特許第6122844号(P6122844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6122844変性天然ゴム及びその製造方法、並びにゴム組成物及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122844
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】変性天然ゴム及びその製造方法、並びにゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08F 253/00 20060101AFI20170417BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20170417BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C08F253/00
   C08L51/04
   C08C19/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-513338(P2014-513338)
(86)(22)【出願日】2013年5月1日
(86)【国際出願番号】JP2013002907
(87)【国際公開番号】WO2013164912
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-104877(P2012-104877)
(32)【優先日】2012年5月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 春樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 豪
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−138360(JP,A)
【文献】 特開2006−152171(JP,A)
【文献】 特開平06−329702(JP,A)
【文献】 特開2002−060714(JP,A)
【文献】 特開平09−025648(JP,A)
【文献】 特開2011−225792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 253/00
C08L 51/04
C08L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、機械的せん断力を与えて極性基含有化合物をグラフト重合せてなる変性天然ゴムであって、
前記天然ゴム原材料は、窒素含有量が0.4質量%以下であり、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのうちから選択される少なくとも一種である重合開始剤を含むことを特徴とする変性天然ゴム。
【請求項2】
前記極性基含有化合物のグラフト量、前記天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して、0.01〜5.0質量部の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の変性天然ゴム。
【請求項3】
前記極性基含有化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の変性天然ゴム。
【請求項4】
天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物からなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、機械的せん断力を与えて極性基含有化合物をグラフト重合せる変性天然ゴムの製造方法であって、
前記天然ゴム原材料の、窒素含有量を0.4質量%以下とし、重合開始剤として、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのうちから選択される少なくとも一種を用いることを特徴とする変性天然ゴムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の変性天然ゴムを用いたゴム組成物。
【請求項6】
請求項に記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性天然ゴム及びその製造方法、並びに該変性天然ゴムを用いたゴム組成物及びタイヤに関し、特に、極性基含有化合物のグラフト重合や付加の効率が高く、ゴム組成物として用いられた際の、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れた変性天然ゴム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く(以下、「低ロス性」という。)、低発熱性に優れたゴム組成物が求められている。また、トレッド用のゴム組成物においては、低ロス性に加え、耐摩耗性及び破壊特性に優れることが求められる。これに対して、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を改良するには、ゴム組成物中のカーボンブラックやシリカ等の充填剤とゴム成分との親和性を向上させることが有効である。
【0003】
例えば、ゴム組成物中の充填剤とゴム成分との親和性を向上させ、充填剤による補強効果を向上させるために、末端変性により充填剤との親和性を向上させた合成ゴムや、官能基含有単量体を共重合させて充填剤との親和性を向上させた合成ゴム等が開発されている。
【0004】
一方、天然ゴムは、その優れた物理特性を生かして多量に使用されているものの、天然ゴム自体を改良して充填剤との親和性を向上させ、充填剤による補強効果を大幅に向上させる技術はない。
【0005】
例えば、天然ゴムをエポキシ化する技術が提案されているが、該技術では天然ゴムと充填剤との親和性を十分に向上させることができないため、充填剤による補強効果を十分に向上させることができない。また、天然ゴムラテックスにビニル系単量体を添加してグラフト重合する技術(特許文献1〜3を参照。)が知られており、該技術で得られたグラフト化天然ゴムは、MGラテックス等として既に生産されている。しかしながら、この方法で高いグラフト効率を達成するには、純度の高いラテックスを用いる必要があるため、遠心分離等の操作を別途行う必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そのため、充填材との補強性及び親和性を向上させるとともに、製造コストの低減を図ることを目的として、特許文献4には、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなる変性天然ゴムと、カーボンブラックまたはシリカとを配合してなるゴム組成物が開示されている。
