(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スプレーパターンを吐出するノズルと、上記ノズルを移動させる移動手段と、発光部から出力された光線の、受光部における受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、少なくとも上記ノズルの幅の値を記憶する記憶手段と、演算手段とを備えた液体吐出装置における、スプレーパターンの幅を測定する測定方法として、
上記移動手段により、上記光線と直交方向となる所定移動軸に沿って、上記ノズルを上記光線に向かう一方向に移動させる第1移動工程と、
上記第1移動工程の過程で、上記ノズルに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第1の位置座標値を取得する第1位置座標値取得工程と、
上記移動手段により、上記所定移動軸に沿って、上記ノズルから吐出されたスプレーパターンを上記光線に向かう上記一方向に移動させる第2移動工程と、
上記第2移動工程の過程で、スプレーパターンに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得工程と、
上記演算手段が、上記第2の位置座標値と上記第1の位置座標値の差分値と、上記記憶手段から読み出した上記ノズルの幅とを用いて、スプレーパターンの幅を算出する算出工程と、
を備えたスプレーパターン幅測定方法。
スプレーパターンを吐出するノズルと、上記ノズルを移動させる移動手段と、発光部から出力された光線の、受光部における受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、少なくとも上記ノズルの幅の値を記憶する記憶手段とを備えた液体吐出装置の制御手段に、スプレーパターンの幅を測定する処理を実行させるプログラムとして、
上記移動手段により、上記光線と直交方向となる所定移動軸に沿って、上記ノズルを上記光線に向かう一方向に移動させる第1移動処理と、
上記第1移動処理による移動過程で、上記ノズルに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第1の位置座標値を取得する第1位置座標値取得処理と、
上記移動手段により、上記所定移動軸に沿って、上記ノズルから吐出されたスプレーパターンを上記光線に向かう上記一方向に移動させる第2移動処理と、
上記第2移動処理による移動過程で、上記スプレーパターンに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得処理と、
上記第2の位置座標値と上記第1の位置座標値の差分値と、上記記憶手段から読み出した上記ノズルの幅とを用いて、スプレーパターンの幅を算出する算出処理と、
を上記制御手段に実行させるプログラム。
スプレーパターンを吐出するノズルと、上記ノズルを移動させる移動手段と、発光部から出力された光線の、受光部における受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、少なくとも上記ノズルの幅の値と、上記光線と直交方向となる所定移動軸に沿って上記ノズルが上記光線に向かう一方向の移動を上記移動手段に実行させてから上記ノズルに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られる位置としての、上記所定移動軸における第1の位置座標値とを記憶する記憶手段と、演算手段とを備えた液体吐出装置における、スプレーパターンの幅を測定する測定方法として、
上記移動手段により、上記所定移動軸に沿って、上記ノズルから吐出されたスプレーパターンを上記光線に向かう上記一方向に移動させる移動工程と、
上記移動工程の過程で、スプレーパターンに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得工程と、
上記演算手段が、上記第2の位置座標値と上記記憶手段から読み出した上記第1の位置座標値との差分値と、上記記憶手段から読み出した上記ノズルの幅とを用いて、上記スプレーパターンの幅を算出する算出工程と、
を備えたスプレーパターン幅測定方法。
スプレーパターンを吐出するノズルと、上記ノズルを移動させる移動手段と、発光部から出力された光線の、受光部における受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、少なくとも上記ノズルの幅の値と、上記光線と直交方向となる所定移動軸に沿って上記ノズルが上記光線に向かう一方向の移動を上記移動手段に実行させてから上記ノズルに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られる位置としての、上記所定移動軸における第1の位置座標値とを記憶する記憶手段とを備えた液体吐出装置の制御手段に、スプレーパターンの幅を測定する処理を実行させるプログラムとして、
上記移動手段により、上記所定移動軸に沿って、上記ノズルから吐出されたスプレーパターンを上記光線に向かう上記一方向に移動させる移動処理と、
上記移動処理による移動過程で、スプレーパターンに起因する上記光センサの検出信号変化が最初に得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得処理と、
上記第2の位置座標値と上記記憶手段から読み出した上記第1の位置座標値との差分値と、上記記憶手段から読み出した上記ノズルの幅とを用いて、上記スプレーパターンの幅を算出する算出処理と、
を上記制御手段に実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、液体吐出装置の実施の形態として、処理対象物である回路基板に薄膜を形成するためのコーティング剤を扇状のスプレーパターンで吐出するコーティング装置の例を挙げる。
説明は次の順序で行う。
<1.実施の形態のコーティング装置の構成>
<2.コーティング装置の制御構成>
<3.第1の実施の形態のスプレーパターン幅測定>
<4.光センサ構成例>
<5.第2の実施の形態のスプレーパターン幅測定>
<6.プログラム>
<7.変形例>
【0015】
<1.実施の形態のコーティング装置の構成>
図1に本発明の液体吐出装置の実施の形態であるコーティング装置1の外観例を示す。
このコーティング装置1は、その作業台部2に載置された回路基板100に対して、ノズル3からコーティング剤を吐出して吹き付け、回路基板100に防湿や防錆のための保護薄膜を形成する装置である。
