特許第6123025号(P6123025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123025
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】内蔵型アンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/56 20060101AFI20170417BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20170417BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20170417BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20170417BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20170417BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C25D5/56 Z
   H01Q1/38
   C25D5/02 Z
   C25D5/56 A
   C25D7/00 G
   C25D5/12
   C25D5/56 C
   H01P11/00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-518249(P2016-518249)
(86)(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公表番号】特表2016-526107(P2016-526107A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】KR2013007624
(87)【国際公開番号】WO2014196692
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0063464
(32)【優先日】2013年6月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515336777
【氏名又は名称】インタップス.カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515336788
【氏名又は名称】ク,ボン スル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ク,ボン スル
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0050917(KR,A)
【文献】 国際公開第02/103629(WO,A1)
【文献】 特開2008−283587(JP,A)
【文献】 特開2010−171396(JP,A)
【文献】 特開2008−069454(JP,A)
【文献】 特開平07−066531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D5/00−7/12
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっきを利用した内蔵型アンテナの製造方法において、
(a)樹脂成形物に前処理用塗料で塗料層を形成するステップと;
(b)前記塗料層の上面に金属めっき層を形成するステップと;
(c)前記金属めっき層に放射パターン部及びアンテナ接点部が非放射パターン部と電気的に分離形成されるようにレーザでエッチングするステップと;
(d)前記放射パターン部及びアンテナ接点部が非放射パターン部と電気的に分離されるようにレーザエッチングされた樹脂成形物を引っ掛け台にかけて電気めっき槽に浸漬させるステップと;
(e)前記放射パターン部とアンテナ接点部に第1次伝導層を形成するステップと;
(f)前記放射パターン部とアンテナ接点部を除く非放射パターン部に形成された金属めっき層を強制剥離するステップと;
(g)前記放射パターン部とアンテナ接点部に第2次伝導層を形成するステップと;
(h)前記2次伝導層が形成された放射パターン部とアンテナ接点部に電解ニッケルめっき層を形成するステップと;
(i)前記電解ニッケルめっき層が形成された樹脂成形物を封孔処理、水洗、乾燥するステップ;
を含んでなることを特徴とする、内蔵型アンテナの製造方法。
【請求項2】
前記塗料は、アセトン30〜40重量%と、メチルエチルケトン30〜40重量%と、シクロヘキサノン10〜20重量%と、ABS樹脂またはLCP樹脂10〜20重量%と
からなることを特徴とする、請求項1に記載の内蔵型アンテナの製造方法。
