(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体からなる無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)と、無機粒子(B)とを含有し、前記無機粒子(B)が、ガラスフリットである難燃性シリコーン樹脂組成物。
前記無機酸化物粒子が、シリカ、アルミナ、ガラスフリット及びアンチモンドープ酸化スズからなる群より選択された少なくとも1種の無機酸化物粒子である請求項1記載の難燃性シリコーン樹脂組成物。
前記無機粒子(B)としてのガラスフリットが、ケイ酸、ホウ酸、ホウケイ酸、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム及び酸化リンから選ばれる少なくとも1種の成分から形成されたガラスフリットである請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性シリコーン樹脂組成物。
前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)において、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂として、(i)基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、又は(ii)該基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとともに、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサン及び/又はシラノール基を有するポリシロキサン樹脂が用いられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性シリコーン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[難燃性シリコーン樹脂組成物]
本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物は、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体からなる無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)と、無機粒子(B)とを含有する。
【0026】
[無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)]
無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)における「縮合反応性シリコーン樹脂」としては、縮合反応性基を有するシリコーン樹脂(ポリシロキサン樹脂)であれば特に限定されず、例えば、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサン(以下、「D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン」と称する場合がある)、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン(以下、「縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン」と称する場合がある)、基本構成単位がM単位及びQ単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記縮合反応性シリコーン樹脂のなかでも、複合部材にフレキシブル性を付与できる点で、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの組合せが好ましい。本発明では、特に、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、又はD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの組合せが好ましい。
【0028】
前記縮合反応性基としては、シラノール基、アルコキシシリル基(例えば、C
1-6アルコキシシリル基等)、シクロアルキルオキシシリル基(例えば、C
3-6シクロアルキルオキシシリル基等)、アリールオキシシリル基(例えば、C
6-10アリールオキシシリル基等)などが挙げられる。これらの中でも、シラノール基、アルコキシシリル基、シクロアルキルオキシシリル基、アリールオキシシリル基が好ましく、特に、シラノール基、アルコキシシリル基が好ましい。
【0029】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、具体的には、基本構成単位として、下記式(1)で表されるD単位と、下記式(2)で表されるT単位とを含有する。
【化1】
【0030】
上記式(1)中、R
1は、同一又は異なって、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。式(2)中、R
2は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。
【0031】
前記R
1、R
2における飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基などが挙げられる。また、前記R
1、R
2における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
【0032】
R
1、R
2としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であり、さらに好ましくは、メチル基である。
【0033】
式(1)で表されるD単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。また、式(2)で表されるT単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0034】
また、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物[例えば、ジアルキル(又は、アリール)ジアルコキシシラン等の2官能のシリコーン単量体と、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体との部分縮合物]であって、その構成単位中に、D単位、T単位、及び下記式(3)
−OR
3 (3)
で表される基を含有する。式(3)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
【0035】
前記R
3は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、上記式(1)中のR
1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R