【0016】
図示のように、作業台部2上には、基板載置台10が設けられ、この基板載置台10にコーティング処理対象物となる回路基板100が載置される。
例えばこのコーティング装置1は電子回路基板等の製造ラインの一部として使用することができ、回路基板100が図示しない搬送機構で基板載置台10上にセットされる。そしてコーティング装置1でコーティング処理が行われ、その後図示しない搬送機構で回路基板100が取り出されて次ぎ工程に移送される。これによりライン上で連続作業としてのコーティング処理が実行される。
もちろん、コーティング装置1は、このようにラインを構成するだけでなく、個別に回路基板100等の処理対象物に対してコーティングを行う機器としてもよい。
【0017】
作業台部2の上方には、コーティング剤を吐出するノズル3が位置される。
ノズル3はノズルホルダ4に取り付けられた状態で、作業台部2の上方空間をX方向、Y方向、Z方向に移動可能とされている。
【0018】
ノズルホルダ4は、X方向ガイド11に対して、X方向にスライド可能に取り付けられている。X方向ガイド11には、Xモータ7と、Xモータ7によって回転される駆動軸11aが配備されており、ノズルホルダ4は駆動軸11aの回転により、X方向ガイド11に沿ってX方向に移動可能とされている。このため駆動軸11aとノズルホルダ4の間では、駆動軸11aの回転がスライド移動方向に変換されるギア構成等による連結機構が採用される。
【0019】
X方向ガイド11は、ガイドホルダ13に固定されている。そしてガイドホルダ13は、Y方向ガイド12に対して、Y方向にスライド可能に取り付けられている。Y方向ガイド12には、Yモータ8と、Yモータ8によって回転される駆動軸12aが配備されており、ガイドホルダ13(即ちX方向ガイド11全体)は駆動軸12aの回転により、Y方向ガイド12に沿ってY方向に移動可能とされている。このため駆動軸12aとガイドホルダ13との間は、駆動軸12aの回転がスライド移動方向に変換されるギア構成などによる連結機構が採用される。
【0020】
ノズルホルダ4には、Zモータ5が配置されており、このZモータ5によって、ノズル3の先端が上下(Z方向)に移動される。つまりノズル3の先端の高さ位置が変動される。
以上の構成により、ノズル3の位置は、Xモータ7、Yモータ8、Zモータ5によって、作業台部2の上方空間をX方向、Y方向、Z方向に移動可能となる。
X方向、Y方向、Z方向に移動することで、載置された回路基板100上の各所を移動しながらのコーティング剤のスプレーを行うことや、後述するスプレーパターン幅測定のための移動などが実行可能となる。
【0021】
さらにノズルホルダ4には、ノズル回転モータ6が取り付けられており、ノズル回転モータ6によりノズル3の回転角度位置を変化させることができる。回転角度位置とは、
図2Aのθ方向の位置である。
【0022】
図2Aには、ノズル3が回路基板100の上方からコーティング剤を吐出して吹き付けている様子を拡大して示している。なお、回路基板100には、抵抗、コンデンサ、ICチップ等の各種電子部品がマウントされており、その各種電子部品の高さw,vや、電子部品間のサイズk,mなども多様である。
このような回路基板100に対して、X方向、Y方向、Z方向にノズル3が移動されながら吹きつけを行うことで、回路基板100の形状や部品配置に応じた適切な薄膜形成が可能となる。
またノズル3の先端は
図2B、
図2Cに示すように形成され、吐出孔3aから加圧液体のコーティング剤を吐出する。突端部3b,3bより奥まった位置に吐出孔3aが形成されていることで、吐出されるコーティング剤のスプレーパターン90は、
図2Dに示すように扁平な扇状となる。
図2Eには、
図2Dのスプレーパターン90のa−a断面を示しているが、扇状のスプレーパターン90は、縁部近傍に、厚幅部分90aが生じ、縁部及び中央部は、厚みが比較的薄くなる。
【0023】
この
図2Dのようなスプレーパターン90は、a−a断面線の位置よりさらに下方にいくと、霧化状になり、コーティングに適さなくなる。霧化状のパターンで塗布したコーティング剤は塗布されない部分やピンホールが多くなり、不良品になることがある。そのため、例えばa−a断面線の位置あたりで、回路基板100の表面に達することが適切である。
図2Aでは、上述のZ方向移動によりノズル3の回路基板100の表面からの高さ位置が、距離tの状態に調整され、コーティング剤の塗布が行われている様子を示している。この場合の塗布面からの距離tは、スプレーパターン90による塗布幅が、最も効率よく塗布ができる幅hとなる高さを得る距離である。この状態でY方向に移動されることで、幅hの状態でのY方向へ帯状に進行する塗布が行われることになる。
【0024】
なお上述のようにノズル回転モータ6によりノズル3の回転角度位置を変化させることができる。例えば
図2Aの状態から90°回転角度位置を変化させてX方向に移動させれば、幅hの状態でのX方向へ帯状に進行する塗布が行われることになる。
さらに回転角度位置により、進行させる塗布の帯の幅を調節することもできる。例えば
図2Aの状態から45°回転角度位置を変化させてY方向に移動させれば、図示の幅hの半分の幅の状態でのY方向へ帯状に進行する塗布を行うことが可能になる。
従って例えば部品間のサイズmのように、狭い箇所にスプレーを行う場合、回転角度位置を調整して、進行方向からみたスプレーパターン幅を調整することで、適切な塗布が可能となる。
【0025】
なお
図1,
図2には示していないが、ノズル3に対しては、加圧液体としてのコーティング剤を吐出させるために、コーティング剤を供給する供給機構や吐出機構が設けられる。吐出機構で圧力が調節されることで、コーティング剤の吐出量や扇状のスプレーパターン幅が調整される。
コーティング剤は例えばポリオレフィン系若しくはアクリル系若しくはポリウレタン系の絶縁コーティング剤である。シンナーで希釈して液状で回路基板100に塗布した場合、10分程度乾燥させることで、回路基板100に基板遮蔽層としての薄膜が形成される。
【0026】
図1に示すように、作業台部2上には、光センサを構成する発光部21,受光部22や、捨て打ち部23、浸け置き部24が設けられる。
光センサを構成する発光部21と受光部22は、X方向に対向するように配置されている。発光部21は例えば半導体レーザ等により構成され、例えば直径1.5mm程度のレーザ光を出力する。このレーザ光は受光部22によって受光される。受光部22では、受光光量に応じて、検出信号を出力する。
