特許第6122964号(P6122964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6122964
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】回転角センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   G01D5/12 Q
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-538773(P2015-538773)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2013076496
(87)【国際公開番号】WO2015045140
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100192636
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】菅村 信夫
(72)【発明者】
【氏名】小松 康一
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113785(JP,A)
【文献】 実開平07−006721(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0210816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回転軸に対して垂直な第1方向の遊びを前記入力回転軸が有する態様で前記入力回転軸を保持し、前記入力回転軸と共に回転する第1シャフト部材と、
前記入力回転軸及び前記第1方向に垂直な第2方向に遊びを有する態様で第1シャフト部材を保持し、第1シャフト部材と共に回転し、磁束を発生する第2シャフト部材と、
前記第2シャフト部材を回転可能に保持し、前記第2シャフト部材の回転中心を規定する回転ガイド部材と、
前記回転ガイド部材を介して前記第2シャフト部材に対向し、前記第2シャフト部材の回転角に応じて変化する磁束を検出する検出素子とを含み、
前記第2シャフト部材及び前記回転ガイド部材の一方は、他方との接触面に、軸方向に視て円形に形成される案内溝を有し、前記他方は、前記一方との接触面に、軸方向に視て同円形に形成され前記案内溝に嵌る突起を有し、
前記案内溝内で前記突起は、クリアランスを有する、回転角センサ。
【請求項2】
前記回転ガイド部材は、前記第2シャフト部材の回転中心が前記検出素子の検出軸に一致する態様で前記第2シャフト部材の回転をガイドする、請求項1に記載の回転角センサ。
【請求項3】
前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材とは、オルダム継手を形成する、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の回転角センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転角センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検出体の回転に応じて主軸とともに回転する磁束発生部材を設け、磁束発生部材の回転によって変化する磁束の大きさを検出する磁電変換素子によって、被検出体の回転に応じた検出信号を出力する角度検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-264094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の角度検出装置では、磁束発生部材に入力回転軸が直接的に挿入されて保持されるが、製造誤差等に起因して、入力回転軸が磁束発生部材の回転軸に対して偏心する場合がある。かかる場合に、磁束発生部材の回転軸とセンサ中心を一致させようとすると、こじりに起因して磁束発生部材の破損が生じやすくなり、耐久性が悪化するという問題が生じる。他方、磁束発生部材の回転軸とセンサ中心のずれを許容すると、磁束発生部材の破損を防止できるものの、磁束発生部材の回転軸とセンサ中心のずれに起因して回転角の検出精度が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、開示の技術は、入力回転軸の回転軸の偏心に起因したこじりを防止しつつ、回転角の高い検出精度を確保することが可能な回転角センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面によれば、入力回転軸に対して垂直な第1方向の遊びを前記入力回転軸が有する態様で前記入力回転軸を保持し、前記入力回転軸と共に回転する第1シャフト部材と、
