特許第6122901号(P6122901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ピストンリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000002
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000003
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000004
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000005
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000006
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000007
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000008
  • 特許6122901-組合せオイルリング 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122901
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】組合せオイルリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/20 20060101AFI20170417BHJP
   F16J 9/06 20060101ALI20170417BHJP
   F02F 5/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F16J9/20
   F16J9/06 B
   F02F5/00 301D
   F02F5/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-85042(P2015-85042)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-35326(P2016-35326A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-157068(P2014-157068)
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】川▲さき▼ 将隆
(72)【発明者】
【氏名】宮本 護
(72)【発明者】
【氏名】一杉 英司
(72)【発明者】
【氏名】新井 健寿
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−049705(JP,A)
【文献】 特開2002−323133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 1/00−10/04
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本以上の圧力リングと一本の組合せオイルリングとから成るピストンリングが組み付けられる溝が形成されたピストンのオイルリング溝に装着され、平板で且つ環状に形成されると共に、シリンダと摺接する摺接部を有する上下一対のサイドレールと、
前記上下一対のサイドレールの間に配置されるスペーサエキスパンダを備えた組合せオイルリングにおいて、
前記上下一対のサイドレールの少なくとも上側のサイドレールは、前記摺接部における前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、前記ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であり、
前記テーパ形状は、前記スペーサエキスパンダの中心軸に対し8〜12°の角度を有し、前記サイドレールの下端から0.15mm以内に前記テーパ形状の頂点が位置し、
前記頂点の位置より下端側が曲率でR0.01〜0.5の曲線形状に形成されていることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項2】
請求項1に記載の組合せオイルリングにおいて、
前記上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、前記摺接部における前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、前記ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項3】
請求項1に記載の組合せオイルリングにおいて、
前記上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、円弧状に形成されたバレル形状であることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の組合せオイルリングにおいて、
前記上下一対のサイドレールは、表裏判別手段を備えることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の組合せオイルリングにおいて、
前記上下一対のサイドレール及び前記スペーサエキスパンダの少なくとも1つは、表面処理が施されることを特徴とする組合せオイルリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組合せオイルリングに関し、特に、上下一対のサイドレールと、それらの間に配置されるスペーサエキスパンダとを備えている3ピース構成の組合せオイルリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関のシリンダ内壁面に付着した余分なエンジンオイルを掻き落とし、適度な油膜を形成して内燃機関の運転に伴うピストンの焼き付きを防止すると共にオイルリングとシリンダとの摺接面の摩耗の減少を図るオイルリングが知られている。このようなオイルリングは種々の形態が知られており、例えば、下記の特許文献に記載されているように、上下一対のサイドレールと、それらの間に配置されたスペーサエキスパンダとを備えた組合せオイルリングにおいて、サイドレールの走行面が横断面でみて第1の区分でh(x)=ax+bx2により表される2次の多項式の非対称の形状に従い、エッジとして構成された支持する頂点h(x)の後、第3の区分で、関数h(x)=cx2(ただし、cはbの倍数として定義される)の非対称の形状に従う組合せオイルリングが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−504416号公報
