特許第6122777号(P6122777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122777
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】Fab及びFab’分子の分析法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20170417BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170417BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   G01N33/68
   G01N30/88 F
   C12Q1/37ZNA
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-521209(P2013-521209)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-533490(P2013-533490A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】GB2011001135
(87)【国際公開番号】WO2012013933
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】1012784.3
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507073918
【氏名又は名称】ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ブライアン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カーク、ヘレン、マリー
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−505497(JP,A)
【文献】 HOLLY Z. HUANG,DIRECT IDENTIFICATION AND QUANTIFICATION OF ASPARTYL SUCCINIMIDE IN AN IGG2 MAB BY RAPIGEST ASSISTED DIGESTION,ANALYTICAL CHEMISTRY,2009年 2月15日,V81 N4,P1686-1692
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
C12Q 1/37
G01N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fab’−PEG結合体のFab’成分の分解によって生成した酸性種を測定する方法であって、
a)Fab’のヒンジ部分を切断し、Fab’ −PEG結合体からPEG及びリンカーを遊離させる酵素で、
該Fab’−PEG結合体から
リンカーを介して該Fab’に結合していたPEGを切断するステップと、
b)ステップa)において生成したPEG及びリンカーをFab’から分離して、Fab’をもたらすステップと、
c)切断されたFab’及び/又は切断されたPEGに関連した酸性種を量的に分析するステップと
を含む上記方法。
【請求項2】
酵素がトリプシン又はキモトリプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)における切断が、25℃〜40℃の範囲の温度で実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)における切断が、25℃〜38℃の範囲の温度で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)における切断が、37℃の温度で実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)の切断が、Fab’−PEG結合体のFab’重鎖部分のC末端部分における、リシンとトレオニンの間に起こる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リシン及びトレオニンが、Fab’のC末端に位置するSCDKTHTCAA配列中に見出される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分離が、陽イオン交換クロマトグラフィー、cIEF、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーを使用して実施される、請求項1から7までいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸性種の定量化が、陽イオン交換クロマトグラフィー又は画像化キャピラリー等電点電気泳動を利用して実行される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーがイオン交換HPLC(CEX−HPLC)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Fab’−PEG結合体のFab’成分が配列番号10を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEG化タンパク質中の酸性種を測定するための改善されたアッセイ方法に関する。