【実施例】
【0034】
実施例・比較例の飲料組成物
【表1】
【0035】
表に示す原料の配合で、常法によりボトル缶入り炭酸飲料を製造した。
【0036】
各飲料を次の内容で試験評価した。
試験項目
主要評価項目:作業量(クレペリン検査)
副次評価項目:脳の疲労度(フリッカー検査)、自覚症状(VAS)
【0037】
(1)クレペリン検査法
クレペリン検査法(内田クレペリン精神検査)とは、検査用紙に並んでいる数字を1段目の1行目の左端から順番に足し算をし、1分経ったところで2段目の1行目に移り、その左端から足算をし、また1分経ったらところで3段目の1行目に移る。以下同様に号令に合わせて1分ごとに段を変え、各段の1行目の左端から計算していきその作業量によって表れた曲線によってその能力特徴を判定する方法。本発明では作業量のみを集中力持続の客観的指標として使用した。試験食摂取から10分後に1回目(20分間)、摂取後40分後に2回目(20分間)、摂取後70分後に3回目(20分間)を実施した。
【0038】
(2)フリッカー検査(上昇法)
フリッカー検査(上昇法)とは、視覚の疲労を通じて大脳疲労の度合いを評価する検査のことであり、点滅する光のサイクルを徐々に早くして、点滅している光から点灯した光に見える時の1秒あたりのサイクル数を調べる。フリッカー値は主に覚醒水準を反映することが知られている。数値が高いほど、覚醒水準が高いことを示す。試験食摂取前と摂取後30分、60分、90分に測定した。
【0039】
(3)自覚症状の評価
VAS(Visual Analog Scale)法とは、自覚的症状の程度を数値化して評価する検査である。直線状に、考えられうる最高の状態を右端、最低を左端としてその線分上に自分の状態の程度を示してもらう方法である。主観的な評価のために臨床医学でも広く用いられており、特に同被験者間の投与前後の状態の比較などに使われる。VAS法により「集中」、「眠気」、「仕事がはかどる」について評価した。
被験食摂取前30分と摂取後30分、60分、90分に測定した。
【0040】
(4)統計解析
統計処理は摂取前後の比較として対応のあるt−検定を用い、対照との群間比較には対応のあるt−検定を用いて行った。いずれも両側検定で有意水準を危険率5%とし、10%以下の場合は傾向ありとして判断した。いずれも両側検定で有意水準を危険率(P値)5%とし、10%以下の場合は傾向ありとして判断した。つまりP値が0.05以下で「有意差あり」とし、P値が0.1以下で「傾向あり」とした。
【0041】
結果
(1)クレペリン検査法
クレペリン評価結果として、クレペリン1回当たりの回答数(被験者男性14名)を
図1に示す。
図1より、クレペリン評価結果については、以下の傾向を示した。
【0042】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4(プラセボ)の群に対して2回目(40−60min)のクレペリン回答数が増加傾向がみられ、3回目(70−90min)では有意に増加した(実施例1 2回目P値=0.0742、3回目P値=0.0044)。
【0043】
比較例1:(図の表記名SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、1回〜3回目において有意な差はみられなかった。
【0044】
比較例2:(図の表記名SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、1回〜3回目において有意な差はみられなかった。
【0045】
比較例3:(図の表記名テアニン150mg)
比較例4の群に対して、1回目(10−30min)のクレペリン回答数が増加傾向がみられ、3回目(70−90min)では有意に増加した(比較例3 1回目P値=0.0578、3回目P値=0.0026)。
【0046】
クレペリン評価結果では、比較例4に対し、実施例1および比較例3において回答数が多い傾向にあり、集中力持続効果があると考えられる。
【0047】
(2)フリッカー検査(上昇法)
フリッカー検査(上昇法)の結果(被験者男性14名)を
図2に示す。
図2より、フリッカー検査結果については、以下の傾向を示した。
【0048】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して30分後、90分後でフリッカー値が高い傾向がみられた。また60分後では有意に高い値を示した。(30分後P=0.0715、60分後 P値=0.0293 90分後 P値=0.0823)。
【0049】
比較例1:(図の表記名SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して30分後、60分後、90分後において有意な差はみられなかった。
【0050】
比較例2:(図の表記名SP+ニンジン)
比較例4の群に対して30分後、60分後、90分後において有意な差はみられなかった。
【0051】
比較例3:(図の表記名テアニン150mg)
比較例4の群に対して90分後では有意に高い値を示した。(90分後 P値=0.0049)。
【0052】
30分後〜60分後における実施例1の群のフリッカー値が最も高く、90分後も高い傾向にあったことから、全ての群の中で実施例1の群が最も覚醒水準を高く維持していることが考えられる。
【0053】
(3)自覚症状の評価
VAS法による「集中」、「眠気」、「仕事がはかどる」の評価結果(14名中、眠気の負荷がかかった5名の結果)をそれぞれ
図3、4、5に示す。
図3より、「集中」については、以下の傾向を示した。
【0054】
実施例1:(図の表記名SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では30分後、60分後、90分後において有意に集中が増加することがわかった(実施例1 30分後P=0.052、60分後P値=0.0064、90分後P値=0.0268)。
