4を参照して、本実施形態のリール脚固定装置の構成について具体的に説明する。
リール脚固定装置10は、元竿杆3に対して外嵌される筒状に形成されたリールシート本体(以下、本体と称する)11を備えている。本体11は、例えば、合成樹脂によって一体形成されており、魚釣用リール70のリール脚71が載置される載置面12と、載置面12の穂先側に配設された固定フード13と、載置面12の基端側に配設された移動フード15とを備えている。
【0020】
固定フード13は、本体11に一体形成され、リール脚71の穂先側脚部71aを収容できるように膨出したフード部13Aを備えており、リール脚71の穂先側脚部71aは、フード部13Aの開口13aを介して挿入される。なお、フード部13Aは、後述する移動フードのフード部と同様、本体11と別体として形成され、本体11と一体化される構成であっても良い。
【0021】
移動フード15は、軸方向に沿って移動可能に構成され、本体11と別体として形成されたフード部15Aを備えている。本実施形態のフード部15Aは、リール脚71の基端側脚部71bを収容できるように膨出した膨出部15aと、膨出部15aの基端側に一体形成された円筒部15bとを備えている。すなわち、膨出部15aは、円筒部15bの外周の所定範囲の円弧領域が穂先側に移行するに連れて次第に上昇する形状となっており、リール脚71の基端側脚部71bは、そのような膨出部15aの開口15cを介して挿入される。
【0022】
膨出部15aの内側には、挿入されるリール脚71の基端側脚部71bの表面と圧接するようにパッド部材16が配設されている。このパッド部材16は、移動フード15が固定フード側に向けて移動された際、リール脚71の基端側脚部71bの表面に押し付けられる部分であり、リール脚71を強固に固定する機能を有する。すなわち、パッド部材16は、リール脚71の基端側脚部71bの表面と対応する形状に形成されており、突起16aを移動フード15の膨出部15aに形成された孔15dに嵌合することで膨出部15aの内面と一体化される。
【0023】
本体11の基端側には、雄螺子部11aが一体形成されており、この雄螺子部11aには、回転操作することで軸方向に沿って移動する操作ナット18が螺合されている。操作ナット18は、その前端部が移動フード15のフード部15A(円筒部15b)と係合している。なお、ここでの係合関係は、操作ナット18を締め付ける方向に回転操作した際、移動フード15を回転させることなく固定フード側に移動させ、かつ、操作ナット18を緩める方向に回転操作した際、移動フード15を回転させることなく、固定フードから離れる方向に移動させるものであれば良い。
【0024】
具体的には、図4(a)に示すように、操作ナット18の円筒部15b側の端縁18eに環状突起18aを形成し、この先端に径方向外方に突出する係止突起18fを形成するとともに、円筒部15bの操作ナット18側の端縁15eに、径方向内方に突出する係止突起15fを形成し、これら係止突起18fと係止突起15fを係止することで構成されている。
【0025】
このような操作部材18とフード部15A(円筒部15b)の係合関係によれば、操作ナット18を締め付ける方向に回転操作すると、操作ナット18は固定フード側に向けて螺進するとともに、フード部15A(円筒部15b)は回転することなく、端縁18eと端縁15eとの当接関係によって固定フード側に向けて移動される。すなわち、載置面12に載置されたリール脚71は、一対のフード部(固定フード13A、移動フード15A)によって締め付け固定される。また、操作ナット18を緩める方向に回転操作すると、操作ナット18は固定フードから離れる方向に螺進するとともに、フード部15A(円筒部15b)は回転することなく、係止突起15f,18fの係合関係によって固定フードから離反する方向に向けて移動される。すなわち、載置面12に載置されたリール脚71は、一対のフード部(固定フード13A、移動フード15A)から取り外すことが可能となる。
【0026】
上記した移動フード15のフード部15Aは、一定の強度が維持されて軽量化が図れるように、繊維強化樹脂材、具体的には、仕様が異なる複数のプリプレグシートを筒状となるように積層することで成形されている。この場合、プリプレグシートは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリフェニルサルファイド、熱可塑ポリウレタン)や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。
以下、フード部15Aの構成について詳細に説明する。
【0027】
