(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記骨切面表示手段は、さらに、前記マーカと共に撮像した前記手術対象骨を内部に含む患部の画像に基づいて、前記患部の画像と前記マーカとの位置関係に対応して前記患部の画像を前記骨切ガイド面に重ねて表示する、請求項1に記載の骨切支援システム。
前記骨切面決定手段は、前記手術対象骨を前記骨切ガイド面に沿って切断して生成される分離骨の3次元形状データと、前記参照骨の3次元形状データとを、前記参照骨の端部を基準に重ねた場合に、前記参照骨の3次元形状データからはみ出した部分の前記手術対象骨の体積が最小となる位置および向きの前記骨切ガイド面を決定することを特徴とする請求項5に記載の骨切支援システム。
前記骨切面決定手段は、前記骨切ガイド面に沿って切断して生成された前記分離骨の3次元形状データを、前記参照骨の端部を基準に重ねた場合に、前記参照骨の3次元形状データと重ねた場合の、前記参照骨において、分離骨同士に挟まれた部分の3次元形状データを、欠損部位の3次元形状データとして生成する欠損部位形状生成手段をさらに備えた請求項5または6に記載の骨切支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
なお、本明細書で使用する「移動」との文言は、3次元における画像の「回転移動」および/または「平行移動」を2次元表示画面で表現するものを意味する。
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての骨切支援システム100について、
図1を用いて説明する。骨切支援システム100は、画像処理により骨切外科手術を支援するためのシステムである。
【0016】
図1に示すように、骨切支援システム100は、記憶部101と、骨切面決定部102と、骨切面表示部103とを含む。記憶部101は、手術対象骨の3次元形状データ111を、手術対象骨に固定されるマーカの位置データ112に関連付けて記憶する。一方、骨切面決定部102は、手術対象骨の3次元形状データ111に基づいて、手術対象骨を切断する平面を示す骨切面121の位置および向きを決定する。骨切面表示部103は、手術対象骨に固定されたマーカ131を撮像した画像に基づいて、決定された骨切面121を表示する。
【0017】
本実施形態によれば、事前決定した骨切位置を術中の医師に対して的確に指示することができる。
【0018】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、あらかじめ手術対象骨の配置の基準となる手術対象骨の一方の第1対象骨の3次元データと、治癒後の形状の参照となる参照骨の3次元データとを生成して、第1対象骨に固定された第1マーカ(例えば2次元コード)と関連付けて記憶する。また、手術対象骨の他方の第2対象骨の3次元データを生成して、第2対象骨に固定された第2マーカ(例えば2次元コード)と関連付けて記憶する。手術時には、AR(Augmented reality)技術を利用して、撮像した第1マーカおよび第2マーカから、骨切面、第1対象骨および第2対象骨の3次元位置を判定して、記憶された3次元データに基づいて表示する。そして、第2対象骨と参照骨とが適正に重なったか否かを判定することで、手術対象骨の適切な配置を決定する。このような処理によって、医師による手術対象骨の適切な配置の決定を支援する。
【0019】
以下、
図2〜
図7を参照して、本実施形態の外科手術支援システムの構成と処理の概要を説明する。外科手術支援システムは、大きく分けて、術前準備データ生成システムと術中画像処理システムとを含む。術前準備データ生成システムは、術前に第1対象骨、第2対象骨および参照骨の3次元データを生成、表示して、術中に使用するデータを生成し記憶するシステムである。術中画像処理システムは、マーカ撮像に基づいて対象骨画像および参照骨画像を生成し表示して、手術対象骨の配置決定を支援するシステムである。しかしながら、術前準備データ生成システムと術中画像処理システムとを、統合された1つのシステムとして構成してもよい。
【0020】
(外科手術の概要)
図2は、本実施形態に係る外科手術全体の概要を説明する図である。
図2は、変形治癒した罹患骨(手術対象骨)の骨切矯正手術の例を示している。骨切矯正手術は、準備段階201と、手術対象骨の位置決め段階202と、手術対象骨の位置固定段階203とを含む。本実施形態においては、橈骨遠位部変形治癒手術を例に説明するが、これに限定されない。他の部位や他の骨の変形治癒、あるいは、骨折治療手術にも同様に適用される。
【0021】
準備段階201においては、前腕213の手術対象骨の推定骨切位置214を挟む2つの位置に、2本が対となったピン211、212を、2つのマーカの支持部材として、所定間隔(例えば、1cmまたは2cmの間隔)で固定する。充分な強度と断面積がある場所であって、手術対象骨の長手方向に2本のピンが固定可能な場所がピンの挿入固定位置として望ましい。また、ピンの長さは、患部や骨により異なるが、前腕であれば外部にマーカを設定でき、かつ容易に撮像可能な長さとして、5cm〜10cm程度であればよい。ピン211、212を固定した状態でCT(Computed Tomography)撮影を行なって、ピン付きの手術対象骨の3次元データを生成し、記憶する。さらにピン211、212に対して後に固定されるマーカの位置および向きを設定し、マーカの位置データと手術対象骨の3次元データと参照骨の3次元データとを関連付ける。
【0022】
例えば、手術対象骨の3次元データに含まれるピンの3次元データを表示し、その2本のピンの根本位置と先端位置とを、ユーザにポインティングデバイスなどで指定させることにより、それらのピンに取り付けられるマーカの位置および向きを定義してもよい。2本のピンが生成する平面とマーカの位置および向きとの関係はあらかじめ設定されていてもよいし、複数の関係(例えば2本のピンが生成する平面に対して平行、垂直、45度をなすなど)から選択してもよい。また例えば、マーカをピンに固定するために使用される1つまたは複数の治具やピンそのものの3次元形状データを用意しておき、CT撮影によって取得したピンの3次元データに対して、3次元空間上で、その治具を取り付けてマーカの位置を定義してもよい。これにより、マーカの位置および向きと手術対称骨および参照骨の位置および向きとの関係がデータベース内に記憶される。
【0023】
マーカ位置データは、マーカの位置と手術対象骨の位置との相対位置を示すデータである。手術対象骨の3次元データを含む3次元空間の原点からみたマーカの位置を示すデータであればよい。骨切面データは、手術対象骨の3次元データに対する相対位置を含むため、結果として、同じ3次元空間内のマーカの位置と骨切面の位置との相対関係が定義される。つまり、このデータベースを参照することにより、撮像画像中のマーカの位置、大きさおよび向きから、骨切面を表示する位置、大きさおよび向きを決定することができる。
【0024】
手術中には、患部を切開して、システムが指示する位置で骨切りを実施する。その後、手術対象骨の位置決め段階202において、マーカ221、222を撮影する。撮像画像からマーカ221、222のそれぞれの位置、大きさおよび向きを認識し、データベースを参照することにより、手術対象骨の位置、大きさおよび向きを導き出す。そして、導き出した位置、大きさおよび向きの手術対象骨223、224および参照骨225を表示する。
【0025】
医師が手226で患者の前腕213をつかみ、腕を曲げたりねじったりすると、撮像画像中のマーカ221の状態が変化する。このマーカ221の位置、大きさ、傾きの変化に応じて、表示画像中の手術対象骨223の表示位置、大きさ、傾きが変化するように表示する。一方、マーカ222の位置、大きさ、傾きとの相対関係と共に参照骨225の3次元形状データがあらかじめ記憶されており、マーカ222を撮像することにより、所定の位置に参照骨225が表示される。医師は、手術対象骨223が参照骨225と重なる位置を発見すると、手術対象骨の位置固定段階203に進む。
【0026】
手術対象骨の位置固定段階203においては、確定された患者の前腕213内部の手術対象骨223、224の適切な相対配置を維持するために、手術対象骨223が参照骨225と重なる位置におけるピン211、212を固定具231で固定する。
【0027】
このような外科手術支援システムによる支援を経ることで、切開部の縮小と、手術の迅速化とが可能になる。
【0028】
(他のマーカ固定方法)
