特許第6122227号(P6122227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6122227
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】内視鏡リプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   A61B1/12
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-558819(P2016-558819)
(86)(22)【出願日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】JP2016063743
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103883(P2015-103883)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀人
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 寛昌
(72)【発明者】
【氏名】粟生 夕美子
(72)【発明者】
【氏名】小川 晶久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 智子
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−082437(JP,A)
【文献】 特開平06−043132(JP,A)
【文献】 実開昭60−074043(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G01N 27/30
G01N 27/404
G01N 27/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシング部を収容した凹状部及び前記凹状部を塞ぐ浸透膜を有する濃度計と、
内部に少なくとも前記浸透膜が露出され、前記内部に薬液が貯留された薬液タンクと、
少なくとも前記浸透膜を加温する加温部と、
を具備することを特徴とする内視鏡リプロセッサ。
【請求項2】
前記凹状部内に内部液が前記浸透膜によって封止されており、
前記センシング部は、前記内部液に少なくとも一部が浸漬された電極を具備していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡リプロセッサ。
【請求項3】
前記薬液タンクは、
前記薬液が貯留された本体部と、
前記本体部よりも容積が小さく、内部に少なくとも前記浸透膜が露出されるように前記濃度計が配置された濃度測定室と、
前記本体部から前記濃度測定室に前記薬液を導入する薬液導入部と、
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡リプロセッサ。
【請求項4】
前記薬液タンクは、前記濃度測定室から前記本体部に前記薬液を導入する薬液導出部をさらに具備しているとともに、
前記薬液導入部は、前記本体部内の前記薬液を移送する薬液移送部を具備し,
前記薬液移送部の駆動に伴い、前記本体部と前記濃度測定室との間において前記薬液導入部及び前記薬液導出部を介して前記薬液が循環されることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡リプロセッサ。
【請求項5】
前記加温部は、前記薬液導入部または前記濃度測定室において、さらに前記薬液を加温することにより前記薬液を介して前記浸透膜を加温するとともに、前記薬液を、前記薬液の使用温度よりも高く加温することを特徴とする請求項3または4に記載の内視鏡リプロセッサ。
【請求項6】
前記加温部は、ヒータであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の内視鏡リプロセッサ。
【請求項7】
前記浸透膜の乾燥度合いを検知する乾燥検知部と、
前記加温部及び前記乾燥検知部に接続された制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記乾燥検知部によって検知された前記浸透膜の乾燥度合いが基準値以上だった場合、前記加温部を駆動する制御を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の内視鏡リプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング部を収容した凹状部及び凹状部を塞ぐ浸透膜を有する濃度計を薬液タンク内に具備する内視鏡リプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡リプロセッサを用いた内視鏡の薬液処理は、薬液タンクに貯留された薬液が洗浄消毒槽に供給され、洗浄消毒槽にて内視鏡が所定時間、使用温度にて薬液に浸漬されることにより行われる。
