特許第6122721号(P6122721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122721熱可塑性樹脂発泡体の製造装置及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122721
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡体の製造装置及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/02 20060101AFI20170417BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20170417BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20170417BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
   B29C35/02
   B29C67/22
   B29K105:04
   B29K105:24
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-148952(P2013-148952)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-20309(P2015-20309A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
(72)【発明者】
【氏名】西島 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹田 美稲
(72)【発明者】
【氏名】横山 順一
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−011147(JP,A)
【文献】 特開2000−176955(JP,A)
【文献】 特開平10−329221(JP,A)
【文献】 特開2008−068448(JP,A)
【文献】 特開昭64−024728(JP,A)
【文献】 特開平09−234756(JP,A)
【文献】 特開昭56−137937(JP,A)
【文献】 特開平11−035722(JP,A)
【文献】 特開2014−019768(JP,A)
【文献】 特開2014−070166(JP,A)
【文献】 特開2015−037866(JP,A)
【文献】 米国特許第04589845(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0064641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00−35/18
B29C 44/00−44/60
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び架橋剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを挟持し、一方向に送出する一対の伝熱板と、この一対の伝熱板を介して前記熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱する加熱体とを備え、
前記の一対の伝熱板の少なくともいずれか一方には、前記熱可塑性樹脂組成物から生じたガスを通流させる貫通孔が複数形成され、
前記加熱体は、前記伝熱板の板面に配置されてこの伝熱板に当接する当接部を有し、この当接部の前記伝熱板を向く板面側に、前記貫通孔を通流したガスを排出する流路が形成されている架橋機と、
前記架橋機で架橋処理が施された発泡剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱し、前記発泡剤を発泡させる発泡炉とを備えていることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
【請求項2】
前記流路は、前記伝熱板に向かって開口する凹条であり、前記一方向に対し交叉する方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
【請求項3】
前記流路の幅は、0.5mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
【請求項4】
前記流路の深さは、0.5mm以上前記加熱体の厚さ未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
【請求項5】
前記流路を形成する開口端縁は、面取りされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
【請求項6】
前記加熱体の幅寸法は、前記シートの幅寸法よりも大きく設定され、
前記流路は、前記シートの前記一方向に交叉する方向に延びる両端縁に亘って貫通していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置。
【請求項7】
熱可塑性樹脂及び架橋剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを挟持し、一方向に送出する一対の伝熱板と、前記シートが当接する前記伝熱板の板面と反対の板面に当接する当接部を有した加熱体とを備え、この加熱体を加熱し、前記伝熱板を介して前記シートを加熱して前記熱可塑性樹脂組成物に架橋処理を施す熱可塑性樹脂発泡体の製造方法において、
前記シートを加熱したときに生じるガスを、前記伝熱板に形成した複数の貫通孔に通流させ、
前記貫通孔を通流した前記ガスを前記加熱体に形成した流路に収集し、前記シートが当接する前記伝熱板の板面から除去することで前記熱可塑性樹脂を架橋処理し、
さらに、前記架橋処理が施された発泡剤を含有する前記熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱することにより、前記発泡剤を発泡させることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性樹脂発泡体の製造装置及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂発泡体の製造においては、熱可塑性樹脂組成物に含有される発泡剤を発泡させる発泡工程の前に、熱可塑性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂を架橋する架橋工程が設けられることがある。