また、さらに製造コストの低減が図られた技術として、特許文献5には、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、極性基含有化合物を機械的せん断力を与えてグラフト重合又は付加させてなる変性天然ゴム が開示されている。
【0007】
特許文献4及び5の技術を用いれば、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させることが可能な変性天然ゴムを、安価に製造することが可能となる。しかしながら、特許文献4及び5の技術は、天然ゴム原材料と極性基含有化合物とのグラフト重合及び付加反応の効率向上の点についてさらなる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−287121号公報
【特許文献2】特開平6−329702号公報
【特許文献3】特開平9−25468号公報
【特許文献4】特開2004−262973号公報
【特許文献5】特開2006−152171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の改良を行い、天然ゴム原材料の適正化を図ることで、極性基含有化合物のグラフト重合や付加の効率に優れ、ゴム組成物として用いられた際の、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れた変性天然ゴム及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる変性天然ゴムを用いたゴム組成物、及び、該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、安価に入手可能な固形状天然ゴム原材料に極性基含有化合物を機械的せん断力を与えてグラフト重合又は付加させることで、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させることが可能な変性天然ゴムが得られるとともに、前記天然ゴム原材料について、従来製品に比べてたんぱく質の低いものを用いることで、極性基含有化合物と原材料中のたんぱく質との反応を低減し、グラフト重合及び付加の効率を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の変性天然ゴムは、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、機械的せん断力を与えて極性基含有化合物をグラフト重合又は付加させてなる変性天然ゴムであって、前記天然ゴム原材料は、窒素含有量が0.4質量%以下であり、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのうちから選択される少なくとも一種である重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の変性天然ゴムの他の好適例においては、前記極性基含有化合物のグラフト量、前記天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して0.01〜5.0質量部である。
【0013】
本発明の変性天然ゴムの他の好適例においては、前記極性基含有化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
また、本発明の変性天然ゴムの製造方法は、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、機械的せん断力を与えて極性基含有化合物をグラフト重合又は付加させる変性天然ゴムの製造方法であって、前記天然ゴム原材料の、窒素含有量を0.4質量%以下とし、重合開始剤として、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのうちから選択される少なくとも一種を用いることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明のゴム組成物は、前記変性天然ゴムを用いたことを特徴とし、本発明のタイヤは、該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、極性基含有化合物のグラフト重合や付加の効率に優れ、ゴム組成物として用いられた際の、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れた変性天然ゴム及びその製造方法を提供することができる。また、該変性天然ゴムを用いた、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れたゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例及び比較例において、天然ゴム原材料中の窒素含有量と、DEMA量との関係を示したグラフである。
図2図2は、実施例及び比較例において、天然ゴム原材料中の窒素含有量と、低ロス性との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(変性天然ゴム、ゴム組成物)
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
本発明の変性天然ゴムは、天然ゴム、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に、機械的せん断力を与えて極性基含有化合物をグラフト重合又は付加させてなる。
前記極性基含有化合物の極性基は、カーボンブラックやシリカ等の種々の充填剤に対する親和性に優れるため、前記変性天然ゴムは、未変性の天然ゴムに比べて種々の充填剤に対する親和性が高い。そのため、前記変性天然ゴムをゴム成分として用いた本発明のゴム組成物は、ゴム成分に対する充填剤の分散性が高く、充填剤の補強効果が十分に発揮されて、破壊特性及び耐摩耗性に優れる上、低発熱性(低ロス性)も大幅に向上している。