【請求項3】
前記(c)ステップにおいて、放射パターン部及びアンテナ接点部は、非放射パターン部との間隔を100μm〜200μm設けるようにして、電気めっきの際にショート現象による不良を防止するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の内蔵型アンテナの製造方法。
【請求項4】
前記(f)ステップにおいて、金属めっき層を強制剥離することは、電解剥離ではなく、硫酸、過酸化水素水を含む化学的剥離であることを特徴とする、請求項1に記載の内蔵型アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵型アンテナ(intenna)の製造方法に関し、特に、樹脂成形物の表面に前処理用塗料を塗布して樹脂成形物に滑らかでかつ堅固なめっきが行われるようにすることにより、樹脂成形物に形成されるめっきの信頼性向上が達成されるようにする内蔵型アンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯電話のような無線通信機器の内部には、無線送受信を容易にするための内蔵型アンテナが形成される。
【0003】
一方、携帯電話のような無線通信機器は、携帯の便利さ及び小型化を達成するために、組み込まれる部品だけではなく、内蔵型アンテナが形成される外部ケースの厚さもまた薄くなりつつあるので、外部の衝撃に相対的に脆弱であり、破損などの主原因となる。
【0004】
これに伴い、薄いながらも外部衝撃から破損を最小化することはもちろん、内蔵型アンテナを容易に形成することができる製造方法とケース材料が求められてきており、これに応じて多様な素材のケース及び内蔵型アンテナの製造方法が提示されている。
【0005】
しかし、従来の携帯電話のような無線通信機器のケース素材は、強度を補強するために、主にABS樹脂(Arylonitrile Butadiene Styrene copolymer)とポリカーボネート樹脂(PolyCarbonate)の混合や、ポリカーボネート樹脂、またはABS樹脂とポリカーボネート樹脂とガラス繊維(Glass Fiber)の混合や、ポリカーボネートとガラス繊維(GlassFiber)の混合からなり、このような樹脂素材にはめっきが滑らかに行われないため、めっき方式で製造される内蔵型アンテナのめっき密着力の低下により十分なめっき信頼性を発揮することができないことから、過度な不良の発生及びアンテナ性能の品質低下を惹き起こす問題点があった。
【0006】
また、従来、内蔵型アンテナの製造方法としては、本出願人により2010年5月10日付で特許出願された韓国特許出願第10-2010-0043328号(均一なめっき層を形成する内蔵型アンテナの製造方法)から分かるように、特に、供給される電流量と電流値をリアルタイムで感知し、めっきを行った時間との積算を通じて、所望のめっき厚さに到達した時に電気供給の中断または警報が鳴るようにすることにより、放射パターン部とアンテナ接点部に形成されるめっき層の厚さをバラツキなく均一に形成されるようにしているが、これもまた、めっき密着力が完璧ではなく、放射パターン部とアンテナ接点部を除く非放射パターン部分にめっきされた金属めっき層を除去するために過度な作業時間が必要となり、生産性が低下するだけでなく、携帯電話のブランドが要求する信頼性の項目をすべて解消するには困難があるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、携帯電話のような無線通信機器のケース素材として用いられる樹脂成形物の表面に前処理用塗料を塗布して、めっき時の信頼度向上を達成できる内蔵型アンテナの製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明の他の目的は、非放射パターン部に形成された金属めっき層を化学的に完全に強制剥離するとともに、損なわれた部分を補償することにより、品質の低下を防止しながら、作業時間を顕著に短縮して生産性向上を達成することができる内蔵型アンテナの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明は、電気めっきを利用した内蔵型アンテナの製造方法において、(a)樹脂成形物に前処理用塗料で塗料層を形成するステップと;(b)前記塗料層の上面に金属めっき層を形成するステップと;(c)前記金属めっき層に放射パターン部及びアンテナ接点部が非放射パターン部と電気的に分離形成されるようにレーザでエッチングするステップと;(d)前記放射パターン部及びアンテナ接点部が非放射パターン部と電気的に分離されるようにレーザエッチングされた樹脂成形物を引っ掛け台にかけて電気めっき槽に浸漬させるステップと;(e)前記放射パターン部とアンテナ接点部に第1次伝導層を形成するステップと;(f)前記放射パターン部とアンテナ接点部を除く非放射パターン部に形成された金属めっき層を強制剥離するステップと;(g)前記放射パターン部とアンテナ接点部に第2次伝導層を形成するステップと;(h)前記2次伝導層が形成された放射パターン部とアンテナ接点部に電解ニッケルめっき層を形成するステップと;(i)前記ニッケルめっき層が形成された樹脂成形物を封孔処理、水洗、乾燥するステップ;を含んでなることを特徴とする。
