特許第6121945号(P6121945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許6121945芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具
<>
  • 特許6121945-芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具 図000002
  • 特許6121945-芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具 図000003
  • 特許6121945-芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具 図000004
  • 特許6121945-芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121945
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】芯振れ抑制機構を備えたナットランナ工具
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   B23P19/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-112548(P2014-112548)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-226939(P2015-226939A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴信
(72)【発明者】
【氏名】前田 善英
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−036727(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/005330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸(11)の先端に取付けられたソケットホルダ(12)と、
前記出力軸を軸線方向に伸縮させるスライド機構部(13)と、
該スライド機構部と協働してネジ締め作業中に前記出力軸を軸線方向先端側に押出す押出部(14)と、
前記ソケットホルダに保持されたソケットのナットランナ駆動部(15)による回転動作および軸線方向移動動作を許容しつつ、前記ソケットを支持する支持部(20)と、を具備し、
前記支持部は、互いに対向する二つの開閉爪部(21、22)と、該二つの開閉爪部のそれぞれに回転自在に取付けられたボールローラ(24、26)とを含んでおり、
前記支持部は、前記二つの開閉爪部のそれぞれの前記ボールローラが前記ソケットの外周面に当接するように、前記二つの開閉爪部を閉鎖させて前記ソケットを支持する、ナットランナ工具(10)。
【請求項2】
前記ナットランナ工具の中心軸線に対して垂直な前記開閉爪部の断面が略V字形状であるようにした請求項1に記載のナットランナ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットを保持するソケットホルダが先端に取付けられたナットランナ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ナットランナ工具は、ソケットを保持するためのソケットホルダをその先端に備えている。ソケットホルダには、締付けられるべきまたは緩められるべきナット、ボルトまたはネジに応じて異なる寸法のソケットが保持される。そして、ソケットホルダに保持されたソケットを用いて、ナット等が締付けまたは緩められる。
【0003】
ここで、ソケットと、ナットランナ工具のソケットホルダとの間には隙間が存在している。一般に、ソケットは比較的長いので、ナットランナ工具を回転させるときには、この隙間のためにガタツキが生じるという問題があった。特許文献1では、ソケットホルダの内面に設けられた軸受により、ガタツキを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−36728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、ソケットとソケットホルダとの間に依然として隙間が存在している。このため、ナットランナ工具を水平方向に配置して使用する場合には、自重によりソケットがナットランナ工具の中心軸線に対して傾斜し得る。このため、ナットランナ工具の芯振れが大きくなり、ソケットを位置決めするのも困難となる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ナットランナ工具を水平方向に配置して使用する場合であっても、芯振れを抑えると共に、ソケットを容易に位置決めすることのできるナットランナ工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、出力軸の先端に取付けられたソケットホルダと、前記出力軸を軸線方向に伸縮させるスライド機構部と、該スライド機構部と協働してネジ締め作業中に前記出力軸を軸線方向先端側に押出す押出部と、前記ソケットホルダに保持されたソケットのナットランナ駆動部による回転動作および軸線方向移動動作を許容しつつ、前記ソケットを支持する支持部と、を具備し、前記支持部は、互いに対向する二つの開閉爪部と、該二つの開閉爪部のそれぞれに回転自在に取付けられたボールローラとを含んでおり、前記支持部は、前記二つの開閉爪部のそれぞれの前記ボールローラが前記ソケットの外周面に当接するように、前記二つの開閉爪部を閉鎖させて前記ソケットを支持する、ナットランナ工具が提供される。