【0021】
そして、本発明の変性天然ゴムに用いられる天然ゴム原材料は、窒素含有量:0.4質量%以下であることを特徴とする。
窒素含有量:0.4質量%以下と、従来の天然ゴム原材料に比べてたんぱく質の低いものを用いることによって、極性基含有化合物と該原材料中に含有するたんぱく質との反応を抑えることが可能となり、天然ゴム主鎖に対する極性基含有化合物のグラフト重合及び付加の効率を向上できる。
【0022】
前記天然ゴム原材料としては、乾燥後の各種固形天然ゴム、各種天然ゴムラテックス凝固物(アンスモークドシートを包含する)又は天然ゴムカップランプを用いることができ、これら天然ゴム原材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明の変性天然ゴムの製造には、純度の高い天然ゴムラテックスを用いる必要がないため、比較的安価に変性天然ゴムを製造することができる。また、前記天然ゴム原材料の中でも、カップランプ等は、安価に入手できるため、コストの点でのメリットが大きい。なお、カップランプ等を原材料とした場合、天然ゴムの変性効率が多少落ちることがあるが、コストと変性効率とを総合的に見てメリットがある。
【0023】
本発明の変性天然ゴムは、前記天然ゴム材料に、天然ゴム原材料に極性基含有化合物をグラフト重合又は付加させてなる。
ここで、前記極性基含有化合物とは、その名の通り、任意の極性基を有する化合物のことであり、その種類については、変性ゴムの種類や用途によって適宜選択できる。
【0024】
前記極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合、該極性基含有化合物は、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。一方、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合、該極性基含有化合物は、分子内にメルカプト基を有することが好ましく、極性基含有メルカプト化合物であることが好ましい。
【0025】
前記天然ゴム原材料と極性基含有化合物との混合物に機械的せん断力を与える手段としては、二軸押出混練装置又はドライプリブレーカーを用いることが好ましい。ここで、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させる場合は、前記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有ビニル系単量体)と共に重合開始剤を投入し、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に極性基含有化合物をグラフト重合により導入することができる。また、極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させる場合は、前記機械的せん断力を与えられる装置内に天然ゴム原材料及び極性基含有化合物(好ましくは、極性基含有メルカプト化合物)を投入し、必要に応じて有機過酸化物等を更に投入して、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム原材料中の天然ゴム分子の主鎖の二重結合に極性基含有化合物を付加反応させることができる。
【0026】
前記天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させるのに好適な極性基含有ビニル系単量体の極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基等を好適に挙げることができる。これら極性基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0027】
前記アミノ基を含有するビニル系単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有ビニル系単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0028】
ここで、第1級アミノ基含有ビニル系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、第2級アミノ基含有ビニル系単量体としては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0030】
更に、第3級アミノ基含有ビニル系単量体としては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
前記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が特に好ましい。
【0032】
また、前記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が特に好ましい。
【0033】
前記ニトリル基を含有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0034】
前記ヒドロキシル基を含有するビニル系単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0035】
前記カルボキシル基を含有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
前記エポキシ基を含有するビニル系単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0037】
前記含窒素複素環基を含有するビニル系単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するビニル系単量体としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0038】
前記スズ含有基を有するビニル系単量体としては、アリルトリ-n-ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ-n-オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ-n-オクチルスズ、ビニルトリ-n-ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ-n-オクチルスズ等のスズ含有単量体を挙げることができる。これらスズ含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0039】