【0003】
また、内視鏡の薬液処理を確実に行うためには薬効を低下させることがないよう薬液の薬効成分の濃度管理が重要となる。
【0004】
これは、薬液の中には、繰り返しの使用や自然劣化により薬液中の薬効成分の濃度が初期濃度から低下してしまうものがあるためである。尚、以下、薬液中の薬効成分の濃度を、薬液濃度と称す。
【0005】
よって、薬液濃度のチェックは、内視鏡の薬液処理工程毎に定期的に行われるのが一般的である。
【0006】
日本国特開2010−57792号公報には、薬液タンクに薬液の濃度計が設けられている内視鏡洗浄消毒装置が開示されている。
【0007】
具体的には、薬液に接触するとともに一定電圧を付加して、薬液との電気化学反応を引き起こし薬液濃度を測定する電極が設けられていることにより、薬液を別途採取しなくとも薬液濃度が有効濃度以上であるかを自動的に確認できる内視鏡洗浄消毒装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、日本国特開2010−57792号公報に開示された濃度計においては、電極が直接薬液に接触する構成である。このため、内視鏡を薬液処理後に薬液に混ざった有機物等の様々な成分が電極に付着してしまい、濃度測定が正確に出来なくなってしまう場合があった。
【0009】
そこで、例えば薬液タンク内において、電極を凹状部内に設けるとともに凹状部を液体が透過せず気体のみが透過する多孔を有する浸透膜にて塞ぐことにより、浸透膜にて薬液中の有機物等が電極に付着してしまうことを防ぐ濃度計の構成も周知である。
【0010】
このような浸透膜を用いる濃度計の構成においては、凹状部内に薬液とは異なる内部液が浸透膜によって封止され浸透膜に接触している。
【0011】
よって、浸透膜が薬液に接触すると、薬液と内部液との成分濃度の差を用いて薬液の薬効成分が蒸発に伴い浸透圧を利用して浸透膜を透過し内部液に混入する。
【0012】
その結果、電極は、内部液を介して薬液濃度を測定することができるようになっている。
【0013】
図14は、濃度計において、浸透膜に内部液及び薬液が浸透している状態を概略的に示す図、図15は、濃度計において、浸透膜に内部液のみが浸透している状態を概略的に示す図である。
【0014】
ここで、薬液タンク内に薬液が充填され、浸透膜10が薬液に接触している場合、浸透膜10は、図14に示すように、浸透膜10の一面側には薬液が浸透している領域10aが形成され、浸透膜10の他面側には内部液が浸透している領域10cが形成され、一面と他面の略中央には、浸透膜10が乾燥している領域10bが形成された3層構造を有している。
【0015】
よって、薬液の薬効成分は、領域10aから蒸発し、領域10bの多孔を透過した後、領域10cに浸透し、その後、内部液に混入する。
【0016】
しかしながら、例えば薬液タンク内の薬液の交換に伴い、薬液タンク内から薬液が抜き取られて放置されてしまうと、浸透膜10は、図15に示すように、内部液が浸透している領域10cと、図14に示す領域10aの大きさを含んだ乾燥している領域10bとの2層構造となってしまう。
【0017】
このことにより、薬液タンク内に薬液を注入し、浸透膜10に薬液を接触させたとしても、図15に示すように、浸透膜10には図14よりも大きな乾燥している領域10bが形成されているため、浸透膜10に対し薬液が浸透するのに時間がかかってしまう。
【0018】
よって、薬が10aに浸透するまでは薬液の薬液成分の浸透膜10の透過に時間がかかってしまい、薬液タンク内に薬液を注入した後は、薬液濃度を正確に測定するため、濃度測定時間を長く設定せざるを得ないといった問題があった。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、乾燥してしまった浸透膜に対し薬液を迅速に浸透させることができ、迅速に薬液濃度を測定できる構成を具備する内視鏡リプロセッサを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様による内視鏡リプロセッサは、センシング部を収容した凹状部及び前記凹状部を塞ぐ浸透膜を有する濃度計と、内部に少なくとも前記浸透膜が露出され、前記内部に薬液が貯留された薬液タンクと、少なくとも前記浸透膜を加温する加温部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図
