(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122125
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】塗布装置、塗布剤塗布方法および塗布システム
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20060101AFI20170417BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20170417BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20170417BHJP
B05B 13/02 20060101ALI20170417BHJP
A43D 25/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05B12/12
B05D1/02 B
B05B13/02
A43D25/00
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-532651(P2015-532651)
(86)(22)【出願日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2013072395
(87)【国際公開番号】WO2015025400
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】毛利 健一
(72)【発明者】
【氏名】前田 英俊
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−101146(JP,A)
【文献】
特開平07−168617(JP,A)
【文献】
特開平07−204543(JP,A)
【文献】
特開平08−229863(JP,A)
【文献】
特開昭61−042356(JP,A)
【文献】
特開2003−266018(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103330337(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/00〜 13/06
B05D 1/00〜 7/26
A43B 1/00〜 23/30
A43C 1/00〜 19/00
A43D 1/00〜999/00
B29D35/00〜 35/14
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの3次元形状を有する塗布領域に塗布剤を吹き付けることにより塗布するノズルと、
前記ノズルが先端に装着され、前記ノズルを移動させる塗布用ロボットとを備え、
前記塗布用ロボットは、前記ノズルを前記ワークの3次元形状を有する前記塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるように構成されており、
前記ワークは、位置決め部を含むパレット上に位置決めされて固定された状態で、かつ、平面視において前記パレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んで前記パレットの平面方向の位置決めが行われた状態で、前記塗布領域に塗布剤が塗布されるように構成されている、塗布装置。
【請求項2】
前記塗布用ロボットは、多関節ロボットを含み、
前記ワークの塗布領域は、曲面を有する3次元形状を含み、
前記多関節ロボットは、前記ワークの3次元形状データに基づいて、前記ワークの塗布領域の曲面に沿って前記ノズルを曲線状に移動させるように構成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ワークは、前記塗布領域の外縁部に沿って設けられた壁部を含み、
前記塗布用ロボットは、前記塗布領域の外縁部以外に塗布剤を塗布する際に、前記ノズルを前記塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるとともに、前記塗布領域の外縁部に塗布剤を塗布する際に、前記壁部の面に対して交差する方向から塗布剤を塗布するように前記ノズルを前記塗布領域の面に対して傾斜させるように構成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布用ロボットは、前記ワークの塗布領域の内側から塗布剤の塗布を開始するように前記ノズルを移動させるように構成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布用ロボットは、前記ワークの塗布領域の内側から外側に向かって塗布剤を塗布するように前記ノズルを移動させるように構成されている、請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布用ロボットは、前記ノズルを移動させながら塗布剤を塗布する際に、移動方向と直交する方向の塗布剤の端部が互いに重なるように、前記ノズルを移動させるように構成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記ワークは、複数の前記塗布領域を含み、