【0010】
前記塗料は、アセトン30〜40重量%と、メチルエチルケトン30〜40重量%と、シクロヘキサノン10〜20重量%と、ABS樹脂またはLCP樹脂10〜20重量%とからなることを特徴とする。
【0011】
前記(c)ステップにおいて、放射パターン部及びアンテナ接点部は、非放射パターン部との間隔を100μm〜200μm設けるようにして、電気めっきの際にショート現象による不良を防止するようにすることを特徴とする。
【0012】
前記(f)ステップにおいて、金属めっき層を強制剥離することは、電解剥離ではなく、硫酸、過酸化水素水を含む化学的剥離であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上で説明したように、本発明は、内蔵型アンテナを製造する際に多様な樹脂素材ともめっきの密着力向上を達成することができ、均一でかつ堅固なめっき状態で信頼性を向上させる効果がある。
【0014】
また、本発明は、内蔵型アンテナの製造時間を著しく短縮して、生産性向上及び費用節減を達成することができる効果がある。
【0015】
また、本発明は、放射パターン部、アンテナ接点部と非放射パターン部との間隔を広げて、電気めっきの際に発生するショート現象を確実に防止する効果を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい実施例による内蔵型アンテナの製造方法の手順を示したフローチャートである。
図2】本発明の内蔵型アンテナの製造方法による電流積算調整装置と連結された電気めっき装置の全体の構成を概略的に示した図である。
図3】携帯電話のような無線通信機器のケースなどを形成する樹脂成形物に、本発明による内蔵型アンテナである放射パターン部とアンテナ接点部を形成する手順を概略的に示した図である。
図4】携帯電話のような無線通信機器のケースなどを形成する樹脂成形物に、本発明による内蔵型アンテナである放射パターン部とアンテナ接点部を形成する手順を概略的に示した図である。
図5】本発明による樹脂成形物の背面(内面)に形成されたアンテナ接点部を概略的に示した図である。
図6図3のA−A線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図7図3のB−B線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図8図3のC−C線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図9図3のE−E線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図10図4のF−F線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図11図4のG−G線拡大断面状態を概略的に示した図である。
図12図4のH−H線拡大断面状態を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるめっき信頼性の向上機能を有する内蔵型アンテナの製造方法の好ましい実施例を、添付の図面に基づいてより具体的に説明する。
【0018】
ここで、下記の全ての図において、同一の機能を有した構成要素は同一の参照符号を使って繰り返しの説明は省略し、併せて、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義されたものであって、これらは、固有の通用される意味と解釈されなければならないことを明らかにしておく。
【0019】
図1乃至図12に示されたように、本発明は、(a)塗料層110を形成するステップと;(b)金属めっき層120を形成するステップと;(c)レーザでエッチングするステップと;(d)電気めっき槽に浸漬させるステップと;(e)第1次伝導層を形成するステップと;(f)金属めっき層を強制剥離するステップと;(g)第2次伝導層を形成するステップと;(h)ニッケルめっき層を形成するステップと;(i)封孔処理、水洗、乾燥するステップと;に大別されて構成される。
【0020】
前記(a)樹脂成形物100に前処理用塗料を塗布して塗料層110を形成するステップは、前記塗料層110の上面に金属めっき層120を形成する時、滑らかでかつ堅固なめっき(plating)が行われるようにするためである。
