(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボビンは、前記傾斜方向繊維層を形成するに際してマンドレルの軸方向に沿って移動され、前記フード部の基端側では、前記マンドレルの軸長方向に対して直交する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す直角位置にあり、前記フード部の開口側では、前記マンドレルの軸長方向に対して傾斜する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す傾斜位置に回動されることを特徴とする請求項2に記載のフード部の製造方法。
前記ボビンは、前記傾斜方向繊維層を形成するに際してマンドレルの軸方向に沿って移動され、前記フード部の基端側では、前記マンドレルの軸長方向に対して直交する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す直角位置にあり、前記フード部の開口側では、移動速度が高速化されることを特徴とする請求項2に記載のフード部の製造方法。
前記開口の頂部ラインを基準として巻回される前記2枚のプリプレグシートの突き合わせ部分又は重ね合せ部分に、前記マンドレルの軸長方向に対して直交する周方向に強化繊維が引き揃えられた補強用のプリプレグシートを配設したことを特徴とする請求項5に記載のフード部の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るリール脚固定装置が装着される釣竿の一例を示す図である。
釣竿1は、複数の竿杆を継合することで構成されており、本実施形態では、元竿杆3、中竿杆5、及び穂先竿杆7の3本の竿杆を並継式で継合している。前記中竿杆5については無い構成であっても良いし、2本以上継合する構成であっても良い。また、釣竿は、並継式以外にも、1本竿、振り出し竿、中通し式など、その構成については特に限定されることはない。
【0017】
前記元竿杆3には、魚釣用リール70が装着されるリール脚固定装置10が設けられ、各竿杆には、所定間隔をおいて、魚釣用リールから繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド8(穂先竿杆7の先端はトップガイド8a)が装着されている。前記釣糸ガイド8については、竿杆に対して固定される固定ガイドとして構成されていても良いし、竿杆に沿って摺動可能な遊動ガイドとして構成されていても良い。
【0018】
前記元竿杆3、中竿杆5及び穂先竿杆7は、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材で構成されており、管状体、或いは、中実体として構成されている。
【0019】
前記元竿杆3に設けられるリール脚固定装置10は、固定フードと軸方向に移動する移動フードとを備えており、魚釣用リールのリール脚を固定フードに差し込んだ状態で、移動フードを軸方向に移動させることにより魚釣用リールを着脱する構成となっている。この場合、固定フードは、穂先側にあっても良いし、基端側にあっても良い。
以下、本実施形態のリール脚固定装置の構成について、
図2から
図4を参照して説明する。なお、これらの図において、
図2は、リール脚固定装置の側面図、
図3は、
図2に示すリール脚固定装置において、移動フード部の構成を示す部分断面図、
図4(a)は、
図3の主要部の拡大図、
図4(b)は、図(a)に示す移動フードを開口側から見た図である。
【0020】
リール脚固定装置10は、元竿杆3に対して外嵌される筒状に形成されたリールシート本体(以下、本体と称する)11を備えている。本体11は、例えば、合成樹脂によって一体形成されており、魚釣用リール70のリール脚71が載置される載置面12と、載置面12の穂先側に配設された固定フード13と、載置面12の基端側に配設された移動フード15とを備えている。
【0021】
前記固定フード13は、本体11に一体形成され、前記リール脚71の穂先側脚部71aを収容できるように膨出したフード部13Aを備えており、リール脚71の穂先側脚部71aは、フード部13Aの開口13aを介して挿入される。なお、フード部13Aは、後述する移動フードのフード部と同様、本体11と別体として形成され、本体11と一体化される構成であっても良い。
【0022】
