特許第6122024号(P6122024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122024パラジウム金合金ガス分離膜システムを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122024
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】パラジウム金合金ガス分離膜システムを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20170417BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170417BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20170417BHJP
   C23C 18/18 20060101ALI20170417BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20170417BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B01D71/02 500
   B01D69/10
   B01D69/12
   C23C18/16 Z
   C23C18/18
   C23C18/44
   B32B15/01 E
   B01D53/22
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-538895(P2014-538895)
(86)(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公表番号】特表2015-502243(P2015-502243A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】US2012061542
(87)【国際公開番号】WO2013063009
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】13/282,295
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス・ザ・セカンド,ネイサン・アール
(72)【発明者】
【氏名】ソウカイティス,ジョン・チャールズ
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0232821(US,A1)
【文献】 特開2008−019457(JP,A)
【文献】 特開2010−248663(JP,A)
【文献】 特表2008−507395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金パラジウム合金ガス分離膜を調製する方法であって、
0.8ミクロン未満の平均表面粗さ(Sa)を有するパラジウム層を準備するステップと、
前記パラジウム層を研削媒体で研削して、0.8ミクロンを超える平均表面粗さ(Sa)に表面粗さを増加させるステップと、
パラジウムの前記層に金の層を堆積するのに十分な時間、前記研削したパラジウム表面を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させるステップと、
前記パラジウムおよび金の層をアニールして前記パラジウム金合金ガス分離膜を生成するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記溶液と接触する前に、前記パラジウム層を最大2.5ミクロンの平均表面粗さ(Sa)に研削する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩化金酸および過酸化水素を含むめっき溶液を用いる無電解めっきによって、前記金を前記パラジウム層に堆積する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラジウム層を1から10ミクロンの粒径を有する研削媒体で研削する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パラジウム層に堆積した前記金層が0.1ミクロンから7ミクロンの厚さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金層が前記パラジウム層全体の1重量%から20重量%の間にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記パラジウム層への前記金層の堆積後、前記組み合わせた層をアニールしてパラジウム金合金を生成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液と接触する前に、前記パラジウム層を0.85ミクロンから1.5ミクロンの間の平均表面粗さ(Sa)に研削する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パラジウム層に堆積した前記金層が0.25ミクロンから7ミクロンの間の厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