特に、本発明は、PEG化Fab及びPEG化Fab’抗体形態の酸性種を測定するための改善されたアッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PEG化Fab及びPEG化Fab’抗体形態は、全抗体に付随するエフェクター機能無しに、in vivoで全抗体と類似の循環半減期を備えるという点で有用である。これらの形態は治療に有効になってきており、これら治療薬の販売を認可する規制承認プロセスの支持には、長期安定性試験が義務付けられている。さらにまた、一般公衆による使用のための承認を受けたならば、製造された製品は、販売可能になる前に、バッチリリース試験を受けなければならない。
【0003】
例えば保管後における、製剤中に存在する酸性種は、Fab又はFab’の分解(特に脱アミド化)の徴候である可能性がある。規制当局によると脱アミド化は分解経路として分類されており、従って製品には脱アミド化のレベルに上限が設定されている。製品の有効期限中は脱アミド化の上限レベルを越えるべきでない。理論に束縛されるものではないが、スキーム1に提示する通り、アスパラギン残基は脱アミド化によってスクシンイミド中間体を経て分解されて、イソアスパラギン酸/アスパラギン酸などの酸性種を生成する可能性があると考えられている:
【化1】
【0004】
アスパラギン残基のこの脱アミド化は、タンパク質全体の電荷の変化をもたらす可能性があり、Fab又はFab’の免疫原性を高める可能性がある。加えて、この脱アミド化はFab又はFab’の機能/有効性の変化をもたらす可能性があり、この変化は、予測不可能な治療効果/副作用又は単なる活性の喪失を引き起こす可能性がある。これは、製剤を投与した後の患者において有害作用を高める場合がある。従って、分解を最小限に抑えなければならず、保管の期間及び条件を、ほとんど分解が生じないような期間及び条件に制限しなければならない。従って、所与のPEG化Fab又はFab’製剤中の脱アミド化を測定できることが重要である。その分析は、製品ラベルに示される有効期限及び保管条件に影響を及ぼす可能性がある。所定の上限を越える場合にはこれにより市場に出た製品が販売から回収される又は製品の特定のバッチの販売のための出荷が阻まれる可能性があるので、製品中の脱アミド化のレベルをモニタリングできることも重要である。理論的には、タンパク質中の脱アミド化は、その中に生成する酸性種を定量化することによって測定できる。
【0005】
今日、PEG化Fab又はPEG化Fab’の全酸性種の含有量は、陽イオン交換(CEX)−HPLCを使用して測定されている。
【0006】
この方法は、製品中の酸性種の総量又は全体の値を測定する。しかし、酸性種が生成される経路は多数あり、それらの全てがタンパク質の脱アミド化(従って分解)に関連するわけではない。従ってその分析から得られる値は、タンパク質中の脱アミド化の実際量の値ではない。事実、その値は:
・Fab’の分解、及び
・Fab’又はFabとPEG分子とを接続しているリンカーの加水分解
によって生成した酸性種を含んでいる。
【0007】
図4に示すように、PEGリンカーの加水分解はスクシンイミド環を経由して進行すると考えられている。事実、この加水分解は優勢な効果である可能性があり、分析したとき、酸性種の総量値の大きな成分を生成する。全酸性種の内容が図3に概略的に表され、この図は、脱アミド化によってタンパク質中に生成した酸性種及びリンカーの加水分解によって生成した酸性種を示している。これは、図5に示すように概略的に表すことができ、この図はリンカーの加水分解によって生成した酸性種、脱アミド化によって生成した酸性種、及びその混合物の組成比率を示す。
【0008】
分子中の酸性種の総量値は最も関心のある対象ではない。そうではなく、関心のある対象は、タンパク質中の脱アミド化の量である。しかし、全酸性種の含有量の分析では、タンパク質中の脱アミド化を表わす値が得られない。
【0009】
脱アミド化の量は、例えばISOQUANT(登録商標)アスパラギン酸検出キットを利用して測定できる。脱アミド化は、図2に概略的に表されており、この図はタンパク質の脱アミド化だけを示す。しかし、この脱アミド化アッセイは、特に強力なわけではない(Alfaro et al.,Anal.Chem,2008,80,3882−3889)。
【0010】
