特許第6122244号(P6122244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122244集中力持続性を向上させる作用を有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122244
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】集中力持続性を向上させる作用を有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/81 20060101AFI20170417BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20170417BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A61K36/81
   A61K31/198
   A61K36/18
   A61P25/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-44451(P2012-44451)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180960(P2013-180960A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年2月25日
【審判番号】不服2015-22463(P2015-22463/J1)
【審判請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】北川 乃理子
(72)【発明者】
【氏名】井出 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直美
(72)【発明者】
【氏名】南 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真由美
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 松澤 優子
【審判官】 穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322053号公報
【文献】 特開2002−370979号公報
【文献】 特開2010−195761号公報
【文献】 国際公開第2004/058301号
【文献】 特開2008−31080号公報
【文献】 特開2001−316256号公報
【文献】 特許4402756号公報
【文献】 中国特許出願公開第101637206号明細書
【文献】 Biosci Biotechnol Biochem、1997年、Vol.61、No.10、p.1718−1723
【文献】 Funct Food、2008年、Vol.2、No.3、P.257−261
【文献】 J Pharmacol Sci、2007年、Vol.103、No.Supplement 1、p.222P
【文献】 薬学雑誌、2005年、Vol.125、No.2、p.213−217
【文献】 新しい化粧品素材の効能・効果・作用(上)、1998年、第299,300頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-36/9068,8/97
A23L1/30,2/00
CA,BIOSIS,MEDLINE,EMBASE/STN
JSTPLUS,JMEDPLUS,JST7580/JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウガラシ抽出物及び/又はショウガ抽出物と、一回の経口摂取量当たり150mg以上のテアニンとを含有する、カフェインを含有しない、眠気を抑制し、集中力を高める作用を持続する必要がある際に経口摂取するための、液状組成物。
【請求項2】
一回の経口摂取量当たり、
トウガラシ抽出物を、カプサイシン類が3.5μg以上となるように含有し、且つ
ショウガ抽出物を、ジンゲロールが250μg以上となるように含有する、
請求項1の液状組成物。
【請求項3】
一回の経口摂取量当たり、
トウガラシ抽出物を、カプサイシン類が3.5μg以上となるように含有し、
ショウガ抽出物を、ジンゲロールが250μg以上となるように含有し、
150mg以上のテアニンを含有する、カフェインを含有しない、液状組成物。
【請求項4】
トウガラシ抽出物及び/又はショウガ抽出物と、一回の経口摂取量当たり150mg以上のテアニンとを含有する、カフェインを含有しない、液状である集中力持続性向上剤。
【請求項5】
一回の経口摂取量当たり、
トウガラシ抽出物を、カプサイシン類が3.5μg以上となるように含有し、且つ
ショウガ抽出物を、ジンゲロールが250μg以上となるように含有する、
請求項4の集中力持続性向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取された場合に集中力持続性を向上させる作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にカフェインは中枢神経を興奮させ神経機能を更新させる作用があることが知られている。
一方、メントール、トウガラシ抽出物、ショウガ抽出物などの刺激成分により眠気を解消する技術も各種提案されている。
【0003】
本出願人はこれまでに、カフェイン含有飲料の眠気解消作用を高めた、経口摂取が容易な組成物として、トウガラシ抽出物と、ショウガ抽出物と、アルギニンと、カフェインとを組み合わせて配合した組成物を提供している(特許文献1)。
【0004】
しかしながらカフェインは副作用を有すると考えられており、カフェインを含まない、又はカフェイン含有量が低減された組成物により、眠気防止を図り、集中力持続を向上させることが望まれている。
【0005】
カフェインを用いない精神集中向上用組成物として、テアニンを含有する組成物が特許文献2に開示されている。当該文献によれば、テアニン含有組成物にジンジャーなどの生薬や他の成分を配合することもできる。
【0006】