図2図1の内視鏡洗浄消毒装置の濃度計の構成を、消毒液とともに示す部分断面図
図3図1の加温部が、濃度センサに設けられている変形例を、制御部、濃度測定部及び温度制御部とともに示す部分断面図
図4図3の濃度計の凹状部の外周を覆うよう断熱材が設けられた構成を示す部分断面図
図5図2の浸透膜内に加温部が設けられた変形例を示す斜視図
図6図1の加温部が、遠赤外線ランプまたは電子ビーム照射器から構成された変形例を、濃度計の一部とともに示す部分断面図
図7図6の電子ビーム照射器から照射された電子ビームが反射部材により浸透膜に集中して照射される状態を、濃度計の一部とともに示す部分断面図
図8】第2実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図
図9図8の乾燥検知部を、電極から構成した変形例を概略的に示す部分断面図
図10図8の乾燥検知部を、光検出器から構成した変形例を概略的に示す部分断面図
図11図8の乾燥検知部を、温度検出器から構成した変形例を概略的に示す部分断面図
図12】第3実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図
図13】内視鏡洗浄消毒装置の内部構成の一例を示す図
図14】濃度計において、浸透膜に内部液及び薬液が浸透している状態を概略的に示す図
図15】濃度計において、浸透膜に内部液のみが浸透している状態を概略的に示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、それぞれの部材の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
尚、以下に示す実施の形態においては、内視鏡リプロセッサは、内視鏡洗浄消毒装置を例に挙げて説明する。また、内視鏡洗浄消毒装置が具備する濃度計において測定する薬液の濃度は、消毒液の濃度、具体的には、消毒液中の過酢酸の濃度を例に挙げて説明する。
【0023】
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図、図2は、図1の内視鏡洗浄消毒装置の濃度計の構成を、消毒液とともに示す部分断面図である。
【0024】
図1に示すように、内視鏡洗浄消毒装置100は、濃度計15と、薬液タンク23と、加温部30と、制御部170、濃度測定部190と、温度制御部191とを具備している。
【0025】
薬液タンク23は、消毒液Rが貯留されるとともに後述する洗浄消毒槽104(図13参照)に消毒液Rを供給する本体部158と、本体部158よりも容積が小さく、内部に濃度計15が配置された濃度測定室20と、本体部158から濃度測定室20に消毒液Rを導入する薬液導入部21と、濃度測定室20から本体部158に消毒液Rを導入する薬液導出部22とを具備して主要部が構成されている。
【0026】
濃度計15は、図2に示すように、センシング部Sを収容した凹状部12と、凹状部12を塞ぐ浸透膜10とを有しており、本実施の形態においては、濃度測定室20の内部において少なくとも浸透膜10が露出されるように配置されている。
【0027】
浸透膜10は、上述したように、液体が透過せず気体のみが透過する多孔を有する材料から構成されている。尚、浸透膜10を構成する材料としては、例えばシリコーンが挙げられる。
【0028】
凹状部12内は空洞部であってもよいが、センシング部Sとして、検出対象の濃度を測定する電極11を用いる場合、凹状部12内には、消毒液Rとは異なる内部液Nが浸透膜10によって封止されていることが望ましい。
【0029】
内部液の組成としては特に限定されず、検出対象により適宜決定することができる。例えば、過酢酸混合液中の過酢酸濃度を検知する場合、内部液として例えばリン酸緩衝液や酢酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ホウ酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液等を用いることができる。
【0030】
消毒液Rと内部液Nとの成分濃度の差を用いて消毒液R中の過酢酸が蒸発に伴い浸透圧を利用して浸透膜10を透過し内部液Nに混入することにより、濃度測定部190は、制御部170の駆動制御により、濃度測定部190から一定電圧が付加された電極11と内部液Nとの電気化学反応を用いて内部液Nを介して過酢酸濃度を測定する。