3としては、好ましくは飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0036】
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとしては、例えば、アルコキシシリル基(例えば、C
1-6アルコキシシリル基)含有ポリメチルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C
1-6アルコキシシリル基)含有ポリメチルフェニルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C
1-6アルコキシシリル基)含有ポリフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらのD・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの中でも、好ましくは、C
1-6アルコキシシリル基含有ポリシロキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシロキサン又はエトキシシリル基含有ポリシロキサンであり、特に好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシロキサン又はエトキシシリル基含有ポリメチルシロキサンである。
【0038】
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量としては、上限は、例えば30重量%、好ましくは25重量%であり、下限は、例えば8重量%、好ましくは10重量%、さらに好ましくは12重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
【0039】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)としては、上限は、例えば6000、好ましくは5500、さらに好ましくは5300であり、下限は、例えば800、好ましくは1000、さらに好ましくは1200である。
【0040】
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとして、商品名「X−40−9246」、「X−40−9250」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(D・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサン)を用いることもできる。
【0041】
前記縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、具体的には、基本構成単位として、前記式(2)で表されるT単位を含有する。式(2)で表されるT単位は、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン中において、それぞれ、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、同一である。
【0042】
また、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物[例えば、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体の部分縮合物]であって、その構成単位中に、T単位、及び下記式(4)
−OR
4 (4)
で表される基を含有する。式(4)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
【0043】
前記R
4は、飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、上記式(1)中のR
1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R
4としては、好ましくは飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0044】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、ランダム型、ラダー型、カゴ型などのいずれであってもよいが、柔軟性の観点からは、ランダム型が最も好ましい。これらの縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの中でも、好ましくは、C
1-6アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサン又はエトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、特に好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサン又はエトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサンである。
【0046】
このような縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量としては、上限は、例えば50重量%、好ましくは48重量%、さらに好ましくは46重量%であり、下限は、例えば10重量%、好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
【0047】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)としては、上限は、例えば6000、好ましくは3500、さらに好ましくは3000であり、下限は、例えば200、好ましくは300、さらに好ましくは400である。
【0048】
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとして、商品名「KC−89」、「KR−500」、「X−40−9225」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサン)を用いることもできる。
【0049】
このほか、分子内(末端)に反応性のシラノール基を有するポリシロキサン化合物として、商品名「X−21−3153」、「X−21−5841」(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることもできる。
【0050】
前記ポリシロキサン化合物全体に占める、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの総量の割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0051】
