特許第6122261号(P6122261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122261
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】通信機能付電子機器、及び電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/04 20130101AFI20170417BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20170417BHJP
【FI】
   G04G21/04
   G04G21/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-165064(P2012-165064)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25762(P2014-25762A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 聡
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−148367(JP,A)
【文献】 特開2011−109305(JP,A)
【文献】 特開2011−191213(JP,A)
【文献】 特開2001−272480(JP,A)
【文献】 特開2005−134223(JP,A)
【文献】 特開2005−345480(JP,A)
【文献】 特開2004−109115(JP,A)
【文献】 特開平11−64544(JP,A)
【文献】 特開2002−277575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00−99/00
G04R 20/00−60/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字又は記号が表示される表示部を有する外装ケースと、
前記外装ケースに設けられ、前記表示部の周囲に形成された金属リングと、
前記外装ケースとの間の間隙により、前記外装ケースに対して動作可能に設けられるスイッチと、
前記金属リングの径方向外側で、前記スイッチの機能を実行することによる信号を伝達する配線パターンが形成されている基板と、
前記基板に設けられ、前記スイッチの直下に設けられるアンテナコイルと、を備えることを特徴とする通信機能付電子機器。
【請求項2】
前記基板の前記配線パターンが形成されている面とは反対側の面に、前記アンテナコイルが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通信機能付電子機器。
【請求項3】
前記基板は多層基板からなり、各層に前記アンテナコイルが形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信機能付電子機器。
【請求項4】
前記外装ケースには、前記表示部とは反対側に開口部が形成されると共に、この開口部を閉塞する裏蓋が設けられており、
前記基板と前記裏蓋とが、この裏蓋の面方向に直交する法線方向で重ならないようにそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の通信機能付電子機器。
【請求項5】
前記スイッチは、前記表示部に表示される内容を切り替えるためのスイッチであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の通信機能付電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の通信機能付電子機器の表示部に、時刻が表示されることを特徴とする電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信機能付電子機器、及び電子時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信機能付電子機器としての電子時計の中には、樹脂製の外装ケースに形成された開口部に、パッキンを介してカバーガラスが嵌め込まれているものが多い。また、通信機能付電子機器としての電子時計には、さまざまな情報を信号として送受信するためのアンテナコイルが設けられている。このアンテナコイルはループ状に形成されており、アンテナコイルに電流を供給することにより生じるアンテナコイルの開口部を通る磁束を利用して、通信が行われる。
【0003】
ここで、例えば、腕時計等にアンテナコイルを設ける場合、腕時計には、さまざまな金属製の導電部材が用いられているので、この導電部材に電流が発生し、これによりアンテナコイルの磁束が損失して通信精度や通信距離が低下してしまう。このため、通信精度や通信距離を低下させないためのさまざまな技術が開示されている。
【0004】
例えば、時刻表示用のムーブメントと、カバーガラスとの間に、電波を反射する導電性のソーラーパネル支持基板と、略環状の導電性のアンテナ電極を配置すると共に、ソーラーパネル支持基板と、カバーガラスとの間に、アンテナコイルを配置した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
これによれば、アンテナコイルがカバーガラス付近に配置されているので、アンテナコイルをムーブメントに内蔵する場合と比較して、金属製の導電部材の影響を受けにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−21929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カバーガラスに対する外装ケースの保持力を維持したり、カバーガラスと外装ケースとの間の気密性を確保したりするためには、カバーガラスの側面、及び外装ケースの側面に加わるパッキンの弾性圧縮に基づく反力を、ある程度大きくする必要がある。