【0031】
尚、浸透膜10は、一方、濃度測定室20内に消毒液Rが導入され、図2に示すように消毒液Rに接触している状態においては、上述した図14に示すように、領域10a、10b、10cを有する3層構造となっている。他方、濃度測定室20内に消毒液Rが導入されていない場合は、上述した図15に示すように、浸透膜10は乾燥し、領域10b、10cのみの2層構造となっている。
【0032】
図1に戻って、薬液導入部21は、本体部158と濃度測定室20とをつなぐとともに、本体部158内の消毒液Rを、濃度測定室20内に導入する管路である。
【0033】
具体的には、薬液導入部21の中途位置には、本体部158内の消毒液Rを移送する薬液移送部21pが設けられており、制御部170の駆動制御に伴う薬液移送部21pの駆動に伴い、本体部158内の消毒液Rが濃度測定室20内に供給される。尚、薬液移送部21pは、例えばポンプから構成されている。
【0034】
薬液導出部22は、濃度測定室20と本体部158とをつなぐとともに、濃度測定室20内の消毒液Rを、本体部158内に戻す管路である。
【0035】
よって、薬液移送部21pが駆動されると、消毒液Rは、本体部158と濃度測定室20との間を、薬液導入部21、薬液導出部22を介して循環する。
【0036】
過酢酸が浸透膜10を透過し、内部液Nに混入すると、浸透膜10近辺の消毒液Rに含まれる過酢酸が減ってしまうため濃度測定室20内に常に新しい消毒液Rを導入できるよう濃度の測定中は循環続けていることが望ましい。
【0037】
加温部30は、温度制御部191に電気的に接続されており、温度制御部191を介した制御部170の駆動制御により、少なくとも浸透膜10近辺の消毒液Rを加温するものである。尚、加温部30は、例えばヒータ31から構成されている。
【0038】
具体的には、本実施の形態においては、ヒータ31は、薬液導入部21の中途位置に設けられており、薬液導入部21を加温し、薬液導入部21を通過する消毒液Rを加温する。尚、ヒータ31は、濃度測定室20に設けられていても構わない。
【0039】
ヒータ31は、消毒液Rを、消毒液Rの実際の使用温度よりも高く加温する。具体的には、例えば消毒液Rを、内視鏡の消毒の際には20℃に加温する場合は、20℃を超える温度に加温することが望ましい。
【0040】
消毒液Rが加温されると、消毒液R中の過酢酸の蒸発量が多くなるため、浸透膜10に対して過酢酸が通常よりも迅速に浸透する。
【0041】
ここでいう使用温度は、薬液Rの組成により異なり、例えば、過酢酸濃度が0.2%であるアセサイド(登録商標)を薬液Rとして用いる場合、使用温度は20℃〜25℃であることが好ましい。
【0042】
ヒータ31を濃度測定室20内に設けることで、ヒータ31による熱劣化の影響を本体部158内の消毒液に及ぼさないという利点がある。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、本体部158よりも容積の小さい濃度測定室20を、本体部158とは別途に設け、濃度測定室20に濃度計15を設ける。さらに、濃度測定室20内に供給される少量の消毒液Rのみをヒータ31にて加温する構成とすることにより、濃度測定室20内における浸透膜10に対する消毒液Rの迅速な浸透を促すとともに、消毒液Rの劣化を最小限に抑える構成となっている。
【0044】
尚、内視鏡の消毒に用いる消毒液Rの劣化を防ぐため、濃度計15による濃度検出に用いられた消毒液Rは、薬液導出部22を介して本体部158に戻さず廃棄しても構わないし、薬液導出部22に設けられた既知のペルチェ素子やヒートシンク等により冷却して本体部158に戻しても構わない。
【0045】
このように、本実施の形態においては、濃度測定室20に濃度計15が設けられているとともに、濃度測定室20または薬液導入部21に、消毒液Rを加温することにより濃度計15の浸透膜10を加温する加温部30が設けられていると示した。
【0046】
このことによれば、上述した図15に示すように、浸透膜10が乾燥し、領域10b、10cの2層から構成され、図14よりも乾燥した領域10bが大きく形成されてしまったとしても、加温部30によって濃度測定室20内に供給される消毒液Rを加温することにより、浸透膜10に対して消毒液Rを迅速に浸透させることができる。このことから、浸透膜10に対する消毒液R中の蒸発した過酢酸の透過速度を、従来よりも向上させることができる。
【0047】