前記アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6-トリメトキシシリル-1,2-ヘキセン、p-トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有ビニル系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0040】
前記極性基含有化合物を天然ゴム原材料中の天然ゴム分子にグラフト重合させるために用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert-ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。
【0041】
また、グラフト重合された変性天然ゴムのゲル化を抑制する点からは、前記重合開始剤として、共役系ではなく、1点でラジカル開裂して少なくとも一方のラジカルになる原子から延びたアルキル鎖中の炭素数が5〜10である構造を有するものを用いることが好ましい。共役系の場合には十分なゲル化抑制効果が得られず、2点で開裂する構造を有する場合には前記天然ゴムを架橋するためゲル化が促進されるおそれがある。なお、前記ラジカルになる原子とは、開裂した部分の共有結合が切断された原子のことであり、該原子から延びるアルキル鎖とは、ラジカル開裂前に該原子から延びるアルキル鎖のことをいう。該アルキル鎖中の炭素数を5〜10に限定した理由としては、炭素数が5未満の場合には十分なゲル化抑制効果を奏することができず、一方、炭素数が10を超えるとアルキル鎖が長くなり開裂温度が低くなるため、使用が困難となるからである。
【0042】
上述した重合開始剤としては、例えば以下の構造を有するものが挙げられる。
【化1】
【0043】
ここで、本発明の変性天然ゴムにおいて、重合開始剤の適正化を図りゲル化を抑制する理由としては、ゲル化が一定量を超える場合、加工性が悪化するためである。
【0044】
前記変性天然ゴムにカーボンブラックやシリカ等の充填剤を配合して、ゴム組成物の加工性を低下させることなく低ロス性及び耐摩耗性を向上させるには、各天然ゴム分子に前記極性基含有化合物が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、前記重合開始剤の添加量は、前記極性基含有化合物に対し1〜100mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
【0045】
上述した各成分を機械的せん断力を与えられる装置内に仕込み、機械的せん断力を与えることで、天然ゴム分子に前記極性基含有化合物がグラフト共重合した変性天然ゴムが得られる。なお、この際、天然ゴム分子の変性反応を加温して行ってもよく、好ましくは30〜160℃、より好ましくは50〜130℃の温度で行うことで、十分な反応効率で変性天然ゴムを得ることができる。
【0046】
一方、前記天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加反応させるのに好適な極性基含有メルカプト化合物の極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基等を好適に挙げることができる。これら極性基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0047】
前記アミノ基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該アミノ基を有するメルカプト化合物の中でも、第3級アミノ基含有メルカプト化合物が特に好ましい。ここで、第1級アミノ基含有メルカプト化合物としては、4-メルカプトアニリン、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトプロピルアミン、3-メルカプトプロピルアミン、2-メルカプトブチルアミン、3-メルカプトブチルアミン、4-メルカプトブチルアミン等が挙げられる。また、第2級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N-メチルアミノエタンチオール、N-エチルアミノエタンチオール、N-メチルアミノプロパンチオール、N-エチルアミノプロパンチオール、N-メチルアミノブタンチオール、N-エチルアミノブタンチオール等が挙げられる。更に、第3級アミノ基含有メルカプト化合物としては、N,N-ジメチルアミノエタンチオール、N,N-ジエチルアミノエタンチオール、N,N-ジメチルアミノプロパンチオール、N,N-ジエチルアミノプロパンチオール、N,N-ジメチルアミノブタンチオール、N,N-ジエチルアミノブタンチオール等のN,N-ジ置換アミノアルキルメルカプタン等が挙げられる。これらアミノ基含有メルカプト化合物の中でも、2-メルカプトエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノエタンチオール等が好ましい。これらアミノ基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0048】
前記ニトリル基を有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトプロパンニトリル、3-メルカプトプロパンニトリル、2-メルカプトブタンニトリル、3-メルカプトブタンニトリル、4-メルカプトブタンニトリル等が挙げられ、これらニトリル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0049】