【0004】
また、組合せオイルリングは、上述したように内燃機関のシリンダ内壁面に付着した余分なエンジンオイルを掻き落とし、適度な油膜を形成してピストンの焼き付きを防止しているが、内燃機関の燃焼室に付着したエンジンオイルは、燃焼して排気ガスとして内燃機関外へ排出されてしまうため、オイル消費量の低減のためにピストンリングのシール性を保持して確実に余分なエンジンオイルを掻き落とす必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の組合せオイルリングは、サイドレールの摺動面の形状やピストンリングの張力を種々設定することで、エンジンオイルの掻き落とし性能の改善を図っているものの、近年の低燃費化、環境対応を背景に、更なるオイル消費量の低減の要望がある。しかし、上述した特許文献1に記載されたオイルリングの形状によると、初期摺動中に接触面積が増大し、エンジンオイルの掻き落とし機能が十分に得られないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、エンジンオイルのオイル消費量を更に低減した組合せオイルリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る組合せオイルリングは、少なくとも一本以上の圧力リングと一本の組合せオイルリングとから成るピストンリングが組み付けられる溝が形成されたピストンのオイルリング溝に装着され、平板で且つ環状に形成されると共に、シリンダと摺接する摺接部を有する上下一対のサイドレールと、前記上下一対のサイドレールの間に配置されるスペーサエキスパンダを備えた組合せオイルリングにおいて、前記上下一対のサイドレールの少なくとも上側のサイドレールは、前記摺接部における前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、前記ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であり、前記テーパ形状は、前記スペーサエキスパンダの中心軸に対し8〜12°の角度を有し、前記サイドレールの下端から0.15mm以内に前記テーパ形状の頂点が位置し、前記頂点の位置より下端側が曲率でR0.01〜0.5の曲線形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る組合せオイルリングにおいて、前記上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、前記摺接部における前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、前記ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であると好適である。
【0009】
また、本発明に係る組合せオイルリングにおいて、前記上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、前記ピストンの軸方向に沿った断面形状が、円弧状に形成されたバレル形状であると好適である。
【0010】
また、本発明に係る組合せオイルリングにおいて、前記上下一対のサイドレールは、表裏判別手段を備えると好適である。
【0011】
また、本発明に係る組合せオイルリングにおいて、前記上下一対のサイドレール及び前記スペーサエキスパンダの少なくとも1つは、表面処理が施されると好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る組合せオイルリングは、上下一対のサイドレールの少なくとも上側のサイドレールは、ピストンの軸方向に沿った断面形状が、ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ状であり、テーパ形状は、スペーサエキスパンダの中心軸に対し5〜30°の角度を有し、サイドレールの下端から0.15mm以内にテーパ形状の頂点が位置し、頂点の位置より下端側が曲率でR0.01〜0.5の曲線形状に形成されているので、更なるオイル消費量の低減を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る組合せオイルリングは、上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、摺接部におけるピストンの軸方向に沿った断面形状が、ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であるので、より一層のオイル消費量の低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る組合せオイルリングは、上下一対のサイドレールの下側のサイドレールは、ピストンの軸方向に沿った断面形状が、円弧状に形成されたバレル形状であるので、表裏判別をすることなく下側のサイドレールを組付けることができ、表裏判別に伴う作業の煩雑さを解消することができる。
【0015】
また、本発明に係る組合せオイルリングは、上下一対のサイドレールは、表裏判別手段を備えるので、組合せオイルリングの組立及び、組合せオイルリングをピストン溝に組み付ける際に、表裏逆組による誤った組付け作業を防止することができ、誤組付けに伴うオイル消費量の増加を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る組合せオイルリングは、上下一対のサイドレールに表面処理が施されているので、シリンダとの摺動抵抗の低減及び組合せオイルリングの摩耗の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングを組み付けた内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した要部断面図。
図2】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるスペーサエキスパンダの一部分を示す斜視図。
