特許第6122243号(P6122243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122243リターゲティングされる毒素結合体の設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122243
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】リターゲティングされる毒素結合体の設計
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170417BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170417BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20170417BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20170417BHJP
   C12N 9/64 20060101ALI20170417BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20170417BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20170417BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170417BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   A61K37/02
   A61K45/00
   A61K48/00
   A61P3/04
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61P37/08
   A61P43/00 111
   C07K14/47
   C07K14/705
   C12N9/64 Z
   C12Q1/06
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
   G01N33/53 D
【請求項の数】2
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2012-26892(P2012-26892)
(22)【出願日】2012年2月10日
(62)【分割の表示】特願2006-525899(P2006-525899)の分割
【原出願日】2004年9月13日
(65)【公開番号】特開2012-139222(P2012-139222A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2012年3月9日
【審判番号】不服2015-17642(P2015-17642/J1)
【審判請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】0321344.4
(32)【優先日】2003年9月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509039046
【氏名又は名称】イプセン・バイオイノベーション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOINNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,ケイス
(72)【発明者】
【氏名】チャドック,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,チャールズ
【合議体】
【審判長】 田村 明照
【審判官】 三原 健治
【審判官】 高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−500867(JP,A)
【文献】 特表2003−509476(JP,A)
【文献】 特表2002−523377(JP,A)
【文献】 特表平11−504006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0071736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性毒素結合体を含む組成物であって、当該非細胞傷害性毒素結合体が、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、これは、標的細胞上の結合部位に該非細胞傷害性毒素結合体を結合させ、該結合部位は、エンドサイトーシスを受けて該標的細胞内のエンドソームに取り込まれ、該TMは、該標的細胞において細胞外への融合を増大するアゴニストである、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントであって、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、該エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該標的細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせる、ドメインを含む組成物、
ここで、前記アゴニストは、該標的細胞がヒト結腸上皮細胞またはヒト気管支上皮細胞の場合にはIL13であり、該標的細胞がヒト単核細胞の場合にはIL4であり、該標的細胞がヒト肥満細胞の場合には肥満細胞顆粒減少ペプチドであり、
前記非細胞傷害性プロテアーゼは、クロストリジウム神経毒素のL鎖またはナイセリアIgAプロテアーゼであり、
前記トランスロケーションドメインは、クロストリジウム神経毒素のHNドメインであり、かつ、
前記非細胞傷害性毒素結合体は、前記標的細胞に結合することにより該標的細胞における細胞外への融合の一時的な刺激を引き起こし、その後に、前記標的細胞において細胞外への融合を阻害または低減する。
【請求項2】
細胞傷害性毒素結合体を生産する方法であって、該方法が、
(A)標的細胞において細胞外への融合を増大するアゴニストを提供する工程;ならびに
(B)剤を調製する工程であって、該剤が、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、これは、該標的細胞上の結合部位に該剤を結合させ、該結合部位は、エンドサイトーシスを受けて該標的細胞内のエンドソームに取り込まれ、該TMは、工程(A)に記載されたアゴニストである、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントであって、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、該エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該標的細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせる、ドメイン
を含む剤である、工程
を含む、方法、
ここで、前記アゴニストは、該標的細胞がヒト結腸上皮細胞またはヒト気管支上皮細胞の場合にはIL13であり、該標的細胞がヒト単核細胞の場合にはIL4であり、該標的細胞がヒト肥満細胞の場合には肥満細胞顆粒減少ペプチドであり、
前記非細胞傷害性プロテアーゼは、クロストリジウム神経毒素のL鎖またはナイセリアIgAプロテアーゼであり、
前記トランスロケーションドメインは、クロストリジウム神経毒素のHNドメインであり、かつ、
前記非細胞傷害性毒素結合体は、前記標的細胞に結合することにより該標的細胞における細胞外への融合の一時的な刺激を引き起こし、その後に、前記標的細胞において細胞外への融合を阻害または低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的状態または医学的疾患の治療に用いられるリターゲティングされる毒素結合体を設計するための方法、および医学的状態または医学的疾患の治療のための医薬品の製造における該結合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毒素は、標的細胞に対して有する効果のタイプに従って2つの群に分けられ得る。より詳細には、第一の毒素群は、それらの天然の標的細胞を殺傷し、このため、細胞傷害性毒素分子として知られる。この毒素群は、とりわけ、植物毒素(例えば、リシンおよびアブリン)および細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素A)によって例示される。細胞傷害性毒素は、細胞性障害および状態(例えば、癌)の治療のために「魔法の弾丸」(例えば、免疫結合体;これは、細胞傷害性毒素構成部分と標的細胞上の特異的マーカーに結合する抗体とを含む)の設計に多くの関心をひきつけている。細胞傷害性毒素は、代表的には、タンパク質合成の細胞プロセスを阻害することにより、それらの標的細胞を殺傷する。
【0003】
対して、第二の毒素群は、非細胞傷害性毒素として知られ、(これらの名称が証明するとおり)それらの天然の標的細胞を殺傷しない。非細胞傷害性毒素は、それらの細胞傷害性のものほどには商業上の関心をひきつけず、そしてタンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することにより、標的細胞に対してそれらの効果を発揮する。それらの細胞傷害性のものと同様に、非細胞傷害性毒素は、種々の供給源(例えば、植物および細菌)から生成される。
【0004】
ここで、細菌非細胞傷害性毒素についてより詳細に説明する。
【0005】
クロストリジウム神経毒素は、代表的には150kDaの程度の分子量を有するタンパク質である。それらは、種々の細菌種、特に、クロストリジウム属の細菌、最も重要にはC. tetaniおよびC. botulinumの数株、C. butyricum、およびC. argentinenseによって生成される。現在、クロストリジウム神経毒素の8つの異なるクラスが存在し(すなわち、破傷風菌毒素およびボツリヌス菌神経毒素(その血清型A、B、C1、D、E、FおよびG))、そしてそれらは全て、類似の構造および作用様式を共有する。
【0006】
また、非細胞傷害性毒素は、他の細菌(例えば、ナイセリア属由来、最も重要には、N. Gonorrhoeae種由来)によっても生成される。例えば、Neisseria sp.は、非細胞傷害性毒素IgAプロテアーゼを生成する(WO99/58571を参照のこと)。
【0007】
クロストリジウム神経毒素は、非細胞傷害性毒素分子の主要な群を代表し、そして単一ポリペプチドとして宿主細菌によって合成され、この単一ポリペプチドは、タンパク質分解切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに接続された2つのポリペプチド鎖を形成する。これらの2つの鎖は、重鎖(H鎖)(これは、約100kDaの分子量を有する)および軽鎖(L鎖)(これは、約50kDaの分子量を有する)と称される。
【0008】
H鎖は、2つの異なる機能を有し、これらの機能は、すなわち、結合(すなわち、標的細胞に対して)およびトランスロケーション(すなわち、エンドソーム膜を横断)である。H鎖のカルボキシ末端部(HC)は、細胞表面レセプターへの毒素の高い親和性の神経特異的な結合に関与し、一方、H鎖のアミノ末端部(HN)は、神経細胞への毒素のトランスロケーションが中心である。これらの2つの機能は、広く研究されて特徴付けられており、そしてH鎖内の異なる部分にマッピングされている[例えば、Kurazonoら, (1992) J. Biol. Chem., 267, 21, 14721-14729頁;Poulainら, (1989) Eur. J. Biochem., 185, 197-203頁;Zhouら, (1995) Biochemistry, 34, 15175-15181頁;Blausteinら, (1987) FEBS Letts., 226, No. 1, 115-120頁を参照のこと]。
【0009】
L鎖は、プロテアーゼ機能(亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性)を有し、そして細胞外へのプロセスに関与する小胞および/または原形質膜会合タンパク質に対する高い基質特異性を示す。異なるクロストリジウム種または血清型に由来するL鎖は、3つの基質タンパク質(すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP-25)の1つにおける異なるが特異的なペプチド結合を加水分解し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。
【0010】
具体的な例を挙げると、ボツリヌス菌神経毒素血清型Aについて、上記機能は、HC部ではアミノ酸残基872-1296、HN部ではアミノ酸残基449-871、およびL鎖ではアミノ酸残基1-448にマッピングされている[例えば、Lacy, D. B.およびStevens, R. C., (1999). Sequence homology and structural analysis of the clostridial neurotoxins. J. Mol.Biol., 291, 1091-1104を参照のこと]。
【0011】
上記のドメインの3つの全て(すなわち、HC、HN、およびL)が天然の神経毒素のインビボ活性のために必要であり、この神経毒素は、罹患個体において持続性の筋麻痺を引き起こし得る。他の非細胞傷害性細菌毒素のインビボ活性についても、対応する結合、トランスロケーション、およびプロテアーゼ機能が必要である。
【0012】
毒素分子が、その毒素の天然の標的細胞ではない細胞にリターゲティングされ得ることが十分に文書化されている。そのようにリターゲティングされたとき、毒素は、所望の標的細胞に結合し得、そしてそれに続くサイトゾルへのトランスロケーション後、標的細胞にその効果を発揮し得る。
【0013】
例えば、非細胞傷害性毒素分子において、クロストリジウム神経毒素が、ターゲティング部分(Targeting Moiety:TM)(クロストリジウム神経毒素の天然TMではない)の取り込みによりリターゲティングされ得ることが十分に文書化されている。記載の化学結合方法および組換え方法は、慣用であるとみなされる。
【0014】
より詳細には、本出願人の名義の以下の特許刊行物が、改変細菌結合体の調製を記載している。
【0015】
WO94/21300は、改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載しており、この分子は、所望の標的細胞のサイトゾルにトランスロケートされると、標的細胞の細胞表面に存在する膜貫通タンパク質(IMP)密度を制御し得る。このように、この改変神経毒素分子は、標的細胞の細胞活性(例えば、グルコース取り込み)を調節し得る。
【0016】
WO96/33273は、末梢感覚求心をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素分子は、末梢感覚求心のサイトゾルに送達されると、鎮痛効果を示し得る。
【0017】
WO98/07864は、単鎖改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この単鎖分子は、逐次的な結合、トランスロケーション、およびL鎖依存性エンドペプチダーゼ活性の点で実質的に不活性である。この単鎖分子は、タンパク質分解切断反応によって活性な二本鎖分子に活性化され得る。
【0018】
WO99/17806は、一次感覚求心をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、鎮痛効果を示し得る。
【0019】
WO00/10598は、粘液過分泌細胞(または該粘液過分泌細胞を調節する神経細胞)をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、該細胞からの過分泌を阻害し得る。
【0020】
WO01/21213は、広範な異なるタイプの非神経標的細胞をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変分子は、そのようにターゲティングされサイトゾルに送達されたとき、標的細胞からの分泌を妨害し得る。
【0021】
リターゲティングされる毒素分子の技術分野におけるさらなる刊行物としては、以下が挙げられる:WO00/62814;WO00/04926;US5,773,586;WO93/15766;WO00/61192;WO99/58571;およびUS2003/0059912。
【0022】
このように、上記刊行物から、所望の標的細胞上に存在する対応するレセプターを有するTMを選択することにより、その標的細胞に毒素をリターゲティングする基本概念が、十分に文書化されていることが理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、所望の標的細胞上に存在する全てのレセプターが、インターナリゼーションおよび続くエンドソーム形成を受けやすいわけではない。さらに、目的の標的細胞上に存在する種々のレセプターは、種々のTMに対して種々の結合親和性を示す。このため、特定のTMを含むリターゲティング毒素結合体は、所望の標的細胞に対して低い結合親和性を有することがあり、これは望ましくない。
【0024】