前記移動フード15は、軸方向に沿って移動可能に構成され、本体11と別体として形成されたフード部15Aを備えている。本実施形態のフード部15Aは、リール脚71の基端側脚部71bを収容できるように膨出した膨出部15aと、膨出部15aの基端側に一体形成された円筒部15bとを備えている。すなわち、膨出部15aは、円筒部15bの外周の所定範囲の円弧領域が穂先側に移行するに連れて次第に上昇する形状となっており、リール脚71の基端側脚部71bは、そのような膨出部15aの開口15cを介して挿入される。
【0023】
前記膨出部15aの内側には、挿入されるリール脚71の基端側脚部71bの表面と圧接するようにパッド部材16が配設されている。このパッド部材16は、移動フード15が固定フード側に向けて移動された際、リール脚71の基端側脚部71bの表面に押し付けられる部分であり、リール脚を強固に固定する機能を有する。すなわち、パッド部材16は、リール脚71の基端側脚部71bの表面と対応する形状に形成されており、突起16aを移動フード15の膨出部15aに形成された孔15dに嵌合することで膨出部15aの内面と一体化される。
【0024】
前記本体11の基端側には、雄螺子部11aが一体形成されており、この雄螺子部11aには、回転操作することで軸方向に沿って移動する操作ナット18が螺合されている。操作ナット18は、その前端部が前記移動フード15のフード部15A(円筒部15b)と係合している。なお、ここでの係合関係は、操作ナット18を締め付ける方向に回転操作した際、移動フード15を回転させることなく固定フード側に移動させ、かつ、操作ナット18を緩める方向に回転操作した際、移動フード15を回転させることなく、固定フードから離れる方向に移動させるものであれば良い。
【0025】
具体的には、
図4(a)に示すように、操作ナット18の円筒部15b側の端縁18eに環状突起18aを形成し、この先端に径方向外方に突出する係止突起18fを形成するとともに、円筒部15bの操作ナット18側の端縁15eに、径方向内方に突出する係止突起15fを形成し、これら係止突起18fと係止突起15fを係止することで構成されている。
【0026】
このような操作部材18とフード部15A(円筒部15b)の係合関係によれば、操作ナット18を締め付ける方向に回転操作すると、操作ナット18は固定フード側に向けて螺進するとともに、フード部15A(円筒部15b)は回転することなく、端縁18eと端縁15eとの当接関係によって固定フード側に向けて移動される。すなわち、載置面12に載置されたリール脚71は、一対のフード部(固定フード13A、移動フード15A)によって締め付け固定される。また、操作ナット18を緩める方向に回転操作すると、操作ナット18は固定フードから離れる方向に螺進するとともに、フード部15A(円筒部15b)は回転することなく、係止突起15f,18fの係合関係によって固定フードから離反する方向に向けて移動される。すなわち、載置面12に載置されたリール脚71は、一対のフード部(固定フード13A、移動フード15A)から取り外すことが可能となる。
【0027】
前記フード部15Aの開口側の端縁には傾斜端部15hが形成されている。この傾斜端部15hは、フード部15Aの軽量化を図るとともに、外観デザインを向上するために形成されるものであり、リール脚71が挿入される開口領域から両サイドの表面に沿って反対側に至る領域に、軸長方向に対して傾斜するように形成されている(両サイドで対称となるように形成されている)。
【0028】
また、上記した移動フード15のフード部15Aは、一定の強度が維持されて軽量化が図れるように、繊維強化樹脂材を筒状に成形することで形成されている。筒状に成形される繊維強化樹脂材は、例えば、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシート(仕様が異なるものを複数枚用いても良い)や、強化繊維を一方向に引き揃えた繊維強化樹脂テープ(プリプレグシートを組み合わせて用いても良い)などが用いられる。
【0029】
この場合、プリプレグシートは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリフェニルサルファイド、熱可塑ポリウレタン)や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。また、繊維強化樹脂テープもプリプレグシートと同様、強化繊維を一方向に引き揃え、合成樹脂を含浸したテープ状に構成されている。
以下、フード部15Aの構成について詳細に説明する。
【0030】