この場合、レーザ光の光線はX方向に伸びる線状となり、例えばノズル3がY方向に移動されてレーザ光の光線を横切ると、光線がノズル3によって妨げられ、受光部22に達しない。これによって受光部22では、受光光量が低下し、光量低下状態を示す検出信号を出力することとなる。
【0027】
捨て打ち部23は、いわゆる捨て打ちとしてコーティング剤を吐出する場合などに用いられる。また浸け置き部24は、ノズル先端を希釈剤に浸け置きするために設けられている。また浸け置き部24の側壁にはブラシ26を取り付けている。
本例では、揮発性の高い溶剤で希釈されたコーティング剤を用いており、これが乾燥してノズル3の吐出孔3aで硬化し、吐出するスプレーパターン90を変化させてしまうことがある。
そこで不使用時には、希釈剤を入れた浸け置き部24にノズル3の先端が浸されるようにしておく。浸け置き部24には例えばシンナー系の溶剤を入れておく。これにより吐出孔3aの詰まりを防ぐ。
また使用前には捨て打ち部23の上方にノズル3を位置させた状態で、捨て打ちとしての吐出を行って硬化部分を吹き飛ばしたり、ノズル3の先端をブラシ26に接触させるようにY方向に移動させて吐出孔3a付近を清掃できるようにしている。これらの作業により、実際のコーティング作業時には、安定したスプレーパターン形状が得られるようにしている。
【0028】
また本例では、後述するが、ノズル3のからスプレーパターン90を吐出させながら、センサの光線を横切る方向性でノズル3を移動させて、スプレーパターン90の幅を測定することが行われる。
この際に、上述の浸け置き、捨て打ち、ブラシ洗浄が行われていることで、測定の際も安定したスプレーパターン90の幅の測定ができることとなる。
また、捨て打ち部23の上方は、発光部21からのレーザ光の光線位置となる。従って、後述する測定処理としてスプレーパターン90を吐出しながらノズル3を移動させる動作は、捨て打ち部23の上方で行うことができる。つまり捨て打ち部23が測定処理の際に吐出されるスプレーパターン90の受け部としても機能する。
また捨て打ち部23には図示の様に斜面が形成されており、該斜面によって捨て打ちされたコーティング剤は一定方向に飛び散るように構成されている。この
図1の場合、浸け置き部24の方向にコーティング剤91が飛び散るようにされている。このため捨て打ちの際や、測定処理の際に、むやみに作業台部2上にコーティング剤が飛散することがないようにできる。
【0029】
図1に示すように作業台部2の上方には、撮像部25が取り付けられている。この撮像部25は、基板載置台10に載置された回路基板100を撮像することができる。
また例えば液晶パネル等により構成された表示部9が設けられている。表示部9には、タッチパネルが搭載されてオペレータが入力操作を行うことも可能とされる。
この表示部9には、撮像部25で撮像された画像(撮像画像)や撮像画像を加工した画像、操作アイコン、メッセージ表示、その他、ユーザインターフェースのための各種画像が表示される。
回路基板100の画像が表示されることで、オペレータは、画像上で、コーティングを行う部位を指定したり、あるいはコーティングを禁止する領域を指定したりすることも可能とされる。
【0030】
<2.コーティング装置の制御構成>
図3にコーティング装置1の制御構成を示す。なおここでは特に電気系統を示し、コーティング剤の供給、加圧制御等の流体制御系についての説明は省略する。
【0031】
主制御部30は、例えばマイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)により形成された演算処理装置であり、各部の動作制御を行う。
メモリ部34は、主制御部30が各種制御で用いるROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEP−ROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリ等の記憶領域を総括的に示している。
なお、このメモリ部34としては、マイクロコンピュータ内部に形成される記憶領域(レジスタ、RAM、ROM、EEP−ROM等)や、マイクロコンピュータとしてのチップ外部で外付けされるメモリチップの領域の両方をまとめて示している。つまり、いずれの記憶領域が用いられても良いため区別せずに示したものである。
【0032】
メモリ部34におけるROM領域には、主制御部30としてのCPUが実行するプログラムが記憶される。
メモリ部34におけるRAM領域は、主制御部30としてのCPUが各種演算処理のためのワークメモリとして用いたり、画像データの一時的な記憶等に用いられる。
メモリ部34における不揮発性メモリ領域は、演算制御処理のための係数、定数等、必要な情報が格納される。
主制御部30は、メモリ部34に格納されるプログラムや、入力部31からのオペレータの操作入力に基づいて、或いは図示しないライン制御コンピュータ等からの指示に基づいて、必要な演算処理、制御処理を行う。
【0033】
入力部31は、オペレータの操作入力を行う部位とされる。例えば上述のように表示部9にタッチパネルが形成される場合、該タッチパネルが入力部31となる。また操作キーや、リモートコントローラ等による入力部31が設けられても良い。
入力部31からの入力情報は主制御部30に供給され、主制御部30は入力情報に応じた処理を行う。
【0034】
撮像部25は、主制御部30の制御に基づいて画像撮像を行う。たとえば上述のように基板載置台10に載置された回路基板100を撮像する。撮像部25による撮像画像信号(例えば静止画撮像信号)は、画像処理部32でA/D変換処理、画像調整処理、エンコード処理などが行われ、所定フォーマットの撮像画像データとして主制御部30に受け渡される。主制御部30は、撮像画像データをメモリ部34に格納する。そして主制御部30は、必要に応じて撮像画像データを読み出して画像解析処理、拡大/縮小処理、画像編集処理、或いは外部送信処理等を行うことができる。
【0035】
主制御部30は、表示駆動部33に表示データを供給し、表示部9での表示を実行させる。表示駆動部33は、供給された表示データに基づいて画像信号を生成し、表示部9を駆動する。
例えば主制御部30は、撮像画像データを表示駆動部33に受け渡して、撮像画像を表示部9に表示させたり、撮像画像データを編集して表示部9に表示させたりすることができる。
【0036】