よって、本体部158に消毒液Rを注入した後であっても、消毒液Rの濃度測定を正確に行うことができる。
【0048】
また、濃度計15を用いた消毒液Rの濃度測定を、本体部158とは異なる濃度測定室20にて行うことができることから、内視鏡洗浄消毒装置100内において、濃度測定室20を自由な位置に配置できる。このため、例えば内視鏡洗浄消毒装置100の上部に濃度測定室20を配置すれば、濃度計15の交換作業が行いやすくなるばかりか、上述したように、加温に伴う消毒液Rの劣化を最小限に抑えることができる。
【0049】
以上から、乾燥してしまった浸透膜10に対し消毒液Rを迅速に浸透させることができ、正確に薬液濃度を測定できる構成を具備する内視鏡洗浄消毒装置100を提供することができる。
【0050】
尚、以下、変形例を、図3図5を用いて示す。図3は、図1の加温部が、濃度センサに設けられている変形例を、制御部、濃度測定部及び温度制御部とともに示す部分断面図、図4は、図3の濃度計の凹状部の外周を覆うよう断熱材が設けられた構成を示す部分断面図、図5は、図2の浸透膜内に加温部が設けられた変形例を示す斜視図である。
【0051】
上述した本実施の形態においては、加温部30は、ヒータ31から構成されており、濃度測定室20または薬液導入部21に設けられ、消毒液Rを加温することにより浸透膜10を加温すると示した。
【0052】
これに限らず、消毒液Rを加温することに伴う消毒液Rの劣化を防ぐため、図2に示すように、浸透膜10に消毒液Rが浸漬されている状態において、浸透膜10を直接加温しても構わない。
【0053】
具体的には、図3に示すように、加温部30は、凹状部12の外周において、少なくとも浸透膜10にも接触するよう巻回された電熱線32を具備するヒータから構成されていても構わない。
【0054】
尚、電熱線32も、ヒータ31と同様に、温度制御部191に電気的に接続されており、制御部170によって温度制御部191が駆動制御されることにより、少なくとも浸透膜10を直接加温する。
【0055】
尚、図4に示すように、凹状部12を覆うように断熱材39が設けられていても良い。断熱材39は、電熱線32から浸透膜10に付与された熱が逃げてしまうのを防ぐ機能を有しているため、断熱材39を用いれば、電熱線32から効率良く浸透膜10を加温することができる。
【0056】
また、図5に示すように、電熱線32は、浸透膜10内に、例えば格子状に設けられていても構わない。このことによっても、電熱線32から効率良く浸透膜10を加温することができる。
【0057】
また、以下、図6図7を用いて、電熱線32以外の浸透膜10を直接加温する加温部30の構成を示す。
【0058】
図6は、図1の加温部が、遠赤外線ランプまたは電子ビーム照射器から構成された変形例を、濃度計の一部とともに示す部分断面図、図7は、図6の電子ビーム照射器から照射された電子ビームが反射部材により浸透膜に集中して照射される状態を、濃度計の一部とともに示す部分断面図である。
【0059】
図6に示すように、加温部30は、浸透膜10に遠赤外線Eを照射して浸透膜10を直接加温する遠赤外線ランプ33や、浸透膜10に電子ビームBを照射して浸透膜10を直接加温する電子ビーム照射器34から構成されていても構わない。
【0060】
ここで、図6に示す構成では、浸透膜10以外も加温してしまう可能性があるが、図7に示すように、電子ビーム照射器34から照射された電子ビームBを、パラボラ形状を有するとともに電子ビームBまたは遠赤外線Eを反射する素材から構成された反射部材35を用いて浸透膜10に集中的に照射すれば、浸透膜10のみを効率良く加温することができる。
【0061】
尚、図7に示す構成は、浸透膜10に遠赤外線ランプ33から遠赤外線Eを照射する構成に用いても良い。
【0062】
以上から、図3図7に示すように、加温部30が直接浸透膜10を加温する構成を用いれば、上述した本実施の形態と同様に、浸透膜10に対して消毒液Rを迅速に浸透させることができる他、加温に伴う消毒液Rの劣化を最小限に抑えることができる。
【0063】
さらには、直接、浸透膜10を加温することができるため、消毒液Rの劣化を低減できるため、濃度計15を、本体部158に設けることも可能となる。尚、その他の効果は、上述した本実施の形態と同じである。
【0064】
(第2実施の形態)
図8は、本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図である。
【0065】