前記ヒドロキシル基を含有するメルカプト化合物としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を有するメルカプト化合物が挙げられる。該ヒドロキシル基含有メルカプト化合物の具体例としては、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-プロパノール、4-メルカプト-1-ブタノール、4-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-1-ブタノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-1-ヘキサノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-メルカプトベンジルアルコール、2-メルカプトフェノール、4-メルカプトフェノール等が挙げられ、これらの中でも、2-メルカプトエタノール等が好ましい。これらヒドロキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0050】
前記カルボキシル基を含有するメルカプト化合物としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、メルカプトマロン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸等が挙げられ、これらの中でも、メルカプト酢酸等が好ましい。これらカルボキシル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0051】
前記含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトピリジン、3-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン、5-メチル-2-メルカプトピリジン、5-エチル-2-メルカプトピリジン等が挙げられ、また、他の含窒素複素環基を含有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトピリミジン、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、2-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン等が好ましい。これら含窒素複素環基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0052】
前記スズ含有基を有するメルカプト化合物としては、2-メルカプトエチルトリ-n-ブチルスズ、2-メルカプトエチルトリメチルスズ、2-メルカプトエチルトリフェニルスズ、3-メルカプトプロピルトリ-n-ブチルスズ、3-メルカプトプロピルトリメチルスズ、3-メルカプトプロピルトリフェニルスズ等のスズ含有メルカプト化合物を挙げることができる。これらスズ含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0053】
前記アルコキシシリル基を含有するメルカプト化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。これらアルコキシシリル基含有メルカプト化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0054】
機械的せん断力を与えられる装置内に上述した各成分を仕込み、装置内で機械的せん断力を与えることで、天然ゴム分子に前記極性基含有化合物が付加反応した変性天然ゴムが得られる。なお、この際、天然ゴム分子の変性反応を加温して行ってもよく、好ましくは30〜160℃、より好ましくは50〜130℃の温度で行うことで、十分な付加効率で変性天然ゴムを得ることができる。
【0055】
本発明の変性天然ゴムにおいて、前記極性基含有化合物のグラフト量又は付加量は、前記天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲が好ましく、0.05〜2.0質量部の範囲が更に好ましく、0.10〜1.0質量部の範囲がより一層好ましい。極性基含有化合物のグラフト量又は付加量が0.01質量部未満では、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を十分に改良できないことがある。また、極性基含有化合物のグラフト量又は付加量が5.0質量部を超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の物理特性を大きく変えてしまい、天然ゴム本来の優れた物理特性が損なわれると共に、ゴム組成物の加工性が大幅に悪化するおそれがある。
【0056】
本発明のゴム組成物は、前記変性天然ゴムを用いたことを特徴とし、更に充填剤を含有することが好ましい。ここで、充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、前記変性天然ゴム100質量部に対して5〜100質量部の範囲が好ましく、10〜70質量部の範囲が更に好ましい。充填剤の配合量が5質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、100質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。
【0057】
本発明のゴム組成物に用いる充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられ、ここで、無機充填剤としては、シリカ及び下記式(I):
nM・xSiOy・zH2O ・・・(I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物が挙げられる。これら充填剤は、一種単独で用いてもよし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
前記カーボンブラックとしては、GPF,FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのもの等が挙げられ、また、前記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等が挙げられる。更に、前記式(I)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al23);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0059】