このため、外装ケースを樹脂により形成する場合、外装ケースの開口部の周辺に金属製の補強リングをインサート成形し、外装ケースの強度を高めることが考えられる。このように構成することで、パッキンの弾性圧縮に基づく反力をある程度大きくした場合であっても、この反力を補強リングと外装ケースとにより確実に受けることができる。
【0007】
しかしながらこのような場合、補強リングの影響を受けてアンテナコイルの通信精度や通信距離が低下してしまうという課題がある。
【0008】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、確実にアンテナコイルの通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる通信機能付電子機器、及び電子時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る通信機能付電子機器は、文字や記号が表示される表示部を有する外装ケースと、前記外装ケースに設けられ、前記表示部の周囲を取り囲むように環状に形成された金属リングと、前記外装ケースの内部に設けられ、通信を行うためのアンテナコイルと、前記金属リングの径方向外側で、且つ前記外装ケースから露出するよう配置され、所定の機能を実行するための機能部とを備えた通信機能付電子機器であって、前記機能部は、配線パターンが形成されている基板を有し、この基板上に、前記アンテナコイルが形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、外装ケースの補強を行いつつ、確実にアンテナコイルの通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる。また、アンテナコイルの通信精度や通信距離を向上させるための部品を別途用意する必要がなく、製品コストの増大を抑制できる。
【0010】
本発明に係る通信機能付電子機器は、前記基板の前記配線パターンが形成されている面とは反対側の面に、前記アンテナコイルが形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、基板の両面を有効活用することができ、基板が大型化してしまうことを防止できる。
【0011】
本発明に係る通信機能付電子機器は、前記基板は多層基板からなり、各層に前記アンテナコイルが形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、省スペースでアンテナコイルの巻回数を増大させることができ、通信機能を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る通信機能付電子機器は、前記外装ケースには、前記表示部とは反対側に開口部が形成されると共に、この開口部を閉塞する裏蓋が設けられており、前記機能部と前記裏蓋とが、この裏蓋の面方向に直交する法線方向で重ならないようにそれぞれ配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、裏蓋側のアンテナコイルの磁束が損失してしまうことを抑制できる。このため、アンテナコイルによる裏蓋側からの通信を可能とし、さらに通信機能を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る通信機能付電子機器は、前記機能部は、前記表示部に表示される内容を切り替えるためのスイッチであることを特徴とする。
ここで、スイッチは、基板に形成される配線パターンを片側のみにすることができるので、その裏側に確実にアンテナコイルを形成することができる。このため、基板の大型化を確実に防止できる。
【0014】
本発明に係る電子時計は、通信機能付電子機器の表示部に、時刻が表示されることを特徴とする。
このように構成することで、確実にアンテナコイルの通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる電子時計を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外装ケースの補強を行いつつ、確実にアンテナコイルの通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる。また、アンテナコイルの通信精度や通信距離を向上させるための部品を別途用意する必要がなく、製品コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態における電子腕時計の平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】本発明の第1実施形態における電子腕時計の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるメイン基板とフロントスイッチ基板の相対位置関係を示す概略構成図である。
図5】本発明の第2実施形態におけるフロントスイッチ基板の断面図である。
図6】本発明の第3実施形態における電子腕時計の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
(通信機能付電子腕時計)
次に、この発明の第1実施形態を図1図4に基づいて説明する。
図1は、通信機能付電子腕時計(以下、単に電子腕時計という)の平面図、図2は、図1のA−A線に沿う断面図、図3は、電子腕時計の構成を示すブロック図である。