記パラジウム金合金が1ミクロンから10ミクロンの間の厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組み合わせた金およびパラジウムの層を400℃から800℃の間の温度でアニールする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液と接触する前に、0.9ミクロンから1.2ミクロンの間の平均表面粗さ(Sa)に前記パラジウム層を研削する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金層が前記パラジウム層全体の5重量%から20重量%の間にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
パラジウム金合金ガス分離膜システムを調製する方法であって、多孔質基板に金属間拡散障壁を施すステップと、前記金属間拡散障壁にパラジウム層を堆積するステップと、前記パラジウム層を熱処理して熱処理したパラジウム層を得るステップと、前記熱処理したパラジウム層を0.8ミクロンを超え2.5ミクロンまでの平均表面粗さ(Sa)に研削するステップと、前記熱処理し研削したパラジウム層を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させることによって、前記熱処理し研削したパラジウム層に金層を堆積するステップとを含む方法。
【請求項15】
前記パラジウム層への前記金層の堆積の後、前記組み合わせた層をアニールしてパラジウム金合金を生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液と接触する前に、前記パラジウム層を0.85ミクロンから1.5ミクロンの間の平均表面粗さ(Sa)に研削する、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パラジウム層に堆積した前記金層が0.25ミクロンから7ミクロンの間の厚さを有する、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組み合わせた金およびパラジウムの層を水素雰囲気中で500℃から600℃の間の温度でアニールする、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
水素および硫黄を含有するガス流から水素を分離するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法によって調製した前記パラジウム金合金ガス分離膜システムのいずれか1つの使用。
【請求項20】
ガス流が、二酸化炭素、水、メタンおよびこの混合物からなる群から選択される1つ以上のガスを含む、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆多孔質支持体上に金およびパラジウムの膜を含むパラジウム金合金ガス分離膜システムを調製するための改良方法、およびその結果として製造されたガス分離膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
精製水素の安価な供給源が、多くの工業用化学プロセスに対して、および燃料電池電力システムのエネルギーの製造において求められている。同様に、水素を精製する安価な方法であれば、炭化水素改質、改質反応器および水性ガスシフト反応の適用可能性を著しく拡大することができよう。安価な精製水素に対する必要性を満たすために、水素および他の分子成分を含有する異なる工業用ガス流から水素を選択的に回収するために使用することができる、より効果的な水素透過性ガス分離膜システムの開発に相当な研究努力が、傾注されている。パラジウムでできた水素透過性膜は、高い水素透過性および理論上無限の水素選択性により広く検討されている。しかし、パラジウム膜にまつわる問題の1つは、高いコストに加えて、工業的なプロセスガス中に存在する硫黄源が高温でパラジウム膜と接すると形成される硫化水素によって被毒しやすいことである。
【0003】
高純度のパラジウム膜にまつわるこれらの問題を克服する試みにおいて、米国特許第3,350,845号に開示された銅、銀および金とのパラジウムの合金などのパラジウムの合金が配合され、これは硫化水素による被毒に対する耐性を改善することが見出された。米国特許第3,350,845号に開示されたパラジウム金合金は、1/16”厚のステンレス鋼基板に支持された1ミル厚の箔の形態に調製された。これらのパラジウム金合金箔を調製するために使用される具体的な方法は開示されておらず、従来の箔調製技術を含むと思われる。米国特許第3,350,845号に開示された比較的厚いパラジウム金合金箔は、法外に高価であり、多くの現在の工業用途に適していない。
【0004】
金めっきの公知の一方法は、シアン化金などの金塩を含有する溶液に電流を通す電気分解法の利用による。そのような浴からのシアン化物廃液は、環境問題を起こす。この環境問題を避けるために、亜硫酸金およびチオ亜硫酸金などの他の金塩が用いられている。しかし、パラジウムが硫黄化合物によって被毒するので、パラジウムへの金めっきには適切でない。
【0005】