図3】本発明の他の実施形態に係る組合せオイルリングを組み付けた内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した要部断面図。
図4】本発明の他の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるスペーサエキスパンダの一部分を示す斜視図。
図5】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるサイドレールの内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した断面図。
図6】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングの表裏判別手段の変形例を示す図。
図7】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングの変形例を示す要部断面図。
図8】本発明の実施形態に係る組合せオイルリングのオイル消費量を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングを組み付けた内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した要部断面図であり、図2は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるスペーサエキスパンダの一部分を示す斜視図であり、図3は、本発明の他の実施形態に係る組合せオイルリングを組み付けた内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した要部断面図であり、図4は、本発明の他の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるスペーサエキスパンダの一部分を示す斜視図であり、図5は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングに用いられるサイドレールの内燃機関のシリンダ軸方向で切断して示した断面図であり、図6は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングの表裏判別手段の変形例を示す図であり、図7は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングの変形例を示す要部断面図であり、図8は、本発明の実施形態に係る組合せオイルリングのオイル消費量を示したグラフである。なお、本明細書において、上下方向とは、図1及び図3における紙面上方・下方に沿った方向と定義する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る組合せオイルリング10は、内燃機関のピストン2の外周面に形成されたオイルリング溝3に組み付けられ、シリンダ1の内壁と摺接することで、シリンダ1の内壁に付着した余分なエンジンオイルを掻き落としてシリンダ1の内壁に適切な油膜を形成する部材である。
【0021】
組合せオイルリング10は、上下一対のサイドレール11,11と、この上下一対のサイドレール11,11の間に配置されるスペーサエキスパンダ12とから構成されている。これらサイドレール11,11及びスペーサエキスパンダ12は鋼等からなっておりサイドレール11は、合口(図示せず)を備えた平板の環状リングとして構成されている。
【0022】
図2に示すように、スペーサエキスパンダ12は、鋼材を塑性加工して形成されており、軸方向に沿って凹凸形状(波形形状)となると共に、周方向に略円形状に構成されている。この軸方向の凹凸形状によって、軸方向の端部に上片13及び下片14が形成されている。即ち、スペーサエキスパンダ12は、軸方向及び周方向に離間して周方向に交互に多数配置された上片13及び下片14を備えており、互いに隣接する上片13と下片14とは連結片15によって連結されている。
【0023】
また、図1に示すように、スペーサエキスパンダ12の上片13及び下片14の内周側端部には、サイドレール11,11を外周側に押圧する耳部16がアーチ状に立設して形成されている。なお、図2に示すように、耳部16には、径方向に沿って貫通孔18が形成されている。
【0024】
さらに、図2に示すように、上片13の上面及び下片14の下面(図示せず)には、それぞれ径方向に沿って溝17が形成されている。また、スペーサエキスパンダ12の上片13及び下片14の外周側端部には、溝17よりも一段高く形成されたサイドレール支持部19が形成されている。
【0025】
なお、図3及び4に示すように、スペーサエキスパンダ12aは、溝17に径方向に沿った断面形状がV形状又はR形状に形成された凹部17aを形成しても構わない。この場合、凹部17aによって貫通孔18の開口面積が大きくなるので、貫通孔18を流通するオイル流量を大きくすることが可能となる。
【0026】
このように、スペーサエキスパンダ12aに溝17を形成することで、ピストンの外周側から内周側へ円滑にエンジンオイルを流すことが可能となり、ピストンリングで掻き落としたエンジンオイルをエンジン内部に還流させると共に、燃焼室へ漏出することを防止することでオイル消費量(LOC)の低減を図っている。
【0027】
なお、スペーサエキスパンダ12は、ピストン2のオイルリング溝3に組み付けられた状態で合口が付き合わされて周方向に縮められた状態で組み付けられている。したがって、スペーサエキスパンダ12の張力によって径方向外方へ拡張力を生じるように組み付けられているので、上下のサイドレール11,11を上片13,下片14のサイドレール支持部19,19で軸方向に沿って上下に隔離保持すると共に、耳部16がサイドレール11の内周面をそれぞれ押圧することによって、上下のサイドレール11,11の外周面をシリンダ1の内壁面に密着させている。
【0028】
図5(a)に示すように、上下一対のサイドレールの少なくとも上側のサイドレール11は、シリンダと摺接する摺接部を備えており、当該摺接部におけるピストン1の軸方向に沿った断面形状が、サイドレール上面21からサイドレール下面22に向かって側面23が直線状に広がるテーパ形状と、所定の曲率で曲線状に形成された曲面24とを備えている。また、断面形状において、曲面24上には、径方向の最外端に位置する頂点24aが形成されている。なお、頂点24aは、サイドレール11の下面22からの高さHが0.15mm以内の位置に形成されている。さらに、曲面24の曲率はR0.01から0.5(mm)に形成されると好適である。