この第2実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成は、図1図2に示した第1実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成と比して、浸透膜の乾燥度合いを検知し、乾燥している場合のみ消毒液を加温する点が異なる。
【0066】
よって、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0067】
以下、図8を用いて、図15に示すように、浸透膜10が目的の湿度に達していない状態のときのみ、濃度測定室20に供給される消毒液Rを加温部30によって加温する構成について説明する。
【0068】
図8に示すように、本実施の形態においては、濃度測定室20には、浸透膜10の乾燥度合いを検知するとともに、制御部170に電気的に接続された乾燥検知部60が設けられている。
【0069】
尚、本実施の形態においては、乾燥検知部60は、浸透膜10に設けられた湿度計59を例に挙げて説明する。
【0070】
制御部170は、湿度計59によって検知された浸透膜10の乾燥度合いが基準値以上だった場合、即ち、浸透膜10が乾燥していると検知された場合は、温度制御部191を介して加温部30を駆動する制御を行う。
【0071】
尚、乾燥度合いの基準値としては、例えば浸透膜10が数分間、消毒液Rに接触していなかった場合が挙げられる。尚、その他の構成は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0072】
このような構成によれば、湿度計59が浸透膜10の乾燥度合いが基準値未満であると検知した場合、即ち、上述した図14に示したように、浸透膜10が消毒液Rに接触している状態においては、消毒液R、即ち、浸透膜10を加温する必要がないことから、制御部170は、加温部30の駆動制御を行わない。
【0073】
次に、湿度計59が浸透膜10の乾燥度合いが基準値以上であると検知した場合、即ち、上述した図15に示したように、浸透膜10が乾燥している状態においては、上述した第1実施の形態と同様に、浸透膜10に対して迅速に消毒液Rを浸透させるため、制御部170は、温度制御部191を介して、消毒液Rを加温するよう加温部30を駆動制御する。
【0074】
その結果、消毒液Rは加温され、濃度測定室20内において消毒液Rに浸漬された浸透膜10も加温されることから、浸透膜10に対して消毒液Rが迅速に浸透される。
【0075】
以上から、上述した第1実施の形態と同様の効果を得ることができる他、湿度計59により、浸透膜10が乾燥していると検知された場合のみ加温部30を用いて浸透膜10を加温することから、消毒液Rの熱劣化を遅延させることができる。
【0076】
尚、本実施の形態においても、図3図7に示したように、加温部30は、直接、浸透膜10を加温しても構わない。
【0077】
また、上述した本実施の形態においては、乾燥検知部60は、湿度計59を例に挙げて示したが、この他、図9図11に示す構成が考えられる。
【0078】
図9は、図8の乾燥検知部を、電極から構成した変形例を概略的に示す部分断面図である。
【0079】
図9に示すように、乾燥検知部60は、制御部170に電気的に接続されるとともに、浸透膜10に接触し、浸透膜10に通電する電極61から構成されていても構わない。
【0080】
このような構成によれば、電極61からの通電により浸透膜10の抵抗を測定すれば、浸透膜10の乾燥度合いを検知することができる。
【0081】
図10は、図8の乾燥検知部を、光検出器から構成した変形例を概略的に示す部分断面図である。
【0082】
図10に示すように、乾燥検知部60は、制御部170に電気的に接続された光検知器68から構成されていても構わない。
【0083】
光検知器68は、浸透膜10に光を照射する発光部65と、浸透膜10からの反射光を受光する受光部67と、発光部65と受光部67とを遮蔽する遮蔽板66とか構成されている。
【0084】
このような構成によれば、受光部67によって検出された光の反射率から、浸透膜10の乾燥度合いを検知することができる。
【0085】
図11は、図8の乾燥検知部を、温度検出器から構成した変形例を概略的に示す部分断面図である。
【0086】
図11に示すように、乾燥検知部60は、制御部170に電気的に接続された温度検出器69から構成されていても構わない。
【0087】
温度検出器69は、浸透膜10に赤外線を照射するとともに、浸透膜10から反射された赤外光を検出する。
【0088】
