特許第6122679号(P6122679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122679
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】エンジン装置および携帯型作業機
(51)【国際特許分類】
   F02M 15/06 20060101AFI20170417BHJP
   F02B 63/02 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F02M15/06 D
   F02M15/06 B
   F02B63/02
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-72565(P2013-72565)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196700(P2014-196700A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 卓也
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−142357(JP,A)
【文献】 実開平4−137237(JP,U)
【文献】 特開2008−213408(JP,A)
【文献】 実開昭57−174751(JP,U)
【文献】 実公昭49−27129(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−181854(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 15/06
F02B 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
燃料と空気との混合気を生成するキャブレタと、
前記キャブレタと前記エンジンとの間に介在するインシュレータおよび弾性部材と、を有し、
前記インシュレータは、第1供給孔を有し、
前記弾性部材は、第2供給孔を有し、
前記インシュレータと前記弾性部材とが、前記キャブレタと前記エンジンとの間で重ねられることによって前記第1供給孔と前記第2供給孔とが連通し、前記混合気が前記第1供給孔および前記第2供給孔を通じて前記キャブレタから前記エンジンへ供給されており、
前記弾性部材は、前記インシュレータよりも低い弾性係数を有し、前記インシュレータと前記弾性部材とを重ねた状態で、前記インシュレータと前記エンジンとの間に挟まれ、
前記インシュレータと前記弾性部材とを重ねた状態で、前記第1供給孔による前記インシュレータの内面と前記第2供給孔による前記弾性部材の内面とが連続し、且つ、前記弾性部材が3mm以上、前記混合気が流れる供給通路を形成しており、
前記インシュレータおよび前記弾性部材の少なくとも一方の接触面が、開口を有することにより、前記インシュレータと前記弾性部材との間に空気層が形成される、
エンジン装置。
【請求項2】
前記弾性部材における前記インシュレータとの接触面、および前記インシュレータにおける前記弾性部材との接触面には、互いに嵌合可能な嵌合部が形成され、
前記インシュレータおよび前記弾性部材は、前記嵌合部を互いに嵌合させた状態で、前記キャブレタと前記エンジンとの間に重ねて挟まれる、
請求項1記載のエンジン装置。
【請求項3】
前記弾性部材における前記インシュレータとの接触面と、前記インシュレータにおける前記弾性部材との接触面とは、前記インシュレータと前記弾性部材とを重ねる方向に沿った方向で重なる、
請求項1または2記載のエンジン装置。
【請求項4】
携帯型作業機の工具を駆動するエンジンと、
燃料と空気との混合気を生成するキャブレタと、
前記キャブレタと前記エンジンとの間に介在するインシュレータおよび弾性部材と、
を有し、
前記インシュレータは、第1供給孔を有し、
前記弾性部材は、第2供給孔を有し、
前記インシュレータと前記弾性部材とが、前記キャブレタと前記エンジンとの間で重ねられることによって前記第1供給孔と前記第2供給孔とが連通し、前記混合気が前記第1供給孔および前記第2供給孔を通じて前記キャブレタから前記エンジンへ供給されており、
前記弾性部材は、前記インシュレータよりも低い弾性係数を有し、前記インシュレータと前記弾性部材とを重ねた状態で、前記インシュレータと前記エンジンとの間に挟まれ、
前記インシュレータと前記弾性部材とを重ねた状態で、前記第1供給孔による前記インシュレータの内面と前記第2供給孔による前記弾性部材の内面とが連続し、且つ、前記弾性部材が3mm以上、前記混合気が流れる供給通路を形成しており、
前記インシュレータおよび前記弾性部材の少なくとも一方の接触面が、開口を有することにより、前記インシュレータと前記弾性部材との間に空気層が形成される、
携帯型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン装置および携帯型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型作業機では、一般的に、工具を駆動するためにエンジンを使用する。
エンジンは、ガソリンなどの燃料を気化させた混合気を燃焼し、駆動力を発生する。
そして、携帯型作業機は、作業者が動きながら使用するものであるため、小型で軽量であることが求められる。
このため、携帯型作業機では、キャブレタはエンジンに取り付けて保持される。小型化のために、キャブレタはエンジンに直接または近接して取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−019555号公報
【特許文献2】特開2012−72710号公報
【特許文献3】特開2003−172210号公報
【特許文献4】特開平07−091318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンは、燃焼に伴って熱を発生する。キャブレタをエンジンに保持させた場合、その熱がキャブレタに伝わり、キャブレタが熱せられる。キャブレタの燃料が気化し易くなる。
このため、特許文献1から4にあるようにエンジンとキャブレタとの間にインシュレータを介在させることが考えられる。これにより、キャブレタの温度上昇を抑制する。