外部インターフェース46は外部機器との通信やネットワーク通信を行う。主制御部30は外部インターフェース46を介して、各種情報を通信により入力したり、送信出力することができる。例えばライン上の各機器がネットワークシステム化させている場合、ホスト機器や他の機器との間で通信を行うことができる。
この通信により、外部機器から撮像画像データ等の供給を受けたり、或いはバージョンアッププログラムをロードしたり、各種処理係数、定数の変更設定を受け付けたりすることができる。また主制御部30がホスト機器に対し、エラーメッセージ、ワーニング等を送信したり、撮像画像データを送信することなども可能とされる。
【0037】
主制御部30はモータコントローラ35に対してノズル移動のコマンドを送信する。コマンド内容は、ノズル移動方向(X、Y、Z方向及び回転角度位置θ方向)、移動量、移動速度を指示する内容などとされる。
例えば主制御部30は、コーティング処理を開始する前に、回路基板100を撮像した撮像画像の解析、及びオペレータの操作入力による禁止エリア設定等に応じて、ノズルパスを作成する処理を行う。実際のコーティング処理を開始した後は、作成したノズルパスに応じて、ノズル移動方向をモータコントローラ35に指示していくこととなる。
また、後述する測定準備処理、測定処理の際にも、主制御部30は、
モータコントローラ35に対してノズル3の所定の移動を指示する。
これらのノズル移動のコマンドに応じて、モータコントローラ35は、各モータドライバ(36,37,38,39)を駆動制御することとなる。
【0038】
Xモータドライバ36は、Xモータ7に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりXモータ7が駆動され、ノズル3(ノズルホルダ4全体)がX方向の正方向又は逆方向にスライド移動される。
Yモータドライバ38は、Yモータ8に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりYモータ7が駆動され、ノズル3(X方向ガイド11全体)がY方向の正方向又は逆方向にスライド移動される。
Zモータドライバ39は、Zモータ5に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりZモータ5が駆動され、ノズル3が垂直方向に繰り出されたり、引き上げられたりするように移動される。
ノズル回転モータドライバ38は、ノズル回転モータ6に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりノズル3の回転角度位置を変化させる回転動作が行われる。
モータコントローラ35
は、主制御部30からのコマンドに応じて、各モータドライバ36,37,38,39に指示を出し、電流印加を実行させることで、各モータが連携して、作業台部2上でのノズル移動が実行される。
【0039】
位置検出部51は、Xモータ7により移動されるノズル3のX方向の位置を検出する。例えば作業台部2の情報空間が、X座標、Y座標、Z座標としての三次元座標空間として管理されるとする。位置検出部51は、X方向の位置をX座標値として検知し、現在のX座標値を主制御部30に通知する。
位置検出部52は、ノズル回転モータ6により回転駆動されるノズル3の回転角度位置を検出する。そして回転角度位置を主制御部30に通知する。
位置検出部53は、Yモータ8により移動されるノズル3のY方向の位置を、Y座標値として検知し、主制御部30に通知する。
位置検出部54は、Zモータ5により上下移動されるノズル3のZ方向の位置を、Z座標値として検知し、主制御部30に通知する。
位置検出部51,53,54は、それぞれX方向ガイド11,Y方向ガイド12、ノズルホルダ4に機械的或いは光学的なセンサが設けられて位置を検出するようにしても良いし、或いはXモータ7,Yモータ8,Zモータ5がステッピングモータの場合、位置検出部51,53,54は、正逆方向の駆動ステップ数をアップ/ダウンカウントするカウンタとし、そのカウント値を検出位置とするものでもよい。またXモータ7,Yモータ8,Zモータ5に取り付けられたFG(Frequency Generator)やロータリエンコーダ等の信号を用いて、現在位置を計測するものでもよい。いずれにせよ位置検出部51,53,54は、ノズル3の現在位置としてX座標値、Y座標値、Z座標値が検出できる構成であればよく、その具体的手法は問われない。
また位置検出部52も同様に、ノズル回転位置を機械的或いは光学的に検出するセンサでもよいし、例えばノズル回転モータ6のFGやロータリエンコーダ、或いはステッピングモータの場合のステップ数のアップダウンカウンタなどとしてもよい。
【0040】
従って位置検出部51,52,53,54は、モータコントローラ35の内部カウンタ等による構成となってもよいし、機械的或いは光学的な外部センサの情報をモータコントローラ35が取り込む形式で構成してもよい。
モータコントローラ35は、位置検出部51,52,53,54からの位置情報を監視しながら、主制御部30から求められたノズル駆動を実行することになる。
また主制御部30は、モータコントローラ35を介して位置検出部51,52,53,54による位置情報の通知を受けることで、ノズル3の現在位置を把握でき、正確かつ無駄のないノズル移動制御が実行できる。
【0041】
吐出制御部40は、主制御部30の指示に応じて、ノズル3からのコーティング剤の吐出の実行/停止を制御する。この図では吐出機構41として、ノズルへのコーティング剤の供給及び加圧・吐出を行う機構部位として概念的に示している。
また吐出制御部40は、主制御部30の指示に応じて、吐出の際の圧力を調整することで、コーティング剤のスプレーパターン90の幅を調整することもできる。
例えば吐出機構41では、コーティング剤の吐出用の空気圧の調整に電空レギュレータを使用する。吐出制御部40は電空レギュレータを制御することで、噴射圧でコーティング剤のスプレーパターン90幅を調整できる。電空レギュレータによって電気信号に比例して空気圧を無段階に制御できることで、スプレーパターン90の幅を無段階で変化させることができる。これにより、スプレーパターン90の調整、あるいは設定変更などが容易に実行できる。
【0042】
センサ駆動部42は、発光部21からのレーザ発光駆動を実行させるとともに、受光部22の受光信号を検出し、検出信号を生成する。
このセンサ駆動部42は主制御部30の指示に応じてレーザ発光駆動を行い、またその際、検出信号を主制御部30に供給することになる。