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記ナットランナ工具の中心軸線に対して垂直な前記開閉爪部の断面が略V字形状であるようにした。
【発明の効果】
【0008】
1番目の発明においては、比較的長いソケットのための支持部が備えられている。このため、ナットランナ工具を水平方向に配置して使用する場合に、ソケットが重力の影響を受けることはない。従って、芯振れを抑えると共に、ソケットを容易に位置決めすることができる。さらに、ボールローラを使用しているので、ソケットの位置決め、回転、摺動を容易に行うことができる。また、開閉爪部を開放させることにより、ソケットを容易に交換でき、メンテナンス性を向上させられる。
2番目の発明においては、ソケットを開閉爪部の間に確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に基づくナットランナ工具の斜視図である。
図2図1に示されるナットランナ工具の軸線方向断面図である。
図3A】ナットランナ工具の中心軸線に対して垂直な開閉爪部の第一断面図である。
図3B】ナットランナ工具の中心軸線に対して垂直な開閉爪部の第二断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づくナットランナ工具の斜視図である。図1においては、ロボット1のアーム2の先端3がナットランナ工具10のブラケット19の一側19aに取付けられている。ロボット1は例えば六軸多関節ロボットであるが、他のロボットでもよい。なお、ナットランナ工具10は他の自動機械または装置に固定されていてもよい。
【0011】
図1に示されるように、ナットランナ工具10のナットランナ駆動部15はその先端近傍においてブラケット19の他側19bに取付けられている。ナットランナ工具10は、ナットランナ駆動部15と、ナットランナ駆動部15に係合するロッド18(後述する)に係合する出力軸11とを主に含んでいる。また、出力軸11は、スライド機構部13によって軸線方向に移動される。さらに、出力軸11は図示しない機構部により中心軸線C回りに回転させられる。また、出力軸11の先端には、ソケットホルダ12が取付けられている。
【0012】
図1から分かるように、ソケットホルダ12に保持されるべきソケット5は比較的長尺である。図1に示されるソケット5は、第一円筒部分5aと、第一円筒部分5aよりも直径の大きい第二円筒部分5bとが同軸で結合した構成である。第二円筒部分5bの先端面には、締付けられるべきまたは緩められるべきナット等に対応した形状の凹部が形成されている。このため、締付けられるべきナット等に応じて、第二円筒部分5bの先端面の凹部の形状が異なる複数のソケット5が準備されるものとする。
【0013】
また、共通のソケットホルダ12に保持されるようにするために、複数のソケット5の第一円筒部分5aの先端は同一の形状である。ソケット5は、ナットランナ工具10の中心軸線Cと同軸になるように、ソケットホルダ12に保持される。なお、第一円筒部分5aおよび第二円筒部分5bの区別が無いソケット5であっても本発明の範囲に含まれるものとする。
【0014】
図2図1に示されるナットランナ工具の軸線方向断面図である。図2に示されるように、ナットランナ駆動部15に係合されたロッド18の先端は、出力軸11の後端に係合している。そして、出力軸11の後端にはバネ14が取付けられている。このバネ14は、スライド機構部13と協働してネジ締め作業中に出力軸11を軸線方向先端側に押出す押出部としての役目を果たす。
【0015】
また、図2から分かるように、ソケットホルダ12の周面には少なくとも一つのボールプランジャ16が設けられている。ソケットホルダ12にソケット5の先端が挿入されると、ボールプランジャ16が、ソケット5の先端の環状凹部に係合して、ソケット5が保持される。
【0016】
ソケット5がこのように保持されると、ロボット1のアームを移動させ、ナットランナ工具10を所望の位置に位置決めする。そして、バネ14が出力軸11を軸線方向先端側に押出し、それにより、ソケット5の第二円筒部分5bの先端面の凹部が、締付けられるべきナット等に係合する。その後、ナットランナ工具10を中心軸線C回りに回転させつつ、出力軸11を軸線方向に移動させると、ナット等を締付け、または緩めることが可能となる。
【0017】
ここで、ソケット5は一般的に比較的長尺であるので、ソケットホルダ12に保持されたソケット5は、ナットランナ工具10の中心軸線Cに対して傾斜することが多い。言い換えれば、ソケットホルダ12に保持されたソケット5は芯振れすることが多い。