【0005】
しかしながら、エンジンとキャブレタとの間にインシュレータを介在させた場合、インシュレータとエンジンとの間に隙間が形成され易い。または、インシュレータとキャブレタとの間に隙間が形成される可能性がある。
そして、キャブレタからエンジンまでの混合気の流路の気密性が低下すると、混合気が隙間から外へ漏れたり、隙間から流路へ入った空気をエンジンが吸ったりすることになる。
【0006】
このように携帯型作業機では、エンジンとキャブレタとの間にインシュレータを介在させた状態での、キャブレタからエンジンまでの混合気の流路の気密性を得ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエンジン装置は、エンジンと、燃料と空気との混合気を生成するキャブレタと、キャブレタとエンジンとの間に介在するインシュレータおよび弾性部材と、を有し、インシュレータは、第1供給孔を有し、弾性部材は、第2供給孔を有し、インシュレータと弾性部材とが、キャブレタとエンジンとの間で重ねられることによって第1供給孔と第2供給孔とが連通し、混合気が第1供給孔および第2供給孔を通じてキャブレタからエンジンへ供給されており、弾性部材は、インシュレータよりも低い弾性係数を有し、インシュレータと弾性部材とを重ねた状態で、インシュレータとエンジンとの間に挟まれ、インシュレータと弾性部材とを重ねた状態で、第1供給孔によるインシュレータの内面と第2供給孔による弾性部材の内面とが連続し、且つ、弾性部材が3mm以上、混合気が流れる供給通路を形成しており、インシュレータおよび弾性部材の少なくとも一方の接触面が、開口を有することにより、インシュレータと弾性部材との間に空気層が形成される。
【0009】
好適には、弾性部材におけるインシュレータとの接触面、およびインシュレータにおける弾性部材との接触面には、互いに嵌合可能な嵌合部が形成され、インシュレータおよび弾性部材は、嵌合部を互いに嵌合させた状態で、キャブレタとエンジンとの間に重ねて挟まれる、とよい。
【0010】
好適には、弾性部材におけるインシュレータとの接触面と、インシュレータにおける弾性部材との接触面とは、インシュレータと弾性部材とを重ねる方向に沿った方向で重なる、とよい。
【0013】
本発明に係る携帯型作業機は、携帯型作業機の工具を駆動するエンジンと、燃料と空気との混合気を生成するキャブレタと、キャブレタとエンジンとの間に介在するインシュレータおよび弾性部材と、を有し、インシュレータは、第1供給孔を有し、弾性部材は、第2供給孔を有し、インシュレータと弾性部材とが、キャブレタとエンジンとの間で重ねられることによって第1供給孔と第2供給孔とが連通し、混合気が第1供給孔および第2供給孔を通じてキャブレタからエンジンへ供給されており、弾性部材は、インシュレータよりも低い弾性係数を有し、インシュレータと弾性部材とを重ねた状態で、インシュレータとエンジンとの間に挟まれ、インシュレータと弾性部材とを重ねた状態で、第1供給孔によるインシュレータの内面と第2供給孔による弾性部材の内面とが連続し、且つ、弾性部材が3mm以上、混合気が流れる供給通路を形成しており、インシュレータおよび弾性部材の少なくとも一方の接触面が、開口を有することにより、インシュレータと弾性部材との間に空気層が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、キャブレタとエンジンとの間にインシュレータとともに弾性部材が介在する。弾性部材は、キャブレタとエンジンとの間でインシュレータと重ねられ、第2供給孔がインシュレータの第1供給孔と連通する。よって、インシュレータにおける第1供給孔の周辺部分には、弾性部材が全周的に接触する。換言すると、弾性部材も混合気の供給通路の一部を形成している。
したがって、エンジンとキャブレタとの間にインシュレータを介在させた状態において、キャブレタからエンジンまでの混合気の流路について、気密性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1第1実施形態に係る刈払機の斜視図である。
図2図2は、図1の刈払機の使用状態の説明図である。
図3図3は、図1のエンジンモジュールの部分断面図である。
図4図4は、図3のエンジンモジュールについての吸気系の構成を示す模式図である。
図5図5は、ヒートインシュレータの円筒部を示す模式図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る刈払機のエンジンモジュールの吸気系の構成を示す模式図である。
図7図7は、図6のA−A断面図である。
図8図8は、図6のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る刈払機1の斜視図である。刈払機1は、携帯型作業機の一例である。
図1の刈払機1は、長尺パイプからなる操作棹2を有する。なお、操作棹2は、長尺方向において複数本に分割可能でもよい。
操作棹2の後端には、動力源としてのエンジンモジュール3が設けられる。
操作棹2の先端には、作業部としての工具の装着部4が設けられる。工具の装着部4には、工具が交換可能に取り付けられる。工具の装着部4は、操作棹2に内蔵されたドライブシャフトによりエンジンモジュール3に連結される。工具の装着部4は、エンジンモジュール3の駆動力により回転駆動される。
操作棹2の長尺方向の中央部には、ハンドル5が取り付けられる。ハンドル5とエンジンモジュール3との間には、防振ハウジング6が設けられる。防振ハウジング6の外周には、ハンガ7が取り付けられる。
【0017】
図2は、図1の刈払機1の使用状態の説明図である。
図1の刈払機1は、作業者Mの肩から吊り具8により吊るして使用される。
吊り具8は、ハーネス9、金具10を有する。
作業者Mは、ハーネス9を上半身に装着する。金具10は、作業者Mの右側に垂れ下がる。金具10に、ハンガ7を取り付ける。作業者Mは、この吊下げ状態で刈払機1を使用する。作業者Mは、刈払機1のハンドル5を両手で持ち、刈払機1を動かし、刈払作業をする。
【0018】
図3は、図1のエンジンモジュール3の部分断面図である。
図3のエンジンモジュール3は、タンク11、エアクリーナ12、キャブレタ13、エンジン14、マフラ15、ケーシング16を有する。