したがって、上述した問題点の1つ以上に取り組んだ改変毒素結合体を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、治療目的の細胞に毒素をリターゲティングする「アゴニスト」分子の同定および使用に関する。特に、本発明は、毒素結合体を設計するための方法を記載し、そして細胞プロセスを阻害または低減する、該結合体の治療への応用を記載する。よりさらに特定すると、本発明は、エキソサイトーシスを阻害し得る非細胞傷害性毒素(例えば、クロストリジウム神経毒素)に基づいて毒素結合体を設計するための方法を記載し、そしてエキソサイトーシス(例えば、分泌、または、細胞の原形質膜へのタンパク質(例えば、レセプター、トランスポーター、および膜チャネル)の送達)を阻害または低減する該結合体の治療への応用を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】E. coliからのLHN/Cの発現および精製のSDS-PAGE分析を示す。
図2】E. coliからのrecLHN/Bの発現および精製のSDS-PAGE分析を示す。
図3】本発明の好ましい方法を5段階フローダイアグラム形式で示す。
図4】MBP-タグ化LHN/C-EGFの初期捕獲を図示する。レーン1〜10は、順に以下の通りである:Mark12マーカー(Invitrogen);ホモジネート;ペレット(不溶性);ロード(可溶性);アミロースカラム素通り画分;マルトース溶出画分A5;マルトース溶出画分A6;マルトース溶出画分A7;マルトース溶出画分A9;マルトース溶出画分A12。
図5】LHN/Cを活性化する第Xa因子との融合タンパク質の処理を図示するSDS-PAGEゲルを示す。レーンは、左から右に以下の通りである:Mark12分子マーカー(Invitrogen);LHN/C-EGF融合体(第Xa因子なし);LHN/C-EGF融合体(第Xa因子処理後);LHN/C-EGF融合体(DTT存在下で第Xa因子処理後)。
図6】DTT不在および存在下での最終のLHN/C-EGF融合産物を図示するSDS-PAGEゲルを示す。左から右に、レーンは以下の通りである:Mark12分子マーカー(Invitrogen);5μl融合体;5μl融合体+DTT;10μl融合体;10μl融合体+DTT;20μl融合体;20μl融合体+DTT。
図7】実施例26に記載のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を図示する。
図8】実施例27に記載のようにEGFでNCI-H292細胞を攻撃後の3日間にわたる培地への該細胞からのムチン放出を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
細胞外への融合のプロセスは、細胞小胞の移動を含み、これは、原形質膜に移動して、原形質膜と融合する。したがって、本発明の剤は、好ましくは、標的細胞のサイトゾルから該標的細胞の細胞膜への小胞の送達および/または融合を阻害し得る。
【0028】
細胞外への融合は、2つの主要な標的細胞表現型に導き得る。これらは両方とも、本発明に取り込まれる。第一の表現型は分泌であり、そして第二の型は、膜タンパク質濃度/密度である。
【0029】
膜タンパク質は、細胞膜に送達された場合の膜タンパク質の機能に依存して、便宜上、3つの基本型に分類され得る。これらの3つの基本型は以下の通りである:レセプター;トランスポーター;および膜チャネル。本発明においては、用語「レセプター」は、関連用語「アクセプター」を包含する。
【0030】
生物学的プロセス(特に、エキソサイトーシス)を通常刺激(例えば、細胞分泌の増大または膜タンパク質発現におけるアップレギュレーション)するアゴニストの使用は、リターゲティングされる毒素の技術分野において刺激的な開発である。さらに、アゴニストが通常刺激する生物学的プロセスの低減または阻害を達成するために、そのアゴニストが治療組成物において用いられ得ることは、特に驚くべきことである。
【0031】
第一の局面によれば、本発明は、標的細胞における細胞外への融合の阻害または低減のために非細胞傷害性毒素結合体を設計(または調製)する方法を提供し、この方法は、
(A)該標的細胞において細胞外への融合を増大するアゴニストを同定する工程;ならびに
(B)剤を調製する工程を含み、該剤は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、これは、該標的細胞上の結合部位に該剤を結合させ、該結合部位は、エンドサイトーシスを受けて該標的細胞内のエンドソームに取り込まれ、ここで該TMは、工程(A)によって同定可能であるアゴニストである、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントであって、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、該エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該標的細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせる、ドメインを含む。
【0032】
細胞外への融合は、細胞内分子が標的細胞のサイトゾルからそれらの原形質膜(すなわち細胞膜)に輸送されるプロセスである。その後、細胞内分子は、原形質膜の外表面上に提示されるようになるか、または細胞外環境中に分泌され得る。
【0033】
健常個体では、細胞外への融合の速度は綿密に調節され、そして細胞のサイトゾルと原形質膜との間の分子の輸送の制御を可能にする。例えば、細胞外への周期の調節は、細胞表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャネルの密度の制御を可能にし、そして/または細胞のサイトゾルからの細胞内構成部分(例えば、ホルモンまたは神経伝達因子)の分泌速度の制御を可能にする。
【0034】
しかし、非健常個体では、細胞外への融合の調節は変更され得る。例えば、細胞外への融合は、過分泌の状態に入る罹患細胞を引き起こし得る。あるいは、細胞外への融合は、細胞表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャネルの増大した濃度の提示を生じ得、これは、問題の細胞を望ましくない外部刺激に曝し得る。このように、細胞外への融合のプロセスは、疾患の進行および/または重篤度に寄与し得、したがって、治療介入の標的を提供する。このような細胞外への融合事象の例としては、粘液の過分泌(これは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の進行および/または重篤度に寄与し得る);および補体レセプターのアップレギュレーション(これは、炎症の進行および/または重篤度に寄与し得る)が挙げられる。
【0035】
また、細胞の細胞外への融合のそれ以外に正常な速度が、消耗性被験体(例えば、免疫無防備状態被験体)における疾患の進行および重篤度に寄与し得ることが理解されるべきである。したがって、本発明に従って細胞外への融合をターゲティングすることにより、このような被験体における治療を提供することも可能である。
【0036】
本発明のアゴニスト含有剤は、毒素結合体の別個のサブセットを表す。より詳細には、本発明の剤は、単純にそれらが目的の標的細胞上に対応するレセプターを有するということよりむしろ、特異的なアゴニスト特性に基づいて選択されているTMを含む。
【0037】
本発明においては、用語「アゴニスト」は、標的細胞において細胞外への融合を増大し得る任意の分子を包含する。
【0038】
好ましくは、「アゴニスト」は、標的細胞を以下の状態の1つ以上に誘導し得るペプチドまたはタンパク質分子である:分泌;または細胞膜タンパク質(例えば、レセプターまたはトランスポーターまたは膜チャネル)の濃度増大。
【0039】
したがって、アゴニストは、文献検討によって、および/または、細胞分泌、または標的細胞における膜タンパク質(例えば、レセプター、トランスポーター、または膜チャネル)の濃度/密度を直接または間接的に測定し得る任意の方法によって、同定され得る。これに関して、アゴニストを「同定」する工程は、好ましくは、アゴニスト分子が標的細胞において細胞外への融合を増大させることの確認を含む。
【0040】
より詳細には、分泌は、細胞外環境に分泌された適切な分子の検出により容易に測定可能である。これは、以下を含む種々の従来の検出方法によって実施され得る:クロマトグラフィー;質量分析;および蛍光。分泌された分子を定量評価するための好ましい方法は、以下を含み得る:ELISA/EIA/RIA技術;または放射性トレーサーアッセイ。
【0041】
あるいは、多数の従来のアッセイの任意の1つが、細胞膜タンパク質の濃度または密度の変化を同定するために用いられ得る。
【0042】
より詳細には、細胞膜レセプター濃度の評価のために、以下の技術の任意の1つが、用いられ得る:免疫組織化学;フローサイトメトリー;単離された原形質膜細胞画分の定量ウェスタンブロッティング;および蛍光リガンド/放射性リガンド結合アッセイ。細胞膜チャネル濃度の評価のために、以下の技術の任意の1つが、用いられ得る:血清/血漿/尿中のイオン濃度の生化学的測定;組織(例えば、エクスビボ組織)の電気生理;輸送される物質(例えば、グルコース)の細胞内および細胞外測定;免疫組織化学;フローサイトメトリー;および単離された原形質膜細胞画分の定量ウェスタンブロッティング。細胞膜トランスポーター濃度の評価のために、以下の技術の任意の1つが、用いられ得る:免疫組織化学;フローサイトメトリー;単離された原形質膜細胞画分の定量ウェスタンブロッティング;および輸送される物質(例えば、グルコース)の細胞内および細胞外測定。
【0043】
上記アッセイのいずれもが、アゴニストが標的細胞において細胞外への融合を増大し得ることを同定/確認するのに適しており、そして該アッセイの多数が、本願の実施例に言及することによって説明される。
【0044】
本発明の使用に際して、細胞外への融合のプロセスを低減または阻害することが望ましい標的細胞が、選択される。この細胞外へのプロセスは、医学的状態または医学的疾患と関連した症状に寄与する。例えば、問題の標的細胞は、望ましくない表現型(例えば、望ましくない分泌、または膜レセプター、トランスポーター、もしくは膜チャネルの望ましくない濃度の発現)を示し得る。この望ましくない表現型は、医学的状態または医学的疾患と関連した症状に寄与する。あるいは、細胞外への融合のプロセスが医学的状態または医学的疾患に寄与する標的細胞が選択される。
【0045】
したがって、試験分子が本発明におけるアゴニストであることを確認するための上記アッセイに加えて、インビボで試験分子を投与し、次いで状態または疾患と関連した症状の増大または悪化(または状態/疾患それ自体の悪化)についてモニタリングすることにより、その試験分子がアゴニストであることを確認することもできる。
【0046】
したがって、本発明のアゴニストは、標的細胞それ自体あるいは医学的状態または医学的疾患と関連した症状(または状態/疾患それ自体)のいずれかに対して測定可能である効果を有する。
【0047】
従来、アゴニストは、細胞内で活性を増大し得るかまたは低減し得るかのいずれかである任意の分子、すなわち、単に細胞活性の変化を引き起こす任意の分子であるとみなされてきた。例えば、アゴニストの従来の意味は、以下を含む:
細胞上のレセプターと組み合わされて、反応または活性を開始させ得る化学物質;または
レセプターを活性化させることにより活性な応答を誘導する薬物(その応答は細胞活性の増大であっても低減であってもよい)。
【0048】
しかしながら、本発明の目的のために、アゴニストは、標的細胞における細胞外への融合のプロセスを刺激し得る分子として、より特定して定義される。このプロセスは、該標的細胞において細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそれらのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0049】
したがって、本発明の格別なアゴニストの定義は、従来アゴニストとしてみなされ得る多くの分子を排除する。例えば、神経増殖因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介してニューロン分化を促進するその能力に関して、アゴニストである。しかしながら、NGFは、上記基準によって評価した場合、アゴニストではない。なぜなら、細胞外への融合の主要な誘導因子ではないためである。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けやすいものではない。
【0050】
使用に際して、本発明のアゴニスト含有剤は、標的細胞上のアゴニストレセプターを不活性化せず、むしろ、この剤のプロテアーゼ活性は、アゴニスト媒介応答を打ち消すように働く。
【0051】
さらに、本発明の剤のプロテアーゼ構成部分は、標的細胞のサイトゾルに送達されると、同じ標的細胞において同じ効果(すなわち、増大した細胞外への融合)を引き起こし得る全ての後続のアゴニストの作用を阻害またはブロックする。これは、複数のアゴニストが所定の疾患または状態に応答性であり得る状況で、本発明の剤が適用性を有する利点および手段である。したがって、本発明の剤を設計する場合、剤の送達のために選択されるTMは、必ずしも、取り組まれるべき疾患/状態の主要アゴニストである必要はない。
【0052】
非細胞傷害性プロテアーゼ含有治療剤の以前に報告した利点
(例えば、作用持続期間の延長(プロテアーゼは、治療持続期間が顕著に延長される可能性を提供する);作用持続期間の変動(所望の作用持続期間を決定するために、特定の型のプロテアーゼが選択される);および副作用の喪失(問題の細胞への特異的なターゲティングにより、従来の低分子量分子薬物(これは、一般に、特異性がより低い)に比較して副作用が低減する)に加えて、
本発明のアゴニスト媒介送達は、以前の非細胞傷害性プロテアーゼ含有治療剤よりも、以下の顕著な利点を提供する:
アゴニストの使用が、剤に対して優先的な結合および/またはインターナリゼーション特性を付与し得る。これは、順次、標的細胞へのプロテアーゼ構成部分のより効率的な送達を生じ得る。
【0053】
さらに、TMとしてアゴニストを使用することは、副作用に関して自己制限的である。より詳細には、標的細胞へのアゴニストの結合は細胞外への融合を増大し、これは、医学的疾患状態または状態を悪化させ得る。しかしながら、アゴニスト結合によって刺激される細胞外へのプロセスは、引き続き、剤のプロテアーゼ構成部分によって低減または阻害される。
【0054】
上で詳述したように、本発明は、標的細胞において細胞外への融合のプロセスを阻害し得る改善された、または代替となる剤に対する必要性に取り組んだものである。上で詳述したように、これは、ターゲティング部分としてアゴニストを使用することによって達成される。したがって、本発明は、医学的状態/疾患と関連した症状(または医学的状態/疾患それ自体)の治療のための医薬品の製造のための、標的細胞において細胞外への融合を増大するアゴニストの使用を提供し、ここで該症状(または医学的状態/疾患それ自体)は、該標的細胞における増大された細胞外への融合から生じる。
【0055】
本発明の使用に際して、特に好ましいアゴニストは、トランスポーター(例えば、グルコース輸送のための脂肪組織中のGLUT4トランスポーター)、膜チャネル(例えば、腎臓中のNa+チャネル)、レセプター(例えば、活性化単核細胞上のCD23
IgEレセプター)の1つ以上の細胞膜濃度の増大を刺激し得るか、または細胞外メディエーター(例えば、気道杯状細胞のIL13刺激後のムチン)の分泌の増大を刺激し得る分子である。
【0056】
本発明の剤を設計するための上記方法は、タンパク質ベースのプロテアーゼ結合体の調製を生じる。代替として、該方法は、DNAベースのプロテアーゼ結合体を設計するために用いられ得る。したがって、本発明の対応する局面において、非細胞傷害性毒素結合体を設計する方法が提供され、この方法は、
(A)該標的細胞において細胞外への融合を増大するアゴニストを同定する工程;ならびに
(B)剤を調製する工程を含み、該剤は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、これは、該標的細胞上の結合部位に該剤を結合させ、該結合部位は、エンドサイトーシスを受けて該標的細胞内のエンドソームに取り込まれ、ここで該TMは、工程(A)によって同定可能であるアゴニストである、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントをコードするDNA配列であって、該標的細胞で発現可能であり、そしてそのように発現されたとき、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントを提供する、DNA配列;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、該エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該標的細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをコードするDNA配列をトランスロケートさせる、ドメインを含む。
【0057】
非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、剤の部分(例えば、コード領域の上流にあるプロテアーゼDNA配列の部分)として存在する作動可能に連結されたプロモーターの制御下で発現され得る。あるいは、標的細胞におけるプロテアーゼ構成部分の発現は、標的細胞中に存在するプロモーターに依存し得る。
【0058】
プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、標的細胞のDNA配列に組み込み得る。1つ以上の組み込み部位が剤の部分(例えば、プロテアーゼDNA配列の部分)として提供され得る。
【0059】
第一の局面は、薬学的に受容可能なキャリア、希釈液、および/または賦形剤と剤とを組み合わせることによって薬学的組成物を調製する工程をさらに含み得る。
【0060】
本発明の第一の局面の関連の実施形態によれば、非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントを標的細胞にリターゲティングするのに適したアゴニストを同定する方法が提供される。このプロテアーゼまたはそれらのフラグメントは、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得、該方法は、