【0021】
すなわち、主に射出成形で形成される携帯電話やその他無線通信機器のケース材料は、主にABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)とポリカーボネート樹脂(polycarbonate resin)の混合や、ポリカーボネート、またはABS樹脂とポリカーボネート樹脂とガラス繊維(glass fiber)の混合や、ポリカーボネートとガラス繊維(glass fiber)の混合からなるため、内蔵型アンテナを電気めっき方式を利用して作製しようとすると、ABS樹脂またはLCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂以外にはめっきが滑らかでかつ堅固に形成されなくなるので、これを解決するために前処理用塗料を塗布して塗料層110を形成するものである。
【0022】
前記塗料は、アセトン(acetone)30〜40重量%と、メチルエチルケトン(MEK:Methyl Ethyl Ketone)30〜40重量%と、シクロヘキサノン(cyclohexanone)10〜20重量%と、ABS樹脂またはLCP樹脂10〜20重量%とからなる。
【0023】
ここで、前記アセトンが30重量%以下で添加される場合、ABS樹脂またはLCP樹脂の溶解効率が低下する問題点が発生するようになり、アセトンが40重量%以上で添加される場合、湿気に弱くて、透明性が低下するとともに、接着力が低下する問題点が発生するようになる。
【0024】
また、前記メチルエチルケトンが30重量%以下で添加される場合、ABS樹脂またはLCP樹脂の溶解効率が低下する問題点が発生するようになり、メチルエチルケトンが40重量%以上で添加される場合、樹脂成形物100と塗料との接着力が低下する問題点がある。
【0025】
また、前記シクロヘキサノンの重量が10%以下で添加される場合、塗料の濃度が低くて、スプレー作業を行う時、塗料があまりにも速く乾燥してレベリング(leveling:素地の微視的凹凸や条痕(線が引かれた跡)などを電気めっきで平滑化すること)が良くなくなり、シクロヘキサノンの重量が20%以上で添加される場合、塗料のスプレー作業後、乾燥時間があまりにも長くなる問題点がある。
【0026】
前記ABS樹脂またはLCP樹脂の重量が10%以下で添加される場合、濃度が低くて(薄くて)、所望の塗膜厚さを形成し難いという問題点がある。
【0027】
さらに、ABS樹脂またはLCP樹脂の重量が20%以上で添加される場合、濃度が高くて、ABS樹脂またはLCP樹脂の溶解能率が限界点以上となり、一部の溶解されていない樹脂粒子のためスプレーがまともに行われないだけでなく、揃った粒子の形成が難しいという問題点がある。
【0028】
また、前記のように構成された塗料を樹脂成形物に塗布する厚さは、6μm〜16μmを成すように形成することが好ましいが、必要によって加減されてもよい。
【0029】
さらに、上記のように塗布された塗料層110は、60℃〜80℃で強制乾燥することが好ましい。
【0030】
また、前記塗料は、使用温度が85℃以下である場合、比較的に低温で使用可能なABS樹脂を用い、使用温度が85℃以上〜240℃以下である場合は、比較的に高温で使用可能なLCP樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
すなわち、携帯電話のような無線通信機器のケースを構成する樹脂成形物100の表面に内蔵型アンテナを形成して使用する時とその信頼性試験が85℃以下で行われる場合は、ABS樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
また、その信頼性試験が85℃以上を要求される場合は、LCP樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
そして、携帯電話のような無線通信機器のケースを構成する樹脂成形物100の内面に内蔵型アンテナを形成しようとする場合、第一次に樹脂成形物100の表面に内蔵型アンテナを形成した後、その上にさらに樹脂を射出形式で覆って形成しなければならないので、塗料が射出温度(略220℃〜240℃)の条件と圧力に耐えなければならないため、この場合にもまたLCP樹脂を用いる。
【0034】
上記(b)ステップは、前記樹脂成形物100の塗料層110に金属めっき層120を形成するステップであって、無電解めっき(electroless plating:外部からの電気エネルギーの供給を受けることなく、金属塩水溶液中の金属イオンを還元剤の力により自己触媒的に還元させて被処理物の表面上に金属を析出させる方法)を通じて、電気めっき時に酸性のめっき液または構成成分により溶解が容易である銅やニッケル、ニッケル合金のようなめっき剤を用いて、電気伝導(導体内に電場がある時、電荷が移動して電流を発生することであって、電荷としては電子やイオンなどがあるが、電子が軽く、電子伝導が電気伝導率に大きな影響を及ぼす)のための金属めっき層120を、不導体である樹脂成形物100の表面全体に形成する。
