特許第6122541号(P6122541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 伸和コントロールズ株式会社の特許一覧

特許6122541流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6122541
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/26 20060101AFI20170417BHJP
   F16K 5/04 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F16K3/26 A
   F16K5/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-226423(P2016-226423)
(22)【出願日】2016年11月22日
【審査請求日】2017年1月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平岡 克通
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−66375(JP,U)
【文献】 実開昭59−63265(JP,U)
【文献】 実開平1−126486(JP,U)
【文献】 特開2008−64404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00− 3/36
F16K 5/00− 5/22
H01L 23/34−23/46
F24H 1/00
F24H 1/18− 1/20
F24H 4/00− 4/06
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の空所からなる弁座を有し、前記弁座の軸方向に沿った一端部に流体が流通する第1の弁口と前記弁座の周面に前記流体が流通する断面矩形状の第2の弁口が形成された弁本体と、
前記弁本体の前記弁座内に回転自在に配置され、前記第2の弁口の開口面積を直線状に変化させるよう予め定められた中心角を有する半円筒形状の開口部を有する円筒形状に形成された弁体弁体と、
前記弁体を回転駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする流量制御用二方弁。
【請求項2】
前記弁体は、外周面が開口されて予め定められた中心角を有する半円筒形状に形成された半円筒部を有し、軸方向に沿った一端面が閉塞され他端面が開口された円筒体からなることを特徴とする請求項1に記載の流量制御用二方弁。
【請求項3】
混合比が調整された低温側流体及び高温側流体からなる温度制御用流体が流れる温度制御用流路を有する温度制御手段と、
低温側の予め定められた第1の温度に調整された前記低温側流体を供給する第1の供給手段と、
高温側の予め定められた第2の温度に調整された前記高温側流体を供給する第2の供給手段と、
前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体と前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体を混合して温度制御用流路に流す混合部と、
前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体の流量を制御する第1の流量制御弁と、
前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体の流量を制御する第2の流量制御弁と、
を備え、
前記第1及び第2の流量制御弁として請求項1又は2に記載の流量制御用二方弁を用いたことを特徴とする温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流量制御用二方弁に関連する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、一端が開放した筒状の弁体を本体内に回転可能に設けて該弁体の開放端を流入部とし、前記本体の周壁に複数の流出部を設け、更に前記弁体に前記流出部に整合して流路を開く連通孔を開設してなる切換弁において、前記連通孔を含む前記弁体の周壁に前記本体の内周壁よりも小さくなるように弾性素材のシール材を一体化し、且つ前記連通孔の開口縁に対応する部分の前記シール材に、前記本体の内周壁方向へ突き出る突条を設けるように構成したものである。
【0004】
特許文献2は、円筒状の弁体収容空間、及び、前記弁体収容空間に半径方向に連通する複数の連通口を具備するバルブボディと、前記バルブボディの複数の連通口にそれぞれ連通可能な複数の弁口を具備し、前記バルブボディの弁体収容空間に収容された状態で駆動手段により回動され、前記バルブボディの複数の連通口と複数の弁口とがそれぞれ連通、または、非連通のいずれかに切り替えられる円筒状の弁体と、流体流入口及び流体流出口を具備し、前記バルブボディを収容するケースとを備え、前記バルブボディの外周面とケースの内周面との間には全周にわたり均圧通路が形成され、前記均圧通路は前記流体流入口又は流体流出口と連通しており、バルブボディの複数の連通口と複数の弁口とがそれぞれ連通した状態では、流体が流体流入口から流体流出口に流れ、バルブボディの複数の連通口と複数の弁口とがそれぞれ非連通の状態では、流体の圧力がバルブボディの複数の連通口を介して弁体の外周面に作用するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−6567号公報
【特許文献2】特開2012−36925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、流出部に整合して流路を開く連通孔を弁体に単に開設してなる切換弁に比較して、流体の流量を直線状に精度良く制御することが可能な流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、円柱形状の空所からなる弁座を有し、前記弁座の軸方向に沿った一端部に流体が流通する第1の弁口と前記弁座の周面に前記流体が流通する断面矩形状の第2の弁口が形成された弁本体と、
前記弁本体の前記弁座内に回転自在に配置され、前記第2の弁口の開口面積を直線状に変化させるよう予め定められた中心角を有する半円筒形状の開口部を有する円筒形状に形成された弁体弁体と、