治療薬の商業的生産を支持するには、強力な分析技術が必要である。発明者はPEG化タンパク質、特にPEG化Fab及びFab’の脱アミド化の分析のための強力且つ有効な方法を考案したと信じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の方法は、PEG又はリンカー内ではなくFab又はFab’分子内の脱アミド化/分解の結果生じるFab又はFab’分子中の酸性種の直接的な測定を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、Fab−PEG又はFab’−PEGのFab又はFab’成分の分解によって生成した酸性種を測定する方法であって、
a)酵素でFab−PEG又はFab’−PEGからPEG及びリンカーを切断するステップと、
b)場合によっては、ステップa)において生成したPEG及びリンカーをFab又はFab’から分離して、Fab又はFab’をもたらすステップと、
c)切断されたFab若しくはFab’及び/又は切断されたPEGに関連した酸性種を量的に分析するステップと
を含む方法を提供する。
【0013】
Fab又はFab’からPEG及びリンカーを取り除くことにより、Fab又はFab’中の酸性種を定量化することによって、タンパク質中の脱アミド化の量を測定できる。本方法は、再現性があり且つ強力であり、さらにPEG及びリンカーの切断はタンパク質内の脱アミド化の量に干渉しない又は変化させない。従って、切断されたFab又はFab’内の脱アミド化は、PEG化Fab又はPEG化Fab’のタンパク質部分の脱アミド化を表すはずである。
【0014】
別の実施形態において、本方法は、Fab−PEG又はFab’−PEGの「全」酸性種を最初に決定し、その後本方法のステップ(a)で切断し、次いで本方法のステップ(c)で決定したFab又はFab’成分に関連する定量化された酸性種を、「全」酸性種から減算することによって、PEGリンカーの加水分解の程度を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】PEG化Fab’の概略図である。
図2】PEG化Fab’において起こる脱アミド化の概略図である。
図3】その両方が酸性種を生成する脱アミド化とリンカーの加水分解の概略図である。
図4】Fab’のPEG化及びその後に開環して酸性種を生成する化学プロセスを示す図である。
図5】全酸性種の含有量に寄与する酸性種の組成比率値を示すグラフである。
図6】酵素消化の後にPEG化Fab’から生成した種の概略図である。
図7】PEG化Fab’のトリプシン消化の効率を経時的に示すグラフである。
図8】PEG化Fab’のトリプシン消化から生じる粗生成物のCEX−HPLC分析を示す図である。
図9】トリプシンによって消化されたPEG化Fab’のiCEFを示す図である。
図10】配列1〜9である。
図11】配列10及び11である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において酸性種とは、カルボン酸を含む、即ち−C(O)OH基を含む部分及び分子を意味するものとする。
【0017】
一実施形態において、酵素はトリプシンなどのプロテアーゼ、例えばトリプシン又はキモトリプシンである。利用する酵素がトリプシンの場合、切断位置は例えばFab’断片の配列SCDKTHTCAA(重鎖C末端)のKとTの間であると予想される。さらに切断に都合のよいことに、切断されるヒンジの小さな部分はアスパラギン残基を全く含まないので、この位置はタンパク質の脱アミド化の値を変化させない。
【0018】
Fab’は、ヒンジに酵素に適した基質となる配列を天然に有している。Fab分子は酵素の基質配列を天然に有しないが、必要に応じて適切な配列を適当な位置に加工することができ、酵素消化によってFabに結合したPEGを除去可能になる。
【0019】
酵素消化は、25〜38℃など、20〜40℃の範囲の温度で実行でき、特に37℃で最適に実行される。
【0020】
一実施形態において、出発物質がPEG化Fab’であるとき、酵素はFab’のヒンジ部分を切断しFab’からPEGとリンカーを遊離させる。
【0021】
酵素消化、例えばトリプシン消化は、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160分又はそれ以上の時間にわたって実施できる。
【0022】
酸性種の定量化にHPLC/cIEFなどの技術を利用する場合、生成した物質は異なる保持時間を有し、従って追加的な分離ステップ無しで個別に定量化できるので、消化によって生成した物質を分離する必要はない。
【0023】
しかし場合によっては、ステップa)によって生成した物質を、公知の技術、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー、cIEF、サイズ排除クロマトグラフィーなどで分離することが可能である。
【0024】
一実施形態において、Fab、Fab’及び/又はPEGに関連する酸性種が定量化される。
【0025】
一実施形態において、Fab又はFab’の脱アミド化が測定される。
【0026】
一実施形態において、ステップc)における酸性種が、例えば溶出勾配を利用するHPLC分析を利用して分析される。一実施形態において、HPLC分析は、CEX−HPLC分析である。
【0027】
別法として、切断されたタンパク質中の脱アミド化の量を、キャピラリー電気泳動法で測定することが可能である。
