(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態の一例について、具体的に説明する。
【0016】
(金属流体及び金属)
本発明における金属流体は、金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して、少なくとも2種類の金属元素を含むものである。本発明における金属は、特に限定されない。好ましくは化学周期表上における全ての金属である。金属元素としては、例えば、Ti,Fe,W,Pt,Au,Cu,Ag,Pb,Ni,Mn,Co,Ru,V,Zn,Zr,Sn,Ta,Nb,Hf,Cr,Mo,Re,In,Ir,Os,Y,Tc,Pd,Rh,Sc,Ga,Al,Bi,Na,Mg,Ca,Ba,La,Ce,Nd,Ho,Euなどの金属元素が挙げられる。また、本発明においては、これらの金属元素に加えて、B,Si,Ge,As,Sb,C,N,O,S,Te,Se,F,Cl,Br,I,Atの非金属元素を金属元素として挙げることができる。これらの金属について、単一の元素であっても良く、複数の金属元素からなる合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。
【0017】
(金属化合物)
また、上記の金属(上記に列挙した非金属元素をも含む)の単体に加えて、それら金属の化合物である金属化合物を溶媒に溶解したものを金属流体として用いることができる。本発明における金属化合物としては特に限定されないが、例えば、金属の塩、酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物、またはそれら金属化合物の水和物や有機溶媒和物などが挙げられる。金属塩としては、特に限定されないが、金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩、またはそれら金属塩の水和物や有機溶媒和物などや、有機化合物としては金属のアルコキシドなどが挙げられる。これらの金属化合物は単独で使用しても良く、2種以上が混合された混合物として使用しても良い。
【0018】
(析出物質)
本発明に用いる析出物質としては、上記金属流体に含まれる少なくとも2種類の金属元素を、合金や複合金属化合物などの複合物質として析出させることが可能な物質であれば特に限定されない。一例を挙げると、合金微粒子を作製する場合には、上記の金属流体に含まれる、金属及び/または金属化合物、好ましくは少なくとも2種類の金属元素の金属イオンを還元することができる物質であり、特に限定されないが、ヒドラジンまたはヒドラジン一水和物、ホルムアルデヒド、スルホキシル酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム金属塩、水素化トリエチルホウ素金属塩、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、ジメチルホルムアミド、ピロガロール、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、次亜リン酸ナトリウム(NaH
2PO
2・H
2O)、ロンガリットC(NaHSO
2・CH
2O・2H
2O)、金属の化合物またはそれらのイオン、好ましくは鉄、チタンなどの遷移金属の化合物またはそれらのイオンなどが挙げられる。上記に挙げた還元剤には、それらの水和物や有機溶媒和物、または無水物などを含む。これらの還元剤は、それぞれ単独で使用しても良く、2種以上が混合された混合物として使用しても良い。その他、酸素を含む複合金属化合物を作製する場合、例えば複合金属酸化物や複合金属水酸化物、複合金属水酸化酸化物の微粒子を作製する場合には、塩基性物質や酸性物質を含む流体を析出用流体として用いることが可能である。塩基性物質としては、特に限定されないが、アンモニアやアンモニウム塩などのアンモニア類やトリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどのアミン類、または金属や非金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシドなどが挙げられる。その他、上記ヒドラジンまたはヒドラジン一水和物なども挙げられる。上記に挙げた塩基性物質には、それらの水和物や有機溶媒和物、または無水物などを含む。これらの塩基性物質は、それぞれ単独で使用しても良く、2種以上が混合された混合物として使用しても良い。酸性物質としては塩酸や硫酸、硝酸や王水などの無機酸や、トリクロロ酢酸やトリフルオロ酢酸、リン酸やクエン酸、アスコルビン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0019】
本発明における析出用流体は、上記の析出物質を少なくとも1種類含むものである。また、上記の析出物質を後述する溶媒と混合または溶解して、析出物質溶液としたものを析出用流体として使用しても良い。上記の析出用流体には、分散液やスラリーなどの状態のものを含んでも実施できる。
【0020】
(溶媒)
本発明に用いる溶媒としては特に限定されないが、イオン交換水やRO水、純水や超純水などの水や、メタノールやエタノールのようなアルコール系有機溶媒や、エチレングリコールやプロピレングリコール、トリメチレングリコールやテトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールやグリセリンなどのポリオール(多価アルコール)系有機溶媒、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系有機溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルのようなエステル系有機溶媒、ジメチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒、ヘキサンや、ペンタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒などが挙げられる。また上記アルコール系有機溶媒やポリオール系有機溶媒を溶媒として用いた場合には、溶媒そのものが還元剤としても働く利点がある。上記溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
(流体処理装置)
本発明においては、金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して、少なくとも2種類の金属元素を含む金属流体と、上記少なくとも2種類の金属元素を含む複合物質を析出させるための析出物質を少なくとも1種類含む析出用流体との混合を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する方法を用いて微粒子を析出させることが好ましい。このような原理の装置を用いる事によって、比重差が1.1倍以上ある少なくとも2種類の金属元素を含む複合物質の微粒子を作製する事が可能である。