図1図3に示すように、電子腕時計1の通信機能には、例えばパソコン通信機能、携帯電話機能、非接触式ICカード機能などの無線通信機能などが含まれる。
【0018】
電子腕時計1は、ケース本体3と裏蓋4とからなる外装ケース2を備え、外装ケース2の内部にムーブメント20が収容されて構成されている。
尚、以下の説明では、図2においてカバーガラス6が取り付けられている側を上側、裏蓋4が配置されている側を下側として、上下方向をいい、且つ上下方向に直交し、カバーガラス6の面方向に沿う方向を水平方向という。
【0019】
ケース本体3は、上下を開口させ内部がムーブメント収納部10となっている樹脂製の外枠5と、外枠5の上側に形成されている上側開口部5aに、樹脂製のパッキン8を介して固定された透明なカバーガラス6と、一部が外枠5に埋め込まれた導電性を有する金属製の補強リング7とを備えている。この実施形態において、カバーガラス6はカバープレートを構成する。
【0020】
外枠5の下側に形成されている下側開口部5bは、この内径がムーブメント収納部10の内径よりも大きくなるように外枠5の下面の大部分に形成されている。そして、ネジ(不図示)により取り外し可能に取り付けられた金属製の裏蓋4によって下側開口部5bが閉塞されている。
【0021】
また、外枠5の外周部には、12時側と6時側とにそれぞれバンドを取り付けるためのバンド取付部9,9が形成されるとともに、バンド取付部9,9から離間した位置に複数のスイッチ11が取り付けられている。さらに、外枠5の外周部の上面には、6時側にフロントスイッチユニット12を構成するスイッチボタン71が取り付けられている。これらスイッチ11、及びフロントスイッチユニット12は、後述する液晶ディスプレイ(以下、LCDと略す)25に表示される内容を切り換えるためのものである。
【0022】
また、外枠5には、上側開口部5aの下側に、上側開口部5aよりも水平方向内側に突出する内フランジ部13が形成されている。この内フランジ部13に一部が載置されるように補強リング7が設けられている。
補強リング7は、金属製の板材にプレス加工等を施すことによって平面視略円環状に、且つ断面略L字状に形成されたものである。すなわち、補強リング7は、内フランジ部13に対応するように略円環状に形成され、水平方向に一定の幅を有する平面部41と、この平面部41の外周縁から上下方向上側に屈曲延出する起立部42とが一体成形されている。
【0023】
平面部41の内径は内フランジ部13の内径よりも小さく設定されており、内フランジ部13よりも径方向内側に、平面部41の内周縁が突出されている。一方、平面部41の外径は、ケース本体3の上側開口部5aの直径よりも大きく設定されており、外枠5内に埋設された状態になっている。
すなわち、平面部41の外周縁から立ち上がる起立部42は、外枠5の上側開口部5aの径方向外側の周囲を取り囲むように配置され、且つ外枠5内に埋設された状態になっている。このように、補強リング7を設けることにより、外枠5の上側開口部5a周辺の剛性が高まる。
尚、補強リング7は、外枠成形用の金型内に予め補強リング7をインサートしておいて外枠5を射出成形することにより、外枠5に固定する。
【0024】
また、外枠5の上側開口部5aの内周面と、カバーガラス6の外周面との間、及び補強リング7の平面部41の上面と、カバーガラス6の下面との間に、それぞれパッキン8が弾性圧縮した状態に挟装されている。これにより、外枠5にカバーガラス6が固定される。つまり、パッキン8の弾性圧縮に基づく反力がカバーガラス6の外周面、及び外枠5の上側開口部5aの内周面に作用することにより、外枠5にカバーガラス6が保持される。そして、パッキン8と、カバーガラス6、及び外枠5との間の防水が確保される。
ここで、補強リング7の径方向外側にフロントスイッチユニット12が配置された状態になる。
【0025】
外枠5のムーブメント収納部10に収容されたムーブメント20は、カバーガラス6と裏蓋4との間であって、且つ補強リング7よりも下側に配置されている。そして、図示しないネジにより外枠5に固定されている。
ムーブメント20は、駆動ユニット21と電池ユニット22とが上下に積層され、電池押さえ23により連結されて構成されている。駆動ユニット21は上側、すなわちカバーガラス6の近傍に配置され、電池ユニット22は下側、すなわち裏蓋4の近傍に配置されている。
【0026】
駆動ユニット21は、樹脂製のLCD保持枠24を備え、LCD保持枠24の上部に形成された凹部に、LCD25が収容された状態で固定されている。LCD25は時刻等の像をデジタル表示するものであって、カバーガラス6に対向して配置されている。すなわち、ユーザーは、カバーガラス6を透してLCD25に表示された像を見ることができる。さらに、換言すれば、カバーガラス6が嵌め込まれる外装ケース2の上側開口部5aは、LCD25の時刻等の像をデジタル表示するための表示部として機能していることになる。
【0027】
ここで、LCD25は、周知技術であるので詳細説明を省略するが、液晶を挟んで対向配置されたガラス基板25a,25bと、これらガラス基板25a,25bの外側に配置された偏光フィルタ25c,25dとから構成されている。また、LCD保持枠24の下側には、メイン基板26aが取り付けられている。
【0028】
(メイン基板)
図3に詳示するように、メイン基板26aには、発振回路102と、分周回路103と、ROM(Read Only Memory、読み出し専用メモリ)105と、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)106と、通信回路107と、これらの制御を司るCPU101とが実装されている。
【0029】