図2では、ピン211、212を創外に突出させているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ピンの先端が創内に収まるような短いピン(1〜2cm)として、術中(位置決め段階202)に、その短いピンに新たに長いピンを接続した上で、マーカ221、222を取り付けてもよい。あるいは、ピンを挿入せずに骨のみのCTを撮って生成された骨のCGデータに対して仮想的にピンを挿入し、その後、術中に開創して、CGデータどおりの位置に実際にピンを挿入してもよい。その際、仮想ピン付きの骨のCGデータを用いてマーカの位置を決めておき、3Dプリンタで、その患部の骨にぴったりと嵌る型(ピン穴付きカタ)を生成し、その型に合わせてピンを挿入することにより、CGデータにおけるピンと同じ位置に実際のピンを挿入してもよい。さらに、そのような型を骨にぴったりと嵌はめた状態で、その型自体にマーカを取り付ける方法でもよい。デジタルカメラで撮像した骨の特徴点を判別して、ピン付きのCGデータと重ね合わせることにより、CGデータと同じ位置に同じ方向でピンを挿入してもよい。これらの方法により、ピンを刺してCTスキャンを撮ってからの患者の負担、感染症の確立を抑えることができる。
【0029】
(術前準備データ生成システムの構成)
図3は、術前準備データ生成システム320の構成を示す図である。
【0030】
術前準備データ生成システム320は、ネットワーク323により接続された、参照画像を生成するための情報処理装置324と、患者322の断層画像を取得するCTスキャナ321と、を有する。さらに、オプションとして、断層画像データから3次元骨表面データ(STLデータ)を生成するSTLデータ生成サーバ325を有してよい。なお、ネットワークは、広域ネットワークであってもLANであってもよい。
【0031】
本実施形態においては、CTスキャナ321によって患者322の患部および患部の参照となる部位の断層画像を取得する。本例では、例えば、4本のピンが手術対象骨に挿入固定された右腕前椀の断層画像と健側の左腕前腕の断層画像とを取得する。断層画像データは、ネットワーク323を介して、情報処理装置324に送られ、情報処理装置324において3次元データに変換される。なお、断層画像データから3次元データへの変換は、STLデータ生成サーバ325が行なってもよい。
【0032】
なお、本実施形態で使用される生体データは、CT/MRIにより取得されたデータに限定されるものではなく、3次元データはSTLデータに限定されるものではない。
【0033】
(術前準備データ生成処理)
図4は、情報処理装置324を用いた術前準備データ生成処理の概要を説明する図である。画像401〜406は、情報処理装置324の表示画面に表示されるCG(Computer Graphics)画像であり、それぞれ、術前準備データ生成処理の各ステージに対応している。
【0034】
まず、第1ステージにおいて、画像401に示すように、前腕213の手術対象骨と左右対称位置(健側)にある非罹患骨をCTやMRIなどで内部撮影して生成した非罹患骨3次元データ411を反転し鏡像データを生成する。これにより、手術対象骨と同様の(少なくとも一部が重なった)形状を有する参照骨の3次元データ(以降、参照骨と称す)412を生成する。なお、参照骨画像412は、健側の非罹患骨の鏡像データに限定されるものではない。例えば、患者の他の類似形状骨や、他の患者の橈骨や、CG製作された橈骨であってもよい。
【0035】
第2ステージにおいて、画像402に示すように、前腕213の手術対象骨をCTスキャンなどで内部撮影して生成した手術対象骨(罹患骨)の3次元データ(以降、手術対象骨と称す)421を表示する。手術対象骨421は、ピン211、212が固定された状態で撮影されたSTLデータから生成されているため3次元データ上でもピン211、212を含んでいる。そして、参照骨画像412と手術対象骨421とを表示画面上で対比させて、手術対象骨421の状態を確認する。
【0036】
第3ステージにおいては、3次元空間での観察点を手術対象骨に近づけた拡大表示画像405や、異なる観察点からの複数の画像を同時に表示する分割表示画像406(ここでは、3方向からの画像)を参照しながら手術対象骨421を画像403上で操作する。すなわち、手術対象骨421を参照骨画像412に対して移動したり回転したりして、参照骨画像412の各端部と手術対象骨421の各端部とを重ね合わせる。
【0037】
骨切面が上端側にあると推定できる場合には、まず、左側のように、手術対象骨421と参照骨画像412との下端同士を重ねて、手術対象骨421の骨切面を決定する。特に、関節部(図中の下端または上端)の形状(特徴点)を重ねることにより、手術対象骨421の歪みや曲り、変形を認識した上で、下端から徐々に上方に向けて参照骨と対比していき、参照骨との離間が始まる分岐位置を骨切面画像431とする。ここでは、骨切面画像431を所定の形状および大きさを有する矩形の平面としているが、本発明はこれに限定されない。骨切の目的に応じて曲面を含む面でもよい。
【0038】
なお、医師が、参照骨画像412と手術対象骨421との重畳具合を見ながら骨切面画像431を評価、決定してもよいが、計算により最適骨切面を求めてもよい。例えば、下端を重ねた上で、手術対象骨421と参照骨画像412との軸方向単位長さあたりの非重畳体積を下端から順次算出し、その非重畳体積が所定値を越えない最も上の点を結んだ平面を骨切面画像431としてもよい。あるいは、参照骨画像412の表面を単位面積に細かく分け、その単位面積ごとに手術対象骨421の表面までの鉛直方向の距離が所定値を越えた位置をつなぐことにより骨切面画像431を自動的に導いてもよい。あるいは、画像404に示すように、骨切によって生成された2つの対象骨画像441、442を参照骨画像412の上下端に重ねた場合に、参照骨画像412からはみ出す体積(または表面同士の距離)の合計値が最小になるように、骨切面を決定してもよい。またあるいは、画像404に示すように、骨切によって生成された2つの対象骨画像441、442を参照骨画像412の上下端に重ねた場合に、対象骨画像441と対象骨画像442との分離骨同士に挟まれた間隙(欠損部位)443が最小となるように、骨切面を決定してもよい。いずれにせよ、手術対象骨421の軸方向に位置を単位距離(例えば1mm)ずつずらしつつ、あらゆる向きの平面を骨切面候補として、繰り返しシミュレートすることにより、最適な骨切面の位置および角度を求めることができる。例えば、橈骨であれば、骨軸に垂直をなす平面に対して60度〜−60度の間で5度刻み×360度5度刻みに、例えば300×24×72=約50万通りの平面が骨切面候補となる。
【0039】
このようにして骨切面画像431を決定すると、第4ステージにおいては、手術対象骨421を骨切面画像431で分離した2つの対象骨画像441、442の3次元データを生成し、記憶する。すなわち、重ね合わせた対象骨画像442と参照骨画像412とを1セットにして、ピン212に取り付けられるマーカ222と関連付けて記憶する。そして、画像404に示すように、対象骨画像442または参照骨画像412に対する対象骨画像441の目標位置を、ピン211に取り付けられるマーカ221の位置データと関連付けて、記憶する。これにより、実空間においてマーカ221の位置や傾きが認識できれば、目標とする対象骨画像441の位置や傾きが推定できる。
【0040】
さらに骨切面画像431の位置、形状、傾きのデータを、マーカ221またはマーカ222の位置データと関連付けて記憶する。ピン211に対するマーカの221の位置および向き、および、ピン212に対するマーカの位置および向きは、あらかじめ一つに定められていてもよいが、本実施形態では、複数(例えば4通り)から選べるものとする。第1のマーカ取り付けタイプは、2本のピンが形成するピン平面に対して、平行にマーカを取り付けるタイプである。第2のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に垂直をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。第3のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に45度をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。第4のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に135度をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。その他、ピンの軸方向に垂直な平面にマーカを取り付けてもよい。実際のピンにどのようにマーカを取り付けるかに応じて、そのマーカと表示すべき手術対象骨や参照骨との相対位置関係を変更すればよい。