熱可塑性樹脂を架橋する方法としては、従来より、熱可塑性樹脂組成物のシートを一対の無端ベルトで挟持し、この無端ベルトを介してヒータ等で加熱する、いわゆるダブルベルト挟持加熱法が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の架橋方法は、熱可塑性樹脂組成物のシートの表面を無穴のベルトによって挟持し、熱可塑性樹脂組成物のシートを空気と遮断した状態で加熱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3792371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の架橋方法によれば、熱可塑性樹脂組成物のシートを無端ベルトにより挟持して空気と遮断した状態で加熱するため、架橋工程後のシートの表層に大きな空隙ないし凹みが形成される現象が起こるという問題があった。そして、このような架橋方法により得られたシートを発泡させると発泡体に外観不良が生じやすいという問題があった。
本発明は、空隙や凹みの発生を防止しつつ熱可塑性樹脂を架橋できる架橋機を備えた熱可塑性樹脂発泡体の製造装置及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題に関し、本発明者らが鋭意検討したところによると、ダブルベルト挟持加熱法による架橋工程後のシートの表層に形成される大きな空隙や凹みは、架橋剤が分解して生じたガスがシートの表面近傍に滞留することにより生じることが分かった。一方、熱可塑性樹脂組成物のシートの表面に通気性を持たせ、酸素と接触させた状態で加熱し熱可塑性樹脂を架橋しようとすると、酸素と接した箇所が十分に架橋され難くなる。そこで、本発明者らは、熱可塑性樹脂組成物の表面に接触する酸素量を極力抑制しつつ、架橋工程で生じたガスを熱可塑性樹脂組成物から除去すれば、外観を損なわずに熱可塑性樹脂を十分に架橋できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置は、熱可塑性樹脂及び架橋剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを挟持し、一方向に送出する一対の伝熱板と、この一対の伝熱板を介して前記熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱する加熱体とを備え、前記の一対の伝熱板の少なくともいずれか一方には、前記熱可塑性樹脂組成物から生じたガスを通流させる貫通孔が複数形成され、前記加熱体は、前記伝熱板の板面に配置されてこの伝熱板に当接する当接部を有し、この当接部の前記伝熱板を向く板面側に、前記貫通孔を通流したガスを排出する流路が形成されている架橋機と、前記架橋機で架橋処理が施された発泡剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱し、前記発泡剤を発泡させる発泡炉とを備えていることを特徴とする。
【0006】
前記流路は、前記伝熱板に向かって開口する凹条であり、前記一方向に対し交叉する方向に形成されていることが好ましい。
【0007】
また、前記流路の幅は、0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0008】
また、流路の深さは、0.5mm以上前記加熱体の厚さ未満であることが好ましい。
【0009】
また、前記流路を形成する開口端縁は、面取りされていることが好ましい。
【0010】
前記加熱体の幅寸法は、前記シートの幅寸法よりも大きく設定され、前記流路は、前記シートの前記一方向に交叉する方向に延びる両端縁に亘って貫通していることが好ましい。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂及び架橋剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のシートを挟持し、一方向に送出する一対の伝熱板と、前記シートが当接する前記伝熱板の板面と反対の板面に当接する当接部を有した加熱体とを備え、この加熱体を加熱し、前記伝熱板を介して前記シートを加熱して前記熱可塑性樹脂組成物に架橋処理を施す熱可塑性樹脂発泡体の製造方法において、前記シートを加熱したときに生じるガスを、前記伝熱板に形成した複数の貫通孔に通流させ、前記貫通孔を通流した前記ガスを前記加熱体に形成した流路に収集し、前記シートが当接する前記伝熱板の板面から除去することで前記熱可塑性樹脂を架橋処理し、さらに、前記架橋処理が施された発泡剤を含有する前記熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱することにより、前記発泡剤を発泡させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置によれば、外観を損なわずに熱可塑性樹脂を十分に架橋することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】は、本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂発泡体の製造装置の模式図である。
図2】は、本発明の一実施形態に係る架橋機の内部を示す模式図である。
図3】は、図2の架橋機に用いられる第一及び第二の無端ベルトの平面図である。
図4】は、図2のIV−IV断面図である。
図5】は、本発明の一実施形態に係る架橋機の加熱体に形成された流路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(熱可塑性樹脂発泡体)
本発明により製造される熱可塑性樹脂発泡体は、ベースポリマーである架橋型の熱可塑性樹脂中に気孔が形成されたものである。
熱可塑性樹脂発泡体に形成された気孔は、それぞれ独立した独立孔でもよく、相互に連通した連通孔でもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、融点又は軟化点以上の温度に加熱されると溶融する樹脂であればよく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルや塩素化ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂、ABS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂等が挙げられ、中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂は、単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂を架橋するのに用いられる架橋剤としては、特に限定されず、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカボネート化合物等の有機過酸化物が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0019】