エンジンモジュール3には、たとえば図3の紙面に垂直な方向に操作棹2が取り付けられる。
【0019】
図3の姿勢において、エンジン14は、クランクケース21の上に、シリンダブロック22、シリンダヘッド23が取り付けられた4ストロークエンジンである。エンジン14は、2ストロークエンジンでもよい。
クランクケース21には、クランクシャフト24が設けられる。クランクシャフト24は、クランク室25内で回転自在である。
シリンダブロック22には、ピストン26が設けられる。ピストン26は、シリンダ27内で上下移動自在である。ピストン26とシリンダヘッド23との間の空間が、燃焼室28になる。燃焼室28に、点火プラグが設けられる。ピストン26は、コンロッドを含むリンク機構29によりとクランクシャフト24と連結される。
シリンダヘッド23は、吸気ポート30と排気ポート31とを有する。吸気ポート30および排気ポート31は、燃焼室28と連通する。吸気ポート30には、吸気バルブ33が設けられる。排気ポート31には、排気バルブ34が設けられる。吸気バルブ33および排気バルブ34は、カムシャフト、ロッカーアームなどから構成されたOHV(Over Head Valve)型の動弁機構35によって開閉する。動弁機構35は、クランクシャフト24により駆動される。
【0020】
4ストロークのエンジン14では、排気バルブ34および吸気バルブ33が閉じた状態において燃焼室28で燃料が燃焼するときの圧力で、シリンダ27は、図3の下方へ移動する。これにより、クランクシャフト24が回転する。また、クランクシャフト24と連結されたドライブシャフトが回転する。
クランクシャフト24の回転にしたがって、下死点を通過したシリンダ27は、図3の上方へ移動する。排気バルブ34が開き、燃焼室28の排気ガスが排気ポート31へ出力される。
さらにクランクシャフト24が回転し、シリンダ27が上死点を通過すると、排気バルブ34が閉じ、吸気バルブ33が開く。新たな燃料および空気が、吸気ポート30から燃焼室28へ吸引される。
さらにクランクシャフト24が回転し、シリンダ27が下死点を通過すると、吸気バルブ33が閉じる。燃焼室28の燃料および空気は、シリンダ27の上昇により、圧縮される。
シリンダ27が上死点を通過した直後のタイミングで、点火プラグが点火される。燃焼室28で圧縮された燃料は、燃焼する。
以上の4サイクル動作を繰り返すことで、クランクシャフト24は連続的に回転する。ドライブシャフトは、クランクシャフト24とともに回転し続ける。装着部4に取り付けられた工具は、エンジンモジュール3の駆動力により回転駆動される。
【0021】
図3に図示する姿勢において、エンジン14の右側に、マフラ15が配置される。
マフラ15は、エンジン14の排気ポート31に連結される。図3では、マフラ15は、エンジン14のシリンダブロック22に直接取り付けられている。
マフラ15は、エンジン14から排出された排気ガスを、冷却および希釈化し、外気へ放出する。
【0022】
図3において、エンジン14の左側に、タンク11、エアクリーナ12、キャブレタ13が配置される。タンク11の上方に、エアクリーナ12およびキャブレタ13が配置される。
タンク11は、ガソリンなどの燃料を収容する。
エアクリーナ12は、外気を吸引する。
タンク11とエアクリーナ12とは、キャブレタ13に連結される。
キャブレタ13は、エンジン14の吸気ポート30に連結される。キャブレタ13とエンジン14との間には、ヒートインシュレータ41と、弾性部材51とが介在する。
キャブレタ13は、たとえばベンチュリ管を有する。ベンチュリ管には、エアクリーナ12で吸引された空気と、タンク11から供給される燃料とが供給される。燃料は、たとえばエンジン14からの負圧に基づいて動作するダイヤフラムにより、ベンチュリ管へ供給される。ベンチュリ管へ供給された燃料は、ベンチュリ管において気化する。燃料と空気との混合気が形成される。混合気は、後述するヒートインシュレータ41の第1供給孔44および弾性部材51の第2供給孔53を通じて、エンジン14の吸気ポート30へ供給される。混合気は、エンジン14の燃焼室28へ吸引され、燃焼室28で燃焼される。
【0023】
図3のエンジンモジュール3では、エンジン14に、ヒートインシュレータ41が取り付けられる。ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に、弾性部材51が挟まれる。キャブレタ13は、ヒートインシュレータ41に取り付けられる。エアクリーナ12は、キャブレタ13に取り付けられる。これにより、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とが直接に重ねて、キャブレタ13とエンジン14との間に介在する。
このようにして、エアクリーナ12およびキャブレタ13は、エンジン14に取り付けて保持される。
そして、図3で明らかなように、エアクリーナ12からエンジン14までの距離を短くすることが、エンジンモジュール3の小型化に有効である。エンジンモジュール3が小型化されるほど、作業中に刈払機1が振れ難くなり、作業性が向上する。
【0024】
また、エンジン14とキャブレタ13との間にヒートインシュレータ41を介在させる。これにより、エンジン14の熱がキャブレタ13に伝わり難くなる。エンジン14に保持されているキャブレタ13をエンジン14に近接して配置しても、エンジン14の熱がヒートインシュレータ41を通じてキャブレタ13に伝わり難くなる。キャブレタ13内の燃料が、エンジン14の熱により気化し難くなる。
【0025】
しかしながら、このようにエンジン14とキャブレタ13との間にヒートインシュレータ41を介在させた場合、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に隙間が形成され易い。また、ヒートインシュレータ41とキャブレタ13との間に隙間が形成され易い。
たとえばヒートインシュレータ41など成形誤差により、これらの隙間が形成され得る。
この他にもたとえば、エンジン14やキャブレタ13は一般的に金属材料で形成されるのに対し、ヒートインシュレータ41は断熱性能を得るために断熱性の樹脂材料で形成される。このように異種材料を用いた場合、ヒートインシュレータ41の形状およびサイズは、エンジン14とキャブレタ13との間で変化する。たとえば冷却されている状態と加熱されている状態とで異なる。この変形により、温度に応じた隙間が形成され得る。冷却状態および加熱状態の少なくとも一方の状態において、隙間が形成され得る。
