(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記磁気センサの出力値が前記基準値より小さい場合、前記磁気センサを通過した前記磁気スケールが前記浅溝であると判定し、前記磁気センサの出力値が前記基準値より大きい場合、前記磁気センサを通過した前記磁気スケールが前記深溝であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の変位センサ。
前記基準値更新部は、前記浅溝が通過したと判定された場合の前記磁気センサの出力値と、前記深溝が通過したと判定された場合の前記磁気センサの出力値と、の中間の値に前記基準値を更新する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変位センサ。
前記基準値更新部は、前記浅溝が通過したと判定された場合の前記磁気センサの出力値の平均値と、前記深溝が通過したと判定された場合の前記磁気センサの出力値の平均値と、の中間の値に前記基準値を更新する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の変位センサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における変位センサ10が組み込まれたダンパ100を示す構成図である。
【0012】
ダンパ100は、作動流体が封入されたシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に収装されたピストン2と、一端がピストン2に結合され他端がシリンダ1の外部へと延在する可動体としてのロッド3と、ロッド3のストローク量(変位量)を検出する変位センサ10と、を備える。
【0013】
シリンダ1の開口端には、シリンダ1を封止するシリンダヘッド4が設けられる。シリンダヘッド4は、ロッド3の外周と摺接するベアリング5を内周に有してロッド3を軸支する。
【0014】
シリンダヘッド4よりロッド3の他端側には、シリンダヘッド4と同軸状にセンサホルダ6が設けられる。センサホルダ6は、内周から外周まで径方向に連通して変位センサ10のセンサ機構11(
図2)が挿入される連通孔7と、連通孔7よりロッド3の他端側の内周に設けられシリンダ1内へのダストの侵入を防止するダストシール8と、を有する。
【0015】
ロッド3は、鉄等の磁性体によって形成される。ロッド3には、多数の磁気スケール9がロッド3の変位方向である軸方向に沿って一列に所定の間隔をもって形成される。変位センサ10のセンサ機構11(
図2)は、ロッド3の磁気スケール9に対向するようにセンサホルダ6内に収装される。
【0016】
図2は、変位センサ10を拡大して示す拡大図である。
【0017】
変位センサ10は、ロッド3のストローク量に応じた磁界の変化を電気信号として出力するセンサ機構11と、センサ機構11と配線12によって接続されセンサ機構11から出力される電気信号を増幅する増幅回路(図示せず)を有する基板13と、センサ機構11を支持するとともに基板13を収容する有底筒状のケース14と、ケース14の開口部14aに覆設されるカバー15と、基板13において増幅された電気信号に基づいてロッド3のストローク量を演算するコントローラ30と、を備える。
【0018】
ケース14は、センサホルダ6の外周に固定され、側面にセンサホルダ6の連通孔7と連通するセンサ用開口部14bを有する。カバー15は、ケース14の開口部14a側のケース14に固定され、ケース14内の外部配線16を外部へと引き出すための孔15aを有する。
【0019】
センサ機構11は、ケース14のセンサ用開口部14bに支持される基端部17と、基端部17に対してセンサ機構11の軸方向に移動可能な磁気センサとしてのセンサ部18と、センサ部18と基端部17との間に介装されセンサ部18をロッド3側に付勢するスプリング19と、を有する。
【0020】
センサ部18のロッド3側には、円環状のベアリング20が装着され、センサ部18はベアリング20を介してロッド3と摺接する。ベアリング20は、樹脂等の絶縁材料によって形成される。ベアリング20の軸方向の厚みは、スプリング19によって付勢されるセンサ部18とロッド3とが所定の隙間を有するように予め設定される。
【0021】
センサ部18は、ロッド3の変位によって磁気スケール9が通過する位置に設けられ、磁気スケール9によって変化する磁界に応じた電気信号を出力する。磁気スケール9は、所定の深さを有する溝である浅溝23と浅溝23より深い溝である深溝24とから構成され、ロッド3の軸方向に所定の間隔を有して形成される。深溝24は、隣接する深溝24間の浅溝23の数がそれぞれ異なるように配設される。
【0022】
センサ部18の先端中央には、センサIC25が内蔵されている。センサIC25は、永久磁石やMR素子(磁気抵抗効果素子)等から構成され、MR素子に作用する磁界に応じて内部回路の抵抗値を変化させる。センサIC25は、配線12を介して一定の電圧が印加され、抵抗値に応じた電圧値を出力信号として配線12を介して出力する。