前記フード部15Aは、リール脚71に対する締め付け力が大きくなると、その開口15cの部分には、当て付いたリール脚71の基端側脚部71bの表面から開口を拡げようとする力が作用する。すなわち、膨出部15aの開口側、特に開口15cの端縁領域については、強化繊維が軸長方向(元竿杆3の軸長方向)に引き揃えられた状態になっていると、軸長方向に亀裂が生じる傾向となり、強度低下し易くなる。このため、開口領域については、開口を拡げようとする負荷に対抗するように、強化繊維が周方向に指向している繊維強化樹脂材が使用される。
【0031】
また、フード部15Aの膨出部15aの開口以外の領域については、リール脚の締め付け状態において、上記したような開口を拡げようとする方向に作用する負荷は少ないものの、軸長方向に沿って撓む力が加わるようになる。このため、開口領域から円筒部15bに至る領域については、主に撓み方向の負荷に対抗するように、強化繊維が軸長方向に指向している繊維強化樹脂材を用いることが好ましい。
【0032】
上記したように、開口領域については、強化繊維が周方向に指向している繊維強化樹脂材が使用されるが、本発明のように、傾斜端部15hが存在する筒状体を成形するに際しては、軸長方向(元竿杆の軸長方向)に対して直交する方向(周方向)に強化繊維が指向していることは好ましくはない。これは、筒状体を成形した後、傾斜端部15hを形成するために斜め方向にカットすると、周方向に指向している強化繊維が切断されてしまい、強度低下したり、亀裂、破損等が生じ易くなるためである。このため、本発明に係るフード部15Aにおける繊維強化樹脂材は、傾斜端部15hに沿う方向に強化繊維が指向するようにして、周方向に指向する強化繊維が1周に亘って切れていない状態にしている(強化繊維がこのような方向に指向している層を傾斜方向繊維層と称する)。
【0033】
上記のような傾斜端部を有するフード部については、筒状体を成形する際に容易に製造することが可能である。
以下、本実施形態のフード部15Aの製造方法について説明する。
図5は、フード部15Aを筒状に成形する際に用いられるマンドレル40の構成を示している。
【0034】
前記マンドレル40の表面には、フード部15Aの形状と対応して膨出部40aと円柱部40bが形成されている。すなわち、円柱部40bは断面が円形状であり、フード部15Aの円筒部15bを形成する部分となる。また、膨出部40aは、円柱部40bの端部40cの周方向の一部(挿入されるリール脚に対応する所定の円弧範囲)を前方に向けて次第に上昇するように傾斜させており(傾斜端部40dはフード部15Aの膨出部15aの開口15cに対応する)、フード部15Aの膨出部15aを形成する部分となる。
【0035】
本実施形態では、上記した構成のマンドレル40に対し、強化繊維50Aを一方向(引き出し方向)に引き揃えた繊維強化樹脂テープ50を巻回することでフード部を成形するようにしている。前記繊維強化樹脂テープ50は、幅が1〜10mm程度のものが用いられ、このような繊維強化樹脂テープ50は、ボビン52に巻回された状態で、引き出されながら前記マンドレル40の所定位置に巻回されて傾斜方向繊維層50Bが形成される(
図7参照)。この場合、傾斜方向繊維層50Bを形成するに際しては、ボビン52から繰り出される繊維強化樹脂テープ50をマンドレル50の軸長方向(
図6のX方向)に対して傾斜するように制御することで傾斜端部15hを形成するようにし、繊維強化樹脂テープ50を巻回すると同時に傾斜端部15hの方向に強化繊維を指向させて、傾斜端部15hにおいて繊維切れが生じないようにしている。
【0036】
具体的には、図示されていない駆動機構及び制御装置によって、マンドレル40は、軸長方向(
図6のX方向)を中心軸として回転駆動され、かつ、ボビン52は、繊維強化樹脂テープ50を引き出しながらX方向に駆動される。また、ボビン52は、X方向に沿って駆動される際、図に示すD1,D2方向に回動するよう駆動制御される。すなわち、マンドレル40を回転駆動し、かつ、ボビン52をX方向に移動することで、マンドレル40の所望位置に繊維強化樹脂テープ50が巻回される(
図7に示す繊維強化樹脂層50Bが形成される)。
【0037】
上記したマンドレル40とボビン52の駆動形態によってフード部15Aを形成する場合、最初、マンドレル40とボビン52との位置関係は、