特に、携帯型作業機は屋外で使用される。屋外の使用環境温度はたとえば−40度から50度の範囲と広い。このような使用環境下では、ヒートインシュレータ41は環境温度に従って大きく変形する。
これらの要因により隙間が形成され得る。キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路の気密性が低下する。その結果、混合気が、流路に形成された隙間から外へ漏れ出る。また、エンジン14は、流路に形成された隙間から流路へ入った外気を吸う。
また、上述のように剛体であるエンジン14またはキャブレタ13との間には、隙間が発生してしまう。その隙間には、燃料が溜まる場合がある。そして、この燃料が濃い混合気として不意にエンジン14に供給されると、エンジン14の動作や燃費等に悪影響を与えてしまう。
しかし、本願ではヒートインシュレータ41に加えて弾性部材51を配置したため、気密性が高まり、上記の隙間を防止することができる。
【0026】
また、エンジン14とキャブレタ13との間にヒートインシュレータ41を介在させたとしても、エンジン14を停止した後に、エンジン14から高温のガスが混合気の流路を逆流することがある。その結果、エンジン14動作中にある程度温められた状態にあるヒートインシュレータ41および弾性部材51は、エンジン14を停止した後の残熱で更に熱せられ得る。これにより、キャブレタ13が熱平衡温度が上昇し、キャブレタ13内の燃料が気化し、エンジン14の再始動性が悪化する、可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路の気密性を得るために、キャブレタ13とエンジン14との間にヒートインシュレータ41とともに弾性部材51を介在させる。
以下、詳しく説明する。
【0028】
図4は、図3のエンジンモジュール3についての吸気系の詳しい構成を示す模式図である。
図4には、左側から、キャブレタ13、ヒートインシュレータ41、弾性部材51、エンジン14が図示されている。キャブレタ13の左側には、エアクリーナ12が取り付けられる。
【0029】
キャブレタ13は、キャブレタ本体61と、固定板62とを有する。
キャブレタ本体61には、ベンチュリ管が形成される。ベンチュリ管において、エアクリーナ12から吸引される空気に、燃料が気化する。
固定板62は、平板形状を有する。固定板62は、キャブレタ本体61についての図4の右側に取り付けられる。キャブレタ13は、固定板62は、ヒートインシュレータ41に設けられた固定ネジに固定される。後述するように、ヒートインシュレータ41は、シリンダブロック22に取り付けられる。これにより、キャブレタ13は、エンジン14に取り付けられる。キャブレタ13は、エンジン14に保持される。
【0030】
ヒートインシュレータ41は、キャブレタ13への熱の伝達を抑制するものである。ヒートインシュレータ41は、たとえばガラス繊維を樹脂バインダで固めた耐熱性の樹脂部材により構成してよい。樹脂材料は、熱伝導率が低い材料で形成するとよい。これにより、ヒートインシュレータ41を通じた熱の伝導が抑制できる。
ヒートインシュレータ41は、本体として、隔壁部42と、第1円筒部43とを有する。
【0031】
第1円筒部43は、円柱形状の外形を有する。第1円筒部43に、円柱形状の第1供給孔44が形成される。これにより、第1円筒部43は、略円筒形状を有する。
第1円筒部43は、キャブレタ13と弾性部材51との間に挟まれる。第1円筒部43は、キャブレタ13とエンジン14との間に介在する。第1供給孔44は、キャブレタ13のベンチュリ管と連結する。
また、第1円筒部43についての円筒形状の両端面は、キャブレタ13の固定板62と弾性部材51とに接触する。これら両端面を、ヒートインシュレータ41の接触面としてよい。
【0032】
隔壁部42は、略平板形状を有する。隔壁部42の略中央を第1円筒部43が貫通する。キャブレタ13と弾性部材51との間に第1円筒部43を挟んだ状態において、隔壁部42は、キャブレタ13とエンジン14との間の空間を縦に仕切る。エンジン14の熱が、空間を通じてキャブレタ13へ伝わり難くなる。
【0033】
図5は、ヒートインシュレータ41の第1円筒部43を示す模式図である。図5(A)は、第1円筒部43の縦断面図である。図5(B)は、第1円筒部43についての弾性部材51側の側面図である。
図5に示すように、第1円筒部43についての弾性部材51側の端部には、円筒形状の外環状部45と、円筒形状の内環状部46とが立設される。外環状部45と、内環状部46との間には、リング形状の溝部47が形成される。
内環状部46は、外環状部45の内側に設けられる。内環状部46は、外環状部45より高い。内環状部46は、外環状部45の内側から、突出する。
そして、外環状部45の外周面は、第1円筒部43の外周面の一部を構成する。内環状部46の内周面は、第1供給孔44による内周面の一部を構成する。
ヒートインシュレータ41の第1円筒部43についての、弾性部材51側の一方の側面(接触面)は、外環状部45の先端を接触面として、内環状部46による嵌合部が形成される。外環状部45の先端の接触面の法線方向は、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねる方向と略平行である。
ヒートインシュレータ41の第1円筒部43についての、キャブレタ13側の他方の側面(接触面)は、平面に形成される。該平面の法線方向は、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねる方向と略平行である。
【0034】
弾性部材51は、たとえばシリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料で形成してよい。弾性部材51は、圧力が加えられると、変形する。なお、本実施形態の弾性部材51の硬度はHs95程度である。また、弾性部材51の耐熱温度が170℃、好ましくは230℃の断熱性能であることが望ましい。
