特許第6122362号(P6122362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122362
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20170417BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20170417BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   H01Q7/06
   H01Q1/50
   H01Q1/38
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-171951(P2013-171951)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-41888(P2015-41888A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】折原 勝久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−152862(JP,A)
【文献】 特開2010−252402(JP,A)
【文献】 特開2011−229133(JP,A)
【文献】 特開2012−147407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/06
H01Q 1/38
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となるアンテナ装置において、
基板と、
上記基板の一方の面に周回するように形成されたアンテナコイルと、
上記アンテナコイルの中心部分に差し込まれて上記発信器からの磁界を引き込む磁性シートと、
上記基板の他方の面に、上記磁性シートが差し込まれた位置を回避する位置に形成され、外部回路に接続され、1つ以上の回路要素を含む回路部とを備え、
上記アンテナコイルの巻き線の少なくとも一部が、上記回路部を取り囲むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
上記回路部のうち上記回路要素の少なくとも一部が、上記アンテナコイルに取り囲まれることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記回路部は、外部の駆動回路とのインピーダンス整合をとる整合回路であることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となる通信装置において、
基板と、該基板の一方の面に周回するように形成されたアンテナコイルと、該アンテナコイルの中心部分に差し込まれて上記発信器からの磁界を引き込む磁性シートと、該基板の他方の面に、該磁性シートが差し込まれた位置を回避する位置に形成され、外部回路に接続され、1つ以上の回路要素を含む回路部とを有するアンテナ装置を備え、
上記アンテナコイルの巻き線の少なくとも一部が、上記回路部を取り囲むことを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となるアンテナ装置及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの電子機器において、近距離非接触通信の機能を搭載するため、RFID(Radio Frequency Identification)用のアンテナモジュールが用いられている。
【0003】
このアンテナモジュールは、リーダライタなどの発信器に搭載されたアンテナコイルと誘導結合を利用して通信を行っている。すなわち、このアンテナモジュールは、リーダライタからの磁界をアンテナコイルが受けて、電力に変換することによって、通信処理部として機能するICを駆動する。
【0004】
アンテナモジュールは、確実に通信を行うため、リーダライタからのある値以上の磁束をアンテナコイルで受ける必要がある。そのために、従来例に係るアンテナモジュールでは、携帯電話機の筐体にループコイルを設け、そのループコイルでリーダライタからの磁束を受けている。
【0005】
ところが、携帯電話機などの電子機器に組み込まれたアンテナモジュールは、機器内部の基板やバッテリパックなどの金属が、リーダライタからの磁界を受けて発生する渦電流のために、リーダライタからの磁束が跳ね返されてしまうため、ループコイルに届く磁束が少なくなる。ループコイルに到達する磁束が少なくなるため、アンテナモジュールは、必要な磁束を集めるためにある程度の開口の大きさを有するループコイルが必要となり、さらに、磁性シートを用いることによって開口部に集める磁束を増やすことが必要となる。
【0006】