【0043】
<3.第1の実施の形態のスプレーパターン幅測定>
以上の構成のコーティング装置における第1の実施の形態としてのスプレーパターン幅の測定動作について説明する。
第1の実施の形態のスプレーパターン動作は、測定準備処理と測定処理の2段階の動作により行われる。
測定準備処理とは、ノズル3の端部によって光センサが反応する位置座標を取得する処理である。また測定処理は、実際にスプレーパターン90の幅を測定する処理である。
【0044】
概要を説明する。本実施の形態の場合、光センサ(発光部21,受光部22)は、X方向に対向して配置されている。つまり光線はX方向に伸びる。
スプレーパターン90の幅の測定のためには、ノズル3を、光線を横切る方向性であるY方向に移動させる。そしてY方向の位置(Y座標値)を測定する。
なお、この際、スプレーパターン90については、扇状の面がX方向に向く状態、つまり扇がY方向に広がる状態の回転角度位置とする。
図2Aに示した状態から90°回転した状態である。以下、この回転角度位置を測定用の回転角度位置ということとする。
【0045】
まず測定準備処理として、ノズル3をY方向に移動させながら、ノズル3が光線を遮るY座標値を取得する。
図4Aに示すように、ノズル3を、光線の光軸JSにあたらない位置を開始位置とし、ここから破線矢印で示すようにノズル3を−Y方向に移動させる。すると
図4Bの位置状態となった時点で、光線がノズル3によって遮られ、受光部22の光量が十分に低下し、遮光状態の検出信号が出力される。
例えば
図7Cに、受光部22の受光レベルに応じた検出信号の変化の例を示している。例えばセンサ駆動部42は、受光部22の受光レベルを常時、閾値thと比較しており、受光レベルが閾値th以上であればLレベル、閾値th未満であればHレベルの検出信号を出力する。例えば最大光量の50%を閾値thとして設定する。
主制御部30は、この検出信号により、光軸JS上に物体が位置しているか否かを検知できる。
【0046】
この
図4Bの位置状態となり、検出信号によりノズル3が光線の光軸JSの位置に達したことを検知したら、主制御部30はその時点のY座標値Y1を取得し、第1の位置座標値(測定基準値)としてメモリ部34(例えば主制御部30としてのCPUを備えるマイクロコンピュータ内のワーク領域、レジスタ又は外付けメモリチップのRAM領域等)に記憶する。ここまでが測定準備処理(第1位置座標値取得処理)となる。
【0047】
測定処理では、スプレーパターン90を吐出させたノズル3を、測定準備処理と同様の方向性でY方向に移動させながら、スプレーパターン90が光線を遮るY座標値を取得する。
図4Cに示すように、ノズル3からスプレーパターン90を吐出させるとともに、スプレーパターン90が光線の光軸JSにあたらない位置を開始位置とする。そして、ここから破線矢印で示すようにノズル3を、測定準備処理のときと同じ方向性である−Y方向に移動させる。すると
図4Dの位置状態となった時点で、受光部22の受光光量が十分に低下し、遮光状態の検出信号が出力される。
なお、この
図4Dの位置状態とは、スプレーパターン90の縁部ではなく、スプレーパターン90の厚幅部分90aが光軸JSに当たった状態である。液体によるスプレーパターン90は、
図4Eのような断面形状となる。この場合、受光部22の光量低下は縁部から徐々に始まるが、検出信号としてH/Lが変動する光量低下レベルは、図示の厚幅部分90aでようやく発生する。換言すれば、縁部では光量低下はある程度生ずるが、低下レベルとしては小さい。上述のように閾値thを50%レベルに設定するとは、縁部でのわずかな光量低下ではなく、確実に受光光量が大きく低下する縁部近傍である厚幅部分90aの検出を目標とするものでもある。
【0048】
この
図4Dの位置状態となり、検出信号によりスプレーパターン90の厚幅部分90aが光軸JSの位置に達したことを検知したら、主制御部30はその時点のY座標値Y2を取得し、第2の位置座標値としてメモリ部34(例えば主制御部30としてのCPUを備えるマイクロコンピュータ内のワーク領域、レジスタ又は外付けメモリチップのRAM領域等)に記憶する。
そして、第1,第2の位置座標値Y1,Y2と、あらかじめメモリ部34に記憶されているノズル3の幅(直径)の値を用いて、スプレーパターン90の幅を算出する。
具体的には、Y座標値Y1,Y2の差分は、ノズル端部からスプレーパターン90の端部(縁部近傍である厚幅部分90a)までの距離となる。
従ってスプレーパターン90の幅(厚幅部分90aから他方の厚幅部分90aまでの幅)は、ノズル3の幅を
図4に示すようにWnとすると、
(Y2−Y1)×2+Wn
として算出される。
【0049】
このような測定準備処理及び測定処理を実行するための、主制御部30の具体的な制御処理の一例を説明する。
図5は主制御部30(CPU)が行う測定準備処理を示している。
主制御部30はステップS101で、モータコントローラ35に指示を出し、ノズル3を準備処理開始位置としてのX、Y座標位置に移動させる。即ち
図4Aに示したようなY座標値であって、
図1で言えば、捨て打ち部23の側壁(図中奥側の側壁)のやや内側となるY座標値である。
またX座標値としては、捨て打ち部23の側壁の略中央に相当するX座標値である。この準備処理開始位置としてのX、Y座標値は、捨て打ち部23の上空であって、Y方向には光軸JSからずれた位置である。
【0050】
次にステップS102で主制御部30は、モータコントローラ35に指示し、ノズル回転モータ6を駆動させて、スプレーパターン90の扇の広がりがY方向となる測定用の回転角度位置となるようにさせる。
なお、測定準備処理では、実際にスプレーパターン90の吐出を行わない。そのため、ノズルが光軸JSに当たる部分の断面形状が真円であるなら、このステップS102は不要である。ただしノズル形状が真円でない場合(楕円状、或いは多角形状等)は、このステップS102の処理を行うことが適している。
ステップS103で主制御部30は、モータコントローラ35に指示し、Zモータ5を駆動させて、ノズル3の高さ位置を調整させる。即ち、−Y方向に移動した際に、ノズル3が光軸JSに当たることになる高さ位置とする。
ステップS104で主制御部30は、センサ駆動部42に指示して、発光部21からのレーザ発光を開始させる。
【0051】
以上のステップS101,S102,S103で、
図4Aの位置状態となり、また光センサの動作も開始される。
