(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122647
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】液体急結剤、それを用いたセメント組成物および吹付け工法
(51)【国際特許分類】
C04B 22/14 20060101AFI20170417BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20170417BHJP
C04B 22/12 20060101ALI20170417BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20170417BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
C04B22/14 A
C04B24/02
C04B22/12
C04B24/12 A
C04B28/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-21501(P2013-21501)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-152055(P2014-152055A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原 啓史
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昭俊
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−270768(JP,A)
【文献】
特開2011−169498(JP,A)
【文献】
特表2010−517923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02,
C04B40/00−40/06,
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜50質量%の硫酸アルミニウムと、0.01〜7質量%のポリオール系分散剤とを含有し、20℃において3か月貯蔵した後に体積割合で液の90%以上が懸濁していることを特徴とする液体急結剤。
【請求項2】
さらに、0.1〜10質量%のフッ素化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の液体急結剤。
【請求項3】
さらに、0.1〜5質量%のアルコールアミン類を含有することを特徴とする請求項1または2記載の液体急結剤。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項記載の液体急結剤をセメント100質量部に対し3〜20質量部含有させるように混合してセメント組成物を調製し、調製したセメント組成物を吹付けに用いることを含む、吹付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、鉄道、および導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹付けるセメントコンクリートに使用する、液体急結剤、それを用いたセメント組成物および吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに混合した急結性コンクリートの吹付け工法が用いられている(特許文献1)。
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合して吹付け用のコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で他方から圧送された急結剤と混合して急結性吹付けコンクリートとし、地山面に所定の厚さになるまで吹付ける工法である。
【0003】
急結剤としては、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合した粉体急結剤が使用される場合が多いが、近年、吹付け時の粉塵量が少なく、アルカリ薬傷がないという点から、アルミニウム塩を主成分とする酸性の液体急結剤の使用が望まれている(特許文献2〜6)。
【0004】
液体急結剤に用いられるアルミニウム塩は硫酸塩である場合が多く、濃度が高いほど、急結性が高くなり、吹付け時の添加率を減らすこともできる。しかし、高濃度の液体急結剤は、長期間貯蔵すると、液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりする場合があった。
硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は、20℃で27%であり、共存する溶質や液温によって変動するが、溶解度以上の硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤は、貯蔵安定性が悪く、製造直後の性状を保持することが難しい。液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりした状態の液体急結剤を使用すると、ポンプが閉塞したり、コンクリートとの混合性が悪くなり、優れた性状が得られなかったりする場合があった。また、溶解度は液温によって変動するため、この貯蔵性の問題は、貯蔵する温度に依存し、高温または低温で貯蔵すると、より顕著に現れる場合があった。
【0005】
ポリオール系分散剤は、コンクリートやモルタルの減水剤として一般的に使用されており、コンクリートやモルタルに添加して、流動性を高めるために用いられる。ポリオール系分散剤は、セメント粒子の表面に付着することで、コンクリートやモルタルに分散性を付与する材料であり、特に、水/セメント比が低く、流動性が低いセメント組成物に対して有効である。
急結剤をセメント組成物に添加すると、流動性が急速に低下するため、急結剤とセメント組成物が十分に混合しない場合があるが、分散剤を併用することで、流動性が高まり、急結剤とセメント組成物の混合性が良好になる(特許文献7)。
また、硫酸アルミニウム、亜硫酸塩類、分散剤を含有してなるセメント混和材は知られているが、ここで言う分散剤とはポリカルボン酸系であり、本発明とは異なる(特許文献8)。また、既存の報告の硫酸アルミニウムの形態は、粉状あるいは水溶液状であるため、懸濁液のような高濃度の硫酸アルミニウムの液体に関する検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開平10−87358号公報
【特許文献3】特開2003−246659号公報
【特許文献4】特開2005−89276号公報
【特許文献5】特開2006−193388号公報
【特許文献6】特開2008−30999号公報
【特許文献7】特開2011−136886号公報