金属表面に金めっきする別の方法は、塩化金酸を使用する直流電気的置換を伴っている。この方法では、金より容易に酸化するニッケルなどの金属は、金が堆積されることになる表面に無電解的に堆積される。新たに堆積した金属、例えば、ニッケルは、塩化金酸の作用によって容易に溶解され、その結果、溶液中の金イオンが還元され、表面金属を置き換える。塩化金酸を使用する直流電気的置換法は、金によって置換されるパラジウムのコストが高いので、耐硫黄性の膜を製造するために金を堆積することは実現可能ではない。また、パラジウム膜は、通常、アニールされ、研磨することができるが、研磨によりめっきするのが困難な滑らかな表面になる。
【0006】
塩化金酸はまた、ガラスなどの他の表面に金膜を堆積するために用いられている。例えば、Elsevierによって出版された「Novel Plating solution for electroless plating of gold film onto glass surface」,Surface and Coatings Technology(2008),202(13),2922−2926と題されたJiandong Huらによる論文は、無電解金めっき工程を記載しており、塩化金酸および過酸化水素が、(3−アミノプロピル)−トリメトキシシラン被覆ガラスに金膜を堆積するのに用いられた。Jiandong Huらの論文は、絶縁基板への金の堆積を達成するためには、基板への金の接着を増強するために不活性表面を(3−アミノプロピル)−トリメトキシシラン(APTMS)などのシリル化剤を使用して活性化し、または官能基化しなければならないことを教示している。ガラスの表面の調製の方法は極めて広汎であり、表面汚染を除去するための浄化処理、ガラス表面に酸化種を形成する、ピラニア溶液を用いる酸化処理、および修飾ガラス表面を形成するAPTMSなどのシリル化試薬を用いる修飾処理を含んでいた。この論文において開示された多段法は、金被覆スライドガラスを調製するために用いられた。ガス分離膜の調製に関する論文の開示はない。
【0007】
耐硫黄性パラジウム金膜の調製のより最近の手法は、WO2008/027646に記載されており、耐硫黄性の複合パラジウム合金膜は、パラジウム微結晶で多孔質基板に種晶を入れ、基板上に存在する任意の有機液剤を分解し、基板上のパラジウム微結晶を金属の形態に還元し、基板上にパラジウム金属の膜を堆積し、次いで、パラジウム膜に第2の金膜を堆積することにより調製された。金膜の堆積は、水、NaOHおよび塩化金(III)を含有する溶液を基板の表面にポンプ輸送することにより達成された。
【0008】
パラジウム微結晶で種晶を入れること、ならびにNaOHおよび塩化金(III)めっき溶液の使用を含むWO2008/027646に開示された方法は、耐硫黄性の複合ガス分離膜を提供するが、一方、硫黄による被毒に耐性のあるガス分離膜システムを安価で効率的に製造することができる製作方法が当技術分野において引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,350,845号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/027646号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jiandong Hu,et al.,「Novel Plating solution for electroless plating of gold film onto glass surface」,Surface and Coatings Technology(2008),202(13),2922−2926
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐硫黄性の、熱的に安定な金パラジウム合金ガス分離膜システムを調製するための、安価で非常に効率的で環境にやさしい方法を提供する。この方法は、直流電気的置換を伴わず、パラジウム微結晶の使用を必要とせず、費用のかかる活性化、浄化または官能基化技法を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、パラジウム金合金ガス分離膜システムを調製する方法であって、研削媒体を用いてパラジウム層を研削して以下に記載される一定の表面粗さを生成するステップと、パラジウムの層に金の層を堆積するのに十分な時間、研削したパラジウム表面を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させるステップと、パラジウムと金の層をアニールしてパラジウム金合金ガス分離膜システムを生成するステップとを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の方法によって調製するパラジウム金合金ガス分離膜システムは、また、金属間拡散障壁を施すことができる多孔質基板を含むことができる。本発明のこの実施形態において、金属間拡散障壁を多孔質基板に施し;パラジウムまたはパラジウム合金の1つ以上の層を金属間拡散障壁に堆積し;パラジウム層の表面を、所望の表面粗さを達成するために研磨媒体を使用して研削し;次いで、研削したパラジウム層を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させることにより、1つ以上の層の金をパラジウム層に堆積する。金被覆パラジウム層は、アニールして被覆多孔質支持体上に金パラジウム合金層を生成する。