気孔を形成するのに用いられる発泡剤としては、加熱により分解ガスを発生するものであれば特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の熱分解化学発泡剤が挙げられ、中でも、アゾジカルボンアミドが好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂発泡体は、必要に応じて、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高分子アクリル系等の滑剤、例えば2,6−ジ−ter−ブチル−4−メチルフェノール、2−ter−6−(3’−ter−ブチル−5−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−〔3−(3−ter−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ〕−1−1−ジメチルエチル}2,4,8,10−テトラオクサスピロ−(5,5)アデカーネ、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−ter−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−ter−ブチルアニリン)1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−ter−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ter−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ter−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス−〔(オクチルチオ)メチル〕−ο−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−tert−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイトなどのホスファイト類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類等のリン系酸化防止剤、ジラウリル 3,3‘−チオジプロピオナート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオナート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオナート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオナート)等のイオウ系酸化防止剤、N,N‘ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、ベンゾトリアゾール、2(n−ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等の重金属不活性化剤等の添加剤や、アクリル系多官能モノマー等の任意成分を含有してもよい。
アクリル系多官能モノマーは、アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物である。アクリル系多官能モノマーとしては、例えば、アルカンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレングリコール付加ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレングリコール付加ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0021】
(熱可塑性樹脂発泡体の製造装置)
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある)は、架橋機と発泡炉とを備えるものである。
以下に、本発明の一実施形態に係る製造装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1の製造装置1は、押出機2と、架橋機3と、反転ロール13Aと、反転ロール群13Bと、発泡炉6と、冷却ロール群7と、巻取機8とをこの順で備えている。本実施形態において、発泡炉6の直前には、加熱炉5が備えられている。
【0023】
押出機2は、ホッパー21と、ホッパー21から投入される原料を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物とするシリンダ及びスクリュー(不図示)と、熱可塑性樹脂組成物をシート状物(原反シート)10aに成形する金型22とを備えている。
【0024】
不図示のスクリューを備える押出機2としては、1軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、3本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機等が挙げられる。1軸スクリュー押出機としては、一般的なフルフライト型スクリューに加え、不連続フライト型スクリュー、ピンバレル、ミキシングヘッド等を有する押出機等が用いられる。
2軸スクリュー押出機としては、噛み合い同方向回転型押出機、噛み合い異方向回転型押出機、非噛み合い異方向回転型押出機等が好ましい。なお、押出機2の後段に真空ベントを設けることは、熱可塑性樹脂組成物中に揮発物が残存するのを防ぐのに効果的である。
【0025】
なお、押出機2としては、スクリューを備えるものの他、一般的にプラスチック成形加工で使用されうる溶融混練機であればよく、例えば、ニーダー、ローター、連続混練機等の混練機とシート成形機とを組み合わせたものが挙げられる。
【0026】
架橋機3は、原反シート10aを加熱し、原反シート10aに架橋処理を施して、架橋シート10bとするものである。架橋機3の一例について、図面を参照して説明する。図2は、架橋機3を側面から見た模式図である。
図2の架橋機3は、筐体30と筐体30内に設けられた加熱ユニット3aとを備えている。
【0027】
加熱ユニット3aは、原反シート10aを挟持可能とし、対向する一対の第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42と、第一の無端ベルト32を介して原反シート10aを加熱しかつ押圧する第一の加熱プレート36と、第二の無端ベルト42を介して原反シート10aを加熱しかつ押圧する第二の加熱プレート46とを備えている。即ち、本実施形態の架橋機3は、原反シート10aを一対の第一及び第二の無端ベルト32,42で上下方向に挟みこんで加熱する、ダブルベルト挟持式の架橋機である。そして更に、加熱ユニット3aは、原反シート10aの進行方向である矢印Y方向に、第一の無端ベルト32を介して架橋シート10bを冷却する第一の冷却プレート38及び第二の無端ベルト42を介して架橋シート10bを冷却する第二の冷却プレート48を備えている。