上述したように、携帯電話機などの電子機器の基板に流れる渦電流によってリーダライタからの磁束が跳ね返されるが、電子機器の筐体表面には、基板の面方向に向いている磁界の成分があり、この成分を受けることによってアンテナとして機能するというものが特許文献1において提案されている。具体的に、特許文献1では、コイルの占有面積を少なくするため、フェライトコアにコイルを巻いたアンテナ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−35464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようなアンテナモジュールは、送受信を行う通信処理部と電気的に接続されてリーダライタや非接触ICカード等の電子機器と通信を行う。送受信される信号は、高周波を変調するため、送受信効率や結合係数等の通信特性を確保するためには、通信処理部の入出力インピーダンスと、アンテナモジュールの入出力インピーダンスとを整合させる必要がある。また、アンテナモジュールを搭載する装置の小型化のために、通信処理部とインピーダンス整合を行う整合回路をアンテナモジュールに搭載する場合がある。上述したように、磁性シートをアンテナコイルに付加することによって、アンテナの通信特性を向上させることができるが、磁性シートを配設した領域には、回路を配置することができなくなるため、アンテナモジュールに整合回路等を搭載するためにはアンテナコイルが形成されたアンテナ基板の面積を増加させる必要がある。また、回路配置のためのスペースをアンテナ基板上に設けると、アンテナの実効的な開口面積が減少してしまい、通信特性が低下してしまうとの問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、通信特性を維持しつつ、電子機器に組み込んだ際に電子機器の筐体の小型化、薄型化をはかることが可能なアンテナ装置及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となるアンテナ装置であり、基板と、基板の一方の面に周回するように形成されたアンテナコイルと、アンテナコイルの中心部分に差し込まれて発信器からの磁界を引き込む磁性シートと、基板の他方の面に、磁性シートが差し込まれた位置を回避する位置に形成され、外部回路に接続され、1つ以上の回路要素を含む回路部とを備える。そして、アンテナコイルの巻き線の少なくとも一部が、回路部を取り囲むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となる通信装置であり、基板と、基板の一方の面に、周回するように形成されたアンテナコイルと、アンテナコイルの中心部分に差し込まれて発信器からの磁界を引き込む磁性シートと、基板の他方の面に、磁性シートが差し込まれた位置を回避する位置に形成され、外部回路に接続され、1つ以上の回路要素を含む回路部とを有するアンテナ装置を備える。そして、アンテナ装置は、アンテナコイルの巻き線の少なくとも一部が、回路部を取り囲むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、回路部が基板の他方の面に形成され、ループアンテナの巻線の少なくとも一部が回路部の回路要素の少なくとも一部を取り囲むので、ループアンテナの開口面積を減少させることなく、回路部を搭載することができ、アンテナ装置及び通信装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用されたアンテナ装置及び通信装置が組み込まれた無線通信システムの構成について説明するための図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の構成例を示す図である。(A)は、平面図であり、(B)は、底面図であり、(C)は、(A)図のAA’線からの断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の構成の変形例を示す図である。(A)は、平面図であり、(B)は、底面図である。
図4】本発明が適用されたアンテナ装置の一例の回路図である。
図5】(A)は、アンテナ装置の実施例の形状寸法を示す平面図であり、(B)は、比較例として従来のアンテナ装置の形状寸法を示す平面図であり、(C)は、参考例のアンテナ装置の形状寸法を示す平面図である。
図6】(A)は、アンテナ装置の実施例、比較例及び参考例それぞれとリーダライタとの通信特性を測定するための測定系を示す斜視図である。(B)は、オフセット距離aの定義を説明するための図である。
図7】アンテナ装置とリーダライタとの通信特性として、それぞれのアンテナコイルの結合係数を測定し、オフセット距離aに対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0015】