特許文献3には、カプサイシン、ジンゲロール等の感覚刺激物質の感覚刺激作用を増強させるために、これらの成分に所定の構造を有するキナ酸誘導体を配合することが開示されている。キナ酸誘導体は、緑茶抽出物等の組成物の形態で提供され、当該組成物にはテアニン等の他の成分も包含される。特許文献3における感覚刺激とは、味覚として感じられる清涼感等の刺激を意味している。特許文献3では集中力向上等に関する作用は開示されていない。
【0007】
特許文献4では、(a)テアニン300〜3000ppmと、(b)カフェイン200〜2000ppmとを含み、テアニン対カフェインの比が5:1〜1:15である組成物が、集中力、注意集中力および/または鋭敏性に顕著な改善をもたらすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−195761号公報
【特許文献2】特開2002−370979号公報
【特許文献3】特開2006−104071号公報
【特許文献4】特開2010−63471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カフェインの配合を必須としない、集中力の持続性を高める組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物の一方又は両方と、150mg以上のテアニンとを含有する組成物を経口摂取することにより、眠気が抑制され、集中力が高まること、並びに、これらの作用が長期間持続することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)トウガラシ抽出物及び/又はショウガ抽出物と、150mg以上のテアニンとを含有する組成物。
(2)トウガラシ抽出物を、カプサイシン類が3.5μg以上となるように含有し、且つ
ショウガ抽出物を、ジンゲロールが250μg以上となるように含有する、
(1)の組成物。
(3)液状である、(1)又は(2)の組成物。
(4)トウガラシ抽出物及び/又はショウガ抽出物と、150mg以上のテアニンとを含有する集中力持続性向上剤。
(5)実質的にカフェインを含有しない、(4)の集中力持続性向上剤。
(6)液状である、(4)又は(5)の集中力持続性向上剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物を経口摂取することにより、眠気が抑制され、集中力が高まる。これらの作用は長期間持続する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はクレペリン検査の結果を示す図である。
図2図2はフリッカー検査(上昇法)の結果を示す図である。
図3図3はVAS法による「集中」の評価結果を示す図である。
図4図4はVAS法による「眠気」の評価結果を示す図である。
図5図5はVAS法による「仕事がはかどる」の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<トウガラシ抽出物>
トウガラシ抽出物は、トウガラシの果実部分を有機溶媒、水、超臨界流体または亜臨界流体である溶媒により抽出することにより得ることができる。トウガラシ抽出物には、辛味受容体であるTRV1受容体に作用して辛味を感じさせるカプサイシン類が含まれる。トウガラシ抽出物としては、溶媒による抽出液をそのまま使用することもできるし、抽出液を濃縮または希釈したものを使用することもできるし、抽出液からカプサイシン類を精製または粗精製したものを使用することもできる。抽出溶媒としてはカプサイシン類を抽出することができる溶媒であれば特に限定されないが、エタノールが好ましい。トウガラシ抽出物中にはカプサイシン類が通常0.7〜0.9重量%含有される。カプサイシン類濃度はHPLC法により測定することができる。なお、カプサイシン類の量(カプサイシン量)はカプサイシンとジヒドロカプサイシンの総量である。本発明では、カプサイシンおよびジヒドロカプサイシンを総称して「カプサイシン類」または単に「カプサイシン」と称することがある。
【0015】
トウガラシ抽出物は、本発明の組成物中に集中力持続性向上効果が得られる量配合されるのが望ましい。このような量としては、例えば最終組成物中に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、カプサイシン類が3.5μg以上、より好ましくは4.5μg以上、特に好ましくは5.0μg〜56μgとなる量のトウガラシ抽出物が配合される。トウガラシ抽出物の配合量の上限については限定がないが、前記の範囲で強い辛味を感じさせず、食しやすい風味の組成物が得られる。例えばトウガラシ抽出物は、本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、カプサイシン類が56μg以下となる量配合される。
【0016】
ここで「一回の経口摂取量」とは、本発明の組成物または集中力持続性向上剤が短い時間間隔(例えば10分以下の時間)をおいて断続的に、または連続的に経口摂取される量を指し、本発明の組成物または集中力持続性向上剤が液状物である場合には例えば50〜200ml、代表的には100mlがその量であり、固形状、半固形状等の他の形態である場合には、夫々の形態に応じたの量である。以下でも「一回の経口摂取量」をこの意味で用いる。
なお、上記トウガラシ抽出物は、ショウガ抽出物と組み合わせて配合することにより、経口摂取に適した食しやすい風味となる。
【0017】
<ショウガ抽出物>
ショウガ抽出物は、ショウガの地下茎部分を有機溶媒、水、超臨界流体または亜臨界流体である溶媒により抽出して得られる。ショウガ抽出物には、辛味受容体であるTRV1受容体に作用して辛味を感じさせるジンゲロールが含まれる。ショウガ抽出物としては、溶媒による抽出液をそのまま使用することもできるし、抽出液を濃縮または希釈したものを使用することもできるし、抽出液からジンゲロールを精製または粗精製したものを使用することもできるし、精製されたジンゲロールを乳化して可溶化した製剤を使用することもできる。抽出溶媒としては、ジンゲロールを抽出することができる溶媒であれば特に限定されないが、二酸化炭素等の超臨界流体が好ましい。ショウガ抽出物中にはジンゲロールが通常1.7〜2.1重量%含有される。ジンゲロール濃度はHPLC法により測定することができる。