前記第1シャフト部材が前記入力回転軸及び前記第1方向に垂直な第2方向に遊びを有する態様で前記第1シャフト部材を保持し、前記第1シャフト部材と共に回転し、磁束を発生する第2シャフト部材と、
前記第2シャフト部材を回転可能に保持し、前記第2シャフト部材の回転中心を規定する回転ガイド部材と、
前記回転ガイド部材を介して前記第2シャフト部材に対向し、前記第2シャフト部材の回転角に応じて変化する磁束を検出する検出素子とを含み、
前記第2シャフト部材及び前記回転ガイド部材の一方は、他方との接触面に、軸方向に視て円形に形成される案内溝を有し、前記他方は、前記一方との接触面に、軸方向に視て同円形に形成され前記案内溝に嵌る突起を有し、
前記案内溝内で前記突起は、クリアランスを有する、回転角センサが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、入力回転軸の回転軸の偏心に起因したこじりを防止しつつ、回転角の高い検出精度を確保することが可能な回転角センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例による回転角センサ1を示す分解斜視図である。
図2】回転角センサ1の断面図である。
図3】回転角センサ1の上面図である。
図4】回転角センサ1の中心Oの説明図である。
図5】第1シャフト部材10の単品図である。
図6】第2シャフト部材20の単品図である。
図7】回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のY方向の偏心時の状態を説明するための上面図である。
図8】回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のX方向の偏心時の状態を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例による回転角センサ1を示す分解斜視図である。図2は、回転角センサ1の断面図である。図3は、回転角センサ1の上面図である。図4は、回転角センサ1の中心(検出軸)Oの説明図であり、(A)は、検出素子40の一例を示す上面図であり、(B)は、回転角センサ1の中心Oと磁束発生部24の中心O'との関係を示す図である。尚、図1には、入力回転軸90の一例が回転角センサ1と共に示されている。以下では、軸方向とは、入力回転軸90の延在方向に対応する。また、Y方向及びX方向は、軸方向に垂直な方向であり、Y方向及びX方向は、互いに対して垂直である。また、回転角センサ1は、任意の向きで搭載されてもよいが、以下の説明では、便宜上、図2の軸方向の上側を「上側」とする。尚、本明細書において、「遊び」とは、機構上の遊びであり、設計公差や製造公差等を考慮したクリアランスとは異なる。
【0011】
回転角センサ1は、入力回転軸90の回転角(回転位置)を検出するセンサである。入力回転軸90は、車両(自動車、二輪車、建設機械等を含む)における任意の回転部材(回転軸)であってよい。例えば、入力回転軸90は、駆動機構(例えばトランスミッション)の回転軸であってもよいし、操舵機構の回転軸(例えばステアリングシャフト)であってもよい。
【0012】
回転角センサ1は、図1に示すように、第1シャフト部材10と、第2シャフト部材20と、回転ガイド部材30と、検出素子40と、蓋部材50とを含む。
【0013】
第1シャフト部材10は、樹脂で形成されてよい。第1シャフト部材10は、入力回転軸90が挿入される長穴(Y方向に長い穴)14を備える。第1シャフト部材10は、入力回転軸90と共に回転する態様で入力回転軸90を保持する。第1シャフト部材10は、入力回転軸90がY方向の遊びを有する態様で入力回転軸90を保持する。即ち、長穴14のY方向の寸法は、入力回転軸90の端部のY方向の長さよりも有意に大きい。これにより、入力回転軸90は、第1シャフト部材10に対して回転方向は拘束されつつ、Y方向は移動可能となる。尚、このY方向の可動範囲は、任意であり、製造誤差等に起因して生じる入力回転軸90の回転角センサ1の中心Oに対するY方向のずれ(偏心)量の取りうる範囲に対応してよい。第1シャフト部材10の構造の一例は後述する。
【0014】
第2シャフト部材20は、樹脂で形成されてよい。第2シャフト部材20は、軸方向の上側の表面上に第1シャフト部材10が載置され、下側の表面が回転ガイド部材30上に載置される態様で配置される。第2シャフト部材20は、第1シャフト部材10と共に回転する態様で第1シャフト部材10を保持する。第2シャフト部材20は、第1シャフト部材10がX方向の遊びを有する態様で第1シャフト部材10を保持する。即ち、第1シャフト部材10は、第2シャフト部材20に対して回転方向は拘束されつつ、X方向は移動可能である。尚、このX方向の可動範囲は、任意であり、製造誤差等に起因して生じる入力回転軸90の回転角センサ1の中心Oに対するX方向のずれ(偏心)量の取りうる範囲に対応してよい。
