【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、プラスチック金型を製造するための、類型に応じた方法において、質量%で
C = 0.22〜0.26
Si = 0.01〜0.35
Mn = 0.15〜0.60
P 最大0.025
S 最大0.003
Cr = 12.0〜14.0
Mo = 0.10〜0.18
Ni = 0.35〜0.50
V = 0.15〜0.25
W = 0.20までの微量
Cu 0.30までの微量
Co 0.20までの微量
Ti 0.02までの微量
Hf 0.02までの微量
Zr 0.02までの微量
Al = 0.002〜0.02
Nb 0.04までの微量
B 0.001までの微量
N = 0.08〜0.15
Ta 0.04までの微量
As 0.005までの微量
という組成を有し、
ただし、
Mn+Ni =
0.55〜0.95
Mo+W/2 =0.11〜0.20
Ti+Hf+Zr 0.05までの微量
V+Nb+Ta 0.15〜0.30
Nb+Ta 0.04までの微量
Feおよび不純物元素=残部であることを条件とし、
14.5超からおよそ15.7までの耐腐食性に関するPRE(N)値を有するスチールブロックを製造し、1050℃超の温度において2.5倍超の変形度で一次成形し、その後、場合によっては中間冷却後に、その半製品から1050℃未満の温度において少なくとも一つの金型主要部(Formengrundteil)の製作を行い、この金型主要部から、場合によっては切削加工後にプラスチック金型を製造し、このプラスチック金型または金型主要部をオーステナイト化し、24未満のλ値を有する冷却速度で硬化し、次いで少なくとも二回の焼き戻し処理を510〜550℃の範囲の温度において行い、この焼き戻し処理では48〜52HRCの材料硬度、および衝撃曲げサンプルを用いて測定して少なくとも60Jの材料靭性が形成され、その後、最終的には、プラスチック金型の最終機械加工、および予定されている場合、研磨を行うことにより解決される。
【0011】
本発明により達成される利点は、本質的には、方法に基づき製造されたプラスチック金型が、必要とあれば、高まった温度においても望みの耐腐食性、および良好な磨耗耐久性、高い機械的特性値、特に材料の靭性、および最も高い研磨特性において断面にわたって一様な微細組織構造を有するということに認めることができる。
【0012】
プラスチック金型の前記の有利な材料特性を達成するためには、見出されたように、元素の反応動力学をふまえた鋼の化学組成が重要である。
【0013】
0.22〜0.26
質量%の含有量の、狭い範囲の炭素、および0.08〜0.15
質量%の濃度範囲の窒素が、最終的には硬度と組織構造を定める元素であって、有利な炭窒化物形成が達成可能である。0.15
質量%よりも高い窒素含有量および特に同時に0.26
質量%よりも高い炭素含有量は、炭化物形成元素および窒化物形成元素と共に、組織中において粗い窒化物、炭化物または炭窒化物を形成するかもしれず、これらは、一方では鋼の研磨性を低下させ、機械的特性に不利な影響を及ぼし、特に耐腐食性を低下させるが、なぜなら、マトリックスのクロム含有粗大混合炭化物は、表面領域においてクロムを取り去るか、またはクロム含有量を低下させ、その結果、腐食攻撃を促進するからである。
【0014】
炭化物形成元素または炭窒化物形成元素である、クロム、モリブデン、バナジウム、タングステン、チタン、ハフニウム、ジルコン、ニオビウム、およびタンタルの、炭素含有量および窒素含有量を顧慮した、それらの元素の相互作用による、それぞれの活性は、見出されたように、記載の範囲においては、望みの反応生成物のサイズ、形態、および分布に調整されている。しかしながら、その際、それぞれ
質量%で総含有量、
Mo+W/2 =0.11〜0.20
Ti+Hf+Zr =0.05までの微量
V+Nb+TA =0.15〜0.30
Nb+Ta =0.04までの微量
であることが本質的である。
【0015】
いくつかの炭化物形成体に関する上記の化学式は、本発明によると、炭化物の反応動力学および結晶構造を考慮する。(Hf、ZrおよびTaに関する値は、化合物の自由形成エンタルピーを介して算出した)。
【0016】