本発明が適用された通信装置は、電子機器に組み込まれ、発信器から発信される磁界を受けて通信可能となる装置であって、たとえば、図1に示すようなRFID(Radio Frequency Identification)用の無線通信システム100に組み込まれて使用される。
【0016】
無線通信システム100は、通信装置1と、通信装置1に非接触でアクセスするリーダライタ120とを備える。ここで、通信装置1とリーダライタ120とは、3次元直交座標系xyzのxy平面において互いに対向するように配置されているものとする。
【0017】
リーダライタ120は、xy平面において互いに対向する通信装置1に対して、z軸の正方向に磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、通信装置1に向けて磁界を発信するアンテナ121と、アンテナ121を介して誘導結合される通信装置1と通信を行う制御基板122とを備える。
【0018】
すなわち、リーダライタ120は、アンテナ121と電気的に接続された制御基板122を有している。この制御基板122には、1つ又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路が実装されている。この制御回路は、通信装置1から受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、制御回路は、通信装置1に対してデータを送信する場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(たとえば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ121を駆動する。また、制御回路は、通信装置1からデータを読み出す場合、アンテナ121で受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。なお、制御回路では、一般的なリーダライタで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、たとえば、マンチェスタ符号化方式やASK(振幅シフトキーイング、Amplitude Shift Keying)変調方式が用いられている。
【0019】
通信装置1は、たとえばリーダライタ120とxy平面において対向するように配置される携帯電話機130の筐体の内部に組み込まれ、誘導結合されたリーダライタ120との間で通信可能となるアンテナコイル11aが実装されたアンテナ基板11を有するアンテナモジュール2を備える。
【0020】
アンテナモジュール2のアンテナ基板11の一面には、たとえばポリイミド等の可撓性のある基板にCuやAlの配線を印刷技術を用いてパターニング処理等することによってアンテナコイル11aが形成される。アンテナ基板11の他面には、アンテナコイル11aとアンテナモジュール2の外部の通信処理部30とのインピーダンスを整合させて電気的に接続する整合回路28等を搭載する回路搭載共有領域20が形成されている。アンテナコイル11aと回路搭載共有領域20に実装された整合回路28等とは、ヴィアホール等の周知の技術を用いて電気的に接続される。そして、アンテナモジュール2は、携帯電話機130の本体側に実装された通信処理部30にコネクタ等を介して電気的に接続される。
【0021】
アンテナコイル11aは、リーダライタ120から発信される磁界を受けると、リーダライタ120のアンテナ121と誘導結合することによって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、受信信号を、整合回路28等を介して携帯電話機130本体側に実装された通信処理部30に供給する。通信処理部30は、アンテナコイル11aに流れる電流により駆動され、リーダライタ120との間で通信を行う。より具体的には、通信処理部30は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、通信処理部30の指示に基づいて内部メモリに書き込む。また、通信処理部30は、リーダライタ120に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル11aを介して変調された電波をリーダライタ120に送信する。
【0022】