【0035】
また、前記金属めっき層120の厚さは、アンテナ機能のための放射パターン部121及びアンテナ接点部122をレーザでエッチングするのに適した0.1μm〜0.5μmに形成することが好ましい。
【0036】
上記(c)ステップは、樹脂成形物100の前面と背面に無電解めっきを通じて形成された金属めっき層120の表面にレーザでエッチングして、アンテナ機能のための放射パターン部121とアンテナ接点部122は、非放射パターン部(放射パターン部とアンテナ接点部を除くすべての部分)123と電気的に分離されるように形成する。
【0037】
すなわち、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122は、非放射パターン部123から電気的に分離区分して、めっきが要求される放射パターン部121とアンテナ接点部122にのみ電気が供給されるようにレーザビーム(Laser Beam)でエッチング(食刻)して境界を区分表示する。
【0038】
この時、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122は、非放射パターン部123との間隔が100μm〜200μmを設けるようにして、電気めっきの際にショート現象による不良を防止することが好ましい。
【0039】
これにより、電気めっきの際に、前記放射パターン部121及びアンテナ接点部122にのみ電気が流れてめっきが行われ、非放射パターン部123には電気が流れないため、めっきが行われないようになる。
【0040】
このようなレーザエッチング(etching)は、化学薬品の腐食作用を応用した塑型や表面加工の一方法であって、樹脂成形物100の表面に電着される金属めっき層120が分離されず、安定して密着力を維持するのに必要な結束力を得るために微細なアンカホール(anchor hole)を形成する過程であって、前記塗料層110形成の付加的なものと見ることができる。
【0041】
これにより、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122において電気めっきによる伝導層が十分な厚さで形成された後、アンテナの実使用環境において起こり得る、様々な粗悪な熱的機械的外部条件においても、電気伝導のための金属めっき層120が剥離されることなく、安定してアンテナ機能を維持するようになる。
【0042】
このようなレーザエッチング作業は、アンテナの機能を滑らかでかつ良好に維持するようにする上で非常に重要である。
【0043】
上述した放射パターン部121とアンテナ接点部122を、電気めっき用引っ掛け台210の接点に固定する。
【0044】
この時、前記電気めっき用引っ掛け台210の電気接点を固定することができる部位としては、導電放射パターン部121の一地点とアンテナ接点部122を含む1つあるいはそれ以上の地点とするが、好ましくは、樹脂成形物100の前面部に位置する導電放射パターン部121と背面部に位置するアンテナ接点部122との間を電気的に通電可能な貫通孔124を0.5〜2mm程度確保し、この貫通電気通電路に電気めっき用引っ掛け台210の電池接点を嵌め込むことが好ましい。
【0045】
すなわち、前記樹脂成形物100の前面部に位置した放射パターン部121と背面部に位置したアンテナ接点部122とを電気的に通電するように確保された貫通孔124の内面に電気めっき用引っ掛け台210の接点を嵌め込んで固定する。
【0046】
上記(d)ステップは、非放射パターン部123と電気的に分離されるようにレーザエッチングされた放射パターン部121とアンテナ接点部122を形成した樹脂成形物100を電気めっき用引っ掛け台210にかけて電気めっき槽240に浸漬させるステップであって、多数の電気めっき用引っ掛け台210に電流積算調整装置300を連結した後、電気めっき装置200のめっき溶液230が満たされた電気めっき槽240に浸漬させる。
【0047】
すなわち、前記樹脂成形物100の放射パターン部121とアンテナ接点部122を固定した多数の電気めっき用引っ掛け台210に、供給電流の流動をリアルタイムで把握して各電気めっき用引っ掛け台210の間に必要とするトータル供給電流量を正確かつ均一に調整することができる電流積算調整装置300を連結し、電気めっき装置200が設けられた電気めっき槽240に浸漬させるものである。
【0048】