【0015】
第2シャフト部材20は、磁束発生部24と、本体部26とを有する。
【0016】
磁束発生部24は、図2に示すように、回転角センサ1の中心Oに対して同心に設けられ、回転角センサ1の中心Oに対して同心の円形部位であってよい。例えば、磁束発生部24は、上面視で直径方向に2等分された部位がそれぞれS極とN極を形成してよい(図4(B)参照)。磁束発生部24は、第2シャフト部材20の本体部26に嵌め込まれる磁石であってもよいが、好ましくは、磁粉(例えば、ネオジム系磁粉)を含む樹脂材料を用いて本体部26と一体成形(例えば2色成形)される。本体部26は、磁束発生部24を囲繞する。第2シャフト部材20の構造の一例は後述する。
【0017】
回転ガイド部材30は、樹脂で形成されてよい。回転ガイド部材30は、第2シャフト部材20を回転可能に保持する。回転ガイド部材30は、第2シャフト部材20の回転中心を規定する態様で第2シャフト部材20の回転をガイドする。このガイド構造は、任意であるが、例えば図1等に示すように、案内溝22と突起32との嵌合によるガイド構造であってよい。具体的には、回転ガイド部材30は、図1に示すように、第2シャフト部材20が載置される側(上側)の表面に突起32を有する。突起32は、軸方向に視て円形に形成される。また、第2シャフト部材20は、回転ガイド部材30上に載置される側の表面(図1では見えない下側の表面)に、軸方向に視て同円形に形成される案内溝22を有する。第2シャフト部材20は、第2シャフト部材20の案内溝22に第2シャフト部材20の突起32が嵌る態様で、回転ガイド部材30上に配置される。これにより、第2シャフト部材20は、突起32が案内溝22内でガイドされることで、回転ガイド部材30に対して摺動しつつ回転可能となる。このとき、第2シャフト部材20の回転の中心は、案内溝22の円形の中心に対応する。案内溝22の円形は、その中心が回転角センサ1の中心Oと一致するように設定される。これにより、第2シャフト部材20の回転中、第2シャフト部材20の回転中心(磁束発生部24の回転中心)と回転角センサ1の中心Oとが一致した状態が維持される(図4(B)参照)。
【0018】
尚、案内溝22内で突起32は、回転ガイド部材30に対する第2シャフト部材20の円滑な回転が可能となるようなクリアランスを有してよい。また、摺動抵抗を低減するために又は摺動に対する耐久性を高めるために、回転ガイド部材30及び/又は第2シャフト部材20は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合した樹脂材料により形成されてもよい。或いは、同様の観点から、回転ガイド部材30及び/又は第2シャフト部材20は、摺動面にコーティングが施されてもよい。
【0019】
尚、図1等に示す例では、案内溝22と突起32との嵌合によるガイド構造が示されているが、他のガイド構造であってよい。例えば、案内溝22は、内径側が除去された円柱状の溝(凹部)であってもよい。この場合、突起32についても、円筒状の溝に嵌る円柱状の突起であってもよい。
【0020】
検出素子40は、回転ガイド部材30を介して第2シャフト部材20の磁束発生部24に対向し、第2シャフト部材20の回転角に応じて変化する磁束を検出する。これにより、第2シャフト部材20の回転角(ひいては入力回転軸90の回転角)が検出される。検出素子40の検出軸(回転検出の中心)は、図4(A)に示すように、回転角センサ1の中心Oを画成する。図4(A)に示す例では、検出素子40の検出軸は、x軸とy軸で規定された座標系の原点位置Oに対応する。尚、検出素子40の検出軸は、磁石の中心O'(図4(B)参照)が一致すると検出精度(感度)が最も良好となる位置であり、図4(A)に示すように、必ずしも検出素子40の物理的な中心位置とは対応しない。尚、磁石の中心O'は、磁束発生部24の回転中心に対応する。検出素子40は、例えばホール素子やMR(Magneto Resistance)素子(磁気抵抗効果素子)等であってよい。検出素子40は、図4に示すようなチップの形態であってよく、例えば図2に示すように、基板42上に実装されてよい。検出素子40からの電気信号は、ケーブル80内の通信線を介して外部装置(例えば、車載ECU(Electronic Control Unit))に入力されてよい。
【0021】
尚、図2に示す例では、回転ガイド部材30は、内部空間30aを有し、検出素子40は、基板42上に実装された状態で内部空間30a内に配置される。内部空間30aは、樹脂(例えばエポキシ樹脂)により充填されてよい。
【0022】