【0041】
このように準備されたデータを使用することにより、手術時に撮像されるマーカの位置、大きさおよび向きに基づいた、対象骨画像441および参照骨画像412の表示、対象骨画像442の表示、および骨切面画像431の表示が可能となる。なおここで、対象骨画像441と対象骨画像442との間の間隙443は、手術時に必要な接合骨の形状を表わしている。したがって、この時点で、手術時に必要な接合骨の3次元形状も取得することができる。
【0042】
なお手術時に、健側から生成した参照骨画像412を用いずに、画像404において目標配置として決定された対象骨画像441、442の組合せを一体として用いて表示してもよい。その場合、対象骨画像441、442の両方を参照骨画像412と重ね合わせた状態での、第1、第2マーカ221、223の支持部材としてピン211、212の位置を、目標相対位置データとして記憶部に記憶すればよい。そして、記憶された目標相対位置データに基づいて第2マーカ222のピン212の目標位置を表示すればよい。
【0043】
また、本実施形態では、変形治癒した罹患骨(手術対象骨)の骨切矯正手術を例としているので骨切面の両側の対象骨を考慮したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、人工関節の移植手術の場合には、人工関節を取り付けるべき面を生成するための骨切面(例えば3つの面)を上述のようなAR技術を利用して表示することにより、正確な骨切を実現することができる。例えば、S、M、Lの3つのサイズの人工関節の3次元CGモデルを用意し、変形性の関節症を治癒する際、罹患骨をCTスキャンして、3次元仮想空間上で、手術対象骨の3Dデータに対して人工関節モデルを重ね合わせればよい。人工関節モデルの接着面と、マーカとの相対位置関係を記憶し、術中に接着面に合わせてブレードモデルをAR表示すればよい。人工関節の3Dモデルに骨切の面を指し示すブレードを貼り付けておいてもよい。この場合、マーカは1つでよい。なお、実際のブレードにマーカを付けてその位置を認識し、ブレードの目標位置への移動を指示してもよい。
【0044】
(術中画像処理システムの構成)
図5は、本実施形態に係る術中画像処理システム500の概略構成を示す図である。術中画像処理システム500は、情報処理装置としてのタブレット型コンピュータ501と、表示装置502と、を有する。タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511とカメラ512(デジタルカメラ)とを備えている。
【0045】
タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511が医師503の方を向き、かつ、カメラ512がマーカ221、222を向く位置に固定される。タブレット型コンピュータ501は、あらかじめ手術対象骨の3次元データを記憶しており、マーカ221、222の画像から手術対象骨の位置および方向を認識する。タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511において、認識した位置に、理想の骨切面の画像を表示する。これにより、医師503は、一目で骨切面を把握することができる。
【0046】
さらに、医師503が、患者322の前腕213を掴み、ねじったりのばしたりすると、それに伴いマーカ221、222の位置も変化するため、ディスプレイ511中の手術対象骨421も移動したり、回転したりする。そのように前腕213を動かして、ディスプレイ511中の対象骨画像442を参照骨画像412に重ね合わせることによって、手術対象骨の目標位置を確定する。確定した位置で、固定具231を用いてピン211、212を固定する。
【0047】
(術中対象骨位置決め処理)
図6Aは、術中における手術対象骨の骨切作業および位置決め作業の概要を説明する画面遷移図である。手術前に、ピン211、212にマーカ221、222を固定する。
【0048】
骨切ステージにおいては、画像621のように、ディスプレイ511に骨切面画像431を3次元表示させて、適正な位置で手術対象骨を切断する。画像621中、太線で示された部分は、カメラ512による撮像画像であり、細線で示され部分は、3次元データから生成されたCG画像である。
【0049】
医師は、骨切面画像431に合わせて骨切ブレードを患部に挿入し、変形治癒した罹患骨を分離する。次に、座標空間の画像622や、分割表示の画像623〜626を参照しつつ、患者の前腕を動かして、対象骨画像441を、対象骨画像442に対して操作する。画像621〜626では、撮影により得られたマーカ221、222の位置、大きさおよび方向に応じた位置、大きさおよび方向の対象骨画像441、442が表示される。
【0050】
画像622は、3次元空間のX軸/Y軸/Z軸と観察点の角度を表示しており、参照骨画像412と対象骨画像441、442との3次元空間での相対位置を抽出して表示するものであり、観察点を移動させて、対象骨画像441、442の画像を画面上で回すことができる。画像623〜626は、1画面に表示される分割表示画像であり、画像623は、画像621と同じ、撮像画像とCG画像との重ね合わせ画像である。画像624は、画像623からCG画像のみを抽出したものであり、ここではピンの付いた参照骨と対象骨とが表示されている。画像625は、カメラ512とは90度をなす、骨の軸方向から見た場合の参照骨画像412および対象骨画像441、442の画像である。画像626は、カメラ512とは90度をなすピン挿入方向から見た場合の参照骨画像412および対象骨画像441、442の画像である。つまり、画像624〜626は、3次元空間の3軸方向をそれぞれ観察点とする3つの表示画像である。医師はこれらの表示画面を観察しながら、対象骨画像441、442の適切な配置を決める。
【0051】
画像627は、対象骨画像441を参照骨画像412上に重ね合わせた状態を示している。この状態で、対象骨画像441、442に付けられたピン211、212を固定具で固定する。
【0052】
(術中骨切支援処理の概要)
図6Bは、本実施形態に係る術中の骨切支援処理の概要を説明する図である。
【0053】
表示画面601は、カメラ512により撮像された、手術対象骨である前腕橈骨を体内に有する患部(左手前腕部分)213と、分かれた手術対象骨にそれぞれ固定されたマーカ221および222と、を表示する。さらに、骨切のための切開部611と、骨切処理のため切開部611を開いた状態で保持する保持器具612と、を表示する。表示画面601は、撮像画像に重ね合わせて、マーカ221、222の位置、大きさおよび向きに基づいて、あらかじめ生成して記憶部に保存されていた、対象骨画像441、442が表示される。さらに、骨切支援のために、手術対象骨画像に重ね合わせて、あらかじめ選定されて記憶部に保存されていた骨切面画像431が、骨切位置に骨切角度で表示される。
【0054】
表示画面602は、患者の前腕あるいはカメラ位置を移動することにより、骨切面画像431を表示画面602の奥行方向に一致させた場合の画面である。表示画面602に表示された骨切面画像431に沿うように骨切器具628を骨に当てて、骨切りを行なえば、非常に正確な骨切を実現できる。
【0055】
(術前準備データ生成システムにおける情報処理装置の機能構成)
図7は、情報処理装置324の機能構成を示すブロック図である。なお、
図7においては、断層画像データとしてCTデータを示し、3次元骨表面モデルデータとしてSTLデータを示すが、これらに限定されない。情報処理装置324の各機能部は、CPUによりメモリを使用しながらプログラムを実行することにより画像データを処理することで実現される。
【0056】
CTデータ取得部711は、患者322の画像として、CTスキャナ321からのCTデータ(DICOM)を取得する。CTデータベース712は、CTデータ取得部711が取得したCTデータを検索可能に蓄積する。
【0057】
骨形状データ生成部713は、CTデータから3次元骨表面モデルデータとしてSTLデータを生成する。STLデータDB714は、骨形状データ生成部713が生成したSTLデータを検索可能に蓄積する。
【0058】