【特許文献8】特開2000−219554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を種々検討した結果、硫酸アルミニウムにポリオール系分散剤を含有させることで、液のゲル化や懸濁粒子の沈降を抑え、前述の課題を解決する知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)硫酸アルミニウム、ポリオール系分散剤を含有し、−10〜40℃において体積割合で液の90%以上が懸濁している液体急結剤、(2)液体急結剤の硫酸アルミニウム濃度が30〜50質量%、ポリオール系分散剤濃度が0.01〜5質量%である(1)の液体急結剤、(3)さらに、フッ素化合物を含有する(1)または(2)のうちのいずれかの液体急結剤、(4)さらに、アルコールアミン類を含有する(1)〜(3)のうちのいずれかの液体急結剤、(5)(1)〜(4)のうちのいずれかの液体急結剤をセメント100質量部に対し3〜20質量部含有するセメント組成物、(6)(5)のセメント組成物を用いた吹付け工法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体急結剤は、従来の硫酸アルミニウムを使用した液体急結剤に比べ、貯蔵安定性に優れる。さらに、この液体急結剤を使用することで、従来の液体急結剤に比べ、急結性吹付けコンクリートの急結性、強度発現性が向上するなどの効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明でいうコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、およびセメントコンクリートの総称である。
なお、本発明で言う部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0011】
本発明で使用する硫酸アルミニウムは、無水物、水和物、さらに水溶液のいずれの形態でも使用することができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。この中では、液体中での分散性が優れるという点で、水和物が好ましく、14水和物がより好ましい。
液体急結剤の硫酸アルミニウムの濃度は、30〜50%が好ましく、33〜40%がより好ましい。30%未満ではコンクリートと混合した際に、優れた急結性が得られない場合があり、50%を超えると液の貯蔵安定性が損なわれたり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
【0012】
本発明で使用するポリオール系分散剤は、セメント系減水剤として一般に市販されているものが使用でき、変性したものであっても使用できる。また、ポリカルボン酸系化合物、リグニンスルホン酸化合物、グリシトール誘導体等とポリオールとの複合物であっても使用できる。
ポリオール系分散剤は、液体急結剤が懸濁状である場合に、不溶性粒子の凝集や沈降を抑え、分散性を向上させる。液体急結剤のポリオール系分散剤の濃度は、0.01〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましい。0.01%未満では液の貯蔵安定性が損なわれる場合があり、5%以上ではコンクリートと混合した際に、強度発現性を阻害する場合がある。
【0013】
貯蔵安定性は、吹付け施工時にタンクから液体急結剤を圧送する際に重要となる性状である。液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりすると、タンクからの排出が困難になる場合がある。また、排出できたとしても、懸濁粒子が沈降していると、液体急結剤の濃度が不均一であるため、吹付けたコンクリートの凝結性状や強度発現性にむらができる場合がある。
本発明の液体急結剤の貯蔵安定性を、分離度で評価すると、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。なお、ここで言う分離度とは、懸濁粒子が沈降して生じる上澄み液の、液全体に対する体積割合のことであり、分離度が極めて少ないことを、液が均一であると言う。
本発明の液体急結剤は、−10〜40℃において体積割合で液の90%以上が懸濁しているものであり、この温度範囲で分離度が極めて少なく液が均一である。−10℃未満では液が凝固する場合があり、40℃を超えると分離度が大きくなる場合がある。
【0014】
本発明の液体急結剤は、フッ素化合物を含有してもよい。フッ素化合物は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。フッ素化合物は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。
フッ素化合物としては、フッ化水素、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化水素カリウム、三フッ化ホウ素、六フッ化アルミニウムナトリウム、六フッ化アルミニウムカリウム、ケイフッ化水素、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化アンモニウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、六フッ化アルミニウムナトリウムが好ましい。
液体急結剤のフッ素化合物の濃度は、0.1〜10%が好ましく、0.3〜8%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、10%を超えると貯蔵安定性が低下したり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
【0015】
本発明の液体急結剤は、アルコールアミン類を含有してもよい。アルコールアミン類は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。アルコールアミン類は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。
アルコールアミン類とは、アミノ基とヒドロキシル基の両方を有する有機化合物の総称である。アルコールアミン類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、ジエタノールアミンが好ましい。
液体急結剤のアルコールアミン類の濃度は0.1〜5%が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、5%を超えると貯蔵安定性が損なわれたり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
【0016】
本発明のセメント組成物において、液体急結剤の使用量は、セメント100部に対して、3〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましく、7〜10部が最も好ましい。3部未満では急結性吹付けコンクリートの急結性を促進しにくい場合があり、20部を超えると長期強度発現性が損なわれる場合がある。
