(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122458
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】濃縮調味液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20170417BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20170417BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L23/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-69038(P2015-69038)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187328(P2016-187328A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2015年3月30日
【審判番号】不服2016-2171(P2016-2171/J1)
【審判請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511009961
【氏名又は名称】株式会社創味食品
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】三谷 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】森 卓也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲大
【合議体】
【審判長】
紀本 孝
【審判官】
田村 嘉章
【審判官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−228965(JP,A)
【文献】
特開平1−148170(JP,A)
【文献】
特開2010−220566(JP,A)
【文献】
特開2013−123406(JP,A)
【文献】
特開2012−139213(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/097934(WO,A1)
【文献】
Polym. Adv. Technol.,2001年,vol.12,p740−745
【文献】
工業化学雑誌,1958年,vol.61,p874−877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価金属イオン、および0.5〜20%のアルギン酸塩を含む、2〜25倍で希釈して飲食物として利用される、50,000cps以下の粘度を有し、希釈後に10cps以上の粘度を有する濃縮調味液(紅麹粉末または紅麹抽出エキスを含む機能性醤油を除く)。
【請求項2】
一価金属イオンを、イオン濃度で0.6mol/L以上含む、請求項1に記載の濃縮調味液。
【請求項3】
一価金属イオンと、濃縮調味液に対して0.5〜20%のアルギン酸塩を混合することを含む、2〜25倍で希釈して飲食物として利用される、50,000cps以下の粘度を有する濃縮調味液(紅麹粉末または紅麹抽出エキスを含む機能性醤油を除く)の製造方法。
【請求項4】
濃縮調味液の一価金属イオン含有量が、イオン濃度で0.6mol/L以上である、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈した後に粘性を有する、濃縮調味液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有塩の濃縮調味液は和風、中華、洋風を問わず、外食産業用、家庭用で幅広く利用されている。例えば、めんつゆ、あんかけ、たれ、ラーメンスープ、コンソメスープなどが挙げられる。
【0003】
しかし、希釈を伴う濃縮調味液の特性上、製造時の粘度を抑えると、使用時に適度な粘度を持たせることが難しいという問題がある。このため、未膨潤の澱粉を添加し、常温充填あるいは殺菌温度を低く抑えることにより粘度の低い濃縮調味液を製造する技術が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、澱粉を含む食品を常温充填や低温殺菌のみで流通する場合、アルコールや保存料を添加する、または強度に水分活性を下げる必要があり、風味を損なうといった問題を生じる。さらに、澱粉を含む食品を常温充填した場合、希釈後に加熱しなければ粘性が発現しない。またこれらの方法では、通常のホット充填を行うと、未糊化澱粉が膨潤してしまい、作業時の粘度が高くなり濃縮調味液が製造できないといった問題もある。
【0004】