【0055】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例2の群では30分後、60分後において集中が増加する傾向にあることがわかった(実施例2 30分後P=0.0725、60分後P値=0.0855)。
【0056】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では30分後において有意に集中が増加した。また60分後においても集中が増加する傾向にあることがわかった(実施例3 30分後P=0.0459、60分後P値=0.0516)。
【0057】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間においても有意な差はみられなかった。
【0058】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間においても有意な差はみられなかった。
【0059】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、比較例3の群では30分後において有意に集中が増加した。(比較例3 30分後P=0.0429)。
【0060】
図4より、「眠気」については、以下の傾向を示した。
実施例1:(図の表記名 SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では30分後、60分後、90分後において有意に眠気が解消することがわかった(実施例1 30分後P=0.0179、60分後P値=0.0258、90分後P値=0.0062)。
【0061】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、比較例2の群では60分後において有意に眠気が解消した。(実施例2 60分後P=0.0185)
【0062】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では60分後、90分後において有意に眠気が解消することがわかった(実施例3 60分後P値=0.0023、90分後P値=0.0249)。
【0063】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0064】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0065】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0066】
図5より、「仕事がはかどる」については、以下の傾向を示した。
実施例1:(図の表記名 SP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例1の群では60分後において有意に増強し、90分後において増強傾向がみられた。(実施例1 60分後P値=0.036、90分後P値=0.0625)
【0067】
実施例2:(図の表記名 ジンゲロール+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例2の群では60分後、90分後において増強傾向にあることがわかった。(実施例2 60分後P=0.0822、90分後P値0.0725)
【0068】
実施例3:(図の表記名 CAP+テアニン150mg)
比較例4の群に対して、実施例3の群では60分後において有意に増強した。(実施例3 60分後P値=0.044)。
【0069】
比較例1:(図の表記名 SP+テアニン100mg)
比較例4の群に対して、90分後に増強傾向がみられた。(90分後P値=0.092)
【0070】
比較例2:(図の表記名 SP+ニンジン)
比較例4の群に対して、30分後に増強傾向がみられた。(30分後P値=0.0636)
【0071】
比較例3:(図の表記名 テアニン150mg)
比較例4の群に対して、30〜90分後の何れの時間において有意な差はみられなかった。
【0072】
総評
クレペリン評価結果、フリッカー評価結果、およびVAS評価結果よりSP+テアニン150mg群が、「集中」増強および「眠気」解消に最も効果があることがわかった。またVAS評価結果において、テアニン150mg群に比べてジンゲロール+テアニン150mg群およびCAP+テアニン150mg群では「集中」を増強する作用、「眠気」を解消する作用、「仕事がはかどる」を増強する作用が強いことから、テアニンに1種類以上のスパイス(カプサイシン、ジンゲロール)を組み合わせることで、テアニン単独時より強い効果があることがわかった。
【0073】
なお、前掲の特許文献2(特開2002−370979号公報)の実施例3(段落0036)には、テアニン100mgを含む精神集中向上用飲料組成物(テアニン配合ブルーベリージュース)が記載されている。
【0074】
前記の比較例1(SP+テアニン100mg)によると、同様にテアニン100mgを含む場合は、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物を配合しても、集中力持続性向上効果を十分に得ることができなかった。
【0075】
トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物とオタネニンジン抽出物(テアニンと同様に集中力持続性向上効果があるといわれている)とを含む比較例2の場合には、比較例4(活性成分を含まないプラセボ)と同程度の集中力持続性向上効果しか得ることができなかった。
比較例3のように、テアニンを150mgに増量すれば集中力持続性向上効果が向上した。
【0076】
これらに対して、本発明により、トウガラシ抽出物及びショウガ抽出物とテアニン150mgとを組み合わせることで、テアニン150mg単独時より強い集中力持続性向上効果があることが証明された。同時に、上記特定量のカプサイシン、ジンゲロールを組み合わせた組成物は、スパイスの辛味が強く感じられない、風味にも優れたものであった。