【0014】
本発明は、また、前記の方法を使用して調製したパラジウム金合金ガス分離膜システム、および水素および硫黄を含有するガス流から水素を分離する際のそのようなガス分離膜システムの使用を含む。
【0015】
本発明は、金被覆パラジウム層をアニールして、パラジウム金合金ガス分離膜システムを生成することができる、パラジウムの層に金の層または被膜を施す、安価で非常に効率的な方法を提供する。
【0016】
本発明は、(1)パラジウム層の表面を研削して一定の表面粗さを達成するステップ、および(2)アニールしてパラジウム金合金ガス分離膜を生成することができる金被覆パラジウム層を与えるのに十分な時間、研削したパラジウム表面を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させるステップによって費用のかかる活性化、浄化、または官能基化技法に対する必要性なしで、金をパラジウム表面に施すことができるという発見に一部は基づく。
【0017】
パラジウム表面の研磨または研削は、通常、後続のパラジウム層を堆積することができる、より滑らかなパラジウム表面を生成するために行う。本方法において研削するステップは、表面粗さを増すために、例えば、研磨材料を用いてパラジウム表面を故意に引っ掻くまたはクロスハッチングすることによって行う。従って、本明細書および特許請求の範囲において用いられる「研削すること」という用語は、表面粗さを増すために、例えば、パラジウムの表面を引っ掻くまたはクロスハッチングすることによって、パラジウム表面への研磨媒体の適用を意味するように規定される。本明細書および特許請求の範囲において用いられる「研磨すること」という用語は、表面粗さを減らすために、即ち、パラジウムの表面をより滑らかにするために、パラジウム表面への研磨媒体の適用を意味するように規定される。
【0018】
従って、本発明の方法の重要な特色は、所望のパラジウム表面粗さが研削または摩砕によって達成される研削ステップである。パラジウム表面が以下に記載される好適な表面粗さを有する場合、パラジウム表面を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させることによって、費用がかかり時間もかかる化学的活性化および/または官能基化ステップに対する必要性なしで、金の層または被膜でパラジウム表面を被覆することが可能であることがわかった。
【0019】
塩化金酸および過酸化水素の溶液を用いて、比較的滑らかなパラジウム表面(0.8ミクロン未満の平均表面粗さ(Sa)を有するパラジウム表面として規定される。)を金で被覆するためには、パラジウム表面を研削し表面粗さを増やさなければならない。本発明によると、塩化金酸および過酸化水素の溶液を用いてめっきする前のパラジウム表面は、0.8ミクロンを超え2.5ミクロンまでの平均表面粗さ(Sa)を有していなければならない。好ましくは、平均表面粗さ(Sa)は、0.85ミクロンから1.5ミクロンの間に、より好ましくは0.9ミクロンから1.2ミクロンの間である。
【0020】
平均表面粗さまたは相加平均高さ(Sa)は、表面の粗さを測定するための公知の測定であり、光学的表面形状測定装置を使用して容易に決定することができる。任意の市販の光学的表面形状測定装置を使用してもよい。そのような市販の光学的表面形状測定装置の例は、ST400 3D表面形状測定装置であり、Nonoveaによって、販売されている。
【0021】
所望の表面粗さを生成する研削ステップに使用するのに適した研磨材は、液体中に懸濁した研磨材粒子、またはペースト中に含まれる研摩材を含む、砥石、研磨布紙および緩い研摩材などの任意の種類の研磨材から選択することができる。研削粒子の大きさは、研削ステップに使用したときに、パラジウム表面の表面粗さを増すように機能するようなものでなければならない。1から10ミクロンの平均粒径を有する研削媒体は、適切な表面粗さを生成するとわかった。しかし、この範囲を上回るまたは下回る平均粒径を有する他の研削媒体も、これが0.8ミクロンを超え2.5ミクロンまでの最終平均表面粗さ(Sa)を生成する限り、使用することができる。
【0022】
表面粗さは、パラジウム表面の繰り返しの刻印である繰り返し模様の形態であってもよい。表面仕上げの繰り返し模様の例には、垂直、水平、放射状、クロスハッチ、円形、正弦波、卵形、楕円、渦巻、ピーナッツ形および他のパターンが含まれる。適切で好ましい繰り返し模様、およびパラジウム表面にそのような繰り返し模様を刻印または押印する方法および手段の幾つかは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0232821号に、より詳細に論じられている。
【0023】
研磨材粒子の組成は重要ではなく、研磨材粒子は、例えば、ダイヤモンド、コランダム、エメリーおよびシリカなどの天然研磨材から、または、例えば、炭化ケイ素、酸化アルミニウム(溶融、焼結、ゾルゲル焼結)、炭化ホウ素および立方晶窒化ホウ素などの人造研摩材から選択することができる。
【0024】
