(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンおよび2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
前記パーフルオロポリエーテル化合物が有するウレタン(メタ)アクリレートは、2官能以上、5官能以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔剥離シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る剥離シート1は、剥離基材11と、剥離基材11の一方の面に形成された剥離剤層12とを備えて構成される。
【0019】
剥離基材11としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような剥離基材11としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、無塵紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;またはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、酢酸セルロース系フィルムなどのプラスチックフィルム;不織布;金属箔;あるいはこれらを含む積層シートなどが挙げられる。
【0020】
上記のプラスチックフィルムからなる剥離基材11においては、その表面に設けられる剥離剤層12との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。
【0021】
剥離基材11の厚さは、通常10〜300μmであればよく、好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜125μmである。
【0022】
本実施形態における剥離剤層12は、以下の剥離剤組成物を、紫外線照射により硬化させることによって形成されるものである。本実施形態における剥離剤組成物は、官能基としてウレタン(メタ)アクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物および分子内開裂型の光重合開始剤を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0023】
すなわち、本実施形態における剥離剤層12は、官能基としてウレタン(メタ)アクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物が、紫外線照射により重合して得られる構造からなる。このパーフルオロポリエーテル化合物は、分子内開裂型の光重合開始剤の存在によって良好に重合反応し、剥離剤層12として優れた構造を形成する。かかる剥離剤層12は、剥離力が低く、すなわち軽剥離性に優れたものとなる。また、この剥離剤層12は、耐熱性および耐溶剤性に優れ、したがって粘着剤の転写塗工も可能となる。
【0024】
なお、光重合開始剤として、分子内開裂型以外の光重合開始剤、例えば水素引き抜き型の光重合開始剤を使用した場合には、上記パーフルオロポリエーテル化合物は十分に重合せず、剥離剤組成物は良好に硬化しない。
【0025】
上記パーフルオロポリエーテル化合物は、その分子の少なくとも両末端にウレタン(メタ)アクリレートを官能基として有することが好ましく、特にその分子の両末端のみにウレタン(メタ)アクリレートを有することが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。上記パーフルオロポリエーテル化合物が有するウレタン(メタ)アクリレートは、2官能以上、5官能以下であることが好ましく、特に2官能以上、4官能以下であることが好ましく、さらには2官能であることが好ましい。上記パーフルオロポリエーテル化合物を硬化してなる構造によれば、軽剥離性および粘着剤の転写塗工性がより優れたものとなる。
【0026】
上記のようなパーフルオロポリエーテル化合物の市販品としては、例えば、ソルベイレクシス社のFLUOROLINK(登録商標)MD500、MD700、5101X、AD1700や、サートマー社のCN4000等が挙げられる。
【0027】
分子内開裂型の光重合開始剤は、その分子量が200〜1000であることが好ましく、特に220〜700であることが好ましく、さらには240〜400であることが好ましい。光重合開始剤の分子量が200以上であることにより、紫外線吸収性が高く、したがって上記パーフルオロポリエーテル化合物を重合させる機能に優れる。また、光重合開始剤の分子量が1000以下であることにより、軽剥離性に優れた剥離剤層12とすることができる。
【0028】
分子内開裂型の光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル]−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン等が挙げられる。これらの中でも、硬化性に優れる2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンおよび2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが特に好ましい。なお、上記光重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