発振回路102は、所定周波数の信号を出力する。分周回路103は、発振回路102の出力信号を所定分周比で分周してCPU101用の規準クロック信号や計時用の時計信号を出力する。ROM105は、CPU101が実行するプログラムを予め記憶している。RAM106は、電子時計100が備える各部が用いるデータを記憶する。通信回路107は、後述のアンテナコイル28によって送受信される情報を信号としてCPU101に伝達する。
【0030】
また、メイン基板26aには、LCD25が接続されている。LCD25は、メイン基板26aのCPU101によって制御され、時刻等の像をデジタル表示する。ユーザーは、カバーガラス6を透してLCD25に表示された像を見ることができるようになっている。
さらに、メイン基板26aには、フロントスイッチユニット12を構成するフロントスイッチ基板26bがフレキシブル配線基板75を介して接続されている。
【0031】
(フロントスイッチ基板)
図4は、メイン基板とフロントスイッチ基板の相対位置関係を示す概略構成図である。
図2図4に示すように、フロントスイッチ基板26bは、スイッチボタン71の操作を信号としてメイン基板26aに出力するためのものであって、スイッチボタン71の操作を受信可能なように、スイッチボタン71の上下方向真下に配置されている。すなわち、補強リング7の径方向外側に、フロントスイッチ基板26bが配置されている。
【0032】
フロントスイッチ基板26bの上側の面、つまり、スイッチボタン71側の面には、スイッチボタン71の操作に基づいて、メイン基板26aに信号を出力するためのフロントスイッチパターン72が形成されている。フロントスイッチパターン72の端末部72a,72bは、それぞれフレキシブル配線基板75に沿いながらメイン基板26a側へと引き出されている。そして、スイッチ端子73a,73bを介してメイン基板26aに接続されている。
【0033】
一方、フロントスイッチ基板26bの下側の面、つまり、裏蓋4側の面には、アンテナコイル28が形成されている。アンテナコイル28は、外部からの電波を受信したり、電子腕時計1で取得した情報を電波にして外部へ発信するためのものであって、ループ状に形成することによりアンテナとしての特性を得られるようになっている。このように、アンテナコイル28は、ループ状に形成されているので、中央の大部分に開口部28cを有している。
【0034】
また、アンテナコイル28の端末部28a,28bは、それぞれフレキシブル配線基板75に沿いながらメイン基板26a側へと引き出されている。そして、アンテナ端子74a,74bを介してメイン基板26aに接続されている。
尚、図1において、メイン基板26a、及びフロントスイッチ基板26bは、これらの形状を分かりやすくするために、実線で示している。
【0035】
図2に詳示するように、電池ユニット22は、ボタン型の電池30と、電池30を収容する樹脂製の電池ケース31と、電池ケース31に取り付けられた負極端子32とから構成されている。負極端子32は、電池30の負極に当接可能で、不図示の導体を介してメイン基板26aの負極入力端子(不図示)に接続されている。
【0036】
電池ケース31に収容された電池30は、駆動ユニット21と電池ユニット22とを連結する電池押さえ23によって保持されている。電池押さえ23は、電池30の正極端子に当接する端子部23aと、電池ケース31、及びLCD保持枠24の側面に沿って延びる複数のアーム23bとを備え、各アーム23bの先端がLCD保持枠24の側部に係合して、駆動ユニット21と電池ユニット22とを連結している。
また、電池押さえ23は、不図示の導体を介してメイン基板26aの正極入力端子(不図示)に接続されている。つまり、この電池押さえ23は、陽極端子として機能と、駆動ユニット21と電池ユニット22とを連結して一体化する連結部材としての機能を有している。
【0037】
このような構成のもと、電子腕時計1と外部との間で通信を行う場合、アンテナコイル28に電流を供給する。すると、アンテナコイル28の開口部28cを通る磁束Jが生じる(図2参照)。つまり、フロントスイッチ基板26b上にアンテナコイル28がループ状に形成されているので、フロントスイッチ基板26bには、これの厚さ方向、つまり、上下方向に沿う磁束Jが生じる。そして、この磁束Jを利用して電子腕時計1と外部との間で通信が行われる。
【0038】
したがって、上述の第1実施形態によれば、補強リング7の径方向外側に配置されたフロントスイッチ基板26bにアンテナコイル28が形成されているので、補強リング7の影響を受けてアンテナコイル28により形成された磁束Jが損失してしまうことを防止できる。このため、補強リング7により外装ケース2の補強を行いつつ、確実にアンテナコイル28の通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる。また、アンテナコイル28の通信精度や通信距離を向上させるための部品を別途用意する必要がなく、製品コストの増大を抑制できる。
【0039】
さらに、フロントスイッチ基板26bの上側の面にフロントスイッチパターン72を形成する一方、フロントスイッチ基板26bの下側の面にアンテナコイル28が形成されている。このように、フロントスイッチ基板26bの両面を有効活用するようにしてアンテナコイル28を設けているので、フロントスイッチ基板26bが大型化してしまうことを防止できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図5に基づいて説明する。尚、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図5は、第2実施形態におけるフロントスイッチ基板の断面図である。
【0041】