弾性部材51は、弾性部材51の本体として、第2円筒部52を有する。第2円筒部52は、略円柱形状の外形を有する。第2円筒部52に、円柱形状の第2供給孔53が形成される。これにより、第2円筒部52は、略円筒形状を有する。
第2円筒部52の外周は、ヒートインシュレータ41の第1円筒部43の外周と略同じ大きさに形成される。
第2供給孔53は、第1供給孔44と同径に形成される。
また、弾性部材51は、ヒートインシュレータ41よりも低い弾性係数を有するとよい。
弾性部材51の第2円筒部52とヒートインシュレータ41の第1円筒部43とが重ねられた状態で、第2供給孔53は、第1供給孔44と連通する。第2供給孔53による内周面と第1供給孔44による内周面とは、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねることにより段差なく滑らかに連続する。
つまり、第1供給孔44と第2供給孔53とが重ねられることにより、弾性部材51が混合気の供給通路の一部を形成する。ここで、弾性部材51が3mm以上、供給通路を形成することが望ましい。
【0035】
第2円筒部52についての、ヒートインシュレータ41側の一方の側面(接触面)には、第1凹部54が形成される。第1凹部54により、該接触面には、円柱形状の窪みが形成される。接触面には、円形の開口が形成される。
弾性部材51の第2円筒部52についての、ヒートインシュレータ41側の接触面には、第1凹部54による嵌合部が形成される。
弾性部材51についての、ヒートインシュレータ41側の接触面の法線方向は、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねる方向と略平行である。
第1凹部54に、ヒートインシュレータ41の内環状部46が嵌合する。
内環状部46の先端縁は、第1凹部54の底面に当たる。
【0036】
第2円筒部52についての、エンジン14側の他方の側面(接触面)には、第2凸部55が形成される。第2凸部55により、該接触面には、円柱形状の突起が形成される。
第2円筒部52についての、エンジン14側の接触面の法線方向は、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねる方向と略平行である。
第2凸部55は、エンジン14の吸気ポートに形成される第2凹部90と嵌合する。
第2凸部55の先端縁は、第2凹部90の底面に当たる。
【0037】
弾性部材51は、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に挟まれる。
弾性部材51は、第1凹部54がヒートインシュレータ41側となる向きで、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に配置される。
そして、図4に示すように、キャブレタ13とエンジン14との間にヒートインシュレータ41および弾性部材51を配置し、キャブレタ13をエンジン14にねじ止め固定する。
これにより、キャブレタ13とエンジン14との間に、ヒートインシュレータ41および弾性部材51がその順番で配置される。ヒートインシュレータ41についての図4で左側の端面では、ヒートインシュレータ41の内環状部46が、弾性部材51の第1凹部54に挿入される。弾性部材51とヒートインシュレータ41とは互いに嵌合する。互いにずれ難い。ヒートインシュレータ41の外環状部45と弾性部材51との間には、隙間が形成され難い。ヒートインシュレータ41と弾性部材51とは、その全周において、隙間なく互いに密着できる。
特に、嵌合させた状態で、ヒートインシュレータ41の外環状部45は、弾性部材51の側面に当たる。弾性部材51は、ヒートインシュレータ41がキャブレタ13の固定板62に圧接されるように、弾性変形する。このため、ヒートインシュレータ41の外環状部45と弾性部材51との間には隙間が形成され難い。
【0038】
また、第1供給孔44と第2供給孔53とは同じ断面に形成され、弾性部材51をヒートインシュレータ41に接触させているので、互いを嵌合させた状態で、第1供給孔44と第2供給孔53とは段差なくなめらかに連続する。混合気の流れは、第1供給孔44と第2供給孔53との連結部分で乱れることなく、第1供給孔44から第2供給孔53へ流れ得る。
これに対して、仮にたとえばヒートインシュレータ41とこれと連結される他の部材との間に溝を形成し、この溝にOリングなどを挿入して気密性を確保しようとした場合、Oリングの一部が、溝から流路へはみ出る。このはみ出た部分により、混合気の流路には、段差が形成される。この段差により、混合気の流れは乱れ、妨げられる。
【0039】
また、弾性部材51は、キャブレタ13をエンジン14にねじ止め固定する力により、弾性変形する。ヒートインシュレータ41は、弾性力によりキャブレタ13側に押され、キャブレタ13の固定板62に圧接される。ヒートインシュレータ41についての図4で左側の平面の接触面は、平板形状の固定板62と隙間なく密着できる。
このように、キャブレタ13とエンジン14との間にヒートインシュレータ41とともに弾性部材51を介在させることにより、キャブレタ13とヒートインシュレータ41との間、ヒートインシュレータ41と弾性部材51との間、および弾性部材51とエンジン14との間に、隙間が形成され難くなる。キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路について、高い気密性を確保できる。キャブレタ13で生成される混合気を効率よくエンジン14へ供給できる。
これに対し、仮にたとえばキャブレタ13とエンジン14との間にヒートインシュレータ41のみを介在させた場合、これらの成形精度や、固定ネジによる固定構造に起因して、キャブレタ13とヒートインシュレータ41との間またはインシュレータとエンジン14との間に隙間が形成される。キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路では、混合気を吸引するための負圧が低下する可能性がある。
【0040】
以上のように、本実施形態では、キャブレタ13とエンジン14との間にヒートインシュレータ41とともに、弾性部材51が介在する。