パラジウム表面を所望の表面粗さに研削した後、1つ以上の層の金を、塩化金酸(HAuCl)および過酸化水素を含む特殊なめっき溶液を使用してパラジウム表面に堆積する。めっき溶液はまた、過酸化水素および塩化金酸の塩(このカリウムおよびナトリウム塩など)を含んでもよい。金めっき溶液中の塩化金酸の濃度は、一般に、溶液の重量に対して0.001重量%から0.2重量%、好ましくは0.005重量%から0.05重量%の範囲である。金めっき溶液中の過酸化水素の濃度は、一般に、0.1重量%から0.01重量%、好ましくは0.01重量%から0.05重量%の範囲である。
【0025】
金は、階層状、即ち、複数の層に堆積してもよいが、一層に堆積してもよい。パラジウム金合金ガス分離システムに使用する場合、金被膜の厚さは、ミクロンの数分の1(例えば、0.1ミクロン)から7ミクロン以上、好ましくは0.25ミクロンから7ミクロンの範囲であってもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、パラジウム金合金ガス分離膜システムは金属間拡散障壁で被覆した多孔質基板に支持されている。この実施形態において、金属間拡散障壁は、多孔質基板に施し;1つ以上の層のパラジウムまたはパラジウム合金が金属間拡散障壁に堆積し;パラジウム層の表面を、所望の表面粗さを達成するために研磨媒体を使用して研削し;次いで、研削したパラジウム層を、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む溶液と接触させることにより、1つ以上の層の金がパラジウム層に堆積する。パラジウム層への金層の堆積後、組み合わせた層を、熱処理、即ち、アニールして、パラジウム金合金ガス分離膜システムで被覆した多孔質支持体を生成する。
【0027】
本発明の方法のこの実施形態において用いることができる多孔質支持体は、金属間拡散障壁ならびにパラジウムおよび/またはパラジウム金合金の層に対する支持体としての使用に適した、任意の多孔質金属材料を含む。金属間拡散障壁、ならびにパラジウム、パラジウム合金および金の層の多孔質支持体への適用またはその上への堆積を可能にする表面を有する限り、多孔質支持体は、任意の形状または幾何構造のものであってもよい。そのような形状は、一緒にシート厚さを規定する下面および上面を有する、多孔質金属材料の平坦なまたは湾曲したシートを含むことができ、またはそのような形状は、例えば、一緒に肉厚を規定する内表面および外表面を有し、管形状の内表面が管状導管を画定する、長方形、正方形および円形の管形状などの管状であってもよい。
【0028】
多孔質金属材料は、例えば、301、304、305、316、317および321系列のステンレス鋼などのステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)合金、例えば、ハステロイ(登録商標)B−2、C−4、C−22、C−276、G−30、Xほか、ならびに、インコネル(登録商標)合金、例えば、インコネル(登録商標)合金600、625、690および718を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の材料のいずれかから選択することができる。従って、多孔質金属材料は、水素透過性があり、鉄およびクロムを含む合金を含むことができる。多孔質金属材料は、ニッケル、マンガン、モリブデンおよびこの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の合金金属をさらに含むことができる。
【0029】
多孔質金属材料としての使用に適した特に望ましい合金の1つは、合金の合計重量の最大約70重量パーセントの範囲の量のニッケルおよび合金の合計重量の10から30重量パーセントの範囲の量のクロムを含むことができる。多孔質金属材料として使用する別の適切な合金は、30から70重量パーセントの範囲のニッケル、12から35重量パーセントの範囲のクロム、および5から30重量パーセントの範囲のモリブデンを含む(これらの重量パーセントは合金の合計重量に対する。)。インコネル合金は他の合金より好ましい。
【0030】
多孔質金属基板の細孔の厚さ(例えば上記の肉厚またはシート厚さ)、多孔度および細孔サイズ分布は、所望の特性を有する本発明のガス分離膜システムを得るために選択され、本発明のガス分離膜システムの製造に必要とされる多孔質支持体の特性である。水素分離用途に使用する場合、多孔質支持体の厚さが増すと水素流出は減る傾向があることが理解される。圧力、温度および液体流の組成などの運転条件もまた、水素流出に影響を与える場合がある。しかし、いずれの場合も、高いガス流出を得るためには、適度に厚さが薄い多孔質支持体を使用するのが望ましい。以下に企図される主用途のための多孔質基板の厚さは、約0.1mmから約25mmの範囲であってもよいが、好ましくは、厚さは、1mmから15mmの、より好ましくは2mmから12.5mmの、最も好ましくは3mmから10mmの範囲である。
【0031】
多孔質金属基板の多孔度は、0.01から約1の範囲であってもよい。多孔度という用語は、多孔質金属基板材料の非固体の体積と合計体積(即ち、非固体および固体の)との比率として規定される。より典型的な多孔度は、0.05から0.8の、というより、0.1から0.6の範囲にある。