前記弁体を回転駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする流量制御用二方弁である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記弁体は、外周面が開口されて予め定められた中心角を有する半円筒形状に形成された半円筒部を有し、軸方向に沿った一端面が閉塞され他端面が開口された円筒体からなることを特徴とする請求項1に記載の流量制御用二方弁である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、混合比が調整された低温側流体及び高温側流体からなる温度制御用流体が流れる温度制御用流路を有する温度制御手段と、
低温側の予め定められた第1の温度に調整された前記低温側流体を供給する第1の供給手段と、
高温側の予め定められた第2の温度に調整された前記高温側流体を供給する第2の供給手段と、
前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体と前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体を混合して温度制御用流路に流す混合部と、
前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体の流量を制御する第1の流量制御弁と、
前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体の流量を制御する第2の流量制御弁と、
を備え、
前記第1及び第2の流量制御弁として請求項1又は2に記載の流量制御用二方弁を用いたことを特徴とする温度制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流出部に整合して流路を開く連通孔を弁体に単に開設してなる切換弁に比較して、流体の流量を直線状に精度良く制御することが可能な流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁の一例としての二方弁型モータバルブをそれぞれ示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁の一例としての二方弁型モータバルブを示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁の一例としての二方弁型モータバルブの要部を示す構成図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁の一例としての二方弁型モータバルブを示す要部の断面斜視図である。
図5】弁軸を示す構成図である。
図6】弁作動部を示す断面構成図である。
図7】アクチュエータ部を示す構成図である。
図8】角度センサを示す構成図である。
図9】回転軸と角度センサの取付構造を示す分解構成図である。
図10】回転軸と角度センサの取付構造を示す構成図である。
図11】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の制御回路を示すブロック図である。
図12】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の制御回路を示すブロック図である。
図13】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示す説明図である。
図14】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図16】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図18】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すフローチャートである。
図19】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示す構成図である。
図20】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示す構成図である。
図21】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すフローチャートである。
図22】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図23】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すブロック図である。
図24】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図25】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すブロック図である。
図26】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図27】本発明の実施の形態1に係る流量制御弁の動作を示すグラフである。
図28】実験例1の結果を示すグラフである。
図29】本発明の実施の形態1に係る温度制御装置を示す構成図である。
図30】本発明の実施の形態1に係る温度制御装置を示すブロック図である。
図31】実験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
[実施の形態1]
図1(a)(b)(c)は本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁の一例としての二方弁型モータバルブを示す正面図、右側面図及び底面図、図2図1(a)のA−A線断面図、図3(a)(b)は同二方弁型モータバルブを示す要部の平面図及び一部破断の正面図である。
【0014】
二方弁型モータバルブ1は、回転型2方向弁として構成されている。二方弁型モータバルブ1は、図1に示すように、大別して、下部に配置されたバルブ部2と、上部に配置されたアクチュエータ部3と、バルブ部2とアクチュエータ部3の間に配置されたシール部4及びカップリング部5とから構成されている。
【0015】
バルブ部2は、図1乃至図3に示すように、SUS等の金属により略直方体状に形成されたバルブ本体6を備えている。バルブ本体6の底面には、流体を流通(流入)させる図示しない配管を接続するための流入口7と、円柱形状の空所からなる弁座8に連通した第1の弁口9がそれぞれ開口されている。第1の弁口9は、弁座8より直径が小さい断面円形状に形成されている。流入口7の内周は、例えば、その口径が直径約24mmのテーパー付き雌ネジであるRc3/4に設定されている。
【0016】
バルブ本体6には、その一方の側面(図示例では、正面)に流体を流出させる図示しない配管を接続するための断面円形状の流出口10と、円柱形状の空所からなる弁座8に連通した第2の弁口11がそれぞれ開口されている。第2の弁口11は、流出口10に略内接する断面矩形(図示例では断面正方形)状に形成されている。第2の弁口11は、円柱形状の空所からなる弁座8に貫通するように形成されている。弁座8の周面には、図4に示すように、投影形状が正方形状であって且つ円弧状に湾曲した形状に第2の弁口11が開口されている。流出口10の内周は、例えば、その口径が直径約24mmのテーパー付き雌ネジであるRc3/4に設定されている。