図6に示すように、マンドレルの円柱部40bに対して垂直方向から繊維強化樹脂テープ50が巻回されるように、ボビン52は、X方向に対して直角方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す状態となっている(ボビン52は、フード部の基端側では、マンドレルの軸長方向に対して直交する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す直角位置に位置付される)。
【0038】
この状態でボビン52から繊維強化樹脂テープを繰り出しながら、ボビン52をX方向に沿って移動させ、かつ、マンドレル40を回転駆動することで、フード部15Aの円柱部15b及び膨出部15aが形成される。そして、巻回状態が傾斜端部40d(フード部15Aの膨出部15aの開口15cに対応する)に至るときに、ボビン52はマンドレル40の回転と同期して図に示すD1,D2方向の回動駆動が制御される。この場合、
図6(a)に示すボビン位置からD1方向にボビン52を回動させると、図において手前側の傾斜端部を形成することができ、かつ、
図6(b)からD2方向にボビン52を回動させると、図において奥側の傾斜端部を形成することができる。具体的には、マンドレル40を回転駆動するに際して、マンドレルが180°回転する度に、ボビン52をD1方向及びD2方向に回動制御することで、フード部の両サイドに、傾斜端部の方向に沿うように繊維強化樹脂テープ50を巻回することが可能となる。例えば、
図6(b)に示す繊維強化樹脂テープ50の傾斜位置で傾斜端部15h(
図7参照)が形成されるのであれば、次のマンドレル40の180°の回転時では、ボビン52をD2方向に回動制御し、
図6(b)に示す角度と同じ傾斜角度に傾けることで、反対面(図では裏面)側の傾斜端部を形成することが可能となる。すなわち、フード部の開口側では、マンドレル40の軸長方向(X方向)に対して傾斜する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す傾斜位置にボビンを回動制御することにより、傾斜端部に沿った方向に強化繊維50Aを指向させることが可能となる(ボビン52は、フード部の開口側では、マンドレルの軸長方向に対して傾斜する方向に繊維強化樹脂テープを繰り出す傾斜位置に回動される)。
【0039】
なお、繊維強化樹脂テープ50をマンドレルに巻回するに際し、
図7に示すように、膨出部40aにおいて傾斜端部40dに移行するにしたがって、繊維強化樹脂テープ50の傾斜角度が次第に大きくなるように巻回するのであれば、マンドレルが180°回転する毎にボビン52をD1,D2方向へ回動制御するとともに、その回動の角度を、傾斜端部40dに移行するにつれて次第に大きくなるように制御すれば良い。
【0040】
上記した製造方法によれば、繊維強化樹脂テープ50をマンドレル40に対して巻回すると同時に円筒部15b及び膨出部15aが形成され、かつ、傾斜端部15hでは、その方向に沿うように強化繊維が指向した状態が得られるようになる(
図7参照)。すなわち、フード部15Aを形成すると同時に傾斜端部15hが形成され、かつ、傾斜端部15hにおいて、1周に亘って繊維切れがない繊維強化樹脂層(周方向繊維層)50Bを有する構成が容易に得られる。
【0041】
なお、上記した構成では、ボビン52を、
図6に示したD1,D2方向(紙面に沿った方向)に回動するようにしたが、ボビン52を紙面と垂直な方向に回動制御しても傾斜端部を形成することが可能である。そして、上記したように繊維強化樹脂テープ50が巻回されたマンドレル40は、加熱して合成樹脂を硬化し、その後、マンドレル40を脱芯することで
図7に示すようなフード部15Aが成形される。
【0042】
上記した構成では、マンドレル40の傾斜端部40dの領域でボビン52を回動制御して傾斜端部15hを形成したが、ボビンを
図6(a)に示す垂直状態に維持したまま、傾斜端部40dの領域(フード部の開口側)で、X方向に移動する移動速度を高速化することでも傾斜端部15hを形成することが可能である。すなわち、ボビン52の移動速度が速くなれば、マンドレル40に対しては、繊維強化樹脂テープ50が斜め方向に巻回されるようになり、傾斜端部15hに沿う方向に巻回されるようになる。このため、マンドレル40の傾斜端部40dの領域(開口部分)において、ボビン52のX方向の移動速度、及びマンドレル40が180°回転した際のボビン52のX方向の戻しの移動速度を高速化することで、開口部の両サイドに傾斜端部を形成することが可能である。
このような駆動方式では、ボビン52をD1,D2方向に回動駆動する必要がなく、製造装置の構成が簡略化される。