【0028】
本実施形態では、第一の加熱プレート36が原反シート10aの進行方向である矢印Y方向に複数並べられ、次いで第一の冷却プレート38が原反シート10aのY方向に複数並べられている。
また、第一の加熱プレート36に対向して第二の加熱プレート46が複数並べられ、第一の冷却プレート38に対向して第二の冷却プレート48が複数並べられている。
【0029】
本実施形態において、「熱可塑性樹脂組成物のシートを挟持する一対の伝熱板」は、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42により構成され、「伝熱板を介して熱可塑性樹脂組成物のシートを加熱する加熱体」は、第一の加熱プレート36、第二の加熱プレート46及びこれらに接続された熱源(不図示)により構成されている。
【0030】
加熱ユニット3aには、2つの第一のガイドロール34が設けられ、この第一のガイドロール34に第一の無端ベルト32が掛け回されている。
加熱ユニット3aには、2つの第二のガイドロール44が設けられ、この第二のガイドロール44に第二の無端ベルト42が掛け回されている。
【0031】
図3は、図2の第一及び第二の無端ベルト32,42の平面図であり、図4は、図2における加熱ユニット3aのIV−IV断面図である。
図3に示すように、第一の無端ベルト32には、その平板面に厚さ方向に貫通する複数の貫通孔31が形成されており、第一の無端ベルト32における破線で囲まれた領域Sが、原反シート10aと接触する部分である。
【0032】
第一の無端ベルト32に用いられるものとしては、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維の織物等に穿孔したものや、パンチングメタル等が挙げられ、中でも、ガラス繊維やアラミド繊維の織物に穿孔したものが好ましい。ガラス繊維やアラミド繊維の織物に穿孔したものであれば、第一の加熱プレート36又は第二の加熱プレート46で加熱された際に熱可塑性樹脂組成物が不均一に変形しにくい。
【0033】
加えて、第一の無端ベルト32は、原反シート10aを挟持する側の面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で剥離力が0.60N/5cm以下で可及的に小さくなるようにコーティングされたものが好ましい。フッ素樹脂でコーティングされていることで、第一の無端ベルト32から架橋シート10bを剥離しやすい。
【0034】
第一の無端ベルト32の幅寸法は、原反シート10aの幅寸法よりも大きくなるよう設定されている。
【0035】
貫通孔31の形状は特に限定されず、真円形、楕円形等の円形でもよいし、三角形、四角形等の多角形でもよい。
貫通孔31は、全てが同じ形状でもよいし、相互に異なってもよい。
【0036】
貫通孔31の大きさは、開孔面積0.05〜0.5mmが好ましく、0.08〜0.4mmがより好ましい。貫通孔31の開孔面積が上記上限値より大きい場合は、原反シート10aの表面が酸素と接触しやすくなり、架橋シート10bの表層のゲル分率を十分に高められない。また、原反シート10aの表面樹脂が開孔部に溶出し表面に凸部が生じ、原反シート10aの表面の平滑性が失われる。開孔面積が上記下限値未満では、後述する架橋工程で原反シート10aから生じたガスが通流しにくくなり、大きな空隙や凹みが形成されやすくなる。
なお、表層とは、架橋シート10bの表面から0.5mmの深さまでの部分をいい、ゲル分率は、JIS K6796に準拠して求められる値である。
【0037】
第一の無端ベルト32における領域Sの面積に対する貫通孔31の開孔面積の合計の割合、即ち、(領域Sにおける貫通孔31の開孔面積の合計)/(領域Sの面積)×100で表される開孔率は、0.5%以上3%以下であり、0.8〜2.5%が好ましい。開孔率が上記上限値より大きい場合は、原反シート10aの表面が酸素と接触しやすくなり、表層のゲル分率を十分に高められない。開孔率が上記下限値未満では、後述する架橋工程で原反シート10aから生じたガスが通流しにくくなり、大きな空隙や凹みが形成されやすくなる。
【0038】
第一の無端ベルト32の長さ方向における貫通孔31同士の距離D1は、貫通孔31の大きさ等を勘案して決定され、例えば、1.5〜8.0mmが好ましく、2.0〜6.0mmがより好ましい。上記下限値(1.5mm)未満では、原反シート10aの表面への酸素の接触量が多くなり、表層のゲル分率が低くなるおそれがある。上記上限値(8.0mm)より大きい場合、後述する架橋工程で原反シート10aから生じたガスが通流しにくくなり、大きな空隙や凹みが形成されやすくなるおそれがある。
【0039】
第一の無端ベルト32の幅方向における貫通孔31同士の距離D2は、貫通孔31の大きさ等を勘案して決定され、例えば、1.5〜8.0mmが好ましく、2.0〜6.0mmがより好ましい。上記下限値(1.5mm)未満では、原反シート10aの表面への酸素の接触量が多くなり、表層のゲル分率が低くなるおそれがある。上記上限値(8.0mm)より大きい場合は、後述する架橋工程で原反シート10aから生じたガスが通流しにくくなり、大きな空隙や凹みが形成されやすくなるおそれがある。
距離D1とD2とは上記範囲において、開孔面積と開孔率の範囲を守られる距離により適宜設定すればよい。
【0040】
第二の無端ベルト42は、第一の無端ベルト32と同様に形成されているが、異なっていてもよい。
【0041】
第一の加熱プレート36は、第一の無端ベルト32を介して原反シート10aを加熱できるものであればよく、例えば、ステンレス製やアルミニウム製等の立方体の部材をそのまま使用するか鉄製等の立方体の部材等を用いることができる。
第一の加熱プレート36に接続された熱源としては、パイプ状の一端からリード線を引き出した形状のカートリッジヒータ、電熱線を備えたプレート型ヒータ等が挙げられる。また、第一の加熱プレート36は、複数ブロックに分割されて、ブロック毎に上記ヒータを備え温度制御を行なうことにより原反シート10aの加熱温度を進行方向で変化させるようにしてもよい。
【0042】
図2図4に示すように、第一の加熱プレート36における第一の無端ベルト32と接する当接部36aには、第一の無端ベルト32の移動方向(一方向)である矢印Y方向に直交する方向、すなわち第一の無端ベルト32の幅方向(図2において紙面奥行き方向,図4において水平方向)に延びる凹条(流路)37が形成されている。
【0043】
この凹条37は、第一の無端ベルト32に対向する側に開口しているとともに、第一の無端ベルト32の幅方向における第一の加熱プレート36の両側端に亘って貫通するように形成されている。凹条37を形成することで、後述する架橋工程で原反シート10aから生じたガスは、貫通孔31を通流し、その後凹条37に収集されて、凹条37の延在方向の両端から排出される。即ち、凹条37は、「貫通孔を通流したガスを排出する流路」となっている。
