(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123043
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】モータにおける端子接続方法及び構造
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20170424BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
H02K15/02 A
H02K3/50 A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-137698(P2013-137698)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-12736(P2015-12736A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 優一
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−021824(JP,A)
【文献】
特開2003−079079(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0068647(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/065577(WO,A1)
【文献】
特開平03−052551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすモータ用ケース(50)の内壁(50a)側に設けられた複数のモータ用端子(220)と複数のセンサ用端子(220A)に対して、モータ用線とセンサ用線を固定配置のヒュージング装置(30)によりヒュージング接続するようにしたモータにおける端子接続方法において、
前記各モータ用端子(220)と各センサ用端子(220A)の前記ヒュージング装置(30)によるヒュージング接続位置は、前記内壁(50a)の軸方向(A)における同一高さ位置(H)に位置し、
前記ヒュージング装置(30)による各モータ用端子(220)とモータ用線との接続及び前記各センサ用端子(220A)とセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置(30)の同一工程内の同一動作の繰り返し、同一ヒュージング装置(30)の使用及び前記モータ用ケース(50)の回転動作の組合わせにより、行われることを特徴とするモータにおける端子接続方法。
【請求項2】
前記センサ用端子(220A)は、前記モータ用ケース(50)の内壁(50a)側に設けられたプリント基板(60)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載のモータにおける端子接続方法。
【請求項3】
前記各モータ用端子(220)及びセンサ用端子(220A)の前記軸方向(A)に沿う同一高さ位置(H)には、ヒュージング接続のための接続用平面部(220a,220Aa)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のモータにおける端子接続方法。
【請求項4】
前記モータ用ケース(50)は、外縁(50A)に取付孔(52)を有するケース用フランジ板(51)にインサート樹脂成形され、前記モータ用ケース(50)の下部(50b)には、ステータ巻線を有するステータ(200)が接続されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のモータにおける端子接続方法。
【請求項5】
筒状をなすモータ用ケース(50)の内壁(50a)側に設けられた複数のモータ用端子(220)と複数のセンサ用端子(220A)に対して、モータ用線とセンサ用線を固定配置のヒュージング装置(30)によりヒュージング接続するようにしたモータにおける端子接続構造において、
前記各モータ用端子(220)と各センサ用端子(220A)の前記ヒュージング装置(30)によるヒュージング接続位置は、前記内壁(50a)の軸方向(A)における同一高さ位置(H)に位置し、
前記ヒュージング装置(30)による各モータ用端子(220)とモータ用線との接続及び前記各センサ用端子(220A)とセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置(30)の同一工程内の同一動作の繰り返し、同一ヒュージング装置(30)の使用及び前記モータ用ケース(50)の回転動作の組合わせにより、行われる構成としたことを特徴とするモータにおける端子接続構造。
【請求項6】
前記センサ用端子(220A)は、前記モータ用ケース(50)の内壁(50a)側に設けられたプリント基板(60)に取付けられていることを特徴とする請求項5記載のモータにおける端子接続構造。
【請求項7】
前記各モータ用端子(220)及びセンサ用端子(220A)の前記軸方向(A)に沿う同一高さ位置(H)には、ヒュージング接続のための接続用平面部(220a,220Aa)が形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載のモータにおける端子接続構造。
【請求項8】
前記モータ用ケース(50)は、外縁(50A)に取付孔(52)を有するケース用フランジ板(51)にインサート樹脂成形され、前記モータ用ケース(50)の下部(50b)には、ステータ巻線を有するステータ(200)が接続されていることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のモータにおける端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにおける端子接続方法及び構造に関し、特に、モータケース内の各モータ用端子とセンサ用端子に対するモータ用線とセンサ用線をヒュージング接続する際のヒュージング装置の動作を、同一工程内での同一動作の繰り返しで行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のモータにおける端子接続方法及び構造としては、例えば、
図6から
図10で示される特許文献1の構成を挙げることができる。
すなわち、
図6において符号100で示されるものは、サーボモータ等のモータであり、このモータ100のエンドキャップ300の軸受321と