【0032】
多孔質金属基板の細孔の細孔サイズ分布は、通常約0.1ミクロンから約50ミクロンの範囲である、多孔質金属基板材料の細孔のメジアン細孔直径によって変動し得る。より典型的には、多孔質金属基板材料の細孔のメジアン細孔直径は、0.1ミクロンから25ミクロンの、最も典型的には、0.1ミクロンから15ミクロンの範囲である。
【0033】
本発明の改良方法は、パラジウムまたはパラジウム合金および金の層を多孔質基板に形成する前の、多孔質基板の表面への金属間拡散障壁の適用を含む。適切な金属間拡散障壁は、無機酸化物、高融点金属および貴金属卵殻触媒からなる群から選択される材料の粒子を含む。これらの粒子は、これら、または粒子の少なくとも一部が、パラジウム金膜を支持するために使用する多孔質基板のいくらかの細孔内に少なくとも部分的にはまることができるようなサイズのものでなければならない。従って、これらの最大寸法は、一般に、約50ミクロン(μm)未満でなければならない。粒子の粒径(即ち、粒子の最大寸法)は、また、一般に、本発明の方法に使用する多孔質基板の細孔の細孔サイズ分布に依存する。典型的には、無機酸化物、高融点金属または貴金属卵殻触媒の粒子のメジアン粒径は、0.1ミクロンから50ミクロンの範囲である。より具体的には、メジアン粒径は0.1ミクロンから15ミクロンの範囲にある。粒子のメジアン粒径が0.2ミクロンから3ミクロンの範囲であることが好ましい。
【0034】
金属間拡散障壁粒子の層として適切に使用することができる無機酸化物の例は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリアまたはセリア安定化ジルコニアなどの安定化ジルコニア、チタニア、セリア、シリコン、炭化物、酸化クロム、セラミック材料およびゼオライトを含む。高融点金属には、タングステン、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、ニオブ、ルテニウム、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、クロムおよびモリブデンを含むことができる。多孔質基板の表面に施す金属間拡散障壁粒子の層として適切に使用することができる貴金属卵殻触媒に関して、貴金属卵殻型触媒は、この本文全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,744,675号に規定され、非常に詳しく記載されている。本発明の方法で使用する好ましい金属間拡散障壁は、イットリアで安定化したジルコニア、特に6から8重量%のイットリアで安定化したジルコニアを含む貴金属卵殻触媒である。幾つかの事例において、セリアの添加も安定化を増加させることがわかった。
【0035】
被覆基材を得るために多孔質基板の表面に施す金属間拡散障壁粒子の層は、多孔質基板の細孔を覆うための、および0.01ミクロンを超え、一般には、0.01ミクロンから25ミクロンの範囲の層厚さを有する層を与えるためのようなものでなければならない。好ましくは、金属間拡散障壁の層厚さが0.1ミクロンから20ミクロンの、最も好ましくは2ミクロンから3ミクロンの範囲である。
【0036】
多孔質基板への金属間拡散障壁の適用の後、例えば、無電解めっき、加熱堆積、化学蒸着、電気めっき、噴霧堆積、スパッタ被覆、電子ビーム蒸発、イオンビーム蒸発および噴霧熱分解などの、当業者に公知の任意の適切な手段または方法を使用して、1つ以上のパラジウムの層を被覆多孔質基板に堆積することができる。好ましい堆積方法は無電解めっきである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、水、水酸化アンモニウム、テトラアミンパラジウム(II)クロリドおよびヒドラジンを含むパラジウムめっき浴溶液は、1から10ミクロンの範囲の厚さを有するパラジウム層が堆積するまで被覆多孔質基板を覆って循環する。好ましくは、パラジウム層は、1μmから8μmの、より好ましくは、1から5μmの範囲の厚さを有する。結果として得られたパラジウム層は、洗浄し、アニールし、研磨する。十分なパラジウムが表面を密封するようにめっきされるまで、めっき、洗浄、アニールおよび研磨工程を繰り返すことができる。
【0038】
パラジウム層のアニーリングまたは熱処理は、400℃から800℃の範囲、好ましくは500℃から550℃の範囲の温度で適切に行う。パラジウム層のアニーリングは、水素雰囲気、または窒素、アルゴンもしくはヘリウムなどの不活性ガス中で実行することができる。好ましい実施形態において、アニーリングは、100%の水素の雰囲気中で、または窒素、アルゴンおよびヘリウムからなる群から選択される3重量%から97重量%の不活性ガスと水素との混合物を含む雰囲気中で行う。
【0039】
被覆多孔質基板へのパラジウムの最後の層の堆積、アニールおよび場合により研磨の後、パラジウムの表面は、研削して、上に指定した範囲、即ち、0.8ミクロンから2.5ミクロン、好ましくは0.85から1.5ミクロン、より好ましくは0.9から1.2ミクロンの間の範囲内に平均表面粗さ(Sa)を生成する。被覆多孔質基板上のパラジウム表面は、あまり滑らかでないことが非常に重要であることがわかった。パラジウム層の表面を高度に研磨し、またはバフ研磨した場合、金は、塩化金酸および過酸化水素の溶液からパラジウム表面に十分にめっきされない。