【0044】
凹条37の幅Wは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上20mm以下の範囲で設けられていることが好ましく、1mm以上15mm以下の範囲で設けられていることが更に好ましい。0.5mm未満では、原反シート10aから生じたガスが排出されにくくなるおそれがあり、20mmより大きい寸法であると、第一の加熱プレート36と第一の無端ベルト32との接触面積が小さくなって、原反シート10aに対する加熱効率が低下するおそれがある。
【0045】
また、凹条37は、矢印Y方向に10mm以上の間隔をおいて複数形成されていることが好ましい。凹条37が複数設けられていることによって、ガスの排出を効果的に行うとともに、10mm以上の間隔を置くことにより、第一の加熱プレート36と第一の無端ベルト32との接触面積が小さくなって、原反シート10aに対する加熱効率が低下するのを回避するためである。なお、凹条37どうしの距離は、長過ぎると減反シート10aから生じたガスを排出する効果が薄れ、架橋シート10bの表面に小さい凹部ができてしまう。
【0046】
凹条37の深さは、0.5mm以上が好ましく、さらに好ましい深さは1mm以上である。0.5mm以下の場合、凹条37内部において伝熱板に撓みなどが生じた場合に凹条37内の空間が確保できずにガスが抜けにくくなり、表面の平滑性に影響する変形が発生する可能性がある。
【0047】
第二の加熱プレート46は、第一の加熱プレート36と同様の構成とされている。
第二の加熱プレート46の凹条47は、第一の加熱プレート36における凹条37と同様の構成とされている。
なお、流路は、第一の加熱プレート36,36同士及び第2の加熱プレート46,46同士の間に隙間を設けて形成されたものであってもよい。
【0048】
第一の冷却プレート38は、第一の無端ベルト32を介して原反シート10aを冷却できるものであればよく、例えば、ステンレス製やアルミニウム製等の立方体の筐体内に冷媒が通流されるもの等が挙げられる。
冷媒としては、10度〜35度のエアー及び水,オイル等の液体のいずれか一方又は双方が用いられている。
【0049】
冷却プレートの例として、冷却プレートの内部に通水できる流路が設けてありそこに冷却水を通す方法や冷却プレートのサイドから流路に向けてノズルによりエアーを吹き付ける方法などが挙げられるが、原反シート10aを表面から効率的に冷却するために冷却プレート内部に通水する方法が好ましく用いられる。
第二の冷却プレート48は、第一の冷却プレート38と同様の構成とされている。
以上の構成の下に、第一及び第二の冷却プレート38,48は、これら第一及び第二の冷却プレート38,48間を通過した架橋シート10bを、この架橋シート10bに含まれる熱可塑性樹脂組成物の融点より20度低い温度以上融点以下に冷却するようになっている。
【0050】
図1に示すように、反転ロール13Aとしては、公知のガイドロールが挙げられる。
反転ロール群13Bは、3つのガイドロールからなり、これらが、架橋シート10bの進行方向に並設されている。
【0051】
発泡装置4としては、任意の温度に加熱され発泡剤が分解する温度まで昇温し、目的の発泡度を発現させるものであればよく、温風加熱炉、近赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉などが挙げられ、それぞれ単独で用いるか組み合わせて用いてもよい。
本実施形態においては、発泡シート全体に気孔を均一に形成させる観点から、発泡装置4は、加熱炉5と発泡炉6とで構成されている。
【0052】
加熱炉5には、架橋シート10bの通路54が形成され、通路54を挟んで2つの近赤外線ヒータ55が対向して設けられている。
近赤外線ヒータ55としては、複数の棒状のヒータランプ(不図示)が、所定のピッチで互いに平行に設けられている。不図示のヒータランプは、波長が2.5μm以下の電磁波である近赤外線を放出するようになっている。
【0053】
近赤外線ヒータ55の各ヒータランプの表面と、架橋シート10bの表面との間の距離は、例えば、架橋シート10bの厚さが0.5mm〜10mmの場合には、3cm〜25cmが好ましく、5cm〜20cmがより好ましい。ヒータランプと架橋シート10bとの距離が上記下限値(3cm)未満では、架橋シート10bの搬送中に近赤外線ヒータ55の表面と架橋シート10bとが接触してしまうおそれがあり、上記上限値(25cm)超では、近赤外線が拡散してしまい、架橋シート10bを加熱効率が低下するおそれがある。
【0054】
発泡炉6は、熱風により架橋シート10bを加熱して、発泡剤を発泡させて、シート状の熱可塑性樹脂発泡体(以下、発泡シートということがある)10cにするものである。発泡炉6には、熱風ノズル(不図示)が設けられ、熱風ノズルは、熱風を送出することにより、発泡炉6内を任意の温度にする。
【0055】
冷却ロール群7は、3つの冷却ロールで構成され、各冷却ロールの内部には、冷却水が通流されている。発泡炉6から送り出されてきた発泡シート10cは、冷却ロール群7に掛け回されて、冷却される。
巻取機8は、冷却ロール群7で冷却された発泡シート10cをロール状に巻き取るものであればよい。
【0056】
(熱可塑性樹脂発泡体の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、架橋工程と発泡工程とを備えている。
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。
本実施形態の可塑性樹脂発泡体の製造方法は、押出工程と、架橋工程と、発泡工程と、冷却工程と、巻取工程とを備える。
【0057】
<押出工程>
まず、図1に示すように熱可塑性樹脂、架橋剤、発泡剤及び必要に応じて任意成分等の原料をホッパー21に投入する。そして押出機2で、原料を溶融混合して熱可塑性樹脂組成物とし、これを金型22からシート状に押し出して原反シート10aを得る。なお、押出機2で成形された原反シート10aにおいて、熱可塑性樹脂は架橋されていない。
【0058】
熱可塑性樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂の量や、架橋剤の種類等を勘案して決定される。例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.5〜2.5質量部が好ましく、0.8〜2.0質量部がより好ましい。上記下限値未満では、熱可塑性樹脂の表層のゲル分率を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超としても、熱可塑性樹脂の表層のゲル分率を架橋剤の量に見合うほどに高められないおそれがある。
【0059】