そして、弾性部材51は、第2供給孔53がヒートインシュレータ41の第1供給孔44と連通するように、キャブレタ13とエンジン14との間でヒートインシュレータ41に重ねられる。よって、ヒートインシュレータ41についての第1供給孔44の周辺部分には、弾性部材51が全周にわたって接触する。ヒートインシュレータ41と弾性部材51との間に隙間が形成されない。
また、エンジン14に対しても、弾性部材51が全体的に接触する。弾性部材51とエンジン14との間に隙間が形成されない。
【0041】
また、本実施形態では、弾性部材51およびヒートインシュレータ41は、各々の接触面に嵌合部が形成される。そして、これら接触面の嵌合部を互いに嵌合させた状態で、弾性部材51は、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に重ねて挟まれる。嵌合することにより弾性部材51とヒートインシュレータ41とは一体化し、その状態でキャブレタ13とエンジン14との間に配置される。
また、ヒートインシュレータ41についての第1供給孔44の周辺部分には、弾性部材51が全周にわたって接触するので、ヒートインシュレータ41をキャブレタ13に押しつけることが可能になる。しかも、ヒートインシュレータ41の接触面の法線方向と弾性部材51の接触面の法線方向とは共に、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねる方向と平行になる。これにより、ヒートインシュレータ41は、キャブレタ13に対して真直ぐに押し当てられる。キャブレタ13とヒートインシュレータ41とは密着し、これらの間に隙間が形成されない。
【0042】
以上の効果により、本実施形態では、キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路について、高い気密性が得られる。キャブレタ13、ヒートインシュレータ41、弾性部材51、エンジン14の温度によらず、高い気密性を維持できる。
【0043】
また、本実施形態では、ヒートインシュレータ41についての弾性部材51との接触面に、リング形状の溝部47による開口が形成される。これにより、ヒートインシュレータ41と弾性部材51との接触面積を小さくできる。弾性部材51からヒートインシュレータ41へ熱が伝わり難くなる。接触面全体での熱抵抗を大きくできる。
さらに、溝部47内が空気層となるため、キャブレタ13とエンジン14との間の断熱効果を、より高めることができる。
なお、このような接触面の開口は、弾性部材51についてのヒートインシュレータ41との接触面に形成してよい。また、双方の接触面に形成してよい。ただし、ヒートインシュレータ41は、弾性部材51と比べて変形し難い。開口の形状を維持し易い。ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを圧接した状態でも、形成した凹部のサイズおよび形状を維持し、設計上の熱抵抗が得られることを期待できる。
【0044】
特に、本実施形態では、ヒートインシュレータ41には、弾性部材51と嵌合する凸部(内環状部46)の周囲にリング形状の溝部47を形成し、さらにリング形状の溝部47の外側に外環状部45を形成する。内環状部46と嵌合した状態で、弾性部材51は、外環状部45とその全周に渡って当接する。
ヒートインシュレータ41と弾性部材51との間に高い気密性を確保しながら、熱抵抗を大きくできる。また、ヒートインシュレータ41に対して、キャブレタ13へ真直ぐに押し当てる力を作用させることができる。
【0045】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る刈払機1のエンジンモジュール3の混合気の経路を示す部分模式図である。第2実施形態に係る刈払機1の基本的な構成は、第1実施形態のものと同様である。以下は、第1実施形態との相違点について説明する。
【0046】
図6に示すように、キャブレタ13の固定板62は、ヒートインシュレータ41に固定される。ヒートインシュレータ41は、シリンダブロック22に固定される。これにより、キャブレタ13は、エンジン14に固定して保持される。キャブレタ13とエンジン14との間には、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とが介在する。
【0047】
図7は、図6のA−A断面図である。図7には、ヒートインシュレータ41の第1円筒部43についての、キャブレタ13側の接触面71が図示される。
図8は、図6のB−B断面図である。図8には、ヒートインシュレータ41の第1円筒部43についての、エンジン14側の接触面72が図示される。
ヒートインシュレータ41の第1円筒部43は、円柱形状の外形を有する。第1円筒部43には、第1供給孔44が形成される。第1円筒部43は、全体的には略円筒形状に形成される。
なお、図7および図8には、一対のスペーサ部81が図示されている。一対のスペーサ部81は、第1円筒部43の周囲に形成される。各スペーサ部81には、貫通孔82が形成される。貫通孔82には、たとえばエンジン14に立設された図示外のネジが挿入される。ヒートインシュレータ41は、エンジン14に固定して保持される。スペーサ部81および貫通孔82は、3つ以上でもよい。
【0048】
図7に示すように、略円筒形状の第1円筒部43についての、キャブレタ13側の接触面71には、第1円弧溝73が形成される。第1円弧溝73は、半円弧形状の溝である。第1円弧溝73は、第1供給孔44の外周に沿って形成される。第1円弧溝73により、キャブレタ13側の接触面71に半円弧形状の開口が形成される。
図8に示すように、略円筒形状の第1円筒部43についての、エンジン14側の接触面72には、第2円弧溝74が形成される。第2円弧溝74は、半円弧形状の溝である。第2円弧溝74は、第1供給孔44の外周に沿って形成される。第2円弧溝74により、エンジン14側の接触面72に半円弧形状の開口が形成される。
キャブレタ13側の第1円弧溝73についての図7上方の一端と、弾性部材51側の第2円弧溝74についての図8上方の一端とは、第1連通孔75により互いに連通する。第1連通孔75は、第1円筒部43の円筒軸方向に沿って形成される。第1連通孔75により、キャブレタ13側の接触面71と、エンジン14側の接触面72とに、円形の開口が形成される。ただし、これら円形の開口は、半円弧形状の開口と重なる。
【0049】
