特許第6122014号(P6122014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122014非水電解質二次電池用負極、その製造方法及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122014
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極、その製造方法及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20170417BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170417BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170417BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
   H01M10/0566
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-532780(P2014-532780)
(86)(22)【出願日】2013年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2013005013
(87)【国際公開番号】WO2014034078
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-191239(P2012-191239)
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126963
【弁理士】
【氏名又は名称】来代 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100131864
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 正憲
(72)【発明者】
【氏名】野村 峻
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰右
(72)【発明者】
【氏名】山本 英和
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 篤史
(72)【発明者】
【氏名】井町 直希
【審査官】 小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−164759(JP,A)
【文献】 特開2007−242411(JP,A)
【文献】 特開2002−373653(JP,A)
【文献】 特開2005−259641(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/021236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 4/36
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO(0.8≦x≦1.2)、及び黒鉛を含む負極活物質を備えた負極合剤層と、少なくとも一方の面に上記負極合剤層が形成された負極集電体とを備える非水電解質二次電池用負極であって、
上記SiOの表面には、イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜が形成されており、
上記イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜が、上記負極活物質のうち上記SiOにのみ形成されている、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
上記イソシアナート基を含む化合物が2以上のイソシアナート基を有する、請求項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
上記SiOに対する上記被膜の割合が6mol%以上18mol%以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
イソシアナート基を含む化合物が溶解された溶媒中で、SiO(0.8≦x≦1.2)を攪拌して、イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜をSiOの表面に形成するステップと、
上記SiOと黒鉛とを含む負極合剤スラリーを調製するステップと、
負極集電体の少なくとも一方の面に上記負極合剤スラリーを塗布して、負極集電体の少なくとも一方の面に負極合剤層を形成するステップと、
を備える非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
上記請求項1〜の何れか1項に記載の負極と、
正極集電体の少なくとも一方の面に正極合剤層が形成された正極と、
上記正極と上記負極の間に配置されたセパレータと、
非水電解液と、
を備える非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極、その製造方法及び非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。充放電に伴い、リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行う非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
上記移動情報端末は、動画再生機能、ゲーム機能といった機能の充実に伴って、更に消費電力が高まる傾向にあり、その駆動電源である非水電解質二次電池には長時間再生や出力改善等を目的として、更なる高容量化や充放電性能の向上が強く望まれるところである。
【0003】
ここで、上記非水電解質二次電池では、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用い、負極活物質として黒鉛を用いるのが一般的であるが、これらの材料では更なる高容量化は困難な状況である。このため、より比容量の高い活物質の開発が進められている。例えば、負極活物質であれば、ケイ素合金等の材料開発が活発に進められている。当該材料を用いた場合、黒鉛に比べ比容量は非常に高くなるものの、体積膨張が大きく、また安全性の面で解決すべき課題ある。したがって、現在では、より体積膨張が少なく、安全性の高い酸化物負極の開発が優先して進められている。
【0004】
例えば、比容量が高く、且つ体積膨張率もケイ素合金に比べて小さいケイ素酸化物と、黒鉛とを混合した負極活物質を用いて、電池の高容量化を図る提案がされている(下記特許文献1)。
また、電解液にイソシアナート基含有化合物を添加することで負極上に良好なSEIを生成し、これによって、サイクル特性の向上や、高温保存時の膨れ抑制を図る提案がされている(下記特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−233245号
【特許文献2】特開2006−164759号
【特許文献3】特開2007−242411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の提案の如く、ケイ素酸化物と黒鉛とを混合した負極では、サイクル初期において容量低下が大きくなる。このため、電池の高容量化という利点が、サイクル初期で無くなるという課題があった。本発明者らが、この原因について調査したところ、ケイ素酸化物は黒鉛よりも電解液との反応性が高いため、ケイ素酸化物上のSEIが増加して、電子伝導性が無くなる。この結果、リチウムを有した状態のケイ素酸化物が、負極内で孤立することに起因するものであった。また、ケイ素酸化物は電解液との反応性が高いため、高温充電保存時に、ガス発生による電池膨れが生じるという課題もある。
【0007】