【0043】
また、上記した製造方法では、ボビン52を傾斜端部40dの位置まで移動させた後、所定の位置まで反転駆動しても良い。具体的には、
図6に示した構成において、
図6(b)に示す位置からボビン52を所定の位置(膨出部15aが形成される位置)までX方向に反転移動するとともに、180°毎の巻回方向が逆向きになるようにボビンを回動制御することで、
図8に示すように、繊維強化樹脂テープ50の強化繊維50Aがクロスした繊維強化樹脂層50B´が得られるようになる。すなわち、繰り出されて巻回される繊維強化樹脂テープ50の強化繊維50Aは、符号50A´に示すように指向することから、膨出部15aにおいて、強化繊維がクロスした繊維強化樹脂層50B´が得られるようになり、リール脚から大きな負荷が加わる部分の強度が、より向上したフード部が得られるようになる。なお、ボビン52を回動しない構成では、膨出部15aを形成する領域で、ボビン52を高速で反転駆動するとともに、巻回方向が逆向きになるように制御すれば良い。
【0044】
上述した製造方法では、ボビン52をX方向に沿って駆動したが、ボビン52を移動させることなくマンドレル40をX方向に沿って駆動しても良い。また、上記した製造方法では、繊維強化樹脂テープ50を巻回した上から、さらにプリプレグシート(例えば、強化繊維が軸長方向や斜向方向に引き揃えられたプリプレグシート)を重ねて巻回しても良い。
【0045】
図9は、傾斜端部15hを有するフード部15Aの別の製造方法を説明する図であり、プリプレグシートの配設例を示す図である。
本実施形態の製造方法は、上記した構成のマンドレル40に、仕様が異なる複数のプリプレグシート60〜62を巻回し、これを加熱して合成樹脂を硬化した後、マンドレル40を脱芯することでフード部が成形される。
【0046】
図に示した2枚のプリプレグシート60,61は、それぞれ強化繊維60A,61Aを傾斜端部15hに沿った方向に引き揃えたものであり、フード部15Aの開口15cの頂部ライン(開口頂部を通るX方向のライン)を基準にして、一側面側に半プライ巻回するとともに、他側面側に半プライ巻回するように裁断されている。すなわち、プリプレグシート60,61は、マンドレル40の膨出部40aの領域(円柱部40bの端部40cから傾斜端部40dの間の領域)で突き合わせるか重ね合せることで、それぞれ半プライずつ巻回されるように裁断されており、各プリプレグシート60,61が傾斜方向繊維層を構成するとともに、各傾斜前端部60a,61aがそのままフード部15Aの傾斜前端部15hを形成するようになっている。
【0047】
上記した2枚のプリプレグシートを巻回するに際しては、プリプレグシート60の傾斜前端部60aの角部60cをマンドレル40の傾斜端部40dに位置付けし、かつ、後端部60bをマンドレル40の端部40cに位置付けする。また、プリプレグシート61の傾斜前端部61aの角部61cをマンドレル40の傾斜端部40dに位置付けし、かつ、後端部60bをマンドレル40の端部40cに位置付けする。
【0048】
また、プリプレグシート62は、強化繊維62Aを周方向に沿って引き揃えたものであり、フード部15Aの円筒部15bを形成するように裁断されている。すなわち、前端部62aをマンドレル40の端部40cに位置付けして巻回し、前端部62aで1プライ以上、後端部62bでも1プライ以上巻回されるよう裁断されている。
【0049】
このように、傾斜端部15hを有するフード部15Aは、複数枚のプリプレグシート60,61をマンドレル40に巻回することで容易に製造することが可能である。なお、このような構成においても、別途、強化繊維が軸長方向や斜向方向に引き揃えられたプリプレグシートを重ねて巻回しても良い。
【0050】
また、上記したプリプレグシート60〜62を巻回するに際しては、プリプレグシート60,61の突き合わせ部分(重ね合せ部分)に、
図10に示すように、補強用のプリプレグシート65を配設することが好ましい。
このような補強用のプリプレグシート65については、リール脚が挿入される部粉であるため、強化繊維65Aが周方向に引き揃えられているものを用いることが好ましく、このような補強用のプリプレグシートを配設することで、割れ等が生じ易い膨出部の頂部領域を効果的に補強することが可能となる。
【0051】
図11は、傾斜端部15hを有するフード部15Aの更に別の製造方法を説明する図であり、プリプレグシートの配設例を示す図である。