蓋部材50は、図1等に示すように、円筒状の形態を有し、樹脂で形成されてよい。蓋部材50は、回転ガイド部材30に対して固定される。例えば、蓋部材50は、回転ガイド部材30に接着や溶着等により固定されてもよい。蓋部材50は、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20を内部に収容する。蓋部材50は、図3に示すように、第1シャフト部材10の長穴14の全体が上面視で露出するように上部が開口する。蓋部材50は、第1シャフト部材10の上面と軸方向に当接し、回転ガイド部材30に対する第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の軸方向の動きを拘束する。即ち、蓋部材50は、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の回転を許容しつつ、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の軸方向の動きを拘束する。これにより、第1シャフト部材10と第2シャフト部材20との嵌合(後述のキー18とキー溝28との嵌合)が維持され、第2シャフト部材20との回転ガイド部材30との嵌合(案内溝22と突起32との嵌合)が維持される。
【0023】
尚、図2に示す例では、蓋部材50は、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の各上面10a,20aと軸方向にそれぞれ当接し、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20をそれぞれの軸方向の動きを直接的に拘束する。また、図2に示す例では、蓋部材50は、第1シャフト部材10のキー18(後述)の上面にも軸方向に当接する。尚、これらの当接態様は一例であり、例えば、蓋部材50は、第2シャフト部材20には直接的に当接せず、第1シャフト部材10と軸方向に当接することで、第2シャフト部材20の軸方向の動きを間接的に拘束してもよい。
【0024】
図5は、第1シャフト部材10の単品図であり、(A)は上面図であり、(B)は断面図であり、(C)は下面図であり、(D)は側面図である。
【0025】
第1シャフト部材10は、全体としては円筒状の形態を有する。第1シャフト部材10は、上述の如く、入力回転軸90が挿入される長穴14を備える。長穴14は、上述の如く、入力回転軸90の端部に対応した形状を有し、Y方向では入力回転軸90の端部よりも有意に長く形成される。長穴14のX方向の幅は、入力回転軸90のX方向の幅と実質的に同一であってよい(即ち長穴14及び入力回転軸90間にX方向の遊びは存在しない)。図1に示す例では、入力回転軸90の端部は、2面カット(円柱を平行な2面でカット)されており、長穴14は、これに対応して略矩形に形成されている。より具体的には、長穴14は、所定半径R1の円柱空間を、Y方向及び軸方向に平行な2つの面14a,14bでカットした空間を画成する。このとき、2つの面14a,14bは、円柱空間の中心軸に関して対称である。所定半径R1は、例えば入力回転軸90の端部の半径(2面カットされる前の円柱の半径)よりも必要な遊び分に対応して大きく設定される。尚、面14bは、凹面14cを有しているが、かかる凹面14cは省略されてもよい。凹面14cは、入力回転軸90の凸面90aに対応して設けられ、入力回転軸90の挿入の向きを規定するために形成される。
【0026】
尚、図5に示す例では、長穴14は、第1シャフト部材10を軸方向で貫通する貫通穴であるが、貫通しない有底の穴であってもよい。尚、長穴14が貫通穴である場合は、入力回転軸90は長穴14を貫通して、先端の面が第2シャフト部材20の凹部29の上面に当接する。この場合も、入力回転軸90の回転は、第2シャフト部材20に直接的には伝わらず、第1シャフト部材10を介して伝達される。
【0027】
第1シャフト部材10は、図5に示すように、下面側にキー18を備える。キー18は、X方向に延在する(X方向に長い形状となる)。キー18の長さ(X方向の長さ)は、任意であるが、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20が後述のオルダム継手として機能するのに必要な長さに設定される。図5に示す例では、キー18は、第1シャフト部材10の上部の外形よりも径方向外側に突出する態様で形成されている。
【0028】
図6は、第2シャフト部材20の単品図であり、(A)は上面図であり、(B)は断面図である。
【0029】
第2シャフト部材20は、全体としては円筒状の形態を有する。第2シャフト部材20は、上述の如く、磁束発生部24と、本体部26とを有し、本体部26の下面側には、案内溝22が形成される。本体部26の上面側には、第1シャフト部材10の下部が嵌入される凹部29が形成される。凹部29は、後述のキー溝28及びキー18間の相対移動が可能となるように、第1シャフト部材10の下部がX方向で移動可能となるように形成される。
【0030】