(A)推定アゴニスト分子を同定する工程;
(B)該推定アゴニスト分子と該標的細胞とを接触させる工程;および
(C)該推定アゴニスト分子が、該分子が存在する場合に、該分子が存在しない場合と比較して、該標的細胞において細胞外への融合が増大することを同定することにより、アゴニストであることを確認する工程を含む。
【0061】
工程(B)は、好ましくはインビトロで、例えば標的細胞を含む単離されたサンプルを用いて、実施される。あるいは、工程(B)は、インビボで実施され得る。
【0062】
確認工程(C)のための適切なアッセイは、本明細書中の別の箇所で詳述する。
【0063】
上記方法は、以下の任意工程の1つ以上をさらに含み得る:
(D)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそれらのフラグメント)および必要に応じてトランスロケーションドメインと組み合わせられて、本発明の剤を形成できることを確認する工程;および/または
(E)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、該標的細胞上の結合部位に結合することを確認する工程であって、該結合部位が、レセプター媒介エンドサイトーシスを受けやすい、工程;および/または
(F)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、標的細胞のサイトゾルに非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそれらのフラグメント)を送達できることを確認する工程。
【0064】
上記の(D)から(F)の工程は、当業者が容易に利用可能な慣用の試験によって確認され得る。
【0065】
例えば、工程(D)は、従来の結合試薬および/またはリンカー分子を用いる単純な化学結合実験後、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で予測分子量を有する本発明の剤が形成されていることを確認することによって実施され得る。剤の構成部分は、代表的には、共有結合によって(必要に応じてリンカー分子を介して)互いに連結される。
【0066】
例えば、工程(E)は、リガンドの結合の評価のための種々の方法の任意の1つによって実施され得る。このようなアプローチを詳述する標準的なテキスト(例えば、「Receptor-Ligand Interactions. A Practical Approach, E. C.Hulme編, IRL Press, 1992」)が、利用可能である。簡潔には、アゴニストまたは推定アゴニスト分子を標識し(例えば、125-ヨウ素で)、そしてインビトロにて、過剰の未標識アゴニストの存在下で細胞調製物に与える。未標識物質の目的は、いかなる非特異的結合部位をも飽和させることである。アゴニストを、平衡に達するのに十分な時間、細胞調製物と共にインキュベートし、そして細胞に結合した標識の量を、細胞結合放射活性を測定(例えば、シンチレーション計数またはガンマ計数によって)することにより評価する。
【0067】
さらなる例は、アゴニスト(または推定アゴニスト)を金で標識した後、電子顕微鏡を使用して、標識されたアゴニストの細胞輸送経過をモニタリングすることを含む[Rabinowitz S.(1992);J. Cell. Biol. 116(1):95-112頁により記載された基本方法;およびvan Deurs (1986);J. Cell. Biol. 102:37-47頁により記載された基本方法を参照のこと]。
【0068】
例えば、工程(F)は、工程(D)で調製された剤を適切な標的細胞と接触させ、そして基質の切断を評価することによって実施され得る。これは、SNAREタンパク質の抽出後にSDS-PAGE分離サンプルのウェスタンブロッティングを行うことによって実施される。基質の切断は、標的細胞へのプロテアーゼの送達の指標となる。これに関して、切断は、基質の消失および/または切断産物の出現によってモニタリングされ得る。切断基質産物に選択的に結合する特に有用な抗体は、WO95/33850に記載されている。
【0069】
(D)および(F)の工程において、剤のトランスロケーションドメイン機能は、TMとトランスロケーションとの二重の機能を有するTMアゴニストによって提供され得る。逆に、剤のTM機能は、トランスロケーションとTMとの二重の機能を有するトランスロケーションドメインによって提供され得る。あるいは、別々のTM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが含まれ得る。
【0070】
ターゲティング部分(TM)は、剤と標的細胞の表面との間に物理的会合を引き起こすように、結合部位と機能的に相互作用する剤と会合する任意の化学的構造を意味する。TMとの用語は、インターナリゼーション(例えば、エンドソーム形成)-レセプター媒介エンドサイトーシスとも呼ばれる-を行い得る、標的細胞上の結合部位に結合し得る任意の分子(すなわち、天然に存在する分子またはそれらの化学的/物理的に改変された改変体)を含む。TMは、エンドソーム膜トランスロケーションを保有し得、この場合、本発明の剤に、TM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが別々に存在する必要はない。
【0071】
アゴニストは、標的細胞において細胞外への融合を増大し得る任意の分子を意味する。本発明において、アゴニストは、TM特性も有し、このため、結合部位と機能的に相互作用して、剤と標的細胞の表面との物理的会合を引き起こす。
【0072】
用語「非細胞傷害性」は、問題のプロテアーゼ分子が、それがリターゲティングされた標的細胞を殺傷しないことを意味する。
【0073】
本発明のプロテアーゼは、真核生物細胞において細胞外への融合のための器官の1つ以上のタンパク質を切断し得る、全ての天然に存在する非細胞傷害性プロテアーゼを含む。
【0074】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼ(またはそれらのフラグメント)である。より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属またはナイセリア属から選択される(例えば、クロストリジウムL鎖、またはナイセリアIgAプロテアーゼ(好ましくは、N. gonorrhoeae由来))。
【0075】
本発明はまた、改変非細胞傷害性プロテアーゼを含み、この改変プロテアーゼは、上記プロテアーゼ活性を示す限り、天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を含む。
【0076】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、セリンまたはメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP-25、シナプトブレビン/VAMP、またはシンタキシン)に特異的である。
【0077】
神経毒素のプロテアーゼドメイン(例えば、細菌神経毒素のプロテアーゼドメイン)に対して、特に言及する。したがって、本発明は、天然に存在する神経毒素ドメインの使用、ならびに該天然に存在する神経毒素の組換え調製型を包含する。
【0078】
例示の神経毒素は、クロストリジウム属によって生成される。そして用語「クロストリジウム神経毒素」は、C. tetaniによって生成される神経毒素(TeNT)およびC. botulinumによって生成される神経毒素(BoNT)血清型A〜G、ならびにC.baratiiおよびC. butyricumにより生成される密に関連したBoNT様神経毒素を含む。上記の略語は、本明細書中を通じて使用する。例えば、BoNT/Aとの名称は、神経毒素の供給源がBoNT(血清型A)であることを示す。他のBoNT血清型に対しても、対応する名称が適用される。
【0079】
L鎖フラグメントとの用語は、神経毒素のL鎖の一構成部分を意味し、このフラグメントは、メタロプロテアーゼ活性を示し、そして細胞エキソサイトーシスに関与する小胞および/または原形質膜に会合したタンパク質をタンパク質分解切断し得る。
【0080】
トランスロケーションドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、標的細胞へのプロテアーゼ(またはそれらのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする分子である。どの分子(例えば、タンパク質またはペプチド)が保有するのであっても、本発明の必要なトランスロケーション機能は、多数の従来アッセイの任意の1つによって確認され得る。
【0081】
例えば、Shone C.(1987)は、試験分子で攻撃されるリポソームを用いるインビトロアッセイを記載している。必要なトランスロケーション機能の存在は、K+および/または標識NADのリポソームからの放出によって確認され、これは容易にモニタリングされ得る[Shone C. (1987) Eur. J. Biochem., 167(1)巻, 175-180頁を参照のこと]。
【0082】
さらなる例は、Blaustein R.(1987)によって提供される。これは、平面リン脂質二層膜を用いる単純なインビトロアッセイを記載している。この膜を試験分子で攻撃し、そして必要なトランスロケーション機能は、該膜を横断する伝導の増大によって確認される[Blaustein (1987) FEBS Letts., 226巻, 1号, 115-120頁を参照のこと]。
【0083】
膜融合の評価、およびしたがって、本発明での使用に適したトランスロケーションドメインの同定を可能にするさらなる方法は、Methods in Enzymology 220巻および221巻, Membrane Fusion Techniques, A部およびB部, Academic Press 1993によって提供される。
【0084】
トランスロケーションドメインは、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。
【0085】
トランスロケーションドメインは、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施形態では、トランスロケーションドメインは、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。
【0086】
細菌毒素分子の特定のドメインがこのような孔を形成し得ることは、十分に文書化されている。また、ウイルス発現膜融合タンパク質の特定のトランスロケーションドメインがこのような孔を形成し得ることも公知である。このようなドメインは、本発明において用いられ得る。
【0087】
トランスロケーションドメインは、クロストリジウム属起源であり得、すなわち、HNドメイン(またはそれらの機能的構成部分)であり得る。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。適切なクロストリジウムトランスロケーションドメインの例は、以下を含む:
ボツリヌス菌A型神経毒素-アミノ酸残基(449〜871)
ボツリヌス菌B型神経毒素-アミノ酸残基(441〜858)
ボツリヌス菌C型神経毒素-アミノ酸残基(442〜866)
ボツリヌス菌D型神経毒素-アミノ酸残基(446〜862)
ボツリヌス菌E型神経毒素-アミノ酸残基(423〜845)
ボツリヌス菌F型神経毒素-アミノ酸残基(440〜864)
ボツリヌス菌G型神経毒素-アミノ酸残基(442〜863)
破傷風菌神経毒素-アミノ酸残基(458〜879)。
【0088】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(C.tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関するさらなる詳細については、Hendersonら (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressに参照される。
【0089】
用語「HN」は、天然に存在する神経毒素HN部、および天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を有する改変HN部(但し、改変HN部が上記トランスロケーション機能を示す限り)を含む。
【0090】
あるいは、トランスロケーションドメインは、非クロストリジウム起源であり得る(表1を参照のこと)。非クロストリジウムトランスロケーションドメイン起源の例は、以下を含むが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のトランスロケーションドメイン[O’Keefeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206;Silvermanら, J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532;およびLondon, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナス外毒素A型のトランスロケーションドメイン[Priorら, Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽菌毒素のトランスロケーションドメイン[Blankeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93, 8437-8442]、トランスロケーション機能の種々の融合性または疎水性ペプチド[Plankら, J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924;およびWagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および親水性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]。トランスロケーションドメインは、天然に存在するタンパク質に存在するトランスロケーションドメインを反映し得るか、またはその変化がトランスロケーションドメインのトランスロケーション能を破壊しない限り、アミノ酸変化を含み得る。
【0091】
本発明での使用に適したウイルストランスロケーションドメインの具体的な例は、ウイルス発現膜融合タンパク質の特定のトランスロケーティングドメインを含む。例えば、Wagnerら(1992)およびMurataら(1992)は、インフルエンザウイルスヘムアグルチニンのN末端領域に由来する多数の融合性および親水性のペプチドのトランスロケーション(すなわち、膜融合および小胞形成)機能を記載している。所望の転位活性を有することが公知の他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)の融合性ペプチドのトランスロケーティングドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)グリコプロテインGのトランスロケーティングドメイン、SERウイルスFタンパク質のトランスロケーティングドメインおよび泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質のトランスロケーティングドメインである。ウイルスがコードする「スパイクタンパク質(spike proteins)」は、本発明においては特別な適用を有し、例えば、SFVのE1タンパク質およびVSVのGタンパク質のGタンパク質である。
【0092】
表1に列挙したトランスロケーションドメインの使用は、それらの配列改変体の使用を含む。改変体は、1つ以上の保存的な核酸置換および/または核酸欠失もしくは挿入を含み得る。但し、この改変体は、必要なトランスロケーション機能を保有する。改変体はまた、この改変体が必要なトランスロケーション機能を保有する限り、1つ以上のアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失もしくは挿入を含み得る。
【0093】
【表1】
【0094】
本発明の第二の局面によれば、組成物が提供され、この組成物は、
(A)剤を含み、該剤は、以下:
(i)ターゲティング部分(TM)であって、これは、標的細胞上の結合部位に該剤を結合させ、該結合部位は、エンドサイトーシスを受けて該標的細胞内のエンドソームに取り込まれ、ここで該TMは、該標的細胞において細胞外への融合を増大し得るアゴニストである、部分;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそれらのフラグメントであって、該標的細胞の細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、該エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該標的細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせる、ドメインを含む。
【0095】
剤の上記構成部分は、本発明の第一の局面で提供した詳細に従って選択および試験され得る。
【0096】
組成物は、以下をさらに含み得る:
(B)被験体において、増大した細胞外への融合によって引き起こされる臨床症状を軽減するインヒビター。
【0097】
特に好ましい実施形態では、インヒビターは、被験体において、標的細胞へのアゴニストの結合から生じる増大した細胞外への融合により引き起こされる臨床症状を軽減する。
【0098】
用語「軽減」は、低減(reducing)、改善(ameliorating)、または阻害(inhibiting)と互換的に使用される。したがって、インヒビターは、標的細胞へのアゴニスト結合により誘導される症状を低減または改善し得る。