本発明のゴム組成物には、前記変性天然ゴム、充填剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、変性天然ゴムに、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0060】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いたことを特徴とし、前記ゴム組成物をトレッドに用いることが好ましい。前記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低燃費性、破壊特性及び耐摩耗性に優れる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
<製造例1>
乾燥ゴム量換算で600gのRSS(Ribbed Smoked Sheets:燻煙乾燥ゴム)と、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 1.8gと、tert-ブチルハイドロパーオキサイド(t-BHPO)0.7gとを混練機内で室温にて30rpmで2分間練り込み、均一に分散させた。次に、得られた混合物にテトラエチレンペンタミン(TEPA)0.7gを均一に加えながら、神戸製鋼製二軸混練押出機[同方向回転スクリュー径=30mm, L/D=35, ベントホール3ヶ所]を用い、バレル温度120℃、回転数100rpmで機械的せん断力を加えながら押し出すことにより、変性天然ゴムA-aを得た(表1−1)。
また、得られた変性天然ゴムA-aにおけるN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートのグラフト量を、未反応モノマーの抽出後熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析装置を用いて分析したところ、天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して0.01質量部であった。
【0063】
<製造例2〜7>
N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 1.8gの代わりに、製造例2では2-ヒドロキシエチルメタクリレート 1.2.gを加え、製造例3では4-ビニルピリジン 0.9gを加え、製造例4ではメタクリル酸 0.8gを加え、製造例5ではアクリロニトリル 0.9gを加え、製造例6ではグリシジルメタクリレート 1.3gを加え、製造例7ではメタクリルアミド 1.5gを加え、それ以外は、前記製造例1と同様にして変性天然ゴムA-b〜A-gを得た。また、変性天然ゴムA-aと同様にして、変性天然ゴムA-b〜A-gにおける単量体として加えた極性基含有化合物のグラフト量を分析して、表1に示す結果を得た(表1−1)。
【0064】
<製造例8>
tert-ブチルハイドロパーオキサイド(t-BHPO)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加せずに、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート 1.8gに代えてN,N-ジメチルアミノエタンチオール 0.9gを用いる以外は、前記製造例1と同様にして変性天然ゴムA-hを得た(表1−1)。また、得られた変性天然ゴムA-hにおけるジメチルアミノメタンチオールの付加量を熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析装置を用いて分析したところ、天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して0質量部であった。
【0065】
<製造例9〜12>
N,N-ジメチルアミノエタンチオール 0.9gの代わりに、製造例9では4-メルカプトピリジン 1.0gを加え、製造例10ではメルカプトエタノール 0.6gを加え、製造例11ではメルカプト酢酸 0.7gを加え、製造例12では3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン 1.7gを加え、それ以外は、前記製造例8と同様にして変性天然ゴムA-i〜A-lを得た(表1−1)。また、変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムA-i〜A-lにおけるメルカプト化合物の付加量を分析して、表1−1に示す結果を得た。
【0066】
<製造例13>
上述したRSSを、混練機内で室温にて30rpmで2分間練り込み、均一に分散させた。次に、神戸製鋼製二軸混練押出機[同方向回転スクリュー径=30mm, L/D=35, ベントホール3ヶ所]を用い、バレル温度120℃、回転数100rpmで機械的せん断力を加えながら押し出すことにより、天然ゴムA-mを得た(表1−1)。
【0067】
<製造例14〜26>
製造例1〜13のRSSに代えて、次に示す天然ゴムを天然ゴム原材料として用いたこと以外は、製造例1〜13と同様にして、変性天然ゴムB-a〜B-l及び天然ゴムB-mを得た(表1−1)。
天然ゴム原材料としての天然ゴムは、アンモニア0.4質量%を添加した天然ゴムラテックス(CT−1)を、ラテックスセパレーターSLP−3000(斉藤遠心機工業製)を用いて回転数7500rpmで15分間の遠心分離することにより濃縮した。濃縮したラテックスをさらに回転数7500rpmで15分間の遠心分離した。得られた濃縮ラテックスを固形分として約20%に希釈した後、蟻酸を添加し一晩放置後、凝固して得られたゴム分を、110℃で210分の条件で乾燥した天然ゴム。また、変性天然ゴムA-a又は変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムB-a〜B-lにおける極性基含有化合物のグラフト量又は付加量を分析して、表1−1に示す結果を得た。
【0068】
<製造例27〜39>
製造例1〜13のRSSに代えて、次に示す天然ゴムを天然ゴム原材料として用いたこと以外は、製造例1〜13と同様にして、変性天然ゴムC-a〜C-l及び天然ゴムC-mを得た(表1−1)。
