(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
インターネットサービスが急速に普及しており、その結果として、データトラフィックが増加している。それに応じて、より高い柔軟性及びより速いデータ速度に対する需要に、クラウドコンピューティングのような新たな用途が加わった。波長パスルーティング(wavelength path routing)、交換及び割当ての柔軟性を高めつつ、これらのネットワーク需要を満たすために、現在、光ネットワークが発達しつつある。
【0008】
このタイプの環境では、波長無依存(colorless)、方向無依存(directionless)、無競合(contentionless)(CDC)機能を有する複数次の再構成可能光アド/ドロップマルチプレクサー(ROADM)が、動的に容量を割り当てるための重要な役割を果たすと期待される。しかしながら、高次ROADMノードに関連付けられる挿入損失は一般的に、基本的な2次ノードの場合より高い。結果として、M×1個の波長選択スイッチ(WSS)及び1×N個の光結合器における挿入損失を補償するために、1×8又は1×16の光増幅器アレイが利用される場合が多い。
【0009】
現在、複数の別個の別々にポンピングされるエルビウムドープファイバー増幅器(EDFA)モジュールが、光増幅器アレイとして用いられる。しかしながら、ROADMの次数が高くなるにつれて、EDFAモジュールの数が増えることに起因して、ROADMは大きくなり、コストがかかり、非効率的になる。例えば、従来のEDFAモジュールが、CDC ROADMノード内の1×4WSSと4×1光結合器との間に設置される場合には、単一のノード内に数百個の別個のEDFAモジュールが必要とされることになり、それにより、機器サイズ及びコストが望ましくないほどになる。
【0010】
本明細書において説明されるシステム及び方法は、これらの短所に対処しようと試みる。包括的には、開示されるシステム及び方法は、エルビウム(Er)ドープファイバー(EDF)のような、リボン化された利得ドープファイバーを用いるアレイ光ファイバー増幅器を含む。リボン化ファイバーを使用することによって、増幅器アレイのモジュールサイズが小さくなり、製造コストも削減される。
【0011】
この点を考慮に入れて、ここで、図面において示されるような実施形態の説明が詳細に参照される。これらの図面との関連で幾つかの実施形態が説明されるが、本開示を本明細書において開示される1つ又は複数の実施形態に限定することは意図していない。それどころか、全ての代替形態、変更形態及び均等形態を含むことを意図している。
【0012】
図1は、リボン化された利得ドープファイバーアレイの一実施形態の断面を示す図である。
図1に示されるように、リボン化利得ドープファイバーアレイは、8つの色分けされた利得ドープファイバーを備えるリボン100として、具体的には、250μmEDFとして示される。コーティングに関して250μmの外径が説明されるが、本実施形態のためのコーティング径は約160μm〜約250μmに及ぶことができることは理解されたい。各利得ドープファイバー120aは利得ドープコア(例えば、エルビウムをドープされる)105aと、利得ドープコア105aを包囲する相対的に(コアに比べて)低い屈折率のクラッディング層110aと、クラッディング110aに塗布されるコーティング層115aとを備える。識別するのを容易にするために、各個々のEDFコーティング上に着色インク層を塗布することができる。リボン100は、モノリシック構造内に利得ドープファイバーを収容するためのマトリックス材料を更に備えることができる。
図1は、色分けされた利得ドープファイバー120を包囲する軟質内側層125と、軟質内側層125を包囲する硬質外側層130とからなるマトリックス材料を示す。
図1の特定の実施形態では、利得ドープファイバー120は、実質的に隙間なく束ねられた構成に配置される(例えば、中央EDFが7つの塗色されたEDFによって包囲される)。それゆえ、リボンEDFはコンパクトにすることができる。例えば、