フード部15Aには、とりわけ仕掛けを投擲する際や釣竿を操作している際にねじれ力が作用し易い。すなわち、膨出部15aの開口側、特に開口15cの端縁領域の付近においては、強化繊維が単に軸長方向(元竿杆3の軸長方向)のみに引き揃えられた状態になっていると、ねじれ強度が弱くなり、仕掛け投擲時や釣竿操作時のねじれによってフード部15Aに剪断力が作用して、亀裂や破損を引き起こす傾向となる。このため、後述するように、フード部15Aの膨出部15aの領域においては、特にねじれ負荷に対抗するように、軸方向の強化繊維の指向性に一定の変動部を設けている。
【0028】
図5は、上記したようなフード部15Aに作用するねじれ負荷を考慮したプリプレグシート30と、それが巻回されるマンドレル80とを示す図である。
フード部15Aは、所定形状に形成されたマンドレル80に、仕様が異なる複数のプリプレグシート(図5には、簡単のため、プリプレグシート30のみが示される)を巻回し、これを加熱して合成樹脂を硬化した後、マンドレル80を脱芯することで成形される。
【0029】
マンドレル80の表面には、フード部15Aの形状と対応して膨出部80aと円柱部80bが形成されている。すなわち、円柱部80bは断面が円形状であり、フード部15Aの円筒部15bを形成する部分となる。また、膨出部80aは、円柱部80bの端部80cの周方向の一部(挿入されるリール脚71に対応する所定の円弧範囲)を前方に向けて次第に上昇するように傾斜させており(傾斜端部80dはフード部15Aの膨出部15aの開口15cに対応する)、フード部15Aの膨出部15aを形成する部分となる。
【0030】
本実施形態では、マンドレル80に対し、以下のように、フード部15Aの軸長方向全体に亘って配設されるプリプレグシート30を含む1つ以上のプリプレグシートを巻回することでフード部15Aが成形される。
【0031】
フード部15Aの内層側は、強化繊維が例えば周方向(あるいは、軸方向に対して90°未満の角度を成す斜め方向でもよい)に引き揃えられた図示しないプリプレグシートを軸方向に亘って巻回することで例えば周方向繊維層(斜方向繊維層、例えば織布状の繊維層でもよい)が少なくとも配設される。そして、このように巻回されるプリプレグシートの外層側には、強化繊維30Aが軸長方向に途切れることなく連続して引き揃えられたプリプレグシート30が巻回されることで軸長方向繊維層が配設される。
【0032】
ここで、軸長方向繊維層を形成するプリプレグシート30の後端縁30bおよび前端縁30aは、内層側の前記プリプレグシートの後端縁および前端縁と一致するように位置合わせされてマンドレル80に巻回される。具体的には、後端縁30bをマンドレル80の円柱部80bの部分に位置合わせし、前端縁30aをマンドレル80の膨出部80aの傾斜端部80dに位置合わせして巻回される。この結果、軸長方向指向する強化繊維30Aは、軸長方向に亘って切れることなく配設される。
【0033】
なお、プリプレグシート30の前端縁30aについては、マンドレル80の傾斜端部80dよりも多少先側に巻回しておき、熱硬化した後、カットしても良い。また、プリプレグシート30は、円柱部80bの周長よりも膨出部80aの周長が長いことを考慮し、後端縁30bがマンドレル80に対して例えば1プライ、前端縁30aがマンドレル80に対して1プライ以上されるように、一方の側端側に傾斜縁部30cを有する。
【0034】
このようにして、プリプレグシート30をマンドレル80に巻回すると、膨出部80aでは、プリプレグシート30を構成する樹脂の広がりによって強化繊維30Aが曲がり、図6に示されるように、フード部15Aの膨出部15aに対応する所定の部位、一般的にはマンドレル80の円柱部80bの端部80cから傾斜端部80dへと向かう所定の長さ領域に対応する膨出部15aの部位に、軸方向に指向する強化繊維30Aが軸方向Xに対して傾く領域40が形成される。なお、図6には、筒状に巻回されてフード部15Aを構成したプリプレグシート30が参照符号30’で示されており、図6の(a)は、筒状に巻回されてフード部を構成した図5(b)のプリプレグシートの側面図、図6(b)は、図6(a)のプリプレグシートの平面図である。
【0035】
領域40での強化繊維30Aの軸方向Xに対する傾き角度θは5°以上であることが好ましい。また、この角度θは、この領域40の全体にわたって一定の角度であってもよいが、フード部15Aの開口15cへ移行するにつれて次第に増大するようになっていてもよい。また、領域40は、フード部15Aの膨出部15aの任意の部位に連続的(例えば、フード部15Aの開口15cまで連続的に)に或いは断続的に設けることもできるが、ねじれ方向の強度を効果的に且つ効率的に確保するために、領域40は、後述するようにフード部15Aの左右両側に対称的に設けられることが好ましい(図6(b)には対称軸Lが示される)。特に、大きなねじれが発生しやすいフード部15Aの開口15c付近に領域40を設けると、この部分でねじれを確実且つ効果的に抑制でき有益である。