図7の外側ケーシング101の軸受322との間には、ロータ300を有するモータ軸310が回転自在に設けられている。
【0003】
前記外側ケーシング101内のステータ200のステータコア201には、輪状の絶縁部202を介して複数の導通端子220がインサート成形され、前記絶縁部202は、
図9で示されるように、前記ステータコア201から外すことができ、着脱自在に設けられている。
また、前記絶縁部202の導通端子220はガイド部材204で保持されていると共に、前記ガイド部材204で案内されたステータ巻線(図示せず)の渡り線230は、前記導通部220を構成する第1、第2導通部221,222間に挟持されて構成されている。
【0004】
前記渡り線230が各導通部221,222間に案内されて前記ステータ巻線の巻き付けが終了した後に、
図6及び
図10のように、ヒュージング装置(図示せず)によって渡り線230が導通端子220にヒュージング接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2013−21824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のモータにおける端子接続方法及び構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1に開示されたモータにおける端子接続方法及び構造においては、渡り線のヒュージング接続のみについて示しているが、実際には、3相のステータ巻線を図示しない各端子に対してヒュージング接続する必要があるが、図示しない各端子の位置が外側ケーシングの軸方向において、前述の渡り線とは異なる位置に設けられているため、ヒュージング接続においては、図示しないヒュージング装置を軸方向あるいは回転方向に沿って移動させる必要があり、1工程内では全てのヒュージング接続を完了することができず、1工程内で複数のモードのヒュージング動作を用いなければ1個のモータに対するヒュージング接続を完了することは不可能であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、モータケース内の各モータ用端子とセンサ用端子に対するモータ用線とセンサ用線をヒュージング接続する際のヒュージング装置の動作を同一工程での同一動作の繰り返しで行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるモータにおける端子接続方法は、筒状をなすモータ用ケースの内壁側に設けられた複数のモータ用端子と複数のセンサ用端子に対して、モータ用線とセンサ用線を固定配置のヒュージング装置によりヒュージング接続するようにしたモータにおける端子接続方法において、前記各モータ用端子と各センサ用端子の前記ヒュージング装置によるヒュージング接続位置は、前記内壁の軸方向における同一高さ位置に位置し、前記ヒュージング装置による各モータ用端子とモータ用線との接続及び前記各センサ用端子とセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置の同一工程内の同一動作の繰り返し、同一ヒュージング装置の使用及び前記モータ用ケースの回転動作の組合わせにより、行われる方法であり、また、前記センサ用端子は、前記モータ用ケースの内壁側に設けられたプリント基板に取付けられている方法であり、また、前記各モータ用端子及びセンサ用端子の前記軸方向に沿う同一高さ位置には、ヒュージング接続のための接続用平面部が形成されている方法であり、また、前記モータ用ケースは、外縁に取付孔を有するケース用フランジ板にインサート樹脂成形され、前記モータ用ケースの下部には、ステータ巻線を有するステータが接続されている方法であり、また、本発明によるモータにおける端子接続構造は、筒状をなすモータ用ケースの内壁側に設けられた複数のモータ用端子と複数のセンサ用端子に対して、モータ用線とセンサ用線を固定配置のヒュージング装置によりヒュージング接続するようにしたモータにおける端子接続構造において、前記各モータ用端子と各センサ用端子の前記ヒュージング装置によるヒュージング接続位置は、前記内壁の軸方向における同一高さ位置に位置し、前記ヒュージング装置による各モータ用端子とモータ用線との接続及び前記各センサ用端子とセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置の同一工程内の同一動作の繰り返し、同一ヒュージング装置の使用及び前記モータ用ケースの回転動作の組合わせにより、行われるようにした構成であり、また、前記センサ用端子は、前記モータ用ケースの内壁側に設けられたプリント基板に取付けられている構成であり、また、前記各モータ用端子及びセンサ用端子の前記軸方向に沿う同一高さ位置には、ヒュージング接続のための接続用平面部が形成されている構成であり、また、前記モータ用ケースは、外縁に取付孔を有するケース用フランジ板にインサート樹脂成形され、前記モータ用ケースの下部には、ステータ巻線を有するステータが接続されている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるモータにおける端子接続方法及び構造は、以上のように構成されていたため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒状をなすモータ用ケースの内壁側に設けられた複数のモータ用端子と複数のセンサ用端子に対して、モータ用線とセンサ用線を固定配置のヒュージング装置によりヒュージング接続するようにしたモータにおける端子接続方法及び構造において、前記各モータ用端子と各センサ用端子の前記ヒュージング装置によるヒュージング接続位置は、前記内壁の軸方向における同一高さ位置に位置し、前記ヒュージング装置による各モータ用端子とモータ用線との接続及び前記各センサ用端子とセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置の同一工程内の同一動作の繰り返し、同一ヒュージング装置の使用及び前記モータ用ケースの回転動作の組合わせにより、行われることにより、モータ線とモータ端子及びセンサ線とセンサ端子との接続を同一工程内で行うことができ、ワーク着脱作業、ヒュージング装置の入れ替えが不要となり、工数削減、ヒュージング装置の削減等が得られる。
また、前記センサ用端子は、前記モータ用ケースの内壁側に設けられたプリント基板に取付けられていることにより、モータ端子とセンサ端子の軸方向における高さ位置を簡単に同一に揃えることができる。