このような構成によれば、浸透膜10が濡れている場合は、消毒液Rの蒸発により、温度が低く検出され、浸透膜10が乾いている場合は、温度が高く検出されることから、浸透膜10の乾燥度合いを検知することができる。
【0089】
尚、その他の乾燥検知部60の構成としては、濃度測定室20に水位計を設け、濃度測定室20内の水位から浸透膜10が消毒液Rに接触しているか否かを判定する構成や、濃度測定室20内の水位と本体部158内の水位を同水位とし、本体部158に設けられた水位計から浸透膜10が消毒液Rに接触しているか否かを判定する構成等が考えられる。
【0090】
また、他の方法としては水位が下がってからの経過時間によって判定する方法も考えられる。
【0091】
次に、上述した第1、第2実施の形態における内視鏡洗浄消毒装置100の構成の一例を、図13を用いて説明する。
【0092】
図13は、内視鏡洗浄消毒装置の内部構成の一例を示す図である。
【0093】
図13に示すように、内視鏡洗浄消毒装置100は、使用済みの内視鏡を洗浄、消毒するための装置であり、装置本体102と、その上部に、例えば図示しない蝶番を介して開閉自在に接続されたトップカバー103とにより、主要部が構成されている。
【0094】
また、内視鏡洗浄消毒装置100において、水道栓105がチューブ131aを介して接続された給水ホース接続口131は、給水管路109の一端と連通している。この給水管路109は、他端が三方電磁弁110に接続されており、管路の中途において、給水ホース接続口131側から順に、給水電磁弁115と、逆止弁116と、給水フィルタ117とが介装されている。
【0095】
尚、給水フィルタ117は、定期的に交換できるように、カートリッジタイプの濾過フィルタとして構成されている。給水フィルタ117は、通過する水道水の異物、雑菌等を除去する。
【0096】
三方電磁弁110は、流液管路118の一端と接続されており、給水循環ノズル124に対する給水管路109と流液管路118との連通を内部の弁によって切り替える。つまり、給水循環ノズル124は、三方電磁弁110の切り替え動作により、給水管路109と流液管路118とのいずれか一方と連通する。また、流液管路118の他端側には、液体のみを移送することができる、液体の移送能力に優れた非自吸式のポンプである流液ポンプ119が介装されている。
【0097】
洗浄消毒槽104に配設された循環口156は、循環管路120の一端に接続されている。循環管路120の他端は、流液管路118の他端及びチャンネル管路121の一端と連通するように、2つに分岐している。チャンネル管路121の他端は、各コネクタ133に連通している。
【0098】
チャンネル管路121は、管路の中途において、一端側から順に、チャンネルポンプ126、チャンネルブロック127、チャンネル電磁弁128がそれぞれ介装されている。チャンネルブロック127とチャンネル電磁弁128の間におけるチャンネル管路121には、洗浄ケース106と一端が接続しているケース用管路130の他端が接続されている。このケース用管路130には、リリーフ弁136が介装されている。尚、チャンネルポンプ126は、液体と気体とをどちらも、非自吸式ポンプよりも高圧で移送することができる自吸式のポンプから構成されている。
【0099】
洗剤ノズル122は、洗浄剤管路139の一端と接続されており、洗浄剤管路139の他端は、洗剤タンク111aに接続されている。この洗浄剤管路139には、その中途に、洗浄剤を洗剤タンク111aから洗浄消毒槽104まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプから構成された洗剤用ポンプ140が介装されている。
【0100】
アルコールタンク111bは、アルコール管路141の一端と接続されており、このアルコール管路141はチャンネル管路121と所定に連通するように、チャンネルブロック127に接続されている。
【0101】
このアルコール管路141には、アルコールをアルコールタンク111bから洗浄消毒槽104まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプから構成されたアルコール供給ポンプ142と、電磁弁143とが介装されている。
【0102】
また、チャンネルブロック127には、気体を移送することができる自吸式ポンプから構成されたエアポンプ145からの空気を供給するためのエア管路144の一端が所定にチャンネル管路121と連通するように接続されている。このエア管路144は、他端がエアポンプ145に接続されており、エア管路144の中途位置には、逆止弁147と、定期的に交換されるエアフィルタ146とが介装されている。