【0022】
以下、図面を用いて上記流体処理装置の実施の形態について説明する。
【0023】
図1〜
図3に示す流体処理装置は、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、
図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。
図2(A)、
図3(B)においてRは回転方向を示している。
図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
【0024】
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
【0025】
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
【0026】
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
【0027】
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
【0028】
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
【0029】
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
【0030】
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。
図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
【0031】
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
【0032】
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
【0033】
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
【0034】
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
【0035】
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
【0036】
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
【0037】
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
【0038】
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
【0039】
さらに、この
図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(
図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
【0040】
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(
図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
【0041】
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
【0042】
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
【0043】
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
【0044】
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
【0045】
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
【0046】
流体の運動において、慣性力と粘性力の比を表す無次元数をレイノルズ数と呼び、以下の式で表される。
レイノルズ数Re=慣性力/粘性力=ρVL/μ=VL/ν
ここで、ν=μ/ρは動粘度、Vは代表速度、Lは代表長さ、ρは密度、μは粘度を示す。
そして、流体の流れは、臨界レイノルズ数を境界とし、臨界レイノルズ数以下では層流、臨界レイノルズ数以上では乱流となる。
上記流体処理装置の両処理用面1,2間は微小間隔に調整されるため、両処理用面1,2間に保有される流体の量は極めて少ない。そのため、代表長さLが非常に小さくなり、両処理用面1,2間を通過する薄膜流体の遠心力は小さく、薄膜流体中は粘性力の影響が大きくなる。従って、上記のレイノルズ数は小さくなり、薄膜流体は層流となる。
遠心力は、回転運動における慣性力の一種であり、中心から外側に向かう力である。遠心力は、以下の式で表される。
遠心力F=ma=mv
2/R
ここで、aは加速度、mは質量、vは速度、Rは半径を示す。
上述の通り、両処理用面1,2間に保有される流体の量は少ないため、流体の質量に対する速度の割合が非常に大きくなり、その質量は無視できるようになる。従って、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中においては重力の影響を無視できる。そのため、本来複合微粒子として析出させることが難しい比重差のある2種以上の金属元素を含む合金や複合金属化合物などの微粒子を、両処理用面1,2間にできる薄膜流体中で析出させることができる。
【0047】
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、
図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
【0048】
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、
図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
【0049】
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
【0050】
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
【0051】
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、
図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、
図2(B)や
図3(B)に示すように円形状であってもよく、図示しないが、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けると、第2流体を処理用面1,2間に導入する際に円周方向において同一条件で実施することができるため、微粒子を量産したい場合には、開口部の形状を同心円状の円環形状とすることが好ましい。