熱可塑性樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、発泡シート10cに求める気孔率や発泡剤の種類等を勘案して決定され、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対し、1〜55質量部が好ましく、5〜45質量部がより好ましい。
【0060】
任意成分として、アクリル系多官能モノマーを用いる場合、熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系多官能モノマーの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1〜8質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0061】
押出工程における温度条件は、熱可塑性樹脂が溶融し、かつ熱可塑性樹脂が架橋せず、発泡剤が発泡しない温度とされる。
【0062】
原反シート10aの厚さは、発泡シート10cとして所望する厚さを勘案して決定され、例えば、0.5mm〜7mmが好ましい。
【0063】
<架橋工程>
第一の加熱プレート36及び第二の加熱プレート46を任意の温度に設定し、第一の冷却プレート38及び第二の冷却プレート48を任意の温度に設定する。その上で、第一の無端ベルト32を矢印X1方向に回転させ、第二の無端ベルト42を第一の無端ベルト32と同速度で矢印X2方向に回転させる。そうすると、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42は、これらが互いに対向して原反シート10aを挟持し送出を開始する通路54の上流側において加熱プレート36,46間をこれらに当接しつつ所定の速度で通過し、この通過中に加熱プレート36,46により加熱される。
【0064】
このようにして架橋機3を駆動した状態で、上記押出工程で得られた原反シート10aを架橋機3内に案内する。案内された原反シート10aは、第一の無端ベルト32と第二の無端ベルト42とに挟持され、徐々に加熱されつつ矢印Y方向に進行する。そして、原反シート10aは、第一の加熱プレート36及び第二の加熱プレート46によって任意の温度に加熱されて、樹脂組成物の一部又は全部が架橋される(架橋処理)。
【0065】
この際、原反シート10aは、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42により表面が覆われているため、架橋反応を阻害する酸素の接触が抑制された状態となっている。このため、架橋反応が酸素により阻害されず、架橋シート10bの表層のゲル分率を高められる。
【0066】
また、原反シート10aが加熱されると、架橋剤が分解されガスが発生するが、架橋剤が分解したガスは、第一及び第二の無端ベルト32,42に形成された貫通孔31及び貫通孔41内に順次進入する。そして、第一及び第二の無端ベルト32,42の回転に伴い、無数の貫通孔31,31・・,貫通孔41,41・・が第一及び第二の加熱プレート36,46に所定の間隔をおいて形成された凹条37,37・・,凹条47,47・・を通過する。
【0067】
したがって、貫通孔31,41内に漸次進入したガスが凹条37,47内に漸次押し出されてこれら凹条37,47内に収集され、原反シート10aの表面から除去されていく。そして、貫通孔31,41が凹条37,47を通過する度に凹条37,47内にガスが漸次進入するため、凹条37,47の両端からガスが外方に排出される。
【0068】
その結果、原反シート10aの表面にガスが滞留したまま架橋することが回避され、表面に大きな空隙が形成されたり、架橋シート10bの側面に凹みが形成されたりすることなく架橋シート10bが形成される。
【0069】
次いで、架橋処理が施された架橋シート10bは、第一の冷却プレート38と第二の冷却プレート48とにより、任意の温度に冷却される。
第一の加熱プレート36及び第二の加熱プレート46での加熱温度は、架橋剤による架橋反応が生じ、かつ発泡剤が発泡しない(分解しない)温度であり、架橋剤の種類等に応じて適宜決定される。
【0070】
第一の冷却プレート38及び第二の冷却プレート48で冷却された後の架橋シート10bの温度は、特に限定されないが、発泡反応が進行しない温度が好ましく、さらに好ましくは熱可塑性樹脂の融点温度以下である。具体的には、例えば、架橋シート10bに含まれた熱可塑性樹脂組成物の表面温度が融点より20度低い温度以上融点以下まで冷却されることが好ましい。本発明において表面温度とは、非接触の表面温度計により測定した値をいう。
【0071】
このように温度設定をするのは、発泡反応が進行すると架橋シート10bが変形し、本発明が目的とする発泡材が得られない可能性があるからである。また、熱可塑性樹脂の融点温度以下まで冷却することにより、架橋機3の第一及び第二の無端ベルト32,42に挟持された架橋シート10bが第一及び第二の無端ベルト32,42から剥離しやすくなり、架橋シート10bが伸張する等の不具合を防止することができる。
また、表面温度が融点より20℃低い温度未満であると、剥離への影響は小さいが冷却するための設備長さが長くなり、また、次の発泡工程で発泡温度まで昇温するためのエネルギーロスが大きくなり加熱時間も長時間必要になることから、20℃低い温度以上であることが好ましい。
【0072】
架橋工程で得られた架橋シート10bの表層のゲル分率は、内層のゲル分率との比率で50%以上が好ましい。上記下限値以上であれば、後述する発泡工程で処理された際に、気孔が均一に保持され、発泡工程において表面が高温に晒された時に酸化劣化が発現し難い。
【0073】
<発泡工程>
架橋工程で得られた架橋シート10bは、反転ロール13A、反転ロール群13Bに掛け回されて、鉛直方向下方に向けられ、発泡炉6に案内される。案内された架橋シート10bは、近赤外線ヒータ55で任意の温度で架橋シート10bが変形しない任意の発泡度以内となるように加熱される(第一の発泡工程操作)。
【0074】
発泡度は、発泡シート10cの発泡倍率(最終発泡倍率)に対する、任意の時点での発泡倍率の割合で表される。発泡倍率は、任意の発泡度の試験片を水に浸漬することで発泡反応を停止した後、試験片を常温(25℃±15℃:JIS Z8703)で24時間乾燥し、これをJIS Z8807に準拠して密度を求める。また、未発泡の架橋シート10bと同様に密度を求め、下記(1)式により算出される。
【0075】
試験片の発泡倍率(倍)
=(任意の発泡度の試験片の密度)÷(未発泡の架橋シートの密度)・・・(1)
【0076】
また、発泡度は、下記(2)式により算出される。
発泡度(%)=(試験片の発泡倍率)÷(最終発泡倍率)×100 ・・・(2)
【0077】