前記塗布用ロボットは、各々の前記塗布領域内において連続的に塗布剤を吹き付けるように前記ノズルを移動させるとともに、前記複数の塗布領域間を移動する際には、塗布剤の吹き付けを停止して前記ノズルを移動させるように構成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記ワークは、ゴムまたは樹脂により形成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記ワークは、3次元形状を有する前記塗布領域を含む靴の構成部品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記塗布剤は、水性接着剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項11】
ノズルが先端に装着された塗布用ロボットにより前記ノズルを移動させる工程と、
前記塗布用ロボットにより、前記ノズルがワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるように前記ノズルを移動させながら前記ノズルにより塗布剤を吹き付ける工程とを備え、
塗布材を吹き付ける工程において、前記ワークを位置決め部を含むパレット上に位置決めして固定した状態で、かつ、平面視において前記パレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んで前記パレットの平面方向の位置決めを行った状態で、前記ワークの前記塗布領域に塗布剤を塗布する、塗布剤塗布方法。
【請求項12】
前記塗布用ロボットは、多関節ロボットを含み、
前記ワークの塗布領域は、曲面を有する3次元形状を含み、
前記ノズルを移動させながら前記ノズルにより塗布剤を吹き付ける工程は、前記ワークの3次元形状データに基づいて、前記多関節ロボットにより、前記ワークの塗布領域の曲面に沿って前記ノズルを曲線状に移動させる工程を含む、請求項11に記載の塗布剤塗布方法。
【請求項13】
前記ワークは、前記塗布領域の外縁部に沿って設けられた壁部を含み、
前記ノズルを移動させながら前記ノズルにより塗布剤を吹き付ける工程は、前記塗布領域の外縁部以外に塗布剤を塗布する際に、前記ノズルを前記塗布領域の面に対して略面直になるように前記塗布用ロボットにより前記ノズルを移動させる工程と、前記塗布領域の外縁部に塗布剤を塗布する際に、前記壁部の面に対して交差する方向から塗布剤を塗布するように前記ノズルを前記塗布領域の面に対して傾斜させるように前記塗布用ロボットにより前記ノズルを移動させる工程とを含む、請求項11に記載の塗布剤塗布方法。
【請求項14】
前記ワークは、3次元形状を有する前記塗布領域を含む靴の構成部品である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の塗布剤塗布方法。
【請求項15】
ワークの3次元形状を有する塗布領域に塗布剤を吹き付けることにより塗布するノズルと、
前記ノズルが先端に装着され、前記ノズルを移動させる塗布用ロボットと、
前記ワークを移動させる搬送用ロボットと、
前記ワークを位置決めして固定する位置決め部を含むパレットの平面方向の位置決めを行う位置決め部材とを備え、
前記塗布用ロボットは、前記ノズルを前記ワークの3次元形状を有する前記塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるように構成されており、
前記ワークは、位置決め部を含むパレット上に位置決めされて固定された状態で、かつ、平面視において前記パレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んで前記パレットの平面方向の位置決めが行われた状態で、前記塗布領域に塗布剤が塗布されるように構成されている、塗布システム。
【請求項16】
前記搬送用ロボットは、前記ワークが載置された前記パレットを搬送することにより、塗布剤が塗布された前記ワークを移動させるように構成されている、請求項15に記載の塗布システム。
【請求項17】
前記塗布用ロボットは、多関節ロボットを含み、
前記ワークの塗布領域は、曲面を有する3次元形状を含み、
前記多関節ロボットは、前記ワークの3次元形状データに基づいて、前記ワークの塗布領域の曲面に沿って前記ノズルを曲線状に移動させるように構成されている、請求項15に記載の塗布システム。
【請求項18】
前記ワークは、前記塗布領域の外縁部に沿って設けられた壁部を含み、
前記塗布用ロボットは、前記塗布領域の外縁部以外に塗布剤を塗布する際に、前記ノズルを前記塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるとともに、前記塗布領域の外縁部に塗布剤を塗布する際に、前記壁部の面に対して交差する方向から塗布剤を塗布するように前記ノズルを前記塗布領域の面に対して傾斜させるように構成されている、請求項15に記載の塗布システム。