【0023】
基板13は、ケース14の内面であってロッド3の軸方向に垂直な面に固定される。配線12は、センサ機構11の基端部17の背面からロッド3の軸に垂直な方向に延出するとともに、基板13の表面からロッド3の軸に平行に延出し、途中で屈曲する屈曲部12aを有する。
【0024】
これにより、センサ機構11の基端部17から延出する配線12と、基板13から延出する配線12との、屈曲部12aにおいてなす角度は90度である。なお、屈曲部12aは、直角に折れ曲がっている必要はなく所定の曲率をもって屈曲していればよい。
【0025】
基板13は、ボルト21によって仮止めされた後、シリコン樹脂やエポキシ樹脂等のモールド樹脂22によって全周をモールドされる。基板13のモールドは、屈曲部12aがモールド樹脂22の外側に位置するように、ケース14内の一部である基板13付近の一か所においてのみ行われる。すなわち、モールド樹脂22は基板13の全周にわたって設けられる一方、配線12については基板13から延出する所定長さ分だけがモールドされる。
【0026】
さらに、基板13には、増幅回路によって増幅した電気信号をケース14外へと伝達する外部配線16が接続される。外部配線16は、カバー15の孔15aを通して外部へと引き出される。
【0027】
変位センサ10は以上のように構成され、ロッド3のストロークによってセンサ機構11のセンサ部18に対向する磁気スケール9が移動すると、センサ機構11から出力される電気信号が基板13の増幅回路に伝達されて信号が増幅された後、ケース14外のコントローラ30に送信される。コントローラ30は、変位センサ10から送信される電気信号を処理することでロッド3のストローク量を導出する。
【0028】
図3は、ロッド3に形成された磁気スケール9と、この磁気スケール9が通過した際のセンサIC25の出力信号と、の関係を示す図である。
【0029】
センサIC25の出力信号としての電圧値は、溝がない場合に最低となり、溝の深さが深いほど高くなる。浅溝23は所定の間隔をあけて形成されているので、ロッド3が変位すると、浅溝23が断続的にセンサIC25の前を通過する。これに伴って、センサIC25の出力信号は、溝のない領域に対応する電圧を谷とし、浅溝23のある領域に対応する電圧を山とする正弦波として出力される。
【0030】
さらに、深溝24がセンサIC25の前を通過すると、センサIC25とロッド3の表面とのギャップがさらに大きくなるので、電圧値は浅溝23の場合よりも高くなる。
【0031】
コントローラ30は、上記のようにセンサIC25の出力信号を解析することで、ロッド3の変位の有無、変位量、変位方向などを演算することができる。また、隣接する深溝24間の浅溝23の数は、それぞれ異なる個数に設定されるので、隣接する深溝24及び当該深溝24間の浅溝23を検出することで、コントローラ30はロッド3の絶対位置を演算することができる。
【0032】
図4は、コントローラ30の制御処理を示すフローチャートである。本制御処理は、変位センサ10又は変位センサ10が組み込まれたダンパ100の起動時に実行される。なお、実行のタイミングは、当該ダンパ100が搭載された車両のシステム起動時であってもよいし、システム起動後にダンパ100が初めてストロークする時であってもよい。また、上記制御処理は、システム起動後に常時実行されていてもよい。
【0033】
ステップS1においてコントローラ30は、センサ部18から基板13を介して出力される信号を読み込む。センサ部18からの出力信号は電圧値であり、ロッド3のストローク量にかかわらず所定のサンプリング周期で出力される。
【0034】
ステップS2においてコントローラ30は、読み込んだ出力信号がピーク値であるか否かを判定する。出力信号がピーク値であると判定されると処理がステップS3へ進み、ピーク値でないと判定されると処理がステップS1へ戻る。
【0035】
出力信号である電圧値は、
図3に示すように、ロッド3のストロークに応じて上下に変動して正弦波となる。この正弦波の山に相当する値が出力された時、出力信号がピーク値であると判定される。例えば、処理がステップS1及びステップS2(条件不成立)を所定の周期で繰り返している場合に、出力信号が上昇から下降に転じた時、正弦波の山に相当する値が出力されたと判定され、この時の出力信号をピーク値であると判断する。
【0036】
ステップS3において判定部としてのコントローラ30は、ピーク値が基準値以下であるか否かを判定する。ピーク値が基準値以下であると判定されると処理がステップS4へ進み、基準値より大きいと判定されると処理がステップS5へ進む。
【0037】
基準値は、
図3に示すように、センサIC25が浅溝23を通過した場合に出力される電圧値のピーク値と深溝24を通過した場合に出力される電圧値のピーク値との中間の値であり、予め設定される。
【0038】
ステップS4においてコントローラ30は、センサIC25の前を浅溝23が通過したと判定し、ステップS1において読み込まれた電圧値を記憶する。
【0039】