図6に示すように、ヒートインシュレータ41は、弾性部材51と重ねて、キャブレタ13とエンジン14との間に挟まれる。
この状態では、第1円筒部43についてのエンジン14側の接触面72に、弾性部材51が圧接される。第2円弧溝74と弾性部材51の接触面との間に、円弧形状の通路が形成される。
また、弾性部材51による圧接力により、ヒートインシュレータ41は、キャブレタ13に押し付けられる。第1円筒部43についてのキャブレタ13側の接触面71は、キャブレタ13の固定板62と密着する。第1円弧溝73と固定板62との間に、円弧形状の通路が形成される。
このようにキャブレタ13とエンジン14との間に挟むことにより、ヒートインシュレータ41には、第1円弧溝73、第1連通孔75および第2円弧溝74による流路が形成される。空気などの流体が移動可能な通路が形成される。この流路に、冷たい外気などの気流を流すことにより、ヒートインシュレータ41をその内部から冷却できる。また、ヒートインシュレータ41の全体を効果的に冷却できる。
【0050】
図8に示すように、略円筒形状の第1円筒部43についての、エンジン14側の接触面72には、円柱形状の第1凸部48が形成される。第1凸部48は、第1円筒部43についてのエンジン14側の接触面72から突出する。第1凸部48の円柱形状の内面は、第1供給孔44と同じ形状である。
【0051】
弾性部材51は、圧力により変形し、弾性力を発揮するものである。弾性部材51は、たとえばシリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料で形成してよい。ゴム材料は、圧力が加えられると、変形し、弾性力を生じる。
弾性部材51は、弾性部材51の本体として、第2円筒部52を有する。第2円筒部52は、略円板形状の外形を有する。第2円筒部52に、円柱形状の第2供給孔53が形成される。これにより、第2円筒部52は、平らな略円筒形状を有する。
【0052】
第2円筒部52についての、図6左側の側面(接触面)には、第1凹部54が形成される。第1凹部54は、円柱形状の窪みである。第1凹部54には、第1凸部48が挿入可能である。これにより、弾性部材51とヒートインシュレータ41とは一体化する。
また、弾性部材51は、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に挟まれる。この際、第1凹部54の奥底に第1凸部48が当たる。弾性部材51に対して大きな変形をさせる力が作用したとしても、弾性部材51は、その力を第1凹部54の奥底で受けることができる。その力が、弾性部材51の接触面とヒートインシュレータ41の接触面72との間に作用し難くなる。大きな力による弾性部材51の過剰な変形を抑制し、ヒートインシュレータ41の接触面72と弾性部材51の接触面とが密着した状態を維持できる。
【0053】
第2円筒部52についての、図6右側の側面(接触面)には、第2凸部55が形成される。第2凸部55は、円筒形状を有する。第2凸部55は、第2円筒部52についてのエンジン14側の接触面から突出する。第2凸部55の円柱形状の内面は、第2供給孔53と同じ形状である。
シリンダブロック22についての、図6左側の側面(接触面)には、第2凹部90が形成される。第2凹部90は、円柱形状の窪みである。第2凹部90には、第2凸部55が挿入可能である。これにより、弾性部材51とシリンダブロック22とは連結される。
また、弾性部材51は、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に挟まれる。この際、第2凹部90の奥底に第2凸部55が当たる。弾性部材51に対して大きな変形をさせる力が作用したとしても、弾性部材51は、その力を第2凹部90の奥底で受けることができる。その力が、弾性部材51の接触面とエンジン14の接触面との間に作用し難くなる。大きな力による弾性部材51の過剰な変形を抑制し、弾性部材51の接触面とエンジン14の接触面とが密着した状態を維持できる。
また、第2凹部90および第2凸部55は、第1凹部54および第1凸部48より大径に形成される。第1凹部54と第1凸部48との嵌合部は、第2凹部90および第2凸部55の嵌合部に囲まれ、エンジン14に対して変位し難くなる。
【0054】
弾性部材51は、第2円筒部52から外へ突出するスリーブ91を有する。
スリーブ91には、第2連通孔92が形成される。第2連通孔92の一端は、第2円筒部52についての、図6左側の接触面に開口を形成する。
【0055】
図6に示すように、弾性部材51は、ヒートインシュレータ41と重ねた状態で、ヒートインシュレータ41とエンジン14との間に挟まれる。
弾性部材51についての、図6左側の接触面に開口を形成する第2連通孔92は、
ヒートインシュレータ41についての、図6右側の接触面に開口を形成する第2円弧溝74と、連通する。第2連通孔92は、第2円弧溝74の他端側に連通する。
スリーブ91には、チューブ101の一端が取り付けられる。チューブ101の他端は、ノズル102に連結される。
ノズル102は、シリンダブロック22の側面を貫通する。ノズル102の先端は、クランク室25に露出する。
また、ノズル102は、チェック弁などの一方向弁103を有する。
一方向弁103は、弁の両側に圧力差がある場合であって、更に所定の一方側の圧力が高い場合のみ、弁が開く。それ以外の場合は、弁が閉じた状態に維持される。ここでは、一方向弁103は、クランク室25の圧力より、外気の圧力が高い場合に、弁が開く。これにより、クランク室25へ外気を引き込むことができる。
【0056】
キャブレタ13は、ヒートインシュレータ41および弾性部材51を介してエンジン14に固定される。これにより、ノズル102、チューブ101、弾性部材51の第2連通孔92、ヒートインシュレータ41の第2円弧溝74、第1連通孔75、第1円弧溝73、およびキャブレタ13の連通孔63は、連通する。
この通路により、エアクリーナ12からクランク室25へ、冷たい外気を引き込むことができる。
エンジン14のクランク室25の負圧が作用するパルス通路が形成される。