【0052】
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、
図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
【0053】
また、
図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
【0054】
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
【0055】
本発明において、少なくとも2種類の被処理流動体が合流する、合流部における回転の周速度とは、
図3(A)に示すように、第1流体と第2流体とが合流する開口部d20において、第1、第2処理用面1,2の回転の中心から最も近い位置f(以下、最近点f)における処理用面1,2の周速度を意味し、具体的には、以下の式より算出される。
周速度[m/s]=2×β[m]×回転数[rps]×π
ここで、βは第1、第2の処理用面1,2の回転の中心から最近点fまでの距離、回転数は処理用面の回転数、πは円周率を示す。
つまり、少なくとも2種類の被処理流動体が合流する合流部とは、開口部d20において、上記第1、第2処理用面1,2の回転の中心に最も近い位置を意味する。
また、第1、第2処理用面の回転の中心からの距離が異なる合流部が複数ある場合には、金属流体と析出用流体が合流し、合流部の最も中心に近い点を最近点fとする。
前述のように、合流部にて合流した少なくとも2種類の被処理流動体は、複合物質の微粒子の析出を含む種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。
【0056】
本発明においては、合流部における回転の周速度を制御することによって、微粒子に含まれる少なくとも2種類の金属元素間のモル比を制御することができる。
また、上述の通り、本実施形態においては、上記流体処理装置の第1処理用部10は第2処理用部20に対して回転しており、第1処理用面1が第2処理用面2に対して回転するため、第1処理用面1の、合流部における周速度を制御することになるが、第1処理用面1と第2処理用面2とがともに回転している場合には、合流部におけるそれらの相対的な周速度を制御することによって、微粒子に含まれる少なくとも2種類の金属元素間のモル比を制御することができる。
本発明においては、合流部における回転の周速度が、0.8〜41.9m/sであることが好ましく、1.2〜21.0m/sであることがより好ましい。合流部における周速度が1m/s以下では、少なくとも2種類の被処理流動体を均一に混合し、均一な析出反応を促進することができないため、少なくとも2種類の金属元素を含む微粒子を安定して得ることが出来ない。また、合流部における回転の周速度が42m/s以上では、処理用面の温度上昇により被処理流動体が気化し、それによって処理用面1,2間の圧力上昇が見られるため、少なくとも2種類の被処理流動体を安定的に送液できなくなる現象が起こる場合がある。また、合流部における回転の周速度が42m/s以上では、第2導入部d2から導入された第2流体がすばやく移動して両処理用部10,20の外側に素早く排出されるため、第1流体と第2流体との、少なくとも2種類の被処理流動体の安定した混合が難しくなり、少なくとも2種類の金属元素を含む均一な微粒子の作製が難しい。上記の理由より、特定の範囲外では微粒子の析出を維持することが難しくなる。
また、合流部における回転の周速度が、0.8〜41.9m/sとすることで、得られる微粒子に含まれる少なくとも2種類の金属元素間のモル比を、上記の薄膜流体中において混合させた金属流体に含まれる少なくとも2種類の金属元素間のモル比に対して±20%以内とすることができる。
【0057】
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、
図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
【0058】
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
【0059】
上記流体処理装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、
図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
【0060】
以下、上記の装置を用いて行う微粒子の製造方法の具体的な態様について説明する。
【0061】
上記の流体処理装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転を行う処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して、少なくとも2種類の金属元素を含む金属流体と上記少なくとも2種類の金属元素を含む複合物質を析出させる析出物質を少なくとも1種類含む析出用流体とを混合させ、複合物質の微粒子を析出させる。その際、金属流体と析出用流体とが合流する、合流部における前記回転の周速度を制御することによって、微粒子に含まれる上記少なくとも2種類の金属元素間のモル比を制御することを特徴とする。
【0062】
上記の微粒子の析出反応は、本願の
図1に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間の薄膜流体中で強制的に均一混合しながら起こる。
【0063】
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として上記の析出物質を少なくとも1種類含む析出用流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
【0064】
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として金属及び/または金属化合物を溶媒に溶解して、少なくとも2種類の金属元素を含む金属流体を、上記処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
【0065】
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、微粒子の析出反応を行う事が出来る。
【0066】
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
【0067】
前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体、第2流体、第3流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び複合微粒子の粒子径をより精密に制御することができる。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
【0068】
(pH領域)