【請求項19】
前記ワークは、3次元形状を有する前記塗布領域を含む靴の構成部品である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗布装置、塗布剤塗布方法および塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを備えた塗布装置が知られている。このような塗布装置は、たとえば、特開平7−328506号公報に開示されている。
【0003】
上記特開平7−328506号公報には、ワーク(自動車のウインドウガラスなどの板状物体)に塗布剤を塗布する刷毛と、刷毛が先端に装着され、刷毛を移動させるロボットとを備える刷毛式塗布装置(塗布装置)が開示されている。この刷毛式塗布装置は、ロボットがワークの曲率に応じてワークの縁に沿って刷毛を移動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−328506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開平7−328506号公報の組立装置では、ロボットがワークの曲率に応じてワークの縁に沿って刷毛を接触させた状態で移動させるように構成されているため、刷毛のワークに対する接触移動に起因して刷毛が移動方向と反対方向にたわむという不都合がある。このため、刷毛とワークとの接触角および作用する力を一定に保つことが困難であるため、塗布された塗布剤にむらが発生しやすく、その結果、塗布剤を均一に塗布することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ワークの3次元形状を有する塗布領域全体に塗布剤を均一に塗布することが可能な塗布装置、塗布剤塗布方法および塗布システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の局面による塗布装置は、ワークの3次元形状を有する塗布領域に塗布剤を吹き付けることにより塗布するノズルと、ノズルが先端に装着され、ノズルを移動させる塗布用ロボットとを備え、塗布用ロボットは、ノズルをワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるように構成されて
おり、ワークは、位置決め部を含むパレット上に位置決めされて固定された状態で、かつ、平面視においてパレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んでパレットの平面方向の位置決めが行われた状態で、塗布領域に塗布剤が塗布されるように構成されている。
【0008】
第1の局面による塗布装置では、上記のように、塗布用ロボットによりノズルをワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるように移動させることによって、ノズルとワークの塗布位置との位置関係を非接触状態で一定の間隔に保ちながらワークの3次元形状の塗布領域に塗布剤を吹き付けることができるので、ワークの3次元形状を有する塗布領域全体に塗布剤を均一に塗布することができる。
【0009】
第2の局面による塗布剤塗布方法は、ノズルが先端に装着された塗布用ロボットによりノズルを移動させる工程と、塗布用ロボットにより、ノズルがワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるようにノズルを移動させながらノズルにより塗布剤を吹き付ける工程とを備え
、塗布材を吹き付ける工程において、ワークを位置決め部を含むパレット上に位置決めして固定した状態で、かつ、平面視においてパレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んでパレットの平面方向の位置決めを行った状態で、ワークの塗布領域に塗布剤を塗布する。
【0010】
第2の局面による塗布剤塗布方法では、上記のように、塗布用ロボットによりノズルがワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるようにノズルを移動させながらノズルにより塗布剤を吹き付ける工程を設けることによって、ノズルとワークの塗布位置との位置関係を非接触状態で一定の間隔に保ちながらワークの3次元形状の塗布領域に塗布剤を吹き付けることができるので、ワークの3次元形状を有する塗布領域全体に塗布剤を均一に塗布することが可能な塗布剤塗布方法を提供することができる。
【0011】
第3の局面による塗布システムは、ワークの3次元形状を有する塗布領域に塗布剤を吹き付けることにより塗布するノズルと、ノズルが先端に装着され、ノズルを移動させる塗布用ロボットと、ワークを移動させる搬送用ロボットと