また、増粘剤を配合し、希釈により粘度を発現する粉末調味料についての技術も知られている(特許文献3)。しかしながら、粉末調味料は粉末原料を主体に配合しなければならず、ダマ防止のために賦形剤を多量に配合しなければならないといった問題が生じ、良好な風味を得ることが難しい。良好な風味を得るためには、粉末調味料のみを希釈して利用するというよりも、湯で溶解させた粉末調味料を、調理済の食品に混ぜてとろみを付加させるといった使用方法に限られるが、このような使用方法でも調理済食品の風味への影響は避けられず、簡便に利用できるとはいえない。
【0005】
なお、特許文献4には、粘性発現が抑制された糊料により流動性のある液体を調製し、水分を含む目的物に添加して粘性を発現させる増粘用添加液が開示されている。しかしながら、これも調理済の食品に混ぜて増粘する方法であり、風味への影響が避けられず、簡便に利用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−236531号公報
【特許文献2】特開2013−39101号公報
【特許文献3】特開2012−10637号公報
【特許文献4】特開2006−166928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、濃縮時には製造および使用に適した状態であり、希釈しても適度な粘性を有し、さらに風味が良好である濃縮調味液およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を重ね、金属イオンと、金属イオン濃度依存性の増粘剤、より具体的にはアルギン酸塩、を組み合わせて用いることにより、本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は:
(1)一価金属イオン、およびアルギン酸塩を含む濃縮調味液であって、希釈した後に粘性を有する、濃縮調味液、
(2)アルギン酸塩を、0.5〜20%含む、(1)の濃縮調味液、
(3)一価金属イオンを、イオン濃度で0.6mol/L以上含む、(1)または(2)の濃縮調味液、
(4)一価金属イオンと、アルギン酸塩を混合することを含む、濃縮調味液の製造方法、
(5)濃縮調味液のアルギン酸塩含有量が0.5〜20%である、(4)の製造方法、
(6)濃縮調味液の一価金属イオン含有量が、イオン濃度で0.6mol/L以上である、(4)または(5)の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、濃縮時には製造および使用に適した性状であり、希釈した後も粘性を有し、さらに風味が良好な濃縮調味液を提供することができる。加えて、希釈するのみで使用できるので、風味の調整が容易であり、加温設備のない場所でも利用できる濃縮調味液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各種増粘剤を使用した濃縮調味液の希釈前後の粘度を示した図である。
【
図2】ナトリウムイオン濃度を調整した濃縮調味液の希釈前後の粘度を示した図である。
【
図3】カリウムイオン濃度を調整した濃縮調味液の希釈前後の粘度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一の態様において、本発明は、金属イオンおよびアルギン酸塩を含む濃縮調味液であって、希釈して使用する際に粘性を有する濃縮調味液を提供する。
【0013】
本発明の濃縮調味液は、希釈して飲食物として利用されるものである。その用途として、例えば、あんかけうどんのつゆ、カレーうどんのつゆ、ラーメンスープ、つけ麺用の濃縮スープ、めんつゆ、だしの素、和風あんかけ、天丼のたれ、かつ丼のたれ、八宝菜のたれ、エビチリのたれ、中華風スープ、コーンポタージュ、コンソメスープ、チキンブイヨン、トマトスープ、デミグラスソース、カスタードクリームなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の濃縮調味液は、流動性を有するものであり、具体的には液状またはペースト状である。好ましくは、本発明の濃縮調味液は液状である。本発明の濃縮調味液の粘度は、製造に適したものであれば特に限定はされないが、好ましくは常温(25℃)において約100,000cps以下、より好ましくは90,000cps以下、さらに好ましくは50,000cps以下である。
【0015】
本発明の濃縮調味液は、希釈後に粘性を有する。粘性を有する状態とは当業者に理解できるものであり、例えばとろみを感じる状態である。
【0016】
希釈後の調味液の粘度は目的とする食品に応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えば、希釈後の調味液の粘度は好ましくは5cps以上、より好ましくは10cps以上、さらに好ましくは30cps以上、さらにより好ましくは100cps以上である。