【0040】
上に指定した範囲内の好適な表面粗さは、当業界で公知の任意の研削手段および方法によって達成することができる。1から10ミクロンの粒径が様々である研削媒体、例えば、5ミクロンの研磨紙を用いて、満足すべき結果が得られた。研削媒体は、上に論じたパラジウムの表面にクロスハッチングなどの様々な模様を押印するために使用することができる。これは、パラジウム層への金めっきを著しく増強することがわかった。
【0041】
被覆多孔質基板上のパラジウム表面を所望の表面粗さに研削した後、1つ以上の層の金が、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素を含む特殊なめっき溶液を使用してパラジウム表面に堆積する。パラジウム層への金の層の堆積は、好ましくは、被覆多孔質支持体上の、アニールし研削したパラジウム層の表面を覆って、水、塩化金酸および過酸化水素を含有する溶液が循環する金めっき浴中の無電解めっきによって行う。金めっき溶液中の塩化金酸の濃度は、一般に0.001重量%から0.2重量%の、好ましくは0.005重量%から0.05重量%の範囲である。金めっき溶液中の過酸化水素の濃度は、一般に0.01重量%から0.1重量%の、好ましくは0.01重量%から0.05重量%の範囲である。
【0042】
金めっきは、パラジウム層全体の1重量%から20重量%の間を有する金層が得られるまで、継続する。好ましくは、金は、パラジウム層全体の5重量%から20重量%の間、より好ましくはパラジウム層全体の8重量%から10重量%の間で含む。前述のパーセントの金は、1以上のめっき作業中に施すことができる。
【0043】
金の層または被膜の厚さは、ミクロンの数分の1、例えば、0.1ミクロンまたは0.25ミクロンから、7ミクロンまで、金めっき工程の数または金堆積の合計長さに依存して変動し得る。好ましくは、金層の厚さは、0.20ミクロンから5ミクロン、より好ましくは0.25ミクロンから2ミクロンである。
【0044】
金は、1層のパラジウムに堆積してもよく、または、パラジウムと金の交互の層の1層として堆積してもよい。密封したパラジウム膜上に最後の層として金を置くことが好ましい。金は表面に留まる傾向があり、金が硫黄被毒にそれほど敏感でないので、硫黄の被毒にそれほど敏感でない表面をもたらす。金が高価であるので、原料の硫黄含有量を扱うのに十分な量の金のみを施すことは費用効果的である。上に開示したパラジウム層全体に対して5から20重量%、および8から10重量%の範囲の金は、ほとんどの原料に対して十分であるというより多い。
【0045】
パラジウム層に金層を堆積した後、結果として得られた金属層に、好ましくはパラジウム金合金を形成するパラジウム層中への金層の若干の金属間拡散を達成するのに十分なアニーリング作業を施す。パラジウム金合金の形成に適切なアニール温度は、400℃から800℃、好ましくは500℃から600℃の範囲である。好ましい実施形態において、水素雰囲気中で約500℃から約600℃の範囲の温度にパラジウムおよび金の層を含む多孔質基板を徐々に加熱することによって、アニーリングを行う。
【0046】
好ましくはこのようにして形成されたパラジウム金合金層は、1ミクロンから10ミクロンの間の、好ましくは2ミクロンから10ミクロンの間の厚さを有する。パラジウム金合金は、通常、合金の合計重量に対して0.2重量%から20重量%の間の金を、好ましくは合金の合計重量に対して5重量%から20重量%の間の金を含む。
【0047】
パラジウム、金または銀などの他の金属のさらなる層を金層に形成してもよい。代替として、パラジウムおよび銀の層を被覆多孔質基板に、続いて金の層を共堆積してもよい。別の実施形態において、パラジウム、銀および金の層を、前に記載しためっき溶液を使用して無電解めっきによって被覆多孔質基板に連続して堆積してもよい。金でめっきする前にパラジウム銀層を形成することが望まれる場合、硝酸銀をパラジウムめっき溶液に添加することができる。
【0048】
上記の代替実施形態すべてにおける金めっきは、塩化金酸またはこの塩および過酸化水素の水溶液を用いて行う。少なくとも1層の金を表面で分離するべきガスに接触させることが好ましく、金は表面に留まる傾向があるので、金が完全には合金にならなくても、表面を硫黄による被毒に対して耐性にする。
【0049】
本発明の方法によって調製したパラジウム金ガス分離膜システムは、種々様々の用途に、特に、硫黄化合物の濃縮物を含有するガス、例えば、二酸化炭素、水、メタンまたはこの混合物からなるガスの群から選択されるものを含む、他のガスを含むガス流からの水素の分離を伴う用途に使用することができる。そのような用途において、温度条件は、最高600℃の範囲、例えば、100℃から600℃の範囲であってもよく、圧力条件は、最高60barの範囲、例えば1から40barの範囲であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、しかし、この範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0051】
[実施例1]