表示部/操作部715は、ディスプレイやタッチパネルなどで構成され、骨形状データ生成部713が生成したSTLデータに基づいて、骨画像を3次元表示する骨画像表示部として機能すると共に、医師の指示に従い骨画像の3次元移動(回転および移動)を行なう。本例においては、患者322の手術対象骨の画像と、健側骨の画像とが、同時に重ね合わせ可能に表示される。また、表示部/操作部715においては、手術対象骨の骨切位置情報を入力可能である。そして、手術対象骨を骨切位置で切断分離した複数の部分骨(第1対象骨/第2対象骨)がそれぞれ独立して3次元移動(回転および移動)表示可能である。参照骨データ生成部716は、健側骨の3次元データを左右反転することにより、参照骨データを生成する。
【0059】
3次元データ生成部717は、骨切位置情報に基づいて分離された第1対象骨と参照骨との3次元形状データを仮想3次元空間で重ね合わせ、3次元基準骨データを生成する。そして、生成した3次元基準骨データを、術前準備データDB719に格納する。また、3次元データ生成部718は、第2対象骨の3次元形状データを生成する。そして、生成した3次元形状データを、術前準備データDB719に格納する。なお、対象骨と参照骨との重ね合わせは、医師の操作に基づいて行なってもよいし、3次元データ生成部717、718が骨形状(特に、関節部の形状)に基づいて自動的に行なってもよい。術前準備データDB719は、3次元データ生成部717、718が生成した3次元データをSTLデータによって検索可能に蓄積する。かかる術前準備データDB719に蓄積したSTLデータは、術中画像処理システム500において使用される。
【0060】
(STLデータDB)
図8は、本実施形態に係るSTLデータDB714の構成を示す図である。STLデータDB714には、本実施形態における3次元骨表面モデルを表わすSTLデータが検索可能に蓄積されている。
【0061】
STLデータDB714は、画像ID801に対応付けて、CTデータ取得日時802、患者名803、患部804、症状805、CTデータ806を格納する。また、STLデータDB714は、CTデータ806から生成されたSTLデータ807と、外部でSTLデータが生成された場合はSTLデータ生成元808とを格納する。
【0062】
(3次元術前準備画像DB)
図9は、本実施形態に係る術前準備データDB719の構成を示す図である。術前準備データDB719には、本実施形態における3次元骨画像を表わすSTLデータが検索可能に蓄積されている。
【0063】
術前準備データDB719は、患者名901に対応付けて、患部902、症状903、第1マーカに関連付けられた3次元データ904、第2マーカに関連付けられた3次元データ905、を格納する。3次元データ904は、第1対象骨の3次元データと第1マーカ支持器具の3次元位置データと参照骨の3次元データとを含む。3次元データ905は、第2対象骨の3次元データと第2マーカ支持器具の3次元位置データとを含む。なお、3次元データ904および905は、表示骨画像が3次元空間で移動および回転が可能な形式で格納される。
【0064】
(外科手術支援システムの処理手順)
図10Aは、術前準備データ生成システム320と術中画像処理システム500とを含む外科手術支援システム全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
まず、術前準備データ生成システム320は、ステップS1001において、ピンを固定した手術対象骨の断層画像(例えば、CT画像)および健側骨の断層画像を取得して、それぞれの3次元データを生成する。
【0066】
次に、ステップS1003において、生成した3次元形状データを表示しつつ、骨切面画像431および骨切後の骨の適正配置を決定し、それらの位置データを記憶する。次に、術中画像処理システム500は、ステップS1005において、手術対象骨に固定したマーカを撮像する。
【0067】
そして、術中画像処理システム500は、ステップS1007において、患部撮像画像に重ねて、マーカの移動に従って変化する骨切面画像を生成して表示する。医師は、表示画面を見ながら骨切面画像に合わせてブレードを骨に当て、骨を切断する。さらに、第1対象骨および参照骨の骨画像と、第2対象骨の骨画像とを生成して、表示する。医師は、表示画面を見ながら前腕を動かす。
【0068】
術中画像処理システム500は、ステップS1009において、第2対象骨の骨画像が参照骨の骨画像に合致するように、前腕の2つの対象骨が配置されたことを確認する。合致していなければ、術中画像処理システム500は、ステップS605に戻って、合致する位置に対象骨が配置されるまで処理を継続する。
【0069】
(対象骨画像分離生成処理)
図10Bは、
図10Aの骨切面生成処理(S1003)の手順を示すフローチャートである。
【0070】
情報処理装置324は、ステップS1021において、術前準備データDB719から、手術対象骨および参照骨の3次元形状データを読み出し、画像表示処理を行なう。次に、ステップS1023において、骨切面を一時的に決定し、その骨切面によって分離した第1、第2対象骨の3次元形状データを生成する。ここでの骨切面の一時的な決定は、医師による位置の指示によって行なってもよいし、あるいは、システムが決定した、適当な位置(例えば端部から3cmの位置)でもよい。ここでさらに、医師によるポインティングデバイスなどを用いた骨切面の移動指示入力を待ってもよい。移動指示入力があれば、情報処理装置324は、移動操作に対応して骨切面の3次元データを3次元空間で移動させ、2次元変換して骨切面画像を表示する。
【0071】
つぎに、情報処理装置324は、ステップS1023において、骨切面の3次元データによって、対象骨を分離して、分離骨(第1、第2対象骨)の形状データを生成する。そして、各分離骨データと骨切面データとの一組のデータを記憶する。次に、ステップS1025において、2つに分かれた第1対象骨の骨切面とは逆の端部および第2対象骨の骨切面とは逆の端部を参照骨の両端部に重ね合わせる。このとき、位置のみではなく、角度、向きも参照骨に合わせる。ステップS1027では、その状態で、骨切面を評価する。骨切面の評価方法としては様々な方法があり、例えば以下のいずれか、あるいは複数の組合せを選ぶことができる。
(1)医師の視認による評価(2)両端の特徴点を重ねた上で、参照骨と対象骨の非重畳体積による評価(小さいほどよい)
(3)両端の特徴点を重ねた上で、表面間の鉛直方向距離の平均による評価(小さいほどよい)
(4)両端の特徴点を重ねた上で、参照骨からはみ出す対象骨の体積による評価(小さいほどよい)
(5)両端の特徴点を重ねた上で、対象骨と対象骨との間の間隙(欠損部位)と参照骨との重複体積による評価(小さいほどよい)
ステップS1027において、所定の閾値を満たす評価が得られた場合には、ステップS1029に進む。そのような評価が得られない場合にはステップS1021に戻り、骨切面の位置および傾きを設定し直す。そうして骨切面を順次変化させながら、評価値が所定の閾値を満たすまで繰り返し、適正な骨切面を見つける。例えば、上述したように、手術対象骨421の最下点から、軸方向に骨切位置を単位距離(例えば1mm)ずつ上方にずらしつつ、あらゆる向きの面を骨切面候補として、繰り返しシミュレートすれば、少なくとも最適な骨切面の位置および角度を求めることができる。例えば、橈骨であれば、骨軸に垂直をなす平面に対して60度〜−60度の間で5度刻み×360度5度刻みの面(例えば300×24×72=約50万通りの平面)を骨切面候補として、繰り返しシミュレートする。もちろん手術対象骨421の最上点から下方へと骨切面を変化させてもよい。あるいは、医師によって設定された範囲内で最適骨切面を見つけてもよい。
【0072】
ステップS1029では、決定した骨切面とマーカの取り付け情報(マーカが取り付けられるとあらかじめ定められた位置、角度、大きさ、マーカ種類)とを対応付けて、術前準備データDB719に登録する。
【0073】
《術中画像処理システムにおける情報処理装置の機能構成》
図11は、本実施形態に係る術中画像処理システム500におけるタブレット型コンピュータ501の機能構成を示すブロック図である。タブレット型コンピュータ501の各機能部は、不図示のCPUによりメモリを使用しながらプログラムを実行することにより実現される。なお、本実施形態ではタブレット型コンピュータ501を用いているが本発明はこれに限定されるものではなく、ディスプレイとカメラを備えた可搬性の情報処理端末であればよい。また、カメラや表示部/操作部が、情報処理装置と分離して、互いにデータ通信するものであってもよい。
【0074】
カメラ512は、手術室における患者322の患部を撮像する。カメラ512の撮像範囲には、患者322の前腕213の手術対象骨の2箇所に固定された、マーカ221、222が含まれる。マーカ解析部1111は、マーカDB1112を参照して、カメラ512が撮像したマーカの画像から、表示すべき画像の種類、およびその画像を表示すべき位置および向きを解析する。