アンテナモジュール2は、図2(A)に示すように、アンテナ基板11と、アンテナ基板11の一方の面に形成されたアンテナコイル11aとを備える。アンテナ基板11は、好ましくはフレキシブルプリント基板であり、長辺と短辺とを有する長方形の形状を有する。アンテナコイル11aは、アンテナ基板11上を周回するように形成されたループアンテナであり、好ましくは、フレキシブルプリント基板上に形成された配線パターンにより形成される。また、アンテナコイル11aは、アンテナ基板11の外縁から巻回し始めて、所定のターン数だけアンテナ基板11の内側に向かって巻回される。アンテナコイル11aのほぼ中央部には、アンテナ基板11の長辺に沿った方向にスリット14が開口されている。そして、リーダライタ120からの磁束を集めてアンテナコイル11aに導く磁性シート13が、スリット14に挿入される。なお、後述するように、アンテナ基板11の他方の面に、アンテナコイル11aと、通信処理部30とをインピーダンス整合をとりながら接続させる整合回路28等が搭載される回路搭載共有領域20が形成されるので、スリット14の形成位置は、回路搭載共有領域20に隣接するアンテナコイル占有領域10内に形成される。
【0023】
アンテナモジュール2は図2(B)に示すように、アンテナ基板11の他方の面に、アンテナコイル11aと、携帯電話機130の本体側に設置される送受信のための通信処理部30とインピーダンス整合をとって電気的な接続をする整合回路28等を搭載することができる回路搭載共有領域20を有する。回路搭載共有領域20は、好ましくはアンテナ基板11の一方の短辺側に配置される。
【0024】
回路搭載共有領域20には、アンテナコイル11aのインダクタンスと、共振コンデンサとにより共振回路を構成する場合のQ(Quality factor)値を設定するための制限抵抗21a,21bと、通信処理部30とのインピーダンス整合をとるための整合回路28を構成するマッチングコンデンサ22a,22b,23a,23bと、通信処理部30からの方形波信号をフィルタリングするローパスフィルタ29を構成するフィルタコンデンサ24a,24b及びフィルタコイル25a,25bとを搭載している。さらに、回路搭載共有領域20は、ローパスフィルタ29、整合回路28等を介して通信処理部30に接続するための端子26a,26bとグランド端子27とを有する。
【0025】
図2(C)に示すように、磁性シート13が挿入されているアンテナ基板11のアンテナコイル占有領域10では、アンテナ基板11の一方の面及び他方の面のうちいずれか一方が磁性シート13によって覆われているため、整合回路28等を配置するスペースを確保することができない。そこで、アンテナ基板11の他方の面に回路搭載共有領域20を形成することによって、整合回路28等の搭載スペースを確保することができる。ここで、アンテナ基板11の一方の面には、アンテナ基板の外周に沿ってアンテナコイル11aを周回させることができるので、アンテナコイル11aの開口面積も確保することができるので、アンテナモジュール2の通信特性を維持することが可能になる。
【0026】
アンテナコイル11aは、アンテナ基板11の外縁から巻き始めて、すべてのターン数についてアンテナ基板11の外縁に沿って巻回する構成に限らない。図3(A)及び図3(B)に示すように、アンテナコイル11aの一部のみを回路搭載共有領域20の側の外縁を周回させるようにしてもよい。すなわち、アンテナモジュール2aは、図2の場合と同様に、アンテナ基板11と、アンテナ基板11の一方の面に形成されたアンテナコイル11aとを備え、アンテナ基板11の他方の面に、アンテナコイル11aと、通信処理部30とをインピーダンス整合をとりながら電気的に接続する整合回路28等が搭載される回路搭載共有領域20が形成され、リーダライタ120のアンテナ121からの磁界を集めてアンテナコイル11aに導く磁性シート13が、スリット14に挿入される。ここで、図2の場合には、アンテナコイル11aは、アンテナ基板11の外縁部に沿ってアンテナ基板11上に形成されるのに対して、この変形例では、アンテナコイル11aのもっとも外側の巻線のみがアンテナ基板11の外縁部に沿って形成され、2ターン目の巻線は、アンテナ基板11のうち回路搭載共有領域20に隣接するアンテナコイル占有領域10内で巻回される。なお、アンテナコイル11aのもっとも外側の巻線、すなわち1ターン目の巻線についてのみアンテナコイル占有領域10から回路搭載共有領域20にわたって形成される場合に限らず、2ターン目や、3ターン目等まで巻回するようにしてもよいのはいうまでもない。
【0027】
本発明が適用されたアンテナモジュール2,2aは、図4に一例として示すように、アンテナ基板11上に、アンテナコイル11aと、アンテナコイル11aによって構成される共振回路のQを調整するダンピング抵抗(R1,R2)21a,21bと、アンテナコイル11aとアンテナコイル11aに接続される回路とのインピーダンス整合をはかる整合回路28と、通信処理部30によってアンテナコイル11aを駆動する駆動信号のスプリアス抑制のためのローパスフィルタ29とを備え、これらは、縦続接続される。アンテナモジュール2,2aと送受信信号のやりとりを行う通信処理部30が、アンテナモジュール2,2aの接続端子(TX1,TX2)26a,26b及びグランド端子(G)27を介して接続される。