【0017】
ここで、流体としては、水、腐食液、薬液などの液体や気体を挙げることができる。流体は、例えば、温度制御用に使用される相対的に温度が低い低温側流体や、相対的に温度が高い高温側流体などとして使用される。低温側流体及び高温側流体は、相対的なものを意味し、絶対的に温度が低い低温の流体及び絶対的に温度が高い高温の流体を意味するものではない。低温側流体及び高温側流体としては、例えば、圧力が0〜1MPa、0〜80℃程度の温度範囲において0〜30℃程度の温度に調整された水(純水など)、及び50〜80℃程度の温度に調整された水(純水)などが好適に使用される。また、低温側流体及び高温側流体としては、例えば、−20〜+80℃程度の温度範囲において、−20℃程度の温度においても凍結せず、+80℃程度においても気化しないフロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、エチレングリコール等の流体が使用される。
【0018】
バルブ本体6の中央には、図2及び図4に示すように、上記の如く縦方向に沿って円柱形状に形成された空所からなる弁座8を備えている。弁座8は、バルブ本体6の上端面に貫通した状態で設けられている。バルブ本体6に設けられる第1の弁口7及び第2の弁口11は、円柱形状に形成された弁座8の中心軸(回転軸)Cに対して直交するよう配置されている。更に説明すると、第1の弁口7は、円柱形状に形成された弁座8の底部に中心軸Cに対して断面円形状に開口されている。一方、第2の弁口11は、円柱形状に形成された弁座8の周面に中心軸Cに対して直交するように開口されている。
【0019】
また、第2の弁口11は、図1(a)に示すように、断面正方形状等の断面矩形状に形成された開口部からなる。第2の弁口11は、その一辺の長さが流出口10の直径より小さく設定されており、当該流出口11に略内接する断面矩形状を成している。
【0020】
弁体の一例としての弁軸12は、図5に示すように、SUS等の金属により外形が略円柱形状に形成されている。弁軸12は、大別して、弁体として機能する弁体部13と、当該弁体部13の下端に設けられて弁軸12を回転自在に支持する軸支部14と、弁体部13の上部に設けられたシール部15と、シール部15の上部にテーパー部16を介して設けられたカップリング部17とを一体的に備えている。
【0021】
軸支部14は、弁体部13より外径が小さく設定された薄肉の円筒形状に形成されている。軸支部14は、図2に示すように、バルブ本体6に設けられた弁座8の下端部(底部)にPTFE等からなるベアリング18を介して回転自在に支持されている。弁座8の下部には、ベアリング18を支持する環状の支持部19が内周へ向けて突出するよう設けられている。支持部19の内周には、上述したように、第1の弁口9が断面円形状に開口されている。軸支部14の内径は、ベアリング18の内径より小さく設定に設定されており、流入口7から流入した流体は、下端面がテーパ状に形成された支持部19を介して流動抵抗を殆ど生じることなく弁軸12の内部に流入するよう構成されている。弁体部13の上端面には、PTFE等からなるスラストワッシャー20が装着されており、弁軸12が後述するシール筐体28に押圧されることで発生する負荷を低減させている。
【0022】
また、弁体部13は、図2及び図5(b)に示すように、第2の弁口11の開口高H1(図3参照)より大幅に高さが低い開口高H2を有する半円筒形状の開口部21が設けられた円筒形状に形成されている。弁体部13の開口部21が設けられた弁動作部22は、図6に示すように、予め定められた中心角α(例えば、180度)を有する半円筒形状(円筒形状の部分のうち、開口部21を除いた略半円筒形状)に形成されている。弁動作部22は、図2に示すように、開口部21の上下に位置する円筒形状の弁体部13を含めて第2の弁口11を閉状態から開状態或いは開状態から閉状態に切り替えるよう弁座8内に且つ弁座8の内周面に金属同士の齧りを防止するため微小な間隙を介して非接触状態となるよう回転自在に配置されている。開口部21は、第2の弁口11に対して上下方向に沿った中央に位置している。弁動作部22の上部に配置された弁軸部23は、弁動作部22と同一の外径を有する円筒形状に形成されており、弁座8の内周面に微小な間隙を介して非接触状態にて回転自在となっている。弁動作部22の内部には、円柱形状の空所24が下端部に向けて貫通した状態で設けられている。また、空所24の天井部には、弁軸12のトルク測定(検査)を行うための2つの小孔25,26が中心線Cに対して対称に形成されている。
【0023】
第2の弁口11は、図6に示すように、弁座8の内周面に対して所定の開口位置及び開口寸法となるように形成されている。これに対して、弁動作部22の開口部21は、例えば、180度の中心角αを成すように設定されている。弁動作部22の開口部21は、第2の弁口11を全閉状態から全開状態に開閉自在なものであれば良く、開口部21の中心角αを第2の弁口11に対応して90度に設定しても良い。また、弁動作部22の開口部21の開口高H2は、二方弁型モータバルブ1の流量係数(Cv)を決定する一つのパラメータであり、流量係数(Cv)を大きく設定するためには、例えば、第2の弁口11と等しい高さH1に設定しても良い。
【0024】
また、弁動作部22は、開口部21の周方向(回転方向)に沿った両端面21a,21bがその中心軸Cと交差する(直交する)方向に沿った断面形状が平面形状に形成されている。開口部21の両端面21a,21bは、弁軸12の半径方向に沿って配置されている。なお、弁動作部22は、開口部21の周方向に沿った両端面21a,21bの回転軸Cと交差する断面形状が平面形状に限定されるものではなく、円弧形状等の曲面形状に形成しても良い。
【0025】
弁動作部22の開口部21の周方向に沿った両端部21a,21bは、図6に示すように、弁軸12が回転駆動されて第2の弁口11を開閉する際に、流体の流れの中において、第2の弁口11の周方向に沿った端部から突出する又は退避するように移動(回転)することで第2の弁口11を開状態から閉状態あるいは閉状態から開状態へと移行させる。このとき、弁動作部22の開口部21の周方向に沿った両端面21a,21b(主として21a)は、弁軸12の回転角度に対する第2の弁口11の開口面積をリニア(直線状)に変化させるものである。
【0026】