【0075】
術前準備データ1119は、
図7に示した術前準備データDB719に格納されたデータと同じものである。例えば、
図7に示す情報処理装置324から通信によりタブレット型コンピュータ501に複製されてもよいし、記憶媒体を介してコピーしてもよい。さらには、タブレット型コンピュータ501から直接通信で情報処理装置324内の術前準備データDB719にアクセスすることにより取得してもよい。
【0076】
CG画像生成部1114は、マーカ解析部1111から取得したマーカの3次元位置および方向と、術前準備データ1119に含まれる対象骨および参照骨の3次元データなどに基づいて、表示するCG画像を生成する。CG画像生成部1114は、撮像された第1マーカの位置、大きさおよび向きに基づいて、第1対象骨の3次元データおよび参照骨の3次元データから、第1対象骨の骨画像および参照骨の骨画像を生成する第1骨画像生成手段として機能する。さらに、CG画像生成部1114は、撮像された第2マーカの位置、大きさおよび向きに基づいて、第2対象骨の3次元データから、第2対象骨の骨画像を生成する第2骨画像生成手段としても機能する。
【0077】
表示画像生成部1115は、カメラ512が撮像した患者322の前腕213の患部画像上に、CG画像生成部1114が生成した手術対象骨画像および参照骨画像を重ね合わせて、ディスプレイの表示画像データを生成する。この画像データを用いて、ディスプレイ511において、患部画像上に、対象骨画像および参照骨画像を同時に重ね合わせて表示する。また、観察点を移動した画像表示や複数の観察点からの画像同時表示が可能である。すなわち、表示画像生成部1115は、第2対象骨が参照骨に重なるような第1マーカおよび第2マーカの位置を探すため、第1対象骨の骨画像および参照骨の骨画像と、第2対象骨の骨画像とを表示する。表示画像生成部1115は、その表示において、第1マーカと第2マーカとの相対位置の変化に応じて第1対象骨の骨画像と第2対象骨の骨画像との相対位置が変化するように表示する。
【0078】
(マーカDB)
図12は、本実施形態に係るマーカDB1112の構成を示す図である。マーカDB1112は、マーカ解析部1111が、カメラ512が撮像した画像データからマーカの3次元の位置および向き(すなわち、2本で対のピンの位置および向き)を解析するために使用される。
【0079】
マーカDB1112は、マーカID1201に対応付けて、2次元コードのマトリクスデータ1202を記憶する。ここで、マトリクスデータ1202とは、例えば、白黒あるいは色を示す2値または多値ビットデータを2次元座標で配置したものであり、この座標値の変化により3次元位置および方向が認識可能である。なお、2次元コードはこれに限定されない。また、マーカDB1112は、マーカの形状1203と、マーカの大きさ1204とを記憶する。
【0080】
(マーカ解析テーブル)
図13は、マーカ解析部1111が用いるマーカ解析テーブル1301の構成を示す図である。マーカ解析テーブル1301は、カメラ512が撮像したマーカの画像から、マーカ上の2次元データや、マーカの位置、大きさおよび向き、あるいはマーカ支持器具の3次元データを求めて、対象骨画像や参照骨画像の3次元表示データ生成に使用するテーブルである。
【0081】
マーカ解析テーブル1301は、撮像画像から抽出したマーカの2次元コード枠1311と、マーカの2次元コードのマトリクスデータ1312と、マトリクスデータ1312から判別したマーカID1313とを記憶する。さらに、マーカの位置、大きさおよび向き1314と、マーカの位置、大きさおよび向き1314から算出したマーカの3次元位置および向き1315を記憶する。マーカの3次元位置および向き1315に応じて、ディスプレイに表示すべき対象骨の3次元データを表示する位置、大きさおよび向きを決定できる。
【0082】
(3次元データ生成テーブル)
図14、
図15は、CG画像生成部1114が用いる術中画像生成用テーブル1401、1501の構成を示す図である。術中画像生成用テーブル1401は、第1対象骨および参照骨ID1411に対応付けて、解析された第1マーカの3次元位置データ1412と、術前準備データDB719に記憶されている第1マーカの3次元位置データ1413とを記憶する。そして、第1マーカの3次元位置データ1413を、3次元位置データ1412に変換する変換ベクトルを用いて、術前準備データDB719に記憶されている第1対象骨の3次元データを座標変換する。その座標変換によって生成された、表示用の第1対象骨の3次元データ1414を記憶する。また、同じ変換ベクトルを用いて術前準備データDB719に記憶されている参照骨の3次元データを座標変換して、表示用の参照骨の3次元データ1415を生成し、記憶する。また、術中画像生成用テーブル1401は、第1対象骨および参照骨ID1411に対応付けて、骨切面の位置、形状、傾きなどを示す3次元データ1416を記憶する。
【0083】
術中画像生成用テーブル1501は、第2対象骨ID1511に対応付けて、解析された第2マーカの3次元位置データ1512と、術前準備データDB719に記憶されている第2マーカの3次元位置データ1513とを記憶する。そして、第2マーカの3次元位置データ1513を3次元位置データ1512に変換する変換ベクトルを用いて、術前準備データDB719に記憶されている第2対象骨の3次元データを座標変換する。そして、その座標変換によって生成された、表示用の第2対象骨の3次元データ1514を記憶する。
【0084】
《術中画像処理システムにおける情報処理装置の処理手順》
図16は、本実施形態に係るタブレット型コンピュータ501の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、タブレット型コンピュータ501のCPUがRAMを使用しながら術中画像生成プログラムとして実行し、
図11の機能構成部を実現する。
【0085】
タブレット型コンピュータ501は、ステップS1601において、患部領域(本例では、前腕部)を撮像して2つのマーカおよび患部画像の画像データを取得する。次に、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1603において、患部領域の画像データから2次元コードを含む枠を抽出する。なお、本例では、2次元コードを含む枠は矩形であるが、円や他の形状であっても構わない。そして、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1605において、枠内の2次元コードのマトリクスを取得する。
【0086】
タブレット型コンピュータ501は、ステップS1607において、取得した2次元コードのマトリクスと、マーカDB1112に格納された正面からの2次元コードとを対比してマーカを特定する。そして、タブレット型コンピュータ501は、マーカの位置、大きさおよび向きも考慮してマーカ座標系(3次元空間での位置および向き)を解析する。タブレット型コンピュータ501は、ステップS1609において、解析された各マーカの位置および向きに基づいて、第1対象骨に固定された第1マーカの3次元データおよび第2対象骨に固定された第2マーカの3次元データを算出する。タブレット型コンピュータ501は、ステップS1611において、術前準備データ1119として格納された3次元データに基づいて、骨切面の3次元データを算出する。そして、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1615において、患部撮像画像と、生成した骨切面の画像とを重ねて表示する。
【0087】
本実施形態によれば、骨切面の適切な配置を決定し、提示できるので、精度の高い手術ができる。手術時において、正確な手術対象骨の配置、正確な骨切位置の設定、必要な接合骨の作成、および確実な接骨処理を支援することが可能となる。
【0088】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態と比べると、欠損部位の形状を生成して、そのデータを蓄積する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。本実施形態によれば、欠損部位の3次元データに基づいて正確なインプラントを生成することが可能となる。
【0089】
図17は、本実施形態に係る情報処理装置1700の機能構成を示すブロック図である。