なお、ステップS101,S102,S103,S104の制御を行う順序は異なっても良い。また必ずしも、準備処理開始位置としてのX、Y座標位置で、いったん停止させなくてもよい。他の位置から準備処理開始位置のX、Y座標位置に達したら、停止させずに、そのまま、次に説明するステップS105の移動に移ってもよい。
【0052】
図4Aの準備処理開始位置の状態になったら、次にステップS105で、主制御部30はモータコントローラ35に指示し、Yモータ8を駆動させて、ノズル3を−Y方向に移動させる。
主制御部30は、−Y方向の移動中にステップS106で光センサの検出信号を監視しており、検出信号に変化があったら、ステップS107に進んで、その検出信号の変化があったタイミングでのY座標値を取得する。
図4Bの状態である。そして取得したY座標値を第1の位置座標値Y1としてメモリ部34に記憶する。
そしてステップS108で、測定準備用の−Y方向の移動を終了させ、光センサの動作もオフさせる。
【0053】
続いて
図6で測定処理を説明する。
主制御部30はステップS201で、モータコントローラ35に指示を出し、ノズル3を測定処理開始位置としてのX、Y座標位置に移動させる。これは上述の準備処理開始位置としてのX、Y座標位置と同様でよい。即ち
図4Cに示したようなY座標値であって、
図1で言えば、捨て打ち部23の側壁(図中奥側の側壁)のやや内側となるY座標値である。またX座標値としては、捨て打ち部23の側壁の略中央に相当するX座標値である。従って測定処理開始位置としてのX、Y座標値は、捨て打ち部23の上空であって、Y方向には光センサの光線(光軸JS)からずれた位置である。
【0054】
次にステップS202で主制御部30は、モータコントローラ35に指示し、ノズル回転モータ6を駆動させて、スプレーパターン90の扇の広がりがY方向となる測定用の回転角度位置となるようにさせる。
さらにステップS203で主制御部30は、モータコントローラ35に指示し、Zモータ5を駆動させて、ノズル3の高さ位置を調整させる。この場合は、−Y方向に移動した際に、ノズル3から吐出されるスプレーパターン90が光軸JSに当たることになる高さ位置とする。特には光軸JSの高さ位置(Z座標値)を基準として、
図2で説明した距離tに相当する高さをもった位置とする(
図4C参照)。
このように高さ位置を設定することで、コーティング処理の際に、実際に塗布面に当たるスプレーパターン90の幅を計測できる。
【0055】
またステップS204で主制御部30は、センサ駆動部42に指示して、発光部21からのレーザ発光を開始させる。
またステップS205で主制御部30は、吐出制御部40に指示を出し、吐出機構41によるコーティング剤のノズル3からの吐出を開始させる。
【0056】
以上のステップS201,S202,S203,S204,S205で、
図4Cの位置状態となるとともに、光センサの動作が開始され、またスプレーパターン90の吐出が開始される。なお、測定処理開始位置が捨て打ち部23の上空とされることで、スプレーパターン90の吐出によって作業台部2が汚されることはない。
なお、ステップS201,S202,S203,S204の制御を行う順序は異なっても良い。またステップS205の吐出開始制御は、少なくともノズル3が測定処理開始位置のX、Y座標位置に達した後に行えばよい。
【0057】
図4Cの測定処理開始位置の状態になったら、次にステップS206で、主制御部30はモータコントローラ35に指示し、Yモータ8を駆動させて、ノズル3を−Y方向に移動させる。
主制御部30は、−Y方向の移動中にステップS207で光センサの検出信号を監視しており、検出信号に変化があったら、ステップS208に進んで、その検出信号の変化があったタイミングでのY座標値を取得する。
図4Dの状態である。そして取得したY座標値を第2の位置座標値Y2としてメモリ部34に記憶する。
そしてステップS209でスプレーパターン90の吐出停止制御、ステップS210で測定用の−Y方向の移動の終了制御及び光センサの動作オフ制御を行う。
【0058】
ステップS211では、主制御部30は、メモリ部34に記憶した座標値等を用いて、スプレーパターン90の幅Wspを算出する。即ち第1,第2の位置座標値Y1,Y2と、あらかじめメモリ部34に記憶されていたノズル3の幅Wnを用いて、
Wsp=(Y2−Y1)×2+Wn
としてスプレーパターン90の幅Wspを算出する。
以上で測定処理を終える。
【0059】
以上のように本実施の形態では、主制御部30は、測定準備処理(第1位置座標値取得処理)として、光センサの光線(光軸JS)と直交方向となるY座標軸に沿ってノズル3が光線に向かう−Y方向の移動を実行させる。
そしてノズル3が光軸JSに当たることによる光センサの検出信号変化が得られたときのY座標軸における第1の位置座標値(Y1)を取得し、メモリ部34に記憶させる。
また主制御部30は、測定処理(第2位置座標値取得処理及び算出処理)として、Y座標軸に沿って、ノズル3から吐出された扇状のスプレーパターン90が光線(光軸JS)に向かう−Y方向の移動を実行させる。
そしてスプレーパターン90によって光センサの検出信号変化が得られたときのY座標軸における第2の位置座標値(Y2)を取得し、メモリ部34に記憶させる。
そして、メモリ部34から読み出したノズル3の幅Wnと、第1の位置座標値Y1、及び第2の位置座標値Y2を用いて、スプレーパターン90の幅Wspを算出する。
【0060】
上記の
図5の測定準備処理(第1位置座標値取得処理)は、例えばコーティング装置1の起動時などに、準備処理として予め行っておき、第1の位置座標値Y1を記憶しておけば良い。すると、実際にスプレーパターン幅の計測を行う時には、
図6の測定処理(第2位置座標値取得処理及び算出処理)を行うのみとすることができる。
或いは、スプレーパターン幅の計測時に、
図5の測定準備処理(第1位置座標値取得処理)と、
図6の測定処理(第2位置座標値取得処理及び算出処理)を続けて行うようにしてもよい。
測定準備処理をあらかじめ行っておくこととすれば、実際の測定時には、ノズルを−Y方向に1回わずかに移動させる期間という、非常に短い時間で測定を完了できる。
また測定準備処理と測定処理を続けて行うようにしても、−Y方向のわずかな移動を2回行うのみであり、この場合でも短時間で測定を完了できる。
【0061】
従って本実施の形態によれば、スプレーパターン90の幅の測定を非常に短時間で効率的に実行することが可能となる。