【0029】
なお、図1に示すように、組合せオイルリング10は、上下一対のサイドレール11,11が、それぞれ同一の方向となるように組み付けられている。すなわち、上下一対のサイドレール11,11は、いずれも下端側に頂点24aが位置するようにスペーサエキスパンダ12と組み合わされて組合せオイルリング10を構成している。
【0030】
更に、図5(b)に示すように、サイドレール上面21には、表裏判別手段としての凹部25が形成されても構わない。この凹部25は、サイドレール上面21が判別することができればよいので、サイドレール上面11に環状に形成しても構わないし、点状に形成しても構わない。なお、凹部25の形成方法は、サイドレールにプレス、打刻又はレーザー加工によって形成しても構わないし、例えばロール引きやダイス引き等の線材の引き抜き加工と同時に形成しても構わない。また、凹部25を設けずにサイドレール上面21又は下面22に断続的又は連続的なペイントを塗布しても構わないし、上面21又は下面22のいずれか一方の表面粗さを変えて、例えば上面21を平滑に処理すると共に、下面22を粗く処理することで触感によって表裏判別するように形成しても構わない。この場合、視覚による判別に依らない為、作業場の明るさが十分でない場合であっても確実に表裏判別を行うことができる。なお、側面23は、スペーサエキスパンダ12の中心軸Cに対して所定の角度θだけ傾斜している。この角度θは、5〜30°より好ましくは8〜12°に設定されると好適である。
【0031】
更に、図6(a)に示すように、表裏判別手段として種々の形態が適用可能である。例えば、サイドレールの側面23の合口30に向かって左右いずれか一方にペイント26を塗布することで、常に合口30の例えば右側にペイント26が配されるように組み付けることでサイドレールの表裏判別を行うことができる。
【0032】
また、図6(b)に示すように、合口30の両側にそれぞれ一方を第1のペイント26a、他方を第1のペイント26aと異なる色彩でペイントした第2のペイント26bを塗布することで、例えば第1のペイント26aを白、第2のペイント26bを赤にペイントした場合に、白が右に配されるように組み付けることでサイドレールの表裏判別を行うことができる。
【0033】
また、図6(c)に示すように、合口30の側面23と反対端に位置する内周側端部の一方に面取り27を設けることで、例えば合口30の右側に面取り27が配されるように組み付けることでサイドレールの表裏判別を行うことができる。
【0034】
また、上下一対のサイドレールは、図7に示すように上側のサイドレール11はテーパ状に形成すると共に、下側のサイドレール11´は軸方向断面において、径方向に突出する円弧状のバレル形状としても構わない。この場合、バレル形状は表裏判別不要で組合せオイルリングに組み付けることができるため、上述した表裏判別に伴う作業負担を軽減することができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を更に具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて、本実施形態に係る組合せオイルリング10について機能試験を実施した。機能試験は、排気量2.4リットル直列4気筒の自動車用ガソリンエンジンを用いて行った。試験条件は、ピストンスピードが16m/s〜23m/sとなるよう、WOT(ワイドオープンスロットル)にて従来例(バレル形状)と本発明に係る組合せオイルリングでのオイル消費量(LOC)を測定し、22.6m/sでの従来例値が1となるように相対比率で確認を行った。
【0036】
第1圧力リング及びオイルリングのサイドレールの摺動面には、Cr−Nからなるイオンプレーティング皮膜を形成した。オイルリングの摺動面は、イオンプレーティング皮膜を形成した後、ラッピング処理を行い、摺動面凸部とテーパ部が滑らかになるように形成し、曲面24の頂点24aの位置がサイドレール下面22から0.15mm以下となるように設定した。
【0037】
なお、その他の試験条件は以下の通りである。
ピストンボア径:87mm,
第1圧力リングの摺動面形状:バレルフェース,
第2圧力リングの摺動面形状:テーパアンダーカット。
【0038】
本試験では、実施例として図5(a)に示す形状のサイドレール11を用い、スペーサエキスパンダは、図2の形状を用いた。オイルリングの形状は以下の寸法のものを用いた。
スペーサエキスパンダのEA:10°,
サイドレール半径方向の厚み:1.9mm,
サイドレール軸方向の厚み:0.4mm,
サイドレールの外周角度θ:10°,
オイルリング軸方向幅:2.0mm。
【0039】
図8に示すように、実施例は、ピストンスピードが22m/sと22.6m/sの場合に比較例と比較した場合、オイル消費量が従来比で約40%低減することが確認できた。
【0040】
なお、本実施例のように、一対のサイドレールの頂点位置が下側となるように配置することで、優れたオイル消費量が得られるが、サイドレールの頂点位置を上側となるようにした場合は、オイルの掻き上げが多くなり、オイル消費量が悪化してしまうことを確認した。
【0041】
このように、従来のバレル形状のサイドレールを用いた組合せオイルリングと、本実施形態に係る組合せオイルリング10のオイル消費量を比較から、本実施形態の形状することで、約40%のオイル消費量の抑制効果を確認できた。
【0042】
また、上述した本実施形態に係る組合せオイルリング10は、サイドレールに硬質炭素皮膜(DLC:Diamond Like Carbon)などの表面処理を施してもしても構わない。また、表裏判別手段は、図5(b)に示すように凹部25を形成するのみならず、サイドレール上面21又はサイドレール下面22のいずれか一方に模様を施しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1 シリンダ, 2 ピストン, 3 オイルリング溝, 10 組合せオイルリング, 11 サイドレール, 12 スペーサエキスパンダ, 21 サイドレール上面, 22 サイドレール下面, 23 側面, 24 曲面, 24a 頂点, 25 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8