、ワークを位置決めして固定する位置決め部を含むパレットの平面方向の位置決めを行う位置決め部材とを備え、塗布用ロボットは、ノズルをワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるように移動させるように構成されて
おり、ワークは、位置決め部を含むパレット上に位置決めされて固定された状態で、かつ、平面視においてパレットの内側方向に向かって先細るように切り欠かれたテーパ部に位置決め部材が嵌り込んでパレットの平面方向の位置決めが行われた状態で、塗布領域に塗布剤が塗布されるように構成されている。
【0012】
第3の局面による塗布システムでは、上記のように、塗布用ロボットによりノズルをワークの3次元形状を有する塗布領域の面に対して略面直になるように移動させることによって、ノズルとワークの塗布位置との位置関係を非接触状態で一定の間隔に保ちながらワークの3次元形状の塗布領域に塗布剤を吹き付けることができるので、ワークの3次元形状を有する塗布領域全体に塗布剤を均一に塗布することが可能な塗布システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、ワークの3次元形状を有する塗布領域全体に塗布剤を均一に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態による接着剤塗布乾燥システムの全体構成を示す図である。
【
図3】一実施形態による塗布位置決め部の平面図である。
【
図5】一実施形態によるワークが載置された状態のパレットの斜視図である。
【
図7】一実施形態によるワークの塗布領域への接着剤の塗布を説明するための図である。
【
図8】一実施形態によるワークの塗布領域の外縁部への接着剤の塗布を説明するための図である。
【
図9】一実施形態による塗布された接着剤の軌跡を示した図である。
【
図10】一実施形態による搬送用ロボットのハンドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
まず、
図1を参照して、本実施形態による接着剤塗布乾燥システム100の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、接着剤塗布乾燥システム100は、ワーク1およびワーク2が載置されたパレット3を搬送しながら、ワーク1およびワーク2に接着剤を塗布して乾燥させるように構成されている。なお、ワーク1は、ミッドソール(アウターソールとアッパー(靴の甲の部分)との間に設けられるソール)である。また、ワーク2は、アウターソール(地面と接触する部分のソール)である。ワーク1とワーク2とは、接着剤の塗布後に互いに接着されて靴の構成部分を形成する一組(一対)のワークである。ワーク1およびワーク2は、たとえば、ゴムやウレタン樹脂により形成されている。また、接着剤は、「塗布剤」の一例である。
【0018】
また、接着剤塗布乾燥システム100は、乾燥装置4と、紫外線照射装置5と、ロールコータ6と、塗布位置決め部7と、ロールコータ出口受部8と、搬送部9とを備える。また、接着剤塗布乾燥システム100は、乾燥装置用ロボット110と、ワーク移動用ロボット120と、塗布システム200とを備える。また、接着剤塗布乾燥システム100には、接着剤塗布乾燥システム100の全体の動作を制御する制御盤300が設けられている。
【0019】
ワーク1およびワーク2は、パレット3に載置された状態で、乾燥装置4と、紫外線照射装置5と、ロールコータ6と、塗布位置決め部7と、ロールコータ出口受部8と、搬送部9とが設けられる往路P1および復路P2を含むワーク移動経路を往復移動するように構成されている。
【0020】
具体的には、予め処理剤が塗布されたワーク1およびワーク2は、往路P1において、一対になった状態で搬入口から乾燥装置用ロボット110により、乾燥装置4に搬入される。一定時間乾燥後、ワーク1およびワーク2は、乾燥装置用ロボット110により、乾燥装置4の搬出口に移動される。その後、ワーク1は、ワーク移動用ロボット120により往路P11の紫外線照射装置5に移動される。また、ワーク2は、ワーク移動用ロボット120により往路P12のロールコータ6に移動され、接着剤が塗布される。
【0021】
紫外線照射装置5に移動されたワーク1は、コンベアにより塗布位置決め部7に移動され、接着剤が塗布される。その後、ワーク1は、搬送装置220により搬送部9に移動される。また、ロールコータ6に移動されたワーク2は、コンベアによりロールコータ出口受部8に移動される。その後、ワーク2は、搬送装置220により搬送部9に移動される。
【0022】
搬送部9に移動されたワーク1およびワーク2は、復路P2として、ワーク移動用ロボット120方向へ移動される。そして、ワーク1およびワーク2は、ワーク移動用ロボット120により、乾燥装置4の搬入口に移動される。ワーク1およびワーク2は、一対になった状態で搬入口から乾燥装置用ロボット110により、乾燥装置4に搬入される。一定時間乾燥後、ワーク1およびワーク2は、乾燥装置用ロボット110により、乾燥装置4の搬出口に移動される。
【0023】