第一の発泡操作における架橋シート10bに対する加熱温度は、発泡剤が発泡する温度とされ、例えば、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いた場合は、架橋シート10bの表面温度160〜205℃となる温度で、架橋シート10bを加熱することが好ましい。
第一の発泡操作における加熱時間は、加熱温度等を勘案して適宜決定される。
第一の発泡操作で処理された架橋シート10bの発泡度は、20%以下が好ましい。発泡度を20%以下にすることで、架橋シート10bが変形するのを防止することができる。
なお、加熱温度と加熱時間との調節により、発泡度を容易に調整できる。
【0078】
第一の発泡操作を経た架橋シート10bは、発泡炉6で加熱される。架橋シート10bは、発泡炉6で加熱されると、残存する発泡剤が発泡して、発泡シート10cになる(第二の発泡操作)。本実施形態においては、第一の発泡操作と第二の発泡操作とで、発泡工程が構成される。
第二の発泡操作における加熱温度(即ち、発泡炉6内の温度)は、発泡剤の特性と発泡シート10cに求める最終発泡倍率に応じて適宜決定される。例えば、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いた場合には、発泡炉6内の温度は、230〜280℃が好ましい。
【0079】
その後、発泡シート10cは、冷却ロール群7に掛け回されて、任意の温度に冷却される。冷却後の発泡シート10cの温度は、例えば、常温〜70℃が好ましい。
冷却された発泡シート10cは、巻取機8で巻き取られ、巻回体となる。
【0080】
以上のとおり、本実施形態によれば、任意の大きさの貫通孔31が任意の開孔率となるように形成された第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42と、これら第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42に当接する当接部に凹条37,47が形成された加熱プレート36,46を備えた架橋機を用いている。
【0081】
そして、架橋剤が分解して発生するガスを貫通孔31,41内に取り込み、更に貫通孔31,41が凹条37,47を通過する際に貫通孔31,41内のガスを凹条37,47内に収集させてこれら凹条37,47の両端部から排出させる。したがって、架橋時に発生するガスを原反シート10aの表面から効果的に除去し、架橋シート10bの表面に凹み等を形成させること無く、外観に優れ、かつ熱可塑性樹脂が十分に架橋された架橋シートを製造できるという効果が得られる。
【0082】
そしてその結果、十分かつ均質に架橋された架橋シート10bを発泡炉6において全体として均質に発泡させることにより、外観に優れた熱可塑性樹脂の発泡体10cを製造することができるという効果が得られる。
【0083】
また、凹条37,47の幅を0.5mm〜20mmの寸法範囲内で形成しているため、原反シート10aから生じたガスを可及的効率的に排出するとともに、第一及び第二の加熱プレート36,46と第一及び第二の無端ベルト32,42との接触面積を可及的に大きくし、原反シート10aに対する加熱効率が低下することを回避して、効率的に架橋処理及び架橋により発生するガスの排出を行うことができるという効果が得られる。
【0084】
(その他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されない。
上述した実施形態では、図2に示す凹条37,47を形成する開口端縁37a,47a、すなわち第一及び第二の無端ベルト32,42に当接する第一及び第二の加熱プレート36,46の当接部36a,46aの板面と凹条37,47の内壁面とが成す角部は、略垂直な角部を形成している。しかし、この開口端縁37a,47aは、図5(a),(b)に示すように、面取りされ又は湾曲した面に形成されているとよい。また、面取りは、0.2mm以上の幅寸法で形成されているとよい。
【0085】
このように、開口端縁37a,47aが面取りされていると、第一及び第二の無端ベルト32,42が第一及び第二の加熱プレート36,46の凹条37,47を通過する際に、この凹条37,47の角部に引っ掛かることを防止し、円滑に回転させることができる。したがって、第一及び第二の無端ベルト32,42が円滑に回転することで一定の速度で架橋処理を施すことができより均質な架橋シート10bを製造することができるという効果が得られる。また、第一及び第二の無端ベルト32,42が凹条37,47上を円滑に通過することができることにより、第一及び第二の無端ベルト32,42が凹条37,47の角部に引っ掛かって損傷することを防止することができるという効果が得られる。
【0086】
上述した実施形態では、凹条37,47の断面形状が図2に示すように、溝の底面が円弧状になるように形成されているが、凹条37,47の断面形状は、図2に示すものに限定されず、図5(c)〜(e)に示すように、略矩形,略三角形,半円形,ベース型等と、ガスを効率良くかつ十分に取り込め、更に凹条37,47の両端部から排出し得る形状であればどのようなものであってもよい。
【0087】
上述の実施形態では、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42の双方に貫通孔31が形成されているが、本発明はこれに限定されず、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42のいずれか一方に、貫通孔31が形成されていればよい。ただし、架橋工程で生じるガスをより効率的に排出するためには、第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42の双方に貫通孔31が形成されていることが好ましい。
【0088】
上述の実施形態では、第一及び第二の加熱プレート36,46の「貫通孔を通流したガスを排出する流路」が、当接部36a,37aに形成された凹条37,47とされているが、本発明はこれに限定されず、第一及び第二の加熱プレート36,46に形成された貫通孔等であってもよい。あるいは、「貫通孔を通流したガスを排出する流路」は、第一の加熱プレート36,36の間又は第2の加熱プレート46,46間に形成された隙間により形成されたものであってもよい。
【0089】
上述の実施形態では、架橋シート10bの剥離性を高めるために、架橋機3が第一及び第二の冷却プレート38,48を備えているが、本発明はこれに限定されず、第一及び第二の冷却プレート38,48を備えていなくてもよい。
【0090】
また、凹条37,47は、原反シート10aの加熱により発生するガスを第一及び第二の加熱プレート36,46の当接面36a,37aから排出できるようになっていれば、上記実施形態のように第一の無反ベルト32及び第二の無反ベルト42の進行方向に直交する方向に形成されていなくてもよい。また、凹条37,47は、外部に連通する排出孔につながっている等、収集した前記ガスを第一及び第二の加熱プレート36,46の当接面36a,37aからガスを排出できるようになっていればよい。