【0017】
粘度は、当業者に周知の方法により測定でき、例えばB型粘度計を用いて測定できる。本発明に記載される粘度は、特に断りの無い限り、温度を25℃に調整し、B型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した数値である。
【0018】
本発明の濃縮調味液はアルギン酸塩を含む。本発明の濃縮調味液に添加されるアルギン酸塩は特に限定されないが、好ましくは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムまたはそれらの混合物である。より好ましくは、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。濃縮調味液の製造を妨げることのない程度において、アルギン酸塩以外に、澱粉、加工澱粉、キサンタンガム、タマリンドガムなどの他の増粘剤を併用してもよい。また、澱粉等の他の増粘剤を実質的に含めないことも可能である。より具体的には、澱粉などの他の増粘剤の添加量は好ましくは5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満である。
【0019】
アルギン酸塩の含有量は、イオン濃度、所望の粘度および風味、使用される他の原料等に応じて当業者が適宜調整できる。例えば、好ましい含有量は、濃縮調味液に対して0.1〜20%であるが、これに限定されない。好ましい含有量の例として0.1〜16%、0.1〜15%、0.1〜14%、0.1〜12%、0.1〜10%、0.5〜20%、0.5〜15%、0.5〜14%、0.5〜12%、0.5〜10%、0.5〜8%、1〜20%、1〜15%、1〜14%、1〜12%、1〜10%、1〜8%、2〜15%、2〜14%、2〜12%、2〜10%、2〜8%、2〜5%、4〜10%、5〜10%等が挙げられる。
【0020】
本発明の濃縮調味液に添加される金属イオンは、食品に使用でき、アルギン酸塩による粘度を調整することが可能である限りいずれの金属イオンも使用できる。好ましくは、金属イオンは一価金属イオンである。より好ましくは、一価金属イオンはナトリウムおよび/またはカリウムイオンである。最も好ましくは、一価金属イオンはナトリウムイオンである。金属イオンは、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等の有機塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩といった塩類の形態として添加してもよいし、醤油等の調味料に含まれる形態として添加してもよい。さまざまな形態のものを組み合わせて添加してもよい。
【0021】
金属イオンの含有量は、所望の粘度、使用する金属イオンの種類、他の原料などに応じて当業者が適宜調整できる。例えば、イオン濃度として、0.6mol/L以上、より好ましくは1.0mol/L以上が好ましい。好ましいイオン濃度の例として、0.6〜5.0mol/L、0.6〜4.0mol/L、0.6〜3.0mol/L、0.6〜2.5mol/L、1.0〜5.0mol/L、1.0〜4.0mol/L、1.0〜3.0mol/L、1.0〜2.5mol/L、1.5〜4.0mol/L、1.5〜3.0mol/L等が挙げられる。
【0022】
本発明の濃縮調味液は、希釈して食品に使用される。希釈に使用される物質は特に限定されず、例えば水、果汁、野菜汁、乳製品、嗜好飲料、エキス等の液体、氷等の固体が挙げられる。風味や利便性の観点から、水または湯で希釈することが好ましい。希釈に使用される液体の温度は特に限定されず、例えば、0〜100℃、10℃〜90℃等が挙げられる。本発明の濃縮調味液は、希釈してそのまま使用してもよいし、必要に応じて希釈後に加熱等の調理を加えてもよい。冷水などの低温の液体や、氷水で希釈して冷製調味液としてもよい。場合により、ゲル化した調味液への応用も可能である。また、所望の粘度が得られる限りにおいて、調味料等の他の原料を添加してもよい。本発明の濃縮調味液は希釈後に加熱の必要がないことから、火気の使用が禁止された場所でも、希釈するのみで粘性を有する調味液を提供することが可能となる。
【0023】
本発明の濃縮調味液は、希釈により、追加の増粘剤を添加すること無く、所望の粘性を有する調味液となる。好ましくは、本発明の調味液は、希釈液の粘度が濃縮状態の5%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは濃縮状態と同等またはより高い粘度を示す粘度特性を有する。
【0024】