シール部4は、図2及び図4に示すように、弁軸12を液密状態に密封するものである。シール部4は、SUS等の金属によって弁軸12を挿通する挿通孔27を有する円筒形状に形成されたシール筐体28を有している。シール筐体28は、バルブ本体6の上端面に設けられた円柱形状の凹部29にシール剤を塗布した状態で挿入固定されるか、外周に設けられた図示しない雄ネジ部により凹部29に螺着される等の手段によりバルブ本体6に密封された状態で装着される。シール筐体28は、バルブ本体6との間がEPDM製のOリング30により密封されている。シール筐体28の内周面には、弁軸12を密封する2つの環状のシール部材31,32が上下に配置されている。シール部材31としては、例えば、耐熱性、耐油性、耐候性に優れた水素化されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム(H−NBR)製のXリングやOリングが用いられる。また、シール部材32としては、例えば、EPDM製のOリングが用いられる。シール部材32は、ブッシュ33によりシール筐体28に固定されている。シール筐体28は、図3(b)に示すように、後述するアダプタプレート36の凹部に平行ピン34により位置を合わせて装着されている。
【0027】
カップリング部5は、図2に示すように、シール部4が内蔵されたバルブ本体6とアクチュエータ部3との間に配置されている。カップリング部5は、弁軸12と当該弁軸12を一体に回転させる回転軸35とを連結するためのものである。カップリング部5は、シール部4とアクチュエータ部3の間に配置されたアダプタプレート36と、アダプタプレート36の内部に貫通状態で形成された円柱形状の空間37に収容され、弁軸12と回転軸35とを連結するカップリング部材38とから構成されている。アダプタプレート36は、図3(a)に示すように、AL合金やSUS等の金属により前面側(図中下側)が平面半円形且つ背面側(図中上側)が平面台形の厚板状に形成されている。アダプタプレート36は、4本の六角孔付きボルト39により弁本体6に固定した状態で取り付けられている。
【0028】
カップリング部材38は、図2に示すように、SUS等の金属により円筒形状に形成されたものである。弁軸12の上端には、水平方向に沿って貫通するように凹溝40(図4参照)が設けられている。そして、弁軸12は、カップリング部材38に中心軸Cと直交する方向に貫通するよう設けられた連結ピン41により凹溝40を介して当該カップリング部材38に連結固定されている。一方、回転軸35の下端部は、カップリング部材38及び回転軸35に貫通するように設けられた連結ピン42により当該カップリング部材38に連結固定されている。アダプタプレート36は、シール部材31,32から液体が漏洩した際、挿通孔37を通じて漏洩した液体を検知するための開口部43を側面に有している。開口部43は、例えば、その口径が直径約10mmのテーパー付き雌ネジであるRc1/8に設定されている。
【0029】
なお、図1中、符号44は電源及びアラーム側のケーブルを、45はアナログ側のケーブルをそれぞれ示している。これら電源及びアラーム側のケーブル44とアナログ側のケーブル45は、二方弁型モータバルブ1を制御する後述する制御装置84にそれぞれ接続される。
【0030】
アクチュエータ部3は、図2に示すように、上端面が全面にわたり開口した平面矩形の高さが相対的に低い箱体状に形成された筐体46と、下端面が筐体46と同一形状に開口した平面矩形の高さが相対的に高い箱体状に形成された蓋体47とを備えている。アクチュエータ部3の筐体46は、SUS等の金属からなり、図3に示すように、2本の六角孔付きボルト48によりカップリング部5のアダプタプレート36に固定した状態で取り付けられている。アクチュエータ部3の筐体46には、当該筐体46の底壁50に一体的に設けられた軸受部51及び軸受部材52を介して回転軸35の下端部が回転自在に保持されている。回転軸35は、アダプタプレート36を介してバルブ本体6に筐体46を取り付ける際に基準となる当該筐体46の底面54に対して直交するよう配置されている。
【0031】
アクチュエータ部3の筐体46には、その上端の開口部に位置するように第1の取付用基板53が設けられている。第1の取付用基板53の表面は、基準面を構成している。なお、基準面は、第1の取付用基板53の表面から構成せず、筐体46の開口部の内周に設けられたフランジ部等から構成しても良い。第1の取付用基板53は、筐体46の底壁50又は筐体46の開口部に設けられた図示しないフランジ部に図示しないネジ止め等の手段で固定されている。また、第1の取付用基板53は、筐体46の外側の底面54に平行に配置されている。第1の取付用基板53には、回転軸35が軸受部材55を介して回転自在に支持されている。その結果、第1の取付用基板53は、回転軸35に対して直交するように配置されている。回転軸35には、その軸方向に沿った中間位置に外径が僅かに大きく形成されたフランジ部56が設けられている。フランジ部56は、軸受部材55の下端面に接触している。
【0032】
第1の取付用基板53には、回転軸35を回転駆動する駆動手段の一例としての駆動モータ57が取り付けられている。駆動モータ57としては、ステッピングモータを使用することが好ましい。また、筐体46の底壁50と第1の取付用基板53との間には、駆動モータ57の回転駆動力を減速するとともにトルクを増加させて回転軸35に伝達する減速機58が配設されている。減速機58は、図7に示すように、駆動モータ57の出力軸に固定された出力ギア59と、出力ギア59と噛み合う第1の減速ギア60と、第1の減速ギア60と同軸に設けられた第2の減速ギア61と、第2の減速ギア61と噛み合う直径の大きな第3の減速ギア62と、第3の減速ギア62と同軸に設けられた直径の小さな第4の減速ギア63と、第4の減速ギア63と噛み合う直径の大きな第5の減速ギア64と、第5の減速ギア64と同軸に設けられた直径の小さな第6の減速ギア65と、第6の減速ギア65と噛み合う直径の大きな第7の減速ギア66と、第7の減速ギア66と同軸に設けられた直径の小さな第8の減速ギア67と、第8の従動ギア67と噛み合う回転軸35に取り付けられた駆動ギア68から構成されている。減速機58は、駆動モータ57の回転に対し所定の減速比(約1/600)に応じて回転軸35を回転駆動する。第1乃至第8の減速ギア60〜67の回転軸は、軸受部材69を介して筐体46の底壁50及び第1の取付用基板53にそれぞれ回転自在に支持されている。なお、図7(b)は、第1乃至第8の減速ギア60〜67の噛み合せを駆動力の伝達方向であるアルファベットa〜dの順に従い展開して図示したものである。
【0033】