本発明における金属流体及び/または析出用流体のpHは特に限定されない。用いる金属及び/または金属化合物や析出物質の種類や濃度、目的や対象となる金属種などによって、適宜変更する事が可能である。
【0069】
(分散剤等)
また、本発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記の界面活性剤及び分散剤は、金属流体もしくは析出用流体、またはその両方に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、金属流体とも析出用流体とも異なる第3の流体に含まれていてもよい。
【0070】
(温度)
本発明において、金属流体と析出用流体とを混合する際の温度は特に限定されない。用いる金属及び/または金属化合物や析出物質の種類や濃度、対象とする金属種、金属流体や析出用流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
【0071】
(微粒子)
本発明における微粒子は、金属流体に含まれる、少なくとも2種類の金属元素を含む複合物質の微粒子として実施できる。複合物質の微粒子としては、例えば、上記の少なくとも2種類の金属元素からなる合金の微粒子や金属元素と非金属元素とからなる微粒子、複合金属酸化物、複合金属水酸化物、複合金属水酸化酸化物などの複合金属化合物などが挙げられる。また、本発明における微粒子は、B,Si,Ge,As,Sb,C,N,O,S,Te,Se,F,Cl,Br,I,Atの非金属元素をも金属元素として含むものとする。
また、本発明において、上記少なくとも2種類の金属元素を含む合金微粒子を作製する場合は、酸化物や水酸化物、酸化水酸化物などを一部含んでも実施できる。本発明において、複合物質には、上記少なくとも2種類の金属元素を含む合金や、複合金属酸化物、複合金属水酸化物などの複合金属化合物、金属元素に非金属元素を含む物質などが含まれる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0073】
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、
図1に示す流体処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、
図1に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
【0074】
(電子顕微鏡観察)
電子顕微鏡(TEM)観察には、電子顕微鏡(TEM):日本電子製のJEM−2100を使用し、一次粒子径を観察した。また、エネルギー分散型X線分光分析器(EDS)を使用して、組成比を確認した。測定及び観察条件としては、加速電圧を200kVとし、観察倍率を50万倍以上とし、一次粒子径については、3箇所の平均値を採用した。以下、TEM観察にて確認された一次粒子径を、粒子径とする。
【0075】
(実施例1)
図1に示される流体処理装置を用いて、インジウム−スズ合金微粒子を以下の手順にて作製した。比重7.31g/cm
3(20℃)のインジウムを0.925wt%、比重5.80g/cm
3(20℃)のスズを0.075wt%となるように濃塩酸と濃硝酸の混合溶液(体積比3:1)に溶解させた金属の混合液(金属流体)と、水素化ホウ素ナトリウムを0.2wt%、BYK−180(ビックケミー・ジャパン社)を1wt%となるように0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた還元剤水溶液(析出用流体)とを処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、薄膜流体中でインジウム−スズ合金微粒子を析出させた。
【0076】
実施例1として、中央から第1流体として還元剤水溶液(析出用流体)を、供給圧力=0.50MPaG、送液温度80℃、導入速度500ml/minで送液しながら、第2流体として、25℃の金属塩の混合液(金属流体)を導入速度5ml/minで処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。その際、第1処理用面1の合流部における周速度が0.63m/sとなるよう設定した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。インジウム−スズ合金粒微子分散液が処理用面1,2間より吐出された。吐出されたインジウム−スズ合金微粒子分散液を、10,000×g、5分間の条件で遠心分離機を用いてインジウム−スズ合金微粒子を沈降させ上澄みを除去し、純水にて洗浄する作業を3回行い、真空乾燥機を用いて60℃、−0.1MPaの条件にて乾燥した。得られたインジウム−スズ合金微粒子の粒子径をTEM観察にて確認し、上記微粒子の組成比をEDS測定にて確認した。
【0077】
実施例2〜7については、第1処理用面1の合流部における周速度のみを変化させ、その他の処理条件は、実施例1と同じ条件として実施した。
【0078】
表1に、実施例1〜7の第1処理用面1の合流部における周速度と、得られたインジウム−スズ合金微粒子のEDS測定結果と、インジウム−スズ合金微粒子の粒子径とを示す。また、
図4に、実施例4において得られたインジウム−スズ合金微粒子のTEM写真を示す。なお、表1の「薄膜中導入量」とは、薄膜流体中に導入された金属流体中のインジウムとスズの各元素量である(モル比:In:Sn=92.7:7.3)。そして、表1の「EDS分析結果/薄膜中導入量」とは、薄膜流体中において混合された金属流体に含まれるインジウムまたはスズのモル比を100としたときの、得られたインジウム−スズ合金微粒子に含まれるインジウムまたはスズのモル比の、薄膜流体中において混合された金属流体に含まれるインジウムまたはスズのモル比に対する割合(百分率)と、薄膜流体中において混合された金属流体に含まれるインジウムまたはスズのモル比との差である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合する際、第1処理用面1の合流部における周速度を0.8m/s〜41.9m/sとなるよう設定して両者を混合することにより、インジウムとスズとの比重差が1.26倍であるにもかかわらず、インジウム−スズ合金微粒子を作製できることを確認した。また、得られたインジウム−スズ合金微粒子におけるインジウムとスズとのそれぞれのモル比が、薄膜流体中において混合させた金属流体に含まれるインジウムとスズとのそれぞれのモル比に対して±20%以内の範囲で作製できることを確認した。
【0081】
なお、本実施例ではインジウムとスズとを溶媒に溶解したものを金属流体として用いたが、インジウム化合物とスズ化合物とを溶媒に溶解したものを金属流体として用いた場合においても同様にインジウムとスズとのモル比を制御されたインジウム−スズ合金微粒子を作製することが出来る。つまり、インジウムまたはインジウム化合物と、スズまたはスズ化合物とを溶媒に溶解したものを金属流体として用いた場合においても同様にインジウムとスズとのモル比を制御されたインジウム−スズ合金微粒子を作製することが出来る。