【0099】
インヒビター構成部分は、主として、標的細胞へのアゴニスト(より特定すると、剤のTM構成部分)の結合により引き起こされる任意の望ましくない症状を最小限にすることに関与している。これに関して、剤のアゴニスト構成部分は、使用に際して、標的細胞における細胞外への融合の速度の初期増大を引き起こす。このアゴニストにより誘導される細胞外への融合は、短期の望ましくない症状を引き起こし得、そして、これらの望ましくない症状に、インヒビター構成部分が主として関与する。
【0100】
「増大した細胞外への融合により引き起こされる(から生じる)症状」とは、標的細胞へのアゴニスト結合の直接的な結果である臨床症状、および標的細胞へのアゴニスト結合により開始される細胞事象のカスケードから生じる臨床症状を含む。
【0101】
したがって、本発明の組成物は、阻害のための標的として選択されている細胞プロセス(すなわち、細胞外への融合)の短期間ではあるが刺激を提供し得る分子(すなわち、TMアゴニスト)の使用により、目的の細胞に非細胞傷害性プロテアーゼ活性を送達する新規で望ましい手段を提供する。
【0102】
好ましい実施形態では、組成物は、被験体、好ましくはヒト、における医学的状態または医学的疾患の治療用である。この実施形態では、インヒビター(存在する場合)は、該医学的状態または医学的疾患と関連した症状、好ましくは、標的細胞への本発明の剤の結合により引き起こされているか、または刺激されている症状を軽減する分子である。これに関して、標的細胞への剤の結合は、該標的細胞における細胞外への融合の一時的な刺激を引き起こし得る。
【0103】
インヒビターは、それが治療されるべき医学的状態/疾患と関連した症状を軽減し得る限り、任意の従来の薬学的分子であり得る。好ましくは、インヒビターは、標的細胞へのアゴニストTMの結合により引き起こされる該標的細胞における増大した細胞外への融合から生じる症状(これは、代表的には短期症状である)を軽減し得る。
【0104】
インヒビターは、関連の薬理および医学テキストの参照によって、および医師との相談によって同定され得る。例えば、the British National Formulary(the British Medical Society and The Royal Pharmaceutical Society of Great Britainにより出版)は、本発明での使用に適した認可医薬製品のリストを提供する。
【0105】
インヒビターは、好ましくは、被験体に投与されたときに、短期作用持続期間、例えば1〜3日間の短期作用持続期間、好ましくは1〜2日間の短期作用持続期間、より好ましくは24〜36時間の短期作用持続期間を有する。この期間後、剤により提供される非細胞傷害性プロテアーゼ効果性は増大し、そしてインヒビター効果はもはや必要ではない。
【0106】
インヒビター効果の好ましい短期作用持続期間に対して、剤の効果(すなわち、非細胞傷害性プロテアーゼ活性)は、代表的にはより長く続く。例えば1〜6ヶ月、好ましくは2〜4ヶ月である。
【0107】
インヒビターは、アゴニストTMの結合により引き起こされる任意の短期症状を軽減するために、剤と共に、治療開始後短期間の間、有利に必要とされる。続いて、プロテアーゼ作用による細胞外への融合の阻害の結果として、アゴニストTMの効果はブロックされ、インヒビターはもはや必要ではない。しかしながら、プロテアーゼの効果は長く続き、さらにインヒビターや剤を用いる必要なく、相当の期間(数週間または数ヶ月)にわたって、治療されるべき疾患または状態を軽減する。したがって、本発明の剤は、疾患の改善治療を提供し、そして治療介入の必要性を低減する。
【0108】
1つの実施形態では、インヒビターは、標的細胞における細胞外への融合のプロセスの阻害または低減を引き起こし、そしてエキソサイトーシスの短期ブロックを提供する。このようなインヒビターは、好ましくは、本発明の剤が結合する結合部位に結合しない。よって、結合部位について、本発明の剤とインヒビター構成部分との間に実質的な競合はない。したがって、インヒビターは、TM結合活性のアンタゴニストとして機能しなくてもよい。
【0109】
別の実施形態では、インヒビターは、アゴニスト刺激標的細胞から分泌される1つ以上の構成部分に対して作用し、これにより、そうでなければ分泌構成部分により誘導される下流の効果を最小限とする。例えば、インヒビターは、分泌構成部分に結合し、これを不活性化し得る。したがって、インヒビターは、剤が結合する標的細胞から離れた部位で作用し得る。あるいは、インヒビターは、分泌構成部分のアンタゴニストであり得、これにより分泌構成部分の生物学的活性をブロックする。
【0110】
さらなる実施形態では、インヒビターは、刺激された表現型に拮抗するために、刺激した標的細胞に対して直接的に作用する。例えば、刺激された表現型が細胞膜タンパク質(例えば、レセプターまたは輸送チャネル)の増大した濃度である場合、インヒビターは、問題のレセプターまたはチャネルをブロックし得、これにより、該レセプターまたはチャネルの機能または表現型の結果が細胞表面で発現されることを低減するかまたは最小限にする。
【0111】
なお別の実施形態では、インヒビターは、アゴニストTMの結合またはそのインターナリゼーションに影響を与えることなく、アゴニストTMに対する結合部位のシグナル伝達機構を妨害するように作用する。このようにして、インヒビターは、アゴニストTMの結合を妨害することなく、標的細胞における望ましくない短期の表現型応答を妨害する。
【0112】
なお別のさらなる実施形態では、インヒビターは、二次的な拮抗作用(すなわち、剤の標的細胞とは異なり、かつ該細胞とは別の標的細胞への結合)を介して機能し得、この二次的な拮抗作用は、第二の分子の放出または賦活を引き起こす。第二の分子は、次いで、インヒビターについて上述した機構を介してインヒビターとして作用し、アゴニストTMの効果を相殺するように直接的に作用する。
【0113】
ここで、第二の局面を、本発明により取り組まれている医学的状態または医学的疾患に言及して説明する。
【0114】
使用に際して、本発明の組成物は、細胞(例えば、内分泌細胞、外分泌細胞、炎症性細胞、免疫系の細胞、心血管系の細胞、骨細胞、および神経細胞が挙げられるが、これらに限定されない)において望ましくない細胞外への活性(例えば、分泌、または細胞の原形質膜へのタンパク質(例えば、レセプター、トランスポーター、および膜チャネル)の送達)から生じる疾患の治療に適したものとされる。
【0115】
例えば、本発明の組成物は、粘液放出細胞からの粘液の分泌の妨害を介して慢性閉塞性肺障害の治療のため;脂肪細胞の原形質膜におけるグルコーストランスポーターGLUT4の提示の妨害を介して肥満症の治療のため;肥満細胞からのメディエーターの分泌の妨害を介してアレルギー症の治療のため;または内皮細胞からのセレクチンの放出の妨害を介して慢性炎症状態の治療のための効用を有する。
【0116】
ここで、本発明による剤の調製を簡潔に説明する。
【0117】
本発明の使用に際して、ターゲティング部分(TM)は、関連標的細胞上のBSに対する特異性を提供する。剤のTM構成部分は、該TMが本明細書中の前出で定義したとおりのアゴニストである限り、多くの細胞結合分子の1つを含み得る。したがって、TMとしては、レクチン、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、ペプチド、糖質、脂質、グリカン、核酸、インターロイキン(例えば、IL-4およびIL-13)、TNF(例えば、TNFα)、インスリン、MCD、および補体構成部分が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0118】
神経毒素分子のHC部がH鎖の他の部分(HNとして知られる)から、HNフラグメントは神経毒素のL鎖にジスルフィド連結されたままでLHNとして知られるフラグメントを提供するように除去できることは、当該分野で公知である。したがって、本発明の1つの実施形態では、神経毒素のLHNフラグメントが、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合されている。
【0119】
本発明の別の実施形態では、神経毒素のHCドメインが、神経筋接合部でレセプターに神経毒素を結合する能力を低減するかまたは好ましくは不能にするように変異されるか、ブロックされるか、または改変(例えば、化学修飾により)される。この改変した神経毒素は、次いで、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0120】
本発明の別の実施形態では、その天然の結合能を低減するかまたは好ましくは不能にするようにHCドメインが変異されているか、ブロックされているか、または改変(例えば、化学修飾により)されている神経毒素のH鎖が、異なる神経毒素のL鎖または細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る別のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。このハイブリッドの改変した神経毒素は、次いで、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0121】
本発明の別の実施形態では、神経毒素のHNドメインが、異なる神経毒素のL鎖または細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る別のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。このハイブリッドは、次いで、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0122】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、関連標的細胞の細胞質へのプロテアーゼのインターナリゼーションも生じ得るTMに共有結合される。
【0123】
本発明の別の実施形態では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1つ以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、サイトゾルへのプロテアーゼフラグメントの輸送を生じるトランスロケーションドメインに共有結合される。
【0124】
使用に際して、本発明による剤のこれらのドメインは、互いに会合される。1つの実施形態では、これらのドメインの2つ以上が、直接(例えば、共有結合により)またはリンカー分子を介するかのいずれかで、一緒に連結され得る。
【0125】
本発明での使用に適した結合体化技術は、十分に文書化されており、これらは以下を含む:Chemistry of protein conjugation and cross-linking. Wong, S. S.編, 1993, CRC Press Inc., Florida;およびBioconjugate techniques, Hermanson, G. T. 編, 1996, Academic Press, London, UK。
【0126】
本発明による剤は、組換えで調製され得る。
【0127】
1つの実施形態では、組換え剤の調製は、1つの遺伝子構築物中に選択したTMおよびプロテアーゼ構成部分の各コード配列を配置することを含む。これらのコード配列は、フレームを合わせて配置されて、続く転写および翻訳が両コード配列を通じて連続し、融合タンパク質を生じ得る。全ての構築物は、N末端メチオニンをコードする5’ATGコドンとC末端翻訳停止コドンとを有する。
【0128】
このように、クロストリジウム神経毒素のL鎖または細胞外への融合のための器官のタンパク質を切断し得る別のプロテアーゼ(例えば、IgAプロテアーゼ)、あるいはそれらのフラグメント/改変体が、TMとの融合タンパク質として組換え発現され得るが、このTMは、分泌に対して応答性である関連標的細胞の細胞質へのL鎖構成部分のインターナリゼーションをも生じ得る。あるいは、融合タンパク質は、トランスロケーションドメインをさらに含み得る。発現融合タンパク質は、1つ以上のスペーサー領域を含み得る。
【0129】
例として、以下の情報が、本発明の剤を組換えで生成するために必要とされる:
(I)選択したTMに関するDNA配列データ;
(II)プロテアーゼ構成部分に関するDNA配列データ;
(III)トランスロケーションドメインに関するDNA配列データ;および
(IV)(I)、(II)および(III)を含む構築物の構築および発現を許容するプロトコル。
【0130】
上記の基本情報(I)から(IV)は、いずれも容易に得ることができるか、または従来の方法によって容易に決定できる。例えば、WO98/07864およびWO99/17806はともに、本出願での使用に適した組換え技術を例示する。
【0131】
さらに、本発明の構築物の構築および発現のための方法は、以下の参照文献および他からの情報を用い得る:
Lorberboum-Galski, H., FitzGerald, D., Chaudhary, V., Adhya, S., Pastan, I. (1988). Cytotoxic activity of an interleukin 2-Pseudomonas exotoxin chimeric protein produced in Escherichia coli. Proc Natl Acad Sci U S A, 85(6):1922-6;
Murphy, J. R. (1988). Diphtheria-related peptide hormone gene fusions: a molecular genetic approach to chimeric toxin development. Cancer Treat Res, 37:123-40;
Williams, D. P., Parker, K., Bacha, P., Bishai, W., Borowski, M., Genbauffe F., Strom, T. B., Murphy, J. R. (1987). Diphtheria toxin receptor binding domain substitution with interleukin-2: genetic construction and properties of a diphtheria toxin-related interleukin-2 fusion protein. Protein Eng, 1(6):493-8;
Arora, N., Williamson, L. C., Leppla, S. H., Halpern, J. L. (1994). Cytotoxic effects of a chimeric protein consisting of tetanus toxin light chain and anthrax toxin lethal factor in non-neuronal cells. J Biol Chem, 269(42): 26165-71;
Brinkmann, U., Reiter, Y., Jung, S. H., Lee, B., Pastan, I. (1993). A recombinant immunotoxin containing a disulphide-stabilized Fv fragment. Proc Natl Acad Sci U S A, 90(16):7538-42;および
O’Hare, M., Brown, A. N., Hussain, K., Gebhardt, A., Watson, G., Roberts, L. M., Vitetta, E. S., Thorpe, P. E., Lord, J. M. (1990). Cytotoxicity of a recombinant ricin-A-chain fusion protein containing a proteolytically-cleavable spacer sequence. FEBS Lett, 10月29日; 273(1-2):200-4。
【0132】
L鎖およびLHN鎖に関する適切なクロストリジウム神経毒素配列情報は、例えば、以下から得られ得る:Kurazono, H. (1992) J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 14721-14729頁;およびPopoff, M. R., およびMarvaud, J. -C. (1999) The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins, 第2版(Alouf, J.E.およびFreer, J.H.編), Academic Press, 174-201頁。
【0133】
上記刊行物は全て、本明細書にて、該刊行物に言及することにより、本明細書中に援用される。
【0134】
同様に、適切なTM配列データは、当該分野で広範に利用可能である。あるいは、任意の必要な配列データが、当業者に周知の技術によって得られ得る。
【0135】
例えば、TM構成部分をコードするDNAは、正確なコード領域についてcDNAライブラリーを(例えば、ライブラリーをプローブするのに公知の配列情報に基づいて特定のオリゴヌクレオチドを用いることにより)スクリーニングし、TMのDNAを単離し、確認目的のためにこのDNAを配列決定し、そして選択した宿主における発現について適切な発現ベクター中に単離したDNAを配置することにより、供給源生物からクローニングされ得る。
【0136】
ライブラリーからの配列の単離に代わるものとして、利用可能な配列情報が、PCRで用いられる特定のプライマーを調製するために用いられ得、続いて、コード配列が供給源材料から直接増幅され、そしてプライマーの適切な使用により、発現ベクターに直接クローニングされ得る。
【0137】