図17に示すように、欠損部位形状生成部1721が骨切面決定部720と同様に設けられ、3次元データ生成部718とデータのやりとりを行なう。欠損部位形状生成部1721は、骨切面決定部720が決定した骨切面で2つに分離した手術対象骨(第1、第2対象骨)のそれぞれを、参照骨の両端に重畳させた場合の間隙の形状(
図4の画像404における間隙443)を3次元形状データ化する。そして、その間隙の3次元形状データを欠損部位形状データとして、術前準備データDB719に格納する。
【0090】
図18は、本実施形態にかかる骨切面生成処理(S1003)の手順を示すフローチャートである。ステップS1801では、決定した骨切面のデータを用いて、上述したように欠損部位の形状データを生成し、術前準備データDB719に保存する。
【0091】
以上、本実施形態によれば、欠損部位の形状データを用いて、正確なインプラントを生成することが可能となる。
【0092】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態と比べると、骨切位置の候補を選定して報知する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態または第3実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0093】
《情報処理装置の機能構成》
図19は、本実施形態に係る情報処理装置1900の機能構成を示すブロック図である。なお、
図19において、
図7と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0094】
図19においては、骨切位置候補選定部1921が追加されている。骨切位置候補選定部1921は、適切な骨切面を少なくとも1つ表示して医師に骨切位置候補として提示する。
【0095】
なお、適切な骨切面の判定、評価は、上述したとおり骨切面決定部720で分離される対象骨と参照骨画像とを重畳した場合の、重畳の度合いや、欠損部位のサイズや形状などから判定される。重畳の度合いは、誤差の累積値や誤差の最大値の小さいもの、あるいは所定閾値以上の誤差の数が少ないもの、を一致の度合いが高いとする。さらに、骨の重要な部位、例えば、関節部の誤差に重みを持たせてもよい。
【0096】
また、上記例に加えて、手術対象骨の症状から骨切位置の範囲は限られていることを考慮して、あらかじめ医師が範囲を手動入力してもよい。また、骨切位置候補選定部1921が手術対象骨や症状の情報から自動的に範囲を限定してから、骨切位置候補の選定を開始してもよい。
【0097】
また、骨切位置候補選定部1921が選定した骨切位置候補を、医師が再度確認して、位置調整をしてもよい。あるいは、複数の骨切位置候補が選定された場合に、その骨切位置候補間を自動的に移動させて重ね合わせの状態を表示し、医師の観察に基づいて骨切位置を決定してもよい。
【0098】
《情報処理装置の処理手順》
図20は、本実施形態に係る情報処理装置1900の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図20において、
図8と同様のステップには同じステップ番号を付して、説明は省略する。
【0099】
情報処理装置1900は、ステップS2001において、手術対象骨やその症状に対応する骨切範囲内の骨切シミュレーションを行うことにより、最適条件(例えば欠損部位サイズの最小)を満たす骨切面候補を生成する。骨切面候補は1つのみではなく複数生成してもよい。次に、ステップS2003において、医師は、選定された骨切面候補から1つの骨切面を選択する。
【0100】
本実施形態によれば、より容易かつ正確に骨切面を決定することができる。
【0101】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る骨切支援システムについて説明する。本実施形態に係る骨切支援システムは、上記第2実施形態乃至第4実施形態と比べると、術前準備データ生成時に対象骨に実際のマーカを配置することなく、仮想的な3次元マーカを画面上で生成して、3次元プリンタにより作成する点で異なる。その他の構成および動作は、上記実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0102】
《骨切支援システムの概要》
図21Aおよび
図21Bを参照して、本実施形態の骨切支援システムの処理の概要を説明する。
【0103】
(術前準備データ生成処理)
図21Aは、本実施形態に係る情報処理装置を用いた術前準備データ生成処理の概要を説明する図である。なお、
図21Aにおいて、
図4と同様の表示画像あるいは表示要素には同じ参照番号を付す。なお、各画像は、表示画面に表示されるCG画像であり、それぞれ、術前準備データ生成処理の各ステージに対応している。
【0104】
第2ステージにおいて、画像2102に示すように、前腕213の手術対象骨をCTスキャンなどで内部撮影して生成した手術対象骨(罹患骨)の3次元データ(以降、手術対象骨と称す)421を表示する。手術対象骨421は、撮影されたSTLデータから生成されており、3次元データ上でプラニングされ描画された3次元マーカ2111、2112が仮想的に表示されている(
図21Aでは破線で表示されている)。そして、参照骨画像412と手術対象骨421とを表示画面上で対比させて、手術対象骨421の状態を確認する。
【0105】
第3ステージにおいては、3次元空間での観察点を手術対象骨に近づけた拡大表示画像2105や、異なる観察点からの複数の画像を同時に表示する分割表示画像406(ここでは、3方向からの画像)を参照しながら手術対象骨421を画像403上で操作する。すなわち、手術対象骨421を参照骨画像412に対して移動したり回転したりして、参照骨画像412の各端部と手術対象骨421の各端部とを重ね合わせる。
【0106】
骨切面が上端側にあると推定できる場合には、まず、左側のように、手術対象骨421と参照骨画像412との下端同士を重ねて、手術対象骨421の骨切面を決定する。特に、関節部(図中の下端または上端)の形状(特徴点)を重ねることにより、手術対象骨421の歪みや曲り、変形を認識した上で、下端から徐々に上方に向けて参照骨と対比していき、参照骨との離間が始まる分岐位置を骨切面画像431とする。ここでは、骨切面画像431を所定の形状および大きさを有する矩形の平面としているが、本発明はこれに限定されない。骨切の目的に応じて曲面を含む面でもよい。
【0107】
なお、医師が、参照骨画像412と手術対象骨421との重畳具合を見ながら骨切面画像431を評価、決定してもよいが、計算により最適骨切面を求めてもよい。例えば、下端を重ねた上で、手術対象骨421と参照骨画像412との軸方向単位長さあたりの非重畳体積を下端から順次算出し、その非重畳体積が所定値を越えない最も上の点を結んだ平面を骨切面画像431としてもよい。あるいは、参照骨画像412の表面を単位面積に細かく分け、その単位面積ごとに手術対象骨421の表面までの鉛直方向の距離が所定値を越えた位置をつなぐことにより骨切面画像431を自動的に導いてもよい。あるいは、画像2104に示すように、骨切によって生成された2つの対象骨画像441、442を参照骨画像412の上下端に重ねた場合に、参照骨画像412からはみ出す体積(または表面同士の距離)の合計値が最小になるように、骨切面を決定してもよい。またあるいは、画像2104に示すように、骨切によって生成された2つの対象骨画像441、442を参照骨画像412の上下端に重ねた場合に、対象骨画像441と対象骨画像442との分離骨同士に挟まれた間隙(欠損部位)443が最小となるように、骨切面を決定してもよい。いずれにせよ、手術対象骨421の軸方向に位置を単位距離(例えば1mm)ずつずらしつつ、あらゆる向きの平面を骨切面候補として、繰り返しシミュレートすることにより、最適な骨切面の位置および角度を求めることができる。例えば、橈骨であれば、骨軸に垂直をなす平面に対して60度〜−60度の間で5度刻み×360度5度刻みに、例えば300×24×72=約50万通りの平面が骨切面候補となる。
【0108】
このようにして骨切面画像431を決定すると、第4ステージにおいては、手術対象骨421を骨切面画像431で分離した2つの対象骨画像441、442の3次元データを生成し、記憶する。すなわち、重ね合わせた対象骨画像442と参照骨画像412とを1セットにして、仮想的に描画した3次元マーカ2112と関連付けて記憶する。そして、画像2104に示すように、対象骨画像442または参照骨画像412に対する対象骨画像441の目標位置を、仮想的に描画した3次元マーカ2111の位置データと関連付けて、記憶する。なお、仮想的に描画した3次元マーカ2111および2112のベースブロックは、表面が対象骨の特徴部位とマッチングするように設計される。したがって、3Dプリンタで制作した3次元マーカにおいて、仮想的に描画した3次元マーカ2111および2112のベースブロックの形状が再現できれば、3Dプリンタで制作した3次元マーカは対象骨の位置と向きとを正確に示すことができる。すなわち、実空間において3Dプリンタで制作された3次元マーカの位置や傾きが認識できれば、目標とする対象骨画像441の位置や傾きが推定できる。