スプレーパターン90の幅の測定結果については、目標の幅と比較して主制御部30が吐出制御部40に指示し、吐出機構41の圧力調整を実行させる。これによってスプレーパターン90の幅を目標の幅に調整できる。
特に圧力を変化させながらスプレーパターン90の幅を測定すると言うことを繰り返して、スプレーパターン幅を調整する場合でも、測定準備処理は最初に1回(もしくはあらかじめ行っておく)のみであり、繰り返しの測定時には測定処理のみを行えば良い。つまり−Y方向の移動を1回行えば1回の測定ができる。このため幅調整のための一連の動作効率は非常によい。
【0062】
また、コーティング剤の吐出を行うのは、測定開始位置から、光センサが反応するまでの移動の間のわずかな時間のみである。このため測定のためのコーティング剤の消費は非常に少量であり、コーティング剤の消費を極力避けたものといえる。
【0063】
また本実施の形態では、まずノズル3の端部を光センサが検知する第1の位置座標値Y1を取得しておく。そしてノズル3からコーティング剤を吐出した状態で、コーティング剤のスプレーパターン90を光センサが検知する第2の位置座標値Y2を取得する。
第1の位置座標値Y1と第2の位置座標値Y2の差分は、ノズル3の端部から、スプレーパターンのセンサ反応位置までの距離となる。
ここでセンサ反応位置とは、スプレーパターン90として厚みがある程度あって、光センサが確実に反応できる箇所であり、上述のようにスプレーパターン90の縁部近傍の厚幅部分90aである。
加圧液体によるスプレーパターン90の縁部は、必ずしも確実に光センサによる検出が可能な位置ではなく、またあくまでも吐出液体であることから不定である。そこで本実施の形態では縁部近傍として、センサが確実に反応できる厚幅部分90aをターゲットとして第2の位置座標値Y2を判定する。
そして第1,第2の位置座標値Y1,Y2の差分と、ノズル3の幅(ノズル直径)を用い、スプレーパターンの幅を算出する。この算出は、液体のスプレーパターン90において不定な縁部を除外するものとなる。即ち測定するスプレーパターン90の幅とは、スプレーパターンの縁部から縁部ではなく、センサ反応位置から逆側のセンサ反応位置まで(厚幅部分90aから逆側の厚幅部分90a)の幅である。
このため光センサ(センサ駆動部42)は、扇状のスプレーパターンの断面が厚幅となる部分に応じて変化する検出信号を出力するように、例えば50%光量値を閾値thとして検出信号を生成する。
【0064】
このようにすると、測定毎にばらつきのないスプレーパターン幅測定が可能となる。
例えば縁部を目標とすると、センサの閾値thの設定が困難である。縁部での遮光の度合は一定でないためである。これに対し、本実施の形態のように、縁部ではない厚幅部分90aをターゲットとすると、ある程度以上の遮光作用が安定して見込めるため、例えば50%光量値を閾値thなどとすることで、安定して厚幅部分90aを検出できることになる。
つまり液体であって遮光作用の不定なスプレーパターン90に対し、測定毎に安定して縁部近傍の厚幅部分90aを検出できることから、縁部から縁部の実測でなくとも、実際の幅制御には十分であり、逆に制御のための精度は向上することとなる。
【0065】
また、実際の縁部までを含めたスプレーパターン幅は、上記の算出結果からある程度予測できるため、実際上、縁部から縁部の実測を得ることはさほど必要ではない。
実際上は、回路基板100上でスプレーパターン90によってコーティング剤の塗布が行われる幅(塗布幅)は、縁部から縁部の幅となる。
そこで、例えば上述のスプレーパターン幅測定を行った場合、表示部9には、測定値を補正して実際の塗布幅を表示するようにするとよい。補正値は、予め設定しておくことができる。
例えば上述の測定処理で求められたスプレーパターン90の幅Wsp=9mmであった場合に、実際に塗布幅を計測(塗布後に物差し等で実測)して10mmであったとする。この場合、補正値は1mmとなる。
このように補正値を求める作業を、圧力をいくつかの段階に変更して、予め行っておけば、測定算出した幅Wspの各値に対する補正値がわかる。或いは補正係数を求めることができる。
そこで、テーブルデータとして補正値を算出された幅Wspの各値に対応する補正値をメモリ部34(例えば不揮発性メモリ領域)に記憶させたり、幅Wspに乗算する補正係数を記憶させておく。
主制御部30は、測定処理を行った際には、幅Wspを補正して、塗布幅としての値を表示部9に表示させるようにする。例えば測定した幅Wsp=9mmであった場合、補正して10mmとして表示させる。このようにすると、オペレータは実際の塗布幅を認識できる。
【0066】
なお第1の実施の形態としての変形例として、以下の処理が考えられる。
図5の測定準備処理は、スプレーパターン90の吐出を行う訳ではないため、必ずしも捨て打ち部23の上空で行わなくても良い。少なくとも光軸JSの近傍から開始すればよい。
また、捨て打ち部23以外で、測定処理の際のスプレーパターン90の受け皿となる部位を設け、その上空で
図6の測定処理を行うようにしてもよい。
また、光センサは常時オンにしておくならば、
図5,
図6の処理時にレーザ発光オン/オフの制御を行わなくても良い。
また、測定準備処理及び測定処理では、いずれも−Y方向のノズル移動を実行させたが、同方向であればよく、測定準備処理及び測定処理でいずれも+Y方向にノズル移動させて光軸JSに向かうようにしてもよい。
また、
図1の例では発光部21からの光線がX方向に伸びるように発光部21と受光部22を配置したため、測定準備処理及び測定処理の際の移動方向はY軸に沿った方向としたが、光線がY方向に伸びるように発光部21と受光部22を配置した場合は、測定準備処理及び測定処理の際の移動方向はX軸に沿った方向となるのは言うまでも無い。
【0067】
<4.光センサ構成例>
ここで光センサの構成例について言及しておく。
光センサは、
図7Aに示すように、発光部21と受光部22を用い、これを
図1に示したように対向配置する構成とすることができる。
これに対して、
図7Bのように、発光部21と受光部22が一体配置された発光/受光ユニットを用い、その光線方向の先にミラー27を配置してもよい。例えば
図1の発光部21の位置に発光/受光ユニットを配置し、
図1の受光部22の位置にミラー27を配置する例である。このようにしても、光センサとして同様に上述のスプレーパターン90の幅測定のために機能できる。
【0068】
<5.第2の実施の形態のスプレーパターン幅測定>
第2の実施の形態としてのスプレーパターン90の幅測定手法を説明する。