この実施例は、金属間拡散障壁で被覆した多孔質基板に堆積した1つ以上の層のパラジウムへの1つ以上の層の金の堆積を含む、本発明の方法を使用する耐硫黄性ガス分離膜システムの製造を説明する。
【0052】
パラジウムおよびイットリア安定化ジルコニアを含む貴金属卵殻触媒のスラリーを、2”ODx6”のインコネル多孔質金属チューブの表面に堆積して、厚さが2−3ミクロンである金属間拡散障壁を形成し、5−8”Hgで5分間めっき付けした。その後、水、水酸化アンモニウム、テトラアミンパラジウム(II)クロリド、EDTA二ナトリウムおよびヒドラジンを含有するパラジウム浴溶液を循環させることによって、1−2ミクロンの厚さを有する第1のパラジウム層が得られるまで被覆多孔質チューブの表面を覆って、パラジウムの第1の膜を、金属間拡散障壁で被覆した多孔質チューブに堆積した。パラジウム層を洗浄し、乾燥し、アニールし、研磨する。めっき、洗浄、乾燥、アニールおよび研磨の工程を繰り返して、膜が気密性になるまで、追加のパラジウム層を生成した。用いたアニール温度は約500−550℃であった。
【0053】
次いで、アニールしたパラジウム層の表面を5ミクロンの研磨紙で研削して(即ちクロスハッチングして)、パラジウム層の表面粗さを0.85ミクロンから1.5ミクロンの間の平均表面粗さ(Sa)に増加させた。アニールし、研削したパラジウム表層を有する被覆多孔質チューブ(本明細書において「複合膜」とも称される。)を、0.21%の塩化金酸溶液750mlを含有するプラスチックライニングしたメスシリンダー中で室温で懸濁した。ミニ蠕動ポンプを揺動のために使用した。さらに、複合膜は、15分毎に1/4回転、回転させた。
【0054】
過酸化水素(30重量%)を、開始時、ならびに30、60、120および150分に0.1875mlの1回分を溶液に添加した。1.261重量%の塩化金酸12.49mlを180分に添加した。30重量%の過酸化水素0.1875mlの1回分を210および240分に添加した。膜チューブを振動して、表面に形成したすべての気泡を除去した。複合膜は金めっきの4時間半後に取り出した。本発明の方法のこの実施例では、複合膜上に660ナノメートル(nm)(0.66ミクロン)の平均厚さを有する金層を生成した。パラジウムおよび金の層を含む複合膜を、続いて454−458℃の温度で24−800時間アニールして、6.675ミクロンの平均層厚さおよび95%の平均パラジウム濃度および5%の平均金濃度のパラジウム金合金層を有する複合膜を生成した。
【0055】
[実施例2]
42m/m/hr/bar0.5の透過率を有する15インチのパラジウム膜を5ミクロンの紙で研削して(即ちクロスハッチングして)、パラジウム層の表面粗さを0.85から1.5ミクロンの間の平均表面粗さ(Sa)に増加させた。研削したパラジウム膜を、めっきしない領域にPTFEテープで被覆した。これを、蠕動ポンプで揺動した、室温のビニール袋ライナー付きの1Lのメスシリンダー中の0.05%の塩化金酸溶液の体積1300mlに入れた。過酸化水素(30重量%)を、0、30、60、120および150分に0.1875mlの1回分を溶液に添加した。1.261重量%の塩化金酸12.49mlを90分に添加し、さらに1.261%の塩化金酸12.49mlの1回分を180分基準で使用した。膜は15分毎に1/4回転、回転させた。30重量%の過酸化物のさらなる0.1875mlの1回分を210および240分に添加した。膜チューブを振動して、表面に形成したすべての気泡を除去した。膜は4時間半のめっき後取り出した。膜厚を求めるために蛍光X線分析を使用した。この方法で、660nm、0.66ミクロンの平均厚さを有する金層を示した。これを水素中で60時間454−458℃でアニールした。初期の透過率は、31m/m/hr/bar0.5の初期値が38m/m/hr/bar0.5の最終値に変化した。
【0056】
[実施例3]
この実施例では、新しい15インチのパラジウム膜を用いて繰り返した。これを5ミクロンの紙で研削して(即ちクロスハッチングして)、パラジウム層の表面粗さを増加させた。めっきしない領域にPTFEテープでこれを被覆した。膜を、蠕動ポンプで揺動した、室温のビニール袋ライナー付きの1Lのメスシリンダー中の0.05%の塩化金酸溶液の体積1300mlに入れた。過酸化水素(30重量%)を、0、30、60、120および150分に0.1875mlの1回分を溶液に添加した。1.261重量%の塩化金(choloroauric)酸12.49mlを90分に添加し、さらに1.261%の塩化金酸12.49mlの1回分を180分基準で使用した。膜は15分毎に1/4回転、回転させた。30重量%の過酸化水素の追加の0.1875mlの1回分を210および240分に添加した。膜チューブを振動して、表面に形成したすべての気泡を除去した。膜は4時間半のめっき後取り出した。膜厚を求めるために蛍光X線分析を使用した。この方法で、650nm(0.65ミクロン)の平均厚さを有する金層を示した。
【0057】
この工程はさらなる金を追加し続けることができる。原料組成中の硫黄に対する必要な耐性を達成するのに必要な最小量の金のみを使用するのが好ましい。
【0058】
本発明がこの好ましい実施形態に関して記載されたが、形態および詳細における様々な修正が、以下の特許請求の範囲に述べられる本発明の範囲から離れることなく、その中で行うことができることは当業者によって理解されよう。