【0109】
さらに骨切面画像431の位置、形状、傾きのデータを、描画した3次元マーカ2111または3次元マーカ2112の位置データと関連付けて記憶する。3次元マーカ2111に貼り付ける2次元マーカの位置および向き、および、3次元マーカ2112に貼り付ける2次元マーカの位置および向きは、あらかじめ定める。
【0110】
このように準備されたデータを使用することにより、手術時に対象骨に設置され撮像される3次元マーカの位置、大きさおよび向きに基づいた、対象骨画像441および参照骨画像412の表示、対象骨画像442の表示、および骨切面画像431の表示が可能となる。なおここで、対象骨画像441と対象骨画像442との間の間隙443は、手術時に必要な接合骨の形状を表わしている。したがって、この時点で、手術時に必要な接合骨の3次元形状も取得することができる。
【0111】
なお手術時に、健側から生成した参照骨画像412を用いずに、画像2104において目標配置として決定された対象骨画像441、442の組合せを一体として用いて表示してもよい。その場合、対象骨画像441、442の両方を参照骨画像412と重ね合わせた状態での、3次元マーカ2111、2112の位置を、目標相対位置データとして記憶部に記憶すればよい。
【0112】
また、本実施形態では、変形治癒した罹患骨(手術対象骨)の骨切矯正手術を例としているので骨切面の両側の対象骨を考慮したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、人工関節の移植手術の場合には、人工関節を取り付けるべき面を生成するための骨切面(例えば3つの面)を上述のようなAR技術を利用して表示することにより、正確な骨切を実現することができる。例えば、S、M、Lの3つのサイズの人工関節の3次元CGモデルを用意し、変形性の関節症を治癒する際、罹患骨をCTスキャンして、3次元仮想空間上で、手術対象骨の3Dデータに対して人工関節モデルを重ね合わせればよい。人工関節モデルの接着面と、3次元マーカとの相対位置関係を記憶し、術中に接着面に合わせてブレードモデルをAR表示すればよい。人工関節の3Dモデルに骨切の面を指し示すブレードを貼り付けておいてもよい。この場合、3次元マーカは1つでよい。なお、実際のブレードに3次元マーカを付けてその位置を認識し、ブレードの目標位置への移動を指示してもよい。
【0113】
(術中の骨切支援処理)
図21Bは、本発実施形態に係る術中の骨切支援処理の概要を説明する図である。なお、
図21Bにおいて、
図6Bと同様の要素には同じ参照番号を付す。
【0114】
表示画面2107は、カメラにより撮像された、手術対象骨である前腕橈骨を体内に有する患部(左手前腕部分)213と、術中に手術対象骨にそれぞれベースブロックを固定した3次元マーカ2121および2122と、を表示する。さらに、骨切のための切開部611と、骨切処理のため切開部611を開いた状態で保持する保持器具612と、を表示する。表示画面2107は、目視する患部に重ね合わせて、3次元マーカ2121、2122の位置、大きさおよび向きに基づいて、あらかじめ生成して記憶部に保存されていた、対象骨画像441、442が表示される。さらに、骨切支援のために、手術対象骨画像に重ね合わせて、あらかじめ選定されて記憶部に保存されていた骨切面画像431が、骨切位置に骨切する角度で表示される。
【0115】
表示画面2108は、患者の前腕あるいはカメラ位置を移動することにより、骨切面画像431を表示画面2107の奥行方向に一致させた場合の画面である。表示画面2108に表示された骨切面画像431に沿うように骨切器具628を骨に当てて、骨切りを行なえば、非常に正確な骨切を実現できる。
【0116】
《骨切支援システムの処理手順》
図22は、本実施形態に係る術前準備データ生成システムと術中画像処理システムとを含む骨切支援システム全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0117】
骨切支援システムは、ステップS2201において、患者の患部のCT撮影を行なう。骨切支援システムは、ステップS2203において、例えばSTLデータなどのより3次元モデル化を行なう。骨切支援システムは、ステップS2205において、3次元データを表示しながら、術前のプラニングを行なう。例えば、3次元マーカを画面上で生成して、3次元マーカを制作するデータを生成する。また、3次元マーカと手術対象骨、また、術中に必要な処置に必要な骨切り面、骨孔、インプラント、などとの3次元座標における関連付けを行なう。骨切支援システムは、ステップS2207において、3次元マーカのデータに基づいて、対象骨とマッチングするベースブロックを有する3次元マーカを3Dプリンタで制作する。
【0118】
骨切支援システムは、ステップS2209において、術中アプリケーションの処理プログラム、および、上記3次元マーカと関連付けられた各データを入力する。そして、骨切支援システムは、ステップS2211において、術中アプリケーションの処理プログラム、および、上記3次元マーカと関連付けられた各データに基づいて、骨切支援を実行する。
【0119】
《術前準備データ生成システムの機能構成》
図23は、本実施形態に係る術前準備データ生成システム2300の機能構成を示す図である。なお、
図23において、
図7と同様な機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0120】
図23のように、CT321における患部撮影時には、患者322にはマーカが設置されていない。骨画像データ生成部2311は、
図7の参照骨データ生成部716および3次元データ生成部717、718を含む機能構成部である。3次元マーカデータ生成部2312は、表示部/操作部2315に入力された3次元マーカ情報に基づいて生成した3次元マーカの3次元データを生成する。骨切り面データ生成部2313は、表示部/操作部2315に入力された骨切位置情報に基づいて生成した骨切り面の3次元データを生成する。なお、あらかじめ用意された骨切り面を使用する場合には、あらかじめSTLデータDB714に格納されていてもよい。術前準備データDB2319は、
図7の術前準備データDB719のデータに加えて、3次元マーカの3次元データを格納し、3次元マーカの3次元データに関連付けて、手術対象骨や骨切り面、などの3次元データを格納する。
【0121】
3Dプリンタ2320は、3次元マーカの3次元データから生成された3Dプリンタ用データに基づいて、3次元マーカを制作する。
【0122】
(術前準備データDB)
図24は、本実施形態に係る術前準備データDB2319の構成を示す図である。
図24は、本実施形態に特有の術式でプラニングされる準備データの構成を示している。なお、
図24には、
図9に図示した構成も含まれる。
【0123】
術前準備データDB2319は、患者名2401に対応付けて、患部2402と、術式2403とを記憶する。本例では、患部は右腕、術式は橈骨遠位部変形治癒である。そして、患部2402と術式2403とに必要なプラニング項目2404と、それに必要な3次元データを3次元マーカと関連付けて記憶する。本例では、3Dプリンタ2420で制作される3次元マーカの3次元データと、それに対応する骨切り面の3次元データを記憶する。
【0124】
《骨切面生成処理の手順》
図25は、本実施形態に係る骨切面生成処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、情報処理装置2310のCPUがRAMを使用しながら実行して、
図23の機能構成部を実現する。
【0125】
情報処理装置2310は、ステップS2501において、患者の対象骨と必要であれば健側骨のCT画像を取得する。情報処理装置2310は、ステップS2503において、CT画像データからSTLデータを生成する。外部にSTLデータの生成を依頼する場合は、STLデータを取得する。
【0126】