天然ゴム原材料としての天然ゴムは、水136gにアニオン系界面活性剤[花王(株)製「デモール」、界面活性剤濃度は2.5重量%]24.7ml、プロテアーゼ(ノボザイムズ製「アルカラーゼ2.5L、タイプDX」)の0.06gを加えて混合し、溶液を調製した。次に、固形分20重量%の天然ゴムラテックス1000gをウォーターバス中にて40℃の恒温とし、攪拌しながら、該溶液を滴下し、5時間同温度で攪拌を続け、得られた天然ゴムラテックスを得た。上記天然ゴムラテックスを酸凝固して得られたゴム分を、130℃に設定されたドラムドライヤーを5回通過させ、その後真空乾燥機にて40℃で8時間乾燥して得られる天然ゴム。また、変性天然ゴムA-a又は変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムC-a〜C-lにおける極性基含有化合物のグラフト量又は付加量を分析して、表1−1に示す結果を得た。
【0069】
<製造例40〜52>
製造例1〜13のRSSに代えて、USS(Un Smoked Sheet)を天然ゴム原材料として用い、変性後に乾燥させたこと以外は、製造例1〜13と同様にして変性天然ゴムD-a〜D-l及び天然ゴムD-mを得た(表1−2)。また、変性天然ゴムA-a又は変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムD-a〜D-lにおける極性基含有化合物のグラフト量又は付加量を分析して、表1−2に示す結果を得た。
【0070】
<製造例53〜65>
製造例1〜13のRSSに代えて、次に示す天然ゴムを天然ゴム原材料として用い、変性後に乾燥させたこと以外は、製造例1〜13と同様にして、変性天然ゴムE-a〜E-l及び天然ゴムE-mを得た(表1−2)。
天然ゴム原材料としての天然ゴムは、アンモニア0.4質量%を添加した天然ゴムラテックス(CT−1)を、ラテックスセパレーターSLP−3000(斉藤遠心機工業製)を用いて回転数7500rpmで15分間の遠心分離することにより濃縮した。濃縮したラテックスをさらに回転数7500rpmで15分間の遠心分離した。得られた濃縮ラテックスを固形分として約20%に希釈した後、蟻酸を添加し一晩放置後、凝固して得られたゴム分である。また、変性天然ゴムA-a又は変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムE-a〜E-lにおける極性基含有化合物のグラフト量又は付加量を分析して、表1−2に示す結果を得た。
【0071】
<製造例66〜78>
製造例1〜13のRSSに代えて、次に示す天然ゴムを天然ゴム原材料として用い、変性後に乾燥させたこと以外は、製造例1〜13と同様にして、変性天然ゴムF-a〜F-l及び天然ゴムF-mを得た(表1−2)。
天然ゴム原材料としての天然ゴムは、水136gにアニオン系界面活性剤[花王(株)製「デモール」、界面活性剤濃度は2.5重量%]24.7ml、プロテアーゼ(ノボザイムズ製「アルカラーゼ2.5L、タイプDX」)の0.06gを加えて混合し、溶液を調製した。次に、固形分20重量%の天然ゴムラテックス1000gをウォーターバス中にて40℃の恒温とし、攪拌しながら、該溶液を滴下し、5時間同温度で攪拌を続け、得られた天然ゴムラテックスを得た。上記天然ゴムラテックスを酸凝固して得られたゴム分である。また、変性天然ゴムA-a又は変性天然ゴムA-hと同様にして、変性天然ゴムF-a〜F-lにおける極性基含有化合物のグラフト量又は付加量を分析して、表1−2に示す結果を得た。
【0072】
【表1-1】


【表1-2】
【0073】
参考例1〜96、比較例1〜60)
次に、プラストミルで混練して表2に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物に対して、下記の方法でムーニー粘度、引張強さ(Tb)、tanδ及び耐摩耗性を測定・評価した。配合1に従うゴム組成物の結果を表3−1及び3−2に、配合2に従うゴム組成物の結果を表4−1及び4−2に示す。
【0074】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1994に準拠して、130℃にてゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。
評価結果を、表3及び表4に示す。
【0075】
(2)引張強さ
前記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、JIS K6301−1995に準拠して引張試験を行い、引張強さ(Tb)を測定した。引張強さが大きい程、耐破壊性が良好であることを示す。
評価結果を、表3及び表4に示す。
【0076】
(3)低ロス性(tanδ)
前記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。tanδが小さい程、低ロス性に優れることを示す。
また、(別添)に、製造例1〜39のサンプルについて、天然ゴム原材料中の窒素含有量とグラフト量若しくは付加量との関係をプロットした。
また、(別添)に、参考例1及び13、比較例1のサンプルについて、天然ゴム原材料中の窒素含有量と低ロス性との関係をプロットした。
評価結果を、表3及び表4に示す。
【0077】
(4)耐摩耗性
前記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%での摩耗量を測定し、比較例1〜13については比較例13の摩耗量の逆数を100とし、参考例1〜12及び比較例14については比較例14の摩耗量の逆数を100とし、参考例13〜24及び比較例15については比較例15の摩耗量の逆数を100とし、比較例16〜28については比較例28の摩耗量の逆数を100とし、参考例25〜36及び比較例29については比較例29の摩耗量の逆数を100とし、参考例37〜48及び比較例30については比較例30の摩耗量の逆数を100とし、比較例31〜43については比較例43の摩耗量の逆数を100とし、参考例49〜60及び比較例44については比較例44の摩耗量の逆数を100とし、参考例61〜72及び比較例45については比較例45の摩耗量の逆数を100とし、比較例46〜58については比較例58の摩耗量の逆数を100とし、参考例73〜84及び比較例59については比較例59の摩耗量の逆数を100とし、参考例85〜96及び比較例60については比較例60の摩耗量の逆数を100としてそれぞれ指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。評価結果を、表3及び表4に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
*1 使用したゴム成分の種類を表3−1及び表3−2、並びに、表4−1及び表4−2中に示す.