コード配列の単離について別の代替方法は、既存の配列情報を使用し、そしてDNA合成技術を用いてコピーを合成すること(おそらく、変更を組み込む)である。例えば、既存のタンパク質および/またはRNA配列情報からDNA配列データが生成され得る。これ(および上記代替)を行うためにDNA合成技術を用いることにより、コード配列のコドン偏りを、選択した発現宿主に最適であるように改変できる。これは、融合タンパク質の優れた発現レベルを生じ得る。
【0138】
発現宿主に対するコドン偏りの最適化は、構築物のTM構成部分およびクロストリジウム構成部分をコードする各DNA配列に適用され得る。コドン偏りの最適化は、自由に利用可能なDNA/タンパク質データベースソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group, Incから入手可能なプログラム)へのタンパク質配列の適用によって可能である。
【0139】
本発明の剤、または剤およびインヒビターの組成物は、上述のように、種々の医学的状態または医学的疾患の治療での使用に適している(特に、本発明の第一の局面および第二の局面を参照のこと)。したがって、組成物は、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。
【0140】
使用に際して、本発明の剤は、インヒビターの前に、該インヒビターと同時に、または該インヒビターの後に投与され得る。
【0141】
使用に際して、剤および/またはインヒビターは、代表的には、薬学的に受容可能なキャリア、希釈液、および/または賦形剤と組み合わせられた薬学的組成物の形態で用いられるが、組成物の的確な形態は、投与様式に合わせられ得る。投与は、好ましくは哺乳動物に、より好ましくはヒトに対してである。
【0142】
構成部分(すなわち、剤および/またはインヒビター)は、例えば、吸入用にエアロゾルまたは噴霧液の形態で、あるいは非経口投与、関節内投与、または頭蓋内投与用に滅菌溶液の形態で用いられ得る。
【0143】
内分泌を標的として治療するためには、静脈内(i.v.)注射、腺への直接注射、または肺送達のためのエアロゾル投与が好ましい;炎症性細胞を標的として治療するためには、静脈内注射、皮下注射、または表面パッチ投与または肺送達のためのエアロゾル投与が好ましい;外分泌を標的として治療するためには、静脈内注射、腺への直接注射もしくは直接投与、または肺送達のためのエアロゾル投与が好ましい;免疫学的標的の治療のためには、静脈内注射、または特定の組織(例えば、胸腺、骨髄、もしくはリンパ組織)への注射が好ましい;心血管を標的とした治療のためには、静脈内注射が好ましい;そして骨を標的とした治療のためには、静脈内注射または直接注射が好ましい。静脈内注射の場合、これはまた、ポンプシステムの使用も含むべきである。ニューロンを標的として治療するための組成物の場合、脊髄注射(例えば、硬膜外注射もしくは髄腔内注射)または留置ポンプが使用され得る。
【0144】
本発明の構成部分の投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲である。必要投薬量範囲は、構成部分の正確な性質、投与経路、処方の性質、被験体の齢、被験体の状態の性質、程度、もしくは重篤度、禁忌(ある場合)、および主治医の判断に依存することが理解される。
【0145】
(各構成部分の)適切な一日投薬量は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲である。単位投薬量は、1μg未満から30mgまでの間で変更し得るが、代表的には一投与あたり0.01〜1mgの範囲であり、これは、毎日、または好ましくは頻度を下げて(例えば、毎週または半年毎に)投与され得る。
【0146】
しかしながら、必要投薬量に広範な変動があることは、構成部分の正確な性質および種々の投与経路の異なる効率に依存して予想されることである。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高い投薬量が必要であることが予想される。
【0147】
これらの投薬量レベルの変動は、当該分野で周知であるように、最適化のために標準的な経験的作業を用いて調整され得る。
【0148】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0149】
液状単位投薬剤形は、代表的には、発熱性物質除去滅菌ビヒクルを利用して調製される。活性成分は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、そのビヒクル中に溶解または懸濁され得る。
【0150】
溶液は、非経口投与の全ての剤形に使用され得、特に静脈内注射に使用される。溶液を調製する際、構成部分はビヒクル中に溶解され得、溶液は、必要に応じて塩化ナトリウムの添加により等張にされる。そして無菌技術を用いて滅菌フィルタに濾過することにより滅菌され、次いで適切な滅菌バイアルまたはアンプル中に充填し、密閉され得る。あるいは溶液安定性が十分である場合、その密閉容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0151】
好都合に、添加剤(例えば、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤もしくは殺菌剤、懸濁化剤、乳化剤、および/または局所麻酔剤)がビヒクル中に溶解され得る。
【0152】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌区域で無菌技術を用いて、予め滅菌しておいた薬物および他の成分を滅菌容器中に充填することにより調製され得る。
【0153】
あるいは、構成部分(すなわち、剤およびインヒビター)および他の成分が水性ビヒクル中に溶解され得、この溶液は、濾過により滅菌され、そして滅菌区域で無菌技術を用いて適切な容器中に分配される。製品は、次いで凍結乾燥され、そして容器は、無菌下で密閉される。
【0154】
筋内注射、皮下注射、または皮内注射に適切な非経口投与用懸濁液は、滅菌構成部分が溶解される代わりに滅菌ビヒクル中に懸濁され、そして滅菌が濾過によって達成し得ないことを除いて、実質的に同様にして調製される。構成部分は、滅菌状態で単離され得るか、あるいは単離後に(例えば、ガンマ照射によって)滅菌され得る。
【0155】
好都合には、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、構成部分の均一な分布を促進するために、組成物中に含まれる。
【0156】
気道を介する投与に適した組成物としては、エアロゾル、噴霧液、または吸入用微細粉末が挙げられる。粉末の場合、粒径は、50ミクロン未満、特に10ミクロン未満が好ましい。このような組成物は、従来の様式で作製され、そして従来の投与デバイスと併用して用いられ得る。
【0157】
本発明に記載の組成物(すなわち、剤(インヒビターありまたはインヒビターなし))は、エキソサイトーシス(例えば、分泌、または細胞の原形質膜へのタンパク質(例えば、レセプター、トランスポーター、および膜チャネル)の送達)に関わる状態の治療のために、直接または薬学的に受容可能な塩としてのいずれかで、インビボで使用され得る。
【0158】
ここで、本発明を、以下の実施例および図面に基づいて説明するが、それらに限定することを意図しない:
実施例1 IL13アゴニスト活性の評価
実施例2 触媒により活性なrecLHN/Cの発現および精製
実施例3 IL13およびLHN/Cの結合体の生成
実施例4 IL13およびLHN/Cの単一ポリペプチド融合結合体の生成
実施例5 粘液放出細胞におけるIL13-LHN/C結合体の活性
実施例6 COPDのエクスビボモデルにおけるIL13-LHN/Cの活性
実施例7 COPDの症状の低減におけるIL13-LHN/Cのインビボ効力
実施例8 IL13-IgAプロテアーゼの単一ポリペプチド融合体の生成
実施例9 インスリンのアゴニスト活性の評価
実施例10 触媒により活性なrecLHN/Bの発現および精製
実施例11 インスリン-LHN/B結合体の生成
実施例12 脂肪細胞におけるインスリン-LHN/Bの活性
実施例13 肥満症の症状の低減におけるインスリン-LHN/Bのインビボ効力
実施例14 肥満細胞顆粒減少ペプチド(MCDペプチド)のアゴニスト活性の評価
実施例15 MCDペプチドおよびLHN/Cの単一ポリペプチド融合体の生成
実施例16 肥満細胞におけるMCDペプチド-LHN/Cの活性
実施例17 喘息の症状の低減におけるMCDペプチド-LHN/Cのインビボ効力
実施例18 IL4アゴニスト活性の評価
実施例19 IL4-LHN/Cの単一ポリペプチド融合体の生成
実施例20 ヒト単核細胞におけるIgEレセプターCD23の表面発現の妨害におけるIL4-LHN/Cの活性
実施例21 TNFαアゴニスト活性の評価
実施例22 炎症の症状の低減におけるTNFα-LHN/Cのインビボ効力
実施例23 海馬ニューロンおよび大脳皮質ニューロンにおけるNMDAチャネルの提示を増大するインスリンのアゴニスト活性の評価
実施例24 LC/CをコードするDNAを細胞に送達するための結合体の生成。
【0159】
ここで、図1〜2をより詳細に説明する。
【0160】
図1について、recLHN/Cを、実施例2に記載の二工程ストラテジーを用いてE. coli細胞ペーストから精製する。SDS-PAGEによりタンパク質サンプルを分離し、クマシーブルーでの染色により可視化する。清澄化した粗細胞溶解物(レーン2)をQ-セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。融合タンパク質MBP-LHN/Cを0.1M
NaClで溶出する(レーン3)。溶出した物質を22℃で16時間、第Xa因子プロテアーゼ(New England Biolabs)と共にインキュベートし、リンカー部位で融合タグMBPとニックrecLHN/Cとを切断する。目的のタンパク質を、切断された融合産物(レーン4)からQ-セファロースFFを用いてさらに精製する。レーン5および7はそれぞれ、非還元条件下および10mM DTTでの還元下での精製recLHN/Cを示す。これは、第Xa因子でのニッキング後のLCドメインとHNドメインとの間のリンカー領域でのジスルフィド結合を図示する。レーン1および6は、分子量マーカー(KDaで示す);Mark 12(Invitrogen)を表す。
【0161】
図2について、recLHN/Bを、実施例10に記載の三カラムストラテジーを用いて細胞ペーストから精製する。SDS-PAGEによりタンパク質サンプルを分離し、simplyblue safestainクマシー試薬での染色により可視化する。清澄化した抽出物中に含まれる粗の可溶性MBP-LHN/B融合タンパク質(レーン2)をQ-セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。レーン3は、150〜200mM塩でカラムから溶出した組換えMBP-LHN/B融合体を表す。このサンプルを第Xa因子プロテアーゼで処理し、MBPアフィニティータグを除去し(レーン4)、そして切断した混合物をより低い塩濃度に希釈してQ-セファロースFFアニオン交換カラムに供する。120〜170mM塩の間で溶出した物質は、LHN/Bに富んでいた(レーン5)。レーン6および8のタンパク質はそれぞれ、非還元下および還元条件下の、エンテロキナーゼでの処理およびベンズアミドセファロースを用いた最終精製後に回収したLHN/Bを表す。レーン1および7は、分子量マーカー(Mark 12[Invitrogen])を表す。
【0162】
図3は、本発明の好ましい方法を5段階フローダイアグラム形式で示す:
工程1 TMを同定する(例えば、文献検討のような合理的なサーチから、実験による発見から、または予期されない観測により);
工程2 工程1のTMがアゴニストであることを適切なアッセイおよび/または文献による確認により確認する;
工程3 アゴニスト(工程2により確認済み)をプロテアーゼ構成部分に結合体化する(例えば、化学的融合または組換え融合による)ことにより本発明の剤を調製する;
工程4 分泌および/または膜タンパク質提示に関するアゴニスト含有剤(工程3により調製)の効果を評価する;および
工程5 工程4で標的細胞への剤の結合が、増大した細胞外への融合と関連した症状の短期の増大を引き起こす場合、該短期副作用を最小限にするインヒビターを同定し、そして利用するために、全ての入手可能な情報源(例えば、医学テキスト、現行の最良の医学実務)を使用する。
【実施例】
【0163】
(実施例1-IL13アゴニスト活性の評価)
IL13がアゴニストであること、すなわち、IL13が標的細胞において細胞外への融合を増大することを確認するために、ヒト結腸上皮細胞系LS180および正常ヒト気管支上皮(NHTBE)細胞系のインビトロ培養物からのムチンの放出に対するIL13の効果を測定する。IL13をLS180細胞およびNHTBE細胞に与えると、MUC5ACに特異的なELISAにより測定される通り、ムチン放出の顕著な増大がある。
【0164】
(材料)
ヒトIL-13は、Sigmaから得られる。
【0165】
抗MUC5AC抗血清は、Neomarkersから得られる(クローン1-13M1)。
【0166】
LS180細胞は、European Collection of Animal Cell Culturesから得られる。
【0167】
NHTBE細胞は、Cloneticsから得られる。
【0168】
(方法)
LS180細胞を24ウェルプレート上に播種し、そしてMEM-Glutamax培地(Gibco)(10%ウシ胎児血清、2mM
L-グルタミン、1% pen-Strep、1% NEAA、1% HEPES、1%炭酸水素ナトリウムを含有する)中で使用前に3日間培養する。IL13を細胞に与え、そして24時間後、MUC5ACムチンの放出をELISAによりアッセイする。
【0169】
NHTBE細胞を、Grayら, Am. J.Respir. Cell Biol., 14,104-112(1996)に記載の方法で培養する。簡潔には、P2細胞をTranswell-COLコラーゲンコーティングメンブレン支持体(12ウェル)中に播種し、そして気管支上皮細胞増殖培地(BEGM)中で7日間培養する。8日目に、メンブレンの上の培地を除去して気液界面を作出し、そして細胞を、繊毛が発達するまで、さらに4週間培養する。次いで、培養物を実験使用のために準備する。IL13を細胞に与え、そして24時間後、MUC5ACムチンの放出をELISAによりアッセイする。
【0170】
ELISAのために、氷上で灌流液を細胞からエッペンドルフに移す。次いで、細胞を1ウェルあたり450μlの0.2M NaOHで、室温で10分間溶解し、そして450μlの0.2M HClおよび100μlのHEPESで中和する。細胞をプレートから掻き取り、そして溶解物を氷上でエッペンドルフに移す。全てのサンプルをアッセイまで-20℃で保存する。
【0171】
サンプルを4℃で融解し、13,000×gで10分間遠心分離し、そしてELISAを実施する。100μlの上清を各チューブから96ウェルmaxisorpプレート(Nunc)に、二連で、ピペットにより移す。50μlのアッセイ緩衝液をブランクとして使用する。プレートを、40℃のオーブン中に一晩、または乾燥するまで静置し、次いでPBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。プレートを、振盪器上で室温にて1時間、2% BSA、画分Vを含有する100μl PBSでブロックし、次いで再度PBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。次いで、プレートを50μlの抗MUC5AC(クローン1-13M1, Neomarkers)(PBST(0.05% tween)中で1:1000希釈)と共に振盪器上で室温にて1時間インキュベートし、PBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ抗マウスIgG(1:2000)を各ウェルに添加し、振盪器上で室温にて1時間インキュベートし、プレートをPBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。200μlのTMBを各ウェルに添加し、発色させ、次いで50μlの0.5M HClを添加して反応を停止させる。最終呈色反応を450nmで読み取る。
【0172】
(実施例2-触媒により活性な組換えLHN/Cの発現および精製)
LHN/Cのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Cを作出する。この構築物で、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Cポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離されている。
【0173】
pMAL-c2x-LHN/CをE. coli AD494(DE3, IRL)に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中に培養する。誘導前細菌増殖を、8.0のOD600nmに30℃にて維持し、この段階で、recMBP-c2x-LHN/Cの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして培養温度を25℃に下げることによって誘導する。25℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを-70℃で保存する。
【0174】
細胞ペーストを50mM Hepes pH 7.2、1μM ZnCl2中に1:6(w/v)で再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を達成する。得られた懸濁液を、精製前に遠心分離によって清澄化する。
【0175】