【0017】
ここでセメントとは、特に限定されるものものではないが、市販されている普通、早強、中庸熱、および超早強などの各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。
【0018】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントと骨材とを含有するものである。ここで骨材としては、吸水率が低く、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能である。
【0019】
セメントコンクリートに使用する水の量は、強度発現性の面から水/セメント比で35%以上が好ましく、40〜55%がより好ましい。35%未満ではセメントコンクリートを十分に混合できない場合がある。
【0020】
本発明の吹付け工法は、特に限定されるものではないが、湿式吹付け工法では、例えば、セメント、細骨剤、粗骨材、及び水を加えて練り混ぜ、空気圧送し、途中にY字管を設け、その一方から液体急結剤供給装置により圧送した液体急結剤を合流混合して急結性湿式吹付けコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0021】
また、液体急結剤を圧送する圧送空気の圧力は、コンクリートが液体急結剤の圧送管内に混入した際に圧送管内が閉塞しないように、コンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa高いことが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0023】
「実験例1」
硫酸アルミニウムとポリオール系分散剤を、表1に示す濃度になるように添加し、1時間攪拌することで、種々の液体急結剤を調製した。また、攪拌後、液を静置し、液の分離度を評価した。結果を表1に併記する。なお、比較例として、ポリオール系分散剤を添加しない硫酸アルミニウム25%水溶液と30%懸濁液も評価した。
【0024】
<使用材料>
硫酸アルミニウム:硫酸アルミニウム14水和物、粉末、市販品
ポリオール系分散剤A:BASFジャパン社製、商品名「ポゾリスNo.70L」、高変性ポリオール複合体
ポリオール系分散剤B:日本シーカ社製、商品名「プラストクリート30N」、変性ポリオールとポリカルボン酸系化合物
【0025】
<測定条件>
試験環境温度:20℃に設定。
分離度:液全体に対する懸濁相の体積割合をメスシリンダーで評価。分離度とは、懸濁粒子が沈降して生じる上澄み液の、液全体に対する体積割合。
【0026】
【表1】
【0027】
表1より、硫酸アルミニウム濃度が30〜50%、ポリオール系分散剤濃度が0.01〜5%の配合の液体は分離度が低く、液体急結剤の貯蔵安定性として望ましい。
【0028】
「実験例2」
実験例1と同様の方法で、促進剤の濃度が表2に示す通り、硫酸アルミニウム濃度が35%、ポリオール系分散剤濃度が1%となるような液体急結剤を調製した。また、実験例1と同様に、分離度を評価した。結果を表2に併記する。
【0029】
<使用材料>
促進剤ア:六フッ化アルミニウムナトリウム(ア)、市販品
促進剤イ:ジエタノールアミン(イ)、市販品
【0030】
【表2】
【0031】
表2より、液体急結剤のフッ素化合物の濃度が10%まで、アルコールアミン類の濃度が5%までであれば、分離度が著しく大きくはならず、貯蔵安定性が大きく低下することはない。
【0032】
「実験例3」
表3に示すように、実験例1、実験例2で示した配合の液体急結剤を調製した。また、調製後の液を、−10、20、40℃の温度で、実験例1と同様の手順で、3か月後の分離度を評価した。結果を表3に併記する。
【0033】
【表3】
【0034】
表3より、液体急結剤100の硫酸アルミニウムの濃度が30〜50%、ポリオール系分散剤の濃度が0.01〜5%の液体急結剤は、−10〜40℃において、調製後少なくとも3か月間、分離度が小さく、液の90%以上が均一であり、貯蔵安定性に優れる。
さらに、硫酸アルミニウムの濃度が35%、ポリオール系分散剤の濃度が1%、一定の濃度の促進剤(フッ素化合物の濃度が0.1〜10%、あるいはアルコールアミン類の濃度が0.1〜5%)を含有する液体急結剤も、同様の条件で、貯蔵安定性に優れる。
【0035】
「実験例4」
実験例1と同様の方法で、硫酸アルミニウム、ポリオール系分散剤の濃度が、表4に示す値になるように、液体急結剤を調製した。また、細骨材/セメント比=3、水/セメント比=50%のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表4に併記する。
【0036】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3,400cm
2/g、比重3.16
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、比重2.62、5mm下品
【0037】
<測定方法>
凝結試験:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定
試験環境温度:20℃に設定
【0038】
【表4】
【0039】
表4より、硫酸アルミニウム濃度30〜50%、ポリオール系分散剤濃度0.01〜5%の配合であることが、液体急結剤の性状として望ましい。
【0040】
「実験例5」
実験例1と同様の方法で、液体急結剤の濃度が、硫酸アルミニウム35%、ポリオール系分散剤1%の液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を表5に示す量添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間を、さらに、圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表5に併記する。
【0041】
【表5】
【0042】
表5より、液体急結剤の添加量は、セメント100部に対し、3〜20部であることが、吹付け材料の性状として望ましい。
【0043】
「実験例6」
実験例1、2と同様の方法で、表6に示す種類および濃度の促進剤を含有し、硫酸アルミニウム濃度35%、ポリオール系分散剤濃度1%の液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表6に併記する。
【0044】
【表6】
【0045】
表6より、液体急結剤のフッ素化合物の濃度が0.1〜10%、アルコールアミン類の濃度が0.1〜5%であれば、凝結性状が向上し、強度発現性が大きく損なわることがないため、液体急結剤の性状として望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の液体急結剤は、硫酸アルミニウム系液体急結剤で課題だった液のゲル化や懸濁粒子の沈降を抑え、貯蔵安定性が優れるので、凝結性状や強度発現性が高い吹付け材料とすることが可能となり、土木、建築の分野等に好適である。