上記パーフルオロポリエーテル化合物100質量部に対する上記光重合開始剤の配合割合は、0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部であり、特に好ましくは0.2〜3質量部である。光重合開始剤の配合割合が0.05質量部未満であると、上記パーフルオロポリエーテル化合物の重合(上記剥離剤組成物の硬化)が十分になされない。一方、光重合開始剤の配合割合が10質量部を超えると、得られる剥離剤層12の剥離力が大きくなってしまい、軽剥離性を達成することができない。
【0030】
上記剥離剤組成物は、上記パーフルオロポリエーテル化合物および上記光重合開始剤の他、酸化防止剤等を含有してもよい。ただし、官能基を有しないパーフルオロポリエーテル化合物(例えば、特許文献3に記載されたような不活性ポリフルオロポリエーテル油)は、粘着剤を転写塗工したときに剥離性に悪影響を及ぼすことがあるため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0031】
剥離剤層12の厚さは、10nm〜1μmであることが好ましく、特に20〜500nmであることが好ましい。剥離剤層12の厚さが10nm以上であることにより、所望の軽剥離性が得られる。一方、剥離剤層12の厚さが1μm以下であることにより、巻き取った剥離シート1がブロッキングを起こし難くなる。
【0032】
剥離剤層12は、剥離基材11の一方の面に、剥離剤組成物および所望により希釈剤を含有する塗工液を塗工した後、乾燥し、紫外線照射によって硬化させることにより形成することができる。塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0033】
上記希釈剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、フッ素系溶媒や、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物等が用いられる。
【0034】
紫外線の照射に使用する紫外線照射装置としては、特に限定されないが、例えば、無電極ランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV−LEDランプ、ブラックライト等が挙げられる。
【0035】
紫外線の照度は、1〜100mW/cm
2であることが好ましく、特に5〜80mW/cm
2であることが好ましく、さらには10〜50mW/cm
2であることが好ましい。また、紫外線の光量は、10〜100mJ/cm
2であることが好ましく、特に70〜600mJ/cm
2であることが好ましく、さらには100〜500mJ/cm
2であることが好ましい。紫外線の照度および光量が上記の範囲内にあることで、上記剥離剤組成物が良好に硬化し、得られる剥離剤層12が軽剥離性に優れたものになるとともに、剥離剤層12の剥離基材11に対する密着性も高くなる。
【0036】
このようにして形成される剥離剤層12は、軽剥離性に優れる。具体的には、本実施形態に係る剥離シート1は、1000mN/50mm以下、好ましくは500mN/50mm以下、特に好ましくは30〜400mN/50mmの剥離力を達成することができる。なお、ここでいう剥離力の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。剥離力が上記の範囲にあることで、粘着シートから剥離シート1を剥離するときの剥離不良を低減させることができる。
【0037】
粘着シートの製造工程では、剥離シートの剥離剤層上に粘着剤液を塗工し、加熱乾燥した後に、剥離シート付き粘着剤層と基材とを貼り合わせる転写塗工法を採ることが多い。転写塗工の場合、剥離剤層は粘着剤中の溶剤や加熱にさらされるため、シリコーン系化合物以外による従来の剥離剤層では、剥離力が上昇してしまい、目的の剥離性能が得られなかった。一方、本実施形態における剥離剤層12は、耐熱性および耐溶剤性にも優れる。したがって、剥離シート1の剥離剤層12に対して、加熱状態にある粘着剤の塗工液を転写塗工しても、得られる粘着剤層と剥離剤層12との間の剥離力が高くなってしまうことがなく、上記の優れた軽剥離性が維持される。すなわち、本実施形態に係る剥離シート1は、粘着剤の転写塗工が可能なものである。
【0038】
ここで、本実施形態における剥離剤層12は、実質的にシリコーン系化合物を含まない。そして、本実施形態における剥離剤層12は、実質的にシリコーン系化合物を含まなくても、前述したように軽剥離性に優れる。かかる剥離剤層12を有する剥離シート1によれば、剥離剤層12から当該剥離剤層12に接する粘着剤層にシリコーン系化合物が移行するおそれがなく、したがって、シリコーン系化合物によって精密電子機器等に悪影響を与えるおそれがない。
【0039】
なお、「実質的にシリコーン系化合物を含まない」とは、シリコーン系化合物の含有量が、当該シリコーン系化合物によって精密電子機器に悪影響を与えない量であることを意味する。具体的には、剥離剤層12中におけるシリコーン系化合物の量は、250μg/m
2以下であることが好ましく、特に50μg/m
2以下であることが好ましい。
【0040】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、前述した剥離シートと、その剥離シートの剥離剤層と接するように設けられた粘着剤層とを備えたものであり、片面粘着シートであってもよいし、両面粘着シートであってもよい。片面粘着シートの場合、剥離シートと、その剥離シートの剥離剤層と接するように設けられた粘着剤層と、粘着剤層における剥離シートとは反対側に積層された基材とを備えて構成される。また、両面粘着シートの場合、2つの剥離シートと、それら剥離シートの間にて、各剥離シートの剥離剤層と接するように設けられた粘着剤層とを備えて構成される。両面粘着シートの場合、粘着剤層の厚さ方向の中央部近傍には、支持基材が設けられていてもよい。この支持基材は、その両面に位置する2層の粘着剤層を支持し、強度を付与する機能を有する。