この第2実施形態において、電子腕時計1は、ケース本体3と裏蓋4とからなる外装ケース2を備え、外装ケース2の内部にムーブメント20が収容されて構成されている点、ケース本体3は、上下を開口させ内部がムーブメント収納部10となっている樹脂製の外枠5と、外枠5の上側に形成されている上側開口部5aに、樹脂製のパッキン8を介して固定された透明なカバーガラス6と、一部が外枠5に埋め込まれた導電性を有する金属製の補強リング7とを備えている点、外枠5の外周部の上面には、6時側にフロントスイッチユニット12が設けられており、補強リング7の径方向外側に、フロントスイッチ基板226bが配置された状態になっている点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
【0042】
ここで、この第2実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、第1実施形態のフロントスイッチ基板26bと、第2実施形態のフロントスイッチ基板226bとの構造が異なる点にある。
すなわち、図5に示すように、第2実施形態のフロントスイッチ基板226bは、複数(例えば、この第2実施形態では4つ)の基板227が積層された多層基板になっている。そして、各層の基板227に、アンテナコイル28が形成されている。これらアンテナコイル28は、例えば、スルーホール(不図示)を介して互いに接続された状態になっている。尚、フロントスイッチパターン72は、最上層の基板227(図5における最上部の基板227)に形成されている。
【0043】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、省スペースでアンテナコイル28の巻回数を増大させることができ、電子腕時計1の通信機能を向上させることができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を図6に基づいて説明する。
図6は、第3実施形態における電子腕時計の縦断面図であって、図2に対応している。
ここで、この第3実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、第1実施形態の外装ケース2の下部の形状と、第3実施形態の外装ケース202の下部の形状とが異なる点にある。
【0045】
すなわち、図6に示すように、第3実施形態の外装ケース202における外枠205の下側には、下側開口部205bが形成されているが、この下側開口部205bの内径は、ムーブメント収納部10の内径とほぼ同じような大きさになるように設定されている。そして、このように形成された下側開口部205bを閉塞するように、金属製の裏蓋204が設けられている。
【0046】
ここで、下側開口部205bの内径は、ムーブメント収納部10の内径とほぼ同じような大きさになるように設定されているので、裏蓋204の外径も前述の第1実施形態と比較して小さく設定される。このため、アンテナコイル28が形成されているフロントスイッチ基板26bと裏蓋204とが、この裏蓋204の面方向に直交する法線方向で重ならないようになる。
【0047】
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、アンテナコイル28により形成される磁束J(図2参照)が、裏蓋204により損失してしまうことを抑制できる。このため、アンテナコイル28による裏蓋204側からの通信を可能とし、さらに通信機能を向上させることができる。
【0048】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、カバープレートをガラス製としたが、カバープレートを硬質樹脂等の他の素材で形成することも可能である。
また、上述の実施形態では、通信機能付電子機器として、電子腕時計1について説明したが、これに限られるものではなく、電子腕時計1よりも大型の時計や、時計機能を有さない種々の通信機能付電子機器に、本発明を適用することが可能である。
【0049】
さらに、上述の実施形態では、外枠5,205の6時側に、LCD25に表示される内容を切り換えるフロントスイッチユニット12を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外枠5,205の6時側に、フロントスイッチユニット12に代わって、さまざまな機能を有する装置を設けることが可能である。例えば、フロントスイッチユニット12に代わって、紫外線量を計測するためのUVセンサ、気圧を計測するための気圧センサ、気温を計測するための温度センサや、加速度センサ等を設けることも可能である。
【0050】
また、上述の実施形態では、とりわけ外装ケース2に金属製の補強リング7が設けられている電子腕時計1において、アンテナコイル28の通信精度や通信距離が低下してしまうことを防止できる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、外装ケース2に金属製のベゼルが設けられている電子腕時計においても、本発明を好適に用いることができる。この場合、ベゼルの径方向外側に、フロントスイッチユニット12等の所定の機能を実行するための機能を設ける。
【符号の説明】
【0051】
1 電子腕時計(電子時計)
2,202 外装ケース
3 ケース本体
4,204 裏蓋
5,205 外枠
5a 上側開口部(表示部)
5b,205b 下側開口部(開口部)
7 補強リング(金属リング)
12 フロントスイッチユニット(スイッチ)
26a メイン基板
26b フロントスイッチ基板(基板)
28 アンテナコイル
71 スイッチボタン
72 フロントスイッチパターン(配線パターン)
226b フロントスイッチ基板(多層基板)
227 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6