細胞破壊および清澄化後、MBP-融合タンパク質を、50mM Hepes pH 7.2、1μM ZnCl2中、Q-セファロースファストフローアニオン交換樹脂で分離し、そして100mM NaClを添加した同じ緩衝液で溶出する。第Xa因子との単回インキュベーション工程にて、MBP-LHN/C接合部およびLH-NCリンカーでの二点切断を実施する。この反応は、100μg融合タンパク質当たり1Uの第Xa因子(NEB)と共に22℃にて16時間のインキュベーションにより完了する。切断したタンパク質を、20mM Hepes、25mM NaCl、pH 7.2の緩衝液組成となるように20mM Hepesで希釈し、そして第二のQ-セファロースカラムに通してLHN/CからMBPを分離する。活性化した(ジスルフィド結合が切断したリンカー)LHN/Cを、120〜170mM塩の塩濃度勾配(20mM Hepes、500mM NaCl、1μM ZnCl2, pH 7.2)によってQ-セファロースカラムから溶出する。
【0176】
LHN/Cの精製の図示については図1を参照のこと。
【0177】
(実施例3-IL13およびLHN/Cの結合体の生成)
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から得られる。
【0178】
PD-10脱塩カラムは、Pharmaciaから得られる。
【0179】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、分子篩上の保存により無水保持される。
【0180】
変性ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、Navexからのゲルおよび試薬を用いて実施される。
【0181】
さらなる試薬は、Sigma Ltd.から得られる。
【0182】
LHN/Cは、実施例2に従って調製される。
【0183】
ヒトIL-13は、Sigmaから得られる。
【0184】
(方法)
凍結乾燥したIL-13を50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、5mM EDTA中で再水和し、1mg/mlの最終濃度とする。SATA試薬を65mM(15mg/ml)の濃度でDMSO中に溶解する。
【0185】
各mlのIL-13溶液に5μlのSATA溶液を添加し、穏やかに混合し、次いで4℃にて一晩インキュベートしてIL-13の誘導体化を達成する。誘導体化したIL-13を反応成分および副産物から分離するために、誘導体化混合物をPD-10カラム(50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、1mM EDTA中で予め平衡化した)に供する。
【0186】
アセチル化SH基を脱保護するために、100μlの0.5M塩酸ヒドロキシルアミン(50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、25mM EDTA中)を各mlのSATA修飾IL-13溶液に添加する。これらの材料を混合し、そして室温にて2時間反応させ、その後スルフヒドリル修飾IL-13を50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、1mM EDTA中で平衡化したPD-10カラムに通すことによって精製する。
【0187】
LHN/CをPBS中で脱塩し、そして得られた溶液(2mg/ml)をDMSO中にSPDPの10mMストック溶液を添加して3倍モル過剰のSPDPと反応させる。室温にて4時間後、PBSE中にPD-10カラムで脱塩することにより反応を終結させる。
【0188】
誘導体化したLHN/Cの一部を溶液から取り出し、そしてDTT(5mM、30分)で還元する。このサンプルを280nmおよび343nmで分光分析し、誘導体化の程度を決定する。達成した誘導体化の程度は、およそ3mol/molである。
【0189】
誘導体化したLHN/Cの大部分および誘導体化したIL-13を、IL-13が3倍モル過剰よりも多くなるような割合で混合する。結合体化反応を4℃にて16時間以上進行させる。
【0190】
生成物の混合物を遠心分離し、生じた沈殿物を除く。続いて、上清を、濃縮器(10000分子量排除限界を有する)を通して遠心分離することにより濃縮し、その後FPLCクロマトグラフィーシステム(Pharmacia)のSuperose 12カラムに供する。カラムをPBSで溶出し、そして溶出プロフィールを280nmで追跡する。
【0191】
4〜20%のポリアクリルアミド濃度勾配ゲル上でSDS-PAGEによって画分を分析し、次いでクマシーブルーで染色する。主要な結合体産物は、105〜115kDaの間の見かけ分子量を有し、これらは、残留する結合体化していないLHN/Cの大部分から分離され、そして結合体化していないIL-13からはより完全に分離されている。
【0192】
結合体を含む画分をプールし、PBSに対して透析し、そして使用するまで4℃で保存する。
【0193】
(実施例4-IL13およびLHN/Cの単一ポリペプチド融合結合体の生成)
IL-13-LHN/C融合体の調製について以下に記載した方法は、一部、IL-13の組換え単一ポリペプチド融合体を記載している以前の研究(例えば、IL-13とシュードモナス外毒素の短縮型との組換え融合体の調製(Debinskiら, 1995, J.Biol. Chem., 270, 16775-16780);IL-13-ジフテリア毒素融合体の調製(Liら, 2002, Prot Eng., 15,419-427))に由来する。
【0194】
(方法)
サイトカインエンドペプチダーゼ融合遺伝子は、LHN/CにスプライシングされたヒトIL-13をコードするDNAフラグメント(配列情報についてはGenBank Accession NM_002188を参照のこと)と、インターロイキン-エンドペプチダーゼ接合部に導入された種々の短いリンカーとを用いてアセンブルされる。天然のLHN/C配列内には、第Xa因子による切断を受けやすい特異的活性化部位がある。
【0195】
LHN/C-IL-13融合体を、マルトース結合タンパク質-LHN/C-リンカー-IL13融合体として、標準的な条件下でE. coliで発現させ、そして可溶タンパク質を、N末端アフィニティータグを用いて単離する。第Xa因子での融合体の切断後、活性化したLHN/C-IL13をイオン交換クロマトグラフィーによって単離する。
【0196】
(実施例5-粘液放出細胞におけるIL-13-LHN/C結合体の活性)
IL13-LHN/Cが粘液放出の有効なインヒビターであることを確認するために、ヒト結腸上皮細胞系LS180および正常ヒト気管支上皮(NHTBE)細胞系のインビトロ培養物からのムチンの放出に対するIL13-LHN/Cの効果を測定する。IL13-LHN/CをLS180細胞およびNHTBE細胞に適用すると、MUC5ACに特異的なELISAにより測定される通り、引き続く刺激されたムチン放出の顕著な減少がある。さらに、インターナライズされたLHN/Cによるシンタキシンの切断を測定して、分泌の阻害の機構がSNAREタンパク質切断を介することを確認する。
【0197】
(材料)
ロノマイシンおよびATPは、Sigmaから得られる。
【0198】
抗MUC5AC抗血清は、Neomarkersから得られる(クローン1-13M1)。
【0199】
ウェスタンブロッティング試薬は、Novex & Amershamから得られる。
【0200】
LS180細胞は、European Collection of Animal Cell Culturesから得られる。
【0201】
NHTBE細胞は、Cloneticsから得られる。
【0202】
(方法)
LS180細胞を24ウェルプレート上に播種し、そしてMEM-Glutamax培地(Gibco)(10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1% pen-Strep、1% NEAA、1% HEPES、1%炭酸水素ナトリウムを含有する)中で使用前に3日間培養する。IL13-LHN/Cを72時間与え、細胞を洗浄して未結合のIL13-LHN/Cを除去し、そしてMUC5ACムチンの刺激された放出をELISAによりアッセイする。
【0203】
NHTBE細胞を、Grayら, Am. J. Respir. Cell Biol., 14,104-112 (1996)に記載の方法で培養する。簡潔には、P2細胞をTranswell-COLコラーゲンコーティングメンブレン支持体(12ウェル)中に播種し、そして気管支上皮細胞増殖培地(BEGM)中で7日間培養する。8日目に、メンブレンの上の培地を除去して気液界面を作出し、そして細胞を、繊毛が発達するまで、さらに4週間培養する。次いで、培養物を実験使用のために準備する。IL13-LHN/Cを72時間与え、そして細胞を洗浄して未結合のIL13-LHN/Cを除去し、そしてMUC5ACムチンの刺激された放出をELISAによりアッセイする。
【0204】
IL13-LHN/C処理後、細胞を1ml/ウェルの基底塩類溶液(BSS)で3回洗浄する。次いで、BSSを0.5ml/ウェルで添加し、そして細胞を37℃にて30分間インキュベートする。次いで、BSSを氷上でエッペンドルフに移し、そして刺激因子(LS180に対しては、10μMロノマイシン;NCI-H292に対しては、300μM ATP)を含有するBSSと置き換える。再度細胞を37℃にて30分間インキュベートする。次いで、灌流液をまた氷上でエッペンドルフに移す。次いで、細胞を450μ1の0.2M NaOH/ウェルで室温にて10分間溶解させ、そして450μlの0.2M HClで中和する。細胞をプレートから掻き取り、そして溶解物を印を付けたエッペンドルフに移す。溶解物を半分に分割し、その一方にELISAのために50μl HEPESを添加する。残留する溶解物を膜タンパク質分析のために処理する。全てのサンプルをアッセイまで-20℃で保存する。
【0205】
ELISAのために、サンプルを4℃で溶解し、13,000×gで10分間遠心分離し、そしてELISAを実施する。100μlの上清を、各チューブから96ウェルmaxisorpプレート(Nunc)に、二連で、ピペットにより移す。50μlのアッセイ緩衝液をブランクとして使用する。プレートを、40℃のオーブン中に一晩、または乾燥するまで静置し、次いでPBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。プレートを、振盪器上で室温にて1時間、2% BSA、画分Vを含有する100μl PBSでブロックし、次いで再度PBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。次いで、プレートを50μlの抗MUC5AC(クローン1-13M1, Neomarkers)(PBST(0.05% tween)中で1:1000希釈)と共に、振盪器上で室温にて1時間インキュベートし、PBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ抗マウスIgG(1:2000)を各ウェルに添加し、振盪器上で室温にて1時間インキュベートし、プレートをPBS中で3回洗浄し、そしてドライブロットする。200μlのTMBを各ウェルに添加し、発色させ、次いで50μlの0.5M HClを添加して反応を停止させる。最終呈色反応を450nmで読み取る。
【0206】
膜タンパク質分析のための溶解物に、膜タンパク質を抽出するためにTriton-X-114(10%、v/v)を添加し、そして4℃にて60分インキュベートする。不溶性の物質を遠心分離により除去し、そして上清を30分間37℃まで加温する。得られた二相を遠心分離により分離し、そして上の相を捨てる。下の相中のタンパク質を、ウェスタンブロッティングによる分析のためにクロロホルム/メタノールで沈殿させる。
【0207】
サンプルをSDS-PAGEにより分離させ、そしてニトロセルロース上に転写させる。次いで、シンタキシン(分泌プロセスの重要な構成部分であり、そしてBoNT/Cの亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性の基質である)のタンパク質分解を抗シンタキシン抗体(クローンHPC-1, Sigma)でプローブすることにより検出する。この抗体は、シンタキシンのインタクトな形態および切断された形態の両方を認識する。切断されたシンタキシンが観察される。
【0208】
(実施例6-COPDのエクスビボモデルにおけるIL13-LHN/Cの活性)
粘液分泌に対するIL13-LHN/Cの効果をエクスビボの気管器官浴気道モデル(フェレット気管)で研究する。切断SNAREタンパク質に対する抗血清により、組織サンプルでの切断基質タンパク質に対する免疫細胞化学が可能になる。基質タンパク質の切断は、Ramnarineら, Br. J. Pharmacol. 113,1183-1190 (1994)に記載のようにUssingチャンバーを用いるエクスビボ気管での粘液分泌の測定により、刺激された粘液分泌の遮断と相関している。簡潔には、組織を[35S]O4に曝露して粘液中の硫酸化残基を放射性標識し、そして電気刺激または特異的Cファイバーアゴニストであるカプサイシンにより刺激した粘液分泌に対するIL13-LHN/Cの効果を評価する。
【0209】
(実施例7-COPDの症状の低減におけるIL13-LHN/Cのインビボ効力)
慢性閉塞性肺障害を罹患した患者(55歳)に、気道内投与(例えば、ネブライザー)により、IL13-LHN結合体を含む剤を0.0001mg/kgと1mg/kgとの間で処置する。具体的な剤用量および注入部位ならびに剤投与頻度は、前述したように処置医の技量の範囲内で種々の要因に依存する。剤投与後1〜7日以内に、患者の症状は、実質的に軽減される。症状の軽減期間は、約2ヶ月から約6ヶ月である。
【0210】
慢性閉塞性肺障害を罹患した別の患者(63歳)に、気道内投与(例えば、ネブライザー)により、IL13-LHN結合体を含む剤を0.0001mg/kgと1mg/kgとの間で処置する。具体的な剤用量および注入部位ならびに剤投与頻度は、前述したように処置医の技量の範囲内で種々の要因に依存する。第1日のうちに粘液の過剰放出により症状が悪化するので、患者には、IL13刺激粘液分泌から生じる症状のインヒビターとして短期作用性粘液溶解剤(例えば、カルボシステイン、塩酸メチステイン)を処置する。粘液溶解剤の使用は2日後に停止する。剤投与後3〜7日以内に、患者の症状は、実質的に軽減される。症状の軽減期間は、約2ヶ月から約6ヶ月である。
【0211】
(実施例8-IL13-IgAプロテアーゼの単一ポリペプチド融合体の生成)
(方法)
サイトカインエンドペプチダーゼ融合遺伝子は、IgAプロテアーゼにスプライシングされたヒトIL-13をコードするDNAフラグメント(配列情報についてはGenBank Accession NM_002188を参照のこと)と、インターロイキン-プロテアーゼ接合部に導入された種々の短いリンカーとを用いてアセンブルされる。N. gonorrhoeae由来のIgAプロテアーゼをコードする遺伝子は公知である。ここからプライマーを作成し、そして特異的プロテアーゼをコードする遺伝子をN. gonorrhoeaeから得た核酸調製物からPCRによって単離する。
【0212】
IgAプロテアーゼのコード領域を、IL13をコードする遺伝子の3’末端側にフレームを合わせて挿入し、そしてIL13-IgA融合体を表す全カセットを発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-IL13-IgAを作出する。この構築物で、マルトース結合タンパク質構成部分は、第Xa因子プロテアーゼでの処理により融合体から除去され得る。
【0213】
pMAL-c2x-IL13-IgAをE. coliに形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中に培養する。誘導前細菌増殖を、8.0のOD600nmに30℃にて維持し、この段階で、recMBP-IL13-IgAの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして培養温度を25℃に下げることによって誘導する。25℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを-70℃で保存する。
【0214】
細胞ペーストを50mM Hepes pH 7.2、1μM ZnCl2中に1:6(w/v)で再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を達成する。得られた懸濁液を遠心分離によって清澄化した後、精製する。
【0215】
細胞破壊および清澄化後、MBP-融合タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーにより単離する。100μg融合タンパク質当たり1Uの第Xa因子(NEB)と共に22℃にて16時間インキュベーションすることにより、融合体を切断してMBP精製タグを除去することができる。切断したタンパク質を、さらなるイオン交換工程により遊離MBPから分離する。
【0216】
(実施例9-インスリンのアゴニスト活性の評価)
インスリンは、インスリンレセプターとの相互作用および下流のシグナリング分子の引き続く活性化を介して標的細胞に作用する。インスリンが本発明におけるアゴニストであること、すなわち、インスリンが細胞外への小胞融合を増大することを実証するために、以下の方法を用い得る。
【0217】