【0028】
一実施形態において、ステップc)における酸性種は、cIEF分析を利用して分析され、適切なカートリッジにはConvergent Bioscienceから入手可能なiCE280がある。
【0029】
本明細書で完全に記載されたかのように参照により組み込まれるべきそれぞれの刊行物を具体的且つ個別に示すように、本明細書に引用される特許及び特許出願を含むがこれに限らない全ての刊行物を本明細書に参照により組み込む。
【0030】
好ましい実施形態において、WO01/094585(その内容を参照により本明細書に組み込む)に記載されるように、抗体は抗TNF抗体、より好ましくは抗TNF抗体CDP870のFab’である。
【0031】
一実施形態において、ヒトTNFαに対して特異性を有する抗体は重鎖を含み、その可変ドメインはCDRH1に対応する配列番号1に示される配列、CDRH2に対応する配列番号2に示される配列又はCDRH3に対応する配列番号3に示される配列を有するCDRを含む。
【0032】
一実施形態において、抗体は軽鎖を含み、その可変ドメインがCDRL1に対応する配列番号4に示される配列、CDRL2に対応する配列番号5に示される配列又はCDRL3に対応する配列番号6に示される配列を有するCDRを含む。
【0033】
一実施形態において、抗体は、可変ドメインがCDRH1に対応する配列番号1に示される配列、CDRH2に対応する配列番号2に示される配列又はCDRH3に対応する配列番号3に示される配列を有するCDRを含む重鎖と、可変ドメインがCDRL1に対応する配列番号4に示される配列、CDRL2に対応する配列番号5に示される配列又はCDRL3に対応する配列番号6に示される配列を有するCDR含む軽鎖とを含む。
【0034】
一実施形態において、抗体は、CDRH1に対応する配列番号1、CDRH2に対応する配列番号2、CDRH3に対応する配列番号3、CDRL1に対応する配列番号4、CDRL2に対応する配列番号5及びCDRL3に対応する配列番号6を含む。
【0035】
好ましくは、抗体はCDRグラフト化抗体分子であり、通常その可変ドメインはヒトアクセプターフレームワーク領域及びヒト以外のドナーCDRを含む。
【0036】
好ましくは、抗体はCDP870の可変ドメインの軽鎖(配列番号7)及びCDP870の可変ドメインの重鎖(配列番号8)を含む。
【0037】
抗体は修飾されたFab断片であることが好ましく、その修飾は重鎖のC末端に対する1つ又は複数のアミノ酸の付加であり、エフェクター又はリポーター分子の結合が可能になる。好ましくは、追加的なアミノ酸は、エフェクター若しくはリポーター分子が結合可能な1個又は2個のシステイン残基を含む修飾されたヒンジ領域を形成する。そのような修飾されたFab断片は、好ましくは、配列番号10として示される配列を含む又はから成る重鎖と配列番号9として示される配列を含む又はから成る軽鎖とを有する。
【0038】
本開示は、完全体の特定の混合物を含む実施形態を明示的に開示する。本開示は、基本的に完全体の前記混合物から成る又はから成る実施形態にも及ぶ。
【0039】
技術的に可能な様に、選好及び/又は実施形態を組み合わせることができる。
【0040】
本発明は、以下の実施例を参照してここに記述されることになるが、これら実施例は単なる例証であり決して本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【実施例】
【0041】
トリプシン消化法
エッペンドルフチューブに、Fab’PEG 1.0mgを50mM NaOAc、125mM NaCl pH5.0に添加し、全容量を50μLにする。0.2M NaHPO 50μL、続いてトリプシン再懸濁緩衝液(50mM酢酸)40μLを添加し、最終pHはpH7.5の範囲にあるべきである。10秒間ボルテックスする。
【0042】
反応は、37℃で2時間インキューベーションする。CEX HPLC又は画像化キャピラリー等電点電気泳動で分析する。
【0043】
HTRP HPLCによって決定される消化効率
HTRP HPLCアッセイに反応物を直ちに注入できるように、37℃でインキューベーションされたアジレント1100シリーズ自動サンプラを使用して、Fab’PEGを用いたトリプシン消化物を準備した。Fab’Peg及びFab’対照の注入を順次9回実施した。Fab’PEGは、図7に示される消化プロファイルを示した。この図から、Fab’PEG産物含有量が2時間以内に20%以下に減少することが実証される。
【0044】
分析
消化後にサンプルを取り出し、サンプル希釈緩衝液(20mM酢酸ナトリウムpH4.5)に1mg/mLとなるように希釈した。図8に示す通り、消化ステップから得られた混合物を前処理すること無しに、Fab’PEG及び切断されたFab’をそれぞれの酸性種と一緒に同定できる。図8で示す通り次の物を順次溶出する;未消化のFab’PEG酸性種、未消化のFab’PEG、切断されたFab’酸性種、及び切断されたFab’。
【0045】
CEX HPLCによる切断されたFab’酸性種の検出に適切なクロマトグラフィー条件