【0018】
ショウガ抽出物は、本発明の組成物中に集中力持続性向上効果が得られる量配合されるのが望ましい。このような量としては、例えば最終組成物中に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、ジンゲロールが250μg以上、より好ましくは350μg以上、特に好ましくは400〜4500μgとなる量のショウガ抽出物が配合される。ショウガ抽出物の配合量の上限については限定がないが、前記の範囲で強い辛味を感じさせず、食しやすい風味の組成物が得られる。例えばショウガ抽出物は、本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、ジンゲロールが4500μg以下となる量配合される。
【0019】
<トウガラシ抽出物とショウガ抽出物との併用>
トウガラシ抽出物とショウガ抽出物のうち少なくとも一方がテアニンとともに本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に配合さればよいが、好ましくは両者が共に配合される。上述の各成分の配合量は、トウガラシ抽出物とショウガ抽出物のうち一方を配合した場合にも、両方を配合した場合にも適用することができる。
【0020】
<テアニン>
テアニンとしては、通常L−テアニンを用いることができる。
本発明において用いられるテアニンは茶葉等の天然物に由来するものであってもよいし、人為的に合成されたものであってもよい。テアニンは、本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に、純度の高い化学物質の形態で添加されてもよいし、茶葉、茶葉抽出物等の種々のテアニン含有組成物の形態で添加されてもよい。本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に含まれるテアニンの量は、HPLC法により測定することができる。
【0021】
テアニンは、本発明の組成物又は集中力持続性向上剤中に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、150mg以上となる量配合される。150mg以上のテアニンを、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物の一方又は両方と併用して経口摂取することにより、テアニン単独を経口摂取した場合や、150mg未満のテアニンを前記抽出物と併用して経口摂取した場合等と比較して、摂取者の集中力の持続性が向上し、眠気が解消され、作業効率が高まるという驚くべき効果が奏される。
【0022】
テアニンの含有量の上限は特に限定されないが、組成物の形態に応じて定められた摂取量の上限を限度とすればよい。例えばテアニンは、本発明の組成物又は集中力持続性向上剤に、好ましくは一回の経口摂取量当たり、2500mg以下となる量配合される。
【0023】
<その他の成分>
本発明の組成物又は集中力持続性向上剤は更に他の成分を更に含んでいても構わない。特に、飲料組成物は、水中に上記活性成分を含み、更に、果汁、甘味料、酸味料、酸化防止剤、増粘剤、食塩、香料、ビタミン類、エキス類、環状オリゴ糖、炭酸、その他の食品添加物を添加することにより調製することができる。炭酸はトウガラシ抽出物やショウガ抽出物の辛味をマスキングする効果がある。炭酸の配合量は特に限定されないが、20℃における内圧が0.5〜3.0kgf/cmとなるように、本発明の液状の組成物または液状の集中力持続性向上剤中に炭酸ガスが圧入されている場合に辛味のマスキング効果が顕著であるため好ましい。また、ビタミン類、香料、エキス類は飲用時の薬効感を付与する効果がある。
【0024】
本発明の組成物又は集中力持続性向上剤が固形状、半固形状等の他の形態である場合も、所定の活性成分に加えて、食品として許容される成分が適宜配合される。
【0025】
果汁としてはリンゴ果汁、レモン果汁、またはオレンジ果汁、あるいはこれらの濃縮果汁等が挙げられる。
【0026】
甘味料としては果糖、ブドウ糖、液糖等の糖類、はちみつ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が挙げられる。
【0027】
酸味料としてはクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸等が挙げられる。
酸化防止剤としてはビタミンC、酵素処理ルチン等が挙げられる。
【0028】
増粘剤としてはジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。本発明の飲料組成物の粘度は増粘多糖類によって2.5mPa・s程度に調整されることができる。
【0029】
香料またはエキス類としてはシナモン、クローブ、ウコン等の香料またはエキス類等が挙げられる。
ビタミン類としてはビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン等が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物又は集中力持続性向上剤は、好ましくは、実質的にカフェインを含有しない。ここで「実質的にカフェインを含有しない」とは、例えば、組成物の形態に応じて定められた「ノンカフェイン」と製品に表示する場合の上限量、具体的には、組成物全量に対するカフェインの含有量が0.1重量%以下を満たすことを意味する。本発明の組成物又は集中力持続性向上剤は、最も好ましくはHPLC法によりカフェインが検出されない。
【0031】
<組成物>
本発明の組成物又は集中力持続性向上剤は、ヒトにより経口摂取される、集中力持続性を向上させる作用を有する飲食品組成物または医薬品組成物として使用することができる。
【0032】
本発明の組成物の形状は特に限定されないが、経口摂取に適した液状、固形状または半固形状の組成物が好ましく、液状組成物であることが特に好ましい。液状組成物は、液状食品(飲料)として提供されてもよいし、液状の経口投与用の医薬品として提供されてもよい。かかる液状組成物は、瓶やアルミ製やスチール製の容器、或いはペットボトル等の容器に充填密封して製品とする。また、上記組成物を顆粒状や打錠として適宜容器に収納して製品としてもよい。