この時、前記電流積算調整装置300により、電気めっき用引っ掛け台210の接点が固定された金属導電放射パターン部121及びそれと電気的に通電されるアンテナ接点部122を電気めっきして伝導層の層厚を増加させる時、供給される電流の供給時間は別途で固定された値として決めずに、電流とめっき時間を掛けた積算値を電気めっき用引っ掛け台210毎に製品数に比例するように設定し、設定された電流積算値にめっき厚さが到逹した時、電気供給を停止または警報をするようにして、めっき槽240内の各部位別に流れる電流の偏差と、めっきが進む間に可変的な電気条件により発生するめっきの過多または不足、めっき槽内の供給電流のリップル、陽極棒の設置間隔、傾き、陽極棒の密集度、めっき液の濃度と流れによる抵抗の変化などの影響を受けることなく、電気めっき用引っ掛け台210の間のめっき厚さのバラツキを最小化することができる。
【0049】
ここで、前記電気めっき装置200は、直流電流を供給する整流器と、直流電流を配分する陽極棒(不図示)と、陽極棒と通常の電気めっき両極材料に用いられる銅またはニッケルと、陰極電流を配分する陰極棒と、電気めっき用引っ掛け台210を定置し、そこに個別的に電気を供給可能な掛け台220を含んで構成される。
【0050】
また、前記電流積算調整装置300は、前記各電気めっき用引っ掛け台210に供給される電流量をリアルタイムで感知する電流感知センサと、前記電流感知センサによって感知された電流値とめっきした時間との積算を通じて、使用者が所望の目標めっき厚の現在の進行状態を報知するマイクロプロセスと周辺回路、及びこれを表示するブザーを有するLCD表示部を含んで構成される。
【0051】
このような構成は、電流積算調整装置300は、前記電気めっき装置200の各掛け台220に連結されてそれぞれ動作する。
【0052】
上記(e)ステップは、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122に第1次伝導層130を形成するステップであって、前記電気めっき槽240に収容されためっき溶液230に浸漬された各電気めっき用引っ掛け台210に電流を供給して、前記樹脂成形物100の放射パターン部121とアンテナ接点部122に電解銅めっきで設定された厚さ(略15μm程度)に第1次伝導層130を形成する。
【0053】
この時、前記非放射パターン部123に形成された金属めっき層120は、一部剥離される。
【0054】
上記(f)ステップは、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122を除く非放射パターン部123に形成された、剥離されなかった金属めっき層120を完全に強制剥離するステップであって、硫酸(sulfuric acid)と過酸化水素水(Hydrogen Peroxide)とを1:1の割合で混合した剥離槽(不図示)に前記樹脂成形物100を1分〜5分程浸し、放射パターン部121とアンテナ接点部122を除く非放射パターン部123に無電解めっきで形成された金属めっき層120を、化学的に完全に強制剥離する。
【0055】
したがって、従来のように非放射パターン部123が電気めっき槽240に満たされた硫酸により40分〜60分程と長時間により徐々に剥離されることに比べて、1分〜5分程で速やかに不要な部位に形成された無電解めっきによる金属めっき層120を除去することで、作業時間を著しく短縮し、生産性の向上を極大化することができるものである。
【0056】
上記(g)ステップは、非放射パターン部123の金属めっき層120が剥離された樹脂成形物100の放射パターン部121とアンテナ接点部122に第2次伝導層140を形成するステップであって、前記電気めっき槽240のめっき溶液230に浸漬された各電気めっき用引っ掛け台210に電流を供給して、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122に電解銅めっきで設定された厚さ(略0.5μm〜2μm程度)に第2次伝導層140を形成する。
【0057】
このように、上記(e)ステップにおいて第1次伝導層130を確保した後、無電解めっきで形成された非放射パターン部123の金属めっき層120を完全に強制剥離させた後、さらに第2次伝導層140を形成することは、前記金属めっき層120を強制剥離した後に電気ニッケルめっきを行うようになると、金属めっき層120の剥離の際に、形成された化学薬品の被膜が電気ニッケルとの付着力を妨害して、銅とニッケルの間の膜分離現象が現われるようになる。
【0058】
このような銅とニッケルの間の膜分離現象を無くし、非放射パターン部123の金属めっき層120の強制剥離時において一部損なわれた放射パターン部121の銅めっきを補償するために、第2次伝導層140を形成するものである。
【0059】
