【実施例】
【0016】
(実施例1)
上記発明を実施するための形態と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A1と称する。
【0017】
(実施例2)
SiO
xの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を5質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、ガスクロマトグラフィーにより、上記HMDIが全量反応していることを確認した。このことは、後述の実施例3〜6においても同様であった。また、SiO
xに対する被膜の割合は6モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A2と称する。
【0018】
(実施例3)
SiO
xの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を10質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiO
xに対する被膜の割合は12モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A3と称する。
【0019】
(実施例4)
SiO
xの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を15質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiO
xに対する被膜の割合は18モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A4と称する。
【0020】
(実施例5)
SiO
xの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を20質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiO
xに対する被膜の割合は24モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A5と称する。
【0021】
(実施例6)
SiO
xの表面処理の際、HMDIに代えてヘキシルイソシアナートを用いたこと以外は上記実施例3と同様にして電池を作製した。尚、SiO
xに対する被膜の割合は18モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A6と称する。
【0022】
(比較例1)
SiO
xの表面処理を行わなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0023】
(比較例2)
SiO
xの表面処理を行なわず、且つ、非水電解液にHMDIを1.0質量%添加したこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z2と称する。
【0024】
(比較例3)
SiO
xの表面処理の際、DECにHMDIを溶解させなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z3と称する。
【0025】
(実験)
上記電池A1〜A6、Z1〜Z3を、下記に示す条件で充放電等を行って、サイクル特性(50サイクル後の容量維持率であって、サイクル初期の特性)と、高温連続充電特性(ガス発生による電池膨れ量、容量残存率)とを調べたので、それらの結果を表1に示す。
【0026】
[サイクル特性試験]
1.0It(800mA)電流で電池電圧が4.4Vとなるまで定電流充電を行った後、4.4Vの定電圧で電流値が40mAとなるまで充電を行った。10分間休止した後、1.0It(800mA)電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。尚、試験は室温(25℃)で行った。
50サイクル後の容量維持率(%)=[50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量]×100・・・(1)
【0027】
[高温充電保存試験]
室温にて、上記サイクル特性試験に示した充電条件と同様の条件で4.4Vまで充電した後、80℃の恒温槽に入れて48時間放置した。その後、恒温槽から取り出して室温まで冷却し、電池厚みを測定し、下記(2)式から電池膨れ量を算出した。更に、室温にて、上記サイクル特性試験に示した放電条件と同様の条件で2.75Vまで放電して放電容量を測定し、下記(3)式から容量残存率を求めた。
電池膨れ量(mm)=充電保存後の電池厚み−充電保存前の電池厚み・・・(2)
容量残存率(%)=[充電保存後の放電容量/充電保存前の放電容量]×100・・・(3)
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、電池A1〜A6は、電池Z1、Z3に比べて、サイクル特性に優れ(50サイクル後の容量維持率が高く)、且つ高温充電保存特性に優れる(電池膨れ量が少なく、容量残存率が高い)ことが認められる。但し、電池A6と電池A4とはSiO
xに対する被膜の割合は同じ(共に、18モル%)であるにも関わらず、電池A6は電池A4に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とが若干劣っていることが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0030】
電池A1〜A6では、HMDIやヘキシルイソシアナートのイソシアネート基と、SiO
x表面上のOH基とを、負極作製前に反応させることによりウレタン結合が形成される。したがって、SiO
x表面上に被膜(擬似SEI)が形成されるので、充放電時にSiO
xと電解液とが反応するのを抑制できる。この結果、SEI増加に起因するSiO
xの孤立化を抑制できるので、サイクル特性が向上する。また、非水電解液とSiO
xとの反応が抑制されるので、高温充電保存特性も向上する。これに対して、電池Z1、Z3では、SiO
x表面上に被膜(擬似SEI)が形成されていないので、充放電時におけるSiO
xと非水電解液との反応を抑制できない。したがって、SEI増加に起因するSiO
xの孤立化を抑制できないため、サイクル特性が低下する。また、電解液とSiO
xとの反応を抑制できないので、高温充電保存特性も低下する。
【0031】
また、SiO
xの表面処理時に、2以上のイソシアナート基を含む化合物を用いた場合には、下記化1に示すように、SiO
x表面上に架橋構造を有する被膜が形成されるので、電解液とSiO
xとの反応が十分に抑制される。一方、SiO
xの表面処理時に、イソシアナート基を1つしか含まない化合物を用いた場合には、SiO
x表面上に形成される被膜は架橋構造を有しないので、電解液とSiO
xとの反応抑制度合いが若干低下する。したがって、2以上のイソシアナート基を含む化合物であるHMDIで処理した電池A4は、イソシアナート基を1つしか含まない化合物で処理した電池A6に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とに優れる。
【0032】
【化1】
【0033】
〔化1においてRはC
nH
2n(nは1以上の整数)である〕
【0034】
また、電池Z1と電池Z3とを比べると、サイクル特性と高温充電保存特性とは略同等となっていることが認められる。したがって、本発明の効果は、SiO
xを有機溶媒に浸漬することにより発揮されるのではなく、HMDIやヘキシルイソシアナートとSiO
xとが反応することで発揮されることが分かる。
更に、電池Z2は電池Z1、Z3に比べて、サイクル特性が低下していることが認められる。これは、電池Z2では非水電解液にHMDIを添加しているので、炭素にもHMDI由来の被膜ができ、これによって、容量劣化が生じるためと考えられる。
加えて、電池A1〜A5を比較すると、電池A2〜A4は電池A1、A5に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とに優れることが認められる。したがって、SiO
xに対する被膜の割合は6mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
【0035】
(その他の事項)
(1)2以上のイソシアナート基を含む化合物としては、上記ヘキサメチレンジイソシアナートの他、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、ヘプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ウンデカメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアヂート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−シクロペンタンジイソシアナート、1,3−シクロヘキサンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシ
アナートなどが例示される。
【0036】
(2)負極合剤中におけるSiO
xの含有量は0.5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、特に、1.0質量%以上20質量%以下であることが望ましい。SiO
xの含有量が少な過ぎる場合、負極容量の増大を図れなくなることがある一方、SiO
xの含有量が多過ぎる場合、負極内膨張が大きくなるため、負極合剤層の剥離、負極集電体の変形等が生じ、サイクル特性が低下することがある。
【0037】
(3)本発明に用いるリチウム遷移金属複合酸化物としては、上記コバルト酸リチウムの他、ニッケル−コバルト−マンガン酸リチウム、ニッケル−コバルト−アルミニウム酸リチウム、ニッケル−コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属の酸化物、鉄、マンガンなどのオリビン酸化合物など公知のものを用いることができる。
【0038】
(4)本発明に用いる非水電解液の溶媒には、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒や添加剤を同時に用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、これらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0039】
更に、上記の非水電解液に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(FSO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4等のリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF
6を用いることが好ましい。
【0040】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB〔リチウム−ビスオキサレートボレート〕の他、中心原子にC
2O
42−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C
2O
4)
xR
y](式中、Mは遷移金属,周期律表のIIIb族,IVb族,Vb族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C
2O
4)F
2]、Li[P(C
2O
4)F
4]、Li[P(C
2O
4)
2F
2]等がある。但し、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
尚、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0041】
(5)本発明に用いるセパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレン層の表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【0042】
(6)正極とセパレータとの界面、又は、負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーからなる層を形成することができる。フィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものを用いることができる。
上記フィラー層の形成は、正極、負極、或いはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、或いはセパレータに貼り付ける方法等を用いることができる。