また、上記特許文献2、3に記載の提案は、負極活物質として黒鉛を単独で用いた場合について記載されており、シリコン酸化物と黒鉛とを混合した負極については、全く考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非水電解質二次電池は、SiO(0.8≦x≦1.2)、及び黒鉛を含む負極活物質を備えた負極合剤層と、少なくとも一方の面に上記負極合剤層が形成された負極集電体とを備え、上記SiOの表面には、イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜が形成されている。上記イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜は、上記負極活物質のうち上記SiOにのみ形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイクル初期における放電容量の低下を抑制でき、且つ、高温充電保存特性を向上させることができるといった優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明に係る非水電解質二次電池等について、以下に説明する。尚、この発明における非水電解質二次電池等は、下記の形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0011】
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウムに、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを、正極活物質と導電剤と結着剤との質量比が95.0:2.5:2.5の割合になるように加えた後に混練して、正極スラリーを調製した。次に、この正極スラリーを、アルミニウム箔から成る正極集電体の両面に塗布、乾燥した後、圧延ローラにより圧延し、正極集電タブを取り付けることで、正極を作製した。なお、正極の充填密度は3.60g/cmとした。
【0012】
<SiOの表面処理>
ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)が1質量%溶解されたジエチルカーボネート(DEC)溶液200gを調製し、当該溶液にSiO(x=0.93、平均粒子径5.0μm)を44g加えて室温で10分間攪拌させた後、吸引濾過した。次に、SiOをDECで洗浄した後、得られた粉末を真空乾燥し、非水電解液の還元反応を抑制する被膜(イソシアナート基を含む化合物に由来する被膜)が表面に形成されたSiO(表面が化学修飾されたSiO)を得た。尚、ガスクロマトグラフィーにより、上記HMDIが全量反応していることを確認した。また、SiOに対する被膜の割合は1モル%であった。
【0013】
<負極の作製>
負極活物質としての上記SiOと、増粘剤であるCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)とを純水に溶かした水溶液中に、負極活物質として人造黒鉛と、結着剤としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム)とを加えた後に混練して、負極スラリーを調製した。この際、負極活物質(人造黒鉛とSiOとの総和)と結着剤と増粘剤との質量比は98:1:1の比率となるように規定し、また、人造黒鉛とSiOとの質量比は95:5の比率となるように規定した。次に、上記負極スラリーを銅箔から成る負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、充填密度1.60g/cmになるように圧延ローラにより圧延し、更に負極集電タブを取り付けることで、負極を作製した。
【0014】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解させるとともに、ビニレンカーボネート(VC)を1.0質量%添加して、非水電解液を調製した。
【0015】
<電池の作製>
上記正極及び負極を、厚さ22μmでポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して対向するように巻取って巻取り体を作製した。次に、アルゴン雰囲気下のグローボックス中にて、該巻取り体を上記非水電解液とともにアルミニウムラミネート内に封入することにより非水電解質二次電池(厚さ3.6mm、幅3.5cm、長さ6.2cm)を作製した。当該非水電解質二次電池を4.40Vまで充電し、2.75Vまで放電したときの放電容量は800mAhであった。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
上記発明を実施するための形態と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池A1と称する。
【0017】
(実施例2)
SiOの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を5質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、ガスクロマトグラフィーにより、上記HMDIが全量反応していることを確認した。このことは、後述の実施例3〜6においても同様であった。また、SiOに対する被膜の割合は6モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A2と称する。
【0018】
(実施例3)
SiOの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を10質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiOに対する被膜の割合は12モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A3と称する。
【0019】
(実施例4)
SiOの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を15質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiOに対する被膜の割合は18モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A4と称する。
【0020】
(実施例5)
SiOの表面処理の際、DECに溶解したHMDIの割合を20質量%としたこと以外は上記実施例1と同様にして電池を作製した。尚、SiOに対する被膜の割合は24モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A5と称する。
【0021】
(実施例6)
SiOの表面処理の際、HMDIに代えてヘキシルイソシアナートを用いたこと以外は上記実施例3と同様にして電池を作製した。尚、SiOに対する被膜の割合は18モル%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A6と称する。
【0022】
(比較例1)
SiOの表面処理を行わなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0023】
(比較例2)
SiOの表面処理を行なわず、且つ、非水電解液にHMDIを1.0質量%添加したこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z2と称する。
【0024】
(比較例3)
SiOの表面処理の際、DECにHMDIを溶解させなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z3と称する。
【0025】
(実験)
上記電池A1〜A6、Z1〜Z3を、下記に示す条件で充放電等を行って、サイクル特性(50サイクル後の容量維持率であって、サイクル初期の特性)と、高温連続充電特性(ガス発生による電池膨れ量、容量残存率)とを調べたので、それらの結果を表1に示す。
【0026】
[サイクル特性試験]
1.0It(800mA)電流で電池電圧が4.4Vとなるまで定電流充電を行った後、4.4Vの定電圧で電流値が40mAとなるまで充電を行った。10分間休止した後、1.0It(800mA)電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。尚、試験は室温(25℃)で行った。
50サイクル後の容量維持率(%)=[50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量]×100・・・(1)
【0027】
[高温充電保存試験]