第1の取付用基板53の上部には、図2に示すように、支柱部材の一例としての一対の支柱ブロック71,72を介して第2の取付用基板73が第1の取付用基板53と平行に設けられている。第2の取付用基板73には、回転軸35の回転角を検出する角度検出手段の一例としての角度センサ74が取り付けられている。角度センサ74は、図8(a)に示すように、その中央に回転軸35の上端部が直接接続される平面円形状の作動部75を備えている。角度センサ74の作動部75には、Dカット面や2面取り等が設けられた回転軸35の上端部を挿入することで直接接続されるように構成されている。なお、角度センサ74としては、非接触式のものであっても良い。本実施の形態における直接接続との文言は、回転軸35の上端部が角度センサ74の作動部75に非接触状態で挿入される場合をも含むものである(角度センサが変形する虞を有するため、回転軸35の上端部は通常接触させない)。角度センサ74は、3つの端子#1,#2,#3を有しており、第1及び第3の端子#1,#3間に所定の電圧を印加することにより、図8(b)に示すように、第2の端子#2から出力される出力電圧が回転軸35の回転角に応じてリニア(直線状)に変化することにより、回転軸35の回転角θを検出する。
【0034】
角度センサ74は、図8(a)に示すように、その基準となる取付面76が第2の基板73の表面に接触するように取付孔77を介してネジ止め等の手段により第2の基板73に固定されている。角度センサ74としては、その検出精度が例えば10〜60分(0.1〜0.6°)程度のものが使用されるが、これに限定されるものではない。角度センサ74としては、種々の方式のものが使用可能である。
【0035】
一対の支柱ブロック71,72は、図9に示すように、SUS等の金属からなり、同一の高さH3を有し且つ上端面71a,72aと下端面71b,72bが平行に形成された直方体状の部材からなる。一対の支柱ブロック71,72の上端面71a,72a及び下端面71b,72bと第1及び第2の取付用基板53,73には、図10に示すように、回転軸35と平行となるように、当該回転軸35から等しい距離だけ離れた位置に位置決めピン78,79を挿入する挿入孔71c,72c,71d,72d及び80,81がそれぞれ開口されている。そして、第1及び第2の取付用基板53,73は、挿入孔71c,72c,71d,72d及び80,81にそれぞれ挿入される位置決めピン78,79によって位置決めされることで互いに平行に配置される。また、一対の支柱ブロック71,72は、当該支柱ブロック71,72に埋設された長尺な第1の取付ネジ82によって第1の取付用基板53に固定されている。また、一対の支柱ブロック71,72は、当該支柱ブロック71,72に挿通された長尺な第2の取付ネジ83によって第1の取付用基板53及び第2の取付用基板73の双方に固定されている。
【0036】
さらに、第2の取付用基板73の上部には、図2に示すように、二方弁型モータバルブ1を制御する制御基板84が設けられている。制御基板84は、第2の取付用基板73にネジ85,86等により立設された複数本の支持パイプ87,88等を介して取り付けられている。
【0037】
図11は制御基板を示すブロック図である。
【0038】
制御基板84は、図11に示すように、角度センサ74からの検出信号が入力される角度センサ入力部89と、駆動モータ57を駆動するモータ出力部90と、二方弁型モータバルブ1を使用するユーザが操作する外部装置91の電源92から所要の電力が供給される電源入力部93と、外部装置91の調節計94から基準電流等が入力される調節計入力部95と、二方弁型モータバルブ1の開度に応じた開度出力電流を出力する開度出力部96と、二方弁型モータバルブ1が正常な状態か否かを示す信号を出力するオープンコレクタ出力部97を備えている。また、角度センサ入力部89は、角度センサ74から出力される出力電圧をデジタル信号に変化する図示しないA/D変換器を有している。
【0039】
また、制御基板84は、図12に示すように、外部装置91の調節計94からの指示に基づいて後述するように、設定モード及び動作モードを実行する制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)101と、CPU101で実行する設定モード及び動作モードのプログラムを予め記憶したROM(Read Only Memory)102と、CPU101で実行されたパラメータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)103と、これらCPU101やROM102等を接続するバス104と、CPU101と角度センサ入力部89、モータ出力部90、調整計入力部95、開度出力部96及びオープンコレクタ出力部97とを図示しない切替回路などを介して接続するインタフェース部105などを備えている。なお、CPU101は、図示しないコントローラにより制御される。
【0040】
<二方弁型モータバルブの動作>
本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ1では、次のようにして流体の流量が制御される。
【0041】
二方弁型モータバルブ1は、図6(a)に示すように、組立時、バルブ部2の第2の弁口11の開口面積が可能な限り最小となるよう機械的に調整する操作が行われる。具体的には、二方弁型モータバルブ1に外部装置91の電源92から電源入力部93を介して電力を供給する以前に、図2に示すように、バルブ部2の弁軸12が第2の弁口11を閉塞した全閉位置に位置するように調整される。この操作は、図2に示すように、連結ピン41の位置を治具によって固定し、その状態でバルブ部2を組み合わせることで弁軸12が第2の弁口11を閉塞した位置となるように調整することで実行される。このとき、弁軸12の全閉位置は、図6(c)に示すように、流体の流量が最小となる位置であるとともに、弁軸12が所定方向(開方向)に回転を開始したときに流体の流量が増加する開始点となる位置であり、精度良く位置合わせされる必要がある。
【0042】
次に、二方弁型モータバルブ1では、図13に示すように、設定モードが実行されて各種の値がRAM103に記憶された後、当該流量制御用モータバルブ1により流体の流量を制御する実動作モードが実行される。設定モードは、角度センサ50のmin/max設定と、調節計94のmin/max設定と、D/A出力のmin/max設定とからなる。また、実動作モードは、クローズループ制御又はオープンループ制御のいずれかからなる。
【0043】
角度センサ74のmin/max設定は、図14に示すように、CPU101が制御基板84の電源投入直後における角度センサ74の出力電圧の値を角度センサ入力部89を介して読み出し、読み出した角度センサ74の原点位置である出力電圧値(デジタル値)をRAM103に記憶する(ステップ101)。次に、CPU101は、モータ出力部90から駆動モータ57に対して所定数の駆動パルスを出力し、減速機58を介して回転軸35を回転駆動させる。その後、CPU101は、回転後の角度センサ74の出力電圧値を読み出し、読み出した出力電圧値をRAM103に全開位置の値として記憶し(ステップ103)、当該角度センサのmin/max設定動作を終了する。