*2 日本シリカ工業製, 「ニプシルAQ」.
*3 デグッサ製, 「Si69」, ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド.
*4 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*5 N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
*6 ジフェニルグアニジン.
*7 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*8 N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド.
【0080】
【表3-1】
【表3-2】
【0081】
【表4-1】
【表4-2】
【0082】
表3及び表4における、各参考例及び比較例の比較から、天然ゴムに代えて極性基含有化合物で変性した変性天然ゴムを用いることで、ゴム組成物の破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分る。
また、図1から、天然ゴム原材料中の窒素量が低いほど、DEMA量が高くなっており、グラフト反応の効率が向上していることがわかった。さらに、図2から、天然ゴム原材料中の窒素量が低いほど、得られたゴム組成物の低ロス性が良好となることがわかった。
【0083】
(実施例97〜103、比較例61〜63)
・比較例61〜63
製造例1の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと以外は、製造例1と同様の条件によって、比較例61に係る変性天然ゴムを得た。
さらに、製造例1の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと、及び、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を加えることなく混合物の押し出しを行ったこと以外は、製造例1と同様の条件によって、比較例62及び63に係る変性天然ゴムを得た。
・実施例及び参考例97〜99
また、製造例14の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと以外は、製造例1と同様の条件によって、参考例97に係る変性天然ゴムを得た。
さらにまた、製造例14の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと、及び、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を加えることなく混合物の押し出しを行ったこと以外は、製造例14と同様の条件によって、実施例98及び99に係る変性天然ゴムを得た。
・実施例及び参考例100〜103
また、製造例27の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと以外は、製造例1と同様の条件によって、参考例100に係る変性天然ゴムを得た。
さらにまた、製造例27の重合開始剤に代えて、重合開始剤として、表5に示した重合開始剤を用いたこと、及び、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を加えることなく混合物の押し出しを行ったこと以外は、製造例27と同様の条件によって、実施例101〜103に係る変性天然ゴムを得た。
【0084】
(1)変性天然ゴム中のゲル量
得られた変性天然ゴムの各サンプル200mgを、トルエンに溶かして一晩(10時間)放置した後、遠心分離処理(回転数:3500rpm、時間:1.5H)を行った。その後、処理によって生じた上澄液を除去し、残ったゲルを乾燥させた後に質量を測定したものを、変性天然ゴム中のゲル量とした。グラフト量(DEMA付加量)に対するゲル量の値(DEMA付加量/ゲル増加量×100)を表5に示す。
【0086】
(3)加工性
得られた各変性天然ゴムについて、JIS−K6300−1:2001に準拠して、ムーニー粘度計(モンサント社製RPA)によって、L型ローターを用い、130℃の条件下で、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度[ML1+4(130℃)]を測定した。
得られた未加硫ゴム組成物のムーニー粘度の値は、比較例1の値を100として指数表示し、表5に示す。なお、指数値が小さいほど、未加硫ゴム組成物の流れ性が良く、加工性に優れる。
【0087】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、極性基含有化合物のグラフト重合や付加の効率に優れ、ゴム組成物として用いられた際の、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れた変性天然ゴム及びその製造方法を提供することができる。また、該変性天然ゴムを含むゴム組成物を用いたタイヤは、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れる点で産業上有用である。
図1
図2