本発明の濃縮調味液の濃縮倍率は希釈後の金属イオン濃度、風味に応じて当業者が適宜設定できる。好ましい濃縮倍率の例として、2〜25倍、2〜20倍、2〜15倍、2〜12倍、2〜8倍等が挙げられる。希釈後の金属イオン濃度は、特に限定されないが、塩化物換算で3.5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下となることが好ましく、例えば、0.5〜3.5%、0.5〜3.0%、0.5〜2.5%、0.5〜1.5%、0.5〜1.0%、1.0〜3.5%、1.0〜3.0%、1.0〜2.5%、1.0〜1.5%、1.5〜3.5%、1.5〜3.0%、1.5〜2.5%、2.0〜3.5%等が挙げられる。
【0025】
本発明の濃縮調味液は、上述の金属イオンおよび増粘剤、ならびに所望の粘度特性が得られる限りにおいて濃縮調味液に使用できる原料をさらに追加することができる。追加できる原料として、例えば、酢、味噌、醤油などの調味料、香辛料、保存料、着色料、香料、塩類、糖類、油脂、酸化防止剤、野菜、果物、果汁、畜肉、魚介類等が挙げられる。
【0026】
本発明の濃縮調味液の包装形態は、通常の濃縮調味液の包装形態であれば特に限定されず、例えば、缶、瓶、PET容器、パウチ、紙容器、プラスチック袋、プラスチックカップ、チューブ、バッグインボックス等が挙げられる。
【0027】
他の態様において、本発明は、濃縮状態では製造可能な粘度であり、希釈した後に、粘性を有する濃縮調味液を製造する方法を提供する。
【0028】
本発明の製造方法は、金属イオンを含む原料、アルギン酸塩を混合することを含む。より具体的には、水、金属イオンを含む原料、アルギン酸塩、他の原料を混合・溶解し、必要に応じてさらに別の原料を加えた後、必要に応じて加熱殺菌を行い、包装して濃縮調味液を製造する工程を含む。
【0029】
好ましい金属イオンの例は、上述のとおりである。金属イオンを含む原料は、所望の金属イオンを含むものであれば特に限定されず、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等の有機塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩といった塩類、味噌、醤油等の調味料等が挙げられる。金属イオンを含む原料の添加量は、所望の粘度、使用する金属イオンの種類、他の原料などに応じて当業者が適宜調整できる。好ましい添加量の例は上述のとおりである。金属イオンを含む原料は、アルギン酸塩を添加する前にあらかじめ溶解させてもよいし、アルギン酸塩と混合して同時に添加してもよい。
【0030】
好ましいアルギン酸塩、その添加量の例は、上述のとおりである。アルギン酸塩は、当業者に公知の方法により添加すればよい。例えば、水に分散させてから添加してもよいし、熱水に溶解させてから添加してもよい。また、他の粉末原料と混合してから添加してもよい。金属イオンを含む原料を溶解した後に、アルギン酸塩を分散させることが好ましい。原料の混合は当業者に周知の方法によって行うことができ、例えばミキサーを用いて行うことができる。
【0031】
本発明の製造方法では、濃縮調味液を調製する際に加熱を行わなくてもよい。加熱を行わない態様として、例えば常温充填による製造が挙げられる。
【0032】
本発明の製造方法では、濃縮調味液を調製する際に加熱を行ってもよい。加熱を行う態様として、例えばホット充填による製造が挙げられる。加熱を行う場合、原料を加熱溶解した後、再度加熱殺菌を行ってもよいし、加熱殺菌により溶解のための加熱を兼ねても良い。加熱殺菌を行う場合、加熱殺菌は容器への充填の前後で行うことができる。加熱条件は濃縮調味液の種類、使用する原料に応じて当業者により適宜調整できる。好ましくは、加熱温度は60〜140℃であり、より好ましくは70〜140℃である。また、好ましくは、加熱時間は30秒間以上、より好ましくは30秒間〜1時間である。好ましい加熱条件の例として、70〜140℃で30秒間〜1時間、80〜140℃で30秒間〜1時間、90〜140℃で30秒間〜1時間、70〜105℃で1分間〜1時間、80〜105℃で1分間〜1時間、70〜95℃で1分間〜1時間、75〜90℃で1分間〜1時間、100〜115℃で1分間〜30分間などが挙げられる。加熱装置は当業者に周知の装置を用いることができ、例えば湯浴、レトルト殺菌機、チューブ殺菌機、熱交換器等を用いることができる。加熱殺菌により、常温流通が可能な濃縮調味液を提供することも可能となる。
【0033】
本発明の製造方法において、上述したその他の原料を添加してもよい。これらの形状は特に限定されず、例えば、固形状、粉末状、顆粒状、液状、エキス等の形状であってもよい。添加のタイミングは当業者によって適宜調整でき、例えば、全原料を同時に添加して混合してもよいし、粉末原料を、金属イオンを含む原料およびアルギン酸塩と共に溶解した後に、固形原料を加えてもよい。また、濃縮調味液を充填する容器の例は、上述のとおりである。