【0044】
このように、二方弁型モータバルブ1では、角度センサ74のmin/max設定動作を実行することにより、図15に示すように、駆動モータ57に対する出力パルスがゼロのとき弁軸12が全閉位置(原点位置)に位置し、原点位置における角度センサ74の出力値が記憶されるとともに、駆動モータ57に対する出力パルスが固定された所定数(最大値)のとき弁軸12が全開位置に位置し、全開位置における角度センサ74の出力値が記憶されることで校正される。そのため、二方弁型モータバルブ1の弁軸12の位置や角度センサ74の取付位置などに誤差が存在する場合であっても、図8(b)に示すように、駆動モータ57に対する出力パルスがゼロのときの角度センサ74の出力値と、駆動モータ57に対する出力パルスが最大値のときの角度センサ74の出力値とが、常に一対一に対応し、弁軸12に一体的に取り付けられた回転軸35の回転角が精度良く検出可能となる。
【0045】
調節計94のmin/max設定は、図16に示すように、外部装置91の調節計94から調節計入力部95を介して予め定められた最小値の入力電流を制御基板84に入力し、CPU101は、当該電流値をRAM103に記憶する(ステップ201)。次に、外部装置77の調節計94から調節計入力部95を介して予め定められた最大値の入力電流を制御基板84に入力し、CPU101は、当該電流値をRAM103に記憶する(ステップ202)。この調節計94のmin/max設定は、図17に示すように、外部装置91の調節計94から入力する入力電流を弁軸12の全閉位置と全開位置に一致させるための動作である。即ち、外部装置91の調節計94から入力する入力電流が最小値のとき弁軸12が全閉位置となり、外部装置91の調節計94から入力する入力電流が最大値のとき弁軸12が全開位置となるように校正される。
【0046】
D/A出力のmin/max設定は、図18及び図19に示すように、制御基板84の開度出力部96からの出力電流を調整計入力部95に直接入力し、制御基板84の開度出力部96からの出力電流が調整計入力部95に設定された入力電流と等しくなるように設定するものである。制御基板84の開度出力部96は、角度センサ入力部89に入力する角度センサ74からの出力電圧に応じて、弁軸12の開度(回転角)に応じた出力電流を外部装置91に出力し、外部装置91においてフィードバック制御などを実行する際に使用される。
【0047】
CPU101は、図18に示すように、開度出力部96からの所定の出力電流を出力し(ステップ301)、開度出力部96からの調整計入力部95に入力される出力電流が予め設定された最小値及び最大値にそれぞれ等しいか否かを判定し(ステップ302)、開度出力部96からの出力電流と調整計入力部95に入力されROM103に記憶された最小値及び最大値との差が許容範囲以内となるまで、開度出力部96からの出力電流を調整する動作を繰り返し、両者が等しくなった(誤差が許容範囲以内となった)時点で当該D/A出力のmin/max設定動作を終了する。このD/A出力のmin/max設定は、上述した調節計94のmin/max設定と併せることで、外部装置91の調節計94から入力する入力電流と、当該入力電流に応じて駆動モータ57を駆動した場合における角度センサ74からの出力電圧に対応した開度出力部96からの所定の出力電流とを常に一対一に精度良く対応させることが可能となる。
【0048】
その後、二方弁型モータバルブ1では、図13に示すように、実動作モードが実行される。実動作モードは、オープンループ制御又はクローズループ制御のいずれかが実行される。
【0049】
二方弁型モータバルブ1は、オープンループ制御又はクローズループ制御のいずれにおいても、図20に示すように、ステッピングモータ57により減速機58及びカップリング部5を介して弁軸12を駆動するとともに、回転軸35の回転角が角度センサ74により検出される。また、二方弁型モータバルブ1は、図21に示すように、調節計94からの信号を制御基板84が受け(ステップ401)、制御基板84からモータ出力部90を介して駆動モータ57に駆動パルス信号を出力する(ステップ402)。これに伴って、駆動モータ57が回転し、減速機58に駆動力が伝達され(ステップ403)、角度センサ74の回転軸35と弁軸12が回転する(ステップ404)。
【0050】
その後、二方弁型モータバルブ1では、弁軸12の回転に伴って開口部である第2の弁口11の開口面積が変化し(ステップ405)、図22(a)に示すように、調節計94から出力される出力電流を調節することにより第2の弁口11の開口面積に応じて流量係数Cv値が変化する(ステップ406)。このとき、調節計94から出力される出力電流が最小値である場合、流量係数Cv値がゼロとなることが理想であるが、流量係数Cv値が完全にゼロとならずに約5%程度の値に留まることがある。このように、流量係数Cv値の最小値が約5%程度の値に止まる場合であっても許容される。
【0051】
また、二方弁型モータバルブ1では、図21に示すように、角度センサ74の回転軸35の回転角に伴って角度センサ74の出力電圧が変化し(ステップ407)、図22(b)に示すように、制御基板84の開度出力部96から出力される出力電流の値が変化する(ステップ408)。
【0052】
実動作モードをオープンループ制御で実行する場合には、図23に示すように、流量制御用モータバルブ1に外部装置91の調節計94から流量を制御するため出力電流が入力される。外部装置91の調節計94から入力された電流に基づいて制御基板84から駆動モータ57に駆動パルスが出力され、図24(a)(b)に示すように、入力電流に応じたモータパルス数の位置に弁軸12が回動し、調節計94からの入力電流に応じた流量係数Cv値に制御される。また、二方弁型モータバルブ1は、弁軸12の位置での角度センサ74の電圧に応じて、開度出力部96より出力電流が出力される。
【0053】
その際、二方弁型モータバルブ1が未調整状態の場合には、外部装置91の調節計94から出力される出力電流と、制御基板84の調節計入力部95に入力されて当該制御基板84で検出される入力電流との間にずれが存在すると、外部装置91の調節計94から例えば弁軸12の全閉位置に相当する電流を出力しても、制御基板84の調節計入力部95で検出される入力電流が弁軸12の全閉位置に相当する電流と等しくならない場合が生じる。
【0054】
これに対して、本実施の形態では、図17に示すように、外部装置91の調節計94から出力される最小値の出力電流及び最大値の出力電流が制御基板84のROM103に予め記憶されている。そのため、外部装置91の調節計94から最小値の出力電流を出力することにより、制御基板84は、弁軸12の全閉位置であることを検出し、駆動モータ57に出力する駆動パルスをゼロの位置に設定する。また、外部装置91の調整計94から最大値の出力電流を出力することにより、制御基板84は、弁軸12の全開位置であることを検出し、駆動モータ57に出力する駆動パルスを最大値の位置に設定する。さらに、外部装置91の調節計94から所定の出力電流を出力することにより、制御基板84は、図24(a)に示すように、当該所定の出力電流に応じた数の駆動パルスを駆動モータ57に出力する。