情報処理装置2310は、ステップS2507において、骨切り面の位置情報、3次元マーカ形状および設置位置情報、を取得する。情報処理装置2310は、ステップS2509において、骨切り面の3次元データ、3次元マーカデータ、などをSTL骨の3次元データに対応付けて生成する。そして、情報処理装置2310は、ステップS2511において、生成した各3次元データを関連付けて術前準備データDB2319に格納する。また、情報処理装置2310は、ステップS2513において、3Dプリンタ用の3次元マーカデータを出力する。
【0127】
《術中画像処理システムの機能構成》
図26は、本実施形態に係る術中画像処理システム2600におけるタブレット型コンピュータ2610の機能構成を示すブロック図である。
図26において、
図3、
図5または
図11と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0128】
術前準備データDB2319は、
図23に術前準備データ生成システム2300で生成された同じ準備データを格納する。CG画像生成部2614は、術前準備データDB2319から手術対象骨や骨切り面、などの3次元データを、マーカ解析部1111からの3次元マーカの位置と向きに対応して3次元座標変換して、目視の手術部位に重ね合わせるCG画像を生成する。表示画像生成部2615は、CG画像生成部2614が生成した画像を、ディスプレイ511や外部モニタ2620、あるいは、HMD2630に表示する表示画像に変換する。なお、本実施形態では、オプティカルシースルーのHMDを使用することが望ましい。
【0129】
なお、術中画像処理システム2600におけるタブレット型コンピュータ2610の処理手順は、マーカが、3Dプロンタ2320で作成され、術中の各対象骨に設置された3次元マーカに変わるのみで、
図16の処理手順と類似であるので、図示および説明は省略する。
【0130】
本実施形態によれば、術中は、3Dプリンタで制作した3次元マーカを骨の形状にマッチングするよう設置することで、術前および術中においても、患者の手術対象骨に孔を開けてマーカを設置することなしに、骨切りを支援ことができる。
【0131】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る骨切支援システムについて説明する。本実施形態に係る骨切支援システムは、上記第2実施形態乃至第5実施形態と比べると、マーカとして対象骨の外科手術を行なう部位表面の3次元データを使用して、術中画像処理においては深度センサにより対象骨の3次元データを取得して骨切りを支援する点で異なる。その他の構成および動作は、上記実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0132】
なお、本実施形態における術前準備データは、手術対象骨の3次元表面画像をマーカとして使用するため別途のマーカ情報を含まない以外は、上記実施形態と類似であるので、説明を省略する。また、以下の実施形態においては、HMDと深度センサとが一体の場合を説明するが、HMDと深度センサとが離れている場合には、位置センサ(GPSなど)や深度センサにマーカを付して位置判定する必要がある。
【0133】
《術中画像処理システムの機能構成》
図27は、本実施形態に係る術中画像処理システム2700の機能構成を示すブロック図である。術中画像処理システム2700は、深度センサ&HMD2720と情報処理装置2710とを備える。
【0134】
深度センサ&HMD2720は、深度センサとオプティカルシースルーのHMDとを備える。なお、深度センサとHMDとは別であってもよいが、一体であるのが望ましい。深度センサは赤外線プロジェクタ2721と赤外線カメラ2722とで構成され、術中に手術部位の深度画像(距離画像)を取得する。距離画像は、表面の3次元画像と等価である。両眼式HMDの表示部2723(右目部2723a/左目部2723b)には、目視する患者322の患部に3次元位置を重ね合わせて、3次元の骨切り面431が表示される。
【0135】
情報処理装置2710の通信部2711は、深度センサ&HMD2720の深度センサおよびHMDとのデータの送受信を制御する。深度センザ画像受信部2712は、深度画像(距離画像)を受信する。骨表面画像照合部2913は、深度画像(距離画像)をマーカとして、術前準備データ719の対象骨画像の特徴的な表面画像と照合する。そして、CG画像生成部1714は、骨表面画像照合部2713から得た骨表面の照合に必要な位置および向きの変化に対応して、術前準備データ719の3次元データを3次元座標変換して、CG画像を生成する。なお、本実施形態の術前準備データ719は、別途のマーカを必要としないので、
図7において、マーカ位置データを有しないか、手術対象骨の手術部位の特徴的な表面形状の詳細な3次元データをマーカ位置データとして格納する。
【0136】
目座標系推定部2715は、深度センサ画像データからHMDを装着した医師の視線や視野に基づく目座標系を推定する。右眼用HMD表示データ生成部2716は、目座標系推定部2715からの目座標系情報を参照して、3次元カメラ座標系の表示画像データを2次元HMDスクリーン座標系の右眼用表示データに変換する。また、左眼用HMD表示データ生成部2717は、目座標系推定部2715からの目座標系情報を参照して、3次元カメラ座標系の表示画像データを2次元HMDスクリーン座標系の左眼用表示データに変換する。変換した2次元HMDスクリーン座標系の表示データは、3次元対象骨画像および参照骨画像がHMDの表示部2723を透過する患部の前腕213と重なるように、表示位置が調整されている。また、観察点を移動した画像表示や複数の観察点からの画像同時表示が可能である。なお、観察点の移動による画像表示の変換は座標系の変換により可能であり、詳細な説明は省略する。画像送信部2718は、2次元HMDスクリーン座標系の表示画像データを、通信部1271を介してのHMDの表示部2723に送信する。
【0137】
深度センサ&HMD2920の表示部2923は、右目用HMD表示データ生成部2016からの表示画像を右目画面2923aに表示し、左目用HMD表示データ生成部2017からの表示画像を右目画面2923bに表示する。
【0138】
このように、本実施形態においては、手術対象骨の表面の3次元画像をマーカとして使用することにより、上記実施形態のように別途にマーカを作成することなしに、手術を支援することができる。
【0139】
(骨表面画像照合部のデータテーブル)
図28は、本実施形態に係る骨表面画像照合部2713において使用されるデータテーブル2800を示す図である。データテーブル2800は、深度センサが患者の患部の手術対象骨の表面から取得した深度画像(距離画像)と、術前準備データ719として格納された手術対象骨とを照合して、現在の手術対象骨の位置と向きとを決定する。
データテーブル2800は、深度センサが取得した深度センサ画像2801に対応付けて、照合した3次元骨データ2802と、照合結果から決定された対象骨の実空間位置と向き2803と、を記憶する。そして、データテーブル2800は、対象骨の実空間位置と向き2803に対応して、3次元座標変換した、3次元骨データ2804と、骨切り面や、各器具の位置と向き、などの3次元データ2805と、を記憶する。
【0140】
本実施形態によれば、手術対象骨の表面の3次元画像をマーカとして使用することにより、上記実施形態のように別途にマーカを作成することなしに、骨切りを支援することができる。
【0141】
[他の実施形態]
なお、本実施形態においては、術中の骨切りの支援を中心に説明したが、例えば、他の骨孔開けの支援、骨を所定表面形状とするために削る処理の支援、インプラントへの置換が必要な術式のインプラント配置支援、などの特に器具の操作が必要な処理の支援に適用され、同様な効果を奏する。
【0142】
また、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0143】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する画像処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされる制御プログラム、あるいはその制御プログラムを格納した媒体、その制御プログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させる制御プログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
【0144】
この出願は、2013年6月11日に出願された日本国特許出願 特願2013−123210号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。