乾燥装置4は、ワーク1およびワーク2に予め塗布された処理剤を乾燥させるように構成されている。また、乾燥装置4は、ワーク1およびワーク2に塗布された接着剤を乾燥させるように構成されている。具体的には、パレット3に載置された状態のワーク1およびワーク2を所定の時間乾燥装置4内に滞留させて、ワーク1およびワーク2に塗布された処理剤または接着剤を乾燥させるように構成されている。
【0024】
紫外線照射装置5は、ワーク1に予め塗布された処理剤を硬化させるように構成されている。具体的には、紫外線照射装置5は、パレット3に載置された状態のワーク1をコンベアにより往路P11に沿って移動させながら、紫外線を照射するように構成されている。
【0025】
ロールコータ6は、ワーク2に、接着剤が塗布されたロールにより接着剤を塗布するように構成されている。具体的には、ロールコータ6は、ワーク2を往路P12に沿って移動させながら、接着剤を塗布するように構成されている。
【0026】
塗布位置決め部7は、紫外線照射装置5から搬出されるパレット3に載置されたワーク1を受け取り、塗布位置に位置決めするように構成されている。塗布位置決め部7は、
図3に示すように、ガイド71と、側面ローラ72と、底面ローラ73と、ストッパ74と、位置決めブロック75と、シリンダ76とを含む。
【0027】
ガイド71は、ワーク1が載置されたパレット3の側面に当接して、パレット3が塗布位置決め部7に搬入されるようガイドするように構成されている。側面ローラ72は、塗布位置決め部7内を移動するワーク1が載置されたパレット3の側面に当接するように構成されている。底面ローラ73は、塗布位置決め部7内を移動するワーク1が載置されたパレット3の底面に当接するように構成されている。
【0028】
ストッパ74は、ワーク1が載置されたパレット3に当接して移動するパレット3を停止させるように構成されている。位置決めブロック75は、ワーク1が載置されたパレット3の切欠き33に当接して、パレット3(ワーク1)の位置決めを行うように構成されている。具体的には、位置決めブロック75は、シリンダ76により移動されて、パレット3の切欠き33に嵌り込んで、パレット3(ワーク1)の位置決めを行うように構成されている。
【0029】
ロールコータ出口受部8は、ロールコータ6から搬出されるパレット3に載置されたワーク2を受け取るように構成されている。
【0030】
図1に示すように、搬送部9は、紫外線照射装置5(往路P11)と、ロールコータ6(往路P12)との間の復路P2に配置されている。また、搬送部9は、パレット3にそれぞれ載置されたワーク1およびワーク2を、塗布システム200側から乾燥装置4側(ワーク移動用ロボット120側)に搬送するように構成されている。
【0031】
次に、
図1〜
図10を参照して、本実施形態による接着剤塗布乾燥システム100の塗布システム200の構成について詳しく説明する。
【0032】
図1および
図2に示すように、塗布システム200は、ワーク1に接着剤を塗布するように構成されている。また、塗布システム200は、双腕ロボットにより構成されており、一方のロボットアームを含む塗布装置210と、他方のロボットアームを含む搬送装置220とを備えている。塗布装置210は、垂直多関節ロボットにより構成された塗布用ロボット211と、塗布用ロボット211の先端に設けられてワーク1に接着剤を吹き付けるノズル212とを有する。また、搬送装置220は、垂直多関節ロボットにより構成された搬送用ロボット221と、搬送用ロボット221の先端に設けられたハンド222とを有する。なお、本実施形態では、接着剤は、水性の接着剤が用いられる。
【0033】
ワーク1は、
図6に示すように、接着剤が塗布される複数の塗布領域1aと、塗布領域1aの外縁部に沿って設けられたリブ形状の壁部1bとを有する。複数の塗布領域1aは、それぞれ、3次元形状の曲面を有する。
【0034】
図4および
図5に示すように、ワーク1を載置するためのパレット3(3a)は、たとえば樹脂から構成される平板からなり、略長方形形状を有する。また、パレット3aにワーク1が載置された状態で、塗布装置210により、ワーク1に接着剤が塗布される。また、パレット3aの短辺側には、搬送用ロボット221のハンド222に係合する切欠き31が設けられている。切欠き31は、パレット3aの2つの短辺にそれぞれ設けられている。
【0035】
また、パレット3aの長辺側には、乾燥装置用ロボット110およびワーク移動用ロボット120のハンドに係合する切欠き32が設けられている。なお、切欠き32は、パレット3aの2つの長辺の端部側にそれぞれ2つずつ設けられている。また、切欠き32は、平面視において、パレット3aの内側方向に切り欠かれた略矩形形状の切欠部により構成されている。
【0036】
また、パレット3aの長辺側には、ワーク移動用ロボット120のハンドに係合する切欠き33が設けられている。切欠き33は、パレット3aの2つの長辺の中央部近傍にそれぞれ1つずつ設けられている。また、切欠き33は、平面視において、パレット3aの内側方向に切り欠かれた略三角形形状の切欠部により構成されている。なお、ワーク移動用ロボット120のハンドは、一方の長辺に設けられる2つの切欠き32と、他方の長辺に設けられる1つの切欠き33に係合するように構成されている。また、