【0034】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明する。本実施例は例示の目的であり、必ずしもこれらへの限定を意味するものではない。なお、特に明示の無い限り%は重量基準である。
【実施例】
【0035】
実施例1:アルギン酸ナトリウムを用いた濃縮調味液の調製
濃縮スープ原液(商品名:和風だし 淡口、ナトリウム量7.01g/100g、塩化ナトリウム換算16.5±0.5%、株式会社 創味食品製)に、下記の表1に示す通りにキミカアルギンI−2M(アルギン酸ナトリウム製剤、株式会社 キミカ製)を添加、分散し、80℃で10分間加熱して溶解し、PETボトルに充填して冷却した(製造例1〜14)。添加量22%のものは、粘度が高く製造に適さない状態であった。冷却後濃縮調味液および6倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
製造例1は希釈液の粘性が不十分であった。製造例2〜13は良好な結果が得られた。製造例3〜9で特に良好な結果が得られた。
【0038】
実施例2:各種増粘剤の比較
下記表2の配合で各増粘剤を用いた濃縮調味液(製造例15〜19)を調製した。80℃で10分間加熱して溶解し、PETボトルに充填して冷却した。冷却後濃縮調味液および4倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表3および
図1に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
アルギン酸ナトリウム以外を使用した製造例15〜18は、希釈により大幅に粘度が減少した。アルギン酸ナトリウムを使用した製造例19は、希釈により濃縮時よりも粘度が増加した。
【0042】
実施例3:製造時の加熱の検討
充填前の加熱を行わないこと以外は製造例19と同様にして濃縮調味液(製造例20)を製造した。濃縮調味液および4倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
充填前に加熱を行わない製造例20が、製造例19よりも若干良好な結果となった。充填前の加熱の有無にかかわらず、良好な結果が得られることが示された。
【0045】
実施例4:金属イオン濃度の検討1
キミカアルギンI−2Mを6g、砂糖を40g、および下記表5のナトリウム濃度となるように量を調整した塩化ナトリウムを混合し、水を加えて溶解した。その後、水で全量を200mlに調整して、ナトリウム濃度を変えた濃縮調味液(製造例21〜32)を調製し、PETボトルに充填した。濃縮調味液および4倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表5および
図2に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
すべて良好な結果が得られた。ナトリウム濃度が0.6mol/L以上の場合に特に良好な結果が得られた。意外にも、ナトリウム濃度が増えるに従って単純に粘度が減少するのではなく、低濃度ではナトリウム濃度の増加に応じて粘度も増加し、0.5mol/L程度でピークとなり、そこから急激に粘度が減少するという結果が得られた。
【0048】
実施例5:金属イオン濃度の検討2
キミカアルギンI−2Mを6g、砂糖を40g、および下記表6のカリウム濃度となるように量を調整した塩化カリウムを混合し、水を加えて溶解した。その後、水で全量を200mlに調整して、カリウム濃度を変えた濃縮調味液(製造例33〜44)を調製し、PETボトルに充填した。濃縮調味液および4倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表6および
図3に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
カリウム塩を使用した場合も、ナトリウム塩と同様の結果が得られた。
【0051】
実施例6:アルギン酸カリウムの検討
製造例31および43のアルギン酸ナトリウムを、アルギン酸カリウム(キミカアルギンK−3、株式会社 キミカ)に置き換えた濃縮調味液44および45をそれぞれ調製し、PETボトルに充填した。濃縮調味液および4倍希釈後の調味液を温度25℃に調整し、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
アルギン酸ナトリウムをアルギン酸カリウムに置き換えた製造例44、45とも、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、希釈後も適度な粘性を有する濃縮調味液を提供できる。これにより、簡便に粘性を有する食品を提供でき、外食、市販調味料、弁当、惣菜、病院食、介護食、ベビーフード等への応用が可能である。