まず、細胞の原形質膜におけるGLUT4の提示を、原形質膜シートの免疫蛍光染色によりモニタリングし得る(Fingarら, 1993, J. Biol. Chem., 268, 3005-3008に記載)。3T3-L1細胞をカバーガラス上で増殖および分化させる。インスリンでの処理後、カバーガラスを、50mM Hepes(pH 7.4)および100mM NaClを含有する氷冷緩衝液中で洗浄する。次いで、細胞を、20mM Hepes(pH 7.4)、100mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、1μg/mlロイペプチン、10μg/mlアプロチニン、および2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含有する緩衝液中で超音波処理に供する。原形質膜シートをC末端GLUT4ペプチドに対して惹起したウサギ抗血清とインキュベートし、続いてローダミン結合抗ウサギIgGと二次インキュベートする。画像を共焦点顕微鏡検査により得る。コントロール細胞に比較してインスリン処理細胞からの膜において、原形質膜に局在したGLUT4に起因する増大した蛍光が観察される。
【0218】
第二に、細胞の原形質膜におけるGLUT4の提示の効果を、3T3-L1脂肪細胞への増強されたグルコース取り込みの評価によってモニタリングし得る。脂肪細胞を2時間血清枯渇した後、細胞をインスリン(100nM)で20分間処理し、2回洗浄し、そしてグルコース輸送を10μM 2-デオキシ-D-グルコース(0.5μCi/ml 2-デオキシ-D-[3H]グルコース)を含有するHEPES緩衝化生理食塩溶液(140mM NaCl、20mM HEPES-Na、2.5mM MgSO4、1mM CaCl2、5mM KCl、pH 7.4)中でアッセイする。37℃にて10分後、グルコース溶液の吸引および氷冷リン酸緩衝化生理食塩水での迅速な洗浄により、反応を停止させる。0.2M NaOHの添加により細胞を溶解し、そしてこの溶液を0.2M HClの添加により中和する。液体シンチレーション計数により[3H]2-デオキシグルコースの取り込みを測定する。
【0219】
(実施例10-触媒により活性な組換えLHN/Bの発現および精製)
以下に記載の方法は、LHN/Bポリペプチドをコードする適切なプラスミドで形質転換したE. coliから触媒により活性なLHN/Bプロテアーゼを精製する。適切なLHN/AポリペプチドおよびLHN/Bポリペプチドの種々の配列がPCT/GB97/02273、US6461617特許、および米国特許出願10/241596(参照文献として本明細書中に援用する)に記載されていることに留意されたい。
【0220】
(方法)
LHN/Bのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Bを作出する。この構築物で、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Bポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離され、そしてLCドメインおよびHNドメインは、エンテロキナーゼでの切断を受けやすいペプチドによって分離されている。発現クローンをpMAL-c2X-synLHN/Bと称する。
【0221】
pMAL-c2x-synLHN/BをE. coli HMS174に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中に培養する。誘導前細菌増殖を、5.0のOD600nmに37℃にて維持し、この段階で、recMBP-LHN/Bの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして培養温度を30℃に下げることによって誘導する。30℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを-70℃で保存する。
【0222】
細胞ペーストを20mM Hepes pH 7.2、125mM NaCl、1μM ZnCl2中に再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を達成する。得られた懸濁液を遠心分離によって清澄化した後、精製する。
【0223】
細胞破壊後、MBP-融合タンパク質を、20mM Hepes pH 7.2、125mM NaCl、1μM ZnCl2中アミロースアフィニティー樹脂上、または50mM Hepes pH 7.2、1μM ZnCl2(塩添加なし)中Q-セファロースFFアニオン交換樹脂上のいずれかで捕獲する。10mMマルトースを加えた同じ緩衝液中のアミロース樹脂から、および150〜200mM塩中のQ-セファロースから、単一ピークを溶出する。MBP-LHN/B接合部の切断は、1U/50μg融合タンパク質で第Xa因子(NEB)との22℃にての18時間インキュベーションで完了する。少なくとも4mg/mlの基質(MBP-LHN/B)濃度が、効率的な切断を生じるのに望ましい。
【0224】
切断したタンパク質を、20mM Hepes、25mM NaCl、1μM ZnCl2、pH 7.2の緩衝液組成となるように20mM Hepesで希釈し、そしてQ-セファロースカラムに通してLHN/BからMBPを分離する。LHN/Bを、120〜170mM塩を有するQ-セファロースカラムから溶出する。次いで、軽鎖とHNドメインとの間のリンカーに、100μgのLHN/B当たり1Uのエンテロキナーゼと22℃にて16時間インキュベートすることによって切り目を入れる。最後に、ベンズアミジンセファロースカラムを4℃にて30分間インキュベートすることにより、エンテロキナーゼを樹脂に優先的に結合させて、切り目を入れたLHN/Bおよび他の夾雑タンパク質から分離する。精製したLHN/Bを必要になるまで-20℃で保存する。recLHN/Bの精製スキームの図示について図2を参照のこと。
【0225】
(実施例11-インスリン-LHN/B結合体の生成)
(材料)
インスリンは、Sigmaから入手した。
【0226】
LHN/Bは、実施例10に記載のようにE. coliから得た。
【0227】
(方法)
凍結乾燥したヒトインスリンを50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、5mM EDTA中で再水和し、10mg/mlの最終濃度とする。SATA試薬を650mM(150mg/ml)の濃度でDMSO中に溶解する。
【0228】
各1mlのインスリン溶液に10μlのSATA溶液を添加し、穏やかに混合し、次いで4℃にて一晩インキュベートしてインスリンの誘導体化を達成する。誘導体化したインスリンを反応成分および副産物から分離するために、誘導体化混合物をPD-10カラム(50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、1mM EDTA中で予め平衡化した)に供する。
【0229】
アセチル化SH基を脱保護するために、100μlの0.5M塩酸ヒドロキシルアミン(50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、25mM EDTA中)を各1mlのSATA修飾インスリン溶液に添加する。これらの材料を混合し、そして室温にて2時間反応させ、その後スルフヒドリル修飾インスリンを50mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)、1mM EDTA中で平衡化したPD-10カラムに通すことによって精製する。
【0230】
LHN/BをPBS中に脱塩し、そして得られた溶液(2mg/ml)をDMSO中SPDPの10mMストック溶液の添加によって3倍モル過剰のSPDPと反応させる。室温にて4時間後、PBSE中にPD-10カラムで脱塩することにより反応を終結させる。
【0231】
誘導体化したLHN/Bの一部を溶液から取り出し、そしてDTT(5mM、30分)で還元する。このサンプルを280nmおよび343nmで分光分析し、誘導体化の程度を決定する。達成した誘導体化の程度は、およそ2.5mol/molである。
【0232】
誘導体化したLHN/Bの大部分および誘導体化したインスリンを、インスリンが3倍モル過剰よりも多くなるような割合で混合する。結合体化反応を4℃にて16時間以上進行させる。
【0233】
生成物の混合物を遠心分離し、生じた沈殿物を除く。上清を、濃縮器(10000分子量排除限界を有する)を通して遠心分離することにより濃縮し、その後FPLCクロマトグラフィーシステム(Pharmacia)のSuperose 12カラムに供する。カラムをPBSで溶出し、そして溶出プロフィールを280nmで追跡する。
【0234】
4〜20%のポリアクリルアミド濃度勾配ゲル上でSDS-PAGEによって画分を分析し、次いでクマシーブルーで染色する。主要な結合体産物は、100〜110kDaの間の見かけ分子量を有し、これらは、残留する結合体化していないLHN/Bの大部分から分離され、そして結合体化していないインスリンからはより完全に分離されている。
【0235】
(実施例12-脂肪細胞におけるインスリン-LHN/Bの活性)
細胞の原形質膜におけるGLUT4の提示を、原形質膜シートの免疫蛍光染色によりモニタリングし得る(Fingarら, 1993, J. Biol. Chem., 268, 3005-3008に記載)。3T3-L1細胞をカバーガラス上で増殖および分化させる。種々の濃度のインスリンまたはインスリン-LHN/Bでの処理後、細胞を2回洗浄し、そして無血清ダルベッコ改変イーグル培地中で8%CO2中にて2時間インキュベートし、その後、細胞をクレブスリンガーリン酸緩衝液(100mMインスリンを添加または添加せず)中で37℃にて15分間インキュベートする。次いで、カバーガラスを、50mM Hepes(pH 7.4)および100mM NaClを含有する氷冷緩衝液中で洗浄する。次いで、細胞を、20mM Hepes(pH 7.4)、100mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、1μg/mlロイペプチン、10μg/mlアプロチニン、および2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含有する緩衝液中で超音波処理に供する。原形質膜シートをC末端GLUT4ペプチドに対して惹起したウサギ抗血清とインキュベートし、続いてローダミン結合抗ウサギIgGとインキュベートする。画像を共焦点顕微鏡検査により得る。コントロール細胞に比較してインスリン処理細胞からの膜において、原形質膜に局在したGLUT4に起因する蛍光増大が観察される。対照的に、コントロールに比較してインスリン-LHN/B処理細胞からの膜において、原形質膜GLUT4の提示の減少が観察される。
【0236】
あるいは、脂肪細胞へのグルコース取り込みの長期の減少を評価し得る。3T3-L1脂肪細胞を、既報(Frost, SCおよびLane, MD. 1985, J. Biol. Chem., 260, 2646-252)の通りに、デキサメタゾン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、およびインスリンでの処理により3T3-L1線維芽細胞から分化させる。分化の7日後、3T3-L1脂肪細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地中に希釈した種々の濃度のインスリン-LHN/B結合体で処理する。細胞を8%CO2中37℃にて24〜72時間インキュベートする。細胞を2回洗浄し、そして無血清ダルベッコ改変イーグル培地中で8%CO2中にて2時間インキュベートし、その後、細胞をクレブスリンガーリン酸緩衝液(100mMインスリンを添加または添加せず)中で37℃にて15分間インキュベートする。グルコース取り込みを[3H]2-デオキシグルコースの添加により開始させる。37℃にて10分後、グルコース溶液の吸引および氷冷リン酸緩衝化生理食塩水での迅速な洗浄により、反応を停止させる。0.2M NaOHの添加により細胞を溶解し、そしてこの溶液を0.2M HClの添加により中和する。液体シンチレーション計数により[3H]2-デオキシグルコースの取り込みを測定する。
【0237】
(実施例13-肥満症の症状の低減におけるインスリン-LHN/Bのインビボ効力)
慢性肥満症を罹患した患者(34歳)にインスリン-LHN/B結合体を含む剤を0.0001mg/kgと1mg/kgとの間で投与することにより処置する。具体的な剤用量および注入部位ならびに剤投与頻度は、前述したように処置医の技量の範囲内で種々の要因に依存する。適切な低血糖食と組み合わせた場合、投与の4週間後に、患者の症状は、実質的に軽減される。症状の軽減期間は、約2ヶ月から約6ヶ月である。
【0238】
(実施例14-肥満細胞顆粒減少ペプチド(MCDペプチド)のアゴニスト活性の評価)
肥満細胞顆粒減少(MCD)ペプチドが肥満細胞から炎症メディエーターの放出を開始させ得ることは十分に文書化されている(Bakuの評論記事;1999, Peptides, 20, 415-420を参照のこと)。このため、MCDペプチドのアゴニスト特性の実験評価は必要ではない。
【0239】
(実施例15-MCDペプチドおよびLHN/Cの単一ポリペプチド融合体の生成)
(方法)
ペプチドエンドペプチダーゼ融合遺伝子は、LHN/CポリペプチドをコードするDNAの3’末端側に、スプライシングされたヒトMCDペプチドをコードするDNAフラグメント(配列情報についてはBaku, 1999, Peptides, 20, 415-420またはGenBank Accession S78459を参照のこと)をアセンブルして得られる。種々の短いリンカーをMCDペプチド-エンドペプチダーゼ接合部に導入する。天然のLHN/C配列内には、第Xa因子による切断を受けやすい特異的活性化部位がある。
【0240】
LHN/C-MCDペプチド融合体を、マルトース結合タンパク質-LHN/C-リンカー-MCD融合体として、標準的な条件下でE. coliで発現させ、そして可溶タンパク質を、N末端アフィニティータグを用いて単離する。第Xa因子での融合体の切断後、活性化したLHN/C-MCDペプチドをイオン交換クロマトグラフィーによって単離する。
【0241】
(実施例16-肥満細胞におけるMCDペプチド-LHN/Cの活性)
肥満細胞を大きな(300g以上)雄のSprague Dawleyラットの腹膜灌流法により得る。肥満細胞を、Percollのクッションを通して遠心分離することにより、夾雑する細胞型から単離する。それらを再懸濁および遠心分離により2回洗浄し、そして最後に、等張の緩衝化塩類溶液(290mOsm)(これは、NaCl(137mM)、KCl(2.7mM)、MgCl2(2mM)、PIPES(20mM)、BSA(1mg/ml)を含む)(pH 6.8)中に懸濁する。細胞をMCDペプチド-LHN/Cと37℃にて16時間インキュベートし、再懸濁および遠心分離により2回洗浄し、そして次いで緩衝化塩類溶液中におよそ3×105細胞/mlで懸濁する。細胞を96V底ウェルマイクロタイタープレートのウェルに移す。肥満細胞をIgE架橋により顆粒減少するように刺激する。精製した肥満細胞(1ウェルあたり90μl)を抗IgE(3μg/ml)で37℃にて2時間攻撃する。インキュベーション後、100μlの氷冷緩衝液の添加により反応を停止させ、そして細胞を遠心分離(5分、400g、4℃にて)により沈降させる。β-D-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ヘキソサミニダーゼ)の分泌分析のために、上清のサンプル(50μl)を黒のプラスチック製の不透明なマイクロタイタープレート中の対応するウェルに移す。50μlの4-メチルウンベリフェリル-アセチル-β-Dグルコサミニド(Triton X100
0.01%含有のクエン酸Na、200mM、pH 4.5中1mM))溶液の添加により、反応を開始させる。37℃にて約3時間のインキュベーション後、150μlのTRIS(0.2M)の添加により、反応を終結させる。蛍光(355〜460nm)をマイクロタイタープレートリーダーで測定する。分泌%の算定は、無細胞およびTriton X100(0.1%)により放出された全細胞ヘキソミニダーゼ含有物を用いて測定した蛍光の比較に基づく。
【0242】
(実施例17-喘息の症状の低減におけるMCDペプチド-LHN/Cのインビボ効力)
喘息を罹患した患者(35歳)に、気道内投与(例えば、ネブライザー)により、MCDペプチド-LHN/C結合体を含む剤を0.0001mg/kgと1mg/kgとの間で処置する。具体的な剤用量および注入部位ならびに剤投与頻度は、前述したように処置医の技量の範囲内で種々の要因に依存する。剤投与後1〜7日以内に、患者の症状は、実質的に軽減される。剤投与後に患者が被る症状の重篤度の短期の増大を軽減するために、肥満細胞安定剤であるクロモグリク酸二ナトリウムを投与する。症状の軽減期間は、約2ヶ月から約6ヶ月である。
【0243】
(実施例18-IL4アゴニスト活性の評価)
IL4がアゴニストである、すなわち、IL4が標的細胞において細胞外への融合を増大することを確認するために、CD23(低アフィニティーIgEレセプター)の膜提示に対するIL4の効果を測定する。
【0244】
(材料)
ヒトIL4は、Sigmaから得た。
【0245】
(方法)
B細胞表面抗原(例えば、CD23)の発現に対するIL4の効果をフローサイトメトリーにより調べる。30U/mlのIL4の存在下での48時間のヒト単核細胞のインキュベーションは、抗CD23モノクローナル抗体(Becton Dickenson)を用いるフローサイトメトリーにより同定される通り、CD23発現の強い誘導を生じる。
【0246】
(実施例19-IL4-LHN/Cの単一ポリペプチド融合体の生成)
IL4-LHN/C融合体の調製について以下に記載した方法は、IL13-LHN/Cについて前に記載した方法に類似する。
【0247】
(方法)
サイトカインエンドペプチダーゼ融合遺伝子は、LHN/CにスプライシングされたヒトIL-4をコードするDNAフラグメント(配列情報についてはGenBank Accession AF395008を参照のこと)と、インターロイキン-エンドペプチダーゼ接合部に導入された種々の短いリンカーとを用いてアセンブルされる。天然のLHN/C配列内には、第Xa因子による切断を受けやすい特異的活性化部位がある。
【0248】