【0041】
(1)剥離シート
片面粘着シートの場合、剥離シートとしては、前述した本実施形態に係る剥離シートであって、所望の剥離力を有するものを使用すればよい。
【0042】
両面粘着シートの場合、剥離シートとしては、前述した本実施形態に係る剥離シートを2つの剥離シートの両方に使用してもよく、片方のみに使用してもよい。いずれの場合も、剥離力に差がある2つの剥離シートを使用することが好ましい。具体的には、一方の剥離シートと他方の剥離シートとは、2倍以上の剥離力差を有していることが好ましく3倍以上の剥離力差を有していることが特に好ましい。上記剥離力差を有することにより、最初に剥離する方の剥離シートを、粘着剤層の表面を傷付けることなく容易に除去することができる。
【0043】
上記のような剥離力差は、剥離シートの剥離剤層を構成する剥離剤組成物の組成等を調整したり、剥離剤層の厚さを変更することにより、設定することができる。
【0044】
(2)粘着剤層
粘着剤層を構成する粘着剤は、粘着シートの用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれであってもよい。また、粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。
【0045】
上記の中でも、架橋剤と、架橋剤と反応し得る官能基である反応性官能基を有する重合体(本明細書において「架橋性重合体」ともいう。)とが反応してなる架橋構造を含むアクリル系粘着剤(以下「アクリル系粘着剤A」という。)を使用することが好ましい。
【0046】
(2−1)架橋性重合体
架橋性重合体の構成単位は、特に限定されない。(メタ)アクリロイル基を有する化合物およびその誘導体(エステル、アクリロニトリルなど)の一種または二種以上の化合物であるアクリル系化合物に基づく構成単位のみから構成されていてもよいし、アクリル系化合物に基づく構成単位およびアクリル系化合物以外の化合物に基づく構成単位を含んでいてもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。また、上記のアクリル系化合物以外の化合物は、一種類の化合物から構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。
【0047】
上記のアクリル系化合物の好ましい一例として、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルについて具体例を示せば、反応性官能基を有さない化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の鎖状骨格を有する(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。また、反応性官能基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
アクリル系化合物以外の化合物に基づく構成単位を与えるモノマー(以下、「その他の重合性化合物」ともいう。)として、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、スチレン等のエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物、N−ビニルモルフォリン、N−アリルモルフォリン、N−(メタ)アクリロイルモルフォリン等のエチレン性不飽和基含有モルフォリン系化合物などが例示される。
【0049】
上記架橋性重合体中における反応性官能基に基づく構成単位のモノマー質量換算含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、特に0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0050】
(2−2)架橋剤
アクリル系粘着剤Aが含有する架橋剤は、好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤またはキレート系架橋剤が使用できる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素化トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性TDI等が用いられる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が用いられる。アジリジン系架橋剤としては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボキシアミノ)ジフェニルメタン、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕フォスフインオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフォスファトリアジン等が用いられる。キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウムキレート、チタンキレート等が用いられる。
【0051】
架橋剤の使用量は、粘着剤中の固形分100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部である。架橋剤は、1種単独の使用だけでなく、必要に応じて2種類以上併用してもよい。
【0052】