上記(h)ステップは、前記第2次伝導層140が形成された放射パターン部121とアンテナ接点部122に電解ニッケルめっき層150を形成するステップであって、前記電気めっき槽240のめっき溶液230に浸漬された各電気めっき用引っ掛け台210に電流を供給して、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122に電解ニッケルめっきで設定された厚さにニッケルめっき層150を形成する。
【0060】
上記(i)ステップは、前記ニッケルめっき層150が形成された樹脂成形物100を、封孔処理、水洗、及び乾燥するステップであって、めっきのピンホールがあるため、めっき後には封孔処理剤で処理して防食効果を高め、加熱による樹脂成形物100の変形やめっき層の浮き上がりを防止するために過度に高すぎない温度で乾燥することが良く、好ましくは、40〜60℃程度の温度範囲で熱風乾燥または脱水乾燥により製品表面の水分を除去する。
【0061】
このように、内蔵型アンテナを形成するための前記樹脂成形物100に無電解めっきを通じて電気伝導のための放射パターン部121とアンテナ接点部122を形成することは、通常のプラスチック装飾めっきにおけるのと同様に、脱脂→エッチング→中和→活性1→活性2→無電解銅または無電解ニッケルなどの工程を経ることが好ましい。
(発明を実施するための形態)
上記のように構成された本発明の一実施例による、めっき信頼性の向上機能を有する内蔵型アンテナの製造方法をより具体的に説明すると、次のとおりである。
【実施例1】
【0062】
先ず、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)とポリカーボネート樹脂(polycarbonate resin)の混合や、ポリカーボネートまたはABS樹脂とポリカーボネート樹脂とガラス繊維(glassfiber)の混合や、ポリカーボネートとガラス繊維(glassfiber)が混合された材料などで射出成形された内蔵型アンテナである樹脂成形物100を、通常のプラスチック脱脂溶液で5分間、50℃で脱脂を行って表面の異物を除去し、無水クロム酸500g/Lと硫酸200ml/Lとで72℃で12分間浸漬及び水洗した後、アセトン(acetone)30〜40重量%と、メチルエチルケトン(MEK:Methyl Ethyl Ketone)30〜40重量%と、シクロヘキサノン(cyclohexanone)10〜20重量%と、ABS樹脂またはLCP樹脂10〜20重量%とからなる前処理用塗料を用いて、6μm〜16μmでムラなく塗布して塗料層110を形成した。(a)
さらに、前記塗料層110が形成された樹脂成形物100を60℃〜80℃で強制乾燥を行った。
【0063】
前記塗料層110が形成された樹脂成形物100を硫酸ヒドロキシルアミン(hydroxylamine sulfate)18重量%を蒸溜水82重量%と混合した中和液2.5重量%と、35%塩酸10重量%、水8.7重量%を混合した液で、60℃程の温度で5分間処理した後、水洗し、中和処理を行った。
【0064】
さらに、中和処理された樹脂成形物100を塩化パラジウム(PdCl2)及び塩化第一錫(SnCl2)をそれぞれ0.2g/L、520g/L混合した触媒付与液100cc/Lと塩酸100cc/Lとで10分間、活性処理及び4回水洗して第1次活性処理を行い、これを5%硫酸で40℃で10分間第2次活性処理を行い、3回水洗して、第2次活性処理を行った。
【0065】
上記活性処理された樹脂成形物100を、硫酸銅を含む常用の化学銅標準めっき溶液で3分間無電解めっきを行って、0.1μm〜0.5μmの厚さに金属めっき層120を形成した。(b)
上記のような前処理用塗料を樹脂成形物100に塗布して塗料層110を形成した後、その上に前記金属めっき層120を施してみたところ、ABS+PC樹脂はもちろんであり、PC、PC+GLASS_FIBER(GLASS_FIBER含有率60%まで)などのような樹脂からなる成形物にもめっきが滑らかでかつ堅固に密着形成され、携帯電話のような無線通信機器のブランドが要求する内蔵型アンテナの信頼性項目をすべて満足することができた。
【0066】
次いで、前記無電解銅めっきにより金属めっき層120が形成された樹脂成形物100を、内部温度60℃が維持されるように熱風を供給しながら脱水乾燥した後、金属めっき層120の表面にレーザを用いて、放射パターン部121とアンテナ接点部122及び非放射パターン部123が分離形成されるようにエッチングした。(c)
この時、前記放射パターン部121とアンテナ接点部122の通電のための貫通孔124は、レーザエッチングによって形成された境界線の内側に位置するように設ける。
【0067】