図1において、リボンは、125/250μmクラッディング/コーティング径を有する8つの個々にコーティングされたEDFによって形成され、結果として、リボン径は1.25mmになる。リボンEDFは、ファイバーに近づくのを容易にするために可剥性(peelable)である。リボン径は、125/200μmクラッディング/コーティング径EDF、又は80/165μmクラッディング/コーティング径EDFを用いることによって、それぞれ約1.0mm及び0.825mmまで縮径することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、EDFリボンは個々にコーティングされたEDFを含み、識別するのを容易にするために各EDF上に着色インクが塗布されている。好ましくは、内側層125は、利得ドープファイバーをクッションで覆う軟質の紫外線(UV)硬化層であり、一方、外側層130は、利得ドープファイバーを保護する硬質のUV硬化層である。他の既知のリボン構造、例えば、別々の軟質コーティング及び硬質コーティングとは対照的に、単一のポリマーマトリックス材料を用いることができる。リボンは、利得ドープファイバーを直線状に配置して平坦にすることができるか、又は利得ドープファイバーを隙間なく束ねた構造に配置して円筒形にすることができる。平坦なリボンは、円筒形構造に形を変えることができるように丸めることができる。さらに、同等の増幅性能を達成するために、各利得ドープファイバーは、同じ、又は実質的に類似の光学特性(例えば、開口数(NA)、モードフィールド径(MFD)、遮断波長、背景損失等)を示す。
【0014】
図2は、リボン化された利得ドープファイバーアレイの別の実施形態の断面を示す図である。
図2に示されるように、利得ドープファイバーアレイはリボン200を備える。
図1とは異なり、
図2のリボン200は、直線状に配置された8つの色分けされた利得ドープファイバー220a(例えば、250μmEDF)を備える。
図1と同じように、各利得ドープファイバー220aは、利得ドープコア205aと、クラッディング210aと、コーティング層215aとを備える。利得ドープファイバーの直線配置は軟質内側層225によって包囲され、軟質内側層は硬質外側層230によって更に包囲される。
【0015】
図1又は
図2のいずれかのリボン化利得ドープファイバーアレイを用いることによって、他の現在市販されているシステムより低コストで、コンパクトな増幅器アレイを製造できるようになる。この点を考慮に入れて、リボン化EDFを用いるアレイ増幅器システムの異なる実施形態を示す
図3〜
図6に注目する。
【0016】
図3は、リボン化EDFを用いるアレイ増幅器(リボン化EDFA)の一実施形態を示すブロック図である。
図3に示されるように、リボン化EDFAシステムは、複数のEDF320が信号入力390及び信号出力395に光学的に結合されているEDFリボン300を備える。詳細には、各EDF320は、対応する信号入力390及び対応する信号出力395に光学的に結合される。
【0017】
入力390から出力395まで信号経路をトレースするとき、信号入力390からの信号は、対応する入力光アイソレーター335まで伝搬し、その後、対応する信号ポンプコンバイナー340(例えば、波長分割多重化(WDM)コンバイナー)まで伝搬する。信号ポンプコンバイナー340は、信号にポンプ電力を与える、レーザーダイオード345(例えば、976nmレーザーダイオード)のようなポンプ源に光学的に結合される。各信号ポンプコンバイナー340は対応する単一モードファイバー(SMF)350に光学的に結合され、単一モードファイバーは、コアに整合した(core-matched)スプライス355を備える対応するEDF320に光学的に結合され、それにより、信号は信号ポンプコンバイナー340からその対応するEDF320に伝搬できるようになる。幾つの実施形態の場合に、各個々のEDF320は、リボンEDF300からマトリックスを剥ぐことによって分離することができ、次に信号ポンプコンバイナーに接合することができる。増幅されると(EDF320を通って伝搬することによる)、増幅された信号は出力光アイソレーター370(別のSMF365によってEDF320にコア整合接合(360)される)を通って、その後、利得平坦化フィルター(GFF)375を通って進み、最終的にその対応する信号出力395において現れる。他の増幅器アーキテクチャも可能であり、当該技術分野においてよく知られている。
図3の実施形態において示されるように、リボン化EDF300を用いることによって、他の現在市販されているシステムより低コストで、コンパクトな増幅器アレイを製造できるようになる。さらに、リボン内の個々のEDFの長さを調整して、EDFAの間で利得形状の均一性及び一貫性を達成できることに留意されたい。個々のEDFの長さの柔軟性は、アレイEDFAの生産歩留まりを改善することもできる。
【0018】