図3に示すように、切欠き33には、塗布位置決め部7の位置決めブロック75が嵌りこんで、パレット3aの位置決めが行われるように構成されている。
【0037】
また、
図4および
図5に示すように、ワーク1を載置するパレット3aは、ワーク1に差し込まれることによりワーク1をパレット3aに固定するとともに、ワーク1の位置決めを行う固定ピン34を含む。固定ピン34は、パレット3aの表面上に3つ設けられている。また、固定ピン34の側面には、ネジ溝が設けられている。また、固定ピン34は、ワーク1に固定ピン34が差し込まれた状態において、固定ピン34がワーク1を貫通しない長さに設定されている。なお、ワーク2を載置するパレット3bは、ワーク1を載置するパレット3aと、略同一の形状(略矩形形状)を有する(同じパレット3である)。ただし、パレット3bには、固定ピン34が設けられていない。なお、固定ピン34は、「位置決め部」の一例である。
【0038】
ワーク1は、固定ピン34を含むパレット3a上に位置決めされて固定された状態で、塗布領域1aに接着剤が塗布される。塗布用ロボット211は、ノズル212を移動させるように構成されている。ここで、本実施形態では、塗布用ロボット211は、
図7に示すように、ノズル212をワーク1の3次元形状を有する塗布領域1aの面に対して略面直になるように移動させるように構成されている。具体的には、多関節の塗布用ロボット211は、ワーク1の3次元形状データ(たとえば、CADデータ)に基づいて、ワーク1の塗布領域1aの曲面に沿ってノズル212を曲線状に移動させるように構成されている。また、塗布用ロボット211は、塗布領域1aの外縁部以外に接着剤を塗布する際に、ノズル212の先端がワーク1の塗布領域1aと常に略面直になる状態で塗布領域1aの曲面に沿ってノズル212を移動させるように構成されている。また、塗布用ロボット211は、ノズル212を塗布領域1aの表面と略一定の距離を保って移動させるように構成されている。
【0039】
また、本実施形態では、
図8に示すように、塗布用ロボット211は、ワーク1の塗布領域1aの外縁部に接着剤を塗布する際に、壁部1bの面に対して交差する方向から接着剤を塗布するようにノズル212を塗布領域1aの面に対して傾斜させるように構成されている。つまり、塗布用ロボット211は、ワーク1の塗布領域1aの壁部1bとの境界近傍に沿って接着剤を塗布する際、ノズル212を壁部1bに対して面直になるように所定の角度αだけ傾斜させるように構成されている。
【0040】
また、
図6に示すように、塗布用ロボット211は、ワーク1の壁部1bに囲まれた塗布領域1aの内側から接着剤の塗布を開始するようにノズル212を移動させるように構成されている。つまり、塗布用ロボット211は、塗布領域1aの幅がノズル212から噴霧される接着剤の幅より大きい場合に、塗布領域1aの内側(中央寄り)から接着剤の塗布を開始するように構成されている。
【0041】
また、塗布用ロボット211は、ワーク1の塗布領域1aの内側から外側に向かって接着剤を塗布するようにノズル212を移動させるように構成されている。具体的には、塗布用ロボット211は、ワーク1の塗布領域1aの内側から外側に向かって渦を巻くように接着剤を塗布するようにノズル212を移動(回転移動)させるように構成されている。
【0042】
また、
図9に示すように、塗布用ロボット211は、ノズル212を移動させながら接着剤を塗布する際に、平面視において移動方向(A方向)と直交する方向(B方向)の塗布された接着剤の端部が互いに重なるように、ノズル212を移動させるように構成されている。たとえば、接着剤の濡れ性を考慮して接着剤の塗布幅の約10%程度重なるようにノズル212が移動される。
【0043】
また、塗布用ロボット211は、ワーク1の複数の塗布領域1aの各々の塗布領域1a内において連続的に接着剤を吹き付けるようにノズル212を移動させるように構成されている。つまり、塗布用ロボット211は、各々の塗布領域1a内において、接着剤を一筆書きで塗布するようにノズル212を移動させるように構成されている。また、塗布用ロボット211は、複数の塗布領域1a間を移動する際には、接着剤の吹き付けを停止してノズル212を移動させるように構成されている。
【0044】
ノズル212は、ワーク1の塗布領域1aに接着剤を吹き付けて(霧状に噴霧させて)塗布するように構成されている。また、ノズル212は、空気圧により接着剤を吹き付けるように構成されている。これにより、塗布された接着剤を、塗布領域1a表面においてノズル212から噴射される空気により拡散させて塗布厚を均一にすることが可能である。
【0045】
搬送装置220は、ワーク1が載置されたパレット3aおよびワーク2が載置されたパレット3bを搬送するように構成されている。また、搬送装置220(搬送用ロボット221)は、接着剤が塗布されたワーク1およびワーク2を搬送部9に移動させるように構成されている。また、