硬化用の均質化された材料をオーステナイト化すると、上記の濃度条件においては、(CおよびN)を含むCr−Mo−W化合物、および(CおよびN)を含む大部分のV化合物の広範囲に及ぶ溶解が起こる。複数の元素からの金属部分を最も低い程度でしか有さない、バナジウムを含む極微細混合炭窒化物、ならびに/またはNbおよび/もしくはTaの炭窒化物のみが、ナノメートル範囲の直径を伴いながらマトリックス中に均質に分布したままであって、1050℃未満の所与の硬化温度における粒子成長を妨害し、これが、結局のところ、プラスチック金型の材料の機械的特性の改善に決定的に作用する。
【0017】
大きな金型主要部において熱調質時の十分な硬化深さまたは完全硬化を達成するためには、それぞれ
質量%で、マンガンの濃度は0.15〜0.60で、ニッケルの濃度は0.30〜0.60である。しかしながら、これらの元素のオーステナイト安定化作用を制御するためには、(Mn+Ni)の、0.55〜0.95
質量%の含有量が、本発明によると、制限的であるとされる。
【0018】
合金が、14.4超からおよそ15.7までのPRE(N)値を有すると、上記のように、組織形成において、炭窒化物析出物の粗粒化が妨げられるため、必然的に、その表面でのCrの目立った貧化は起こらず、腐食攻撃がまさにそこで阻止される。PREN値は、(%Cr+3.3x%Mo+16x%N)からもたらされる。
【0019】
鋳物中の所与のミクロ偏析を分解するため、または材料均質性を促進するためには、1050℃超の温度において2.5倍超の変形度でインゴットを成形することが有利である。(変形度は、初期断面積を最終断面積で割った商である)。
【0020】
その化学組成の点で本発明によって特徴付けられる材料を硬化する際には、金型主要部または金型の断面全体にわたって、マルテンサイト組織構造を調整する必要があるため、マルテンサイト形成のための、オーステナイトの強制冷却を適用すべきである。低い冷却速度は、粒界において、場合によっては、低い程度とはいえ、材料の靭性値を決定的に悪化させるパーライト組織または中間組織の形成を起こすかもしれない。それゆえ、本発明によると、鋼のオーステナイト温度からの冷却速度は、24未満のλ値で行うべきである。(λ値は、800℃から500℃への、秒での冷却時間を100で割ると出る。)
【0021】
材料の硬度を48〜52HRCの範囲に調整するためには、硬化された半加工金型(Rohform)または金型の焼き戻しは、オーステナイトを完全に変換させるために、部品を少なくとも二回、510〜550℃の範囲の温度に加熱することを必要とする。本発明によると、その後、材料の靭性は、衝撃曲げ試験を用いて測定して少なくとも60Jである。(ASTM、E23に準拠)
【0022】
本発明による方法の好ましい実施形態は、請求項2および3において特徴が示されている。
【0023】
本発明は、高い機械的および腐食化学的耐負荷性ならびに高い研磨特性を有するプラスチック金型にも関する。
【0024】
そのプラスチック金型は、請求項4で記載される化学組成を特徴とし、ただし、請求項5がその化学組成の好ましい一変形形態を示す。
【0025】
上記の組成を有する材料は、プラスチック金型の熱処理後に、ASTM、E23に準拠する衝撃曲げサンプルを用いて測定して、少なくとも60Jの材料靭性を有する48〜52HRCの硬度をもたらす。
【0026】
使用準備のできた状態の金型の材料延性に関しては、本発明によると、EN 10002−1に準拠する引張試験において、破断伸びAが少なくとも5%およびネッキングが少なくとも10%である。
【0027】
これらの機械的値は、せいぜいのところ、最も不都合な合金層においてもたいていの場合は上回る最低値である。
少なくとも10%の破断伸びAおよび少なくとも40%のネッキングZにおける少なくとも190Jの靭性値は、例外なく達成可能である。
【0028】
開発作業からの結果を手がかりに、以下では本発明をより詳細に記載する。
【0029】
表1によって従来技術の合金および本発明による材料が対比されている。
【0030】
合金1は、AlSl420鋼またはX42Cr13鋼に相応し、この材料は、磨耗性添加物を含む化学的侵食性成形材料において、たびたび金型として使用される。
【0031】
従来技術のさらなる合金2としては、EP1052304(特許文献2)に基づく材料を検査した。
【0032】
高い完全硬化能力を有する合金3もまた従来技術の一部と見なされる。
【0033】
合金4および合金5は、本発明による、プラスチック金型用マイクロ合金材料である。
【0034】
組織撮影を手がかりに、本発明により添加されたマイクロ合金元素VおよびNbの作用を具体的に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】