アレイEDFA内の平坦な利得スペクトルと、利得形状の均一性及び一貫性は、将来のDWDMトランスポートシステムにとって重要である。アレイEDFA内の利得形状の高い度合いの均一性を維持するために、リボン内のEDFごとのファイバー導波路構造の厳密な制御に加えて、一般的に、ドーピング組成及びドーピング濃度の厳密な制御が必要とされる。これは、EDFAの利得スペクトルが吸収、MFD、NA、遮断波長、Al比等のEDF特性によって決まるためであり、EDF特性はEDFの製造ばらつき及び反転レベルに依存し、反転レベルはEDFAの詳細な構成及び動作条件(EDFの長さ、ポンプ及び信号電力レベル等)によって決まることになる。Erドープシリカファイバーは通常、屈折率を上げ、利得スペクトルを変更するために用いられるアルミニウム(Al)及びランタン(La)又はゲルマニウム(Ge)を共ドープされる。Al濃度はEDFの利得スペクトルに最も大きな影響を及ぼす。1480nmにおける吸収レベルは、EDF内のAl共ドーパント濃度の変動に関する高感度の指標であり、それゆえ、Al比(R
Al)と呼ばれる、1480nmにおける吸収とピーク吸収との間の比、R
Al=α
1480nm/α
peakは、異なるアルミニウムドーピングレベルを区別し、かつEDF内のスペクトル均一性/一貫性を監視するための測定可能なパラメータとして選択される。アレイ内のEDFAの間で±1%未満の利得形状変動を得ることが好ましく、EDFリボン内で用いられるEDFごとに、Al比がR
Al=R
ALtarget±0.05(又はΔR
AL≦0.01)の範囲内に管理されるべきである。例えば、R
ALtarget=0.432である場合には、0.427<R
Al<0.437であり、R
ALtarget=0.444である場合には、0.439<R
Al<0.449である。さらに、EDFリボン用に形成される個々のEDFは、利得形状の良好な均一性を得るために、同じ特性(吸収、放射、MFD、NA、遮断波長、及び背景損失等)を有するべきである。ピーク吸収αは、目標吸収α
targetの±3%の範囲内に管理されるべきであり、例えば、α
target=6.5dB/mである場合には、ピーク吸収は6.3dB/m<α<6.7dB/mの範囲内とすることができる。
【0019】
上記のような、1×8リボン化EDFを用いることによるアレイEDFAは、実験的に実証されてきた。1×8アレイ増幅器内の各EDFAは、共伝搬ポンピング(co-propagating pumping)方式において976nmLDによってポンピングされ、12メートル長のリボンEDFが利用された。アレイEDFAの性能が、WDM(100GHzチャネル間隔を有する)入力信号として40個のDFBダイオードを用いることによって評価され、それらの入力信号は、アレイ導波路回折格子ルータ(AWR)によって合成され、アレイ増幅器内の各個々のEDFAへの信号の入力として8つに分割された。各個々のEDFAに入力する前に、可変光減衰器(VOA)によって複合入力信号が調整された。入力/出力光アイソレーター、及び入力/出力タップ99/1テーパー結合器が実験において使用されたが、出力においてGFFは使用されなかった。各個々のEDFAの達成可能な利得及びNFが注意深く測定され、アレイEDFA内の各EDFAの利得偏差も解析された。その結果が
図7A及び
図7Bに示される。
【0020】
具体的には、
図7Aは、1×8アレイEDFAからの波長1530.373nmから1561.445nmに及ぶ利得曲線を示す。入力電力は8つ全てのEDFAの場合に同じ(40チャネルの2.6dBm全入力電力)になるように調整され、この測定において、1×8アレイEDFA内のEDFAごとに415mWのポンプ電力が使用されたことに留意されたい。21.9dBmの平均出力電力で、19.3dBの平均利得が得られた。
図7Bは、8個のEDFAの平均利得と、平均された利得曲線からの利得偏差とをプロットする。利得偏差<±0.8%を得ることができ、アレイ内のEDFA間の優れた利得形状均一性を示すことを確認することができる。個々のEDFの長さを調整し、ポンプ電力をわずかに調整することによって、利得偏差を更に小さくすることができる。
【0021】
図4は、光スプリッターを用いる共用ポンプを有するリボン化EDFAの一実施形態を示すブロック図である。再度、EDFリボン400の入力側において、信号入力490から信号出力495まで信号経路をトレースするとき、各信号は、それぞれの入力光アイソレーター435、信号ポンプコンバイナー440、SMF450、EDF420(スプライス455によってSMF450に結合される)を通って伝搬する。