【0028】
なお、上述の回路構成は、平衡入出力を有する通信処理部30と接続する差動回路構成の場合の一例であって、非平衡入出力に対応するシングルエンド回路構成にしたり、ローパスフィルタの回路構成を変更したりできるのはいうまでもない。また、回路搭載共有領域20に搭載する回路の機能ブロックは、上述のすべての機能ブロックを搭載する場合に限らず、整合回路28のみを搭載する等選択できるのはもちろんである。
【0029】
整合回路28等をアンテナモジュール2,2a側に搭載することによって、アンテナモジュールとして特定無線設備の技術基準適合証明を受けることができ、このアンテナモジュールを搭載した電子機器の認証手続を簡単化することができるとの利点もある。
【0030】
[アンテナモジュールの通信特性の実験]
本発明が適用されたアンテナモジュールと従来構造のアンテナモジュールとの通信特性を比較する実験を行った。
【0031】
図5(A)に示すようにアンテナコイル占有領域10に隣接して回路搭載共有領域20とを設けた。ポリイミド基板の一面に4ターンのアンテナコイル11aをCu箔により形成した。磁性シートを挿入するスリット14は、アンテナコイル占有領域10のみに形成し、Ni−Znフェライト製の磁性シート13を挿入した。
【0032】
<実施例>
実施例1として、アンテナコイル11aの1ターン目を図5(A)のポリイミド基板の最外周に沿って形成し、2ターン目〜4ターン目をアンテナコイル占有領域10内に形成した。
【0033】
実施例2として、アンテナコイル11aの1ターン目から4ターン目までのすべてを図5(A)のポリイミド基板の最外周から外周に沿って形成した。
【0034】
<比較例>
比較例として、図5(B)に示すように、ポリイミド基板の最外周から1ターン目の巻回を開始し、4ターンのアンテナコイル11aを形成した。ポリイミド基板のサイズは、図5(A)の場合のアンテナモジュールにおけるアンテナコイル占有領域10とほぼ同一となるようにした。また、図5(A)アンテナモジュールに用いたものと同一のNi−Znフェライト製の磁性シート13を挿入した。スリット14の寸法も、図5(A)のものと同一である。
【0035】
<参考例>
参考例として、図5(C)に示すように、ポリイミド基板の最外周から1ターン目の巻回を開始し、4ターンのアンテナコイル11aを形成した。ポリイミド基板のサイズは、図5(A)のものと同一である。ポリイミド基板の長辺の幅にほぼ等しい幅にスリット14aを形成し、スリット14aには、Ni−Znフェライト製の磁性シート13aを挿入した。したがって、磁性シート13aの幅は、図5(A)及び図5(B)のものよりも広い。
【0036】
<測定方法>
アンテナモジュールの通信特性は、図6(A)に示す測定系を構成して測定した。具体的な評価条件としては、以下のようにした。すなわち、リーダライタ120のアンテナ121は、リーダライタ120の中心をxyz座標の原点(O)121aとするx×y=70mm×40mmの4ターンの方形コイルとした。通信特性を測定するアンテナモジュールは、開口面をリーダライタ120のアンテナ121に対向させ、原点(O)121aからz方向に20mm離間して配置した。ここで、図6(B)に示すように、アンテナモジュールとリーダライタ120との相対的位置をオフセット距離aとして定義した。オフセット距離aは、原点(O)121aからアンテナモジュールの長辺側の端部がx方向に突出する距離をいうものとする。オフセット距離aを変化させて、アンテナモジュールのアンテナコイルと、リーダライタ120のアンテナ121との結合係数kを測定した。
【0037】
<結果>
実施例1、実施例2、比較例及び参考例の構成のアンテナモジュールのそれぞれについて、オフセット距離aに対する結合係数kの変化をプロットしたグラフを図7に示す。
【0038】
実施例1及び実施例2のアンテナモジュールともに、比較例のアンテナモジュールに対して、高い結合係数を実現することができ、良好な通信特性であることが示された。実施例1では、アンテナ基板の最外周を周回するターン数が1ターンであり、残りのターン数がアンテナコイル占有領域内で形成されているため、4ターンすべてが最外周から巻回される実施例2に比べて結合係数が低いものの、参考例と比較してもそん色のないレベルであった。
【符号の説明】
【0039】
1 通信装置、2,2a アンテナモジュール、10 アンテナコイル占有領域、11 アンテナ基板、11a アンテナコイル、13 磁性シート、14 スリット、20 回路搭載共有領域、28 整合回路、29 ローパスフィルタ、30 通信処理部、120 リーダライタ、121 アンテナ、122 制御基板、130 携帯電話機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7