洗浄消毒槽104に設けられた排出口155内には、弁の切り替え動作により、外部へ洗浄液等を排出したり、薬液タンク23の本体部158に消毒液を回収したりするための開閉自在な図示しない弁体が設けられている。
【0103】
排出口155は、外部排液口へ接続される不図示の排水ホースと一端が接続されて連通する排液管路159の他端と接続されており、この排液管路159には、非自吸式のポンプから構成された排水ポンプ160が介装されている。また、排出口155は、薬液回収管路161の一端と接続され、この薬液回収管路161の他端は本体部158に接続されている。
【0104】
本体部158は、薬液ボトル112a、112bから消毒液が供給されるように、薬液供給管路162の一端とも接続されている。
【0105】
また、本体部158内には、一端に吸引フィルタ163が設けられた薬液管路164の前記一端部分が所定に収容されている。この薬液管路164は、他端が消毒液ノズル123に接続されており、中途位置に、消毒液を本体部158から洗浄消毒槽104まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプ165が介装されている。
【0106】
さらに、本体部158には、上述したように、薬液導入部21、薬液導出部22を介して濃度測定室20が接続されている。
【0107】
尚、洗浄消毒槽104の底面の下部には、例えば2つの振動部152と、ヒータ153とが配設されている。また、ヒータ153の温度調節のため、洗浄消毒槽104の底面の略中央には、温度検知センサ153aが設けられている。
【0108】
また、内視鏡洗浄消毒装置100の内部には、外部のACコンセントから電力が供給される電源171と、この電源171と電気的に接続される制御部170が設けられている。
【0109】
(第3実施の形態)
図12は、内部液Nの温度を測定する温度計70および温度測定部195を含む点、および制御部170が内部液Nの温度をもとに加温部30を制御する点が第1、第2実施の形態と異なる。
【0110】
図12では内部液Nの温度を加温する加温部30を図示しているが、内部液Nを冷却する冷却部を備えていてもよい。冷却部として、例えば、ペルチェ素子、空冷管、または水冷管が挙げられる。
【0111】
内部液Nの温度が所定範囲となるように加温部30、または加温部と冷却部とで調整することにより濃度測定の精度を安定させることができる。
【0112】
内部液Nの温度制御は、浸透膜10が乾燥状態にある時に限定されず、浸透膜10が浸潤状態にある時に行うこともできる。
【0113】
図12では、加温部12として凹状部の外周に配置された電熱線30を例に挙げたが、これに限定されず、例えば実施の形態1および変形例に示す構造を採用することもできる。
【0114】
また、内部液に加温部が浸漬している構造、または凹状部に加温部が埋め込まれている構造を採用することもできる。
【0115】
尚、図14において上述した内視鏡洗浄消毒装置の構成は、あくまでも一例であり、この限りではない。また、内視鏡リプロセッサは、内視鏡洗浄消毒装置に限定されず、薬液を用いた滅菌装置等にも適用可能である。
【0116】
さらに、消毒液以外の成分の検出にも適用可能であり、薬液中の過酢酸濃度の検出に限定されず、薬液中の酸素濃度検出や、PH値の検出等にも適用可能である。
【0117】
また、上述した第1、第2実施の形態においては、濃度計15は、凹状部12内に浸透膜10によって内部液Nが封止されているとともに、凹状部12内に設けられるセンシング部Sは、電極11を例に挙げて示した。これに限らず、凹状部12内に内部液Nを設けず、センシング部Sは、例えばガス検知センサを用いても、第1、第2実施の形態は適用可能である。
【0118】
センシング部としてガス検知センサを用いる場合、凹状部12内には内部液Nの変わりに測定対象成分が含まれていない空気や、比較的安定である窒素や、希ガスが充填されていることが望ましい。
【0119】

本出願は、2015年5月21日に日本国に出願された特願2015−103883号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。
【要約】
センシング部を収容した凹状部及び凹状部を塞ぐ浸透膜10を有する濃度計15と、内部に少なくとも浸透膜10が露出され、内部に消毒液Rが貯留された薬液タンク23と、少なくとも浸透膜10を加温する加温部30と、を具備する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15