本発明では、前記ポリシロキサン樹脂が、分子内(末端)にアルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有しており、それらの基(アルコキシシリル基、シラノール基)の総含有量が8〜48重量%であるポリシロキサン樹脂であって、該ポリシロキサン樹脂が前記無機酸化物粒子と化学結合により架橋されているのが好ましい。前記アルコキシシリル基、シラノール基の総含有量の上限は、より好ましくは30重量%であり、下限は、より好ましくは10重量%である。
【0052】
本発明では、特に、柔軟性、強度、不燃性等の観点から、縮合反応性シリコーン樹脂として、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを用いるか、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを併用するのが好ましい。この場合、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの割合[前者/後者(重量比)]としては、上限は、例えば4.9、好ましくは3、さらに好ましくは2であり、下限は、例えば0、好ましくは0.02であるが、さらに柔軟性を付与する場合は、上限は例えば100である。
【0053】
本発明において、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)は、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体からなる。縮合反応性シリコーン樹脂と無機酸化物粒子とが化学結合により架橋しているため、耐熱性及び強度が高い。
【0054】
縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂としては前記のものを使用できる。なかでも、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンか、又はD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの組合せが好ましい。
【0055】
前記無機酸化物粒子としては、粒子表面に反応性官能基を有する無機酸化物粒子であればよく、例えば、シリカ(SiO
2あるいはSiO)、アルミナ(Al
2O
3)、ガラスフリット、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などが挙げられる。無機酸化物粒子は2種以上の無機酸化物からなる複合無機酸化物粒子であってもよい。これらの中でも、特にシリカが好ましい。無機酸化物粒子は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル型不飽和基、ハロゲン原子、イソシアヌレート基などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基が好ましい。シリカ粒子表面のヒドロキシル基はシラノール基として存在する。
【0057】
無機酸化物粒子の平均粒子径(一次粒子径)としては、上限は、例えば500μm、好ましくは100μm、さらに好ましくは10μm、特に好ましくは1μmであり、下限は、例えば1nmである。なお、平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
【0058】
無機酸化物粒子の粒度分布は狭い方が望ましく、また、一次粒子径のまま分散している単分散状態であることが望ましい。さらに、無機酸化物粒子の表面電位は、酸性領域(例えば、pH2〜5、好ましくはpH2〜4)にあるのが好ましい。ポリシロキサン樹脂との反応時にそのような表面電位を有していればよい。
【0059】
前記無機酸化物粒子としては、コロイド状の上記無機酸化物粒子を用いるのが好ましい。コロイド状の無機酸化物粒子としては、例えば、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)、コロイド状酸化スズ(酸化スズ水分散体)などが挙げられる。
【0060】
コロイダルシリカとしては、例えば、特開昭53−112732号公報、特公昭57−9051号公報、特公昭57−51653号公報などにも記載されるように、二酸化ケイ素(無水ケイ酸)の微粒子(平均粒子径が、例えば、5〜1000nm、好ましくは、10〜100nm)のコロイドなどが挙げられる。
【0061】
また、コロイド状シリカは、必要により、例えば、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含有することができ、また、必要により、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や、有機塩基(例えば、テトラメチルアンモニウムなど)などの安定剤を含有することもできる。
【0062】
このようなコロイド状シリカは、特に制限されず、公知のゾル−ゲル法など、具体的には、例えば、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Langmuir 6, 792−801(1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493(1988)などに記載されるゾル−ゲル法などにより、製造することができる。
【0063】
コロイダルシリカは表面処理を施していない裸の状態であることが好ましい。コロイダルシリカには、表面官能基としてシラノール基が存在する。
【0064】
また、このようなコロイダルシリカとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、商品名「スノーテックス−XL」、「スノーテックス−YL」、「スノーテックス−ZL」、「PST−2」、「スノーテックス−20」、「スノーテックス−30」、「スノーテックス−C」、「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」、「スノーテックス−50」(以上、日産化学工業社製)、商品名「アデライトAT−30」、「アデライトAT−40」、「アデライトAT−50」(以上、日本アエロジル社製)などが挙げられる。これらの中でも、商品名「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」などが特に好ましい。
【0065】
また、上記のコロイダルシリカ以外のコロイド状の無機粒子としても、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、商品名「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」(以上、日産化学工業製)などのアルミナゾル(ヒドロゾル)、例えば、商品名「SN−100D」、「SN−100S」(以上、石原産業社製)などの酸化スズ水分散体などが挙げられる。
【0066】
本発明では、無機酸化物粒子が、その一次粒子径が1nm〜500μmの範囲にあり、その表面電位がpH2〜5の範囲にあるコロイダルシリカであって、該コロイダルシリカ表面のシラノール基がポリシロキサン樹脂と化学結合して該ポリシロキサン樹脂を架橋しているのが好ましい。
【0067】