【0091】
上述の実施形態では、第一及び第二の無端ベルト32,42を介して原反シート10aを加熱する加熱体が、第一及び第二の加熱プレート36,46と熱源とで構成されているが、加熱体は、例えば、第一及び第二の無端ベルト32,42に接触して設けられた電熱線等であってもよい。
【0092】
上述の実施形態では、図1に示す架橋機3が、一対の無端ベルトで原反シート10aを挟持しつつ加熱する連続式の装置であるが、本発明はこれに限定されず、貫通孔31が形成された平板で任意の大きさの原反シート10aを挟持し、これを回分式の発泡炉6等で加熱する回分式の架橋機3であってもよい。
【0093】
上述の実施形態では、図1に示す製造装置が反転ロール13A及び反転ロール群13Bを備えているが、本発明はこれに限定されず、反転ロール13Aや反転ロール群13Bは、製造装置の設置スペース等を勘案して適宜設けられればよい。
【0094】
上述の実施形態では図1に示す、製造装置1が冷却ロール群7を備えているが、本発明はこれに限定されず、冷却ロール群7を備えず、空冷等によって発泡シート10cを冷却してもよいし、冷却ロール群7以外の冷却装置を備えてもよい。
【0095】
上述の実施形態では、発泡シート10cの製造方法を例にして説明しているが、本発明の架橋機3又は架橋方法はこれに限定されない。本発明の架橋機3又は架橋方法は、例えば、発泡剤を含有しない熱可塑性樹脂組成物を用い発泡工程を備えずに、気孔を有しない架橋型の熱可塑性樹脂の成形体の製造方法に適用されてもよい。
【0096】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0097】
(製造例1)原反シート10aの製造
原料として、熱可塑性樹脂である低密度ポリエチレン(ベトロセン186R、東ソー株式会社製)100質量部と、発泡剤であるアゾジカルボンアミド15質量部と、架橋剤であるジクミルパーオキサイド1分半減期温度175℃)1.5質量部とをラボプラストミル(R60、株式会社東洋精機製作所製)に投入した。ラボプラストミルに投入した原料を135℃で3分間混練した後、140℃で3分間プレスし、常温まで空冷して原反シート10a(長さ15cm×幅5cm×厚さ0.4cm)を得た。
【0098】
(実施例1)
アラミド繊維の織物をPTFEでコーティングしたフッ素樹脂ベルト(幅寸法15cm,長さ寸法3m)(NS27FG−P 三つ星ベルト株式会社製)に、開孔径φ0.34mm(開孔面積0.09mm)の貫通孔31を形成した伝熱板である無端ベルトを得た。本例の無端ベルトの長さ方向における貫通孔同士の距離は2.7mm、無端ベルトの幅方向における貫通孔同士の距離は2.7mm、開孔率は1.2%である。本実施例1の無端ベルトは、開孔率を1.2%とした。この無端ベルトを第一の無端ベルト32及び第二の無端ベルト42として架橋機3を作製した。
【0099】
第一及び第二の加熱プレート36,46としては、寸法を幅20cm長さ1mとし、材質をステンレスとする板材を用いた。この第一及び第二の加熱プレート36,46の第一及び第二の無端ベルト32,42に当接させる当接部36a,46aには、幅10mm、深さ20mmの断面角形で、プレートの幅方向全体に亘って貫通する凹条37,47を形成した。また、凹条37,47の開口端縁には、半径2mmの丸み面取りを施した。凹条37,47どうしの間隔は、無端ベルトが凹条37どうし及び凹条47どうしの間を14秒で通過するように設置した。
【0100】
第一及び第二の冷却プレート38,48としては、第一及び第二の加熱プレート36,46と同様で寸法を幅20cm長さ1mとし、材質をステンレスとする板材を用いた。
【0101】
上記のようにして構成された架橋機3を用い、製造例1で得られた原反シート10aを15秒間で190℃に昇温した。その後、原反シート10aを40秒間190℃に維持し、次いで、第一及び第二の冷却プレート38,48上を30秒間通過させることにより100℃に冷却して、架橋シート10bを得た。
得られた架橋シート10bについて、外観、剥離性及びゲル分率を測定し、その結果を表1に示す。なお、表中、本例における架橋方法を「連続式」と記載する。
【0102】
(実施例2)
加熱プレートの凹条の幅を0.5mmとし、深さを0.5mmとした以外は実施例1と同様である。
【0103】
(実施例3)
加熱プレートの凹条の幅を1.0mmにした以外は実施例1と同様である。
【0104】
(実施例4)
加熱プレートの凹条の幅を20.0mmとし、深さを0.5mmとした以外は実施例1と同様である。
【0105】
(実施例5)
加熱プレートの凹条の断面形状を直径10mmの丸形にし、加熱プレートの開口側に位置する角部は1mmの45°面取りを施した以外は実施例1と同様である。
【0106】
(比較例1)
貫通孔31をなくした以外は実施例1と同様である。
【0107】
(比較例2)
加熱プレートの凹条37をなくした以外は実施例1と同様である。
【0108】
(参考例1)
加熱プレートの凹条の幅を0.3mmとした以外は実施例1と同様である。
【0109】
(参考例2)
加熱プレートの凹条の深さを0.2mmとした以外は実施例1と同様である。
【0110】
<外観>
各例で得られた架橋シートを目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0111】
<評価基準>
○:架橋シートに大きな空隙や凹み(約1mmの径及び深さ約0.5mmの略円形以上の大きさの空隙。以下同様)が目視で確認されない。
×:架橋シートに大きな空隙や凹みが目視で確認される。
【0112】
【表1】
【0113】
(評価結果)
参考例1,2のように、第一及び第二の無端ベルト32,42に貫通孔31,41がなく、又は第一及び第二の加熱プレート36,46に凹条37,47が形成されていない場合には、架橋シートに大きな空隙や凹みが目視で確認され、架橋シートの表面が平滑に形成されないことがわかった。また、比較例1のように、凹条の深さが20mmであっても凹条の幅が0.5mm以下である場合及び比較例2のように凹条の幅が10mmであっても凹条の深さが0.5mm以下である場合には、架橋シートに大きな空隙や凹みが目視で確認され、架橋シートの表面が平滑に形成されないことがわかった。
一方、実施例1〜3のように、凹条の深さが0.5mm以上で凹条の幅が0.5mm〜20mmの加熱プレートを用いた場合には、架橋シートに大きな空隙又は凹みが目視で確認されず、加熱シートの表面が平滑に形成されることが分かった。
【符号の説明】
【0114】
1 熱可塑性樹脂発泡体の製造装置
3 架橋機
5 加熱炉
6 発泡炉
10a 原反シート
10b 架橋シート
10c 発泡シート
31、41 貫通孔
32 第一の無端ベルト
42 第二の無端ベルト
36 第一の加熱プレート
37、47 凹条
46 第二の加熱プレート
図1
図2
図3
図4
図5