アクリル系粘着剤Aからなる粘着剤層は、そのゲル分率が10〜70%であることが好ましく、20〜60%であることが特に好ましい。アクリル系粘着剤A中における、架橋構造を形成する反応が進行する前の状態での架橋剤の含有量を、架橋性重合体100質量部に対して通常0.1〜10質量部とすることにより、粘着剤層のゲル分率を上記の範囲とすることが容易となる。
【0053】
(2−3)その他の成分
アクリル系粘着剤Aは、前述した成分以外にも、各種の成分を含有することができる。例えば、架橋促進剤;染料、顔料等の着色材料;アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;タルク、二酸化チタン、シリカ、でんぷんなどのフィラー成分;可塑剤;光安定剤;分散剤;レベリング剤が例示される。ただし、これらの成分はアウトガスを発生させ難いものであることが好ましい。
【0054】
粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体(支持基材は含まない)として、通常1〜100μmであることが好ましく、特に3〜30μmであることが好ましく、さらには5〜25μmであることが好ましい。
【0055】
(3)基材
片面粘着シートで使用される基材としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、金属を蒸着させた樹脂フィルム、それらの積層体等が挙げられる。
【0056】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、アクリルウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂、各種熱可塑性エラストマーなどの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、またはそれらの積層フィルム、合成紙等を使用することができる。
【0057】
樹脂フィルムは、透明であってもよいし、半透明または不透明であってもよい。また、樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよく、工程材料を用いてキャスティング法等で形成したものであってもよい。さらに、樹脂フィルムは、無機フィラー、有機フィラー、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んだものであってもよい。
【0058】
上記樹脂フィルムの片面または両面には、酸化法や凹凸化法などによる表面処理を施すことができる。かかる表面処理により、樹脂フィルムに積層される粘着剤層の接着性が向上する。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、樹脂フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。また、プライマー層を設けるプライマー処理(具体例としてシランカップリング処理が挙げられる。)を施すこともできる。
【0059】
基材の厚さは、特に限定されるものではないが、通常10〜300μmであり、好ましくは20〜150μmである。
【0060】
なお、片面粘着シート全体の厚さは、400μm程度以下とすることが好ましく、180μm以下とすることがより好ましい。一方、取り扱い性を確保する観点から、片面粘着シート全体の厚さは15μm以上とすることが好ましく、25μm以上とすることがより好ましい。
【0061】
(4)支持基材
両面粘着シートにおける粘着剤層を支持する支持基材を構成する材料は、粘着剤層を構成する材料よりも引張強度が高いといった、支持基材として有するべき基本機能を有している限り、特に限定されない。ただし、精密電子機器等に使用する場合には、有機ガスを発生し難いものであることが好ましい。
【0062】
支持基材を構成する材料の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの樹脂フィルムにアルミニウムなどの金属蒸着を施したものを用いてもよい。あるいは、合成紙、含浸紙などからなる紙類、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔なども、支持基材を構成する材料の具体例として挙げることができる。
【0063】
支持基材として樹脂フィルムを用いる場合には、樹脂フィルムに積層される粘着剤層との接着性を向上させるために、前述した片面粘着シートの基材としての樹脂フィルムと同様に、酸化法、凹凸化法等の表面処理や、プライマー処理を施すことができる。
【0064】
支持基材の厚さは特に制限されない。過度に薄い場合には支持基材の取り扱いが困難となったり、支持基材を設けたことの利益(両面粘着シートが破断しにくくなることなどが例示される。)を享受することが困難となったりすることが懸念される。一方、支持基材が過度に厚い場合には、両面粘着シート全体が厚くなってしまうことが懸念される。したがって、支持基材の厚さは、通常2〜50μm程度の範囲とすることが好ましく、3〜20μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0065】
なお、両面粘着シート全体の厚さは、100μm程度以下とすることが好ましく、65μm以下とすることがより好ましい。一方、取り扱い性を確保する観点から、両面粘着シート全体の厚さは10μm以上とすることが好ましく、20μm以上とすることがより好ましい。
【0066】
(5)粘着シートの製造方法