前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂中の無機酸化物粒子の含有量は適宜選択できるが、上限は、例えば30重量%、好ましくは20重量%、さらに好ましくは15重量%であり、下限は、例えば1重量%、好ましくは2重量%、さらに好ましくは3重量%である。無機酸化物粒子の含有量が少なすぎると、被膜の機械的強度が低下しやすく、無機酸化物粒子の含有量が多すぎると、被膜が脆くなりやすい。
【0068】
次に、前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂の製造法について説明する。
【0069】
前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂は、例えば、前記無機酸化物粒子と縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂(好ましくは、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、又はD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン及び縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、或いはこれらとシラノール基を有するポリシロキサン樹脂)とを、溶媒中、好ましくは酸の存在下で反応させることにより製造できる。なお、ポリシロキサン樹脂は、無機酸化物粒子の粒子表面の反応性官能基と反応可能な官能基を有している。無機酸化物粒子の粒子表面の反応性官能基がシラノール基の場合は、前記縮合反応性基が該シラノール基と反応して架橋構造を形成する。
【0070】
前記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール;これらの混合液などが挙げられる。これらのなかでも、水とアルコールの混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水と2−プロパノールとの混合溶媒、水と2−プロパノールと2−メトキシエタノールとの混合溶媒である。
【0071】
前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などが挙げられる。これらのなかでも、無機酸が好ましく、特に硝酸が好ましい。これらの酸は水溶液として使用することができる。酸の使用量は、反応系のpHを2〜5(好ましくは、2〜4)程度に調整できる量であればよい。
【0072】
反応の方法としては特に限定されず、例えば、(i)無機酸化物粒子と溶媒との混合液中にポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液を添加する方法、(ii)ポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液中に無機酸化物粒子と溶媒との混合液を添加する方法、(iii)溶媒中に、無機酸化物粒子と溶媒との混合液、及びポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液をともに添加する方法等のいずれであってもよい。
【0073】
なお、ポリシロキサン樹脂として、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとを併用する場合には、無機酸化物粒子と、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの混合物とを反応させてもよく、また、無機酸化物粒子に、まず、D・T単位縮合反応性基含有含有ポリシロキサンを反応させ、次いで、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させてもよく、さらには、無機酸化物粒子に、まず、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させてもよい。本発明において、無機酸化物粒子に、まず、縮合反応性基シリル基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン及び/又はシラノール基を有するポリシロキサン樹脂を反応させる方法を採用すると、難燃性シリコーン樹脂シートを作製する場合や、基材の少なくとも一方の面に塗工して難燃性シリコーン樹脂層を設ける場合、該樹脂シートや樹脂層の柔軟性が大幅に向上する。
【0074】
反応温度としては、上限は、例えば150℃、好ましくは130℃であり、下限は、例えば40℃、好ましくは50℃である。また、反応時間としては、上限は、例えば24時間、好ましくは12時間であり、下限は、例えば0.2時間、好ましくは0.5時間である。
【0075】
反応終了後、必要に応じて、溶媒を留去し、濃度及び粘度を調整することにより、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)を含むシリコーン樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
[無機粒子(B)]
無機粒子(B)としては、特に限定されず、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化スズ粒子、粘土鉱物(タルク、ゼオライト等)の粒子、ガラスフリットなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。無機粒子(B)は前記縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂とは化学的に結合していない。
【0077】
上記の中でも、少量で高い難燃効果が得られる点で、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、ガラスフリットが好ましい。さらに、透明性を得られる点で、シリカ粒子、ガラスフリットがより好ましく、特に、コーンカロリーメーター試験において発熱性抑制効果が得られる点で、ガラスフリットが特に好ましい。
【0078】
シリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ粒子、ヒューズドシリカ粒子等の乾式シリカ粒子;湿式シリカ粒子;シリカゲル粒子;コロイダルシリカ粒子などが挙げられる。これらのシリカ粒子の中でも、アエロジル等のヒュームドシリカ粒子が好ましく、特に、疎水性ヒュームドシリカ粒子が好ましい。
【0079】
ガラスフリットの屈伏点は、好ましくは300〜700℃であり、より好ましくは300〜650℃であり、さらに好ましくは300〜600℃である。ガラスフリットの屈伏点を上記範囲とすることにより、難燃性シリコーン樹脂シートを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該シートの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
【0080】