本実施形態の製造方法は、上記した構成のマンドレル40に、仕様が異なる複数のプリプレグシート70,71を巻回し、これを加熱して合成樹脂を硬化した後、マンドレル40を脱芯することでフード部が成形される。
【0052】
図に示したプリプレグシート70は、強化繊維70A,70Bをマンドレル40の軸長方向(X方向)に対して斜向する方向に編成したものであり、傾斜方向繊維層を構成し、交差する強化繊維70A,70Bは、マンドレル40に巻回した際、フード部15Aの開口15cの頂部から両サイドで、それぞれ傾斜端部15hに沿う方向に指向するように編成されている。この場合、プリプレグシート70は、後端部70bをマンドレル40の端部40cに位置付けし、前端部70aをマンドレル40の傾斜端部40dの先の位置に位置付けし、それぞれ1プライ以上巻回するよう裁断されている。
【0053】
また、プリプレグシート71は、強化繊維71Aを周方向に沿って引き揃えたものであり、フード部15Aの円筒部15bを形成するように裁断されている。すなわち、前端部71aをマンドレル40の端部40cに位置付けして巻回し、前端部71aで1プライ以上、後端部71bでも1プライ以上巻回されるよう裁断されている。
【0054】
そして、上記したような構成のプリプレグシート70,71をマンドレル40に巻回して、加熱、脱芯した後、
図12で示すように、プリプレグシート70の強化繊維70A,70B(強化繊維70Bは、図の反対側となる)の方向に沿ってカットする(カットラインC)ことにより、傾斜端部15hに沿って強化繊維が指向したフード部15Aを製造することが可能となる。
【0055】
このように、傾斜端部15hを有するフード部15Aは、強化繊維が斜向方向に編成された1枚のプリプレグシート70をマンドレル40に巻回することで容易に製造することが可能である。
【0056】
以上のようにして製造される傾斜端部付きのフード部15Aを備えたリール脚固定装置によれば、筒状のフード部15Aは、繊維強化樹脂材で成形されるため、軽量化が図れるとともに、傾斜端部15hを形成したことで、より軽量化が図れ、外観を向上して握り心地を向上することが可能となる。また、傾斜端部15hでは、強化繊維がそのまま切れることなく1周に亘って配設された状態となっているため、リール脚が挿入されて周方向に広げようとする負荷が作用しても、割れや破損等が生じることもなく、効果的に強度を向上することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0058】
本発明は、上述したように、リール脚固定装置のフード部を繊維強化樹脂材によって成形するに際し、フード部の傾斜端部に沿う方向に強化繊維が指向した傾斜方向繊維層を有することに特徴がある。このため、フード部を成形するプリプレグについては、強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、種々変形することが可能である。また、上記した実施形態では、フード部を構成する傾斜方向繊維層について説明したが、フード部としてそれ以外の繊維層、例えば、強化繊維が軸長方向に指向した繊維層、軸長方向に対して所定の角度を有する斜向方向に指向した繊維層、強化繊維を二方向以上に編成した織布層を配設しても良い。このような繊維層を配設することで、膨出部15aや円筒部15bにおける捩じれ方向に対する強度を向上するとともに、効率良く、軽量で強度的に優れたフード部とすることが可能となる。
【0059】
上記したリール脚固定装置のフード部15Aは、膨出部15aを有する構成となっていたが、フード部としては膨出部がない構成であっても良い。例えば、移動フード15のフード部を円筒部15bで構成し、操作ナット18の外径と同一の外径にしたまま、膨出部を形成することなく、リール脚を挿入する開口15cを形成することも可能である。このような構成では、フード部15Aの内面に取着されるパッド部材16を、
図3に示した構成よりも多少厚肉化して、挿入されるリール脚と対応する内面を具備した形状に形成すれば良い。このようなフード部によれば、フード部を成形するためのマンドレルは円柱状に構成することができ、上述したようなプリプレグシートの巻回作業が容易に行えるようになる。
【0060】
また、上記した構成については、固定フード13のフード部13Aに適用しても良い。さらに、上記したように成形されるフード部については、外観向上や表面の保護のために塗装をしたり、金属やセラミックスを蒸着等しても良い。