【0036】
領域40をフード部15Aに左右対称に設ける製造方法が一例として図7および図8に示される。なお、この製造方法は、領域40を特に簡単に形成するための一例にすぎず、領域40は様々な方法で形成できる。
【0037】
この製造方法では、対称軸Lを中心に左右対称の形状を成す(軸方向に指向する強化繊維50Aが左右対称に配設された)変形例に係る図8(a)に示されるプリプレグシート50が使用され、図7に示されるように、プリプレグシート50の左右対称軸線L上にマンドレル80を位置させてプリプレグシート50を左右両側からマンドレル80の外周に巻き付ける。これにより、前述したように、膨出部80aでのプリプレグシート30の樹脂の広がりによって強化繊維30Aがマンドレル80の膨出部80aで曲がり、軸方向に指向する強化繊維50Aが軸方向に対して傾く領域40(図6参照)がフード部15Aに左右対称に形成される。
【0038】
なお、マンドレル80に対するプリプレグシート50の巻回に際しては、前述したように、プリプレグシート50の後端縁50bをマンドレル80の円柱部80bの部分に位置合わせし、前端縁50aをマンドレル80の膨出部80aの傾斜端部80dに位置合わせして巻回される。この結果、軸長方向指向する強化繊維50Aは、軸長方向に亘って切れることなく配設される。また、プリプレグシート50は、円柱部80bの周長よりも膨出部80aの周長が長いことを考慮し、後端縁50bがマンドレル80に対して例えば1プライ、前端縁50aがマンドレル80に対して1プライ以上されるように、左右の側端部に傾斜縁部50c,50dを有する。
【0039】
また、この製造方法では(無論、図5に示されるプリプレグシート巻回形態においても)、フード部15Aの前側に補強層が設けられてもよい。具体的には、プリプレグシート50の前方側(膨出部15a側)の内層側または外層側に、軸方向に対して±90°未満の角度を成して斜め方向に指向した強化繊維60A,60Bを織布状に編成して成る補強用のプリプレグシート60が巻回される。このプリプレグシート60は、後端縁60bがマンドレル80の円柱部80bの中間部に位置合わせされ、前端縁60aがプリプレグシート50の前端縁50aと一致するように位置合わせされて巻回される。
【0040】
以上のように、前述した構成によれば、プリプレグシートを積層して筒状のフード部15Aを成形するため、軽量化が図れるようになる。また、フード部15Aは、そのほぼ全長にわたって少なくとも軸方向に指向する強化繊維が途切れることなく連続して延びるため、強度低下や破損等が生じることを回避できる。更に、フード部15Aは、軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く領域40を膨出部15aに有するため、この領域40では、繊維の傾きに起因して捩じれ方向に対して高い強度を確保できる。このように、軸方向に指向する強化繊維を伴う同じプリプレグシートに軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く(連続する軸長方向繊維を必要な部位で傾ける)領域40を設ければ、フード部全体として無駄なプリプレグシートを配設することなく効率的な補強を実現でき、結果として、フード部全体の薄肉厚化及び軽量化が可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、前述した実施形態では、マンドレル80の膨出部80aの形状を利用したプリプレグシートの強化繊維のマンドレル巻回時の変形によって領域40を形成するようにしているが、領域40の形成方法は任意である。要は、軸方向に指向する強化繊維を伴う同じプリプレグシートに軸方向に指向する強化繊維が軸方向に対して傾く(連続する軸長方向繊維を必要な部位で傾ける)領域40が膨出部15aで設けられればよい。
【符号の説明】
【0042】
10 リール脚固定装置
13A,15A フード部
15a 膨出部
15b 円筒部
15c 開口
30,50 プリプレグシート
40 領域
70 魚釣用リール
71 リール脚
80 マンドレル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8