室温にて、上記サイクル特性試験に示した充電条件と同様の条件で4.4Vまで充電した後、80℃の恒温槽に入れて48時間放置した。その後、恒温槽から取り出して室温まで冷却し、電池厚みを測定し、下記(2)式から電池膨れ量を算出した。更に、室温にて、上記サイクル特性試験に示した放電条件と同様の条件で2.75Vまで放電して放電容量を測定し、下記(3)式から容量残存率を求めた。
電池膨れ量(mm)=充電保存後の電池厚み−充電保存前の電池厚み・・・(2)
容量残存率(%)=[充電保存後の放電容量/充電保存前の放電容量]×100・・・(3)
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、電池A1〜A6は、電池Z1、Z3に比べて、サイクル特性に優れ(50サイクル後の容量維持率が高く)、且つ高温充電保存特性に優れる(電池膨れ量が少なく、容量残存率が高い)ことが認められる。但し、電池A6と電池A4とはSiOに対する被膜の割合は同じ(共に、18モル%)であるにも関わらず、電池A6は電池A4に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とが若干劣っていることが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0030】
電池A1〜A6では、HMDIやヘキシルイソシアナートのイソシアネート基と、SiO表面上のOH基とを、負極作製前に反応させることによりウレタン結合が形成される。したがって、SiO表面上に被膜(擬似SEI)が形成されるので、充放電時にSiOと電解液とが反応するのを抑制できる。この結果、SEI増加に起因するSiOの孤立化を抑制できるので、サイクル特性が向上する。また、非水電解液とSiOとの反応が抑制されるので、高温充電保存特性も向上する。これに対して、電池Z1、Z3では、SiO表面上に被膜(擬似SEI)が形成されていないので、充放電時におけるSiOと非水電解液との反応を抑制できない。したがって、SEI増加に起因するSiOの孤立化を抑制できないため、サイクル特性が低下する。また、電解液とSiOとの反応を抑制できないので、高温充電保存特性も低下する。
【0031】
また、SiOの表面処理時に、2以上のイソシアナート基を含む化合物を用いた場合には、下記化1に示すように、SiO表面上に架橋構造を有する被膜が形成されるので、電解液とSiOとの反応が十分に抑制される。一方、SiOの表面処理時に、イソシアナート基を1つしか含まない化合物を用いた場合には、SiO表面上に形成される被膜は架橋構造を有しないので、電解液とSiOとの反応抑制度合いが若干低下する。したがって、2以上のイソシアナート基を含む化合物であるHMDIで処理した電池A4は、イソシアナート基を1つしか含まない化合物で処理した電池A6に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とに優れる。
【0032】
【化1】
【0033】
〔化1においてRはC2n(nは1以上の整数)である〕
【0034】
また、電池Z1と電池Z3とを比べると、サイクル特性と高温充電保存特性とは略同等となっていることが認められる。したがって、本発明の効果は、SiOを有機溶媒に浸漬することにより発揮されるのではなく、HMDIやヘキシルイソシアナートとSiOとが反応することで発揮されることが分かる。
更に、電池Z2は電池Z1、Z3に比べて、サイクル特性が低下していることが認められる。これは、電池Z2では非水電解液にHMDIを添加しているので、炭素にもHMDI由来の被膜ができ、これによって、容量劣化が生じるためと考えられる。
加えて、電池A1〜A5を比較すると、電池A2〜A4は電池A1、A5に比べて、サイクル特性と高温充電保存特性とに優れることが認められる。したがって、SiOに対する被膜の割合は6mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
【0035】
(その他の事項)
(1)2以上のイソシアナート基を含む化合物としては、上記ヘキサメチレンジイソシアナートの他、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、ヘプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ウンデカメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアヂート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−シクロペンタンジイソシアナート、1,3−シクロヘキサンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシ
アナートなどが例示される。
【0036】
(2)負極合剤中におけるSiOの含有量は0.5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、特に、1.0質量%以上20質量%以下であることが望ましい。SiOの含有量が少な過ぎる場合、負極容量の増大を図れなくなることがある一方、SiOの含有量が多過ぎる場合、負極内膨張が大きくなるため、負極合剤層の剥離、負極集電体の変形等が生じ、サイクル特性が低下することがある。
【0037】
(3)本発明に用いるリチウム遷移金属複合酸化物としては、上記コバルト酸リチウムの他、ニッケル−コバルト−マンガン酸リチウム、ニッケル−コバルト−アルミニウム酸リチウム、ニッケル−コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属の酸化物、鉄、マンガンなどのオリビン酸化合物など公知のものを用いることができる。
【0038】
(4)本発明に用いる非水電解液の溶媒には、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒や添加剤を同時に用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、これらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0039】
更に、上記の非水電解液に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、LiAsF、LiClO等のリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPFを用いることが好ましい。
【0040】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB〔リチウム−ビスオキサレートボレート〕の他、中心原子にC2−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C](式中、Mは遷移金属,周期律表のIIIb族,IVb族,Vb族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C)F]、Li[P(C)F]、Li[P(C]等がある。但し、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
尚、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0041】
(5)本発明に用いるセパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレン層の表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【0042】
(6)正極とセパレータとの界面、又は、負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーからなる層を形成することができる。フィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものを用いることができる。
上記フィラー層の形成は、正極、負極、或いはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、或いはセパレータに貼り付ける方法等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン等の移動情報端末の駆動電源や、電気自動車、HEVや電動工具といった高出力向けの駆動電源や、蓄電関連の電源に展開が期待できる。