図2および
図10に示すように、搬送装置220の垂直多関節の搬送用ロボット221の先端のハンド222には、4本の指部222aが設けられている。また、ハンド222には、指部222aを移動させるシリンダ222bが設けられている。指部222aは、パレット3の長辺に沿った方向からパレット3を挟み込むことにより、パレット3を保持するように構成されている。つまり、上方から指部222aをパレット3に近づけた後、シリンダ222bにより指部222aの間隔を狭めることにより、指部222aによりパレット3を保持するように構成されている。
【0046】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211によりノズル212をワーク1の3次元形状を有する塗布領域1aの面に対して略面直になるように移動させることによって、ノズル212とワーク1の塗布位置との位置関係を非接触状態で一定の間隔に保ちながらワーク1の3次元形状の塗布領域1aに接着剤を吹き付けることができるので、ワーク1の3次元形状を有する塗布領域1a全体に接着剤を均一に塗布することができる。本実施形態のように、塗布用ロボット211を備えた塗布装置210により接着剤を塗布することにより、刷毛により手塗りで接着剤を塗布する場合に比べて、表面の厚みの粗さ(表面の最大高低差)を約40%減らすことが実験により確認できた。なお、厚みの粗さ(表面の最大高低差)は、接着剤の表面の最も低い位置と最も高い位置との高さの差により算出される。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、多関節の塗布用ロボット211を、ワーク1の3次元形状データに基づいて、ワーク1の塗布領域1aの曲面に沿ってノズル212を曲線状に移動させるように構成する。これにより、ワーク1の塗布領域1aの3次元情報を容易に取得することができるので、多関節の塗布用ロボット211を用いて、ノズル212をワーク1の3次元形状を有する塗布領域1aの面に対して容易に略面直になるように移動させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211を、塗布領域1aの外縁部以外に接着剤を塗布する際に、ノズル212を塗布領域1aの面に対して略面直になるように移動させるとともに、塗布領域1aの外縁部に接着剤を塗布する際に、壁部1bの面に対して交差する方向から接着剤を塗布するようにノズル212を塗布領域1aの面に対して傾斜させるように構成する。これにより、塗布領域1aの外縁部の壁部1bの根本部にも接着剤を確実に塗布することができるので、壁部1b近傍も含む塗布領域1a全体に接着剤を容易に均一に塗布することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211を、ワーク1の塗布領域1aの内側から接着剤の塗布を開始するようにノズル212を移動させるように構成する。これにより、塗布領域1aの内側に塗布された接着剤が内側から外側に向かって分散するので、塗布たまりを抑制することができる。その結果、塗布領域1a全体に接着剤を容易に均一に塗布することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211を、ワーク1の塗布領域1aの内側から外側に向かって接着剤を塗布するようにノズル212を移動させるように構成する。これにより、塗布たまりを抑制しつつ、塗布領域1a全体に接着剤を容易に吹き付けることができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211を、ノズル212を移動させながら接着剤を塗布する際に、移動方向と直交する方向の接着剤の端部が互いに重なるように、ノズル212を移動させるように構成する。これにより、接着剤の密度が小さくなる吹き付け径の外側部分を重ねて接着剤を吹き付けることができるので、塗布領域1a全体に接着剤を容易に均一に塗布することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、塗布用ロボット211を、各々の塗布領域1a内において連続的に接着剤を吹き付けるようにノズル212を移動させるとともに、複数の塗布領域1a間を移動する際には、接着剤の吹き付けを停止してノズル212を移動させるように構成する。これにより、塗布領域1a全体に接着剤を均一に塗布しつつ、塗布領域1a外に接着剤が付着するのを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、位置決め部3aを含むパレット3上に位置決めされたワーク1が固定された状態で、ワーク1の塗布領域1aに接着剤を塗布するように構成する。これにより、パレット3によりワーク1が正確に位置決めされるので、多関節の塗布用ロボット211を用いて、ワーク1の塗布領域1aに接着剤を正確に塗布することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、接着剤は、水性接着剤を含む。これにより、水性接着剤では、溶剤を用いた接着剤に比べて、接着剤の伸びが大きくなるので、塗布領域1a全体に接着剤を容易に均一に塗布することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、搬送用ロボット221を、ワーク1が載置されたパレット3を搬送することにより、接着剤が塗布されたワーク1を移動させるように構成する。これにより、ワーク1が把持しにくい形状を有する場合でも、搬送用ロボット221により接着剤が塗布されたワーク1をパレット3を用いて容易に搬送することができる。