【0055】
したがって、本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ1では、オープンループ制御で動作される場合、図24(b)に示すように、外部装置91の調整計94から出力される出力電流に応じた位置に弁軸12を回転させることができ、当該弁軸12の回転角に応じて決定される流量係数Cv値に基づいて流体の流量が制御される。
【0056】
このとき、オープンループ制御においては、図24(a)に示すように、調節計94の出力電流に応じて駆動モータ57に出力される駆動パルスが直線状に制御され、駆動モータ57によって減速機58を介して回転軸35が安定して駆動される。また、オープンループ制御においては、図24(b)に示すように、角度センサ74の出力が駆動モータ57の駆動にフィードバックされないため、弁軸12の開放位置への駆動と、開閉位置から閉塞位置への駆動で流量係数Cv値が異なるというヒステリシス現象が現れる。
【0057】
<クローズループ制御>
本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ1では、実動作モードをクローズループ制御で実行する場合、図25に示すように、調節計94から入力電流が制御基板84の調節計入力部95に入力される。
【0058】
そして、制御基板84のCPU101は、調節計94からRAM103に記憶させた入力電流の最小値及び最大値のデジタル値と、角度センサ74からRAM103に記憶させた原点位置の出力電圧及び全開位置の出力電圧のデジタル値に基づいてリニアな補正式を作成し、図26に示すように、調節計94からの入力電流に応じて角度センサ74の出力電圧が不感帯内に収まるように駆動モータ57を回動させる。ここで、不感帯とは、出力値の変化として感知できる変化を、まったく生じることのない入力変化の有限範囲をいう。
【0059】
このように、クローズループ制御においては、駆動モータ57の駆動に起因した回転軸35の回転角を角度センサ74によって検出し、当該角度センサ74の出力電圧をフィードバックさせて駆動モータ57の駆動量を制御することができるため、弁軸12の回転角を精度良く調整することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ1では、図27に示すように、駆動モータ57の駆動を開始する際に出力する単位時間当たりの駆動パルスを減少させて低速で駆動するように構成されている。その後、駆動モータ57の駆動を開始した後は、通常の速度で単位時間当たりの駆動パルスが出力される。同様に、本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ1では、駆動モータ57の駆動を停止する際に出力する単位時間当たりの駆動パルスを減少させて低速で駆動するように構成されている。
【0061】
このように構成することにより、原点位置直前では、単位時間当たり出力する駆動パルスの数を再び減少させることにより低速で動作が行われることにより、原点位置で弁軸12を停止させるにあたって、調整計94からの入力電流に応じた駆動パルスを駆動モータ57に出力し、駆動モータ57によって弁軸12を回動させるとともに、当該弁軸12の位置に応じて角度センサ74からの出力電圧をフィードバックさせる際に、角度センサ74からの出力電圧に基づいて駆動モータ57が過剰に回動するオーバーシュートと、過剰に回動した駆動モータ57を逆方向に回動させるアンダーシュートが繰り返されてハンチングが発生するのを抑制することが可能となる。
【0062】
このように、上記実施の形態1に係る二方弁型モータバルブ1では、弁軸12の回転角度を精度良く制御することが可能となる。
【0063】
二方弁型モータバルブ1は、図6(c)に示すように、例えば、動作を開始する前の初期状態において、弁軸12の弁動作部23が第1の弁口11を閉塞(全閉)した状態とされる。
【0064】
二方弁型モータバルブ1は、図2に示すように、アクチュエータ部3に設けられたステッピングモータ57を所定量だけ回転駆動させると、ステッピングモータ57の回転量に応じて回転軸35が回転駆動される。二方弁型モータバルブ1は、回転軸35が回転駆動されると、当該回転軸35に連結固定された弁軸12が回転軸35の回転量(回転角)と同一の角度だけ回転する。弁軸12の回転に伴って弁動作部23が弁座8の内部において回転し、図6に示すように、弁動作部23の周方向に沿った一端部21aが第2の弁口11を徐々に開放して、第1の流入口7を介して流入する流体が第1の弁口9より弁座8の内部に流入する。
【0065】
二方弁型モータバルブ1に流入した流体は、弁軸12の回転角に応じて第2の弁口11を介して流出口10から外部に供給される。
【0066】
二方弁型モータバルブ1は、弁動作部23の周方向に沿った両端部21a,21bが平面状に形成されており、弁軸12の回転角度に対して第2の弁口11の開口面積をリニア(直線状)に変化させることが可能となる。
【0067】
実験例1
本発明者らは、図1乃至図3に示すような弁軸12を備えた二方弁型モータバルブ1を試作し、弁軸12の回転に伴う第2の弁口11の開度に応じて、流体の流量係数Cv値がどのように変化するかを確認する実験を行った。
【0068】
図28(a)(b)は上記実験例の結果をそれぞれ示すグラフである。図28(a)は外部機器91から出力される出力電流値を示し、同図(b)は二方弁型モータバルブ1の流量係数Cv値を示している。
【0069】
その結果、図28(a)(b)に示すグラフから明らかなように、弁軸12の回転角に伴って流体が略直線状に流量係数を示すCv値が増加するとともに減少し、流体の流量を精度良く制御できることが判った。尚、図28のグラフでは、二方弁型モータバルブ1を全閉状態から全開状態に変化させた場合と、全開状態から全閉状態に変化させた場合の双方を示している。
【0070】
[実施例1]
図29は本発明の実施の形態1に係る流量制御用二方弁を適用した温度制御装置の一例としての恒温維持装置(チラー装置)を示す概念図である。
【0071】
このチラー装置200は、例えば、プラズマエッチング処理などを伴う半導体製造装置に使用され、温度制御対象Wの一例としての半導体ウエハ等の温度を一定温度に維持するものである。半導体ウエハ等の温度制御対象Wは、プラズマエッチング処理等を受けると、プラズマの生成や放電等に伴って温度が上昇する場合がある。
【0072】