【0018】
このため、本発明においては、ソケット5の第一円筒部分5aを支持する支持部20が設けられている。図1に示されるように、支持部20は、ブラケット19に取付けられた駆動部に結合している。以下の説明においては、支持部20はソケット5の第一円筒部分5aを支持しているが、支持部20がソケット5の第二円筒部分5bを支持する構成であってもよい。
【0019】
また、図1および図2から分かるように、支持部20は互いに対向する第一開閉爪部21と第二開閉爪部22とを有している。これら開閉爪部21、22はブラケットに取付けられた駆動部、例えばサーボモータまたはエアシリンダMによって開閉する。
【0020】
図2においては、第一開閉爪部21の内面に配置された二つのナット23と、ナット23内に自由回転可能に配置されたボールローラ24とが示されている。二つのボールローラ24は中心軸線Cに対して平行な線分に沿って順次配置されている。さらに、図2には、第二開閉爪部22の内面に自由回転可能に配置された二つのナット25と、ナット25内に配置されたボールローラ26とが示されている。二つのボールローラ26は中心軸線Cに対して平行な他の線分に沿って順次配置されている。
【0021】
図2から分かるように、支持部20の第一開閉爪部21および第二開閉爪部22が互いに閉鎖すると、第一円筒部分5aの周面を両側から挟みこんで第一円筒部分5aを支持する。本発明のナットランナ工具10はこのような支持部20を備えているので、ナットランナ工具10を水平方向に配置して使用する場合であっても、ソケット5が重力の影響を受けることはない。従って、ソケット5の芯振れを防止することができる。
【0022】
また、支持部20がボールローラ24、26を備えているので、ソケット5を中心軸線C回りに円滑に回転させられると共に、軸線方向に円滑に摺動させられる。このため、ソケット5の位置決めを容易に行うことができる。また、開閉爪部21、22を互いに開放させることにより、ソケット5を容易に交換することもできる。従って、本発明においてはメンテナンス性を向上させることも可能である。
【0023】
なお、当然のことながら、中心軸線Cに対して平行な線分に沿って、三つ以上のボールローラ24、26および関連するナット23、25が配置されていてもよく、その場合にはソケット5の芯振れをさらに防止できるのが分かるであろう。なお。ソケット5を下方から支持する単一の開閉爪部が一つのボールローラのみを備えている場合であっても、ソケット5の芯振れを同様に抑えられるのが分かるであろう。
【0024】
また、図3Aおよび図3Bはナットランナ工具の軸線方向に対して垂直な開閉爪部の断面図である。図3Aは第一開閉爪部21および第二開閉爪部22の開放状態を示しており、図3Bは第一開閉爪部21および第二開閉爪部22の閉鎖状態を示している。
【0025】
これら図面に示されるように、第一開閉爪部21の互いに対向する内面は、略V字形状をなす二つの傾斜面21a、21bを含んでいる。同様に、第二開閉爪部22の互いに対向する内面は、略V字形状をなす二つの傾斜面22a、22bを含んでいる。当然のことながら、開閉爪部21、22の内面が平坦、または逆V字形状であってもよい。
【0026】
そして、図3Aおよび図3Bから分かるように、第一開閉爪部21の二つの傾斜面21a、21bのそれぞれに、ナット23およびボールローラ24が備えられている。同様に、第二開閉爪部22の二つの傾斜面22a、22bのそれぞれに、ナット25およびボールローラ26が備えられている。
【0027】
図2および図3Aから分かるように、第一開閉爪部21および第二開閉爪部22のそれぞれは、四つのボールローラを備えている。従って、図示される実施形態において、それぞれの傾斜面が二つのボールローラを備えている。ただし、それぞれの傾斜面は少なくとも二つのボールローラを備えていればよいものとする。
【0028】
はじめに、図3Aに示されるように、第一開閉爪部21および第二開閉爪部22を互いに開放させ、それらの間にソケット5を配置する。次いで、図3Bに示されるように、第一開閉爪部21および第二開閉爪部22を互いに閉鎖させ、ソケット5を挟み込んで支持する。
【0029】
前述したように、開閉爪部21、22は略V字形状の内面を有しているので、ソケット5は四つのボールローラ24、26によって四つの方向から押圧されることになる。従って、本発明においては、ソケット5を二つの開閉爪部の間に確実に把持できるのが分かるであろう。なお、第一開閉爪部21および第二開閉爪部22の内面が平坦または逆V字形状である場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 ロボット
2 アーム
3 アームの先端
5 ソケット
5a 第一円筒部分
5b 第二円筒部分
10 ナットランナ工具
11 出力軸
12 ソケットホルダ
13 スライド機構部
14 バネ(押出部)
15 ナットランナ駆動部
16 ボールプランジャ
18 ロッド
19 ブラケット
19a 一側
19b 他側
20 支持部
21 第一開閉爪部
21a、21b 傾斜面
22 第二開閉爪部
22a、22b 傾斜面
23、25 ナット
24、26 ボールローラ
M エアシリンダ
図1
図2
図3A
図3B