LHN/C-IL-4融合体を、マルトース結合タンパク質-LHN/C-リンカー-IL4融合体として、標準的な条件下でE. coliで発現させ、そして可溶タンパク質を、N末端アフィニティータグを用いて単離する。第Xa因子での融合体の切断後、活性化したLHN/C-IL4をイオン交換クロマトグラフィーによって単離する。
【0249】
(実施例20-ヒト単核細胞におけるIgEレセプターCD23の表面発現の妨害におけるIL4-LHN/Cの活性)
IL4-LHN/Cがヒト単核細胞の表面におけるCD23発現の有効なインヒビターであることを、CD23(低アフィニティーIgEレセプター)の膜提示を測定して、確認する。
【0250】
(方法)
CD23の発現に対するIL4-LHN/C結合体の効果をフローサイトメトリーにより調べる。ヒト単核細胞を、IL4-LHN/Cの存在下で48時間インキュベートする。続く30U/mlのIL4での刺激により、抗CD23モノクローナル抗体(Becton Dickenson)を用いるフローサイトメトリーによって同定される通り、未処理細胞に比較して結合体処理単核細胞においてCD23発現の強い低下が引き起こされる。
【0251】
(実施例21-TNFαアゴニスト活性の評価)
TNFアルファ(TNFα)がアゴニストであることを確認するために、可溶性E-セレクチンの放出ならびにP-セレクチンおよび血管細胞接着分子1(VCAM-1)発現に対する炎症性サイトカインの効果を、滑膜微小血管内皮細胞(SMEC)および巨大血管性ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVE)を用いて調べる。TNFα刺激内皮細胞におけるVCAMおよびP-セレクチン発現およびE-セレクチンの放出の刺激は、TNFαのアゴニスト活性を示す。
【0252】
(材料)
抗ラットE-セレクチン、P-セレクチンおよびVCAM-1は、Sigmaから得た。
【0253】
ラットTNFαは、Sigmaから得た。
【0254】
E-セレクチン放出の評価のためのELISA材料は、Biocarta USから得た。
【0255】
(方法)
培養内皮細胞(HUVEおよびSMEC)を培地単独またはTNFαで4時間処理する。セレクチンおよび内皮接着分子(VCAM)の発現をフローサイトメトリーにより評価する(Polgarら, 2002, Blood, 100(3), 1081-3に記載)。一方、E-セレクチンの放出を、細胞から取り出した上清のELISA(製造者により供給される方法に従う)により測定する。
【0256】
(実施例22-炎症の症状の低減におけるTNFα-LHN/Cのインビボ効力)
インビトロでの研究は、TNFαがリウマチ様関節における炎症経路の重大かつ近位のメディエーターであることを示す。TNFα-LHN/Cは、炎症を劇的に低減し、そして疾患発症時における早期治療およびより遅い段階での治療の両方において構造上の損傷を遅延させるかまたは停止する。ヒトに関していえば、これらの効力は、機能不全を少なくし、生活の質を高めるといえる。
【0257】
RA状態を示す56歳の患者に、TNFα-LHN/C結合体を含む剤を0.0001mg/kgと1mg/kgとの間で処置する。この剤は、P-セレクチンの小胞放出を妨害し、24時間以内に関節の疼痛、こわばり、腫脹、および圧痛の症状の顕著な低減に至る。最大の恩恵は、およそ2〜4ヶ月の間で見られる。
【0258】
慢性関節リウマチ(RA)および炎症性腸疾患におけるTNFα-LHN/Cでの処置に対する応答は、主にマクロファージ駆動性である任意の慢性(非感染性)炎症性疾患(例えば、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬性関節炎、および鬱血性心不全)において再生されるようである。
【0259】
(実施例23-海馬ニューロンおよび大脳皮質ニューロンにおけるNMDAチャネルの提示を増大するインスリンのアゴニスト活性の評価)
インスリン、インスリンレセプター、およびそれらの基質は、海馬および大脳皮質のシナプスにおいて豊富であり、これらの部位で、それらは、多くの機能(グルコース代謝制御、遺伝子発現、およびシナプス可塑性を含む)を行うと考えられる。
【0260】
種々の方法を用いて、Skeberdisら(Proc. Natl. Acad. Sci., 2001, 98(6), 3561-3566)は、インスリン処理が、調節されたエキソサイトーシスによる原形質膜への新規なNMDAチャネルの送達を生じること、すなわち、インスリンが細胞外への融合を増大させることを実証している。これは、SNAP-25の切断後に細胞表面へのNMDAチャネルのインスリン誘導送達の減少を示すことにより確認されている。文献に十分に記載されているが、理解を助けるために、チャネル提示に関してインスリンのアゴニスト活性を確認するための方法を、本明細書中に再現する。
【0261】
まず、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞で発現される組換えNMDAの活性のインスリンによる上昇を電気生理学により調べる。成体雌アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(Xenopus I, Ann Arbor MI)を温度と光照射とを制御した環境で飼育し、そしてNMDAチャネルのサブユニットをコードするインビトロ転写mRNA(20ng mRNA/細胞)を注入する。既報(Zheng, X., Zhang, L., Wang, A. P., Bennett, M. V. L.およびZukin, R. S. (1997) J. Neurosci. 17, 8676-8686)どおりに、電圧固定法で常温にて、卵母細胞(注入2〜6日後)から全細胞電流を記録する。記録は、インスリンが、NMDAチャネル修飾よりも増大したチャネル提示に関わる機構によって、NMDAチャネル依存性電流を上昇させることを示している。
【0262】
パッチクランプ記録は、NMDAチャネル提示のウェスタンブロット分析により補足される。NMDAチャネルのNR1サブユニットに特異的な抗体および表面タンパク質ビオチン化プロトコル(Chen, N., Luo, T.およびRaymond, L. A. (1999) J. Neurosci. 19, 6844-6854により記載)を用いて、チャネルの増強した発現が観察される。
【0263】
(実施例24-LC/CをコードするDNAを細胞に送達するための結合体の生成)
Cottonら(Cotton, M., Wagner, E.およびBirnstiel, L. (1993) Receptor-mediated transport of DNA into eukaryotic cells. Methods in Enzymol. 217, 619-645)およびその他により記載の方法に従って、目的のタンパク質をコードするDNAを、タンパク質-DNA結合体のレセプター媒介エンドサイトーシスを通じて真核生物細胞にトランスフェクトし得る。ポリカチオン性リガンドを用いて適切な大きさにDNAを凝縮するために、いくつかの方法が存在する。これらは、以下を含む:ポリリジン、種々のカチオン性ペプチド、およびカチオン性リポソーム。これらのうち、レセプター媒介トランスフェクション研究においてその使用の成功が報告されている(Cottonら, 1993)ので、ポリリジンを本研究で使用した。このようなアプローチを用いて、IL13-HN-[LC/C]結合体の構築を以下に記載する。ここで、[LC/C]は、ボツリヌス菌神経毒素C型の軽鎖をコードするポリリジン凝縮DNAを表す。
【0264】
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から得られる。
【0265】
さらなる試薬は、Sigma Ltd.から得られる。
【0266】
(方法)
IL-13-HN/C融合体の調製について以下に記載した方法は、一部、IL-13の組換え単一ポリペプチド融合体を記載している以前の研究(例えば、IL-13とシュードモナス外毒素の短縮型との組換え融合体の調製(Debinskiら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 16775-16780);IL-13-ジフテリア毒素融合体の調製(Liら, 2002, Prot Eng., 15,419-427))に由来する。
【0267】
サイトカイン-HN/C融合遺伝子は、BoNT/CのHNドメインにスプライシングされたヒトIL-13をコードするDNAフラグメント(配列情報についてはGenBank Accession NM_002188を参照のこと)と、インターロイキン-トランスロケーションドメイン接合部に導入された正確な折り畳みを容易にするための種々の短いリンカーとを用いてアセンブルされる。
【0268】
あるいは、HN-IL-13融合遺伝子を、実施例4に記載のLHN/C-IL-13構築物からのポリメラーゼ連鎖反応により誘導する。いずれかの方法により誘導した融合体を、マルトース結合タンパク質-HN-リンカー-IL13融合体として、標準的な条件下でE. coliで発現させ、そして可溶タンパク質を、N末端アフィニティータグを用いて単離する。第Xa因子での融合体の切断後、HN-IL13をイオン交換クロマトグラフィーによって単離する。CMV(前初期)プロモーターの制御下にLC/Cをコードする遺伝子を含むプラスミドを用いて、DNAの凝縮を、DNA対ポリリジンが2対1の比になるように、SPDP誘導体化ポリリジンを用いて達成した。次いで、凝縮DNA(0.4mg/ml)をHN-IL-13(100μg/ml)と25℃にて16時間混合することにより、結合体を調製した。SPDP誘導体化ポリリジンとHNドメイン上に存在する遊離SH基とを組み合わせて、DNAとタンパク質との共有結合を容易にする。
【0269】
アゴニスト-H N融合体を生成するための同様の方法が、本特許で例示されているような他のアゴニストに対して使用され得ることは、当業者により理解される。
【0270】
(実施例25-EGFおよびLHN/Cの単一ポリペプチド融合結合体の生成)
上皮増殖因子(EGF)を、本発明の方法に従って、ムチン放出の潜在アゴニストとして同定した。より詳細には、EGFを、文献検討(Perrais, M.ら, (2002) J. Biol. Chem., 8月30日, 277(35), 32258-67頁;およびTakeyama, K.ら, (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 3月16日, 96(6), 3081-6頁)によって同定した。EGFのアゴニスト活性は、該文献によって確認し、そしてまた実施例27によっても確認した。
【0271】
(方法)
エンドペプチダーゼ融合遺伝子は、LHN/CにスプライシングされたヒトEGFをコードするDNAフラグメントと、エンドペプチダーゼ-増殖因子接合部に導入された種々の短いリンカーとを用いてアセンブルされる。天然のLHN/C配列内には、第Xa因子による切断を受けやすい特異的活性化部位がある。
【0272】
融合体の発現を標準的な発現条件を用いて実施する。100μg/mlアンピシリン、37μg/mlクロラムフェニコールを添加した100ml Terrificブロスにmicrobankビーズを添加することにより、終夜培養物を調製し、そして培養を37℃にて225RPMで一晩行う。終夜培養物の100mlを、100μg/mlアンピシリン、37μg/mlクロラムフェニコール、0.5%グルコースを添加した1L Terrificブロスに接種するために使用する。培養物を、OD600が約0.6に達するまで、30℃にてインキュベートし、この段階で、温度を16℃に下げ、そして培養物を約1時間冷却する。融合体の発現を、IPTGを1mMまで添加し、続いて16℃にて一晩培養物をインキュベートすることによって誘導する。培養物を、H6000Aローターを備えたRC3BP遠心分離機で、4500rpmで20分間遠心分離する。細胞ペーストを、50mM Hepes pH 8.0中に再懸濁し、そして精製前は-20℃で保存する。精製を、2つのアフィニティーマトリックスの組み合わせを用いて達成する。以下の緩衝液を予め調製する:
緩衝液A:50mM Hepes pH8.0、200mM NaCl
緩衝液B:50mM Hepes pH8.0、200mM NaCl、20mMマルトース
緩衝液C:50mM Hepes pH8.0、25mM NaCl
緩衝液D:50mM Hepes pH8.0、500mM NaCl、500mMイミダゾール。
【0273】
1リットル培養物からの細胞ペレットを約50mlの緩衝液A中に再懸濁し、そしてPMSFを1mMまで添加する。細胞をホモジナイゼーション(300〜400バール圧で2回通過)または超音波処理(6×30秒パルス)により破壊する。破壊した細胞ペーストを、F16-250ローターにて13Kで(25,560g)、またはmegafugeベンチトップ型遠心機にて4000RPMで60分間、遠心分離する。上清を20mlアミロースカラム上に5ml/分で供し、そして100%緩衝液B中に同じ流速で溶出させる。5ml画分を採集し、プールし、そして緩衝液Aを用いてA280が約0.5になるまで希釈する。第Xa因子を100μgタンパク質あたり1U Fxaに添加し、そしてCaCl2を1mMとする。サンプルを、切断が完了するまで、30℃にて一晩インキュベートする。
【0274】
切断反応プールを緩衝液Cを用いて1/4希釈し、そして予め平衡化しておいた40mlのCu2+荷電キレート化カラム上に緩衝液C中で5ml/分で供する。結合した物質を10%緩衝液Dを用いて5ml/分で溶出させる。2.5ml画分を採集し、プールし、そして緩衝液C中に一晩透析する。
【0275】
透析したプールを30mlアミロースカラム上に2ml/分で供し、そして素通り画分を採集する。結合したMBPは、100%緩衝液Bを用いてカラムから溶出排除され得る。素通り画分を濃縮し、そして使用前に、50mM Hepes pH 7.4中に透析する。
【0276】
材料をアミロースカラム上に供する代わりに、20ml Q-セファロースファストフローカラムを用い得る。この場合、このカラムを緩衝液Cを用いて平衡化し、そして透析したプールを5ml/分で供する。次いで、カラムを50mM Hepes pH 8.0、1M NaCl(25%および50%)を用いて溶出する。画分を採集し、プールし、そして-20℃で保存する。
【0277】
(実施例26-粘液放出細胞におけるEGF-LHN/C融合結合体の活性)
EGF-LHN/Cで3日間処理した細胞において、シンタキシンSNAREタンパク質の用量依存性切断が、ウェスタンブロット技術およびシンタキシンのより小さな切断フラグメントに特異的な抗体(抗AVKY)を用いて検出された。
【0278】
(方法)
EGF-LHN/Cを、最大濃度で150μg/mlのL-グルタミンを補充した無血清培地中で3日間細胞に与える。細胞を、5%CO2下、37℃にてインキュベートする。3日間の処理後、細胞を0.1M NaOH(室温にて10分)および0.1M HClおよび100μM HEPES中に溶解し、そして溶解物をTriton-X 114で可溶化し、そして4℃にて5分間冷却する。次いで、溶解物をエッペンドルフ微小遠心機で、13,000rpmで4℃にて10分間遠心する。室温にて13,000rpmのさらなる遠心分離によって、回収した上清中のいかなる混濁も除去する。次いで、上相を捨て、そしてエタノール、クロロホルム、および水を4:2:3の比で上清に添加する。溶液をボルテックスにより混合し、そして13,000rpmで室温にて10分間遠心する。上相を捨て、そして下相をメタノールの添加および13,000rpmで室温にて10分間のさらなる遠心分離により洗浄する。上清を捨て、そしてペレットを1時間風乾した後に、タンパク質サンプルをSDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングにより分析する。細胞溶解物のウェスタンブロット分析は、LHN/Cフラグメント単独で処理した細胞と比較した場合にシンタキシンタンパク質切断の増大を示す。シンタキシンの融合タンパク質用量依存性切断もまた示され得る。
【0279】
(実施例27-NCI-H292細胞からのムチン放出の評価によるEGFのアゴニスト活性の評価)
(方法)
NCI-H292細胞(ムチン分泌細胞系;これは、ECACC Depositaryから公に入手可能である;例えばAccession No. 91091815)を24ウェルプレート上に播種し、そして5%ウシ胎児血清および5mM L-グルタミンを補充したRPMI培地を用いて給餌する。翌日、細胞に無血清培地中30μg/mlのEGFを与え、そして37℃および5%CO2雰囲気下で3日間インキュベートする。培地を採集し、微小遠心機で13,000gで4℃にて5分間遠心分離し、そして上清を採集する。上清を等量づつ、Maxisorp(tm)ELISAプレートに二連で添加し、そして40℃にて一晩インキュベートする。プレートをPBS中で3回洗浄し、ドライブロットし、そして次いでプレート振盪器上でPBS-Tween 20TM 0.05%および抗MUC4AC抗体(クローン1-13M1 Neomarkers)(1/1000希釈)にて室温にて1時間インキュベートする。プレートをPBS中で3回洗浄し、ドライブロットし、そしてプレート振盪器上でPBS-Tween TM 20 0.05%および抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗体(1/2000希釈)にて室温にて1時間インキュベートする。次いで、プレートをPBS中で3回洗浄し、そして全ウェルに等容量のTMBを添加し、そして発色させる。反応を0.5M HClを用いて停止させ、そして得られたプレートをプレートリーダーにて450nmで読み取る。
【0280】
(結果)
3日間にわたる3μg/mlのEGFは、ELISAにより分析された場合、培地中に放出されるムチンの増加を引き起こす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8