図3の実施形態とは異なり、
図4の実施形態は、ポンプレーザーダイオード445、光スプリッター485及び可変光減衰器(VOA)480の組み合わせを通してポンプ電力が与えられるポンプ共用方式を提供する。このタイプのポンプ共用方式によれば、ポンプ源を少なくできるようになり、レーザーダイオード445からのポンプ電力は光スプリッター485を用いて分割され、VOA480を用いて制御され、その後、信号ポンプコンバイナー440を通して信号に与えられる。
【0022】
出力側では、各EDF420がコア整合スプライス460によって対応するSMF465に光学的に結合される。各SMF465は対応する出力光アイソレーター470に光学的に結合され、出力光アイソレーターは更に、対応するGFF475に光学的に結合され、GFFは、その対応する信号出力495を通して、増幅された信号を出力する。ここで、SMF465及びGFF475が
図3の対応する構成要素に類似している限り、SMF465及びGFF475の更なる検討は省かれる。しかしながら、
図4の実施形態も、リボン化利得ドープファイバーを利用することによって、
図3を参照しながら説明されたのと同様の効率及び利点を達成することに留意されたい。
【0023】
図5は、高出力電力動作のためのコポンピング構成及びカウンターポンピング構成の両方を有するリボン化EDFAの一実施形態を示すブロック図である。
図3の実施形態と同様に、
図5の実施形態は、信号入力590と、入力光アイソレーター535と、ポンプレーザーダイオード545と、信号ポンプコンバイナー540と、SMF550と、リボン化EDF500内のEDF520と、出力光アイソレーター570と、GFF575と、信号出力595とを備える。ここで、これらの構成要素が
図3及び
図4を参照しながら説明された限りにおいて、これらの構成要素の更なる検討は省略される。
【0024】
図3及び
図4の実施形態とは異なり、
図5の実施形態は、別の1組の信号ポンプコンバイナー580によって対応するSMF565に光学的に結合されるカウンターポンピングレーザーダイオード585を含むカウンターポンピング方式も含む。コポンピング方式(
図3を参照しながら説明される)及びカウンターポンピング方式の両方を設けることによって、より大きなポンプ電力を導入できるようになる。
【0025】
図6は、電力モニターを有するリボン化EDFAの一実施形態を示すブロック図である。
図3の実施形態と同様に、
図6の実施形態は、信号入力690と、入力光アイソレーター635と、信号ポンプコンバイナー640と、ポンプレーザーダイオード645と、SMF650と、リボン化EDF600内のEDF620と、出力光アイソレーター670と、GFF675と、信号出力695とを備える。これらの構成要素は
図3、
図4及び
図5を参照しながら論じられたので、ここで、これらの構成要素の更なる検討は省略される。しかしながら、
図3からの共通の構成要素に加えて、
図6の実施形態は、入力モニター615及び出力モニター685を含む。入力モニターは、入力タップ結合器610を用いて信号入力690に光学的に結合され、それにより、入力信号を測定できるようにする。同様に、出力モニター685は出力タップ結合器680を用いて信号出力695に光学的に結合され、それにより、出力電力を測定できるようにする。
【0026】
図1〜
図7Bの実施形態において示されるように、開示されるシステム及び方法は、リボン化ファイバーを使用するアレイ光ファイバー増幅器を含み、リボン化ファイバーは、他の現在市販されているシステムでは容易に達成することができない、増幅器モジュールサイズの縮小を可能にし、製造コストの削減も可能にする。
【0027】
任意のプロセス説明又は流れ図内のブロックは、そのプロセス内の特定の論理機能又はステップを実現するための1つ又は複数の実行可能命令を含むモジュール、セグメント又はコードの一部を表すと理解されるべきであり、本開示の正当な当業者によって理解されるように、関連する機能に応じて、実質的に同時、又は逆の順序を含む、機能が図示又は検討されたのと異なる順序で実行される場合がある代替の実施態様も、本開示の好ましい実施形態の範囲に含まれる。
【0028】
例示的な実施形態が図示及び説明されてきたが、説明されたような開示に対する複数の変形形態、変更形態又は代替形態も実施できることは当業者には明らかであろう。それゆえ、全てのそのような変形形態、変更形態及び代替形態も本開示の範囲内にあると見なされるべきである。