ガラスフリットしては、任意の適切なガラスフリットを採用できる。このようなガラスフリットとしては、好ましくは焼結性を有する無機粒子(ガラスフリット)であり、より好ましくは、ケイ酸(又は、酸化ケイ素)、ホウ酸(又は、酸化ホウ素)、ホウケイ酸、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム及び酸化リンから選ばれる少なくとも1種の成分から形成された無機粒子(ガラスフリット)である。代表的なガラスフリットとして、リン酸ガラスフリット、ホウケイ酸ガラスフリット、無アルカリガラスフリット、ほうろうフリットなどが挙げられる。特に好ましいガラスフリットは、少なくとも酸化リンを含む成分から形成されたガラスフリットである。少なくとも酸化リンを含む成分から形成されたガラスフリットにおいて、酸化リンの含有量は、例えば、5〜70重量%であり、下限は、好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%であり、上限は、好ましくは60重量%、さらに好ましくは50重量%である。上記のようなガラスフリットを採用することにより、難燃性シリコーン樹脂シートを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該シートの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
【0081】
ガラスフリットの平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜1000μmである。ガラスフリットの平均粒子径の下限は、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは2μmである。また、ガラスフリットの平均粒子径の上限は、より好ましくは500μm、さらに好ましくは300μm、特に好ましくは150μmである。ガラスフリットの平均粒子径を上記の範囲とすることにより、難燃性シリコーン樹脂シートを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該シートの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
【0082】
無機粒子(B)としては、中空構造の無機粒子を用いてもよい。このような無機粒子として、例えば、中空構造を有するシリカ、中空構造を有するガラスフリット(リン酸ガラスフリット等)(中空のガラスビーズを含む)などが挙げられる。
【0083】
無機粒子(B)の平均粒子径(一次粒子径)としては、上限は、例えば500μm、好ましくは300μm、さらに好ましくは200μm、特に好ましくは100μmであり、下限は、例えば1nmである。なお、平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
【0084】
本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物において、前記無機粒子(B)の含有量は、前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.1〜500重量部であり、上限は、好ましくは400重量部、特に好ましくは300重量部であり、下限は、好ましくは0.5重量部、より好ましくは1重量部、特に好ましくは2重量部である。
【0085】
本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物には、必要に応じて、硬化触媒等の添加剤を添加してもよい。
【0086】
本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物は、例えば、上記の方法で得られた無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)を含むシリコーン樹脂組成物に、無機粒子(B)を添加することにより製造できる。
【0087】
本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物の固形分濃度としては、取扱性、塗工性、含浸性等の観点から、上限は、例えば95重量%、好ましくは90重量%であり、下限は、例えば20重量%、好ましくは30重量%である。
【0088】
[難燃性シリコーン樹脂シート]
本発明の難燃性シリコーン樹脂シートは、前記本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物から形成されている。
図1は本発明の難燃性シリコーン樹脂シートを示す概略断面図である。1は難燃性シリコーン樹脂シートである。
【0089】
本発明の難燃性シリコーン樹脂シートは、例えば、表面を剥離処理した基材上に、前記本発明の難燃性シリコーン樹脂組成物を塗工し、乾燥することにより製造することができる。
【0090】
前記難燃性シリコーン樹脂組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、例えば、キスコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ワイヤーコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティング、ディスペンサーコーティング、スクリーン印刷、メタルマスク印刷などの公知の塗布方法により、前記表面を剥離処理した基材上に直接塗布して塗膜を形成し、必要に応じて、例えば、80〜200℃程度の温度で乾燥することにより、前記難燃性シリコーン系樹脂シートを得ることができる。
【0091】
前記難燃性シリコーン樹脂組成物の保存安定性、及び、成膜時の気泡欠点や外観ムラを低減させるために、脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤を難燃性シリコーン樹脂組成物に加えて塗工することが好ましい。前記脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤の使用量は、特に制限されないが、難燃性シリコーン樹脂組成物(固形分)100重量部に対して、例えば、0.01〜200重量部であり、好ましくは0.1〜150重量部である。
【0092】
前記脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤の具体例としては、メチルセロソルブ(2−メトキシエタノール)、エチルセロソルブ(2−エトキシエタノール)、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーエル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含チッ素系溶剤、ジメチルスルフォキシドなどがあげられる。これらを使用する場合、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではグリコールエーテル系溶剤が加水分解したアルコキシシランおよびその縮合体に対する溶解性がよいという点から好ましい。