また、本体部26の上面側には、第1シャフト部材10のキー18が嵌合するキー溝28が形成される。キー溝28は、凹部29の底面よりも深く形成されてよい。キー溝28は、X方向に延在する(X方向に長い形状となる)。キー溝28の長さ(X方向の長さ)は、キー18の長さ(X方向の長さ)よりも有意に長く設定される。即ち、キー溝28及びキー18は、X方向に相対移動が可能に形成される。キー溝28のY方向の幅は、キー18のY方向の幅と実質的に同一であってよい(即ちキー溝28及びキー18間にY方向の遊びは存在しない)。図6に示す例では、キー溝28は、凹部29よりも径方向外側まで延在する。また、図6に示す例では、キー溝28は、第2シャフト部材20の外形よりも径方向内側で終端する態様で形成されているが、キー溝28は、第2シャフト部材20の径方向外側で貫通してもよい。この場合は、蓋部材50の内周壁がキー18のX方向の可動範囲を規制してよい。
【0031】
図7は、回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のY方向の偏心時の状態を説明するための上面図であり、(A)は、X方向及びY方向の双方で偏心が無い状態を示し、(B)は、Y方向の一方側に偏心した状態を示し、(C)は、Y方向の他方側に偏心した状態を示す。図8は、回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のX方向の偏心時の状態を説明するための上面図であり、(A)は、X方向の一方側に偏心した状態を示し、(B)は、X方向の他方側に偏心した状態を示す。尚、図7及び図8では、理解し易くするための便宜上、蓋部材50の図示は省略されている。
【0032】
入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向及びY方向の双方で偏心が無い状態では、図7(A)に示すように、入力回転軸90が第1シャフト部材10の長穴14のY方向の中心に位置し、第1シャフト部材10のキー18が第2シャフト部材20のキー溝28のX方向の中心に位置する。
【0033】
入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してY方向の一方側に偏心すると、図7(B)に示すように、入力回転軸90が第1シャフト部材10の長穴14内において一方側に偏った位置に来る。これにより、かかる偏心に起因したこじり(入力回転軸90の第1シャフト部材10の長穴14内でのこじり)を防止することができる。尚、この状態では、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向の偏心がない場合は、第1シャフト部材10のキー18は第2シャフト部材20のキー溝28のX方向の中心に位置する。
【0034】
同様に、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してY方向の他方側に偏心すると、図7(C)に示すように、入力回転軸90が第1シャフト部材10の長穴14内において他方側に偏った位置に来る。これにより、かかる偏心に起因したこじり(入力回転軸90の第1シャフト部材10の長穴14内でのこじり)を防止することができる。尚、この状態では、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向の偏心がない場合は、第1シャフト部材10のキー18は第2シャフト部材20のキー溝28のX方向の中心に位置する。
【0035】
また、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向の一方側に偏心すると、図8(A)に示すように、第1シャフト部材10のキー18が第2シャフト部材20のキー溝28内において一方側に偏った位置に来る。このように、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20がオルダム継手を形成して、回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のX方向の一方側への偏心が許容される。即ち、第1シャフト部材10のキー18及び第2シャフト部材20のキー溝28は、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の間のX方向のずれを許容しつつ、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の一体的な回転を実現する。尚、この状態では、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してY方向の偏心がない場合は、入力回転軸90は第1シャフト部材10の長穴14のY方向の中心に位置する。
【0036】