片面粘着シートの一製造例としては、まず、本実施形態に係る剥離シートの剥離剤層上に、粘着剤層を構成する粘着剤および所望により希釈剤を含有する塗布液を塗布した後、乾燥させる(場合によっては硬化させる)ことにより、粘着剤層を形成する。塗布液の塗布は、例えば、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター等の塗工機を用いて行うことができる。
【0067】
上記希釈剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物等が用いられる。
【0068】
粘着剤が架橋タイプの場合、特に前述したアクリル系粘着剤Aの場合、塗布した粘着剤は、熱架橋させることが好ましい。この場合の加熱温度は60〜130℃であることが好ましく、加熱時間は30〜300秒程度であることが好ましい。
【0069】
上記のようにして剥離シートの剥離剤層上に粘着剤層を形成して、剥離シート付き粘着剤層を得たら、粘着剤層と基材とが接触するように、当該剥離シート付き粘着剤層と基材とを貼り合わせ、片面粘着シートを得る。本実施形態に係る剥離シートによれば、剥離剤層にシリコーン系化合物を使用せずに、上記のような転写塗工法により粘着シートを得ることができる。
【0070】
なお、上記の製造方法以外にも、基材の一方の面に粘着剤層を形成し、本実施形態に係る剥離シートの剥離剤層が粘着剤層に接触するように、剥離シートと粘着剤層とを積層し、片面粘着シートを得てもよい。
【0071】
両面粘着シートの一製造例としては、第1の積層体として、剥離シートの剥離剤層上に粘着剤層を形成し、所望により当該粘着剤層上に支持基材を積層し、第2の積層体として、剥離シートの剥離剤層上に粘着剤層を形成する。そして、第1の積層体の粘着剤層または支持基材と、第2の積層体の粘着剤層とを貼合し、両面粘着シートを得る。
【0072】
本実施形態に係る粘着シートの残留接着率は、50%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。なお、ここでいう残留接着率は、後述する試験例に示す方法で測定したものである。本実施形態に係る剥離シートによれば、剥離剤層から粘着剤層への低分子量のシリコーン系化合物やフッ素系化合物等の剥離剤成分の転写が非常に少ないため、上記の残留接着率が可能となる。したがって、本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、剥離シートによる悪影響を受けることなく、所望の粘着力を維持することができる。
【0073】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
例えば、剥離シート1の剥離基材11の両面に上記剥離剤層12が形成されてもよいし、剥離基材11の一方の面に上記剥離剤層12、剥離基材11の他方の面に別の剥離剤層が形成されてもよい。また、剥離シート1における剥離剤層12の反対側の面や、剥離基材11と剥離剤層12との間には、他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
(1)剥離シートの製造
官能基として両末端に2官能ウレタンメタクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物(ソルベイソレクシス社製,製品名:FLUOLOLINK MD700,固形分濃度:100質量%)100質量部と、分子内開裂型の光重合開始剤としての2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルズ社製,製品名:IRGACURE907,分子量:279,固形分濃度:100質量%)1質量部とを混合し、固形分濃度が約1質量%になるように、フッ素溶媒(信越化学工業社製,製品名:FSシンナー)と酢酸エチルとの混合溶媒(質量基準混合比1:1)にて希釈し、これを剥離剤層用の塗工液とした。
【0077】
得られた塗工液を、乾燥後(硬化後)の膜厚が80nmとなるように、剥離基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,ルミラー#50T−60,厚さ50μm)の片面にマイヤーバーにより均一に塗工した後、90℃で約1分間乾燥させた。次いで、無電極ランプにより紫外線を照射(照度:150mW/cm
2,光量:約350mJ/cm
2)して、剥離剤層を硬化させた。このようにして、剥離基材上に剥離剤層が形成された剥離シートを得た。
【0078】
(2)粘着シートの製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル70質量部、酢酸ビニル28質量部、アクリル酸2質量部、酢酸エチル100質量部、および重合開始剤としての2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を80℃に昇温し、8時間反応させた後、室温まで冷却し、アクリル酸エステル共重合体の溶液を得た。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量(Mw)80万のアクリル酸エステル共重合体の生成を確認した。
【0079】
得られたアクリル酸エステル共重合体の溶液に対して、アルミキレート架橋剤(東洋インキ製造社製,製品名:BXX4805,固形分濃度:5質量%)を、上記アクリル酸エステル共重合体の固形分換算100質量部に対して1.5質量部となるように添加し、粘着剤の塗布溶液を得た。
【0080】
得られた粘着剤の塗布溶液を、上記剥離シートの剥離剤層上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、120℃で1分間乾燥させて、粘着剤層を形成した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,ルミラー#50T−60,厚さ50μm)を上記粘着剤層に重ね合わせ、19.6Nの荷重をかけてローラーで1往復させて両者を貼合した。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で7日間放置し、粘着シートを得た。