【0093】
本発明の難燃性シリコーン樹脂シートにおいて、前記無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂(A)中の無機酸化物粒子と前記無機粒子(B)の総含有量は、適宜選択できるが、上限は、例えば90重量%、好ましくは85重量%、さらに好ましくは80重量%であり、下限は、例えば2重量%、好ましくは3重量%、さらに好ましくは4重量%である。この含有量が少なすぎると、シートの機械的強度及び難燃性が低下しやすく、逆に多すぎると、シートが脆くなりやすい。
【0094】
前記難燃性シリコーン樹脂シートの厚みとしては、上限は、例えば5000μm、好ましくは4000μm、より好ましくは3000μm、さらに好ましくは2000μmであり、下限は、例えば5μm、好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
【0095】
本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートは優れた難燃性を有しており、好ましくは不燃性を有している。例えば、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の燃焼試験(一般材;鉄道車両用非金属材料の45°エチルアルコール試験)に準拠した試験において、延焼しにくいか、又は延焼しない。また、好ましくは、表面に炭化も見られず、より好ましくは貫通、及び溶融滴下しない。
【0096】
また、本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートは優れた難燃性を有しており、例えば、社団法人日本鉄道車両機械技術協会のコーンカロリーメーター試験(天井材;ISO 5660−1)に準拠した試験においても、貫通することがない。好ましくは、10分間あたりの総発熱量が30MJ/m
2以下、最大発熱速度が300kW/m
2以下、着火時間が60秒以上である。
【0097】
本発明の難燃性シリコーン樹脂シートは、高い耐熱性、難燃性及び強度に優れているので、鉄道車両、航空機、自動車、船舶、エレベーター、エスカレーターなどの輸送機の内装部材(輸送機用内装部材)、建築材料部材、ディスプレイ部材、家電部材、電子回路部材、表面保護材、表面被覆材等として用いることができる。とりわけ、輸送機用内装部材としての照明カバーとして好適に利用できる。
【0098】
本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートを成形品の表面保護材、表面被覆材等として利用する場合には、例えば、インモールド成形、オーバーレイ法などを用いることができる。インモールド成形では、金型内に本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートを挟み(インサートし)、成形品の原料である熱可塑性樹脂を射出成形すると同時に、前記金型内でプラスチック成形品の表面に前記難燃性シリコーン系樹脂シートを貼り合わせる。また、オーバーレイ法では、成形品の表面に真空圧着により本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートを貼り合わせる。これらの方法により、表面が難燃性シリコーン系樹脂シートで被覆され、高い耐熱性、難燃性、強度が付与された成形品を得ることができる。オーバーレイ法においては、成形品の材質は特に制限は無く、例えば、プラスチック、熱硬化性樹脂硬化物、木材などの何れであってもよい。このようにして得られる、表面が前記難燃性シリコーン系樹脂シートで被覆された成形品は、鉄道車両、航空機、自動車、船舶、エレベーター、エスカレーターなどの輸送機の内装部材(輸送機用内装部材)、建築材料部材、ディスプレイ部材、家電部材、電子回路部材などとして利用できる。
【0099】
本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートには、難燃性を損なわない範囲内で、ハードコート層、防汚層、帯電防止層、光拡散層、反射防止層、紫外線吸収層、遮熱層、断熱層、熱伝導層、耐溶剤層などの機能層を付与することができる。
【0100】
本発明の難燃性シリコーン系樹脂シートは、難燃性を損なわない範囲内で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分は、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0101】
他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、硬化剤、可塑剤、充填剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)などが挙げられる。
【0102】
本発明の照明装置は、上記の難燃性シリコーン系樹脂シートを用いた照明装置であって、照明に用いられる光を発生させる光源と、前記光源を覆うように設置され、前記難燃性シリコーン系樹脂シートを備えた照明カバーとを少なくとも有しており、前記光源からの光が前記難燃性シリコーン系樹脂シートによって透過されて出射されることを特徴とする。
【0103】
この照明装置において、照明カバーの取り付け方、照明カバーの配置等は、特に制限はなく、公知の方法や配置を採用できる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0105】
合成例1
撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた容器に、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)50g、2−プロパノール84gを加えた。濃硝酸を加えて液の酸性度(pH)を2〜4の範囲内に調整した。次いで65℃に昇温したのち、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)58gを2−プロパノール58gに溶解した液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下し、シルセスキオキサン化合物とコロイダルシリカ粒子表面の反応を行った。
次いで、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)42gを2−プロパノール42gに溶解した液を1時間かけて滴下して、前記コロイダルシリカ上のシルセスキオキサン化合物と反応を行った。65℃で1時間加熱撹拌を行った後、室温(25℃)まで冷却して、液状の透明樹脂組成物溶液Aを得た。
【0106】
合成例2
撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた容器に、平均粒子径8−11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)50g、2−プロパノール84gを加えた。濃硝酸を加えて液の酸性度(pH)を2〜4の範囲内に調整した。次いで65℃に昇温したのち、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学社製、メトキシ含有量24%)25gを2−プロパノール25gに溶解した液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下し、シルセスキオキサン化合物とコロイダルシリカ粒子表面の反応を行った。
次いで、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシラン及び2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学社製、メトキシ含有量12%)75gを2−プロパノール75gに溶解した液を1時間かけて滴下して、前記コロイダルシリカ上のシルセスキオキサン化合物と反応を行った。65℃で1時間加熱撹拌を行った後、室温(25℃)まで冷却して、液状の透明樹脂組成物溶液Bを得た。
【0107】
実施例1
合成例1で得られた透明樹脂組成物溶液Aに、該透明樹脂組成物溶液A中の固形分100重量部に対して、ガラスフリット(商品名「VY0053L」日本フリット社製)200重量部を添加し、撹拌混合して、シリコーン樹脂組成物Aを得た。
【0108】
実施例2
実施例1で得られたシリコーン樹脂組成物Aを固形分濃度76重量%になるまで濃縮した後、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名「MRF♯38」三菱樹脂社製)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが380μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで90℃で30分間、120℃で10分間加熱乾燥して、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がすことにより、難燃性シリコーン系樹脂シートを得た。
【0109】
実施例3
合成例2で得られた透明樹脂組成物溶液Bに、該透明樹脂組成物溶液B中の固形分100重量部に対して、ガラスフリット(商品名「VY0053M」日本フリット社製)200重量部を添加し、撹拌混合して、シリコーン樹脂組成物Bを得た。
【0110】
実施例4
実施例3で得られたシリコーン樹脂組成物Bを固形分濃度76重量%になるまで濃縮した後、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名「MRF♯38」三菱樹脂社製)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが380μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで90℃で30分間、120℃で10分間加熱乾燥して、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がすことにより、難燃性シリコーン系樹脂シートを得た。
【0111】
比較例1
合成例1で得られた透明樹脂組成物溶液Aを固形分濃度76重量%になるまで濃縮した後、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名「MRF♯38」三菱樹脂社製)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが380μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで90℃で30分間、120℃で10分間加熱乾燥して、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がすことにより、シリコーン系樹脂シートを得た。
【0112】
<評価>
実施例及び比較例で得られた難燃性シリコーン系樹脂シート等について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
(燃焼試験)
図2に示す燃焼試験装置を用い、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の燃焼試験(一般材;鉄道車両用非金属材料の45°エチルアルコール試験)に準じて燃焼試験を行った。
図2において、11は供試体(182mm×257mm)、12はアルコール容器(鉄製17.5φ×7.1 0.8t)、13は容器受台(コルク等熱伝導率の低いもの)を示す。供試体下面中心から容器底面までの距離は25.4mm(1インチ)である。
上記で作製された難燃性シリコーン系樹脂シート(比較例では、シリコーン系樹脂シート)を、
図2のように、45°傾斜に保持し、燃料容器(アルコール容器)12の底の中心が、供試体の下面中心の垂直下方25.4mmのところに来るように、燃料容器12をコルクの台(容器受台)13に乗せ、燃料容器12にエチルアルコール0.5ccを入れて、着火し、燃料が燃え尽きるまで約2分間放置した。難燃性シリコーン系樹脂シート(比較例では、シリコーン系樹脂シート)の着火、炭化、残炎、及び貫通、溶融滴下の有無を目視観察し、下記の基準で評価した。
<着火・炭化・残炎>
◎:エタノール燃焼中に着火及び炭化無し
○:エタノール燃焼中に着火及び炭化するが、延焼せずエタノール燃焼中に消える
△:エタノール燃焼1分間経過後に着火し、延焼してエタノール燃焼後も燃えている、又は供試体に穴が開く
×:エタノール燃焼1分間以内に着火し、延焼してエタノール燃焼後も燃えている、又は供試体に穴が開く
<貫通・溶融滴下>
○:貫通及び溶融滴下無し
△:エタノール燃焼1分間経過後に貫通もしくは溶融滴下あり
×:エタノール燃焼1分間以内に貫通もしくは溶融滴下あり
【0114】
(コーンカロリーメーター試験)
一辺が100mmの平面正方形状の試験片を切り出し、
図3に示すとおり ISO 5660−1:2002に準じた方法により、コーンカロリーメーターを用い50kW/m
2の熱線を10分間照射して試験片を燃焼させた。
図3中、14は排気フード、15はコーン型ヒータ、16は供試材、17は供試材ホルダーである。燃焼判定は、試験時間中に計測された総発熱量(MJ/m
2)及び最大発熱速度(kW/m
2)並びに着火時間(秒)で行う。着火時間(秒)は、試験片から炎が確認されてから10秒以上炎が存在した場合を着火とみなし、試験開始から最初に着火が確認されるまでの時間とした。また、試験片の貫通の有無について目視観察した。
【0115】
判定基準
(1)10分間の総発熱量
○:総発熱量が30MJ/m
2以下
△:総発熱量が30MJ/m
2超、45MJ/m
2未満
×:総発熱量が45MJ/m
2以上
(2)10分間の最大発熱速度
○:最大発熱速度が300kW/m
2以下
△:最大発熱速度が300kW/m
2超、600kW/m
2未満
×:最大発熱速度が600kW/m
2以上
(3)着火時間
○:着火時間が60秒以上
×:着火時間が60秒未満
(4)貫通
○:貫通無し
×:貫通あり
【0116】
【表1】