【0033】
本発明の組成物又は集中力持続性向上剤は、集中力持続性を向上させる作用を有することに加えて、風味品質においても優れている。
【実施例】
【0034】
実施例・比較例の飲料組成物
【表1】
【0035】
表に示す原料の配合で、常法によりボトル缶入り炭酸飲料を製造した。
【0036】
各飲料を次の内容で試験評価した。
試験項目
主要評価項目:作業量(クレペリン検査)
副次評価項目:脳の疲労度(フリッカー検査)、自覚症状(VAS)
【0037】
(1)クレペリン検査法
クレペリン検査法(内田クレペリン精神検査)とは、検査用紙に並んでいる数字を1段目の1行目の左端から順番に足し算をし、1分経ったところで2段目の1行目に移り、その左端から足算をし、また1分経ったらところで3段目の1行目に移る。以下同様に号令に合わせて1分ごとに段を変え、各段の1行目の左端から計算していきその作業量によって表れた曲線によってその能力特徴を判定する方法。本発明では作業量のみを集中力持続の客観的指標として使用した。試験食摂取から10分後に1回目(20分間)、摂取後40分後に2回目(20分間)、摂取後70分後に3回目(20分間)を実施した。
【0038】
(2)フリッカー検査(上昇法)
フリッカー検査(上昇法)とは、視覚の疲労を通じて大脳疲労の度合いを評価する検査のことであり、点滅する光のサイクルを徐々に早くして、点滅している光から点灯した光に見える時の1秒あたりのサイクル数を調べる。フリッカー値は主に覚醒水準を反映することが知られている。数値が高いほど、覚醒水準が高いことを示す。試験食摂取前と摂取後30分、60分、90分に測定した。
【0039】
(3)自覚症状の評価
VAS(Visual Analog Scale)法とは、自覚的症状の程度を数値化して評価する検査である。直線状に、考えられうる最高の状態を右端、最低を左端としてその線分上に自分の状態の程度を示してもらう方法である。主観的な評価のために臨床医学でも広く用いられており、特に同被験者間の投与前後の状態の比較などに使われる。VAS法により「集中」、「眠気」、「仕事がはかどる」について評価した。
被験食摂取前30分と摂取後30分、60分、90分に測定した。
【0040】
(4)統計解析
統計処理は摂取前後の比較として対応のあるt−検定を用い、対照との群間比較には対応のあるt−検定を用いて行った。いずれも両側検定で有意水準を危険率5%とし、10%以下の場合は傾向ありとして判断した。いずれも両側検定で有意水準を危険率(P値)5%とし、10%以下の場合は傾向ありとして判断した。つまりP値が0.05以下で「有意差あり」とし、P値が0.1以下で「傾向あり」とした。
【0041】
結果
(1)クレペリン検査法
クレペリン評価結果として、クレペリン1回当たりの回答数(被験者男性14名)を図1に示す。
図1より、クレペリン評価結果については、以下の傾向を示した。
【0042】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4(プラセボ)の群に対して2回目(40−60min)のクレペリン回答数が増加傾向がみられ、3回目(70−90min)では有意に増加した(実施例1 2回目P値=0.0742、3回目P値=0.0044)。
【0043】
比較例1:(図の表記名SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、1回〜3回目において有意な差はみられなかった。
【0044】
比較例2:(図の表記名SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、1回〜3回目において有意な差はみられなかった。
【0045】
比較例3:(図の表記名テアニン150mg)
比較例4の群に対して、1回目(10−30min)のクレペリン回答数が増加傾向がみられ、3回目(70−90min)では有意に増加した(比較例3 1回目P値=0.0578、3回目P値=0.0026)。
【0046】
クレペリン評価結果では、比較例4に対し、実施例1および比較例3において回答数が多い傾向にあり、集中力持続効果があると考えられる。
【0047】
(2)フリッカー検査(上昇法)
フリッカー検査(上昇法)の結果(被験者男性14名)を図2に示す。
図2より、フリッカー検査結果については、以下の傾向を示した。
【0048】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して30分後、90分後でフリッカー値が高い傾向がみられた。また60分後では有意に高い値を示した。(30分後P=0.0715、60分後 P値=0.0293 90分後 P値=0.0823)。
【0049】
比較例1:(図の表記名SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して30分後、60分後、90分後において有意な差はみられなかった。
【0050】
比較例2:(図の表記名SP+ニンジン)
比較例4の群に対して30分後、60分後、90分後において有意な差はみられなかった。
【0051】
比較例3:(図の表記名テアニン150mg)
比較例4の群に対して90分後では有意に高い値を示した。(90分後 P値=0.0049)。
【0052】
30分後〜60分後における実施例1の群のフリッカー値が最も高く、90分後も高い傾向にあったことから、全ての群の中で実施例1の群が最も覚醒水準を高く維持していることが考えられる。
【0053】
(3)自覚症状の評価
VAS法による「集中」、「眠気」、「仕事がはかどる」の評価結果(14名中、眠気の負荷がかかった5名の結果)をそれぞれ図3、4、5に示す。
図3より、「集中」については、以下の傾向を示した。
【0054】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では30分後、60分後、90分後において有意に集中が増加することがわかった(実施例1 30分後P=0.052、60分後P値=0.0064、90分後P値=0.0268)。