パルス通路では、冷たい外気が、エアクリーナ12からクランク室25へ一方向に移動する。この一方向の冷気の流れにより、ヒートインシュレータ41および弾性部材51を強制的に冷却できる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、キャブレタ13とエンジン14との間に、ヒートインシュレータ41を介在させている。よって、キャブレタ13からエンジン14までの混合気の流路について、高い気密性が得られる。キャブレタ13、ヒートインシュレータ41、弾性部材51、エンジン14の温度によらず、高い気密性を維持できる。
【0058】
また、ヒートインシュレータ41により、エンジン14の熱がキャブレタ13に伝わり難くなる。
しかも、本実施形態では、ヒートインシュレータ41に、第1円弧溝73、第2円弧溝74、および第1連通孔75による開口を形成し、この開口が、ヒートインシュレータ41についての第1供給孔44による内周面以外の面に開口を形成する。よって、ヒートインシュレータ41は、開口から外気などの気流が入り、冷却される。ヒートインシュレータ41を内部から冷却し、ヒートインシュレータ41の温度を抑えることにより、キャブレタ13の温度上昇を抑えることができる。
また、本実施形態では、弾性部材51に、第2連通孔92による開口を形成し、この開口が、弾性部材51についての第2供給孔53による内周面以外の面に開口を形成する。弾性部材51は、開口から外気などの気流が入り、冷却される。弾性部材51を内部から冷却し、弾性部材51の温度を抑えることにより、キャブレタ13の温度上昇を抑えることができる。
特に、ヒートインシュレータ41および弾性部材51にパルス通路を形成し、冷たい外気を強制的に流しているので、ヒートインシュレータ41の温度および弾性部材51の温度は効果的に抑えられる。ヒートインシュレータ41および弾性部材51を全体的に冷却できる。ヒートインシュレータ41の周囲にケーシング16などのカバーが配置されていたとしても、ヒートインシュレータ41を効率よく冷却できる。ヒートインシュレータ41が高温にならないようにできる。
単にヒートインシュレータ41の表面に開口を形成し、この表面の開口に外気を自然に導入する場合と比べて、ヒートインシュレータ41の温度上昇を効果的に抑えることができる。
その結果、エンジン14を停止した後に、エンジン14から高温のガスが混合気の流路を逆流することがあっても、逆流するガスを、温度上昇が抑えられたヒートインシュレータ41および弾性部材51により冷却できる。また、エンジン14を停止した後の、ヒートインシュレータ41および弾性部材51の熱平衡温度の上昇を抑えることができる。
また、エンジン14作動中でのキャブレタ13の温度上昇を抑え、さらにエンジン14を停止した後のキャブレタ13の温度上昇を効果的に抑えることができる。エンジン14を停止した後のキャブレタ13の熱平衡温度の上昇を効果的に抑えることができる。
それゆえ、本実施形態では、エンジン14とキャブレタ13との間にヒートインシュレータ41を介在させた状態で、ヒートインシュレータ41を冷却し、キャブレタ13の温度上昇を抑えることができる。高い再始動性能が得られる。
【0059】
また、本実施形態では、ヒートインシュレータ41に流す外気を、ヒートインシュレータ41ではなく、弾性部材51から取り出している。
ヒートインシュレータ41の第1円筒部43に、外気を取り出すための孔を開けなくてよい。樹脂材料で構成されるヒートインシュレータ41の形状が複雑化しない。弾性材料で構成される弾性部材51には、ヒートインシュレータ41に流す外気を取り出す第2連通孔92を容易に形成できる。
ヒートインシュレータ41および弾性部材51を容易に形成できる。
これに対して、仮にたとえばヒートインシュレータ41に外気の通路を形成する場合、ヒートインシュレータ41から外気を取り出すために、ヒートインシュレータ41の第1円筒部43と弾性部材51との接触面の外周部分、またはヒートインシュレータ41の第1円筒部43とキャブレタ13との接触面の外周部分に、切欠きを形成することになる。これらの部位に切欠きを形成すると、ヒートインシュレータ41に作用する弾性力のバランスが崩れる。ヒートインシュレータ41が斜めになる可能性がある。ヒートインシュレータ41が傾斜すると、混合気の流路に隙間が形成され易い。たとえばキャブレタ13とヒートインシュレータ41との間に隙間が形成され易い。隙間を通じて、混合気が外へ漏れたり、外気がエンジン14に吸い込まれたりする。
【0060】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0061】
たとえば上記実施形態では、キャブレタ13とエンジン14との間に、ヒートインシュレータ41と弾性部材51とを重ねて介在させている。
この他にもたとえば、キャブレタ13とエンジン14との間に、第1の弾性部材、ヒートインシュレータ、および第2の弾性部材とを重ねて介在させてよい。また、複数のヒートインシュレータを用いてもよい。
【0062】
上記第二実施形態では、エンジン14の負圧により空気等を吸引するパルス通路が、ヒートインシュレータ41および弾性部材51に形成されている。
この他にもたとえば、パルス通路は、ヒートインシュレータ41および弾性部材51のいずれか一方のみに形成されてよい。また、パルス通路ではなく、単に外気と連通する通路が、ヒートインシュレータ41または弾性部材51に形成されてもよい。
また、パルス通路等には、空気ではなく、オイルなどの流体が流れてもよい。
【0063】
上記実施形態は、本発明を、刈払機1に適用した例である。
この他にもたとえば、本発明は、ポールソー、ポールヘッジトリマ、コーヒーハーベスタに適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 刈払機(携帯側作業機)、3 エンジンモジュール(エンジン装置)、13 キャブレタ、14 エンジン、41 ヒートインシュレータ(インシュレータ)、43 第1円筒部、44 第1供給孔、45 外環状部、46 内環状部(嵌合部)、47 溝部(開口)、48 第1凸部(嵌合部)、51 弾性部材、52 第2円筒部、53 第2供給孔、54 第1凹部(嵌合部)、55 第2凸部、71,72 接触面、73 第1円弧溝(開口)、74 第2円弧溝(開口)、75 第1連通孔(開口)、92 第2連通孔(開口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8