同様に、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向の他方側に偏心すると、図8(B)に示すように、第1シャフト部材10のキー18が第2シャフト部材20のキー溝28内において他方側に偏った位置に来る。このように、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20がオルダム継手を形成して、回転角センサ1の中心Oに対する入力回転軸90のX方向の他方側への偏心が許容される。尚、この状態では、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してY方向の偏心がない場合は、入力回転軸90は第1シャフト部材10の長穴14のY方向の中心に位置する。
【0037】
尚、実際には、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してX方向及びY方向の双方で偏心する場合がある。この場合は、図7及び図8に示した動きの組み合わせにより、X方向及びY方向の双方での偏心が許容される。このようにして、入力回転軸90のX方向及びY方向の偏心を許容しつつ、こじりを防止することができる機構を回転角センサ1に内蔵することができる。
【0038】
以上説明した本実施例の回転角センサ1によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0039】
上述の如く、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20を設けることで、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してXY平面内の任意の方向で偏心した場合でも、かかる偏心に起因したこじりを防止しつつ、入力回転軸90の回転角を検出することができる。これにより、偏心に起因した破損(こじり等による破損)を低減し、回転角センサ1の耐久性を高めることができる。例えば、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20を一体に形成する場合には、X方向の偏心に起因してこじりが発生し、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20の破損が生じる虞がある。これに対して、本実施例によれば、第1シャフト部材10及び第2シャフト部材20は、X方向に相対移動可能な態様で(キー18及びキー溝28を介して)連結されるので、かかる破損の可能性を低減することができる。
【0040】
また、本実施例によれば、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してXY平面内の任意の方向で偏心した場合でも、第2シャフト部材20の回転中心(即ち磁束発生部24の回転中心)と回転角センサ1の中心Oとは一致した状態が維持される。即ち、回転ガイド部材30と第2シャフト部材20との間のガイド構造により、第2シャフト部材20の回転中心と回転角センサ1の中心Oとが一致した状態が維持される。これにより、入力回転軸90が回転角センサ1の中心Oに対してXY平面内の任意の方向で偏心した場合でも、回転角センサ1の高い検出精度を維持することができる。
【0041】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0042】
例えば、上述した実施例では、第1シャフト部材10がキー18を備え、第2シャフト部材20がキー溝28を備えているが、逆であってもよい。即ち、第1シャフト部材10がキー溝を備え、第2シャフト部材20がキーを備えてもよい。
【0043】
また、上述した実施例では、第2シャフト部材20が案内溝22を備え、回転ガイド部材30が突起32を備えているが、逆であってもよい。即ち、第2シャフト部材20が突起を備え、回転ガイド部材30が案内溝を備えてもよい。
【0044】
また、上述した実施例では、第1シャフト部材10の端部は、2面カットされているが、1面カット(Dカット)されてもよい。この場合、長穴14も、Dカットされた空間を形成してもよい。但し、長穴14は、上述の如く、第1シャフト部材10のY方向の移動(遊び)を許容するように形成される。
【0045】
また、上述した実施例では、ケーブル80が回転角センサ1に一体化されているが、ケーブル80は回転角センサ1に後付けされてもよい。即ち、回転角センサ1は、外部端子を有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 回転角センサ
10 第1シャフト部材
14 長穴
18 キー
20 第2シャフト部材
22 案内溝
24 磁束発生部
26 本体部
28 キー溝
30 回転ガイド部材
32 突起
40 検出素子
42 基板
50 蓋部材
90 入力回転軸
図1
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