さらに、前記レーザによってエッチング形成(表示)された導電部の貫通孔124に、直径0.6mmの電気めっき用引っ掛け台210の接点を挿入して、放射パターン部121とアンテナ接点部122が通電するように定置(stationary、移動することはなくて構築されたベース上に固定させる形態)した。
【0068】
このようにして、電気めっき用引っ掛け台210の上下間に12個ずつの4列として、同一の間隔で48個ずつ樹脂成形物100を多数(5個)の電気めっき用引っ掛け台210に定置した。
【0069】
前記樹脂成形物100が定置された多数の電気めっき用引っ掛け台210を、すべて電気めっき槽240の掛け台220に定置して浸漬させた。(d)
この時、前記電気めっき槽240には、硫酸銅200g/L、硫酸60ml/Lの濃度で溶解されており、これは、通常の硫酸銅電気銅めっき液の組成と同等な濃度の範囲に該当する。
【0070】
前記掛け台220に定置されたそれぞれの電気めっき用引っ掛け台210に、電流積算調整装置300を用いて、60Aminに多数の電気めっき用引っ掛け台210のそれぞれに設定し、電気めっき槽240内に供給されるトータル電流を引っ掛け台当り平均2Aとして総10Aで電気めっきを行い、放射パターン部121とアンテナ接点部122に第1次伝導層130を形成した。(e)
この時、上記のように設定された積算電流量に到逹して警報が鳴る電気めっき用引っ掛け台210を順次に電気めっき槽240から取り出して、水洗処理を行った。
【0071】
次いで、前記樹脂成形物100を硫酸(sulfuric acid)と過酸化水素水(Hydrogen Peroxide)とが1:1の割合で混合した剥離槽(不図示)に浸してから1分〜5分経過させ、放射パターン部121とアンテナ接点部122を除く非放射パターン部123に形成された金属めっき層120を化学的に強制剥離する。(f)
これにより、非放射パターン部123に形成された金属めっき層120の剥離のための作業時間を著しく短縮し、生産性向上を極大化することができる。
【0072】
次いで、前記非放射パターン部123に形成された金属めっき層120が剥離された樹脂成形物100を電気めっき用引っ掛け台210に定置した後、電流積算調整装置300を用いて、60Aminに多数の電気めっき用引っ掛け台210のそれぞれに設定し、電気めっき槽240内に供給されるトータル電流を引っ掛け台当り平均2Aとして総10Aで電気めっきを行い、放射パターン部121とアンテナ接点部122に第2次伝導層140を形成した。(g)
この時、前記金属めっき層120の剥離時に剥離槽において生じた被膜がなくなる。
【0073】
次いで、前記電気めっき後に水洗処理した電気めっき用引っ掛け台210を、電気銅めっきと同一の方法でめっき溶液230が満たされたニッケル電気めっき槽240に投入し、電気めっき槽240に設置された電流積算調整装置300を用いて、15Aminに多数の電気めっき用引っ掛け台210のそれぞれに平均2Aで電気を供給して総10Aで電気ニッケルめっきを行い、放射パターン部121とアンテナ接点部122にニッケルめっき層150を形成した。(h)
この時、前記ニッケル電気めっき槽240には、硫酸ニッケル260g/L、塩化ニッケル50g/L、ほう酸50g/L、pH4.0〜pH5.0、温度52℃の通常の装飾用電気ニッケルめっき液と同一の組成を有する液である。
【0074】
これにより、前記金属めっき層120を除去するために剥離槽において損なわれた放射パターン部121とアンテナ接点部122の酸化を補うとともに、スクラッチなどを防止できるようになる。
【0075】
次いで、上記のように設定された積算電流量に到逹して警報が鳴る電気めっき用引っ掛け台210を順次に電気めっき槽240から取り出して、ニッケルめっき層150が形成された樹脂成形物100を封孔処理、水洗、乾燥処理を行った。(i)
【産業上の利用可能性】
【0076】
したがって、上記のような方法で内蔵型アンテナを製造する時、生産性を最小2〜3倍増加させることはもちろん、均一なめっき層を形成して、めっき信頼性を向上させて、内蔵型アンテナの製造品質の向上を図り、他の工法との価格競争力においてもとびきり先を行くことができるようになった。
【0077】
以上で説明した本発明は、上述した実施例及び添付の図面により限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で色々と置換、変形及び均等な他の実施例への変更が可能であることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとっては明白なことである。
配列目録Free Text
内蔵型アンテナ、インテナ、均一なめっき層、めっき信頼性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12