また、前記各モータ用端子及びセンサ用端子の前記軸方向に沿う同一高さ位置には、ヒュージング接続のための接続用平面部が形成されていることにより、ヒュージング装置の移動状態が同じ動作の繰り返しとなり、ヒュージング装置の動作プログラムを単純化でき、ヒュージング動作の変更を行うことなく安定して作業効率を上げることができる。
また、前記モータ用ケースは、外縁に取付孔を有するケース用フランジ板にインサート樹脂成形され、前記モータ用ケースの下部には、ステータ巻線を有するステータが接続されていることにより、ステータ側のステータ巻線等を巻線後にモータ用ケースに取り付け、その後、ステータ巻線等をモータ端子及びセンサ端子にヒュージング接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるモータにおける端子接続方法及び構造を示すための平面図である。
【
図3】本発明におけるヒュージング装置のヒュージング接続状態を示す構成図である。
【
図4】
図2におけるモータ用端子を示す拡大斜視図である。
【
図5】
図2におけるセンサ用端子を示す拡大斜視図である。
【
図6】従来のモータにおける端子接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、モータケース内の各モータ用端子とセンサ用端子に対するモータ用線とセンサ用線をヒュージング接続する際のヒュージング装置の動作を、同一工程内での同一動作の繰り返しで行うようにしたモータにおける端子接続方法及び構造を提供することである。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるモータにおける端子接続方法及び構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において符号50で示されるものは、厚さが約1ミリ〜2ミリの金属板からなり複数の取付孔52をその外縁50Aに有するケース用フランジ板51と共に射出によるインサート樹脂成形された筒状のモータ用ケースであり、前記モータ用ケース50の外縁50Aは前記ケース用フランジ板51と同じ形状に成形されている。
【0013】
前記モータ用ケース50の内壁50a側には、複数のモータ用端子220と複数のセンサ用端子220Aが設けられ、前記各モータ用端子220は前記内壁50aにインサート成形されており、前記各センサ用端子220Aは、前記内壁50aにインサート成形で設けられた馬蹄形(平面で見て)をなすプリント基板60に植設された状態で固定されている。
【0014】
前記内壁50a側に固定された各モータ用端子220と各センサ用端子220Aは、図示しないモータ用線とセンサ用線をヒュージング装置30(
図3)によりヒュージング接続するためのヒュージング接続位置である接続用平面部220Aa及び220a(
図4、
図5)を有し、各接続用平面部220Aa及び220aは、
図2で示されるように、前記内壁50aの軸方向Aにおける点線で示される同一高さ位置Hに位置している。
尚、前述のモータ用ケース50の下部50bには、
図3で示されるようにステータ巻線(図示せず)を有するステータ200が嵌め込み式に取付けられており、前記ステータ巻線の端線が前記モータ用線として前記各モータ用端子220の接続用平面部220Aaにヒュージング接続される。
また、前記ステータ200側に設けられた例えばホール素子等のセンサ(図示せず)に接続されたセンサ用線(図示せず)は前記各センサ用端子220Aの接続用平面部220Aaにヒュージング接続される。
【0015】
前記各接続用平面部220a及び220Aaは、前述のように、モータ用ケース50の軸方向Aにおける同一高さ位置Hに位置しているため、
図3で示されるように前記ヒュージング装置30を製作装置35の固定台36上に固定し、前記ヒュージング装置30の下方には回転自在なワーク置き台37が配設されている。
【0016】
前記ワーク置き台37上には、前記ケース用フランジ板51を有するモータ用ケース50が接続されたステータ200が載置され、前述の図示しないモータ用線とセンサ用線は、予め、前記各接続用平面部220Aa及び220aに簡単な構成で予め機械的に接続されている。
前述の準備が完了した段階で、前記製作装置35のヒュージング装置30の動作を開始すると、前記ワーク置き台37が回転して、
図1の平面図で示されるように、8個の各端子220及び220Aが順次ヒュージング装置30の先端のヒュージング部30aに対応することができるように構成されている。
【0017】
従って、前記各端子220及び220Aがワーク置き台37の回転によって、順次、前記ヒュージング装置30の下方位置に位置決めされる毎に、前記ヒュージング装置30のヒュージング部30aは矢印Bで示される下方向にのみ降下し、ヒュージング部30aによって、モータ用線又はセンサ用線はモータ用端子220又はセンサ用端子220Aに各々順次ヒュージング接続される。
【0018】
前述の各端子220及び220Aにおける各接続用平面部220a及び220Aaは、前述のように軸方向Aに沿う同一高さ位置Hに位置しているため、前記ヒュージング装置30、すなわち、前記ヒュージング部30aが上下方向Bに沿って上下する上下ストロークは、常に同一であり、前記ヒュージング装置30のヒュージング部30aは上下方向の動作のみで、モータ用線又はセンサ用線と前記各接続用平面部220a又は220Aaとのヒュージング接続を簡単に行なうことができる。
【0019】
前述のヒュージング工程により、前記ヒュージング装置30による各モータ用端子220とモータ用線とのヒュージング接続及び前記各センサ用端子220Aとセンサ用線との接続は、前記ヒュージング装置30の同一工程(1個のモータ用ケース50に対するヒュージング工程)内の同一動作の繰り返しとなり、前記同一工程内では同一ヒュージング装置30を使用し、かつ、前記モータ用ケース50をステータ200の回転によって回転させることの組合わせによって行われる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるモータにおける端子接続方法及び構造は、サーボモータに限らず、他のステップモータ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
30 ヒュージング装置
30a ヒュージング部
35 製作装置
36 固定台
37 ワーク置き台
50 モータ用ケース
50a 内壁
50b 下部
50A 外縁
51 ケース用フランジ板
52 取付孔
60 プリント基板
200 ステータ
220 モータ用端子
220A センサ用端子
220a,220Aa 接続用平面部
A 軸方向
B 上下方向