【0057】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0058】
たとえば、上記実施形態では、塗布剤として接着剤を用いる例を示したが、接着剤以外の塗布剤を塗布する構成でもよい。たとえば、プライマーなどの処理剤、インクなどの塗装剤などを塗布する構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、塗布剤として水性の接着剤を用いる例を示したが、接着剤は、水性接着剤以外の接着剤であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、塗布システム(塗布装置)が乾燥装置を備える接着剤塗布乾燥システムに用いられている構成の例を示したが、乾燥装置を用いずに塗布システム(塗布装置)のみの構成であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、2種類のワークを含む例を示したが、ワークの種類は、1種類でもよいし、3種類以上でもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ワークがパレットに載置された状態で移動される例を示したが、ワークがロボットに直接保持されることにより(ワークが搬送装置に直接載置されることにより)搬送されるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ワーク1が載置されるパレットと、ワーク2が載置されるパレットとが互いに略同一の形状を有する例を示したが、ワーク1が載置されるパレットと、ワーク2が載置されるパレットとが互いに異なる形状を有するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、パレットに設けられた固定ピンによりワークを固定する例を示したが、たとえば、粘着シートなど固定ピン以外の部材によりワークを固定してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、紫外線照射装置により、処理剤を硬化させる例を示したが、紫外線照射装置以外の装置により、処理剤を硬化させてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、ワークが靴の構成部品であるアウターソールとミッドソールである構成の例を示したが、ワークは靴の他の構成部品であってもよい。たとえば、ワークは、靴の構成部品であるアッパー(靴の甲の部分)や、ショック吸収用部材などであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ワークが靴の構成部品である構成の例を示したが、ワークは、靴以外の構成部品であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ワークはゴムやウレタン樹脂により形成されている構成の例を示したが、ワークはゴムやウレタン樹脂以外の素材により形成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、塗布用ロボットと搬送用ロボットとが、ぞれぞれ、双腕ロボットの一方および他方のロボットアームから構成されている例を示したが、塗布用ロボットと搬送用ロボットとを別個のロボットとして個々に配置してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ノズルにより塗布剤としての接着剤を空気圧により吹き付ける構成の例を示したが、シリンダにより塗布剤を供給して吹き付ける構成であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、1つの塗布領域内において連続的に塗布剤としての接着剤を吹き付けるようにノズルを移動させる構成の例を示したが、1つの領域内で複数回に分けて接着剤を吹き付けるようにノズルを移動させてもよい。また、渦を巻くようにノズルを移動させなくてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ワーク
1a 塗布領域
1b 壁部
3、3a パレット
34 固定ピン(位置決め部)
200 塗布システム
210 塗布装置
211 塗布用ロボット
212 ノズル
221 搬送用ロボット