【0081】
〔実施例2〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤を2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルズ社製,製品名:IRGACURE127,分子量:340,固形分濃度:100質量%)に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0082】
〔実施例3〕
剥離剤層の厚さを250nmに変更する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0083】
〔実施例4〕
官能基として多官能ウレタンアクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物(ダイキン工業社製,製品名:オプツールDAC−HP,固形分濃度:100質量%)100質量部と、分子内開裂型の光重合開始剤としての2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルズ社製,製品名:IRGACURE907,分子量:279,固形分濃度:100質量%)1質量部とを混合し、固形分濃度が約1質量%になるように、フッ素溶媒(信越化学工業社製,製品名:FSシンナー)と酢酸エチルとの混合溶媒(混合質量比1:1)にて希釈し、これを剥離剤層用の塗工液とした。
【0084】
得られた塗工液を、乾燥後(硬化後)の膜厚が150nmとなるように、剥離基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,ルミラー#50T−60,厚さ50μm)の片面にマイヤーバーにより均一に塗工した後、90℃で約1分間乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下(酸素濃度1%以下)にて、無電極ランプにより紫外線を照射(照度:150mW/cm
2,光量:約350mJ/cm
2)して、剥離剤層を硬化させた。このようにして、剥離基材上に剥離剤層が形成された剥離シートを得た。また、上記剥離シートを使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0085】
〔実施例5〕
剥離剤層用の塗工液において、パーフルオロポリエーテル化合物を、官能基として両末端に4官能ウレタンメタクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物(ソルベイソレクシス社製,製品名:5101X,固形分濃度:100質量%)に変更して剥離剤層を形成するとともに、剥離剤層の厚さを150nmに変更する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0086】
〔実施例6〕
剥離剤層の厚さを7nmに変更する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0087】
〔実施例7〕
剥離剤層の厚さを1100nm(1.1μm)に変更する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0088】
〔実施例8〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤の配合量を0.08質量部に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0089】
〔実施例9〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤の配合量を0.5質量部に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0090】
〔実施例10〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤の配合量を2質量部に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0091】
〔実施例11〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤の配合量を5質量部に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0092】
〔実施例12〕
剥離剤層用の塗工液において、分子内開裂型の光重合開始剤を2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルズ社製,製品名:DAROCUR1173,分子量:164,固形分濃度:100質量%)に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0093】
〔比較例1〕
光重合開始剤を配合しない以外、実施例1と同様にして剥離剤層用の塗工液を調製した。得られた塗工液を、実施例1と同様にして、剥離基材の片面に塗工し、加熱乾燥させた後、紫外線を照射した。しかしながら、塗膜は硬化せず、剥離剤層を形成することはできなかった。このため、後述する試験例の対象外とした。
【0094】
〔比較例2〕