ステップS5においてコントローラ30は、センサIC25の前を深溝24が通過したと判定し、ステップS1において読み込まれた電圧値を記憶する。
【0040】
ステップS6においてコントローラ30は、浅溝23が通過したと判定された回数が所定回数以上であるか否かを判定する。所定回数以上であると判定されると処理がステップS7へ進み、所定回数未満であると判定されると処理がステップS1へ戻る。所定回数は、浅溝23が通過した場合に出力される電圧値のばらつきを平均化できる程度の回数に予め設定される。
【0041】
ステップS7においてコントローラ30は、深溝24が通過したと判定された回数が所定回数以上であるか否かを判定する。所定回数以上であると判定されると処理がステップS8へ進み、所定回数未満であると判定されると処理がステップS1へ戻る。所定回数は、深溝24が通過した場合に出力される電圧値のばらつきを平均化できる程度の回数に予め設定される。
【0042】
ステップS8において基準値更新部としてのコントローラ30は、ステップS3において用いる基準値を更新する。基準値は、ステップS4において記憶された浅溝23が通過した場合の電圧値の平均値と、ステップS5において記憶された深溝24が通過した場合の電圧値の平均値と、の中間の値に更新される。例えば、ステップS4において記憶された浅溝23が通過した場合の電圧値の平均値が60Vであり、ステップS5において記憶された深溝24が通過した場合の電圧値の平均値が100Vである場合、基準値は、60Vと100Vとの中間値である80Vに更新される。
【0043】
これにより、変位センサ10が搭載されたダンパ100の次回起動時には、更新された基準値に基づいて浅溝23及び深溝24の通過が判定される。したがって、ダンパ100の長期使用によってロッド3に摺接するベアリング20が摩耗してセンサIC25とロッド3とのギャップが変化しても、この変化に応じて浅溝23及び深溝24を判定する基準値が更新されるので、浅溝23及び深溝24の通過判定を精度よく行うことができる。
【0044】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0045】
浅溝23が通過したと判定された場合の電圧値と、深溝24が通過したと判定された場合の電圧値と、に基づいて基準値を更新するので、ベアリング20の摩耗などによってセンサIC25とロッド3とのギャップが変化しても、センサIC25を通過した磁気スケール9が浅溝23であるか深溝24であるかを精度よく判定することができる。よって、変位センサ10の検出精度の低下を防止することができる。
【0046】
さらに、コントローラ30は、ピーク値が基準値以下である場合、センサIC25の前を浅溝23が通過したと判定し、ピーク値が基準値より大きい場合、センサIC25の前を深溝24が通過したと判定するので、基準値に基づいて浅溝23と深溝24とを精度よく判別することができる。
【0047】
さらに、コントローラ30は、浅溝23が通過した場合の電圧値と深溝24が通過した場合の電圧値との中間の値に基準値を更新するので、ベアリング20の摩耗などによってセンサIC25とロッド3とのギャップが変化した場合に、当該変化に応じて基準値を更新することができる。よって、センサIC25を通過した磁気スケール9が浅溝23であるか深溝24であるかを精度よく判定することができる。
【0048】
さらに、コントローラ30は、浅溝23が通過した場合の電圧値の平均値と深溝24が通過した場合の電圧値の平均値との中間の値に基準値を更新するので、各電圧値のばらつきを平均化して、基準値を浅溝23が通過した場合の電圧値と深溝24が通過した場合の電圧値との中間の値により精度よく設定することができる。よって、センサIC25を通過した磁気スケール9が浅溝23であるか深溝24であるかを精度よく判定することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0050】
例えば、上記実施形態では、磁気スケール9が浅溝23と深溝24との2種類の溝を有する場合について例示したが、3種類以上の溝を磁気スケール9として形成してもよい。この場合、基準値を複数設定することで各溝を判定することができる。
【0051】
さらに、上記実施形態では、基準値を浅溝23が通過した場合の電圧値と深溝24が通過した場合の電圧値との中間の値に更新したが、中間値でなくてもよい。また、基準値を、浅溝23が通過した場合の電圧値より小さい値又は深溝24が通過した場合の電圧値より大きい値に設定し、出力された電圧値との差や比率などに基づいて溝の種類を判定してもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態では、変位センサ10がダンパ100に組み込まれた場合について例示したが、ロッド3が直線運動する構造であればよく、流体圧アクチュエータ等に適用することも可能である。
【0053】
さらに、上記実施形態では、変位センサ10が可動体としてのロッド3のストローク量を検出する場合について例示したが、可動体は直線運動するものに限らず回転体であってもよい。