第2の実施の形態は、上述した測定準備処理を不要とするものである。即ち作業台部2上において、光軸JSにノズル3が当たる位置(
図4Bの状態となる位置)は、装置設計上あらかじめ規定できる。従って、ノズル3の幅の値Wnだけでなく、上述の第1の位置座標値Y1は、あらかじめメモリ部34に記憶させておくことが可能である。
なお第1の位置座標値Y1とは、光センサの光線と直交方向となる所定移動軸(例えばY座標軸)に沿ってノズル3が光線に向かう一方向(−Y方向)の移動を行ったときに、ノズル3に起因する光センサの検出信号変化が得られる位置としてのY座標値である。
【0069】
そこで、ノズル3の幅の値Wn、及び第1の位置座標値Y1を、あらかじめメモリ部34に記憶させておく構成とする。
すると、スプレーパターン90の幅の測定の際は、
図6の測定処理で説明した動作のみを行えば良いこととなる。
即ち主制御部30は、Y座標軸に沿って、ノズル3から吐出された扇状のスプレーパターン90を光軸JSに向かう−Y方向に移動させる移動制御と、この移動過程で、スプレーパターン90に起因する光センサの検出信号変化が得られたときのY座標値を第2の位置座標値を取得し記憶する。そしてメモリ部34から読み出したノズル3の幅Wnと第1の位置座標値Y1、及び第2の位置座標値Y2を用いて、
Wsp=(Y2−Y1)×2+Wn
としてスプレーパターン90の幅Wspを算出する。
【0070】
これによって、第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、測定動作に要する時間をいっそう短縮できる。
なお、この場合も光センサ(センサ駆動部42)は、Y座標値Y2の取得の際に、扇状のスプレーパターンの断面が厚幅となる部分に応じて変化する検出信号を出力するようにすることは第1の実施の形態と同様である。
【0071】
<6.第3の実施の形態のスプレーパターン幅測定>
第1の実施の形態では、測定準備処理と測定処理の際のノズル移動方向を共に−Y方向(同方向)とした。
また第2の実施の形態では、あらかじめ記憶する第1の位置座標値Y1の定義のためのノズル移動方向と、測定処理の際のノズル移動方向を共に−Y方向(同方向)とした。
このように第1、第2の位置座標値Y1,Y2に関するノズル移動方向を同一方向として説明してきたが、これを逆方向とすることも可能である。
例えば第1の実施の形態に合わせて言えば、測定準備処理として第1の位置座標値Y1を得る際には+Y方向にノズルを移動させ、測定処理として第2の位置座標値Y2を得る際には−Y方向にノズルを移動させるという方式である。
【0072】
この場合、第1の実施の形態におけるY2−Y1の値は、ノズル3の幅Wnを用いて、Y2−Y1−Wnとして求めることができる。
従ってスプレーパターン90の幅Wspの算出は、
Wsp=(Y2−Y1−Wn)×2+Wn
として算出できる。
この方式を用いても、効率のよいスプレーパターン90の幅測定が可能である。
【0073】
<6.プログラム>
実施の形態のプログラムは、上述の
図5の測定準備処理や
図6の測定処理を、例えばCPU、DSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置に実行させるプログラムである。
即ち第1の実施の形態の動作に沿ったプログラムは、移動手段により、光センサの光線と直交方向となる所定移動軸に沿って、ノズル3を光線に向かう一方向に移動させる第1移動処理と、この第1移動処理による移動過程で、ノズル3に起因する光センサの検出信号変化が得られたときの所定移動軸における第1の位置座標値を取得する第1位置座標値取得処理と、移動手段により、上記所定移動軸に沿って、ノズル3から吐出された扇状のスプレーパターン90を上記光線に向かう上記一方向に移動させる第2移動処理と、この第2移動処理による移動過程で、スプレーパターン90に起因する光センサの検出信号変化が得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得処理と、記憶手段から読み出したノズル3の幅と、第1の位置座標値及び第2の位置座標値を用いて、スプレーパターン90の幅を算出する算出処理とを制御手段(演算処理装置)に実行させる。
【0074】
また、第2の実施の形態の動作に沿ったプログラムは、移動手段により、所定移動軸に沿って、ノズル3から吐出された扇状のスプレーパターンを光センサの光線に向かう一方向に移動させる移動処理と、この移動処理による移動過程で、スプレーパターン90に起因する光センサの検出信号変化が得られたときの上記所定移動軸における第2の位置座標値を取得する第2位置座標値取得処理と、記憶手段から読み出したノズル3の幅及び第1の位置座標値と、第2の位置座標値を用いて、スプレーパターン90の幅を算出する算出処理とを制御手段(演算処理装置)に実行させる。
このようなプログラムにより、効率的なスプレーパターン90の幅測定を行うコーティング装置1を実現できる。
【0075】
このようなプログラムは、コーティング装置1に内蔵されている記録媒体としてのメモリ部34或いは、HDD(Hard Disk Drive)等や、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、このようなプログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
またこのようなプログラムによれば、実施の形態のコーティング装置1の広範な提供に適している。
【0076】
<7.変形例>
実施の形態では、ノズル3から扇状のスプレーパターンが吐出される例としたが、必ずしも扇状のスプレーパターンを吐出するノズルでなくともよい。
例えば円錐状に広がるスプレーパターンを吐出するノズルを用いる場合、そのスプレーパターンの幅(直径)の測定として、上述の実施の形態と同様の処理を適用できる。即ちスプレーパターンがノズルよりも広がる状態となる液体吐出装置に有効である。
【0077】
また実施の形態のコーティング装置は、回路基板に薄膜を形成するコーティング装置に限ることなく、各種の処理対象物に対して薄膜等を形成するコーティング装置に適用できる。
薄膜とは、防湿膜、防さび膜、塗装膜、着色膜など、各種の膜のコーティングに適用できる。
また本発明の液体吐出装置は、実施の形態のようなコーティング装置に限らず、膜形成、洗浄、塗装など、各種の目的で加圧液体の吐出を行う液体吐出装置、及びそのスプレーパターン幅測定方法、もしくはそのプログラムとして、広く適用できる。