【0055】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例2の群では30分後、60分後において集中が増加する傾向にあることがわかった(実施例2 30分後P=0.0725、60分後P値=0.0855)。
【0056】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では30分後において有意に集中が増加した。また60分後においても集中が増加する傾向にあることがわかった(実施例3 30分後P=0.0459、60分後P値=0.0516)。
【0057】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間においても有意な差はみられなかった。
【0058】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間においても有意な差はみられなかった。
【0059】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、比較例3の群では30分後において有意に集中が増加した。(比較例3 30分後P=0.0429)。
【0060】
図4より、「眠気」については、以下の傾向を示した。
実施例1:(図の表記名 SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では30分後、60分後、90分後において有意に眠気が解消することがわかった(実施例1 30分後P=0.0179、60分後P値=0.0258、90分後P値=0.0062)。
【0061】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、比較例2の群では60分後において有意に眠気が解消した。(実施例2 60分後P=0.0185)
【0062】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では60分後、90分後において有意に眠気が解消することがわかった(実施例3 60分後P値=0.0023、90分後P値=0.0249)。
【0063】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0064】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0065】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0066】
図5より、「仕事がはかどる」については、以下の傾向を示した。
実施例1:(図の表記名 SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では60分後において有意に増強し、90分後において増強傾向がみられた。(実施例1 60分後P値=0.036、90分後P値=0.0625)
【0067】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例2の群では60分後、90分後において増強傾向にあることがわかった。(実施例2 60分後P=0.0822、90分後P値0.0725)
【0068】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では60分後において有意に増強した。(実施例3 60分後P値=0.044)。
【0069】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、90分後に増強傾向がみられた。(90分後P値=0.092)
【0070】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30分後に増強傾向がみられた。(30分後P値=0.0636)
【0071】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0072】
総評
クレペリン評価結果、フリッカー評価結果、およびVAS評価結果よりSP+テアニン150mg群が、「集中」増強および「眠気」解消に最も効果があることがわかった。またVAS評価結果において、テアニン150mg群に比べてジンゲロール+テアニン150mg群およびCAP+テアニン150mg群では「集中」を増強する作用、「眠気」を解消する作用、「仕事がはかどる」を増強する作用が強いことから、テアニンに1種類以上のスパイス(カプサイシン、ジンゲロール)を組み合わせることで、テアニン単独時より強い効果があることがわかった。
【0073】
なお、前掲の特許文献2(特開2002−370979号公報)の実施例3(段落0036)には、テアニン100mgを含む精神集中向上用飲料組成物(テアニン配合ブルーベリージュース)が記載されている。
【0074】
前記の比較例1(SP+テアニン100mg)によると、同様にテアニン100mgを含む場合は、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物を配合しても、集中力持続性向上効果を十分に得ることができなかった。
【0075】
トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物とオタネニンジン抽出物(テアニンと同様に集中力持続性向上効果があるといわれている)とを含む比較例2の場合には、比較例4(活性成分を含まないプラセボ)と同程度の集中力持続性向上効果しか得ることができなかった。
比較例3のように、テアニンを150mgに増量すれば集中力持続性向上効果が向上した。
【0076】
これらに対して、本発明により、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物とテアニン150mgとを組み合わせることで、テアニン150mg単独時より強い集中力持続性向上効果があることが証明された。同時に、上記特定量のカプサイシン、ジンゲロールを組み合わせた組成物は、スパイスの辛味が強く感じられない、風味にも優れたものであった。
図1
図2
図3
図4
図5