剥離剤層用の塗工液において、パーフルオロポリエーテル化合物を、官能基として多官能メタクリレートを有するパーフルオロポリエーテル化合物(ソルベイソレクシス社製,製品名:MD500,固形分濃度:100質量%)に変更して剥離剤層を形成する以外、実施例1と同様にして剥離シートおよび粘着シートを製造した。
【0095】
〔比較例3〕
シリコーン系剥離剤(信越化学工業社製,製品名:KS−847H,固形分濃度:30質量%)100質量部と、硬化触媒(信越化学工業社製,製品名:CAT−PL−50T,固形分濃度:2質量%)1質量部とを混合し、固形分濃度が約1質量%になるようにトルエンにて希釈し、これを剥離剤層用の塗工液とした。
【0096】
得られた塗工液を、乾燥後の膜厚が100nmとなるように、剥離基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,ルミラー#50T−60,厚さ50μm)の片面にマイヤーバーにより均一に塗工した後、100℃で30秒間乾燥させて、剥離剤層を硬化させた。このようにして、剥離基材上に剥離剤層が形成された剥離シートを得た。また、上記剥離シートを使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0097】
〔比較例4〕
エチレンプロピレン共重合体を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学社製,製品名:タフマーP−0280G,密度:0.87g/cm
3)50質量部と、ポリエチレン樹脂(住友化学社製,リニア低密度ポリエチレン,製品名:HI−αCW2004,密度:0.908g/cm
3)50質量部との混合物を、剥離基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,ルミラー#50T−60,厚さ50μm)の片面に押出ラミネートして、厚さ20μmの剥離剤層を形成し、剥離シートを得た。
【0098】
得られた剥離シートの剥離剤層上に、実施例1と同様にして粘着剤の塗布溶液をナイフコーターで塗布したのち、120℃で1分間乾燥させたところ、剥離剤層が溶融した。このため、後述する試験例の対象外とした。
【0099】
〔比較例5〕
分子内開裂型の光重合開始剤を、水素引き抜き型の光重合開始剤であるベンゾフェノン(東京化成工業社製,固形分濃度:100質量%)に変更する以外、実施例1と同様にして剥離剤層用の塗工液を調製した。得られた塗工液を、実施例1と同様にして、剥離基材の片面に塗工し、加熱乾燥させた後、紫外線を照射した。しかしながら、塗膜は硬化せず、剥離剤層を形成することはできなかった。このため、後述する試験例の対象外とした。
【0100】
〔試験例1〕(剥離力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを150mm×50mmに裁断し、その剥離シート側をステンレス板に両面粘着テープを用いて貼り合わせ、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名:テンシロン UTM−4−100)に固定した。温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で、ISO 8510−2:1990に準じて、粘着シートの基材を180°方向に引張速度300mm/分で剥離したときの力を測定し、これを剥離力(mN/50mm)とした。結果を表1に示す。
【0101】
〔試験例2〕(シリコーン量の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを3mm×3mmに裁断した後、剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の表面のシリコーン量(%)を、X線光電子分析法(XPS)によって測定・算出した。測定装置としては、アルバックファイ社製のQuantera SXMを使用し、測定条件は以下の通りとした。
X線:単色化AlKα(100W,20kV)
取り出し角度:45°
測定元素:ケイ素原子(Si),炭素原子(C)
【0102】
上記シリコーン量(%)は、以下の式に基づいて算出されるものである。結果を表1に示す。
シリコーン量(%)={Si/(Si+C)}×100
【0103】
〔試験例3〕(残留接着率の測定)
実施例および比較例で製造した剥離シートの剥離剤層に粘着テープ(日東電工社製,商品名:ポリエステル粘着テープ31B)を貼り合わせ、20g/cm
2の荷重をかけて、70℃で24時間エージングを行った。その後、粘着テープを剥離シートから剥がしてステンレス板に貼り付けた。この粘着テープを角度180°、速度300mm/分でステンレス板から剥がし、そのときの抵抗力(これを抵抗力Aとする)を測定した。
【0104】
一方、剥離シートに貼り合わせていない粘着テープ(日東電工社製,商品名:ポリエステル粘着テープ31B)をステンレス板に貼り付け、上記と同様にしてステンレス板から剥がし、そのときの抵抗力(これを抵抗力Bとする)を測定した。
【0105】
上記の結果から、次の式により残留接着率(%)を算出した。
残留接着率=(抵抗力A/抵抗力B)×100
算出した残留接着率に基づいて、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示す。
○(良好):残留接着率70%以上
△(使用可能):残留接着率50%以上70%未満
×(使用不可):残留接着率50%未満
【0106】
【表1】
【0107】
以上の結果より、実施例で製造した剥離シートは、粘着剤の転写塗工が可能なものであった。また、表1から明らかなように、実施例で製造した剥離シートおよび粘着シートは、剥離力が低く、そして粘着剤層に対するシリコーン転移がなく、残留接着率が高かった。