チラー装置200は、温度制御対象Wと接触するように配置される温度制御手段の一例としてのテーブル状に構成された温度制御部201を備える。温度制御部201は、混合比が調整された低温側流体及び高温側流体からなる温度制御用流体が流れる温度制御用流路202を内部に有している。
【0073】
温度制御部201の温度制御用流路202には、予め定められた低温側の設定温度に調整された低温側流体を貯蔵した低温側恒温槽203と、予め定められた高温側の設定温度に調整された高温側流体を貯蔵した高温側恒温槽204が接続されている。低温側恒温槽203から供給される低温側流体と、高温側恒温槽204から供給される高温側流体は、混合部205で混合された後、温度制御部201の温度制御用流路202へと送られる。低温側恒温槽203から供給される低温側流体は、流量制御用二方弁の一例としての第1の二方弁型モータバルブ207を介して混合部205へ送られる。また、高温側恒温槽204から供給される高温側流体は、流量制御用二方弁の一例としての第2の二方弁型モータバルブ208を介して混合部205へ送られる。温度制御部201の温度制御用流路202を流通した温度制御用流体は、ポンプ206により低温側恒温槽203及び高温側恒温槽204へと循環される。なお、低温側恒温槽203及び高温側恒温槽204は、必ずしも低温側流体及び高温側流体を貯蔵している必要はなく、流体を所要の温度に調整して供給可能なものであれば良い。この場合、低温側恒温槽203及び高温側恒温槽204は、低温側流体及び高温側流体が流れる凝縮器や蒸発器などから構成することができる。
【0074】
温度制御部201の温度制御用流路202には、その流入側及び流出側に第1及び第2の温度センサT1,T2がそれぞれ設けられている。また、第1の二方弁型モータバルブ207の下流側には、低温側流体の流量を計測する第1の流量計209と、低温側流体の温度を計測する第3の温度センサT3とが配置されている。一方、第2の二方弁型モータバルブ208の下流側には、高温側流体の流量を計測する第2の流量計210と、高温側流体の温度を計測する第4の温度センサT4とが配置されている。さらに、混合部206の下流側には、温度制御用流体の流量を計測する第3の流量計211が配置されている。第1及び第2の温度センサT1,T2、第1及び第2の流量計209,210及び第3及び第4の温度センサT3,T4は、コントローラ212に接続されている。コントローラ212は、第1の二方弁型モータバルブ207及び第2の二方弁型モータバルブ208を制御する。
【0075】
図30はコントローラの制御系を示すブロック図である。
【0076】
コントローラ212は、温度制御対象Wの発熱量Q及び第3の流量計211によって計測される温度制御用流体の流量、更には第1及び第2の温度センサT1,T2の計測値、温度制御対象Wの加重平均温度目標値に基いて、第1及び第2の二方弁型モータバルブ207,208の開度を調節し、温度制御対象Wの温度変化を所定の関係式に基いて予測して低温側流体及び高温側流体の流量をFF(feed forward)制御する。なお、温度制御対象Wの発熱量Qは、温度制御対象Wを加工する際の電力等によって数値化される。
【0077】
また、コントローラ212は、図30に示すように、第3の流量計211によって計測される温度制御用流体の流量に基いて、PIコントローラによってPI演算等を行うことにより第1及び第2の二方弁型モータバルブ207,208の開度を調節し、低温側流体及び高温側流体の流量をFB(feed back)制御する。さらに、コントローラ212は、第1及び第2の温度センサT1,T2の計測値に基いて、PIコントローラによってPI演算等を行うことにより第1及び第2の二方弁型モータバルブ207,208の開度を調節し、低温側流体及び高温側流体が混合された温度制御用流体の温度をFB(feed back)制御する。
【0078】
第1及び第2の二方弁型モータバルブ207,208は、コントローラ212から出力される制御信号に基いてステッピングモータ57により弁軸12を回転駆動することにより、低温側恒温槽203から供給される低温側流体と、高温側恒温槽204から供給される高温側流体との流量を各々制御し、混合部206を介して温度制御部201の温度制御用流路202に供給する低温側流体と高温側流体とが混合された温度制御用流体の温度を制御する。
【0079】
このとき、第1及び第2の二方弁型モータバルブ207,208は、図28に示すように、弁軸12の回転角に応じて低温側流体と高温側流体の流量を高い精度で制御することができ、温度制御用流体の温度を微調整することが可能となる。そのため、本実施の形態に係る二方弁型モータバルブ207,208を使用したチラー装置200は、低温側流体と高温側流体との混合比が制御された所定の温度に調整された温度制御用流体を温度制御部201の温度制御用流路202に流すことにより、温度制御部201が接触する温度制御対象Wの温度を所望の温度に制御することができる。
【0080】
実験例2
本発明者らは、図29に示すようなチラー装置200を試作し、温度制御部201の温度制御用流路202に流れる流体の温度及び流量がどのように変化するかを確認する実験を行った。
【0081】
図31は上記実験例2の結果を示すグラフである。
【0082】
図31から明らかなように、本実施例に係るチラー装置200によれば、温度制御対象Wの発熱量Qが変化した場合であっても、温度制御部201の温度制御用流路202に流れる流体の温度及び流量を設定値に略等しく制御することができることが判る。
【0083】
なお、前記実施の形態では、第1の弁口を流入側、第2の弁口を流出側とした場合について説明したが、第2の弁口を流入側、第1の弁口を流出側として構成しても良い。但し、第1の弁口を流入側として構成した場合には、流体の圧力が弁軸12に均等に作用するため、弁軸12の動作上望ましい。
【符号の説明】
【0084】
1…三方弁型モータバルブ
2…バルブ部
3…アクチュエータ部
4…シール部
5…カップリング部
6…バルブ本体
7…流入口
8…弁座
9…第1の弁口
10…流出口
11…第2の弁口
12…弁軸
【要約】
【課題】流出部に整合して流路を開く連通孔を弁体に単に開設してなる切換弁に比較して、流体の流量を直線状に精度良く制御することが可能な流量制御用二方弁及びこれを用いた温度制御装置を提供する。
【解決手段】円柱形状の空所からなる弁座8を有し、弁座8の軸方向に沿った一端部に流体が流通する第1の弁口9と弁座8の周面に流体が流通する断面矩形状の第2の弁口11が形成された弁本体6と、弁本体6の弁座8内に回転自在に配置され、第2の弁口11の開口面積を直線状に変化させるよう予め定められた中心角αを有する円筒形状の一部を成す形状に形成された弁体12と、弁体12を回転駆動する駆動手段3と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31