溶剤A 平衡緩衝液10mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸pH6.2
溶剤B 溶離緩衝液10mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、50mM塩化ナトリウムpH6.2
カラム Dionex Propac SCX−10カラム
流速 0.5mL/分
停止時間 75分
最大圧力 250バール
方法実行圧(ガイド) 60バール以下
カラム温度 25℃
注入量 100μL
自動サンプラ温度 4℃
検出波長 280nm(帯域幅16)、スリット幅4nm
ロード 1mg/mLを100μL
【表1】
【0046】
ピークが組み込まれているHP Chemstationソフトウェアを使用してデータを分析できる。記述された適切なクロマトグラフィー条件を使用したFab’PEG消化のクロマトグラムの例については図8を参照のこと。次のものが検出される;未消化の酸性Fab’PEG、未消化Fab’PEG、切断された酸性Fab’、切断されたFab’。
【0047】
画像化キャピラリー等電点電気泳動を使用する分析の別法
iCE280を使用する分析用のサンプル調製
200μL容量の一般的なサンプルの調製は、以下の通りである:
・トリプシン消化物(1mg/mlの濃度で脱塩され自由イオンを含まない)−40μl(原則:タンパク質の終濃度は、最終的なサンプル混合物において約0.1〜0.3mg/mlになるべきである)。
・1%メチルセルロース:70μL(最終的な混合物中のメチルセルロース濃度は0.35%になるべきである)
・両性電解質担体:(3−10Pharmalyte)−8μL(両性電解質担体は最終サンプル混合物において4%の濃度を有するべきである)。
・pIマーカー:pI値がタンパク質及びその関連種の両端にあるべき2つの異なるpIマーカーを各1μL添加する。
・HPLC品質水:容量が200μLになるように必要量のHPLC水を加える。
【0048】
15〜30秒間ボルテックスすることによって上記のサンプルを混合して、異なる成分を適当に混合させる。混合物を16000gで10分間遠心して、分析に干渉する気泡及び塵粒を取り除く。
【0049】
iCE280技術を利用する器具の設定及び分析
Convergent biosciences(Isogenヨーロッパ)のiCE280は、画像化キャピラリー等電点電気泳動器具であり、この器具を使用して様々なタンパク質サンプル及びその関連種のpIを決定する。
【0050】
陽極及び陰極を使用するキャピラリーを通して高電圧が印加され、両極は陰極液(OH−)及び陽極液(H+)を含む小さな容器に浸されている。両性電解質担体を用いてサンプルを調製し、高電圧を印加することによってタンパク質分子はそれぞれのpIに従って移動し最終的にpIに焦束する。陽極液は、0.1%メチルセルロースに算出した量のリン酸を加えて最終的に0.08Mリン酸溶液を得ることによって調製できる。陰極液は、0.1%メチルセルロース2mlに50重量/重量%NaOH溶液10.4μlを加えることによって調製できる。陰極液は、新たに調製しなければならず、再利用するべきでない。通常、容器を一回満たすには2mlで十分である。
【0051】
全ての非PEG化サンプルについて通常、3000vで5〜6分間の集束時間は十分であるべきだが、異なるタンパク質は異なる電荷分布を有するので、集束時間もそれに応じて変化させることになる。その場合、設定は2、3個のサンプルを流すことにより最適化される必要がある。
【0052】
データ分析は、EZChromソフトウェアを使用して実施できる。「Supercompare」を使用して重ね合わせることによってプロファイルを比較でき、EZクロムソフトウェアの「方法開発」オプションを使用して電気泳動図を統合することができる。Fab’PEG消化の電気泳動図の例については図9を参照のこと。次のものが検出される;低pIマーカー、切断されたFab’酸性種、切断されたFab’種、切断されたFab’塩基性種、高pIマーカー。
【配列表フリーテキスト】
【0053】
配列番号1はCDP870のCDRH1のアミノ酸配列を示す。
配列番号2はCDP870のCDRH2のアミノ酸配列を示す。
配列番号3はCDP870のCDRH3のアミノ酸配列を示す。
配列番号4はCDP870のCDRL1のアミノ酸配列を示す。
配列番号5はCDP870のCDRL2のアミノ酸配列を示す。
配列番号6はCDP870のCDRL3のアミノ酸配列を示す。
配列番号7はCDP870の軽鎖可変領域のヌクレオチド及び予測されるアミノ酸配列を示す。
配列番号8はCDP870の重鎖可変領域のヌクレオチド及び予測されるアミノ酸配列を示す。
配列番号9はグラフトされた抗TNFα CDP870のFab軽鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号10はグラフトされた抗TNFα CDP870のFab重鎖のアミノ酸配列を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]